PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<イデア崩壊>アストラルレイヤー

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●ワールドオーダー
 介入手続きを行ないます。
 存在固定値を検出。
 ――イレギュラーズ、検出完了。
 世界値を入力してください。
 ――当該世界です。
 介入可能域を測定。
 ――介入可能です。
 発生確率を固定。
 宿命率を固定。
 存在情報の流入を開始。
 ――介入完了。
 Rapid Origin Onlineへようこそ。今よりここはあなたの世界です。

 ――■■■■■■■-CCC-■■■■■DEA
 ――boot...OK

 ――すべての前提フラグを獲得したことにより、秘匿オブジェクトCCCを解放します。
 ――おめでとうございます。隠しイベント『■■■■■■■-CCC-■■■■■DEA』が開始されました。
 
 縺雁?縺。繧?s繧貞勧縺代※

●高倉■■■は悪なのか?
「country――」
 あたまのフレーズだけを口にして、あとすべてを鼻歌で歌い出す。頭の上に子犬のような物体を載せた女の胸には無数の勲章とサッシュ。白手袋をした両手の人差し指を立て、指揮棒さながらに振り回す。
 どうやら彼女は伝承王国首都南西、ゴールドパーク通りを歩いているらしかった。整頓され屋根の色まで統一された町並みと、隙間無く整然と組み立てられた煉瓦の舗道。馬車用にひかれた赤いラインのど真ん中を、彼女は堂々とゆく。
 道を阻む者も。道を開ける者も。まして道の脇から彼女を振り返る者すらない。誰もない。
 強いて言うならば、我先にと彼女と逆方向に走る山高帽の男性や、子供を抱えて同じく走る女性がまばら……いや、次第に多く、多くなってゆく。
 カツン、と足を止め。女は立てていた指を中指に変え、足とおなじくピタリと垂直に立てて止めた。
「おーけーしすたーず! それじゃー最後は大合唱でいってみよーっ。さんっ、ハイ!」
 ぱっと両手を広げた途端、町並みも舗道も逃げ惑う人々も青空すらも、すべてが一斉に吹き飛んだ。
 高倉。戦神アンロットセブンのうち五体を指揮下におく、正体不明意図不明、ついでに行方不明だった女である。

 突如としておきた伝承王国への攻撃は、砂嵐盗賊団の傷を癒やしていたさなかの彼らにとって青天の霹靂であった。泣きっ面に蜂と言ってもいいが。
 ただの観光客として首都をあちこち見て回り、クレープを食べ自撮りをし変なTシャツを買って『I❤LD』の帽子を被ってやってきたのは南西部。修学旅行さながらに女子高生らしき少女たちを引き連れたこの集団は伝承国フィッツバルディ派貴族が治めるメーヴィン領へと足を踏み入れた。
 踏み入れた、その三秒後。
 彼女たちは突如として武装を展開。攻撃を開始。建物人物バームクーヘンすべてを対象にした無差別攻撃は砂嵐の侵攻を受けず平和が維持されていたメーヴィン領の街を地獄に変えた。

「ほらやっぱタカちゃん我慢しなかったじゃん。秒だよ秒」
 『戦神弐番』天王寺 昴はポニーテールの結び目を直しながら、背部に接続した無数の大口径ビームライフルを一斉射撃。走る無数の光線が建物を次々に炎上、爆破、崩壊させていく。
「当初より計画していたことだ。おそらくな」
 『戦神七番』千里丘 小時がその横に立ち、四連装ガトリング機関銃とマイクロミサイルをフルオープン射撃。容赦の無い鉛と爆弾がくずれた建物群を更にたいらにし、中に隠れていたであろう人々に原形を残すことすら許さなかった。
 領地の憲兵たちが現れ、魔法の込められた剣を抜く。魔力の微光が立ちのぼり、人間を一撃で両断するような空気の刃が生まれた。
「こんな街のド真ん中で暴れるとは……砂嵐の残党か!?」
「いやいや、そんなわけないですよね?」
「いやいや、そう思われても仕方ないですよね?」
 ストライカーユニットのスラスターをふかし同時に加速した『戦神伍番』桜ノ宮 雅と『戦神陸番』香里園 櫻。
「『千年雅楽(ソードビット)』!」
 雅の放ったソードビットが憲兵の剣をへし折り、鎧を貫通して切り裂いていく。
 それも無数の刀がジェット噴射によって高速で飛び、駆けつけた残りの憲兵たちも同じように刺し貫いていった。
 ヒッと悲鳴をあげた新米らしき憲兵が立ち止まり、剣をとりおとし、回れ右をして逃げ出す。
「『千本櫻芽(ガンファング)』……」
 櫻がピッと指を指した途端に飛び出したビット兵器が憲兵の足下を撃って足止めしたうえ背を撃ち足を撃ち更に頭を打ち抜いた。
「おいおい、戦う気のない奴まで撃つのかよ」
 装備していたグローブやシュー津、ストライカーユニットすらパージしてしまう『戦神参番』心斎橋 芹那。
「『誰一人残さず必ず一度は殺せ』ってオーダーでしょう?」
「あ、そっか。そうだった」
 身一つになった彼女はバンダナをしめなおすと、ニカッと笑って走り出す。
 拳にまばゆい星の光を集め、跳躍、反転。大地を思い切り殴りつける。
 地響きにより、半径10mがたちまち崩壊しクレーターと化した。

「やるねえ、アンロットセブンだっけ? なんでセブン? 五人だよな」
 ビッと指を指すのはザムエル・リッチモンドというラフな格好の男だった。白縁眼鏡にオレンジの帽子を被った黒人男性で、とてもではないが武力を持っているようには見えない。武器はもちろん魔力すらも。
 だというのに、高倉のよこに立ってこの圧倒的破壊のただなかにいた。
「さあ? 語呂? いいよねセブンで終わる名前」
「わかる」
 それな、と両手でグッドサインを出すザムエル。
「とりあえず、この街に『いる』のは確かなんだし……片っ端から殺していこうか。取り逃しナシで頼む」
 それだけ言うと、ザムエルはきびすをかえして高倉たちとは逆方向に歩き出した。
「どこいくのザムエモン?」
「ハンバーガー食べてくる。この街にあったかな」

●崩壊
 ROO(Rapid Origin Online)は練達国が目指す混沌法則解明に向けた研究プロジェクトIDEAよりうまれた仮想世界構築システムである。ログイン装置によって仮想の混沌世界へ入り込み通常では不可能な規模による様々な実験を行う……というものであるはずだったが、あるときよりシステムにバグが発生。バグは拡大し続け、ついには『ネクスト』という混沌と似て非なる、そしてMMORPGめいた仮想世界を作り出してしまった。
 この原因究明と復旧に向けた探索がローレットへと委託され、今日もファン・ドルド(p3x005073)たちローレットアバターがこの世界にログインしていた。
 そんな中でおきた、新たな大発見。
「この世界に持ち込んだ暗号コードSvto6ZA3sxd5。これが暗号変換された結果、特殊な文字列へと変化しました。練達三塔のひとり佐伯操に見せたところ、ROOで使用するパスワードの書式であることが判明しました。つまり、二層の暗号であったのです」
 ここはROO内、伝承王国首都。レストラン『ムーンデイズライト』の個室テーブルである。
 ならぶ料理のさき、部屋奥誕生日席にて手を組んでいたファンは、眼鏡のサイドを二度タップして空中にウィンドウを表示させた。

 『■■■■■■■-CCC-■■■■■DEA』

 多くが塗りつぶされた文字列は、どうやらイベントタイトルであるらしい。
「ネクストがMMORPGのシステムを摸して構築されていることは皆さんご承知の通りです。この世界のクエスト、なしいはそのパッケージであるイベントをクリアすることで情報が開示され、時にはトロフィー化した研究員の救助や隠されたコードの発見に繋がっています。
 いま表示されている『隠しイベント』は、コードSvto6ZA3sxd5から生成された第二層コードを入力することで発生したイベントです。
 外から持ち込んだコードですが……いえ、外から持ち込んだコードだからこそ、このイベントには大きな意味が隠されている。私はそう考えます」
「ふむ……ふむ?」
 話を途中まで聞いていた玲(p3x006862)が首をかしげた。
「それで、わらわは何をすればいい? 前置きが長いぞ」
 ファンは『失礼』といって薄く笑うと、イベント内容を周りに開示・共有した。
 それは複数のクエストからなる独自イベントであるらしく、イベントは複数のチームで同時に攻略しなければならないらしい。
 そうしてクリア条件を満たしていくことで新たな進展が得られるという、ある意味シンプルなイベントだ。
「我々の挑むクエストは――」
 そう言って開いたウィンドウを見て、玲はぎょっとした。
 完全武装の女子高生五人組。加えてラフな眼鏡の男。ついでに子犬をのっけた女。
「伝承王国内にて突如『大量無差別殺人』を始めた武装チーム、アンロットセブン及びザムエル・リッチモンドを攻撃し、街から撤退させることです」

GMコメント

※こちらは連動シナリオ<イデア崩壊>です。
 同時公開されている同シナリオタグのなかから一つにだけ参加することができます。
 複数に同時予約した場合もひとつにだけ当選できます。

●オーダー
・成功条件:アンロットセブンを街から撤退させる
・オプションA:ザムエルの目的を推察または想像する
・オプションB:ザムエルの目的を探り当てる
・オプションC:高倉を■■■■■■■■■■■■■

 アンロットセブンを撤退させることができれば成功です。
 相手の戦力は非常に高く、全力で戦っても『倒しきる』のは不可能です。相手に死ぬまで戦う必要はないからです。
 となると一点狙いの集中砲火が有効かもしれませんが、それは相手も読んでいるので(そして火力の問題から集中砲火作戦はこちらが不利なので)、『自分にとって得意そうな相手』を手分けして選んでバラバラにぶつかり、どこか一つ(または複数)がローレット優勢に傾きそうになれば敵が撤退するという流れに持ち込むのが妥当でしょう。

●エネミー
・『戦神壱番』天王寺 昴
 無数の大口径ビームライフルを接続し一斉発射する汎用女子高生型決戦兵器。
 ビームの射程は万能で弱点らしい弱点はなく、当人もソツがない。
 大火力かつ高機動なのも強み。だがエネルギー(AP)問題を抱えることだけが弱点のようだ。

・『戦神参番』心斎橋 芹那
 銀河の力を肉体に宿した汎用女子高生型決戦兵器。
 格闘戦に優れ圧倒的なパワーをもつが、暴走のリスクを常に抱えている。

・『戦神伍番』桜ノ宮 雅
 無数の刀を意のままに操り飛行させる『千年雅楽(ソードビット)』を装備した汎用女子高生型決戦兵器。
 刀は極めて頑丈で防御を容易く貫く攻撃性をもつ。一方で防御にもソードビットが必要なため攻撃と防御を同時に行いづらいのが弱点。

・『戦神陸番』香里園 櫻
 無数のビーム発射装置を意のままに操り飛行させる『千本櫻芽(ガンファング)』を装備した汎用女子高生型決戦兵器。
 相手の動きを制限させて確実に仕留める戦闘スタイルをもつ。ガンファングの性質上遠くから広い範囲を動き回りながら撃ち合いに持ち込むのが対抗策だとされている。

・『戦神七番』千里丘 小時
 実弾兵器を満載にした汎用女子高生型決戦兵器。
 性格はストイックかつドライ。足を止めてとにかく打ち続け残弾が尽きればコンバットナイフによる格闘戦に移行する。どちらかというと格闘戦のほうが強いらしい。
 序盤の滑り出しでどこまで火力を押しつけられるかが勝負の分かれ目になりそうだ。

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●ROOとは
 練達三塔主の『Project:IDEA』の産物で練達ネットワーク上に構築された疑似世界をR.O.O(Rapid Origin Online)と呼びます。
 練達の悲願を達成する為、混沌世界の『法則』を研究すべく作られた仮想環境ではありますが、原因不明のエラーにより暴走。情報の自己増殖が発生し、まるでゲームのような世界を構築しています。
 R.O.O内の作りは混沌の現実に似ていますが、旅人たちの世界の風景や人物、既に亡き人物が存在する等、世界のルールを部分的に外れた事象も観測されるようです。
 練達三塔主より依頼を受けたローレット・イレギュラーズはこの疑似世界で活動するためログイン装置を介してこの世界に介入。
 自分専用の『アバター』を作って活動し、閉じ込められた人々の救出や『ゲームクリア』を目指します。
特設ページ:https://rev1.reversion.jp/page/RapidOriginOnline

※重要な備考『デスカウント』
 R.O.Oシナリオにおいては『死亡』判定が容易に行われます。
『死亡』した場合もキャラクターはロストせず、アバターのステータスシートに『デスカウント』が追加される形となります。
 現時点においてアバターではないキャラクターに影響はありません。

  • <イデア崩壊>アストラルレイヤーLv:20以上完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度HARD
  • 冒険終了日時2021年09月07日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

Ignat(p3x002377)
アンジャネーヤ
ファン・ドルド(p3x005073)
仮想ファンドマネージャ
タント(p3x006204)
きらめくおねえさん
玲(p3x006862)
雪風
セフィーロ(p3x007625)
Fascinator
オルタニア(p3x008202)
砲撃上手
カノン(p3x008357)
仮想世界の冒険者
純恋(p3x009412)
もう一人のわたし

リプレイ

●曇天に煙る
 堅いソファに腰掛けて、テーブルにおいたトレーからハンバーガーの包み紙をひとつ手に取る。
「お前、俺を知ってるのか」
 ハンバーガーを手に持ったまま、汚れたナプキンをトレーの脇に置く。
 彼の目の前に降下したのは、飛行能力を行使した眼鏡の美女であった。
 『仮想ファンドマネージャ』ファン・ドルド(p3x005073)。
「少なくとも、『あっち側』のあなたは知っているつもりです」
 視線が交わされる。
 沈黙が交わされる。
 ファンは近くに倒れていた椅子を持ち上げると、テーブルを挟んで向かい合わせになるように立てて、そこに座った。
「研究チームに手の者がいるのですか?」
「NO」
「ROO開発自体にRが絡んでいる?」
「NO」
「人類を強制的にROOに送り込み彼のいう『つまらない人類』を実現する?」
「NO」
「アバターを捕らえて自身の障害であるイレギュラーズをネクストに封じ込める?」
「NO」
 ハンバーガーをすべて口に頬張りながら応えたザムエルは、トレーのコーラを飲み干してカップを置く。
「今までの質問でひとつでもYESと回答したら、お前はそれを信じるのか? それが根拠にできると?」
「……」
 ファンは不快さを顔に出し、椅子にもたれかかった。
 一切の担保がされていないYES or NOなど、コイントスくらいの信憑性しかない。平たくいうと、ゼロだ。
 ザムエルは両手を広げ、肩をすくめて見せた。
「俺の目的は世界平和だ。アストラルレイヤーを見つけ出して崩壊する世界から市民を守ろうとしている。正義の味方だ。ライトサイド。どうだ、信じるか?」
「ふざけるなよ」
「なら殺すか? ほれ」
 先ほど撃ったばかりの拳銃をテーブルに置いてスライドさせる。それはちょうどファンの目の前で止まった。
「お前が欲しているのは真実だ。俺を殺しても手に入らない。俺を問い詰めても手に入らない。じゃあどうすればいい? 考えろ、時間は……」
 腕時計を出して凝視し……てから、ちらりとファンを見た。
「所で、こっちに来てるのはお前だけか? アンロットセブンには何人あてた」
「は?」
 回答するつもりなどない。そのための『は?』だ。
「二人以上こっちにさいたなら……お前、負けるぞ?」
「待て、私はそんな作戦は――」

 そこまで言ってから。
 急激に世界がまき戻った。

●アンロットセブン
「――!?」
 まるで急激にバックした車が壁に激突したときのように、体がゆすられた。その衝撃で思わず地面に倒れた『仮想ファンドマネージャ』ファン・ドルド(p3x005073)は、突然ぶったおれたことに驚いた『緋衝の幻影』玲(p3x006862)を見る。
 ここは伝承王国メーヴィン領市街地。
 遠くで起きる破壊の音に対し、今まさに向かおうとしているところだった。
「玲さん……ザムエルは?」
「なにをいっとるんじゃ? 戦神陸番を三人がかりでパッパと倒してからとっつかまえる手はずじゃろ」
「……はあ」
 ファンはさっきまで起きていた……というより、未来におきそうなことを思い出し……そうになって、すぐに記憶から消えた。煙のように。
 気の抜けたような返事をするファンに小首をかしげつつも、『しろきはなよめ』純恋(p3x009412)が問いかけを重ねた。
「所で、観測した限りではアンロットセブンだけが破壊行動を行っているようですが、そのザムエルをどのように見つけるのですか?」
「あ、ああ……それなら」
 ファンは立ち上がって眼鏡をかけなおした。
 視界の端にはマップが表示され、大量のマーカーが動いている。
 個別認識は、されていない。一人一人目星をつけて記憶すれば可能かもしれないが、最初からわかっているわけではない。が、動いている五つのマーカーが孤立し、かなりの集団がマップ圏外に移動しているのが分かる。おそらく五つがアンロットセブンで、残りが住民達だろう。
 ザムエルもこのようにどこかに孤立しているだろうと推測がたつ。
「私のレーダーマップで探せると思います。
 いま現地には5人……5人!?」
 自分で言ってから、作戦の穴に気付いた。
 仮にアンロットセブンを倒せたとして、その場にいないザムエルがわざわざ捕まえられに来てくれるだろうか。撤退してしまうなら、『戦闘の最中に』捕まえないといけない。
 他の面々に比べ何分も早く決着がつくなんてことは(戦力的に見ても)ありえないし、そもそもそんなに長引く戦いになるなら向こうが先に撤退する筈だ。
「たかくらさんとザムエルが思いっきり範囲外じゃろが! 急がんと取り逃すぞ!」
 玲は走り出し、カモンカモンと手招きした。
 ファンは少々迷ったが、当初考えていたレーダーマップで千本櫻芽(ガンファング)の位置を把握する作戦は使えない(武装や道具はNPCの位置情報扱いにならない)ので、いっそ誰かに任せてもいいのではないか。
 それに高倉も範囲外にいるなら、ザムエルの護衛についている可能性もある。情報を吐き出させたいなら、一人で行くのは無駄死にのリスクが高い。
「妾がメガネについていくのじゃ、純恋は『戦神陸番』香里園 櫻を頼む!」
「承知しました」
 行ってらっしゃいませ、と純恋は手を振った。

●戦いは誰よりも先に
 蟹光箭を連鎖しながら走る『カニ』Ignat(p3x002377)。
 装甲車フォームで放たれたビームは、『戦神七番』千里丘 小時に七割ほど命中。
 というのも、小時はびっくりするくらいその場につったったまま動かないからだ。回避しようという姿勢がまるで見られない。
 対する小時は両腕を広げすべての武装を展開。
「フルオープンアタック」
 詰んでいたすべての火力を惜しげも無く放出した。
「ちゃんと単体特化砲に換装して来たからね! 存分に撃ち合おうじゃないか! FIRE!FIRE! FIRE!」
 Ignatは小時に対抗するかのように足を止め、どころかアンカーを打ち込んで大砲の衝撃に備えた状態で最大火力のビームを撃ちまくった。
 ぶつかり合う火力と火力。
 その最中にIgnatは大声で呼びかけた。砲撃の音にかき消えないように。
「ねえ七番! ザムエルの目的ってなんなの?」
「今まさに殺し合っている相手の質問にどうして答える。お前にとっては答えてやるのが普通か? おまえの弱点は? ログイン装置のIDは?」
「んー……無理!」
 相手の性格が質問によくなかったようだ。まあいい。
 弾を撃ち尽くした小時がミサイルポットやガトリングガンをパージ。コンバットナイフを握ると、すさまじい速度で急接近をかけてきた。
 対するIgnatも美女フォームにチェンジ。蟹型アームでナイフを受け止めるが、受けきれない斬撃でアームが切断された。
「うわっ、急に強!」
 Ignatは素直に斬り合うのをやめ、急速に後退――しようとしてやめた。小時が『それなら別の相手を攻撃しようかな』というそぶりを見せたからだ。引いたら自分が浮き駒にされる。突っ込んで食らいつくしかない。
「こうなったら幸運に愛された方が有利に立ち回る闘いをしようか! スリルがあるね!」

「銀河の力ね……スケールで負けたのは久しぶりだわぁ」
 僅かに宙へ浮かぶ『きらめくおねえさん』タント(p3x006204)。
 展開した無数のミラーを広げ、まげた親指を口元へともっていく。
 そのまなざしとしなやかな身体のラインは、オトナ……でもそうそう出すことの出来ないしっとりとした上品な色気をもっていた。まるで高級な酒のように。
「おっ、オレを知ってんのか! 照れるねー、ヘヘッ」
 対して『戦神参番』心斎橋 芹那。彼女もわずかに宙へ浮かぶと、タントとは対照的にバシンと拳を手のひらに打ち付けるようなポーズをとった。堅く剛毅な、力強い戦士の態度だ。
 巻いたバンダナの裾がかぜにゆれ、彼女の全身にシュオンと気の光が湧き上がる。
「アンタ、強い奴か? だったらいいなあー」
「それは触れてからのお楽しみよぉ」
 空いた手をかざし、小指から順に波打つように手招いて見せる。
「おいで、おねえさんが軽く遊んであげるわぁ」
「そんじゃお言葉に甘えてェ!」
 ドッという衝撃音で突っ込んでくる芹那。
 タントは目の前に大量の鏡を集中させ、反射と光による壁を形成。その壁を芹那は秒でぶち破るとタントへ拳を叩きつけた。
 咄嗟にとったガード姿勢も不十分であったのか、吹き飛ばされるタント。しかし空中制御をかけて回転をおさえ再び構え――再度急接近をかける芹那を目視。考える暇はない。即座に応戦。
 『ロイヤルサンダーワークス』という術式は神より出ずる稲光である。相手を縛り付け狂乱させる効果をもつ。
(そう都合良く聞いてくれるかは……)
「ンギャー!?」
 思いっきり芹那に直撃した。
「なんだこれ! 痺れてうごかねえ! ていうか動く! 痛え!」
 地面に這いつくばって自分の頭をがんがん煉瓦道路に叩きつける狂人がそこにいた。
(すごく聞いてるわ……)
「じわりじわりとねちっこぉくイジめちゃう。そんなおねえさんはお嫌い?」
 タントはオトナムーブを継続すると、再び雷の技を――。
 放とうとした瞬間、ガバッとあげた芹那の両目が光った。凶悪な……銀河の光だった。

「さぁーってと! この際だから全員一斉にロックオンし……れない!」
 日本語のあやしいことを言ってンモーと地団駄をふむ女子高生、『戦神壱番』天王寺 昴。
「なんで皆離れて戦うワケー!? 半径5m以内に固まってよー! もしくは一列に並んでよー!」
「そんな馬鹿なことすわけないでしょ」
 『Fascinator』セフィーロ(p3x007625)は風のように走ると昴めがけて刀による斬撃を繰り出した。
「ワッザ!」
 『うわ危ないうざい』を短くした言葉で飛び退く昴。
 ゼファーがわざと浅くスイングしたせいか、昴についた傷は少ない。制服がちょっと切れてスカートの裾が斜めにカットされただけだ。
 が、昴はスカートを必死で抑える。
「なにすんだー! ぱんつみえちゃうでしょ! 履いてなかったらどーすんの!」
「さぁて? どうしようかしら」
 ゼファーはそう言うと、板状のものをつまみあげて見せた。くそデカいシリコン製の兎耳がついたスマホである。
「あ゙ー! 私のスマホー! かーえーせー!」
 スカートを片手で押さえもう片方の手を伸ばすという世にもはずかしいポーズで涙目になる昴。
「いいわよ、ほら」
 ゼファーはスマホを昴に放り投げてやると、お手玉した彼女めがけて刀による突きを繰り出した。
「ギャッバ!」
 『ぎゃあ危ないやばい』の略語だろうか。
「で? なんでこの場に高倉やザムエルが出張ってきてるのかしら?」
「知らんし! 知ってるけど教えないし!」
 ズザッと引き下がり、ビームライフルの狙いをゼファーに集中させる昴。
 ゼファーはスッと防御に優れた構えにシフトすると、飛来するビームをすべて剣で切り落と――せなかった。
 脇腹を打ち抜かれ、ビリッとアバター全体にノイズが走る。
(距離をとったら厄介ね。肉薄し続けないと……)
 ゼファーは再び昴へ突進した。両腕を振り回してビームを連射する昴。
「ウンナー!」
 『うわこっちくんな』の略だと思う。

「予定とだいぶ異なりましたが……あなたの相手はわたしが務めます。どうぞ宜しくお願いしますね」
 にっこりと微笑み頭をさげる『しろきはなよめ』純恋(p3x009412)。
 玲とファンが情報を獲得するために戦闘圏外へ出て行ったために、純恋ひとりで対応するハメになってしまったようだ。が、元々1~2人で対応する作戦。一人でもやってやれないことはないだろう。
 相手は……。
「こちらこそ。よろしくお願いします」
 『戦神陸番』香里園 櫻はグッと握った拳を前に出すと……。
「千本櫻芽(ガンファング)!」
 無数の射撃ビットが飛び出し、純恋を取り囲む。
 死角からの攻撃を意図しているのだろうか。ぐるぐると一定軌道上を旋回しながらこちらを狙ってビームを発射し始めた。
 避ける? 防ぐ? 走って建物内へ隠れる?
 否、どれもしない。
 純恋は胸に手を当てると、縹渺艮『凛凛』を歌い始めた。
 アバター体を改変更し、『理想の自分』へ切り替えた純恋は白き光を放ちながらアポカリプティックサウンドを発声。ガンファングを操作していた櫻はグッと歯を食いしばるような表情で頭をおさえた。
 それによって乱れるガンファングの動き。それでも何割かが命中するビーム。
 櫻への対策として、純恋の動きはおよそ完璧だった。
 こちらを物理的に追い詰めるガンファングは、そもそも足を止めて撃ち続けるタイプに弱い。操縦者本人の動きを鈍らせるタイプの攻撃にも弱いのだ。
 が、そんな相性問題を抱えてでも簡単に倒れないのが戦神というJKらしい。
 歌の性質が変わり、純恋が動き出す。朱揺籃『濁濁』を歌い始めたことで意識が無理矢理引き寄せられた櫻は、純恋へと副兵装の刀で斬りかかった。
 手を突きだし、相手をぐわしと掴む純恋。
 つかみ所をちょっと間違えて櫻が『ぴい!』て叫んだのでちょっと位置をあげて顔面を掴むと、『環式』を発動。
「ハマりましたね?」
 そう、純恋のペースに。

 『半魔眼の姫』オルタニア(p3x008202)と『仮想世界の冒険者』カノン(p3x008357)。
 ふたりのコンビネーションはバッチリだ。
「こんなの、テロと同じじゃないですかっ。ゆるしません、私達が相手ですっ!」
 杖を構え、魔力の塊を空中に沢山作り出すカノン。
 狙うは『戦神伍番』桜ノ宮 雅。
「はい。よろしくお願いします」
 一度頭を下げてから、ちょっと垂れ目がちな顔をあげる。
「飛んで、私の魔弾っ!」
「迎え撃て、千年雅楽(ソードビット)!」
 杖を振り込んだカノンと手を振りかざした雅。
 同時に放たれた魔弾とビットがぶつかり合う。
 が、ここは一対一のバトルではない。
「ソードビットかぁ……アタシのは数じゃ及ばないから、カノンに数は託すわ!」
 クイック・セットの姿勢をとったオルタニアはカノンとは別の方向へ回り込んで弓を水平に構えた。
 通常とは異なるが、腕力任せでぴったり同じ位置を狙い続ける姿勢だ。
「そこっ!」
 狙い澄ました矢が風を切り裂き雅へと迫る。
 三つほどのソードビットが集合しバリアを形成すると、それに矢が阻まれた。
 が、オルタニアはにやりと笑う。
 バリアを的にして矢を次々と撃ちまくったのだ。
 打ち破られまいとバリアへエネルギーを送り続ける雅。
 これだけで三つのビットを釘付けにしたことになる。
 カノンの拡散魔力弾を凌ぎきれるほどのソードビットが残らなければ――。
「マジックエンチャント、マキシマイズマジック――っ!」
 魔力弾が更に大量に出現し、そのすべてが
「切詰拡散魔弾(ソードオフショットガン)っ」
 拡散能力の増した魔弾が雅へと殺到。
 と同時にオルタニアはその場から走りカノンの後方へと回った。
 カノンを盾にするかのように弓を構える。
「コマンド:サプレッション・ファイア!」
 オルタニアが走らせたコマンドを肉体がセミオートで実行。何本も同時に握った矢を連続で撃ちまくるという人間離れした弓術だ。
 雅はそのすべてを防御することを一旦諦め、ソードビットをカノンに集中。まずは一人を倒す――。
「だろうと、思いましたっ!」
「しまっ――」
 自らの手が誤っていたことを瞬時に悟った雅。だが遅い。ソードビットはカノンへ無数に突き刺さり、吹き上がったデータ粒子のすべてが魔力へ変換。さらなる大量の魔弾へと変化し――。
「銃機関魔弾(ガトリング)っ!」
「コマンド:マーチング・バレット・アーツ!」
 続けざまに走らせたオルタニアのコマンドは、すさまじい脚力で雅へ距離をつめ、目にもとまらぬコンボを撃ち込むものだった。
 勝敗は、決したと言っていい。

●いっつたかくらひんと
 ハンバーガーショップの前。
「ここを通りたくば、たかくらさんを倒していけい」
 高倉がもうなんて表現していいかわかんない絶妙にバランス感覚のいいポーズで言った。
「笑止! この緋衝の幻影、瀬伊庭玲をとめられるものか!」
 対抗してカッコイイポーズをとる玲。
「……けど、メガネはもう空飛んで店内に入ったぞ?」
「だね。戦うのやめる? 帰る?」
「誰が帰るかっ!」
 軽口をたたく高倉へ、急速に距離を詰めて二丁拳銃をその胸元に突きつけ撃ちまくる。
「その名もアナザーツインハンドガンアーツモードバレットリベリオン壱式」
 と、高倉が背後に立って耳打ちしてきた。
 いつのまに。
 確かに銃は押し当てた筈。
 咄嗟に振り返り銃撃。
 いない。
 更に背後から耳打ち。
「わたし茶屋ヶ坂 秋奈。普通の女子高生。スリーサイズは上から99、66、88」
「嘘をつくにゃあ!」
 また振り返って撃とうとするが、その手をがしりと止められた。
 戦って勝てる相手じゃない。あまりにも手玉に取られすぎている。
 だから、言うべきことを言うまでだ。
「席が2つ空席なのは何故じゃ。……それに壱番は別の者であろう?」
「おっ」
 高倉はそこで初めて、目を見開く表情をした。
「よくわかったね。全人類誰も気付かないと思ってた」
「規模よ」
「けど残念。タイムリミット」

 眼前に、『クエスト失敗』の文字が大きく表示された。

成否

失敗

MVP

セフィーロ(p3x007625)
Fascinator

状態異常

Ignat(p3x002377)[死亡]
アンジャネーヤ
タント(p3x006204)[死亡]
きらめくおねえさん
セフィーロ(p3x007625)[死亡]
Fascinator
オルタニア(p3x008202)[死亡]
砲撃上手
カノン(p3x008357)[死亡]
仮想世界の冒険者
純恋(p3x009412)[死亡]
もう一人のわたし

あとがき

 ――クエスト失敗

 ――戦闘の結果、こちらのアバターのうち半数以上が倒され撤退を余儀なくされました。
 ――街の殆どは破壊されつつあります。

「いっつたかくらひんと!
 この画面を見ている君だけにトクベツぅ!
 アンロットセブンの空席二つのうち四番がいない理由はなーんだ!
 弐番が壱番の席に繰り上がってるのは? 本来壱番だったのはだーれだ!
 それじゃあまた来週! たかくらさんでしたっ」

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