PandoraPartyProject

シナリオ詳細

食用注意報

完了

参加者 : 3 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●フレッシュ?ゴーレム
 それはある雷雨の夜のこと。自らの研究の集大成が、今まさに完成を迎えようとしていることに狂喜乱舞する一人の老錬金術師がいた。
「ああ、思い返せば苦難ばかりだった。賊や獣に村の畑は荒らされ、家畜は喰われ。それをどうにかしろだのと無茶ばかり言われ……だがそれもこれで終わる! 植物やら牧畜のことは専門外であったとはいえ、吾輩のこの”食べることができる”ゴーレムが完成すれば村の食糧問題なぞ些細なことよ!」
 独白する彼の視線の先。そこには拳二つ分ほどの大きさの赤い球体が4つ並んで、奇怪な装置に繋がれていた。
「これで後は落雷による大電力を浴びせることでコアが起動し、自動で肉体を形成する! 皆にもこの喜ばしい成果を報告せねばな!」
 そう言って小躍りしながら錬金術師が外へと飛び出した瞬間、不幸にもそのタイミングで雷が降ってきた。唯一錬金術師にとって幸運だったのは、自らが雷に打たれたことを認識する間もなく一瞬で心臓が止まったことぐらいだろうか。そんなふうにあっけなく、人生最大の成果を誰に伝えることもできずに、哀れな老研究者はこの世を去った。
 ――――ゆっくりと、まるで鼓動のように明滅を始めた4つのコアを遺して。

●新鮮な?ゴーレム
「やあやあようこそ。お集まりいただいた諸君らには感謝しているよ。それではさっそく説明をしていこうか」
 集まった特異運命座標らを出迎えたのは妖しい出で立ちをした境界案内人のアヴローラ。
「まあ今回の”お願い”はシンプルに敵を倒す。ただそれだけだよ」
 だが言うは易し行うは難し。口元に笑みを浮かべる彼女の表情はうかがい知れないが、ろくでもないことだけは確かだろう。
「お相手は4体のゴーレム、らしき魔導生物。それも強力な再生能力を有していてね。胸に埋まる形で固定されているコアを破壊されない限り止まることはない。もともと食用ということで再生能力があるのはまあわかるんだけどね……」
 しかしその上で厄介なことに自衛能力が備わっており、それを制御できる人が設定する前に消えたので現状は半ば暴走状態にあるという。
「まあそのおかげといってはなんだけど、問題の村は今や無人状態。好きに暴れてくれて構わないよ」
 ――それではどうか、ご武運をね。

NMコメント

久々に一つ、時にはトンチキなのもよいでしょう。

●目標
 4体のゴーレム(?)の破壊

●食用ゴーレム
 食糧問題を何とかするために老錬金術師によって作られたゴーレムとは名ばかりの全く新しい魔導生物。なお”食べることができます”。なお味はそのときによって変わるらしい。
攻撃手段:パンチ、キックなど近接肉体言語のみ。ただし自衛能力の一つとして人型の相手の姿をコピーするというものがある。それでも胸のコアは隠せないので一応見分けはつきます。

●その他
 食用として作られているため、”攻撃”ではなく”捕食”とみなされる行動に対してはあまり抵抗を示さないようです。

  • 食用注意報完了
  • NM名外持雨
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年09月14日 22時05分
  • 参加人数3/4人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 3 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(3人)

ノリア・ソーリア(p3p000062)
半透明の人魚
ウェール=ナイトボート(p3p000561)
永炎勇狼
海紅玉 彼方(p3p008804)
扇動者たらん

リプレイ


「聞いていた通りとは言え、本当に人一人もいないんだな……しかしゴーレムの肉か、ちょっと食べたくなるな」

 『永炎勇狼』ウェール=ナイトボート(p3p000561)が周囲を見渡しながら呟く。彼の顔はどこかわくわくしているようで、声が弾んでいるのを隠しきれていない。
 ゴーレムたちの暴走によって村はすでに無人。しかしなにぶん突然の出来事であったためか、つい最近まで普通に暮らしていたであろう痕跡が多分に見受けられる。

「食用とはいえ、厄介な自衛能力をつけてくれましたね。これはもう私が直々に成敗してあげますよ」

 ウェールと同様に、意気揚々といった体で『レディ・ガーネット』海紅玉 彼方(p3p008804)はいい笑顔を浮かべている。

「でも、食べものになるために生まれただなんて……」

 一方で、召喚される以前には食べられそうな目にばかり遭っていた『半透明の人魚』ノリア・ソーリア(p3p000062)は複雑そうな表情である。親近感、とでも言えばよいのだろうか。被食者の思いは文字通り身を持って体験している。なればこそ。

「どうか、どうか。戦うこと以外で解決する方法があれば……」

 その想いは、願いは。

「おい、悩むのは後にした方がよさそうだな」

 不意に物陰から現れた影を見て注意を飛ばすウェール。祈るように思索するノリアの想いなど知ったことではないと、ぬるりと現れたのは4体の人を模した人形。
 胸元に見えるのは紅いコアと思しき球体。これらが件の食用ゴーレムとやらであろうことは間違えようがない。


「少しだけ待って欲しいですの。試してみたいことがあるのです」

 たった一つ、もしかしたら戦わずに済むかもしれないと思い付いた案を実行する時間が欲しいと二人に告げるノリア。
 幸いなことにゴーレムの方もまだ攻撃に移る気配はない。あくまで警戒しているだけのようだ。いくら攻撃能力があったところで、それは単に自衛のため、ということだろうか。

「わかりました。私は別にかまいませんが、ウェールさんはどうでしょう?」

「俺も構わない。あちらはまだ攻撃してくるつもりはないみたいだしな」

 此方が攻撃しないかぎり反撃してこないようならば、まずは他の方法を試してみてもいいだろうと同意する彼方とウェール。ノリアの静止が入らなければ次の瞬間には一撃を放っていたであろうことは内緒である。

「では、失礼しますの……」

 そう言いながら、ノリアはゴーレムへ尻尾を振りながらアピールする。つるんとしたゼラチン質の尻尾は、見るからに彼女が食べられる側であると訴えかけるもの。
 だがしかし、ゴーレムからは何の反応も帰ってこない。無機質なまでにじっと見つめてくるだけである。

「わたしは仲間……食材仲間……」

 繰り返し唱えながらそっとゴーレムの傍まで泳いでいくノリア。
 無謀とも思えるノリアの行動に息を飲む彼方とウェール。
 相変わらずゴーレムからの反応はない。

「これで……アナゴ寿司の完成ですの……」

 そしてノリアはそっとゴーレムの頭の上に乗っかる。
 ゴーレムは相変わらず無反応である。
 ウェールと彼方が思わずずっこけてしまったのも仕方のないことだろう。

「……えーと? それで?」
「あれ? いえ、こんなはずでは……」

 何をどうしたかったのかと疑問を投げかける彼方に対し、戸惑いを隠せないノリア。
 ――哀しいかな。同じ食材仲間として彼女とゴーレムは分かり合えなかったようである。とはいえ世の中、同類であろうと分かり合えることの方が少ない気もするが。


「これはもう当初の予定通りってことでいいんだな?」

 予定変更、というよりも結局元に戻っただけか。
 しかしノリアがゴーレムに乗っかったままでは誤って巻き込む恐れがある。そう判断したウェールは、まずはゴーレムを蹴り飛ばす。あわよくばノリアを残してゴーレムだけを遠ざけようという算段だ。

「じっとしてろよ!」

 蹴り飛ばされたゴーレムはノリアを空中に残し、よろめきながら後退すると体勢を立て直す。そして彼らを敵だと認識したのか、一斉に攻撃に移ろうとするも、

「はい、隙ありですね」

 そこへ彼方の神気閃光が降り注ぐ。
 普通に生きた敵であったのならば絶叫の一つでもあげていたであろう。だが痛覚などなく、まして声を出す機能も備わっていないためか、ゴーレムたちはただただ無言のまま光に焼かれていく。その様はいっそ、不気味な印象を与えてくる。

「この程度で終わってくれる、なら楽でいいんですけどね……」

 ――だが人、それをフラグと言う。
 彼方の言葉は天に通じることなく。光が途切れたところで4体のゴーレムが未だ五体満足のまま、歩みを進めてくる。

「それじゃあ、ここからが本番だな」

 にやりと、不敵に笑うウェールが拳を構えた。


 数的には此方が不利、であるならば。まずは戦力を最低でも同数に持ち込むのが基本。一体のゴーレムを集中して撃破する。

「ならばその間に私は他を引き受けましたわ!」
「私も、分かり合えなかったのは悲しいことですけれども、他に道がないのならば仕方ないですの」

 その間他の二人は3体の足止めを行う。
 方針が決まれば後は早い。先ほど蹴飛ばしたゴーレムへと狙いを定めたウェールは双炎牙を放つ。
 燃え盛る炎の牙がゴーレムを加熱し、こんがりと焼いていく。ついでとばかりにすれ違いざまに塩胡椒を振って呪刻奪命剣で叩いて揉めば、漂いはじめる良い匂い。

「……いえそれはもう戦闘ではなく調理ではありませんの?」

 ウェールの一連の行動は流れるように鮮やかであった。それも海水を放ちながら他のゴーレムを足止めしているノリアまでもが思わずツッコミを入れるほどに。

「まずは1体目だ!」

 仕上げとばかりに調理済みのゴーレムを背後から手刀で貫けば、動力を失った人形はガクリと、項垂れるようにして機能を停止した。


 とはいえゴーレムたちもただ黙ってやられていくわけではない。

「それじゃあ次の調理に移ろうか!」

 ウェールの咆哮と共に渦巻く火炎が狼の形をとり、その爪牙をゴーレムのコアへと突き立てようとした刹那。

「な、ん?!」

 ゴーレムの形が溶けるように炎をすり抜け、次の瞬間そこに立っていたのはウェール自身にそっくりな人形。同様に他のゴーレムたちも姿を変えていく。

「なるほどですわね、確かに私たちと同じ姿をしているなら攻撃しにくい……などと思いまして?」

 が、あくまで模倣したのは姿のみ。つまり躊躇いさえないのであれば大した意味もなく……

「あの、どうしてわたしはコピーされていませんの……」

 今度は彼方の呼び出した小妖精たちに群がられているゴーレム(ウェールの姿&彼方の姿)を微妙な面持ちで眺めながらノリアは呟く。
 どうやら人魚の身体という構造は、流石にゴーレムも真似できなかったようである。

「なんといいますか……なんだか複雑な気分ですの……」

 なんだか納得のいかないような気もするが、とりあえず自分自身と同じ姿になった敵を見て正気を失い、唸り始めたウェールを水浸しにして正気に戻すノリア。

「grrrr……あれ?」
「意識はもどりましたか? そろそろ手伝って欲しいのですが」
「お、おう……すまない。では気を取り直して、と」

 彼方が足止めをしている隙にと、再度炎を操り、狼を呼び出すウェール。
 今度こそは外さない。そのためにもしっかりと気合を入れて練り上げていく。

「これで、終わらせる!」
「私も負けていられませんわね」

 炎狼の牙がゴーレムのコアを破壊すると同時に、彼方の舞踏がもう一体のゴーレムを機能停止させる。そして最後に残った1体は……

「ごめんんさい……でも、美味しくいただきますの……」

 これもまた弱肉強食の一種だから仕方ないと、自分を説得したノリアが召喚した熱水流によって急速に茹でられて調理されていった。


「さて、実食タイムというわけだが……」

 まずは俺がと、こんがり焼けたゴーレムを頬張るウェール。

「ふむ……まあ、焼きすぎたか。少々焦げているが不味くはない、と言ったところか……」
「ゆであがったのは美味しいのですの……でもこの量はわたしには多いですの……」

 はむはむと、海水により塩茹でされたゴーレムを口に運ぶノリアの方はうまく調理できていたようだ。
 そして彼方はというと……

「私もアイドルの端くれとして、食レポをせねばですね……焼き……蒸し……いえやはりここは刺身で……」

 自分の姿を保ったままのゴーレムを解体しようとしている。いかにも猟奇的な絵面となっていた。

「食料としては決して悪くはない考えだったのかもしれないが……やはり他人の姿を真似る機能はいらなかったと思うんだが……」

 それがなければもう少し食べやすいんだろうけどなと、彼方が苦戦する様を横目に見ながらウェールの独白が虚空に溶けていく。
 ――ともあれ、人騒がせな錬金術の産物はこれ以上の被害を出すこともなく、無事に葬られたのであった。

成否

成功

状態異常

なし

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