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シナリオ詳細

<グランドウォークライ>堕天ノ使徒 -Armaros-

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


「あぁ――素晴らしい……! これが『力』! 遍く障害を討ち滅ぼす暴力!」
 場所は鋼鉄帝国首都スチール・グラード。その内にある貿易街フェッルムにて、暴虐と破壊が巻き起こっていた。
 天使を想起させる純白のカラーリングと、アクセントとして映えるの禍々しき漆黒のネオン。背中には二対の翼の如き飛行ビット兵器に、手にするのは黒白の双槍。無骨なる騎士の如き表情を彫り込まれた人型機兵――。
「さぁ有象無象達よ、我が『アルマロス』の前に砕け散るがいい!!」
 同時に、背中の飛行ビット兵器より放たれるのは無数の黒き光線。網目の如き細かく鋭い砲撃が、首都の兵隊たちが操る人型ロボットとパワードスーツの動きを縛り付ければ、次の瞬間にはその手に握り込まれた双槍が閃く。
 激しい爆発と轟音。
 最早その様は悪逆無道。天使とはとても言えない、悪魔とさえ言っても過言ではない様子が生み出されていた。
「ハハハハハ!! 蹂躙とはこれほどに心地の良いものだったのか! ディアナ様、感謝致しますぞォォッ!!」
 恍惚とした雄叫びをあげるのは、かつては鋼鉄の警護を担当していた騎士イェルハルド・クランツ。かつては質実剛健とした実直かつ真面目な男だったが、最早その面影はとうになく、下劣な野獣の笑みを貼り付けている。
「フンッッ!! ヌゥアァァッ!!」
 まるで己の力を、技を誇示するかのようにその巨体を振るうイェルハルドもといアルマロス。共に制圧へと訪れた味方さえも巻き込まんとする勢いだ。
「この『アルマロス』にはあらゆる神秘は通らん!! 圧倒的な暴力の前では、小細工などは意味を為さんのだァァーーッ!!」


 R.O.O内にて。
 自らの王国を手に入れるため、シャドーレギオンを生み出し暗躍していた『聖頌姫』ディアナ・K・リリエンルージュだったが、イレギュラーズ達の活躍により計画は崩壊。ヴェルス率いるゼシュテリオン軍閥の拡大を促すだけになった。
 この状況に痺れを切らしたディアナは、その全力を以て首都スチール・グラードをシャドーレギオンの巣窟へと変えてしまったのだ。
 首都の中心である城は桃色の水晶で装飾されたディアナキャッスルへと、並み居る精鋭たちもシャドーレギオンへと置換されている。
 主要人物たちもディアナキャッスルの中で囚われ、闇の力で生み出された偽物達が首都を牛耳る世紀末状態となっている。
 たとえ内乱が仕組まれたものだとしても、ヴェルスをはじめとする鋼鉄民たちの愛する鋼鉄が穢されることは許されない。これまで仲間にしてきた軍閥たちと力を合わせ、ギアバジリカの全力をもってDARK†首都への進撃が開始されたのだった。
「敵はほぼすべて『シャドーレギオン』だ。それもDARK†WISHだけを抽出されて分裂した個体だから、倒せば砂糖菓子のように消えてしまうだろうな」
 芸術品のような筋肉を持つ黒猫獣人『ストームルーラー』ニグレド(p3y000226)は、己の長い髭を弄びながらそう告げた。

「――さて、今回諸君らに攻略してもらうのはフェッルム貿易街という要所だよ。既にシャドーレギオンの操るエクスギアエクスによって占領されてしまっていてな。鋼鉄の兵士ではどうにもできん状況にあるのだ」
 ニグレドは、周辺地図やシャドーレギオン達の情報をイレギュラーズ達に開示していく。
 エクスギアエクスとはパイロットが搭乗することで操作する大きな人型ロボットだ。搭乗者の身体的特徴や能力をそのまま反映し、誰もが自在に操れる専用機へと変貌する。
「敵の機体名は『アルマロス』。神秘攻撃に対する強烈な耐性、双槍と行動阻害の光線を操る戦闘特化機体のようだな。搭乗者の戦闘経験も相まってそれなりの苦戦を強いられるかもしれない」
 強いて突けそうな弱点といえば、『回避性能と行動速度、状態異常への抵抗がやや低い所』だろうか。強力な武装を搭載したがゆえに、俊敏な動きを苦手としているのだ。
「これから諸君らには専用のエクスギアエクスを配備される。これに乗って敵部隊を撃破していってくれ! なぁに、吾輩は特に心配はしていない。諸君らは歩く特異点! 慢心でもしない限り、負けることはないだろう! 吾輩も友軍として同行するしな!」
 堕天使降り立つ戦場へ、いざ。

GMコメント

●成功条件
①敵機体『アルマロス』の撃破
②敵兵の全滅

●地形
貿易街フェッルム
 スチール・グラード内にある貿易街の一つ。他国からの様々な物品が取引される場所でした。
 現在はシャドーレギオンの侵攻によって崩壊しており、瓦礫がそこら中に散乱しています。
 そのせいか見通しは良く、隠れらそうなものは殆どありません。
 敵味方双方に『命中』の僅かなボーナスが入ります。

●敵の情報
①『アルマロス&イェルハルド』×1
 闇堕ちした騎士イェルハルド・グランツが操るエクスギアエクス。
 まるで天使のような構造をしていますが、どことなく禍々しいです。闇堕ちしてます。
 あらゆる神秘攻撃に対して強烈な耐性を持っていますが、回避や反応、状態異常は低めです。

攻撃手段(一例):
・呪われし者の翼:飛行ビット兵器による範囲攻撃。黒く細い光線を大量に発射し、敵の行動を阻害します。
・磔刑の双槍:手にする二つの槍による激しい攻撃を行います。
・ゴルゴダの叫び:槍を地面に付きたて、漆黒の衝撃波を放ちます。
・黒炎:槍に漆黒の炎を纏わせ、攻撃力・防御技術を上昇させます。

②『エグリゴリ』×15
 純白のパワードスーツを纏ったシャドーレギオン達です。
 基本的にはライフルや手榴弾・煙幕弾・回復弾などによる『アルマロス&イェルハルド』のサポートを行いますが、近づけば自分たちも巻き込まれるということが分かっているので大幅に距離を取っています。
 こちらは物理攻撃に強い耐性を所持しています。

●友軍
『ストームルーラー』ニグレド
 縦にも横にもでかい猫(精霊種)のR.O.Oアバターです。
 高反応・物理攻撃メインのアタッカーとしての動きをします。
 大曲剣を持った黒い機体で参戦します。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●超強襲用高機動ロボット『エクスギア・EX(エクス)』
 エクスギアEXとは大型の人型ロボットです。
 『黒鉄十字柩(エクスギア)』に附随した大型オプションパーツを超複雑変形させそれぞれの戦闘ロボットへと変形します。
 搭乗者の身体特徴や能力をそのまま反映した形状や武装をもち、搭乗者にあわせた操作性を選択し誰しもが意のままに操れる専用機となります。
 能力はキャラクターステータスに依存し、スペックが向上した状態になります。
 武装等はスキル、装備、アクセスファンタズムに依存しています。
 搭乗者のHPがゼロになると破壊され、多くの場合爆発四散します。
 搭乗者が装備する剣と同様の剣で斬りかかったり魔術砲撃をしたりと、搭乗するキャラクターによってその戦闘方法は変わるでしょう。
 もしお望みであれば、普段と違うデザインをオーダーしてみるのもいいでしょう。
 ※すべてが専用にカスタムされているため、別の人物が乗り込んだり敵のエクスギアを鹵獲し即座に使用することはできません。逆もまた然りです。

※重要な備考『デスカウント』
 R.O.Oシナリオにおいては『死亡』判定が容易に行われます。
『死亡』した場合もキャラクターはロストせず、アバターのステータスシートに『デスカウント』が追加される形となります。
 現時点においてアバターではないキャラクターに影響はありません。

  • <グランドウォークライ>堕天ノ使徒 -Armaros- 完了
  • GM名清水崚玄
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年09月23日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

梨尾(p3x000561)
不転の境界
ナハトスター・ウィッシュ・ねこ(p3x000916)
叫ぶ流星
ウルリカ(p3x007777)
人造
アンジェラ(p3x008016)
当機、出撃す
カノン(p3x008357)
仮想世界の冒険者
アズハ(p3x009471)
青き調和
H(p3x009524)
ダークナイツ
天狐(p3x009798)
うどんの神

リプレイ


 ――その地は、破壊の残滓に覆い隠されようとしていた。
 かつて貿易街として繁栄を見せた姿は打ち砕かれ、数多の瓦礫が墓標のように乱立している。大地には機能を停止したパワードスーツの残骸たちが打ち捨てられ、そこかしこから立ち上る煙が、冷淡にそれらを見下していた。
「これ程の貿易街、復興するのにどれだけの月日と人々の努力が必要になる事か……」
「貿易街ぶっこわすロボとか全然すごくないしありがたくなーい☆」
 響くのは、『星の魔法少年☆ナハトスター』ナハトスター・ウィッシュ・ねこ(p3x000916)と『仮想世界の冒険者』カノン(p3x008357)の声だ。
 己の搭乗するエクスギアEXのモニターに映し出された現状は、とてもではないが看過できるものではない。
 その言葉に、友軍である『ストームルーラー』ニグレド (p3y000226)の乗る機体も「まったくだ」と頷く。美食が失われる可能性は、彼としても好ましくない。
「まさか俺が人型ロボットを操る日が来るとは思わなかった。それに自分専用の機体って、ロマンだよな?」
「これは我が世界のヨロイに似てますね。また乗れるとは懐かしいです」
「んー!こういうのワクワクしてくるのぅ!」
 一方 で『アルコ空団“路を聴く者”』アズハ(p3x009471)、『きつねうどん』天狐(p3x009798)、 『人造』ウルリカ(p3x007777)の三人は機体への関心を零していた。
 皆同じものに搭乗しているはずなのに、近接型・遠距離型・支援型・耐久型とその容貌は多様だ。それは裏を返せば、『打倒にはそれほどの戦力が必要である』ということだった。
 同時、イレギュラーズ達のエクスギアEXが数m先の爆発音を認識する。続いてコックピットへと表示されるのは『ターゲット検知』のメッセージ。未だ戦闘距離ではないものの、それは徐々に接近しつつあった。
「なんだァ? あのハエヤローは。ブンブン飛び回ってずいぶんご機嫌じゃねーか」
 徐々に姿を見せるアルマロスを視界へと収めた 『耀 英司のアバター』H(p3x009524)の機体から、確かな苛立ちの孕んだ声。
「あちらも気付いたようですね。……神秘に耐性持ちとは厄介な堕天使さんです」
 対してその側に立つ『ただのしがない』梨尾(p3x000561)の声は冷静だった。しかし瞳の中には確かな意志が在り、焔のように、或いは月のように静かに輝いている。
 エクスギアEXのモニターには予測される接敵秒数が表示され、それは徐々に減りつつあった。間もなくこの街を打ち壊した元凶達との戦が始まる事実に、イレギュラーズ達は気を引き締める。
 ガシャガシャと硬質な歩行音が断続的に鳴り、堕天使達が近づく。
 緊迫、高揚、義憤、利己、奉仕、傲慢――敵も味方も、各々の内に抱く感情が渦を為す。
「インターフェイス正常、武装展開確認、エネルギー残量99.63%、周辺地形での障害なし……アンジェラ機『エボルヴ』、発進します」
 淡々とした、けれどどこか早口な『汎用型アンドロイド』アンジェラ(p3x008016)の声が響くのと、奪還戦が幕を開けたのはほぼ同時だった。


「まずはその装甲、穿つとしようか!」
 凛とした声と共に、ニグレドの繰る黒のエクスギアEX『テンペスト』が疾走。加速の勢いのままに暴風を纏う大曲剣がアルマロスへと殺到する。
「ク、ハハハッ!」
 ガキン! と火花が散る。大曲剣の攻撃は、漆黒の双槍によって防がれたのだ。そのままニグレドが即座に後方へと退避すれば、それを追うようにアルマロスが肉薄!
「ムゥン!!」
「ぐ、ゥッ!!」
 瞬く間に双槍に黒炎が纏わりつき、獲物を喰らう獣の如き猛攻がニグレドを吹き飛ばす。
「打ち砕きます。連打」
 しかし、反撃は即座に行われた。
 アルマロスの肉体へと叩き込まれるのは、純白の装甲と黄金のアイカメラが印象的なエクスギアEX――ウルリカの搭乗する『フォーセブン』による掌底。
 防御の暇も回避の隙もなく、確かな一撃を装甲へと受けたアルマロスが僅かに揺らぐ。
「ハエヤローが……落ちやがれぇッ!」
 そしてそれは確かな好機だ。騎馬兵の如き様相を呈するエクスギアEX『キャバルリィ』から放たれるのは多方向からの掃射。響き渡る怒号は、紛れもないHのものだ。
 移動と共に射たれるその射撃は失敗の確率は高いものの、凌ぐことを許さない。
「この素晴らしさが理解できんか……痴れ者がァッ!」
 苛立ちの声がアルマロスから響く。その前に立ちはだかるのは、展開型の装甲を携えた梨尾のエクスギアEX『ホムスビ』。
「あなただって、命がどういうものか理解ってないんじゃないですか?」
 ごう、と炎の燃える音がした。
「建物は時間をかければ建て直せる事が出来る……でも個人の命は戻ってこないんです。家族と、大切な人と別れる悲しみを知らない暴力ゴリラロボなんかに負けません!」
「貴ッ……様ァァ!!」
 それは梨尾の操る数多の技の一つ。目に見えぬ心に焔を送り、炎上と共に意識を絞る錨火は、たしかにアルマロスの、イェルハルドの敵意を釘付けにする。
「わわっ! 猫フィールド! 猫フィールド! 皆の機体をやらせはしないよー☆」
 その隙にナハトスターの操る可愛らしいデザインのエクスギアEX『NyarAdept-ねこ』から光が溢れれば、どこからともなく無数の猫が召喚された。彼らの鳴き声と共にきらきらとした粒子が降り注ぎ、イレギュラーズ達の機体を包んでいく。
「おぉ……! 助かる! 吾輩の損傷が修復されていくぞ!」
「へへっ☆ どういたしまして! 絶対に生き残らせるからねー!」
 一方エグリゴリ達へと対峙するのは、カノンの搭乗する小型の人型機体『クロス』と、アズハの搭乗する燕尾服のようなアーマーを持つ『コンダクター』だ。
 アルマロスの範囲攻撃に巻き込まれるのを忌避した彼らは大きく後方へと陣取っており、様々な銃火器を携えている。
「さてと。小細工など意味を為さん、と言うのなら当然そちらの小細工も許されませんよ、ねっ!」
 クロスの周囲に浮遊する魔力球が煌めけば、紫の色彩を持つ稲妻の網が迸る。超長距離までを射程とするその妨害魔法は、エグリゴリ達のパワードスーツの機能を阻害させ、動きを奪うには充分すぎる力だ。
「あぁ、敵の数が多いのは不利だ。まずはそれを覆す!」
 くい、とコンダクターの指が上がる。瞬間にして訪れるのは灼熱と負毒の雨。円舞曲の如き軽快さ、しかして交響曲にも似た蹂躙は、クロスの波状攻撃と相性抜群だった。
 焔はより強く、毒はより苦しく進化していく。
「ぐぅっ……なんだこれは!!」
「毒……? いや、神秘による干渉?!」
「ええい、撃て撃て撃て!! アルマロスを援護しろ!」
 銃器が火を噴き、弾丸の乱舞が巻き起こる。あるものは広範囲に影響を及ぼす掃射を、あるものは行動を阻害する特殊弾を、イレギュラーズたちへと打ち込んでいく。
「圧倒的な暴力なんぞ取るに足らぬ! 逆に圧倒的なデリバリー力で押し切ってくれるわ!」
 しかし天狐の搭乗する白狐獣人型のエクスギアEX『U-don』はそれらを無視し、アルマロスへと超巨大屋台で殴り込みに行く。
 確かに範囲攻撃は厄介だ。何名かの仲間も被弾しているし、連打されたら劣勢になるだろう。
「みだれうちじゃー!」
 ズガガガガ!! と外装ごと削り取る勢いでアルマロスへと屋台が叩きつけられる。それは異常な程の火力だった。暴力に心酔するアルマロスでさえも、凌ききることのできないほどの。
「なんだこれはッ……?! エグリゴリッ!! 何をしている……回復しろォッ!!」
「申し訳ありません!! 身体が、動かず……ッ!」
 何かに縛られているかのように、エグリゴリ達は構えた銃器の引き金を引くことができない。通常であればその銃口からは支援弾薬が発射され、アルマロスの損傷を癒やしたのだろう。
 だが、クロスとコンダクターによって、それは無効となった。
「……」
 かといってこのまま長期戦になるのはあまり好ましくない――と、それまで空中で透明状態だったアンジェラ、もとい『エボルヴ』は思考する。
 この状況における最適解、それは。
「当機体は攻勢が主体であると認識しています。であれば其れに準じ効果的な判断を下し実行します」
 エグリゴリの一刻も早い殲滅。
「な……いつの間にッ?! ぐあぁぁぁっ!!」
 エボルヴが実体を表したのはエグリゴリ達の背後。動くことのできないエグリゴリ達は当然対応することなどできず、放出された無数のミサイルの最中へと飲み込まれた。
「ぐ……は、はははァっ……! なかなかやるではないかイレギュラーズ……しかしッッ!! この暴力ッ、この剛力をッッ! 易々と打ち破れると思うなァァッ!!」
 ビリビリと空気を揺らす咆哮がアルマロスから挙げられる。そこに在ったのは『力』に飲み込まれた男の、闇に堕ちた傲慢さだけだ。
「ハッ! 飛ぶ上に喧しいたぁ……こりゃぁ『コバエヤロー』のほうが相応しいかもな」
「……ふむ、剣士型のアバターにしなかったのが悔やまれますね……」
 獣か、堕天使か、或いはそれ以外の醜悪か。
 下賤な怒号と濃厚な闘志を燃やすアルマロスと、イレギュラーズ達の鬩ぎ合いは続いていく。


 ――閃光が大地を抉り、黒炎が空気を灼く。磔刑の双槍による攻撃は激しく、衝撃波は貿易街に更なる瓦礫を増やしていく。アルマロスという機体がどれほど『暴力』に特化しているのか、そしてイェルハルドという男がどれほど『力』に渇望しているのか、それを察することはイレギュラーズ達にとって、そう困難ではなかった。
「ハァ、ハァ……!! ぜったいに、負けません……!!」
 幾度となく貫かれ、砕かれ、穿たれ、膝をつきそうになる度に持ちこたえ、仲間への攻撃を一身に受けてきた梨尾の『ホムスビ』は、その損傷が目立ちつつあった。
 騒霊の吸収能力、ナハトスターの回復、仲間たちの状態異常付与。それらを加味しても、アルマロスの攻撃は重い。
 既にエグリゴリ達は倒され、飛行ビットはカノン、H、アズハ、アンジェラの遠距離攻撃により撃墜されている。天狐の連続攻撃とニグレドの斬撃、そしてウルリカの打撃は分厚く張り巡らされていたアルマロスの装甲を剥がしつつあり、戦況は確実にイレギュラーズ優勢へと傾きつつあった。
 故に――否、或いは、だからこそ。
「足りない、足りない、足りないィィ!!」
 この男はそれを認めない。己の敗北を、屈辱を、不完全さを。
 『強くなりたい』という願いを歪められたイェルハルド・グランツの根底に坐す意志が、さらなる力をと熱望し、切望し、渇望する。
「むむっ! な、何か大変なことが起こる気がします!」
 研ぎ澄まされた直感から訪れる天啓、それを受けたカノンが口にした次の瞬間。
「オォォォ――!! 『鏖殺せよ』、アルマロスゥゥゥッッ!!!」
 咆哮が響き、アルマロスの周囲にエネルギーシールドが展開される。同時に双槍が合体し、一つの巨大な杖のような槍へと変形した。傷つけられた機体はグロテスクに発光し、周囲の瓦礫が黒く燃え上がり、その塵はアルマロスの持つ槍へと吸収されていく。
「アルマロスの変質確認。同時にエネルギー上昇反応有り。60秒後に大規模攻撃の到来が予測されます」
「うわっ! ほんとだ! これってすごくマズくない?!」
 アンジェラ、ナハトスターが自身のモニターに映る記載に声を零す。見れば、他のエクスギアEXにも似たような文言が表示されていた。
「賭けに出た、ってことか。小物臭プンプンさせてた割りには面白ェことするじゃねぇか」
 とHは皮肉げに笑い、
「……なら、アルマロスがチャージを終えるまでにこの壁を壊して倒さないといけないね」
「成程。第二形態ですか。了解です」
 アズハとウルリカは己の武装を構える。
「ふーむ第二形態……ハッ! ドロップするうどんも二倍になるかの?!」
「なに!? うどんが食べられるのかね?!」
 ふと覚えた疑問を口にした天狐にニグレドが食いつき、
「最後の一踏ん張り、ですね……!」
 ボロボロになった梨尾が、再びゆっくりと立ち上がる。
 モニターに映し出されるタイムリミットは決して多くない。イレギュラーズ達が互いに頷き、視線を交わせば、その力が振るわれていく。
「オラオラオラァァッッ!!」
 Hはこの上なく怒っていた。アルマロスの自分より悪っぽい行動に、美学のない蹂躙に、そして、彼自身でも自覚することのできない『何か』に。
「こんな暴虐、到底認められるものではありません……!!」
 カノンもまた、アルマロスの行動を認められないのは同様だ。力無き正義が無意味であるように、正義なき力もまた同じこと。
 義憤抱く二人の機体、キャバルリィとクロスの放った射撃と魔弾は、アルマロスのシールドに僅かな罅を生み。
「攻撃全振りでいいよね? いっくよー☆ ウィッシュ・スター・ランチャー!!」
「弾薬準備完了。投射、開始します」
 NyarAdept-ねこの持つステッキから飛び出す閃光のビームと、エボルヴが発射し上空で爆発した榴弾の破片が、亀裂を更に広げていく。
 ナハトスターもアンジェラも、これ以上の貿易街の崩壊は忌避すべきことだと理解している。再び復興し元の賑わいを取り戻すためにも、守るべきものを守るためにも、目前の悪辣は今ここで、確実に討たねばらならない。
 ――残り、30秒。
「システム、フルブースト。突撃します」
「うむ! 幸運チャージ完了じゃ! さて、気合入れてブチ抜いてやろうぞ!」
「行くぞ! このような機会、滅多にないからな!」
 続くように大地を駆けるのはフォーセブン、U-don、テンペストの三機。いずれも携える武器は異なるものの、胸に抱く思いはどこか似ていた。
 自分専用に調整された機体を操り、脅威へと立ち向かう。確かに目前の敵は強大だ、思い通りにさせればこの依頼は失敗になるだろう。
 それでも、あぁ、それでも――。
「(不思議です。私は、今……嬉しいと、感じている?)」
 この期待が、希望が、歓喜が、きっとできると囁いている!
 それは他のイレギュラーズ達も同じことだろう。必ず勝つ、守り切る、取り戻す――そのために此処にいるのだから。
 斬撃、打撃、連続攻撃。
 与えられる負荷によって、シールドの破壊は目前へと迫っていた。
「はぁ……」
 僅かに目を閉じて梨尾は、否、『父親』は想う。
 この身は決して死なせたくなどなかったのに、もう何度となく傷ついてしまった。最近はもう諦めかけていたが、それにしたって今回はやりすぎだ。
「……報いは、受けてもらうぞ」
 選択に後悔はない。戦闘なのだから傷つくは当然。それでも、彼は『父親』なのだ。
 灼熱が踊る。男の身を焦がす怒りが激しく叩きつけられたと同時。
 ばきり。
 堕天使を守る領域が、砕けた。
 ――残り、15秒。
「そんなに力に固執するってことは、それだけの理由があるんだろうな」
 アズハのマエストロが、静かにそのスナイパーライフルを構えて。
「すまない、とは言わない。これも仕事だ。為すべきこと、為すだけ」
 その『核』へと、確かに照準を合わせる。
 身に余る力を求め天へと向かったものは、その意思故に業火に灼かれる。たとえそこにどれほどの願いや想いがあれど、世の摂理は変わらない。
 力強く低い発砲音が響く。
 放たれた弾丸はアルマロスの頭部へと吸い込まれ、通り抜け、やがて。
「あぁ、アァァ、嫌だ、嫌だァァアアッッ!!」
 腹の底を叩くような轟音と瞬くほどの爆発が、『呪われし者(アルマロス)』を飲み込み、打ち砕いたのだった。

 ――ぽんっ!
 どこか気の抜けたようなポップな音が聞こえ、天狐、ニグレド、アズハ、カノンはそちらを見る。
「あぁ~、やっぱりひとつだけじゃったか」
「しかしこれは中々にモリモリだぞ!」
「これどういう仕組なんだ……?」
「すごい……! できたてほかほかみたいですよ!」
 そこには落ちていたのはなんと……! とり天ぶっかけうどん(特盛り)であった。
「戦闘終了。当機はこれより瓦礫撤去作業へ移ります」
「……私も、同行します」
「ボクもやるよ!☆ 皆お疲れ様ー!」
 一方、アンジェラ、ウルリカ、ナハトスターは瓦礫の撤去を行っていた。搭乗するエクスギアEXの力を以てすれば、ひどく容易いだろう。
「ふぁぁ……」
 そして梨尾は一人、エクスギアEXの中で背もたれに身体を預けていた。どっと疲労が身体へと押し寄せ、自然と舌がべろりと出てしまう。
 こうして貿易街フェッルムを巡る戦は幕を閉じた。多くの被害は生じたものの、これからゆっくりと元の姿を取り戻していくだろう。
 もう此処に、堕天の使徒は訪れないのだから。
 
 

成否

成功

MVP

梨尾(p3x000561)
不転の境界

状態異常

梨尾(p3x000561)[死亡]
不転の境界
ウルリカ(p3x007777)[死亡]
人造

あとがき

依頼達成お疲れ様でした!!これにて貿易街フェッルム、奪還完了です!
一部PCのエクスギアEXの名前はこちらで勝手に命名させていただきました。お気に召しましたら幸いです。
MVPは堕天使の猛攻を受けても幾度となく立ち上がったあなたに。

この度はご参加ありがとうございました! また機会があればよろしくおねがいします。

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