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シナリオ詳細

イレギュラーズ・シンデレラ・ストーリー

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


「座長ぉぉぉ大変です! 主役とエキストラ達が全員、唐揚げを食べ過ぎて腹を壊して病院に――!」
「なにぃぃぃぃぃ!!? そんな馬鹿な開始までもうすぐだぞぉ!?」
 幻想東部フィッツバルディ派閥の領土が一つインビーダス領では劇が行われる予定であった。その劇を担当するのはかつてバルツァーレク領でも演劇を行った事のある劇団『パピルン』――幻想や海洋などの街を中心に演劇を展開している団体である。
 ……が、演劇当日になってキャスト達がはしゃぎすぎて唐揚げ一気食いしてたら皆ダウン! お腹いたくてそれ所じゃないらしい。お前ら何してるの!! バカ!! 開始三十分前よ!?
「……という訳で今更中止になど出来ないので! 是非!
 是非ローレットの皆様の力をお借りしたく!!」
「構わないんですけれど、以前もなんか似たような事しませんでした?」
 そんな感じの事情を説明されて受け付けたのはギルオス・ホリス(p3n000016)だ――
 なんか前にも似たような依頼を受けた事があるような無いような……まぁいいや。とにかくこの依頼の内容は『演劇の代役』というだけの話である。さてでは重要なのは一体どういう劇なのかという事だが。
「ああそれは『シンデレラ』をする予定でした」
「へぇシンデレラっていうと――アレだね!」
 シンデレラ。有名な童話の一つであり、簡潔に説明するならば『継母と連れ子である姉達に虐められていた少女シンデレラが、魔女の力も借りてお城で開かれる舞踏会に参加し王子に見初められる話』である――
 より細部を説明すると魔法の効力は一夜だけとか、ガラスの靴を落としてしまいそれを手がかりに王子が探すとかまぁ色々あるのだが……ともあれ大筋で言えば先述の様な要素が中心になるだろう。虐げられていた少女がお姫様として成りあがる――そのストーリーはシンデレラストーリーとも言われる程に有名だ、が。

「あ、いやちょっとそこは違う部分がありまして……
 実は舞踏会じゃなくて武闘会をする、っていうストーリーでして」

 えっ? なんて?
 聞き間違いかな? 武闘会って全然意味が違うような……
「ああ殴り合いをするって意味の『武闘』ですよ!
 あ、でも予定変更でアドリブ効かせまくってもらっても大丈夫ですので!
 なんならシンデレラ二人も三人もいてもいいですよ!!」
 いやいやいやいやちょっと待て待て待て。
 なんて言った? 『舞踏』会じゃなくて『武闘』会……?
 つまり殴り合いのストーリー……? 継母とかに『アンタが武闘会に参加なんて(腕力が足りな過ぎて)ダメだよ!』とか言われるのだろうか? なんか一気にストーリー変わってない? むしろこれ鉄帝向けじゃない?
 しかもシンデレラが複数人とかどんな展開になるのだ。
 最終的にシンデレラ・バトル・ロワイヤルに発展するのでは!? いいのかそんな劇子供に見せて! ていうかお前らキャストが万全の状態でも武闘会シンデレラするつもりだったのか!?
「そんな感じにこんな感じになんか上手くやっていただければと!
 あっ! 衣装ですとか小道具ですとかは沢山ありますので、そこはご心配なく!
 大概のモノはありますよ! なんならダイナマイトだってありますし!!」
「なんでそんなモノがあるんだ危ないでしょ!」
「ああ、そうこうしてる内にもう二十分前……とにかくよろしくお願いしますね!」
 座長らしき人物は『後は全部任せた!』とばかりに輝かしい笑顔と親指を立てて舞台の方に挙がっていく――観客に予定通りもうすぐ始めますと宣伝しに行ったのかあの野郎……!?
 くそう。なんだかとにかく厄介事を投げられた気分だ――しかし依頼ならば仕方ない!
 とにかく『シンデレラ』であれば……いや最悪『これがシンデレラだ!』と言い張れば何も問題ないだろう!!
「……イレギュラーズ達に話をしておかなきゃね」
 やれやれと、ギルオスは吐息を一つ零しつつ。
 準備を急がねばと――貴方達に声を掛けるのであった。

GMコメント

 シンデレラってこういうストーリーだった!(おめめぐるぐる
 ご縁があればよろしくお願いします!

●依頼達成条件
 演劇を完遂する事!

●シチュエーション
 幻想国内フィッツバルディ派閥の領土が一つ、インビーダス領の一角です。
 とある施設を借り受け、周辺の子供達などを前に演劇が行われる――予定でしたがなんとキャスト達が唐揚げ食べすぎてダウンするというとんでもない事態が!
 皆さんはダウンしたキャストに代わりこの演劇を完遂してもらいます!

 ちなみにキャストとは言いましたが、準備などの裏方役で動いて頂いてもOKです。
 とにかく皆さんは『シンデレラ』を演じていただきます。
 ――ただし台本では『舞踏会』ではなく『武闘会』が何故か行われる予定だったみたいですが。なぜそんな泥臭いシンデレラが行われようと……!?

 皆さんは『武闘』会シンデレラを行っても構いませんし、他にもアドリブ効かせまくってオリジナルシンデレラストーリーをしていただいても構いません。ええい、最終的にシンデレラと言い張ればシンデレラなのです!!

 重要なのはとにかく演劇が終了まで行われる事!
 皆さんのプレイングで今回の『シンデレラ』が色付いていくのです……! はたしてどんなシンデレラになる事か!

 ちなみに前回というかシチュエーションが似ている様な話(https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/4458)が以前あったのですが、特に繋がりは(多分)ありません。雰囲気はこんな感じになるかも! ていう感じです!

●衣装やら小道具やら
 なぜこんなにあるのか不思議ですが、色んなものがあります。貴族風の衣装であったり、銃(レプリカ)であったり、練達風の近未来的な衣装だったりと……とりあえずなんか探せばお望みのモノが見つかりそうな雰囲気です。
 ので、必要そうな小道具はその場で取りそろえる事が出来るでしょう。

●子供達×たくさん
 演劇を見に来た子供達です! めっちゃ楽しみにしてますよ!
 あ、子供達ばかりという訳でもなく大人とかもいます。貴族とか或いはお知り合いの方とかいたりするかもしれませんねもしかしたら!

●情報精度
 このシナリオの情報精度はEです。
 シンデレラ万歳。よろしくお願いします!!

  • イレギュラーズ・シンデレラ・ストーリー完了
  • GM名茶零四
  • 種別通常
  • 難易度EASY
  • 冒険終了日時2021年08月31日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ゼファー(p3p007625)
祝福の風
小金井・正純(p3p008000)
ただの女
ブレンダ・スカーレット・アレクサンデル(p3p008017)
薄明を見る者
海紅玉 彼方(p3p008804)
扇動者たらん
ジュリエット・ラヴェニュー(p3p009195)
ゴーレムの母
メイ・ノファーマ(p3p009486)
大艦巨砲なピーターパン
杜里 ちぐさ(p3p010035)
明日を希う猫又情報屋
月折・社(p3p010061)
紅椿

リプレイ


「シンデレラ――今日は武闘会の日ですが、お前は来てはなりませんよ。家で筋トレでもしていなさい。あぁそうですねベンチプレスの記録更新まで部屋から出る事を許しません」
 遂に始まったシンデレラの舞台劇。継母がシンデレラをいびる――そのシーンを演じているのは『夏の思い出に燻る』小金井・正純(p3p008000)だ。
 シンデレラ……ふむふむ。『継母と連れ子である姉達に虐められていた少女シンデレラが、魔女の力も借りてお城で開かれる武闘会に参加し王子に見初められる話』らしいではないか。なるほど脚本を読んだ限り実際にそうである様だ――なんか武闘系な所に違和感あるけど。
 まぁいいやまぁいい。細かい事を考えていたら負けだと正純はもう直感からして理解している。
 故に己は己の役を演じるのみだ――そう!
「ふふ、そうよ今日の武闘会。貴女たちは部屋でプランクでもやっているといいわ。プランク一万回に一時間も掛けてしまう未熟な貴方達ではまず予選落ちが精々でしょうしね……」
「その壊れたベンチプレスを精々直して鍛錬にでも励んでいたら? まぁその間に武闘会は終わってしまうでしょうけれどもね!」
 『猪突!邁進!』ブレンダ・スカーレット・アレクサンデル(p3p008017)と『薔薇の名前』ゼファー(p3p007625)が演じる義姉の様に! 只管役目に徹するのだッ――! どうしてこんなに筋トレ器具が沢山御伽噺に出てくるんだろうね。不思議だなぁ。
(いや本来はもっとこう……夢と浪漫に満ちた少女の成功物語なのだが……
 でもこの劇団ならあり得るか……前回は赤ずきんが三人ぐらい出てきたしな……)
 以前にも内容が若干異なるが同様の依頼を受けたブレンダは心のどこかでこの劇団の性質を悟りつつ、なんかおかしい気がしながらもシンデレラの姉役を演じていく――であれば。

「くっ……義姉様たちの脳筋思想め……!」
「だめだよ! 義姉さん達に逆らったら、またプロテイン無しにされちゃう!!」

 続いての登場は姉らに虐められるシンデレラ(複数形)である――! 主役たる身に抜擢されたのは『レディ・ガーネット』海紅玉 彼方(p3p008804)と『ピカピカの特異運命座標一年生』メイ・ノファーマ(p3p009486)だ――姉らの執拗ないじめに耐えるも彼方デレラは特に歯がゆい表情を迫真に。
 ――これより母らは国一番の強者を決める武闘会へと出かけるのだ。
 その最中に弱者たるシンデレラは不要と……おのれ継母ッ!!

「話は聞かせてもらったわ。灰被りの少女――
 私は紅蓮の魔女、欲しいものは全て実力で手に入れてきた女よ」

 その時。拳を握り締めるシンデレラ(複数形)の眼前に現れたのは魔女役を務める『在りし日の片鱗』ジュリエット・ラヴェニュー(p3p009195)である。閉まっていた頑強なコンクリート製の扉を己がゴーレムに無理やりぶち破らせて派手に登場し。
「王子様を射止めたいのであればこんな場所で灰かぶったまま終わって良い訳ないわよね? さぁ――貴方達に現状を打破したいという渇望はあるかしら? 鼠で終わりたいか、獅子へと至りたいか……」
「変わる……私、変わるよ!!」
 さすれば彼方デレラは即座に反応を。
 そうだ――現状のままで良い筈がないのだと――しかし!
「でも貴方の力なんていらない!!」
「――へぇ?」
「これまでお義母様や義姉様たちにも隠していた『魔法』の力で、私一人でやっていくわ!
 予選ぐらいこれで――必ず突破してみせるんだから!!」
 そう。なんと彼方デレラは世にも珍しい魔法神秘特化型シンデレラだったのです!
 その手に籠められしは巨大なる魔力の収束――
 魔女に諭され戦う意志を決めたシンデレラ(複数形)の行く末や如何に――ッ!


「やれやれなんて展開だ。子供たちは何故か目を輝かせて見せているから……まぁいいと思うべきなのかなぁ。シンデレラにも所説あるからこういう展開も一つぐらいあるよね」
 多分、と。裏方として動く『紅椿』月折・社(p3p010061)は舞台上の展開に関心していた。まぁちょっとなんか変な気がしないでもないが、しかし一番優先すべきはお客さんに『楽しんでもらう事』であれば。
「多少の差異がアクセントになってるならむしろ好ましい――てね」
「社~社~子供サイズの王子様の服、あるかにゃ? そろそろ出番が来ちゃうにゃ……」
 おっと、と。社が視線を向けた先にいたのは衣装を漁っている『少年猫又』杜里 ちぐさ(p3p010035)であった。彼は王子様役を務める事になっているのだが、身長が小さく合う衣装や小道具を探すのに苦労しているらしい。
「あっ……なんかいいもの見つけたにゃ。ちょっとこれ借りていくにゃ」
「大丈夫かい? ふふ、それじゃあ今度はシンデレラのお色直しの時間だ。
 王子と姫の舞踏なら、どこまでも美しくあるべきだよね――とびっきりを用意しなきゃ」
 が、熱心に探したが故か『見つけた代物』があって。さすれば意気揚々とちぐさは舞台の袖に向かうものだ――次なるシーンは王城での話か。入れ替わる様にシンデレラ(複数形)がやってくるので、社の仕事は盛り沢山である!

「さあ、皆様お待たせ致しました――遂に継母達は武闘会の会場に辿り着いたのです」

 そしてついでとばかりに進行役もやってみせよう――! 場面の切り替わり、暗転。
 光が輝いた先にはセットが変わって王城内――
「今日は僕のために来てくれて嬉しいにゃ。でも、多くを語る必要はないにゃ。百の言葉よりも一の拳の方が、その人となりが見えてくるもの……だからその強さ……見せてみるにゃ!」
「ふ――シンデレラがいなければこんな大会、余裕よ」
 ちぐさの号令と共に大広間で闘志が膨れ上がるッ――!
 だがその闘志を受け流すように余裕を見せているのはゼファー義姉様だった。
 シンデレラ……あれには類まれなるフィジカルらしき才能があった。其処に秘されたポテンシャルは歴戦の勇士たる義姉すら恐るべきもの――いやもしかすれば己すら超え得る恐ろしい素質――! だから今日という日まで妨害を続けていたのだ。
「シンデレラのベンチプレスやダンベル、ショルダープレスを破壊した日なんてあぁ実に楽しかったわね……フフッ。それにココア味のプロテインだと思って飲んでいたものが只のココアだってばらしたら――どんな顔をするかしら!」
「そんなことをしていたのか……いじめなのか、いじめじゃないのか、うーん」
 高笑いのゼファー義姉様に、顎に手を当て悩むブレンダ義姉様。
 二人して衣装はドレスだ――それは余裕の表れ。舞踏会の衣装で武闘会を制して見せるという絶対王者の自信があるのでしょう。それにしてもブレンダ義姉様は年齢的には正純さんより継母向きなのでは、あ、すみません何でもないですヒッ!
「正純殿の方が似合っているから問題ないッ――! と、コホン。
 それより継母様。継母様までどうしてこの舞踏会に参加を?」
「――愚問ですね。全ては……『愛』の為ですよ」
 愛――? 継母役の正純は脳裏にある光景を思い浮かべていた――
 そうシンデレラ(複数形)を引き取った日の事だ。
 シンデレラ(複数形)……前妻と『あの方』の子。ああ『あの方』が真実愛し、私の様な仮初にして一時の愛ではなく――あの方に慈愛の眼を向けられ与えられた子よ。
 憎たらしい。
 私達には、与えられようもないものを生まれた時から持っている……!

「だけれども――この武闘会を制すれば『あの方』は私にも真実の愛を与えてくれるのです! さあ、行きますよ娘たち! 武闘会の優勝は我々の手に!」

 あの柔和な微笑みを、私だけのモノにッ!
 そう。継母は愛を求めるモンスターだったのです! 狂おしいまでの情熱は渇望に至りて――武闘会トーナメント参加者は千切っては投げ、千切っては投げされてあっという間に壊滅状態――!(※社ナレーション)
「そう――継母、ついに本性を現したという訳ね……
 昔のアンタはもっと純粋だったはずなのに……」
 同時。王城へと急ぎ向かう魔女のジュリエットはかつての親友であった継母の変わり果てた姿に、何らかの感情を見せますが……しかし振り払うように瞼を伏せて。
「シンデレラ――城門を突破するわよ。欲しいものは戦って手に入れるのよ……いいわね? どんな手を使うかは任せるけど色恋というのは他の女を蹴落としてでも奪うもの。貴女達にはその権利と力がある……だから、足だけは用意してあげるわ」
 後はさっき啖呵を切ったように自分でなんとかしてみなさい、と。
 魔女はなんと手持ちのゴーレムで王城へと攻撃を仕掛けたのです。あわや兵士達は大混乱――その最中に、魔女の作り出した変形型移動用ゴーレムに乗ったシンデレラ達は警備を突破します!
「どうしたにゃ! 敵襲にゃ!? 隣国の宣戦布告にゃ!?」
「いいや――突発乱入なだけだよ王子様ッ!!」
 そして王子のちぐさが玉座より立ち上がる中、窓を勢いよく破って会場内に突入してきたのは――そう! 彼方デレラです!!
「な――シンデレラ!? 馬鹿な、トーナメント受付はもう終了して……」
「関係ないわブレンダ義姉様、ゼファー義姉様――その命、頂戴するわ覚悟ッ!」
「しゃらくさいわ! まだまだヒヨッコのシンデレラ如きがッ――!」
 彼方デレラより放たれる閃光。を、ゼファーが剛の拳で真っ向より立ち向かう――
 大気を殴るかのように突き出した正拳は閃光と衝突し衝撃波を発生。そう……ゼファー義姉様は功夫の使い手だったのです!(デデーン)武でねじ伏せるその様は繚乱にして鮮麗、そして苛烈!
「流れる水の如き柔軟さの中に、烈火の如き爆発力……それがこの拳の在り方よ」
「シンデレラ――敗因はその若さでしたね」
「くっ――!」
 ゼファーに追い立てられ、正純に圧を加えらえれる彼方デレラ――しかし。

「うふふふふ……はーっはっはっはー!」

 その時。彼方デレラを救う影が現れたのです。それは――!
「ジャジャーン! シンデレラだと思った?
 ざんねーん! じつはボクの正体はピーターパンなのでした~!」
 メイデレラ――否! その正体はシンデレラに在らず!
 おとぎ話の国より援軍として現れた――ピーターパン『メイ』だったのです!
「なっ――ピーターパン!? あの伝説の!!?」
 知っているんですかブレンダ義姉様!
「ああ……隣国の行方不明の王子だったはずだ。軍事クーデターにより追われていたと聞くが……まさかシンデレラとして国内に潜入していたなんて……!」
「ふふ! シンデレラちゃんを守るために、変装していっしょにいました~! という訳で行こうシンデレラちゃん! 一緒に――この戦いを勝つんだ!」
「ええ――今こそ継母様達を打ち破る時!!」
 さぁ三体一の戦いが三体二となりました――こうなれば圧倒とはいきません。メイの魔砲が戦場に瞬き義姉を貫けば、間髪言えずに彼方デレラが死の舞踊にて攻めたてるようだッ――(※迫真の社ナレーション)
「ぐっ……! まさかここまで成長しているなんてねシンデレラ。まぁシンデレラ複数形というのは昔からおかしいと思っていましたが……だけれど私だって負けるわけにはぐわーっ!!」
 そして遂に王者たる継母に良い一撃が入ってしまったッ――!
 吹っ飛ばされていく継母様、であれば。

「おのれ継母をよくも……! 砕け散るがいいわ、シンデレラ!!」

 ゼファーが仇を取らんと掌底一閃!
 躱すシンデレラ――背景を彩っていた小道具に直撃すれば、ソレが粉々になって。
「ちょ……ゼファー殿落ち着、ゼファー殿!!」
「はぁぁぁ……せいッ!!」
 駄目だ周りが見えてないぞこの人! とブレンダは気付いて止めに掛かるのだがゼファーは止まらない!(後日インタビューした所『熱くなっちゃって、つい☆』らしい)
 義姉と義姉の刹那の対決――
 掌底、膝蹴り、肘打ち、正拳突き、手刀……数多の攻防に大人ドン引き。子供ハイテンション。流石にそろそろ\あの姉ちゃん何やってんだ/と観客席がなり始めた所で。
 震脚一閃!
 会場が震える――観客席が震える――ついでにゼファーの足元も震えて、あっ。
「あっ、しまった床が抜け、ぐあ――!!」
「ちょ、ゼファー殿私を巻き込むのやめ、ぬぁ――!!」
 轟音一つ。あんまりにも思いっきりやりすぎて床抜けちゃった――!
 文字通り奈落へと落ちていく二人。生き残ったのは――シンデレラか!
「うーん今年の武闘会はここ一番の大盛り上がりになったにゃ!
 ……でもまだこれで終わりじゃないにゃ」
 しかし――そう。王子のちぐさの言う通り終わりではないのです。なぜならば。
「僕より弱いお嫁さんはいらないにゃ。僕と勝負にゃ!」
「なっ――シンデレラちゃん、危ない!」
 さっきちぐさが小道具から取り出した道具――ゴム弾ピストルを向ける。咄嗟にメイが彼方デレラを庇うも肩に命中……! 何という事でしょう、これは大ピンチです! 鍛えられた肉体も銃には勝てないのか――!?(※煽り立てる社ナレーション)
「あっ、当たっちゃったにゃ! え、ええと、これは小手調べにゃ!
 次は僕の肉体の力を見せてやるにゃ!!」
「王子ィ――!」
 当てるつもりはなかったのにあたっちゃって慌てる王子。
 感情のままに神秘を収束させる彼方デレラと激突し――やがて12時を迎えんとします。

「……武闘会終了の合図ね。シンデレラ、この一夜だけが――貴方の未来を決めるのよ」

 外の警備兵相手に無双してた魔女のジュリエットは闘争終了の気配を感じ取ります。
 勝ったのは誰か――負けたのは誰か――
「や、やるにゃ……君が、君こそがお嫁さんに相応しいにゃ……
 ど、どうか、このガラスの靴を……キミに履いてほしい……にゃ……」
 さすれば再度場面転換。
 倒れるちぐさ王子はシンデレラにガラスの靴を差し出します――
 それはこの国における指輪に等しき国宝。しかし……
「シンデレラちゃん……どうするの?」
「決まってるわ――いらないわよ」
 メイの声。答える様に彼方は王子に背を向けて。

「私はただの途中参加者。
 また、正式に参加した時にガラスの靴を取りに行くから――その時まで持っていなさい」

 彼女はピーターパンと共に帰るのです。
 自らは勝者に相応しくないと、自嘲する様に。そして王城を後にせんとします――
「流石シンデレラちゃんだね……僕、一度国に帰るよ。
 そしてシンデレラちゃんに相応しくなったら――また会いにくるからね!」
「ええ――また会いましょうね、メイ」
 さすればメイも空を舞うように。
 シンデレラが帰るべき家に戻る様に、メイもまた己が戻るべき場所に戻るのでしょう。
 ――こうして第三十三回武闘会は終了しました。
 シンデレラの名が轟くのはおよそ一年後。

 第三十四回武闘会覇者として――その名を歴史に刻むのですが、それは別の物語……

『さぁ――いいこと、この劇を見ている女の子(シンデレラ)達』
 そして舞台の幕が閉じ往く中、響く声は――ジュリエットか。
『なにが言いたいか分かったでしょう――? 王子様(ロミオ)は待ってくれないのよ、運命の相手は自分で選び自分で掴むこと。そうでなければ一生継母の奴隷だったわ、シンデレラは』
 だから君たちも――何かが欲しいなら立ち上がるのだ。
 きっかけは何だっていいし、結果的に助けられてもいい。
 それでもきっと、自分の足で歩いて、自分の手で掴む事が――重要なのだから。


「所で疑問なんですけど、これ本当にシンデレラの正しいストーリーなんですか??? ちょっと誰か原作のお話が乗った本、見せていただけません?」
「ふぅっ! やり切ったわ、皆お疲れ! 打ち上げいきましょうか!!」
 全て終わった舞台裏。未だに拍手が鳴り響く中で正純はドストレートに疑問をぶつけていた。でもゼファーが凄くいい汗かいててなんか爽やかに終わった感出してるから、まぁ、ええかな……? だめ?
「お客さん、なんだかんだで喜んでくれているみたいにゃ!
 いやーよかったにゃ……皆のワクワクを裏切らずにすんだにゃー」
 ともあれ劇は凄い高評価な感じで終わったようだ――いや本当にあれでよかったのかと思わないでもないが、ちぐさはともあれ緊張するけれど頑張っただけの甲斐はあったものだと思考する。
 やはりお客さんの笑顔が一番なのだから。
 好きなテレビが放映される日は己の心がワクワクで包まれていた様に――理解できるから。
「シルト……シルトはいないよな? あいつ、いないよな? やめろよ今回は、ホント」
「ふふ――とにかく皆、お疲れ様。素晴らしい劇になったね」
 と、こっそり何か心配事でもあるのか観客席を覗き込むブレンダ……に、裏方として様々動いていた社が声を掛ける。彼女の働きが無くばああもスムーズに舞台は進まなかったであろう――
「いきなりのしかかってきた重圧。
 全ては僕らの手腕で、だからこそ僕らの責任でもあった訳だけど……」
 同時。観客席を見据える。
 そこに在ったのは幾つもの笑顔。楽しかったという幾つもの喜びに溢れていて。

「――だからこそこの成果もまた、僕らだけのものと言えるだろうね」

 なんだか凄いシンデレラにはなったが……それはそれ。
 劇は成功した。観客たちの笑顔が――その証左となっただろう。

成否

成功

MVP

月折・社(p3p010061)
紅椿

状態異常

なし

あとがき

 シンデレラってこんな話でしたね……懐かしいなぁ!
 MVPは裏方として頑張った貴方へ!
 ありがとうございました!

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