PandoraPartyProject

シナリオ詳細

異世界から聖女が現れて平民の特待生が入学してきて欲しがりの妹がずるいと叫んで王太子殿下と婚約破棄ってどこから解決すればいいのよ!?

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●というか殿下、結局誰と再婚約されますの……?

 というツッコミをディアンナ・リード公爵令嬢は扇の内側で何とか噛み殺した。
 ちなみにこの世界では平民でも着ないようなミニスカートに不思議な襟のツーピース――要するにセーラー服を着た『異世界からの聖女』は王太子の右腕に、ピンクのフリフリリボンドレスに埋もれた腹違いの妹は左腕にしがみつき、そして完全にドレスに着られている平民の特待生は王太子の後ろに隠れるようにしてこちらを睨んでいる。
 ついでに王太子の側近候補達がまるで舞台のカーテンコールのように王太子と三人娘の左右に並んで、次々にディアンナの罪(身に覚えのないやつ)を告発している。

 ――長い。
 長過ぎる。
 あとネタかぶりも多い。なんか階段から突き落としたってフレーズ、3回聞きましたわ。
 私どれだけ階段から突き落とすの好きな女ですの? 性癖かなにかなの?
 そもそも聖女いじめで平民いじめで妹いじめって何ですの。私公爵令嬢でしてよ。
 邪魔だと思ったら自分の手なんか下しませんわ。普通に権力使って消すわよ。

 止まらない溜息を扇の下でそっと隠す。この会場でディアンナが頼れるのは、もはやこの表情や溜息、ツッコミを覆い隠してくれる扇だけであった。

 テンプレアト王国には秀才の誉れ高き王太子と優雅なる淑女の婚約者がおり、次代は安泰だと思われていた。
 爵位を持つ貴族達がそれぞれの領地を治める中で、彼らの頂点に立ち貴族達を取りまとめ、国全体を動かしていく王家が安泰であることは喜ばしい。
 ――と、皆が安堵していた中、テンプレアト王立学園にて起きた王太子のスキャンダル、そして卒業記念パーティで行われた婚約者の断罪。
 シャンデリア煌めきドレスの花咲く学院のダンスホールは、一介の召使いですら胃が痛くなるような緊張に包まれていた。


●とりあえず公爵令嬢ディアンナにかけられてるのは冤罪なのでそれは晴らす方向で

「あとはなんだかいい感じにまとめてほしいの!」
『ホライゾンシーカー』ポルックス・ジェミニは大変ざっくりとまとめつつ、一冊の本を取り出した。
「この『テンプレアト王国』は、中心となるファンタジックな感じの王国に、ふわっとした感じで隣国とか辺境とかがくっついている感じの世界なのだけれど、そのテンプレアト王国の王太子が婚約者の公爵令嬢に婚約破棄を申し出てしまったの。このままだと公爵令嬢は無実の罪で捕まってしまって、そこから内乱なんかが起きるかもしれないし、テンプレアト王国……つまりこの世界が大変なことになっちゃうわ!」

 それを防ぐためには、とにかくまず公爵令嬢の冤罪を晴らすこと。
 ディアンナの実家であるリード公爵家は王家の血も引く大規模領主なので、敵に回すととにかくやばい。
 でもってあとはなんか、場をいい感じにまとめること。
 聖女も特待生も妹も、王太子の婚約者に冤罪を着せるくらいである。誘導尋問でもしてみれば悪事の言質が取れるかもしれない。
 また、王太子には優秀な弟妹がいる。チョロすぎてこいつを国王にするのは不安だと思ったら、次期国王の交代をもちかけてもいいかもしれない。
 さらにもしかしたら、側近の誰かが魔術を使って王太子達を操って、内乱を起こそうとしているのかもしれない……!

「という問題を、みんなにはこの王宮の一員になって解決してほしいの!」
 そう、この王宮の文官だったりメイドだったり、あるいは公爵家の用意した密かな密偵や護衛だったりとしてしれっと現れ、公爵令嬢の無実を証明して裏にある陰謀の証拠を叩きつけるのだ!
「どうかライブノベル『テンプレアト王国』の未来を救ってあげてね!」
 そう手を振って、ポルックスは皆を『テンプレアト王国』へと送り出したのだった――。

NMコメント

 はじめまして、旅望かなたです。
 初めてのライブノベル、お届けさせていただきます。

●『テンプレアト王国』について
 科学技術や社会制度は中世から近世、しかし魔法の存在によって生活技術のある程度は現代に近い、あるいは凌駕する水準を誇る――そんな感じの欧州風ファンタジー世界です。
 それぞれに領地を持つ貴族階級を王家が取りまとめる感じのゆるっとした封建制ですが、それだけに王家の態度によっては内乱も辞さない、みたいな大貴族が結構います。

●このライブノベルの目標
・ディアンナ・リード公爵令嬢の冤罪を晴らす
 冤罪だという証拠はバンバン出てきます。
 ぜひかっこよく取り出して(プレイングで設定して)ください。
・この事件の裏に潜む陰謀や懸念を解決する
 一体こんなことを仕組んだのは誰なんだ!
 みなさんがこっそり集めた証拠で明らかにしましょう!
 具体的にはプレイングで『これこれこういう事件だったんだよ!』と言って証拠を突きつければOKです!
 事件の詳細は皆さんのプレイング次第です!

●特殊ルール
 皆さんは『テンプレアト王国』の王宮、もしくはリード公爵家に務める何らかの役職(文官・騎士・メイド・密偵・護衛など)として、公爵令嬢ディアンナの無実や背後の陰謀の証拠を持って登場できます。
 ぜひばーんと叩きつけてやりましょう!

●サンプルプレイング
「私はディアンナ嬢の王太子妃教育を担当していた文官です。
 側近の皆さんが言う事件の起きていた時間は、全て王太子妃教育のため王宮にいたことが明らかです。
 学園や自宅で事件を起こすのは不可能ですなぁ。
 そもそも異世界からの聖女、平民からの特待生、市井で育てられていた公爵令嬢、彼女達が同じ時期に出てきたというのはきな臭いと思いませんか?
 つまり彼女達の後ろには黒幕がいる……!」

「あたしはディアンナお嬢様のメイドです。
 学園にもお付きとして従っておりますから、お嬢様がそのようないじめなどしていないことはあたしが証言できます!
 ん? メイドは身内だから信頼できない、ですか……?
 あたしはディアンナお嬢様の生活の記録をすべて記録し、王宮に公文書としてご確認いただく担当でもあります。同じお役目の方はメイド以外にも多数いらっしゃいます。
 さあ、記録を照らし合わせてみてください!
 それにしてもこれ、王太子教育で習わなかったんですか、王太子殿下? ディアンナお嬢様はもう10歳の頃には知っていらしたのに?」


 あ、ちなみに「なんか事情があったんだよ!」ということで、王太子と公爵令嬢ディアンナの仲を再び取り持つ形でもOKです。
 エンディングは皆さんのアイディア次第です!

 それでは、よろしくお願いいたします!

  • 異世界から聖女が現れて平民の特待生が入学してきて欲しがりの妹がずるいと叫んで王太子殿下と婚約破棄ってどこから解決すればいいのよ!?完了
  • NM名旅望かなた
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年09月01日 22時05分
  • 参加人数4/4人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

チェル=ヴィオン=アストリティア(p3p005094)
カードは全てを告げる
ヴィクトール=エルステッド=アラステア(p3p007791)
懐中時計は動き出す
散々・未散(p3p008200)
魔女の騎士
原田 幸村(p3p009848)
あやかし憑き

リプレイ

「うん……無実の罪を着せられて断罪される公爵令嬢さん……気持ちはすごくわかるよ」
 す、と『あやかし憑き』原田 幸村(p3p009848)は己の頬を撫でた。体格も格好、ややガタイのいい方ながらも16歳の少年と青年の合間、その域を出ない彼は、しかしその顔立ちだけが随分と強面であった。それもどちらかというと三白眼も鋭く、『悪人面』と称されるタイプの。
「俺もこの顔で随分と誤解を受けたからね……冤罪で責められるって辛いよね……」
 そして実際は強面を指摘されるとそっと心の中で泣いている、繊細な青少年なのである。
 後ろに佇んでいる身の丈250センチを優に超え、でもってさらに軽く宙に浮かんでいる、黒髪に黒の衣装に身を包んだ美女――『八尺様』の方が、危険度的には普通にえげつない。
 とはいえ。
「まあ、今回はもっと悪意ある話みたいだから……俺も微力ながら手助けしよう。よしやるよ、八尺ちゃん」
 まさに名前通り、八尺長身の美女はにこりと微笑み頷いた。本来は凶悪な夜妖の亜種たる彼女だが、今は幸村の背後霊にして守護霊、頼れる相棒とも言える。
 きらびやかなダンスホールに、ゆらりと二人は共に踏み出した。

 さて、既に王太子と3人の愉快な企みガールズの前には、ディアンナ嬢を守るように『カードは全てを告げる』チェル=ヴィオン=アストリティア(p3p005094)が立ちはだかり、空色のドレスを摘んで優雅なカーテシーを決めていた。
「ごきげんよう、学院の担当医官のチェルですわ」
 王族を始めとする貴顕が子息令嬢あまた通うテンプレアト王立学園ともあれば、一般には校医と呼ばれる者も、当然に勅命にて任じられる医官が務めるもの。確かな知識・技術と共に、王国への忠誠心なくして務められぬもの。
「ディアンナ様がお三方を『階段から突き落とした』というお話について伺いとうございます」
「よろしい、では皆話して……」
「いえ」
 王太子の言葉を、冷静なチェルの言葉が遮った。
「お一方ずつ、詳しくお聞きしたく思います――まずは聖女様より参りましょう」
 別室の手配を求めれば、既に、と警護に遣わされた王国騎士が一礼する。明らかに不審な挙動を取る聖女を連れて、反論が出る前にチェルはさっさと騎士に案内を頼んだ。
 一度空きかけたディアンナ嬢と王太子達の間には、既に幸村が膝を付いている。
 闇魔法使いにして、リード公爵家から雇われた護衛。それが幸村の『役割』だ。
「お嬢様を影から護衛しつつこの学園生活を見守ってきたんですがね……そこのお三方がおっしゃってる犯行。時間帯的にも物理的にも無理なんですよ」
「そんなもの、証拠は有るのか!?」
 王太子の怒鳴るような声に、けれど幸村が怯むことはない。
「ええ。お嬢様、王宮で王太子妃教育受けてましたからね、その時間」
「!!」
「ちゃんと護衛の報告書としても提出してますしね」
 幸村はリード公爵家に雇われた護衛であるため、報告書は公爵家に提出されるが、その後王家側の情報と食い違わないか徹底的に精査され、公文書として保管される。
「そ、それは……取り巻きにやらせたんだろう!」
「そのような会話ややり取りの記録もありませんよ」
 幸村の言葉に頷きつつ、ディアンナ嬢が扇の向こうで頷きながら溜息をついた。親戚や友人に出す手紙とてチェックを受けるのだ、王族の婚約者にプライベートもプライバシーもない。
「それよりも……こちらとしてはお三方の証言の方が怪しいのですがね?」
 わかりやすく肩を跳ねさせる聖女と特待生。今は妹はチェルによる聞き取り調査中である。
「実は八尺ちゃん……俺の使い魔にこっそり調べさせたんですが、お三方、同じ男性と密会なされてるようで。しかも隣国の者のようですね、この人」
「えっ!?」
 完全に驚愕している王太子の後ろで、聖女と特待生がぶんぶんと首を振っている。
「言い逃れしようとしても無駄ですよ? 密会に使ってた手紙はこちらで回収済みですし」
 後ろに控えていた八尺ちゃんが優雅な手付きで手紙の束を手渡す。ご丁寧にちゃんと3種の封筒を1種類ずつまとめてある。

「ええ、それぞれの方にお聞きしましたわ。事件発生の日時と場所、なぜお三方が医官の治療を受けに来なかったのか、そしてわたくしにもそんな大事故が繰り返されたという報告がなぜ来ていないのか、事件の瞬間や怪我をしたお三方の目撃者……それがほぼ『一致』しているのです。奇妙ですわね?」
 そう、調書をまとめたチェルが再び現れてホールに声を響かせた。
「けれど今回の事件で重要なのは、3人での共謀が成り立たない事ですわ」
 ざわり、ざわつくホールに幸村は頷いてみせ、チェルはさらに言葉を紡ぐ。
「ディアンナ様を婚約者の座から追い落としても、代わって新しい婚約者になれるのは一人だけですもの。協力して邪魔者を排除するメリットと、相手に共謀の過去を知られるデメリットを比べたら、わたくしなら乗りませんわね」
 ――まぁ、上手いこと他の二人を『消せる』なら話は別だが。
 妹も聖女も特待生も、そこまでの腹芸ができるとは思えなかった。
「ではなぜ口裏を合わせているのか――裏で糸を引いている人物がいると考えれば説明がつきますわ」
 そう、チェルが断言し。
「それでも言い逃れするなら、自白用の魔眼を使う許可も得ています」
 幸村が逃げ道を塞ぐ。

 三人娘がぐぅっと言葉に詰まった、その時であった。
「もはやこれまで、真犯人をお目に掛けましょう」
 す、と人垣から進み出たのはディアンナの学友の『L'Oiseau bleu』散々・未散(p3p008200)であり、王立学園の教師である『決死防盾』ヴィクトール=エルステッド=アラステア(p3p007791)であった。

 ――この事件がどんなものだったか、解決するのに一番早い手段があります。
 そう。犯人になってしまえばいいのです。

 ザルい冤罪とはいえ無罪証明もできるのだ。
 ならば自分が『有罪』になることも可能、そう考えたのはヴィクトールだった。
 そしてそれを元に『理由』を考えたのは未散だった。

「階段から彼女達を突き落としたのはぼく達ですし、お財布を盗んだのも、髪を燃やされそうになったのもぼく達の仕業なのです!!」
 驚くギャラリー。驚くディアンナ嬢。驚く王太子。そして何より驚いてる三人娘。
 だって着せたはずの冤罪の『犯人』が名乗り出て来たんだもの。
「だが、目撃証言にも、魔道具による記録にもお前の名は出ていないぞ、未散!」
「ええ、其れは闇の魔力で、記憶も記録も誤魔化すことが出来ます故に」

 まさか、と幸村が呟いた。
「闇魔法!? そんなもの存在しない!」
 王太子が叫んだ。
「ご存知……ないのですか!」
 未散が笑う。無知を嘲るように嗤う。
「其れも其の筈、闇の魔力を持つ者は遥か昔に此の国から追放された禁忌!」
 そう、幸村と同じ、未散も闇魔法の使い手だ。けれど偏見なきリード公爵によって幸村は保護されて、ディアンナ嬢の護衛の任を得た。けれど。
「ぼく達はスラム街で産まれ、そして拾われた。其れは闇の魔力を使い、いざと為れば捨て駒とする為」
 兄妹に仮の『家族』はいても、信じられるのは互いしかいなかった。
 他の全てが悪かった。
 だから。

「つまりお三方も、彼女に記憶を操られていた……」
 チェルが納得したように呟く。だから『同じ事件』だったのだ。
 そうなるように記憶を『弄られて』いたのだ。

 そして。
「欲しがりの妹様の耳元で『犯人を公爵令嬢にすればいい』と囁いたのも」
 ヴィクトールが唇の端を吊り上げる。
「異世界出身聖女様の耳元で『犯人を公爵令嬢にすればいい』と囁いたのも」
 皮肉げな笑い声が言葉の合間に零れる。
「平民の子だったかの耳元で『犯人を公爵令嬢にすればいい』と囁いたのも」
 ちなみに地味に韻を踏んでいる。
「ぜぇんぶ、僕……僕たちですから! あっはっは……!!」
 黒いマントを翻し、真面目な教師の仮面を脱ぎ捨て、正気を失ったような哄笑。
「ちゃらんぽらんな王子が、生まれ持った故に迫害される魔法が在る等知る筈も有りませんよ」
 皮肉げにただ、全てを拒むようにヴィクトールと寄り添い嗤う未散。
 庇護を受けることもできず、血を分け合った兄妹だけで、生まれ持った魔法を隠して生きるしかなかった二人。

 彼らを前に動くことができる者は――ただ、一人。

「ヴィクトール先生、未散……でも、あなた達は私に掛けられた冤罪から、救いに来てくれたのね」
 それが、罪人に身を落とす事に他ならなかったとしても。
 禁忌の魔法を持つ身であることを告白するとしても。

「嗚呼……素性を明かしたがらないぼくに、『名前』も『過去』も『身分』も幾らでも嘘は用意してあったぼくに優しくしてくれた、何処か行き急ぐ様なぼくに自分のペースで良いと仰ってくれた貴女には嘘を吐きたくなかった」
「……そんな僕たちであろうと|救済《すく》ってくれたのが、ディアンナ様だったのですよ」
「だからこうして罪を告白しに来た次第で御座います」
 己の前に膝をついたヴィクトールと未散に、ディアンナは頷く。
「罪は、罪です。けれど――未散様とヴィクトール先生の事情も、そして闇魔法使いの『禁忌』がただの迷信であるとも。進言させていただきましょう」
 二人は深く、深く頭を垂れたのだった。

 引っ立てられてドアをくぐる寸前、ヴィクトールが振り返る。
「ただ、罪をなすりつけてしまえと囁いてすぐにぐらつくような人たちが、その立場にいるのに相応しいかは、わかりませんけどね?」
 皮肉げに残した言葉は――少なくとも、王太子には刺さったのだろう。
 婚約についてはディアンナ嬢の意志を尊重しつつ保留、再教育をと命じられた中で、彼は実に熱心に学び始めたのだという――。

成否

成功

状態異常

なし

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