PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<月没>異世界カフェは茶屋の味?

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 時は諦星(たいしょう)十五年。
 神光……神咒曙光はネクストにおける豊穣ではあるが、帝都高天原は時代が進み、近代都市を思わせる様相を見せている。
 人によっては、大正ロマンとも表現するかのような和洋折衷の街並み。
 まさに、文明開化した豊穣の地といった感がある。

 さて、そんな帝都では、外の世界から文化が入ってきており、皆洋食等にも興味を示す。
 カフェ「アルカロンド」もその一つ。振舞われる紅茶やケーキは帝都民にも好評。支店までいくつか出しているのだとか。
 本店の店主であり、経営者であるカプリセット・カロリーヌ・アルテロンドは武力で名を上げたかった本音を抱きつつも、抱えた従業員の育成や事業拡大の為にと経営に勤しみ、忙しい毎日を過ごす。
 その日も、閉店後夜遅くまで帳簿整理を行っていて。
「ふう……」
 自分で淹れた紅茶を口にし、気持ちを落ち着けるカプリセット。
 もうひと踏ん張りと机に向かう彼女だが、その時激しい違和感を覚えて。
「あれ……?」
 アルカロンドの内装は帝都で流行りのカフェと同じようにし、所々に気品を感じさせる飾りや絵画、彫像などを設置しているのだが……。
 今、カプリセットの視界は、完全に和風テイストの内装へと変わってしまっていた。
 それに、店の敷地面積よりもはるかに大きく拡大していたそこには、怪しげな気配がいくつもあって。
「もふふふふ……」
 声を上げていたのは、串にささった2本の巨大な三色団子。
 かぷかぷ、ぬるぬる……。
 そして、スライム上になった汁粉に、ミミックを思わせる湯飲みの集団だった。
「えっ、なぜ、こんな魔物が……」
 今、神光に夜妖なる存在が現れているという話はカプリセットも耳にしてはいたが……。
 魔物達は一斉にカプリセットに敵意を抱き、それぞれの攻撃手段で襲い掛かってくる。
 出口は魔物達の奥。しかも、そこから出られるとは限らない。
(さて、どうしましょうか……)
 身構えるカプリセットだが、多勢に無勢。敵の力を肌で感じた彼女の頬に汗が流れていくのだった。


 ROOにおける『帝都星読キネマ譚』イベント進行によって始まる『月没』。
 神光に現れし『侵食の月』は現実世界である混沌の希望ヶ浜にも現れている。
 さながら、皆既月食の如き『侵食の月』は現実には怪異の活性化と狂気を。神光では更なる狂気をもたらすという。
 ゲーム画面で或る神咒曙光には『侵食度』というパラメーター。
 月が光を取り戻すにつれてその数値は高まり、ROOと希望ヶ浜の両方において、『真性怪異』の力が強まっていく。
 この為、夜妖を討伐して侵食度合いを食い止める必要がある。

 神光、『高天京壱号映画館』。
 星読みキネマが映し出す未来の悲劇を一通り見てから、月ヶ瀬 庚(p3n000221)……正確にはそのアバターが話を始める。
「この女性の救出を、諸君にお願いしたいのです」
 事件の日の夜、ネクスト神光の帝都にあるカフェ『アルカロンド』内が店主であるカプリセットを取り込んだまま亜空間となり、夜妖が現れる。
 その内装は、混沌に存在する茶屋「あるかろんど」の内装とそっくりだという話もある。
「侵食の影響によるものかはわかりません。ただ、このままではこの方は夜妖に命を奪われるのは間違いないでしょう」
 亜空間化した店内には店の正面入り口から突入できそうだ。
 歪んだ空間で広くなった和風の内装をした店内で、夜妖を挟んで奥に救出対象であるカプリセットがいるはずだ。
 彼女を救出しつつ夜妖も討伐すれば、亜空間は閉じるものと思われる。
「現状は一つ一つの事件を解決しつつ、時間を稼ぎたいところです」
 事件の数を考えれば、ローレットイレギュラーズの手を借りたいところ。
 庚は改めて、この事件の解決をその場のメンバー達へと依頼するのである。

GMコメント

 イレギュラーズの皆様こんにちは。GMのなちゅいです。
 <月没>のシナリオをお送りします。

●目的
 カプリセットの救出

●敵……夜妖×12体
 茶屋を思わせる内装の亜空間で、茶屋のメニューを思わせる魔物が襲ってきます。

〇団子ソード、団子ランス各1体
 全長2mほど、串にささった3色団子を思わせる姿をしています。
 それぞれ、剣や槍のように動いて攻撃する他、一時的に体の団子を飛ばして攻撃を仕掛けてくることもあります。

〇汁粉スライム×5体
 全長1m強。
 腕に入っていたはずの汁粉が丸っこい姿のスライムとなった姿。
 見た目は汁粉ですが、しっかりと消化液を供えていたり、
 体内の餅を放出して叩き付けてきたりしてくることも。

〇ミミック湯飲み×5体
 全長1m強。湯飲みの口部分に牙が生え、大きな舌が外に出ています。
 大きく口を開けて噛みついてくる他、酸を含んだ液体を吐いてきます。

●NPC……カプリセット・カロリーヌ・アルテロンド
 20代の人間種女性。赤い着物を着用、赤いリボンが特徴的です。
 混沌に実在する方はシフォリィ・シリア・アルテロンド(p3p000174)の関係者であり、ROO側の彼女はほぼ本人と同様の外見、性格をしているようです。
 戦闘能力もある彼女は徒手での戦いを得手としていますが、夜妖の多さもあってさすがに多勢に無勢だったようです。

●状況
 夜、カプリセットさんが経営するカフェ「アルテロンド」内に夜妖が出現。そのまま店内を亜空間化してカプリセットさんごと取り込んでしまいます。
 亜空間内はかなり空間が広がっておりますが、混沌の茶屋「あるてろんど」を思わせる和風の内装をしており、茶屋のメニューを思わせる夜妖が襲ってきます。

●重要な備考『デスカウント』
 R.O.Oシナリオにおいては『死亡』判定が容易に行われます。
『死亡』した場合もキャラクターはロストせず、アバターのステータスシートに『デスカウント』が追加される形となります。
 現時点においてアバターではないキャラクターに影響はありません。

●情報精度なし
 ヒイズル『帝都星読キネマ譚』には、情報精度が存在しません。
 未来が予知されているからです。

●侵食度
 当シナリオは成功することで希望ヶ浜及び神光の共通パラメーターである『侵食度』の進行を遅らせることが出来ます。

●魔哭天焦『月閃』
 当シナリオは『月閃』という能力を、一人につき一度だけ使用することが出来ます。
 プレイングで月閃を宣言した際には、数ターンの間、戦闘能力がハネ上がります。
 夜妖を纏うため、禍々しいオーラに包まれます。
 またこの時『反転イラスト』などの姿になることも出来ます。
 月閃はイレギュラーズに強大な力を与えますが、その代償は謎に包まれています。

 それでは、よろしくお願いいたします。

  • <月没>異世界カフェは茶屋の味?完了
  • GM名なちゅい
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年09月10日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

グリース・メイルーン(p3x000145)
灰の流星
シフォリィ(p3x000174)
クィーンとか名前負けでは?
リュート(p3x000684)
竜は誓約を違えず
ジオ(p3x002157)
大型
イルー(p3x004460)
瑞心
花楓院萌火(p3x006098)
アルコ空団“風纏いの踊り子”
崎守ナイト(p3x008218)
(二代目)正義の社長
イズル(p3x008599)
夜告鳥の幻影

リプレイ


 夜、ROO神光。
 現実である混沌とは違い、別世界の大正と呼ばれる時代を思わせる街並みを目にしながら、イレギュラーズのアバター達は目的地へと向かう。
「カフェって美味しいごはんと飲み物が出る所ッスよね! なら全力で守るッス!!!!!」
 腹ペコドラゴン、『神の仔竜』リュート(p3x000684)はすでにお腹を鳴らしており、今日も全力で依頼に当たる。
 彼らが向かうのは、カフェ『アルカロンド』。
 現実世界である豊穣では、『クィーンとか名前負けでは?』シフォリィ(p3x000174)の実姉であるカプリセットが茶屋を開いているが、この神光では街並みに合わせたカフェとなっているようだ。
「……この世界でも無事に成功を掴んでいるみたいで、良かったです……ですが、それもまずは助け出してからでないと喜べませんね」
 やや昔の自身の姿をアバターとし、銀の長い髪が印象的なシフォリィ。今回、被害に遭っているのはROOの姉だというから穏やかではない。
 程なく、たどり着いた『アルカロンド』へ、リュートを先頭にしてその入り口へと飛び込む。
 内部は空間がねじ曲がっているのか、大きく広がっていた。
 しかも、本来ROOの『アルカロンド』の店内でなく、それは現実にある和風の内装をした『アルカロンド』を思わせる。そして……。
 もふふふふ……。
 かぷかぷ、ぬるぬる……。
 その内部には、団子武器、汁粉スライム、ミミック湯飲みと茶菓子を思わせる夜妖が蠢いていた。
「お茶屋の茶菓子のようなモンスターが相手かぁ。どうせなら美味しく食べれる相手だといいんだけどね」
 長い黒髪をポニーテールとした『ダンサー』花楓院萌火(p3x006098)の言葉に、メンバー達の反応は様々。
「和風喫茶風夜妖、ですか。むむ、あまりかわいくもありませんね……」
 スイーツ系精霊種、『初心者』イルー(p3x004460)はその姿がお気に召さない様子。
「これも和洋折衷というのかな? 見た目はそこそこコミカルだけれど……」
 一方で、両目を隠し、ミステリアスな印象を抱かせる『夜告鳥の幻影』イズル(p3x008599)は、団子、汁粉、緑茶入りの湯飲みと和菓子風の形状をした西洋風の魔物に興味を抱く。
 なお、名称で一論争起こりそうな大判焼き、今川焼きなどと呼ばれる和菓子は出現していないらしい。
 そんな夜妖達の奥、大きなリボンを付けた黒髪碧眼の和装女性が応戦していて。
「カプリセットさん、お待たせ! イレギュラーズたちのヘルプ到着だよ!」
「はいはい。危ないから下がっててね。応援してくれるとか張り切っちゃうかも」
 柴犬の耳を持つ獣種女性、『灰の流星』グリース・メイルーン(p3x000145)が意気揚々と救出対象である和装女性へと呼び掛けると、長身の秘宝種、黒髪黒衣の『大型』ジオ(p3x002157)も彼女をカバーすべく、射撃用にと用意したパチンコ玉を構える。
 同じく、シフォリィもまた下姉様と呼ぶカプリセットの姿にややほっこりもしながらも、見た目が可愛らしいのに凶悪な敵が沢山いたことで、下姉様の命が危ういと察して。
「下姉様の妹であるシフォリィは今ここにいる私とは別人でしょうが、全力を尽くしましょう!」
「あの子は……」
 やはり、ROOのシフォリィも同じ姿なのだろうか。カプリセットも彼女の姿に反応していたようだ。
「暴れるお客様? いや違うか、とにかくお店を荒らす奴は退治するから任せてね!」
 どうやら、現実のカプリセットと接点があるグリースは、そちらで手伝いができなかったらしく、こちらで十分守らせてもらうと気概を高めていた。
 ぬるぬる、もふふふふ……。
 かぷかぷかぷかぷ。
 ただ、夜妖達はそれをさせぬとそれぞれ大きくアクションしてみせる。
「無粋なお客様にはさっさとご退店戴こうじゃねぇの。こちとら仕事の企画込みで来てるんだぜ」
 正義の企業『B.R.C』で社長職を営む『正義の社長』崎守ナイト(p3x008218)にとって今回は営業の一環らしい。
「カフェといえばコラボ! 我社とタイアップして貰えりゃ知名度向上間違いなしだ!」
 その為には目の前の事態を打破すべき。ナイトは前線に立ってタンク役となるべく身構える。
「悪意を持って、人に害をなすお菓子など、あってはいけないものです、よ」
 ――お菓子は、幸せをもたらすものですから。おしおき、です。
 ぬるぬる、かぷかぷ、もふふふ……!
 わらわらと群がる夜妖にイルーが言い放つと、敵も一斉に攻撃を仕掛けてくる。
「茶菓子だからって甘くみないでかかっていこう!」
 仲間達へと呼び掛けた萌火の言葉を皮切りとして、本格的な交戦が始まるのだった。


 亜空間となったカフェ『アルカロンド』店内。
 入り口側にいるイレギュラーズ達だが、夜妖を挟んでカプリセットがいる。
「まずはカプリセットさまの救出ですね」
 イルーの言葉に異論は出ないが、メンバーには別に懸念もあったようで。
「数が多いこと、屋内である事が不安要素だろうか」
 そう指摘するイズルだが、戦闘で荒れても現実……神光での『現実』の店舗に影響はなさそうだとも考える。
「うーん。せっかくいい雰囲気のカフェなのに、荒っぽいのはとっとと終わらせて楽しみましょう」
 ともあれ、今は敵がこちらにも襲ってきており、対処は必須。ジオも手早くこの場の戦いを収めるべくパチンコ玉を放つ。
「数が多い……食べ過ぎは良くないのよねっと!」
 仲間の後方から射撃を行うジオは、タンク役の負担が減ることを念頭に確実に数を減らせるよう前線に近づく敵から狙う。
 タンク役を請け負うのはナイトにリュートだ。
 イズルが亜空間内なら大丈夫と言ったものの、なるべく店を壊さないようにと意識して敵が壁側に行かぬよう気がけてナイトは立ち回る。
「遊ぼっ!」
 リュートは力ある声を発して僅かながらも夜妖達の動きを止める。
 攻勢を強めるリュートだが、何せ相手は和菓子風の見た目をしている。2mある三食団子など、食べ応えがありそうだ。
「でも、敵ッス!」
 溢れそうになるよだれを抑えつつ、リュートは手近な湯飲みやスライムをガンガン殴りつけていく。
 そうして、ヘイトを集める2人を、シフォリィやイズルが支援する。
 シフォリィは仲間の迎撃態勢を整え、さらに素早く動けるよう強化を施す。
 私自身はカプリセット姉様を助ける事は出来ない。
 そうシフォリィは認めながらも、助ける人の助けにはなれるとさらにスキルを行使する。
「あまり無茶しないようにね」
 イズルは仲間の体力を気に掛ける。
 夜妖らは食べ物の見た目をしながらも、汁粉スライムが毒液を飛ばし、ミミック湯飲みが混乱を伴う噛みつきを行う。また、団子武器の2体の刀身にも麻痺の効果があるらしく、下手に刃を浴びれば動けなくなりそうだ。
 とはいえ、イズルも仲間が異常状態となれば、惜しみなく癒しの薬液を仲間達へと振りまく。
 善戦するカプリセットを救出すべく、イルーは機の杖を手にして敵から力を奪う。多少なりとも魔力を吸われれば、夜妖達も黙ってはおらず、こちらに意識を向けてくる。
 そこを、グリースが突っ切ろうと二刀モードとした刃弓で群がる夜妖を薙ぎ飛ばす。狂気と呪力に満ちた剣戟によって、夜妖達も大きく吹っ飛び、一時動きを止める者もいたようだ。
「リスクが気になるけど……魔哭天焦『月閃』!」
 その時、萌火は空に浮かぶ侵食の月の力を借り、禍々しいオーラでその身を包む。
 月閃と呼ばれるその姿は全ての能力が跳ね上がる。
 萌火はその力を十二分に生かして狂乱の舞を踊って夜妖を圧倒する。
 殴打や蹴りを浴びた湯飲みやスライムは早くも動きを鈍らせていた。
「甘味は好きだが不味い攻撃はノーサンキュー! 俺の舞踏(Dance)をお腹いっぱい食わせてやろうじゃねーの!」
 仲間が順調に敵を攻め立てているなら、ナイトも気合を入れてポージングして目立ってみせる。
 こちらに注意を引きつけたナイトは儀式剣を振り回しつつ夜妖に異常をもたらし、動きを制していくのである。


 とりわけ、前線の萌火の勢いはすさまじい。
 荒ぶる力で夜妖の体力を削いでいき、汁粉スライム、ミミック湯飲み各1体を破裂させてしまう。
 次いで、ナイトも引き付けた敵が弱まったのを見計らい、ミラーポールを現わしてダンスを披露し、同じくスライム、湯飲みを1体ずつ倒していた。
 それでも、残る敵にジオは煩わしさを感じて。
「あぁ、もうっ! 邪魔!」
 仲間から意識のそれた夜妖は執拗に襲い掛かってくる為、ジオはそれらを振り払い、間合いを取る。
「まだ居るのっ!」
 それでも大きく口を開く湯飲みに、彼女はうんざりしていたようだ。
 そんな敵から、イルーは力を奪い続ける。長い目で見れば、カプリセットへの攻撃が緩むはずだとイルーは見ていたのだ。
 やがて、前線がそのカプリセットの元へとたどり着く。
 グリースが敵陣に深く食い込む形となり、集中砲火を浴びせしまう。特に団子ソードや団子ランスの攻撃は苛烈で、彼女に深く傷を負わせる。
 それでも、グリースは気にも留めず、引き絞った弓から敵へと銃撃を叩き込む。
 まだ奥の敵は体力が十分あるらしく、グリースもしばらくは敵を吹き飛ばして一度に相手する敵の数を減らしていた。
 前線メンバーの消耗は大きく、イズルは回復一辺倒の立ち回りを強いられることとなる。
「こちらだ」
 ただ、カプリセットへと迫る敵を見れば、イズルも止むをえないと回復の手を止め、敵に呼びかけて壁側へと誘導していた。
 戦いの中、シフォリィは仲間達の強化、回復に注力していたが、やはり姉を模したROOのカプリセットが気になる様子。
 そして、それは向こうも同じらしい。
「あの、君は……」
「話は後です。今はこの場を何とかしましょう!」
 さすがに戦いながらでは挨拶すら満足にはできないと、カプリセットも徒手で和菓子風味の敵と対していた。
「遊び(戦闘)はいつだって全力で押し通すッス!」
 そんな中、リュートは食べられない敵へと思いっきり「どーんっ!」と色とりどりの光弾ブレスを連射する。
 それによって、汁粉スライムの体が吹き飛んで崩れていたが、リュートは思わず少しビクビクして。
「……食べられないッスよね? 食べ物を粗末にすると呪われるらしいからね」
 そんな仄かな恐れも抱きながら、リュートは残る夜妖の始末に全力を尽くす。

 程なく、月閃状態となっていた萌火が元に戻る。
 彼女もそれを織り込み済みだったようで、すぐに援護役へとシフトチェンジし、情熱的な踊りを変えて仲間に力を与える。
 回復支援といえばシフォリィもだが、彼女は終始仲間の為にと力を使う。
(月閃の使用は見送りましょう)
 萌火は今のところなんともなさそうだが、反転と同様の力はやはり恐ろしい。混沌生まれのROOに本来ある仕様とは思えないとシフォリィは考えていたのだ。
 イズルも状況を見て、慎重になっていた。
(あまり頻繁に使う事にも躊躇いがあるね)
 デスカウントもそうだが、結果が見えないものほど恐ろしいものはない。
 ある程度は使いこなす必要はあるだろうが、濫用しないようにとできるだけ後の手段となるよう、イズルは仲間の回復を続けていた。
 ただ、そんな仲間の支援を受けてなお、前線のナイトやリュートは厳しい。
 とりわけ、最後まで自力で奮戦したいと考えていたグリースは疲労の色が強い。
(確かに強い力を使うべき時に使わないのも愚かだとはわかってるんだけど)
 しかしながら、このままでは前線が崩壊しかねない。
 負けてしまえは全て意味がなくなる。グリースは止むをえないと割り切って遠慮なく月閃を使うことに。
 髪と瞳が紅に染まり、鬼を思わせる光の角を現したグリースはすぐさま近場の湯飲みを地面へと叩き落とす。
 ほぼ同じタイミング、傷を負っていたリュートも限界だと感じて月閃を行使する。
 お茶会を台無しに。ほのぼの空間を握り潰すかの如く、彼は大きなドラゴンの姿に。
「我(オレ)を本気にさせたな? ならば、本気で潰してやろう!」
 尊大な態度をとるリュートもまた、両手に掴んだ湯飲みを同時に握り潰す。
「我(オレ)は美味しい茶菓子は好きだからな。献上するが良い」
 ただ、ミミック湯飲みは全滅しており、汁粉スライムが苛立ちげに体当たりしてくる。
 さらに、団子ソードと団子ランスも連携攻撃で攻め立てるが、勢い勝る月閃使用のグリースにリュートは止まらない。
 サポートに回る萌火やシフォリィが2人の体力が尽きぬよう癒しをもたらす間、残るメンバーが夜妖のとどめへと動く。
「もうちょっとイケるわよね!」
 敵からの距離をとるジオもタンク役メンバーの回復を行いながらも、潰れかけた汁粉スライムをパチンコ玉で打ち貫いて破裂してしまう。
 イルーは追撃をかける形で汁粉スライムの力を奪うと体力も尽きたらしく、そいつも地面へと潰れてしまっていた。
 これで、残るは団子2体のみ。
「そのもちもちお団子ボディ……食べやすいように切り刻んで、あげます」
 イルーは月閃こそ使うには至らぬが、神秘の力で敵の体を裂き、動きを止めようとする。
 その時、前線のナイトも団子の攻撃がその身深くにまで食い込んだことで、月閃を使う覚悟を決めたようだ。
「穢レノ大御神降リマセリ 『月閃』、急々如律令!」
 顕現した兄殺しの姿。ナイトはそれでも残る理性で店を壊さぬようにと気がけながらも、嫉妬の炎で木っ端を燃やし尽くさんとする。
 もふ、もふふ……。
 燃え上がる炎に、団子2体が怯む。
 ボロボロになっていた身体が燃え上がり、かなりへたれてきていた団子達。
 そこへ、飛び出してイズルが団子のみを捉え、輝かせた聖晶の翼より飛ばした羽を刃と変え、団子達へと降り注がせる。
 それによって、団子ランスの体が崩れ、地面に倒れて動かなくなってしまう。
 も、もふ……!
 こんなはずではと言わんばかりの団子ソードへ、ナイトは炎を燃え上がらせて。
「灰も残さぬ則滅蘇婆訶!」
 掴みかかった団子の全身がこんがりと焼けていく。
 じたばたと抵抗していた団子ソードだったが、やがて動かなくなって棒立ちとなったそいつもまた相方同様に床へと乾いた音を立てて転がったのだった。


 夜妖を討伐し、店内は元通り夜の装いに。
 窓から月灯りが差し込む中、イレギュラーズ達はカプリセットの体調チェックや店内の片付けなど事後処理に動く。その間にメンバーも勢揃いして。
 とりわけ、月閃使用者は身体の異変と共に魔種のような考え方になるのではと萌火は懸念も示す。
「みんなも何か違和感あったりしない? 気になる事があったらまとめておこうね!」
 現状、皆に大きな変化はないが、萌火は生き生きとしながらも仲間の体調にも気遣っていたようだ。

 その後、落ち着いた店内にて、カプリセットの提供でお茶会を開かれて。
「美味しいごはんが食べれれば、なんでも回復するッス!」
 しゅるしゅると仔竜の姿に戻ったリュートは美味しいメニューを食べたいとにこやかに語る。
 茶屋のメニューは洋風文化が入っていた神光とあって、紅茶を中心にケーキや焼き菓子、一部洋食も扱っていたようだ。
 ティータイムを楽しむイズルの傍、多少無茶していたイルーは事なきを得たと安堵しながら紅茶をすすっていた。
「カプリセットさんのおすすめのお茶とお菓子なんかあれば、ぜひ食べてみたいんだよ♪」
 萌火のリクエストを受け、カプリセットはオリジナルブレンドの紅茶と、クッキーなど焼き菓子を用意して振舞う。併せて食べると紅茶がとても口当たりよく感じられるのだとか。
 真っ先にメニューを頼んだリュートを始め、メンバー達が希望の品を頼む中、ナイトは自社とのコラボの話を持ち掛け、カプリセット前向きに検討をと笑顔を見せていた。
「おねーさーん! 一緒にお茶しましょー」
 ある程度、メンバーにメニューが行き渡ったところで、ジオがカプリセットへと呼び掛けてお茶会へと引っ張り込む。
 なお、こっそりお酒を所望していたジオだったが、残念ながら、アルコールの提供はないそうで、彼女はがっかりしていた。
「せっかくのカフェなんだからね。カプリセットさんもお疲れだろうし、シフォリィも一緒にどうかな?」
 グリースの呼び掛けもあり、シフォリィは改めてカプリセットと対面する形に。
「シフォリィと申します!」
「え、ええ、よろしく」
 戸惑いながらも、カプリセットも改めて名乗るのだが、冗談言っているのよねと感じていたらしい。別人だと分かっても、他人の空似と思えなかったようだ。
「それにしても、妹と姿どころか名前まで一緒なんて」
「いえいえ、名前も一緒なのは偶然ですよ!」
 何とかその場をごまかしたシフォリィだったが、気になるのはROOでの自分。
 ネクストの私は一体何をしているんだろうと、シフォリィは考えてしまう。
(次会う時は、是非混沌の地でね。おねえさん)
 そんなやりとりを眺めながら、グリースは現実の彼女との対面を改めて心待ちにするのだった。

成否

成功

MVP

リュート(p3x000684)
竜は誓約を違えず

状態異常

なし

あとがき

 リプレイ、公開です。
 MVPは仲間の援護ありきですが、3体を撃破した貴方へ。同数のお方にも称号をお送りいたしました。
 今回はご参加、ありがとうございました!

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