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シナリオ詳細

バッドウルフは100万回死ぬ【き】らしい

完了

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●殺し屋の記憶
 俺は殺し屋組織『バッドウルフ』の構成員。俺達の組織はスペシャルだ。
 なんてったって、ボスから下っ端まで全員が兄弟。おかげで考え方や動き方まで互いに似ている、完璧に統率のとれたワルの集団ってやつなんだぜ。

 今日の俺は殺しの仕事を請け負った。ターゲットは三人姉妹のアイドルグループ『トリプルピッグ』。
 いま話題沸騰中の人気グループらしいが、まだそれほど実入りがよくないらしい。まさかこんなボロ屋みてぇな寮で、三人一緒に暮らしてるとはな。

 襲撃は深夜。廊下の窓から月の光が差し込んでいる。
 ターゲットが宿泊している部屋はアパートの3階。この長い廊下のすみっこにある角部屋だ。

「へっへっへ、待ってろよアイドルちゃん達。三人まとめてあの世に送ってやるからな……うぉっ!?」

 チューチュー。廊下を一歩踏み出したら、足元を鼠がよこ切りやがった!
 年季の入ったボロ屋だからか? 踏んじまいそうになったじゃねーか!

 しばらく歩くと、部屋の扉を横切る。
 ここは事前の調査で空き家なのは確認済みだ。俺達の情報網、ナメるなよ。

 扉の反対側には窓がある。今日は月が綺麗だな。 
 窓が開いてたんで、身を乗り出して外の様子を見てみた。フムフム、人の気配は無し……っと。

……あぁん? 廊下の途中に10G硬貨が落ちてやがる。仕方ねぇから拾ってやるか。

 さて、3姉妹の部屋の前に到着だ。後はちょちょいと針金でピッキングして、
 腰にさげてた拳銃で――。

「開いたぜ。オラァ覚悟しな!」

 バンバンバンッ!!!


●惨劇に罠を張れ
「以上が、バッドウルフという殺し屋の"未来の記憶"だよ」
 境界図書館、会議室。液晶画面に繰り返し同じ映像をループさせながら『境界案内人』神郷 黄沙羅(しんごう きさら)は一冊のライブノベルを手にして語る。
「君たちには、アイドル達が殺される前にバッドウルフを撃退して欲しい。敵の生死は問わない」

 単純にどこかへ身を隠し、見張りをするのも可能だが……深夜のいつ頃に来るか分からない事もあり、
 罠をはって撃退する方が楽そうだ。どう効率的に敵を排除するかは、特異運命座標の腕の見せ所、というやつである。

NMコメント

 今日も貴方の旅路に乾杯! ノベルマスターの芳董(ほうとう)です。
 可愛そうな三匹の子豚ちゃんを悪い狼から守るのです!

■目標
 罠をはって「バッドウルフ」を撃退しよう!

■場所
 異世界のおんぼろ寮『つばき荘』
 昭和のにおい感じる古いアパートの中です。バッドウルフの防衛ラインは寮の3階の廊下。
 スタート地点からアイドルの部屋までは15メートルほどの距離があります。
 廊下の幅は成人男性1人が余裕をもって通れるくらい。

 この異世界は特異運命座標にとても有効的です。「家電を使った罠をしかけたいけど、電力が欲しいな…」と思っていたら廊下にいつの間にかコンセントが生えたりします。
 とにかくいろいろな罠を試してみるとよいでしょう。

■エネミー
『バッドウルフ』×?
 必ず一晩に1人の暗殺者として派遣されてきます。
 オープニングで描写された動作(お金をひろったり、窓の外に身を乗り出したり)は何の妨害もなければ奴らは必ずやります。
 殺しの相手がか弱いヒロイン達なので余裕をぶっこいてあり、気になるものがあれば、とりあえず触ったり試したりしてみるでしょう。
 つまり罠を設置してしまえば、かけ放題です。

 現実の人間が拳銃一本持った、くらいのスペックなので魔法がきかないとか、強靭な肉体というのはありません。
 ただ、ギャグ体質なのでちょっとやそっとの罠じゃ死なずに気絶で済みそうです。

■その他登場人物
アイドルグループ『トリプルピッグ』
 ナナ、ネネ、ロロの仲良し三姉妹。豚の獣種の愛らしい子どもたちです。未成年なので事件当日は大人しく自分達の部屋にいる予定です。

『境界案内人』神郷 黄沙羅(しんごう きさら)
 教会図書館に所属する境界案内人。男装の麗人です。基本的に出てくる事はありませんが、解説が必用だったり協力が必用な時はサポーターとして登場します。

 説明は以上です。それでは、よい旅路を!

  • バッドウルフは100万回死ぬ【き】らしい完了
  • NM名芳董
  • 種別ラリー(LN)
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年09月04日 17時45分
  • 章数1章
  • 総採用数4人
  • 参加費50RC

第1章

第1章 第1節

ミミック(p3p010069)
特異運命座標

「このアパート、かなり痛んでるな」
 ミミックは【材質硬度特定】で罠を仕掛ける場所を探し、腐って脆くなった床の下へ粘着液を手際よく仕掛けた。
「二階にアレを運び込んだけど…何に使うんだ?」
 重たい荷物を運び終えた黄沙羅が息切れしながら降りて来る。目が合うとミミックは人差し指を唇に当て「ひみつ」と音もなく呟いた。

 防衛初日、バッドウルフが寮へ来ると――ベキリ!
「何だこりゃあ!?」
 床を踏み割り、侵入してすぐ粘着液の沼にダイブした。逃れようにも粘液が体に絡み、体力を根こそぎ奪われる。
「お、俺は害虫かよ…」
 なんて悪態をつき、今度は二階へ足を進めると、ドッドッド…と廊下の奥から今度は謎の駆動音。
 ピッチングマシンからトリモチボールが音速を越えて降り注ぐ!
「ぎゃあぁああー!?」
 体に当たったボールが痛いわ引っ付くわで、バッドウルフはもう散々!
 投擲から逃れようと窓を開け、逃れようと身を乗り出す。プチ、と紐が切れる音がした。

 ガンッ!!

 頭の上に鉢植えが落下し、彼は二階から下へ落ちていく――

「最後の罠まで行き着かなかったか」
 寮の空き部屋でモニタリングしていたミミックは、後ろ手に手を組み椅子に背を預けた。
「三姉妹の部屋の扉に仕掛けたんだよな。合言葉を言わずドアに触れると、天井から振り子の要領で丸太が突っ込んでくるっていう」

 因みに、合言葉は『叉焼、豚カツ、ハンバーグ』
…子豚アイドル危うしである。

成否

成功


第1章 第2節

金枝 繁茂(p3p008917)
善悪の彼岸

 昨夜この寮へ暗殺に来た同僚は、何故か頭にたんこぶこさえてベタベタな姿で逮捕されたらしいが…俺はそんなヘマしねぇ。
 何故なら俺はバッドウルフでも最も残忍な男と呼ばれているからだ。聞けば今回の標的はガキだと聞いてるが、女として扱ってやりゃ"そう遊べる"もんだ。殺す前にたぁっぷり可愛がってやろうじゃねぇか、へへへ!

 見ろよ、部屋のドアが開いてるぜ! 乙女ちっくな甘ぁい匂いまで外の廊下に漂って来やがる。
 このボロっちい寮に天蓋付きのベッドたぁビビッたが、アイドルってのは夢見がちな生き物なんだろ?

「こんばんはぁ子豚チャン、俺と一緒に遊ぼうぜぇへっへっへ……へ?」

 天蓋のカーテンを勢いよく引くと、そこに居たのはむちむちむっちのかわいこちゃん…かわいこ、ちゃん??

「ふぁ~ぁ? あら、眠っているかわい子ちゃんに手を出そうとするなんて悪い人ですね」
「や、待っ、人違い…」

 熟練プレイボーイの勘が告げる。アラート、アラート、アラートだ!
 こいつはヤバいと俺は鉄砲を引き抜いたが、片手であっという間に銃身をひしゃげられ、体をガッチリ掴まれる!

「それじゃあハンモがたぁっぷりお・し・お・き、しないとね♡」
「待ってくれやめろ、俺にそういう趣味はねぇぇ!!」

 力任せにベッドの中へゴートゥーヘブン♡ ハンモの”力”で引き込むぞ♪
 それでは愛をしましょうか。ハンモのヘビー級ハニートラップ♡

「ぎゃああぁああああー!!」

成否

成功


第1章 第3節

寒櫻院・史之(p3p002233)
冬結
冬宮・寒櫻院・睦月(p3p007900)
秋縛

「ほふほーひひふほ?」
「黄沙羅さん、飲み込んでから喋らないと分からないですよ」
 もぐもぐ、ごっくん!
「本当にいいのかいって。こんなにまったりお茶をしていて」
「しーちゃんが罠を張ってるから僕たちは見物ですよ。これでも囮役を兼ねてますし」
 仕事はちゃんとしてます、と睦月は柔らかく微笑みかける。
「お味はいかがですか? 蒼矢さんが以前紹介してくれた世界のホワイトスイーツですよ」
「……」
 返事はないが食べる手は止まらない。美味しいが認めたくないという事らしい。そうこうしている間に史之がセッティングを終えてやって来る。
「紅茶を淹れてきたよ。…カンちゃん、そのスイーツって確か、漂白…」
「しーちゃんには、あーんしてあげるね!」

 楽しそうな賑わいに、ひたひたと迫る黒い影。
 バッドウルフは扉の隙間から見える睦月の頭へ銃口を向け、廊下の少し離れた場所から引き金を引いた。
「俺は潔癖症でね。目撃者になりそうな奴は皆殺しだ。……その綺麗な顔をフッ飛ばしてやる!!」

 ガーン!

「なっ、攻撃が通ってねぇ!?」
 防弾ガラスか、と銃痕を調べようと扉の方へ踏み出して、バッドウルフはそのまま――ひゅん!
 暗がりに紛れていた落とし穴に踏み込み、そのまま下へ真っ逆さま!
「うぉあっ痛っテ、痒いィイイイ!??」
 痛みと痒みのダブルパンチで絶叫するバッドウルフを嘲笑うかの様に、史之が穴を覗き込んでSっ気たっぷりに笑う。
「俺特製とりもち、うるしの樹液あえだよ。全身真っ赤にかぶれるがいいさ」
「うわぁ、しーちゃんえっぐ…。でもなんか輝いてるね」
「本当は即死するようなの考えてたけど、カンちゃんが殺すなっていうから命だけは助けてやるよ。元かみさまに礼を言うんだな」
――まあ地獄の苦しみだろうけど。
 眼鏡のブリッジを押さえてクールに笑う史之の姿はまさに悪鬼。これには近くにいた睦月もニコニコしながら、
(しーちゃん隠れサドだよねえ…気づいてないっぽいけど)
 などと思わざるをえない。
「あのねしーちゃん、改心する余裕は残してあげてね。息してるからオッケーとかじゃないからね?」
「はいはい。彼らも人殺しに来たんだから、ちょっと躾けただけだよ」
「そ……それじゃあ、もう充分苦しんだから、そろそろ助け――」
「「いや、まだでしょ」」
 悪魔どもめえぇぇぇーーー!! という悲鳴を背負い2人がお茶会の部屋に戻って来ると、そこには粉雪シュクレを全部食べきり、頭からつま先まで真っ白になった黄沙羅が目をパチクリさせながら座っていた。
「罠にかける依頼だと説明はしたが、僕までひっかける必要は無かったんだよ?」
「しーちゃんがバッドウルフさんを罠にかけた分、僕もちょっとだけ悪戯です」
 ふんわり笑う睦月に、つられて黄沙羅も口角が緩む。冷めた紅茶を温め直し、史之がカップに注ぎ足した。
 さあ、お茶会を続けよう。あまあまお菓子にほっこり紅茶。楽しい夜は始まったばかり――

成否

成功


第1章 第4節


 三夜目のバッドウルフを警察に預け、黄沙羅はふぅと息をついた。
 連続して起こった此度の暗殺事件。こうも立て続けに起こっては、事務所のみならず警察もアイドル達を保護しなければと思うだろう。
「あの……」
 おずおずと怯えた様に声をかけられ、黄沙羅が振り向く。
 そこにはピンク色の子豚の耳と尻尾の生えた、愛らしい少女がちまっと三人並んでいる。
「助けてくださって、ありがとうございました」
「例なら君たちを救ってくれた、特異運命座標に言うんだな。……と言っても、彼らも色々と忙しい身だ。
 救った翌日には新たな場所へ旅立って行ってしまったが」
 御礼はまた次の機会だな、と微笑む黄沙羅に、少女達は元気よく首を縦に振った。
「はいっ! 私達、このままアイドルを続けます!」
「いつかまた、特異運命座標さん達がこの世界に来てくれる時は――」
「その時は絶対、キラッキラな笑顔とライブをお贈りできるよう、がんばりますっ!」
 暗殺者を退けた後も、芸能界の試練は続く。それでも少女達は、この夜を思い出して前へと進み続けるだろう。
 特異運命座標という星のような輝きに追いつこうと、一歩一歩を踏みしめて――

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