シナリオ詳細
<グランドウォークライ>病の支配は人の支配
オープニング
●限りなく弱く最高の悪意
『鋼鉄』首都スチール・グラード、第七薬理研究所。
首都においても外縁部に位置し、重要度が低めに設定されたこの施設は本来、混沌の『鉄帝』にはない施設だ。
何故なら、ここの研究対象は所謂BC兵器、つまり病原菌や毒などを戦術的に応用することがメインだから、である。
皇帝不在の『鋼鉄』だからこそ、情勢の不安に乗じて研究員達が予算を獲得した背景がある。
無論、そんなものに興味を持つ軍人が多いわけもなかろうが――。
「進め! ここは我が『葬滅隊』の指揮下に編入する! ここで以てつくられた新薬を戦場で振るい、我らのやり方が正しかったことを証明するのだ! さすれば、『彼』が冷遇されることもなくなる! この功を見て、此方に手を貸してくれる筈だ!
今手元にあるすべての毒と病魔に、価値あることを見せつけ手向けとしよう! 研究員は殺すなよ、彼らは同志足りうる者達だ! 警備システムと警備員を叩け!」
そんな研究所に襲撃をかけんとしたのは、『葬滅隊』を名乗る大隊規模のシャドーレギオン。かつて、『同志』と呼んだ軍人同様、そのやり口の悪辣さが『鋼鉄』らしからぬと指弾された者達である。そういう意味では、この施設と迎合する思考回路だが……。
「冗談ではありません。私の研究は飽くまでも人心を誘導することによる理性と衝動、義務と欲望のコンフリクトを追求するもの。それにより理性的な言動を保てぬ者の戦闘能力の減退を以て、自部隊の能力的優位を確立するというものです。間違っても、周囲に犠牲を拡大しコントロール出来ぬものを生み出すなどというものが私の研究思想と合致する筈がないでしょう!」
「その……なんだ、人の心をどうにかするってのも男らしくねえとは思うけどよ、毒やら病気やらをバラ撒いたら俺のファンも、ファンじゃねえ連中……『将来のファン』も殺しちまうじゃねえか。そんな奴等が首都を襲うのは我慢ならねえ」
だが、『葬滅隊』の話題に登った当の本人、ヴィトルト・コメダは憤懣やる方なしといった調子でまくしたてる。
その怒りように迎合するように、A級闘士キャプテン・リーゼントも憤りを顕にする。先日まではしなびきっていたリーゼントは今やバリっとキマっており、自分に未だにファンがいることを疑っていない口調であった。
「なんだか……前に戦った時より生き生きしてる気がするんだよね……」
「そうか? アタシはそっちの白衣センセイは知らないけど、キャプテンは前よりずっとキャプテンしてるからいいと思うけど」
ニアサー(p3x000323)がヴィトルトの変わりようにちょっと目を白黒させているが、ユウキ(p3x006804)は憧れの相手がなんかこう、憧れの姿に近付いていることに喜びを覚えているようだった。対照的な姿である、かもしれない。
「まあそういうことです。私も作戦に一枚噛んだ関係上、君達の指揮下に入り微力ながら力添えさせてもらいましょう」
「ああ、坊主達のケツモチはしてやる。徹底的に暴れまわろうぜ」
そんなこんなで。
ヴィトルトとキャプテンは、大隊規模で第七薬理研究所の奪還作戦に赴くことになる。
●話の要旨
「……というわけで、一度作戦会議の際に話したかと思いますが。『バグ』と呼ばれる悪意の立役者、『聖頌姫』ディアナ・K・リリエンルージュはスチール・グラードの城塞化を進め、嘗ての私達のようなシャドーレギオンを送り出しているようですね。『エクスギアエクス』と呼ばれる巨大ロボの投入が見られ、各地の要所は封鎖されています。第七薬研は、首都奪還の目が立った際に放置しておけば最悪、首都壊滅のための人質に取られる可能性もあります。……流石に杞憂の範囲ですけどね」
ヴィトルトが説明したとおり、現在のスチール・グラードは混沌とした状況にある。首都全体が戦場となり、中央に出現したディアナキャッスル攻略の為には周囲を固め、活路を見いださねばならぬ。
「『葬滅隊』の話は聞いたことあるぜ。その一員と闘技場で闘ったこともある。……毒やらナシで闘っても十分強いヤツが、昔はいた、ってのは覚えてるな。まああの頃の俺はB級だったから参考にならねえが」
B級でも十分ヤバいのだが、と思ったイレギュラーズの視線はさておき、「それで得意戦術ナシだ、アリならもっと強ぇよ」とキャプテンが続けたことでうへえ、と顔を歪める。
「連中、きっと研究所の毒で武装してやがるぜ。もしかしたら、一時的に毒ガスや病原体を狭い範囲に撒き散らすかもしれねえ。今回はお前達ひとりひとりが部隊を率いる関係上、統率はしっかりしておきたいが……」
「そこは私におまかせを。私を中心に限定的ですが、毒や病原菌を一時的に無効化する中和ガスを発生させることが可能です。範囲が広くないので、せいぜい2小隊をカバーするのみですが……そうですね。貴女と、もうひとりの小隊程度でしょう。後方支援中心になりますかね」
ヴィトルトはそう言うと、ニアサーを指差す。
「俺と『リーゼント・フォロワー』達はそこの……ユウキつったか。その嬢ちゃんの下につくぜ。一気に突っ込んで研究所の中心部奪還だ。一番あぶねえ場所になるな」
リーゼントは以前の戦いでなんとか正気を取り戻した自分のファンたち共々、先陣を切る気満々だ。
「敵の予想配置図と詳細はこちらに。では、進撃準備に入りましょうか」
- <グランドウォークライ>病の支配は人の支配完了
- GM名ふみの
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2021年09月24日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
●見上げるべきは希望、並ぶべきは明日の自分
「B級ン時の話、ね……」
「ああ、キャプテンはあの頃から凄かったんだよな! アタシも知ってるぜ!」
「ユウキにゃ憧れの人だもんな、そりゃ嬉しいか……」
キャプテン・リーゼントの昔話に喜ぶ『勇気、優希、悠木』ユウキ(p3x006804)とは対照的に、『Lightning-Magus』Teth=Steiner(p3x002831)の心中は穏やかではなかった。混沌に於いてはまさに今、B級としてラド・バウに立つ身であればこそ、今から戦う連中の一部がどれほどの強さか推し量れるというものだ。無論、ネクストでも鍛えているが、それはそれだ。
嘗て敵になって、拳で分かりあい並び立つ憧れの男と、彼に感化され、拳を交えたファン同士。ユウキにとって、従えるというより並び立つ、という表現が正しい者達だ。これに奮わぬ者などおるまい。
「人心掌握だ洗脳だで失敗すると、なんだかんだうちみたいなところに仕事が……って、昔話はどうでもいいスね」
「程度問題、そして引き際の問題ではあります。過去の私は決して上等な手は打たなかったでしょうが、シャドーレギオン? でしたか。あれだった時よりはマシな部類だと信じたいですね。今回は、こんな私に付き合ってくれる君たちを最大限活かす、戦術家としての戦いに徹することをお約束しましょう」
『開けてください』ミミサキ(p3x009818)の言葉は、正直なところヴィトルトの過去に非常に『刺さる』。そういう意味では聞かないふりをしたいだろうに、彼は是々非々であることを交え、当たり前のようにふるまった。彼について多少なり理解のある『Dirty Angel』ニアサー(p3x000323)からすれば、成長というか、考え方の変化に思える。
「なんか、品行方正だね」
「口ぶりに含むものを感じますが……君達に、そしてこの国に弓を引いた過去を思えば当然の行いでは?」
「どちらのあなたもわたしは気に入ってる。月が暖かな光を放っても、裏側は鉄すら縮む極寒地であるのと同様だよ。どちらもヴィトルト」
「……なるほど?」
ニアサーの意味ありげな笑みは、ヴィトルトの知識を持ってしてもすこし難解だったらしい。水に流した、と彼は理解することにした。
「……ヴラノス小隊、奮起せよ。貴殿らと我、死なずして故郷を踏む英雄也。貴様らの命を預かるこのヴラノス、幾千幾万の戦場を絶対なる勝利に導いて生き続けてきた! 始めるぞ……この戦も既に、勝利の女神は我らに惚れ落ちている!!」
「にーちゃんたちーー。おれが『妹』のルージュだぜ!! おれ達は内部に突入するけど、にーちゃん達なら何も問題無いって信じてるぜ!! 先頭はおれに任せて、後ろからポンポン攻撃を撃ってってくれよな!!」
『逧 蛻コ蟷サのアバター』ヴラノス・イグナシオ(p3x007840)と『絶対妹黙示録』ルージュ(p3x009532)は、外縁部を味方に任せ、ユウキをコアに送り込む内部突撃部隊を担当する。必然、2人の受け持つ小隊も両者の能力にほど近い傾向の(つまりは回避と状態異常に殊更強い)面々が選出されている。トラップが予想される区画では、かなり心強いといえた。……というかこの2人、戦意発揚が格段に上手い。今回の戦いの特性を、肌で理解している者の対応である。
「……毒と病、『貧者の核兵器』と言っても差し支えないものを狙ってきたね。ひとたび解き放てば爪痕を残し、解き放つだけなら子供にも出来る。その厄介さは理解していないわけじゃないよ」
「私達の役割は外縁部隊の妨害を無効化し、可能な限り隠密部隊の即時撃破を目的としています。ですがひとつことにとらわれず、柔軟に作戦を進めましょう。……毒も病気も、この国には不要です」
『夜告鳥の幻影』イズル(p3x008599)は薬理研究所の危険性を理解した上で、噛みしめるように自らに言い聞かせる。他方、『書類作業缶詰用』黒子(p3x008597)は部隊員達に含めるように伝えながら人員の状態と戦意のほどを確認した。臨機応変。伝えるは易く、達成はもっとも困難な行為でもある。少しでも意欲に難があれば、作戦への影響は計り知れないからだ。
「よっしゃ、キャプテンとアタシ達前衛は前、後衛は後ろ、タンクは殿と先頭! 一気にコアまで駆け抜けるぜ!」
「いい勢いだ、ついてくぜヒヨッコ!」
ユウキの声に応じて、リーゼントとフォロワー達が拳を掲げ、前進する。
「全員生きて帰ったら、御褒美に酒盛り&焼肉食い放題だ。無論、全て俺様の奢りでな。派手に行くから覚悟しておけ!」
Tethの言葉に気合を入れ直した小隊員達は外縁に屯する『葬滅隊』の面々を確認すると、ユウキ達へと一直線に向かう突撃隊へと攻撃を叩き込む。Tethの中距離殲滅攻撃をサポートするように、小型の爆炎が幾つも花開き。必然、その明かりは隠れている闇をも照らそうとうごめいた。
「やるじゃねえか邪魔モン共が! だがこんなもんじゃ」
「あー、そういうのいいッス。私達の狙いは何より後ろでふんぞり返って魔術に夢中なあの人達でスから」
「突撃部隊は私と遊んでもらおうかな。私達は医者だ、毒を使うなら先に倒しておいたほうがいいんじゃないか?」
攻撃を受けても構うものかと起き上がった突撃部隊は、イズル達妨害メインの小隊に思わぬ足止めを喰らい、続けざまにミミサキが遠巻きに術式の準備に入った部隊を狙って誘導しようとしたのだから、たまったものではない。外縁部に於ける必勝戦術のひとつを唐突に潰され、突撃部隊は呻く。
「戦術の一つふたつを潰された程度で騒ぎ立てるとは、貴方達は戦いを知らぬ乙女のようだ」
「ニアサーの装備に惚れ込んでついてくる仲間達は、その程度じゃ遅れを取らないよ。……ヴィトルト、調子出てきたみたい?」
ヴィトルトの毒舌に、きらびやかな武装に身を包んだニアサーがあわせ、球雷を叩き込んでいく。近傍の部隊と付かず離れず戦うことで戦場に蟠る毒から仲間を守り、積極的に攻めにかかることで戦意高揚を並行して行う。
ひとの心は理解しづらいが、ニアサーはひとがどう動き、どうすれば焦るのかを承知しているのだ。
「にーちゃんたち、こいつらぶっちめて先に向かうよ!」
「小隊、前進! リーゼント達を前に進める我々が、リーゼントに後れを取るなど言語道断だぞ!」
ルージュとヴラノスは混乱する戦場に突撃し、引っ掻き回しながら前進する。ルージュが叩き込んだ魅剣が炎を生み、火に包まれた者を小隊員が追い打ちで叩き伏せていく。
遠距離から飛んでくる術もものともせず、内側へ向かうものは足取りを止めず……そして、追撃を許さぬがごとくに黒子とニアサーの部隊が立ちふさがった。
●外縁乱戦、内部発破
「やばくなったら大声を上げて下さい、私が敵をひきつけまス! ひきつけた連中は集中攻撃で各個撃破、私が死なないことが諸君と、仲間を死なせない最善行動でス。オーケー?」
ミミサキは小隊員と仲間達に聞こえる声を精一杯張り上げる。これがMMOでなければ、その声量を出す前に呼吸が乱れていそうだった。バーチャル万歳。
「無茶すんじゃねえぞミミサキ! 俺様のところに来たやつは全部ブッ倒してやるからよ!」
「危険になったら声を、はミミサキ様も同じですよ。私が治療に回りますし、余裕があるなら動きを徹底的に邪魔していきます。本命は中ですから」
Tethはミミサキによって移動を余儀なくされたチャージ部隊を刈り取る形で前進すると、小隊員達とともに鏃のように突撃し、敵軍を食いちぎるように散らしていく。ショートチャージのそこそこ強い術に切り替えた者もいるが、主義を捨てた者の攻撃など、『B級以上』の実力で暴れまわる彼女相手には意味が薄い。
行動阻害に走った術士達は、すかさず黒子による妨害術式に巻き込まれ、詠唱ひとつ喉から吐き出せず、一歩も動けず、どころか傷がじくじくと治癒を拒絶するではないか。
「この毒、状態異常を与えている……ワケではないようだね。となると、最初から無効化するか、耐えるか……かな?」
「少なくとも、ここに撒かれているものは強い致死性を持ちつつ抜けるのが極めて速い、というタイプなのでしょう。殺害にはうってつけですが、貴方達や私のように訓練された者には効果は限定的です。悪手を打ちましたね」
「つまり?」
「こんなものに頼らなければ勝つ自信がない臆病者ということですよ」
イズルの推測を補足したヴィトルトは、この毒を解除する必要はなく、だからこそ治癒と無力化が重要である、と説いた。そして、そんなものに頼ったことを後悔させるとも。
ニアサーはそんな彼の、二面性を感じさせる姿に楽しげに合いの手を入れると次々と攻撃を叩き込んでいく。
「弱ってるヤツを遠慮なくブッ叩け! 敵の士気を命ごと磨り潰せ! GO! GO! GO!!」
「隠密部隊のあぶり出しに成功。一気に殲滅し、治療に移行します」
Tethは残されたチャージ部隊めがけ前進しつつ、弱っている連中を見逃さない。突撃部隊が半壊した今、行動阻害部隊が一番刈り取りやすい。彼等を護るためか、隠密部隊がするりと現れ、Teth達を狙ったのを黒子は見逃さなかった。
「トラップが邪魔なら爆破して無くしちまえば問題無いよな!!」
「馬鹿め、その爆破で一方的に身を灼かれるのは貴様等だ! その薄汚い手を退けぃ!」
ルージュ達小隊が炎を頼りにトラッパーの何名かを蹴散らすのと、ルージュ部隊の一部を重装兵が叩き伏せたのとは同時だった。頑丈そうな防具一式、鈍重ながらも確固たる意思が見える目元に一瞬だけ、本当に一瞬、部隊員達に怯えが走った。振り下ろされる盾は容赦が無い。
「なれば、守りが如何に硬かろうが、魔力を削がれれば痛いのはお前とて同じということだ! 分かっているなヴラノス小隊! このような鎧に着られた臆病者は、諸君の敵としてものの数ではないということだ!」
だが、重装兵を叩き伏せたのはヴラノスの血華の舞、そして後続の小隊員による魔力遮断を重視した攻撃の乱舞だった。底を打った魔力は、その機能維持のため肉体を蝕む。畢竟、守りに全てを費やしたその兵隊は、魔力の枯渇からくる激痛に膝を折らざるを得ない。
「集団戦だから参考にならねえが、なるほど魔力を奪いに来るか……うかうかしてられねえな」
「何言ってんだよキャプテン! あんな相手に当たってもキャプテンならきっと大丈夫さ!」
仲間の動向にも鋭く視線を向け、己の血肉とする。キャプテン・リーゼントの往時の強さとはここにあったのか! ユウキは人知れず、彼に対する感動をより深いものとした。
「リーゼントのにーちゃん達。ここはおれ達に任せては先に行ってくれよな。大丈夫、心配しなくても、ここを制圧したら後から追いかけるぜ!!」
「小型地雷にふっとばされながら言うセリフじゃねえんだけどな。でもその意気、見上げた根性、受け取ったぜ」
ルージュが爆風の向こうでサムズアップすると、リーゼントは苦笑いひとつして前を向いた。
「奥の方でモグラ決め込むなら、ニアサー達が潰しに行くよ」
「私は残りの殲滅を協力してやりまスので、おかまいなくー」
入口の方からは、ニアサーの物騒な言葉と雷球が飛んできて、続けざまにミミサキののんきな言葉が続く。外縁部の趨勢はぼちぼち決しそうだ。……となれば、戦況はコア部へともつれ込むわけだ。
●プラント内の死闘
「皆! 知ってるか! 此処に居る敵は最低でB級闘士相当らしい!」
コアへと続く唯一の扉を前に、ユウキは声を張り上げる。罠を避け、外縁部隊の猛烈な妨害を凌ぎ、負担は最小限なれど気力半分でついてきているフォロワーが多いなかで、彼女の声はことさら響く。
「つまりよ、コイツらをキャプテンの力を借りずに倒しちまえばよ、アタシ達はB級闘士と同じくらい強いって事さ! それって格好良くないか! 誇れないか! 滾らないか!」
しばし、リーゼント共々沈黙が返ってくる。言い過ぎたか? と緊張の色を見せたユウキはしかし、直後に湧き上がるフォロワー達が扉を拳一つでブチ開ける姿を見た。
「すげえや……皆、この勢いでブッ倒そうぜ」
「誰をだよ、小娘」
勢いよく踏み込んだユウキの頭部に、ライフル弾が噛み付いた。こめかみを噛みちぎった弾丸は壁に突き立ち、射手は冷徹な目をしてフロアの奥から睨みを効かせた。
「おう、リーゼントの。足踏みしてる間に腑抜けたか? それともそこのガキに吹き込まれたかよ」
「あ゛? 知らねえうちに遠くからチクチクやる悪趣味に染まった馬鹿は覚えてねえなあ!」
リーゼントと射手、互いが暫くにらみ合いを続け。その均衡を破ったのは、当然ながらユウキだった。
「――ド派手にロックンロールだ! 一発で仕留められないポンコツが、キャプテンに偉い口叩くんじゃねえ!」
「勝ち確の状況で勝ちを拾えないアホは、リーゼントどころか俺様達だってどうにもできねえぜ! 突っ込め、突っ切れ、踏み潰せ!」
ユウキの声に、後から追いついたTethが叫ぶ。背後から響き渡る激闘の音を背景に、ユウキは盾を構えて真っ直ぐに突っ込んでいく。銃弾を真正面から受け止めつつ、返す一手は相手のミスを誘うもの。つまりそれは、次に届くリーゼントの刃を避けられないということで。
「敵将取ったり! ……キャプテンがな!」
「我ら十人なれど、その力は万軍を超える!! 進め、そして穿て、滅びを望む愚か者に、我らの戦を刻みつけろ!!」
ユウキの宣言に、そしてヴラノスの激しい言葉に背を押され、数で圧倒し始めた面々が一気にコアへと押し寄せる。
最後の一体、シャドーレギオンがノイズとなって散った後に、イレギュラーズ各々の眼前に「Quest Cleared」のアイコンが浮かぶ。
「ヴィトルト君の実家は喫茶店だ。これからそこで、コーヒーをおごらせてほしいな」
「……貴女はなぜ私の実家のことを……?」
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
熱意と情熱がその他諸々の状況をブチぬいていきました。爽やかな秋風のようなアレです。
GMコメント
ヴィトルトさんが「こんなこともあろうかと」しちゃったからなー! 戦場に出ないわけにはいかねえんだよなー!
リーゼントさんはほら、A級が尻込みしてるとか最高にダサいから……。
●成功条件
・第七薬理研究所の奪還
●小隊指揮について
・このシナリオには小隊指揮ルールが適用されます。
PCは全員小隊長扱いとなり、十名前後の配下を率いて敵部隊と戦うことができます。
・兵のスキルや装備といった構成内容はおおまかになら決めることができます。
防御重視、回復重視、機動力重視、遠距離砲撃重視、特定系統の非戦スキル重視……といった感じです。細かいオーダーは避けましょう(プレイング圧迫リスク回避のため)
・使用スキルや戦闘パターンの指定は不要です。(プレイング圧迫リスク回避のため)
・部下の戦意を向上させるプレイングをかけることで、小隊の戦力が上昇します。
先陣をきって勇敢に戦って見せたり、笑顔で元気づけたり、料理を振る舞ってみたり、歌って踊ったり、格好いい演説を聴かせたり、効率的な戦術を指示したりとやり方は様々です。キャラにあった隊長プレイをお楽しみください。
・兵のデザインや雰囲気には拘ってOKです。
自分と同じような服装で統一したり、自分の領地にいる戦力を選抜したり、楽しいチームを作りましょう。特に指定が無かった場合、以下のデフォルト設定が適用されます。
●第七薬理研究所
OPにあるとおり、わりとヤベー施設です。
戦場は『外縁部』『施設内』『コア・ユニット』の3層に分かれています。
……が、相手方は割と好き勝手動いているのでコアに到達する難易度は高くありません。
コア・ユニット以外では常に毒ガスと病原体が発生しており、毎ターン「毒系統」いずれかに相当するダメージが発生します(BS付与ではありません)。
これは抵抗値や『無効』で対応可能です。
後述しますが、ヴィトルトはコレに対する対抗策を有します。
『葬滅隊』は基本、これらの不利を蒙りません。が、高抵抗とか無効ではないのでBSはきっちり入ります。
●『葬滅隊』外縁防衛隊×50
単純に5小隊分ってところです。編成はそれぞれ「突撃」×2、「術遠行動阻害」「隠密暗殺」「長チャージ超火力」を主とする部隊になります。小隊長達は特に名乗りません。
・突撃隊は槍や近接武器で突っ込んできます。小隊長は部隊中心部で戦意高揚バフをばら撒きながら死を恐れぬ突撃をしてきます。突破力が高め。
・術遠行動阻害隊は、ダメージよりステータス低下系BSを叩き込んできます。代わりに威力控えめ。典型的な後衛タイプ。
・隠密暗殺隊は気配遮断、ジャミングなどを駆使してきます。『呪殺』『必殺』『防無』に警戒しましょう。
・長チャージ超火力部隊は、攻撃を撃たせないで撃破したいです。こいつら、最悪味方を巻き込んで超威力叩き込んできます。めっちゃ危険。
●『葬滅隊』内部防衛隊×20
2小隊分。
室内であることを利用したトラップメイカー達で、本人達が倒されてもトラップが残る厄介な性質を持ちます。ほっとくと『罠設置』でガンガン罠を作ってきます。
戦闘が弱いかというとそうでもなく、重武装タンカー隊がトラップメイカーを護る格好になっています。
●『葬滅隊』コア防衛隊×10
ユウキさん(参加した場合)とリーゼントはここに突っ込みます。途中の内部防衛隊の妨害対策も必要です。
この部隊は(リーゼントが部隊にいる補正もあり)かなり精強で、この部隊内で役割分担が成立しています。
また、全員が『最低でB級闘士相当』の実力を持ち、マトモにぶつかれば最終的に数的劣勢に立たされるでしょう。
如何に戦意を高めるかが特に重視されます。
●ヴィトルト・コメダ
拙作『<フルメタルバトルロア>心の底を歪め狂わせ』に登場。倒されてDARK†WISHから解放されました。
彼の対処により、ニアサーさん(参加した場合)の小隊と直近1小隊は戦場効果を蒙りません。
戦力としてはそれなり、今回はスライム状の装置とかはなく単純に薬などでの支援となります。
●キャプテン・リーゼント
拙作『<フルメタルバトルロア>突き上げた拳は壁ばかり叩くから』にて登場。経緯は同上です。
A級闘士だけあり、B級程度は単体なら相手になりません。が、数の暴力を警戒する必要があります。
彼と一緒についてくる小隊員は『リーゼント・フォロワー』、上記シナリオの荒くれ者達なので実力はちょっと高め。
●小隊編成ルール
関係者の加わらないその他部隊について、個人の能力に『PCの有する無効系能力』が反映されます。
部隊長が『毒無効』をもっていたら全体に適用されます。付与スキルによる無効なども同じです。
※重要な備考『デスカウント』
R.O.Oシナリオにおいては『死亡』判定が容易に行われます。
『死亡』した場合もキャラクターはロストせず、アバターのステータスシートに『デスカウント』が追加される形となります。
現時点においてアバターではないキャラクターに影響はありません。
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
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