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シナリオ詳細

<濃々淡々・四葩>夏雲奇峰、宵ノ空

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●花盛り
「花火?」
「うん。ボタンは、花火って知ってる?」
「名前だけは、知っています。実際にやってみたことは、」
「そっか。春と同じ、だね」
「はい。夏は雪が降ることはありませんから」
 かき氷をしゃくしゃく食べ進めながら、『空を飛ぶ雪』コユキア ボタン(p3p008105)は絢に瞬き二つ。春を越えて夏がやって来た。八月も終わりが近い。秋がやってくるとは言え、夏の暑さは未だ健在、かき氷を食べて涼むのが吉だ。
「そういえば、この間のお祭りの時に、花火のお話をしましたもの、ね」
「うん、正解。ちょうど花火の時期と被っていたんだ。幸運なことにね」
 ボタンの横でかき氷を食べる『うさぎのながみみ』ネーヴェ(p3p007199)。そういえば、と思い出したように、ネーヴェは聞いた。
「花火大会は、どのようにして行われるのですか?」
「それはね――」
「こないだの、桜の精霊ちゃん達が関わってるんよ」
 『やんね、絢くん』なんて手紙を読み返しながら『暁月夜』蜻蛉(p3p002599)は笑って。
「もう、今はおれのいいところだったのに!」
「ふふ、堪忍ね。ついうっかり」
「それにしても、あの子達にまた会えるのね! 今から楽しみになってきちゃうわ~♪」
 聳え立つ大樹を眺めながら、『ヘリオトロープの黄昏』ジルーシャ・グレイ(p3p002246)は浮き立つ様子を見せて。
「それじゃあ行きましょ♪ フフ、アタシ達も夏が楽しみだったんだから!」
 はじめての夏。
 はじめての季節。
 たくさんの思い出を――共に作ろう。

●準備
「さて、其れじゃあ花火大会に向けた準備をしようか」
 絢は笑みを浮かべながら、花火大会の詳細を語りだす。
「花火大会は桜の精霊達の悪戯、のようなものなんだ。あの子達も妖怪ではあるからね」
「でも、大会になるほど、なら、」
「うん、そうだよネーヴェ。人々にとっては良い影響を齎しているんだ」
 頷き示し。絢は用意してきたのだという書類をめくりながら続ける。
「花火がよく見える場所は、また後程手紙を出すね。もしかしたら泊まり込みになるかもしれないから、準備だけは本当に念入りに」
「あら、ならアタシ達宿をとるべきなのかしら」
「その辺の手配はおれがやっておくよ。これでも境界案内人だからね」
「絢くんなら安心やね。それなら、うちらは浴衣の用意をして行きまひょか」
「うん、そうしてくれると助かるよ」
「……夏」
 ぽつり、呟いたボタン。
 手渡された花火大会の文字。
「……楽しみです」
 夏は、君のすぐそばに。
 さぁ。共に往こう。
 輝ける空の下へ。

NMコメント

●目的
 花火大会を楽しむ

 先日蜻蛉さんとネーヴェさんが参加してくださった夏祭の三日目、それが花火大会です。
 一般的な夏祭と何ら変わりありませんが、花火がある三日目は大盛り上がりなのだとか。

●花火大会
 桜の精霊達と職人たちの一年の楽しみのひとつ。
 夜空には色鮮やかな花火が咲き乱れるようです。
 瑞花のかたちをした白い花火をみた人は幸せになれるのだとか。
 絢曰く、「見惚れていたらいつも忘れる」だそうです。

●世界観
 和風世界『濃々淡々』。

 色彩やかで、四季折々の自然や街並みの美しい世界。
 また、ヒトと妖の住まう和の世界でもあります。
 軍隊がこの世界の統制を行っており、悪しきものは退治したり、困りごとを解決するのもその軍隊のようです。
 中心にそびえる大きな桜の木がシンボルであり神様的存在です。
(大まかには、明治時代の日本を想定した世界となっています)

●絢(けん)
 華奢な男。飴屋の主人であり、濃々淡々生まれの境界案内人です。
 手押しの屋台を引いて飴を売り、日銭を稼いでいます。
 屋台には飴細工やら瓶詰めの丸い飴やらがあります。
 彼の正体は化け猫。温厚で聞き上手です。

 此度もお呼び頂きましたので、皆様のプレイングに合わせる形で行動を共にしてくれます。
 前回同様、力仕事はある程度率先して行ってくれるようですよ。

●ロケーション
 夏。夏祭りの最中。お店のラインナップは
 ・白猫が営むわたあめ屋
 ・付喪神が営むお面屋
 ・雪女雪男夫婦のかき氷屋
 ・狐面の男のヨーヨー屋
 などなど。時間はたっぷり(リプレイ文字数はぎっちぎちですが)ありますのでやりたいこと、やってみたいことはガンガン行きましょう。

 朝方はゆったりのんびり、穏やかな祭の側面を見せます。買い出しを行うなら朝方がいいでしょう。
 夕方から夜にかけては祭が大盛り上がりします。花火も夜に行われるようですから、満喫するなら夜でしょう。

●絢からのメモ
「どうせならのんびりみられる場所も探してみたよ」
 とのことです。祭の喧騒の中でなくともみられるようですので、気になった場所があれば行ってみてくださいね。

 ・川 廻青の山を流れる清流。日が差し込まないため、蛍が飛び交っています。
    ここならば人が来ることもなく、レジャーシートが広げられるでしょう。
 ・海 美しい海です。透き通った水からは、魚が泳いでいるのが見えるでしょう。
    船にのって海からみることもできます。
 ・森 飴の森。きらきら陽光は落ちる中を散策してみるのもいいかもしれません。
 ・樹 以前登った桜の樹の上。
    街が一望でき、花火が近くなるでしょう。桜の精たちにも此処で逢えます。
 ・神社 人気もまばらな神社です。ソーダの販売などがあるようです。

●ご挨拶
 こんなに長ったらしい説明があるか。そう思いながら書きました染です。
 皆さんとの旅路に名前をつけて、四葩としました。紫陽花の花、お好きでしたよね。
 そわそわとしていた絢を連れて、花火へと向かいましょう。
 余談ですが、相談日数はマックスで設定してあります。のんびり相談してくださいね。

●相談場所
 絢が用意してくれた宿屋です。男女で取ってあります。
 今いる場所は絢とジルーシャさんのお部屋です。絢は祭のスタッフですので不在ですが、皆さんが決めたことならなんでも受け入れるので大丈夫です。
 余裕があればRPしてみるのもいいでしょう。

 以上となります。
 プレイング、お待ちしていますね。

  • <濃々淡々・四葩>夏雲奇峰、宵ノ空完了
  • NM名
  • 種別リクエスト(LN)
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年09月12日 22時05分
  • 参加人数4/4人
  • 相談11日
  • 参加費---RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

ジルーシャ・グレイ(p3p002246)
ベルディグリの傍ら
十夜 蜻蛉(p3p002599)
暁月夜
ネーヴェ(p3p007199)
星に想いを
コユキア ボタン(p3p008105)
雪だるま

リプレイ


「同じお祭りでも、一緒に来る人が違えば、気持ちもまた違います、ね」
『うさぎのながみみ』ネーヴェ(p3p007199)は隣に立つ絢に語り掛けた。
「そうだね。こんなに大人数で行くのは初めてだから、楽しみだ」
 先に準備を済ませていた二人の元へからころと下駄を鳴らしてきた『暁月夜』蜻蛉(p3p002599)は、隣の『空を飛ぶ雪』コユキア ボタン(p3p008105)と揃いの紫陽花のショールを見せ微笑んだ。
「ほら、お揃いやの♪」
「やーん、皆とっても素敵!  ホント、まるでお花が咲いているみたいね」
 綺麗に帯を結んだ『ヘリオトロープの黄昏』ジルーシャ・グレイ(p3p002246)は手を振る。
「皆さん、とてもお似合いです」
 もう花が咲いているようだとボタンは思う。それぞれが浴衣に、髪飾りに花をあしらっている。本当に、見麗しい花達だ。
「夏の終わりの花火、皆そろって見に行ける事、何よりも嬉しくてとても楽しみにしとりました」
「お買い物も、打ち上げ花火も、手持ち花火も楽しみです!」
「フフ、それじゃあ行きましょ! 時間は有限なんだから、目いっぱい楽しみましょ♪」
「はい。では、早速行きましょうか」

 晴れた昼下がり、入道雲は空へ上がる。けれどそれは雨の兆しなどではなく、今日を彩る夏の栞だ。
 碁盤の目の街並みに列をなした屋台は、昼時だというのに大賑わい。楽しそうな声が聞こえるものだから、ボタンの足は自然と浮ついてしまう。
 綿あめ、ヨーヨー、お面。見慣れた顔が見えて、蜻蛉はくすくすと笑って。
 ふと。以前訪れた屋台を見たボタンはジルーシャの裾を引き、指さし示す。
「こちらのカキ氷、とっても美味しいんですよ、ジルーシャさん」
「フフ、じゃあボタンちゃんのおすすめの味を買ってみようかしら」
 こんにちは、なんて声をあげれば、店の主は笑みを浮かべ五人分のかき氷を渡してくれる。
「かき氷、白い雪みたいで、ネーヴェちゃんと、ボタンちゃんみたい。ふふ」
「かき氷は、もう頭痛くなったりしません。前回で塩梅は、わかりましたから。ふふ、ボタン様と、お揃いの、まっしろ!」
 舌をべっと出してみても色付きはしない。夏の熱気に溶かし遊ばせ、その花は凛と咲く。まだ此処で立ち止まるわけにはいかないから、夏を見ていたい。

「あちらはお面ですか?」
「そうみたいだね。皆で見に行ってみようか」
 楽しさの種は何処にだって芽生え、五人を誘っている。誰かが興味を示してみれば、行ってみればいい。時間はまだまだ、たっぷりだ!
「似合う、でしょうか?」
「勿論よ! ネーヴェちゃん、可愛いわー♪  ね、ね、こっちのお面もつけてみない?」
「ボタンはこれなんてどうだい? 黒猫」
「うち?」
「ううん、おれ」
「絢くんいじわるやの。でも、ええよ。ボタンちゃんによぉけ似合う気、するもの」
「あ、あちらでお土産はいかがですか」
 照れ、困り。勿論それだけではないけれど。ボタンが指さした店。朝顔色の暖簾が五回揺れて。
「皆様とお揃い、何がいいかしら」
 絢と二人だけのお揃いだってあるけれど、今回は五人でお揃いだ。淡い青咲いた浴衣は、彼の青を思い出させて。
「この丸い紫陽花を模した可愛い鈴は…どない?」
「色違いでお揃い! ステキです」
 これなら、ジルさんと絢くんにも。絢は笑って頷いて。
 薄青、青、濃紺、紫、桃色。
 それぞれを手に購入したなら、五人だけのお揃いだ。
「紫陽花は色んな色がありますから」
「そうね! アタシ達、離れていたって見つけられそうじゃない?」
 帯に、髪に揺れるその簪。祭りの喧騒の中でも、互いに呼び合うように音が咲いて。
(でも。でもこちらの簪もきっと蜻蛉さんに似合うと思うのです……だから、こっそり)
 勿論、桜の精へのプレゼントも買っていく。だって楽しいことは、少しでもお裾分けしたいから。
「お祭りで買ったものはアタシが持つわ。折角素敵な浴衣を着ているんだもの、荷物で隠れちゃったらもったいないじゃない?」
 ふんす、と腕まくりをして見せたジルーシャに絢は微笑ましい笑顔を向ける。
「…って、何よ絢、そんな目で見て」
「ううん、何にも?」
「ちょっと、ハッキリしなさいよ! お花見の時はちょっと格好悪いところを見せちゃったけど、アタシだって男なんだから!」
「じゃあ、今日はジルーシャに任せてしまおうか」
 男二人、確かな友情だって芽生えて。


 夕闇は夜を包む。橙が空を染め、軈て妖達の本領たる『夜』を誘う。
「ほんにええ眺め……お空が近いわ」
「ハァイ、久しぶりね。また会えて嬉しいわ♪」
「あら、また来たのね?」「あら、また会えたわ!」
「嬉しいわ、嬉しいわ!」「楽しいわ、楽しいわ!」
 くるくると回る桜の精達は、桜を散らしながら舞い踊る。
「ふわふわの綿飴、とても、とても美味しいです、よ!」
「貰ってもいいの?」「食べちゃっていいの?」
「ふふ、勿論です。こちらはねこさんで、こちらはうさぎさん、です」
 それぞれが精霊達と、思い思いの夕を過ごす。
(皆、皆。幸せを探して、同じように、空を見上げているのでしょうか)
 空に咲いた大輪の炎花。人々の歓声が下から聞こえる。ネーヴェはその景色に瞬いて。
「お隣失礼しますね」
「おいで、可愛い子」「おいで、愛しい子」
「炎が花になるのは不思議です…」
 ボタンはぼんやりと、鮮やかに咲いた花火を見つめる。あんなにも美しい花を、見たことが無い。
 空に咲いた花。炎がはじける音。精霊たちの気まぐれな遊びは、職人たちの心を刺激する。だからこそ、また花火は生まれる。
 白い花火は、いつ弾けるのだろうか。なんて考えるのはやめにした。ジルーシャは、隣で表情を煌めかせる友の姿に笑みを浮かべて。
(白い花火…もしかしたら知らない間に見たのかもしれないわね。だってこうして皆ですごす時間が、もう充分幸せだもの)

「気を付けて帰るのよ」「気を付けて歩くのよ」
「もう、心配性なんだから! アンタ達も気をつけなさいね、火は危ないんだから」
「また来ます。今日はお邪魔しました、またね」
「また、綿あめを持ってきます、ね!」
「とても、とても、楽しかったです」
「じゃ、また来るよ。皆、こっち」
 絢は桜の精に頷き手を振り、四人を先導して、静かな川へと友を連れる。
 買っておいた花火を広げれば、絢がマッチを擦る。まだまだ、花火は延長戦だ。
「こんな花火も、あるんですね……!」
 両手に花火を持ちさながら二刀流、ぱっと笑みを咲かせたボタンにジルーシャはくすくす笑う。
「もう、ボタンちゃんったら、そんなに動いたら浴衣が崩れちゃうわよ!」
「…危ないですか危ないですねごめんなさい。楽しくてつい!」
「…なーんて、はしゃいでるのはアタシも同じ。楽しんじゃいましょ♪」
「皆様、こちらには面白そうな花火もありますよ」
 大きく手を振ったネーヴェの手には、簡易打ち上げ花火の文字。
 波打ち際に置いてそっと火をつければ、ぱん!と大きな音が響いて、思わずネーヴェとボタンの肩が跳ねる。
 ジルーシャは絢を盾にし、蜻蛉はそんな姿に笑みを浮かべて。
「ジルーシャ、あれは花火だよ」
「そういう絢だって尻尾逆立ててたじゃないの、共犯よ!」
「気のせいだよ。それより、線香花火もあるみたいだし、こっちもしてみない?」
 蜻蛉が頷き。ネーヴェは駆け寄り、ジルーシャは笑みを浮かべ、ボタンが興味津々な様子で歩く。
「元いた世界では四季ごとに私のような精霊がいましたが、巡りのなか私は決して夏の精霊さんに出会うことはありません」
 漣に溶ける本音。
 春を待つ声はいつだって冬に突き刺さる。
 孤独は寒さではごまかせない。染みつくような冷気だけが、ボタンの友だった。
「……わたくし、イレギュラーズになってから、楽しいことが沢山増えました。
 勿論、楽しいばかりではないけれど。でも、友人ができて、こうして遊びに出かけるなんて、なかったから」
 ちらりと、ネーヴェはボタンを見、微笑む。その友人の中には、あなたも含まれているのだ、と。
「花火て、精霊を供養するもんやて聞いた事があるの。あと亡うなった人…。
 でもね、こやって一緒に生きている人と楽しい時間を過ごせるものでもあるんよ」
 線香花火は弾けて散って。
 ぼんやりと灯りを残し、それもまた消える。月が煌々と照り、季節外れの桜が空を舞う。
「ね、アタシいいこと思いついちゃったわ」
 ぱん、と手を合わせ。ジルーシャは笑う。
「来年もまた皆で見に来ない?」
 きっと、その頃は二度目の春を迎えることが出来るだろう。
 まだ知らない秋だってすぐそこだ。
 巡る四季に取り残すことはもう無い。友はこんなにも近く、あたたかい。その温度を前に溶けることも、ない。
「いいね。おれは、賛成だ」
「うん、うちもよ」
「わたくしも、です!」
「……私も、です」
「決まりね! 来年もまた皆で見に来ましょうね♪」
 弾ける火花に約束を乗せて──心に咲いた花は消えませんように、と。
(花火や珊瑚、お祭りに蛍。決して出会うことのなかった夏に冬の精霊が通ったこと、ここに残せたでしょうか)
 きっとその答えは、言わずとももうそこに在る。
 手繰り寄せた色鮮やかな縁は、解けることなく其処に在るから。
 交わることのなかった縁は、これから紡いでいけばいい。
 あなたは特異運命座標。可能性を孕む、希望の種なのだから。

成否

成功

状態異常

なし

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