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シナリオ詳細

痒いアレの季節

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●痒いアレ
「うっうっ……かゆ……かゆいのです……」
 『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)がしかめっ面を浮かべてぷるぷると震えていた。
 その腕はある1点を中心に赤く腫れている。
「膨らみ虫のせいなのです! 痒くてピリピリしてくるのです!」
 その虫は、旅人(ウォーカー)から言わせれば蚊に近いものだという。
 人から吸血し、その血を蓄えて栄養に……できないのが膨らみ虫。
「吸った血を溜めて、その内溜めきれなくてパーンってはじけちゃうのです。空ではじけられたらスプラッタなのです」
 見た目も刺激的になる上、降りかかるものは何人もの血が混ざったものである。気分的にもいいものではない。
 そんな膨らみ虫が大量に町付近で湧いたのである。
「どこからか移動してきたのだと思います。移動ついでに血を溜めたのですかね? とにかく、町中ではじけたら大惨事なのです。皆さん、そうなる前にはじけさせて下さい!」

●黒い群れ
 プ~ン。

 プ~ン。

 嫌な音が重なる。増える。
 緑豊かなそこに現れた黒い群れ。
 それはわらわらと群がり、徐々に人の多いほうへ──町へと進んでいた。
 だが、膨らみ虫たちはその途中に立ちはだかる者を視認する。

 ああ、餌がある!
 ちょっとくらい寄り道したっていいだろう。もっと先の餌を求めて目の前の餌を逃すなんてもったいないことだ。

 ……なんて、膨らみ虫達が考えているのかは定かではない。
 けれど討伐を請け負ったイレギュラーズ──あなた達が餌と認められてしまったことは、どうやら確かなようだ。

GMコメント

●成功条件
 膨らみ虫の討伐

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

●膨らみ虫
 見た目は蚊です。飛んでいるとプ~ンと音がします。イレギュラーズでも刺されれば痒いです。
 数はおおよそ30体くらいです。
 森の方から町へ向かって進んでいます。生き物を見れば吸血に向かうでしょう。
 だいぶ大きくなっており、小さくても30cm程度はあります。
 戦闘には消極的ですが、吸血には積極的です。ただし死人が出たことはありません。
 人の多い町の方へ向かおうとしています。
 ムチムチボディはそろそろ破裂しそうな個体なので注意して討伐しましょう。破裂するとこれまで吸った血を撒き散らします。血液凝固などはしていないです。

・吸血
 血を吸います。対象へダメージを加え、自らは若干回復します。段々体は重くなり、やがて破裂します。
・撒き散らし
 自爆です。最後の力(?)で体を破裂させ、中身を撒き散らします。【不運】付与。

●周辺環境
 森を抜けると草原が続き、やがて町に辿り着きます。
 遮蔽物も特になく、長閑な草原です。
 イレギュラーズは町側から進むことになります。

●ご挨拶
 愁です。私はもう刺されました。かっゆい。
 膨らみ虫は大きいと5歳程度の子供くらいあると思ってください。
 前述の通り戦闘には消極的な為、手を抜くとさっさと町の方へ向かってしまいます。頑張ってください。
 それではご縁がございましたら、よろしくお願い致します。

  • 痒いアレの季節完了
  • GM名
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年07月10日 21時30分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

那木口・葵(p3p000514)
布合わせ
雷霆(p3p001638)
戦獄獣
アリスター=F=ナーサシス(p3p002118)
モノクローム・ウィスパー
アーデルトラウト・ローゼンクランツ(p3p004331)
シティー・メイド
ルア=フォス=ニア(p3p004868)
Hi-ord Wavered
久住・舞花(p3p005056)
氷月玲瓏
蓮乃 蛍(p3p005430)
鬼を宿す巫女
エウラリア(p3p005454)

リプレイ

●膨らみ虫撃退方法
(……「蚊を落とすのは得意」とはいったけど、マジででっかい蚊っぽい何かと相対することになるとは)
 感知した虫──おそらく膨らみ虫──にどこか遠い目をする『モノクローム・ウィスパー』アリスター=F=ナーサシス(p3p002118)。
 まだ遠い位置だが、このままなら今いる場所を確実に通過していくだろう。
「あぁ、知ってますよ。血を吸うのに栄養にはせず弾ける謎のやつです」
 襷をかけていた『鬼を宿す巫女』蓮乃 蛍(p3p005430)に問われ、答えたのは『布合わせ』那木口・葵(p3p000514)だ。
「栄養にならないのに破裂するほど吸い続けるのか……どういう生き物なんだ、膨らみ虫」
 『戦獄獣』雷霆(p3p001638)が怪訝そうに首を傾げる。それはエウラリア(p3p005454)も同じ様子だ。
「破裂するまで吸血する虫とは、奇妙な虫もいるものですね」
 何のために吸血するのか。栄養にできないならどのようにして生命活動を維持しているのか。様々な点で疑問の残る虫である。
 旅人の言う『蚊』に似たものだという葵の言葉にルア=フォス=ニア(p3p004868)が「なぁ」と声を出した。視線がルアへ集中する。
「蚊取り線香は無いのか? 進路上で焚きまくれば、それで終わる気が……」
「……ありませんね」
 困ったように蛍が眉尻を下げた。久住・舞花(p3p005056)も蛍の言葉に頷く。
「そうか、是非もないのぅ」
「練達で探せば専用の撃退グッズとかありそうじゃないです?」
 葵がそう口にした。
 練達の技術ならこういった害虫を撃退できる技術も生み出している気がする。いや、生み出していてほしい。
「わたくしはシティー・メイドでございますのでお掃除は得意でございます。ええ、特に物理的な排除という意味の掃除でしたら最も得意と致しますが……」
「あ、そろそろ近いみたいだ」
 『シティー・メイド』アーデルトラウト・ローゼンクランツ(p3p004331)の声に被るように、ギフト《ヴァンパイアキラー》で逐一膨らみ虫の位置を確認していたアリスターが森の方を指で差す。
 一同が視線を向けると、丁度黒くうぞうぞとした群れが森を抜けてきたところだった。
「……いささか、数が多いのが難点でございましょうか」
 アーデルトラウトの言葉が静かに続く。
 う、と舞花は顔を引き攣らせた。
「確かに、蚊をそのままスケールアップしたような……こんなものがこの世界には居るのね」
「環境が変われば蚊の大きさも変わるのですね。流石は異世界、といったところでしょうか……」
 舞花と同じウォーカーである蛍は膨らみ虫の姿に目を丸くした。
(そろそろ蚊取り線香の用意を……と思っていましたけど、これは戸締りに気を付けたほうが良さそうですね)
 蚊取り線香が効くようにも見えないが、恐らく相手にとっていい匂いでもないはずだ。夜はしっかり戸締りをして、線香を焚いて寝よう。
「いずれにせよ、放置しておくわけにはいきません」
「確かにこんなものを街に行かせる訳には行かない」
 エウラリアの言葉に舞花が頷く。
 知っていても脅威だろう。自分も、知らずに見ていたらどう感じたことか。
 排除の依頼が出るのも納得だ。
「皆様、張り切って参りましょう」
 蛍が静かに前を見据える。ルアが前に出て、そのすぐ後方に位置どったアリスターはゴーグルを目元へかけた。

●不協和音は黒い影と共に
 ぷ~ん。ぷ~ん。
 嫌な音がいくつも重なって、更なる不快感を催していく。
 そんな中、一条の雷撃が膨らみ虫の群れを突き抜けて行った。
「んむ、爽快じゃな!」
 3匹ほどバランスを崩してふらふらと辺りを漂い始める。
 ルアの雷撃を追うように膨らみ虫へ肉薄していったのは雷霆だ。その掌に気を溜め、そこそこの大きさになっている膨らみ虫へ放つ。
 気功爆弾の勢いに腕をかざした雷霆。今にも地面へ落ちそうな膨らみ虫は雷霆に向かっていくが、その動きは不意に止まった。
「行かせませんよ」
 後方からの声。葵の放った魔法の縄が膨らみ虫を取り巻いている。次いでエウラリアの拳銃から放たれた弾が敵を撃ち抜いていった。
 その反対側では進路から逸れようとした膨らみ虫にアリスターがライフルを構えている。
 ルアの範囲攻撃は数多い敵に対して非常に有効だ。その攻撃をより効率的にするためにも、進路を逸れてもらっては困る。
 ライフルから撃ちだされた銀の弾丸は膨らみ虫を掠めたか、どうか。そこへ追撃するように前へ出た蛍が式神を放つ。
 白い鴉を模した式神は真っすぐ膨らみ虫へ向かっていき、片側の羽をもぐ。
 畳みかけるように舞花の刀が一閃されて膨らみ虫は地面へ落ちた。
 広がる血だまりを半歩引いて避け、舞花は素早く辺りを見回す。
 足捌きは武術の基本。しかし予想外の事態(アクシデント)を防ぐ為にも状況把握は必要だ。
「ライトニング、ぶっ放すぞ!!」
 ルアの声に射線から離れると、そこを雷撃が通り抜けて膨らみ虫の体力を削いだ。
 早くもイレギュラーズの前衛を突破しようという膨らみ虫へ、アーデルトラウトの銃弾が浴びせられる。
「シティー・メイドであるわたくしも掃除は可能ですが、このような汚れはエウラリア様に後でお願い致しましょう」
 地へ落ちた血に一瞬視線を向け、アーデルトラウトは小さく呟いた。
「む、次はこちらか……っ」
 迫ってくる膨らみ虫に雷撃を放つべくルアが体の向きを変える。
 しかし、敵越しに見えたのは雷霆の姿。そして虫は膨らみきったムチムチボディ。
 反射的に腕をかざすと、ぷつ、と肌に鋭いものが刺さる感触がした。
(我慢じゃ。絶対に掻いてはならぬ……!)
 ぱん、と風船が弾ける様な音。同時にぬるりとした液体がルアへ降りかかる。
 だが。
「ふははは! 今の儂に、こんな血液ぶしゃーなど通用せぬわ!」
 呵々と笑うニア。
 その全身には1滴たりとも血は付着しておらず、その体の表面には何かの膜が張っているように見えるだろう。
 かざしていた腕を振り払い、ルアは味方へ声をかけて迫ってくる膨らみ虫に雷撃を叩きこんだ。

 迫ってきていた前線はやがてイレギュラーズの前衛とぶつかり、段々後衛へと流れていく。
 戦いによる体温の上昇と周囲に増える吐き出す息、誘う如く晒された素肌のせいだろうか。比較的イレギュラーズ達へ引き付けられているのが幸いだ。
 進行の邪魔をしきれない数であるとはいえ、敵味方が混ざってしまえばルアのライトニングも放ちにくい。ルアはすぐに攻撃方法を切り替えた。
「丸焼きにしてくれるわ!!」
 放たれた炎が膨らみ虫を包み、ルアの足元へ落ちる。
 敵との距離が近すぎると判断したアーデルトラウトは剣を抜き、膨らみ虫へ切りかかった。
 その攻撃に膨らみ虫が逃げの1手を取るが、そこへ葵の魔弾が飛来する。
 後衛へ流れていく膨らみ虫を仕留めたアリスターは、近くで破裂した膨らみ虫の血を頭からかぶってしまった。だが、ゴーグルをしていたおかげで目元は無事である。
 用意しておいてよかったなぁ、と思いつつアリスターは次の標的へライフルを向けようとして──やめた。
 被った血から嫌な気配を感じたのだ。
 このまま動くのは良くない、と攻撃の手を止めるアリスター。
 しかし自然治癒の前に葵からの術によって回復することができ、再びアリスターはライフルを構えた。
「遅くなりました」
「大丈夫、助かったよ」
 長くない言葉を交わし、葵とアリスターは尚残る膨らみ虫へ攻撃を向ける。
(……もう少し、かしら)
 まばらになってきた敵を見てそう感じた舞花は、すぐ傍で聞こえた音に目元へ手をかざした。しかし、その前に漆黒の壁が立ちはだかる。
「かからなかったか」
「ええ、けれど……」
「既に何度も浴びている」
 言い淀んだ舞花に雷霆はそう告げた。
 先程から攻撃は外れ、敵の攻撃も通してしまう事態。不吉な何かが雷霆を取り巻いているのは確かだろう。しかし、既に受けてしまっているのならこれ以上悪くなることはないのだ。
 その全身、特に裸体である上半身から赤黒い炎がちろちろと見える。
 それは闘志が可視化したものであり、傷口の存在証明だ。普通の羽虫は燃えてしまうが、吸血を促すなら燃やすわけにはいかない。
(戦意を抑えるのは中々に面倒なのだが、逃げられると困るからな……)
 会話を交わす2人の周囲を膨らみ虫が取り巻く。雷霆と舞花は背中合わせに立つと、それぞれの狙う敵へ肉薄していった。
 仲間内で後衛を担当していたエウラリアと葵は膨らみ虫が向かってくるのに対し、少しずつ後退しながら距離を保っていた。
 エウラリアの持つサウザンド・ワンから放たれた銃弾が体を重たげにした膨らみ虫を撃ち抜き、地面へ落とす。
「行かせません」
 葵は2人の間を抜けようとする膨らみ虫の前へ立つと、その体へ向けて魔弾を放った。
 別の膨らみ虫へエウラリアも立ちはだかり、華美な剣を抜いて切りかかっていく。
「そこにも隠れてるよ」
 ギフトを存分に活用し、草影に隠れる膨らみ虫へ指示を飛ばすアリスター。
 蛍はその指示に式神を飛ばし、今にも破裂しそうな個体には敢えて血を差し出す。
(怖いですけど、これも町の方々のため、ですから……)
 しかし血を出しすぎたか、くらりと眩暈が蛍を襲った。
「蛍さんっ」
 血に濡れた地面に崩れ落ちる直前、気づいた舞花が受け止める。
「大丈夫ですか」
「はい……まだ、戦えます」
 ぐっと起き上がった蛍は舞花の姿に目を丸くした。
 服が赤黒く汚れている。まだしっかりしている姿を見ると、恐らく返り血なのだろう。
 しかし彼女から何となく嫌な気配を感じた蛍はふわりと指先から聖なる光を舞わせた。
 自分の周囲を取り巻く光に一瞬目を丸くした舞花。しかしその口元を綻ばせる。
「ありがとう。転ばぬよう足捌きは気を付けていたのだけれど、なかなか刃が届きにくくて」
 蛍を立たせ、舞花は再び膨らみ虫に向かっていく。
 戦闘が長引くにつれ、仲間達にダメージが蓄積しているのが目に見えるようだ。
 膨らみ虫に刺された葵は顔を顰め、標的を見据えた。
「刺し返してあげましょう」
 敵の周囲に黒い針を無数出現させる。
 針山の如く膨らみ虫へ刺さっていく針。膨らみ虫の血が付着し、地面にぱたぱたと流れ落ちていく。
(……まあ、町のためにもなりふり構っていられませんしね)
 穴のあいた膨らみ虫が針山の消えた地面に落ちる。
 葵はそう納得すると、次の標的へ視線を向けた。

●不協和音が止み
「終わり、ですね……」
「痒いのぅ」
「本当に。いくら刺し返しても足りませんでしたね」
 膨らみ虫を全て落としたイレギュラーズ達は痒みに耐える者、耐え切れずに掻いてしまうもの様々だ。
 力の残っている者が返り血にまみれた者へ治癒を施し、エウラリアが手招きをする。
「少し寄って下さいね」
 皆が近寄ると、エウラリアはギフト《Purifying system》を起動した。
 みるみる浄化されていく返り血に、雷霆が感嘆の声を上げる。
「……これは驚きだな」
「流石に血まみれのままというのは不味いしのぅ」
「他の場所も浄化しておきます」
 綺麗になった姿にルアがほっと表情を緩め、離れた場所の地面を見てエウラリアがその場を離れた。
「あら……そのような布、ついておりましたか?」
 襷を外していた蛍がふと小首を傾げる。その視線が捉えるのは葵の服、腕の部分に縫い付けられた派手な布だ。
「穴があいていたので直したんですよ」
 ほら、と葵がまだ穴のあいていた膝の部分に手をかざす。ぱっと手を離すと──。
「まあ……!」
 瞬時に修復された服。魔法のようなそれに蛍が感嘆の声を上げた。

 エウラリアを待っている間、一同はもぞもぞと居心地悪そうに、時には互いの顔を見合わせていた。
 というのも。
「血を浄化しても、傷の治療をしても、痒みは収まらないようでございますね」
 アーデルトラウトが淡々と告げる。
 そう、撒き散らされた血による嫌な感じはなくなったものの、痒みはなくならなかったのである。
 物理的に血を流さないアリスターでさえも痒みを感じているのは不思議なことであるが、果たして何かを吸われたのか。もしくはそういった痒みの成分だけ残されたのか。
 全くもって不明である。
 そういえば、とアリスターが一同を見た。
「刺された部分って体温より熱めでしばらく温めたら痒くなくなるんだっけか。すこし試してみるかい?」
「聞いたことがあります」
「俺の出番か」
 アーデルトラウトの頷く横で雷霆が刺された傷口からボッと焔を上げる。
「それだと、皆黒こげになってしまうんじゃないかな」
 アリスターの言葉に深く頷かれ、焔を納める雷霆。
「終わりました。戻りましょうか」
 戻ってきてそう告げる自動人形(オートマタ)のエウラリアも、どこか痒そうに落ち着かなげだった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 お疲れさまでした。最後、皆さん痒そうでしたね。
 蚊に刺されたら熱めのお風呂に浸かると良いらしいです。今度は汗で大変なことになりそうですが。
 この度はご縁を頂きありがとうございました。またお会いできますように。

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