PandoraPartyProject

シナリオ詳細

病弱少女と希望の蒼

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●空舞う花に愛情を
「重いー。赤斗、もうちょっと荷物持ってよ」
「こんなんでヘバってたら買い出しだけで日が暮れちまうぞ」
『境界案内人』の神郷 蒼矢(しんごう あおや)と神郷 赤斗(しんごう あかと)は異世界でカフェ&バーを経営している。
 共同経営という事もあり、買い出しはいつも二人一緒。大荷物を抱え直してしんどそうに息をつく蒼矢だったが、ふと――彼の目の前へヒラヒラと一輪の花が落ちてくる。
「これは……?」
 荷物の上に乗せて上手くキャッチした後にキョロキョロと辺りを見回すと、どうやらそれは商店街の一角、二階に住む少女の物だった。
「おい、どこ行くんだよ蒼矢!」
「あの子、二階から花を落としちゃったんだ。届けてあげなきゃ」

 だってこんなに綺麗なんだから。
 命は何だって美しい。だからその後押しが出来るなら、何だって頑張れる。その強い意志が蒼矢の長所であり、短所でもあった。

「わざわざお花を届けに来てくれて、ありがとう……こほっ」

 窓辺で慌てていた少女の名はリコと言った。彼女は生まれながらにして、病弱な身体らしい。
 一度もこの家の外に出たことがないという彼女のために、いつしか蒼矢と赤斗は定期的に会いに行って、外の世界を語るようになっていた。
 この街で経営しているお店の事、境界図書館を通じて出会った特異運命座標のこと。彼らと共に巡り歩いた不思議な異世界達の事――

「ふふふ。面白い! ゴリラがアイドルになれる異世界もあるのね!」
「そうだよ。リコだって、夢を抱いていれば何にでもなれるさ!」
「……おい」

 リコは笑顔を絶やさないが、その身体がちょっとずつ細く頼りないものになっている事に赤斗は勘付いていた。
 病魔は確実に彼女を蝕んでいる。往診の医者がしっかり来ている上でこうなのだ。救いがない事は目に見えている。

「勝手な希望をもたせて彼女をこれ以上、苦しませてやるな」
「うるさいなぁ、赤斗のばか」
「はァ?!」
「死ぬからって夢を見ちゃいけないの? 僕は青信号から生まれた境界案内人だ。誰かが一歩を歩みだそうとするなら、どんな事でも応援したい!」

 赤斗と蒼矢。赤信号と青信号。対照的な二人はここでもやはり反りが合わず、リコの元へ別々に訪れるようになった。

――そんな中、終わりは突然やってくる。

●ダブルピンチは突然に
「リコ? おい、しっかりしろ!」
 見舞おうと部屋に入った瞬間、赤斗は異変に気づいて彼女の両親を呼んだ。
 往診の医者が駆けつけて、高熱で喘ぐリコを診る。容態を聞くと医者は緩く頭を横に振った。
「もってあと3日、というところです。残念ですがこれ以上は……」
「そうですか。先生も苦しい事でしょう。お察しします」
「ありがとうございます。……正直、悔しいですよ。彼女は治せる病なんです。ナナエルの森深くにある『アイリーン』という薬草があれば特効薬が作れるのに――」
 バタバタバタ! と部屋の外で階段を駆け下りる音がした。赤斗には直感で分かる。あの品のない駆け下り方は間違いなく蒼矢だ。
「~っ、あンの馬鹿! ひとりでナナエルの森に向かいやがった!!」

 この異世界にいれば嫌でも耳にする、悪名高きナナエルの森。魔物がわんさか住み着いて、迷い込んだ人間を片っ端からくらい尽くす悪魔の巣窟――そんな場所にたった一人で乗り込むなんて!

NMコメント

 今日も貴方の旅路に乾杯! ノベルマスターの芳董(ほうとう)です。
 胃痛を抱えながら赤斗が泣きついてきました。どうか助けてやってください!

●目標
『境界案内人』神郷 蒼矢(しんごう あおや)の救出
サブ目標:薬草『アイリーン』の採取

●場所
 ナナエルの森
  異世界にある大きな森。魔物が住み着き、一般人は立ち入ろうとしません。森の最深部には『アイリーン』という薬草があるそうですが、危険な地であり、採取は命がけだと言われています。
  現地は木々が生い茂り獣道しかないため、視界はあまり優れないでしょう。視界ペナルティはありませんが、木陰で全体的に薄暗い奇妙な場所です。

●エネミー
 ワーウルフ(いっぱい)
  凶暴で理性のない人型の狼。鋭い鉤爪で攻撃してきます。引っかかれると【出血】する可能性があります。
  嗅覚が鋭いため、習性を利用するとある程度戦闘を避けられるかもしれません。

 げるるんスライム(いっぱい)
  わるいスライム。毒の粘液で中距離~遠距離を攻撃してきます。
  乾燥に弱いため、習性を利用するとある程度戦闘を避けられるかもしれません。

 アイリーンゴーレム
  巨大でずんぐりむっくりしたゴーレム。普段は地中に埋まっていますが、背中の植物に触れようとすると起き上がり攻撃してきます。
  反応は遅めですが攻撃力は高め。近ラインに拳を振り下ろしたり、中距離範囲に【毒】の砲撃をしてくる事も。

●その他登場人物
『境界案内人』神郷 蒼矢(しんごう あおや)
 いつも前向きな境界案内人。現在は行方不明になっていますが、おそらくナナエルの森へ薬草を取りに向かったのでしょう。
 防御や結界の魔術の才能には恵まれていますが、攻撃についてはからっきし。魔物に襲われれば逃げる事しか選択肢がありません。

『境界案内人』神郷 赤斗(しんごう あかと)
 皆さんに今回の仕事を依頼した境界案内人。冷静沈着で事なかれ主義。最低限、蒼矢が生還すればいいと言っていますが……。
 何か頼まれた際はサポートとして立ち回ります。

 リコ
  病弱な少女です。家から一歩も出られないまま、病で高熱になり寝込んでしまいました。
  花と物語が大好きな女の子で、いつかお花屋さんになりたいとう夢があります。

 説明は以上です。それでは、よい旅路を!

  • 病弱少女と希望の蒼完了
  • NM名芳董
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年09月10日 22時05分
  • 参加人数4/4人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

ボーン・リッチモンド(p3p007860)
嗤う陽気な骨
アーマデル・アル・アマル(p3p008599)
灰想繰切
ルリア・エル・ヴァディス(p3p009953)
氷華
ミミック(p3p010069)
特異運命座標

リプレイ


「とりあえず、蒼矢殿と少女の両方を救うという方向性でいいだろうか」
 諦める手はあるまい、そうするしかない場合以外は。『霊魂使い』アーマデル・アル・アマル(p3p008599)が確認を取ると、パーティーメンバーは首を縦に振る。
「カッカッカッ! 赤斗の旦那も蒼矢の旦那のお守りは大変だな!」
 と豪快に笑うのは、彼らと付き合いの長い『嗤う陽気な骨』ボーン・リッチモンド(p3p007860)だ。蒼矢がピンチで、少女の命までも病で手折られると聞けば、救いに駆け付ける理由としては充分だ。
「助ける為に一肌脱ぎますか! まあ、俺は肌なんてないスケルトンだがな!」
「なるほど、これが冥界で流行るというスケルトンジョーク」
 アーマデルがあまりにも真面目に受け取るものだから、『氷華』ルリア・エル・ヴァディス(p3p009953)は口元に手を当てクスリと笑った。
「女の子を救うための薬草探しと……蒼矢さんの安全も心配ですが、赤斗さんの胃が心配ですね。折角だから、胃薬に使えそうな薬草も一緒に探していきますか?」
 顔色悪かったですもんね、という彼女の言葉通り、赤斗は四人を森へ向かわせる時に胃のあたりを押さえていた。どこの世にも苦労性はいるものである。
 きっと事件が終息した後も、境界案内人が発端となって起こった緊急依頼となれば始末書の山が待っているのだろう。
「ところで、先程からミミックさんの姿が見えないのですが」
「それについては心配しなくてもいい。相談の時、ルリア殿はミミック殿の持っている武器を見ただろうか?」
 アーマデルに問われ、ルリアは薄ぼんやりした記憶を手繰り寄せる。確か長物の銃だった様な……。
「スナイパーってのはな、ルリアちゃん。超遠距離からの狙い撃ちが十八番だ」
「近・中距離で戦う俺達の近くにいては、得物との距離が近すぎる。きっと何処か離れた場所で俺達の周囲を見守っているのだろう」
 なるほど、とルリアは氷の瞳を見開いた。ボーンとアーマデルはベテランの特異運命座標。観察眼が仲間にまで行き届いていたのだ。初心者ながらに頑張ろう、と彼女はひそかに意気込んで、仲間と共に森へ踏み入る。

 ほぼ同時刻。
「さてと、向かいますか」
 三人が森に向かって行くのを確認し、『特異運命座標』ミミック(p3p010069)は木の上でゆっくりと身を起こした。集めておいた木の実を磨潰し、身体にかけて体臭を森に馴染ませる。気休めだと思いつつも準備をキッチリ進めるのは彼の職人気質によるものだろう。ハイセンスで探りながら、気配を殺して森の中へ踏み入り――場に溶ける様に姿を消した。


 生き物が草の根を踏む音。木々のざわめき、雨上がりの土の匂い。あらゆる情報がハイセンスを元にしてボーンの元に集まっていく。
「カッカッカッ! 俺は実は目も鼻も耳もいいんだぜ? 気になるモンがあったらすぐ報告するからよ」
「ありがとうございます。私も近くにいる精霊さんに見回って貰いますね」
 お手伝い、お願いできる……? とルリアが問えば、森の妖精達は光の粉を散らせて方々へ散っていく。心強いとボーンは頷き、
「嗚呼、目は多い方がいいもんな。それより魔物達はどう対処するべきかね…音だったら俺のヴァイオリンで引き付けられそうだが…」
 と手元に現した霊体のヴァイオリンを軽く掲げた。その隣でアーマデルが大きな麻袋を何処かから取り出す。手を突っ込み取り出したそれは――
「ワーウルフは臭覚が鋭い。嫌う様な臭いを纏えば近寄って来ないかもしれない。魔除け的な意味でいえば香草全般だが、
 ニンニクはその香りの強さから、特に強い魔除けの力を持つと――ボーン殿?」
「あ、アーマデルの旦那ァ。その臭いは超嗅覚の俺にもキツいぜ。仮に臭いをつけて歩いたとしても、依頼が終わった後がなァ……」
 こう見えてボーンは妻子持ちである。娘を目に入れても痛くないほど可愛がっているだけに、帰るなり「父さん臭い、近寄らないで」なんて言われた日には骨も残さず灰になってしまいそうだ。
「とはいえ俺も考えてたのは、ラフレシア的な匂いのキツい花を束ねた花束をぶん回す……とかだったが」
「あの……森の浅い部分で、狼の苦手な匂いの草を見つけて来たんですけど」
「「それだ!」」
「ひゃっ!? お、お役に立てて良かったです」
 丁度よい落としどころが見つかり食いつく二人にビクッとしたルリアだったが、上手くいった事に安堵して草を磨り潰す。三人で身にかけ香りを纏えば、ボーンの落ちくぼんだ耳に足音が遠ざかっていく音が聞こえた。
「上手くいったみたいだぜ。先に進むか」

 横倒しになった木を跨ぎ、草を踏みしめ更なる奥へ。一行は薄暗い森を進む。
「北のルートは危険。スライムだらけっスわぁ」
 先行していた酒蔵の聖女がアーマデルの方へ戻って来る。彼女は訳あって彼に協力している霊魂だ。
「そうか。蒼矢殿の姿は見えたか?」
「さっぱりっスわ。赤斗さんなら見つける自信あるっスのに」
 なにせ副業がバーのマスターだからね! 酒好きにはたまらない匂いがするのだとか。
「西の獣道も人間らしい足音はしねぇな。蒼矢の旦那は何処いったんだ?」
 魔物は避けれど肝心の蒼矢が見当たらない。首を傾げる三人の耳に――バンッ! と遠くの方から銃声が聞こえた。
「蒼矢さん、銃を持っていたんでしょうか」
「いや、今のはライフルの音だ。ミミック殿が交戦している!」


「鞄の中には……砂糖と塩、片栗粉しかないか。まぁ乾燥させるには充分だろ」
 スライム除けにざらりと足元に粉を蒔き、ミミックは木の上へと手慣れた動作で登った。戦地において視界の開けた場所に位置取るのはスナイパーの基本である。――と、見渡した方角に気になる物を見つけ、スコープ越しに覗き込んだ。少し開けた所、岩の上に綺麗な赤い花が揺れている。それは日の光を浴びてキラキラと幻想的に輝き、そこらに生えていた植物にはない神秘を纏っていた。

 がさり。
「――ッ!」
 しげみが揺れ、現れたのは見た事のある顔。捜索対象となっている蒼矢だ。何やら嬉しそうに声をあげて花の方へ近づこうとしているが――ミミックが驚いたのは彼を見つけた事ではなく。
 仕事人の双眸は見逃さなかった。物音に気付いたかのように岩がゆらりと動いた事を。
(材質硬度特定にかけても計測不能。無機物でないのなら、あれは――)
 岩背の花を傷つけず、蒼矢に気付かせるにはあまりにも距離が遠すぎる。声が届かないのであれば、当然やるべき事はひとつ。ミミックは素早く引き金を引き、超長距離から岩めがけて一撃を放つ!

 グゴゴゴゴ!

「うわっ、何だよこれ!?」
 痛みで岩が起き上がり、ゴーレムとしての本性を現わす。低い呻き声と巨大な身体に腰を抜かして驚く蒼矢。襲い掛かる脅威から彼を救ったのは、翻る漆黒の外套。
「蒼矢殿、離れていろ!」
 英霊残響:怨嗟が響き、どうとゴーレムを不協和音が飲み込んだ。身構えるアーマデルのすぐ横を疾風の様に駆け、ボーンがゴーレムへ追撃をかける。
「いい音色だ。ご一緒させて貰うぜ――目覚めろ!」
 号令と共に地から這い出るスケルトン。足元に纏わりつかれてゴーレムがうざったそうに拳を振り上げる。
「カッカッカ! させるかよッ!」
 楽し気に殺気を放ち、巨岩の拳を両手で受け止めるボーン。ミシリと骨が軋み、痛む彼へ――ふわ、と淡雪の様な光が降り、じんわりと染み込む。負った傷が癒えていく様はまさに奇跡。
「癒しの光、ここに……」
 そう。ルリアのハイ・ヒールである。守りは盤石。後はゴーレムの固い身体にどうダメージを通すかだ。
「増援が来たか。それなら!」
 再び響く銃声。ミミックが放ったアンガーコールにゴーレムが反応し、何処からだと目の前から気を逸らした。生まれた一瞬の隙に拳を押し返し、反撃に転ずるボーン
「こいつはお返しだ。とっときな!」
 軌跡を描くように鮮やかに繰り出される落首山茶花。ゴトリとゴーレムの首が落ちる。弱りながらも尚止まらぬゴーレムの手がルリアの上に振りかざされる!
「お願い……止まって……!」
 頬から零れ落ちた一筋の氷粒。煌めきを帯びたそれが溶けた瞬間、辺りの気温が急激に下がった。パキパキと足元から凍るゴーレムの身体――アブソリュートゼロが決まったのだ。
(こいつはもしかしたら、薬草を守って自律行動する植木鉢だったのかもしれない。移動できれば荒天や食害生物からも身を守れるし、ある程度戦えればなお安全だ。
 創り主にはすまないが、このまま……)
 アーマデルが蛇銃剣アルファルドを振り抜く。蛇の様にしなる一撃はゴーレムの胴を強かに叩き、核(なかみ)を露出させた。直後、遥か彼方より一撃が放たれる。ミミックのクリティカルスナイプが寸分違わず撃ち抜いて、ついにゴーレムは――動きを止めた!


「蒼矢殿、これを」
 ゴーレムの背中の花を採取して、アーマデルが蒼矢へ差し出す。
「いいのかい?」
「危険を顧みず、摂りに来たのは蒼矢殿だからな」
「その代わり、あんまり赤斗の旦那を心配させるもんじゃねぇぜ?」
 ボーンに釘を刺され、ごめんよと頭を掻く蒼矢。和気藹々とした雰囲気にルリアは胸を撫で下ろした。
「これがあれば、リコさんは大丈夫、なんですよね…?
 よかった。それでは私は帰り道に、赤斗さん用の薬草を……」
「待ってくれルリア殿。俺も寄り道を。見舞いの花束を作るんだ。ボーン殿はどうする?」
 問われれるとボーンは大切そうに一輪のヒナゲシを取り出した。
「俺からはこれを。一番好きな花と、一番贈りたい曲を見舞に。沢山伝えようぜ、窓の外には綺麗な物が沢山あるってな!」

 病が治れば、リコの人生はこれからだ。門出を祝す様に紡がれるボーンのヴァイオリンの音。少女と特異運命座標の談笑。少し離れた場所で様子を見届けたミミックは踵を返した。
「さて、次の仕事に向かうか」

成否

成功

状態異常

なし

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