PandoraPartyProject

シナリオ詳細

陽だまりのヴァカンツァ

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●猫の落ちる風景
「暑いですね……」
 教会の中、窓から差し込む太陽に焼かれる廊下を行くクラリーチェ・カヴァッツァ(p3p000236)の額にも、やはり汗がにじんでいた。
 比較的薄手の修道服を着ているが、それでも黒系統を基調とする修道服では熱を吸いやすい。
 端的に言ってめちゃめちゃ暑かった。
 冷房をつけていても、廊下に出て日差しに熱された床を歩こうものなら、まあ汗が出るものだ。
「しかし……」
 こてんとクラリーチェが首をかしげるのには理由があった。
「今日は猫たちの健康診断にお医者様がお越しになる日なのですが、みんなどこへ……」
 同時に、今日は外部の者を呼んで猫達との交流も出来るそんな日だった。
 さて、そのまま普段は猫達がいる庭園へと足を踏み出せば――

 照りつける太陽は路地裏を、何にも遮られることなく貫いていた。
 おかげで、加熱された床はこけるとちょっと後悔するレベルで熱を持っていた。
「……ああ!」
 そんなクラリーチェの視界の端、何かが落ちている。
 綺麗な真っ白毛並みがいい感じに背景に同化しているが――あれは、パンジーか。
「よく見たら、あちこちに落ちて……! とにかく皆を冷房の効いた涼しいお部屋へ! ……すみません。
 良かったら、お手伝いいただけますか?」
 猫との交流の為に訪れていた面々へ、クラリーチェが声を掛ければ、各々が頷いた。

 はてさて、どうやら中には良い感じに日陰を陣取り、ただにお昼寝している子もいるようではある。
 それでも健康診断があることも鑑みれば、猫達を回収しないわけには行くまい。
「……そういえば、メイちゃんは」
 今朝から姿を見ていない、銀色の髪をした猫耳少女を思い出した。
 果たして、部屋の中で寝ているのだろうか? そろそろあげた方が……なんてことを思いながら、くるりと教会の方を向けば――そこに落ちていた。
 ――いや、正確には、寝転んでいた。

 まるで猫さながらに丸くなり、近づけばすぅ、すぅと寝息が聞こえてくる。
 丸くなっているのは恐らくは日差しを避けるためなのだろう。
 事実、たった今、日陰に合わせるように足が丸くなっていく。
 猫達の様子を見る為に着て、そのまま眠ってしまった……などが考えられそうだ。
「おねーさま……」
(このままここで寝てしまっては熱中症になってしまうかもしれません。
 ……かわいそうですが、起こしてあげましょう)
 寝言らしき物を零す少女に微笑みかけて、とりあえず近づいていく。

「んぅ……あれ? おねえさま……はっ!
 私、眠ってました!? あわわ、あの子達を呼びに来たのですけど!」
 気づいたらしいメイが慌てふためきながら、周囲を見渡し始める。
 驚いてまんまるな金色の眼が周囲の様子を確認しながら、ホッと安堵していた。

GMコメント

こんばんは、春野紅葉です。

●オーダー
【1】猫達を回収する
【2】猫達とのんびりする

●フィールド
・前半
 教会脇にある小さな庭園です。
 クラリーチェさんの教会に住まう猫達がそこら中の地面にぺたぁ~っと落ちています。
 単純にお昼寝してる子、暑くて溶けている子など様々。
 回収して冷房の効いている室内に連れ戻してあげましょう。

・後半
 冷房の効いた室内です。
 健康診断を終わらせた猫達が談話室の中で思い思いにくつろいでいます。
 存分に遊んであげましょう。
 猫ちゃん用のおやつなども用意されています。

●猫ちゃんたち
・パンジー
 真っ白い毛並みをした優しい性格のにゃんこ。
 背景といい感じに同化してすやすやしてます。

・ぴざねこ(緑白長毛)
 歩くと音が鳴る、極めてぶさかわなニクいヤツ。
 なお、長毛種故に暑さに負けているのか、人一倍ひんやりしている場所に落ちています。

・最近生まれた子猫たち
 シェキャル・ツキェル・シュクルの3匹の猫。白と黒のぶち猫。
 ぴざねこと一緒に比較的冷えている場所で落ちています。
 他の猫達の優しさなのかもしれない。

・ティタンジェ
 シャンパンパンゴールドみたいな瞳をした茶トラ猫。
 日差しが意外とあるところで落ちています。

・美味しそうな名前の猫たち
 ポン酢・おもち・カルボナーラ・チュール・夜食・羊。
 普段は気ままに遊ぶ猫達ですが、今回は気ままにそこかしこで落ちています。

・元気いっぱいな猫たち
 アオイ・グレイプニール・シュスの3匹。
 いつものようにやんちゃバトルを繰り広げたのか、
 疲れ果てたように落ちています。

●その他
・メイ
 クラリーチェさんの関係者で、教会に住まう女の子。精霊種です。
 猫達とも仲が良く、オープニング中では様子を見に来てそのまま眠ってしまった様子。
 丁寧な物腰と理知的な性格で、穏やかかつ悪意を知らずに生きています。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

  • 陽だまりのヴァカンツァ完了
  • GM名春野紅葉
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年08月30日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費150RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

エンヴィ=グレノール(p3p000051)
サメちゃんの好物
クラリーチェ・カヴァッツァ(p3p000236)
安寧を願う者
※参加確定済み※
リカナ=ブラッドヴァイン(p3p001804)
覇竜でモフモフ
鬼桜 雪之丞(p3p002312)
白秘夜叉
十夜 蜻蛉(p3p002599)
暁月夜
御天道・タント(p3p006204)
きらめけ!ぼくらの
クロエ・ブランシェット(p3p008486)
奉唱のウィスプ
暁 無黒(p3p009772)
No.696

リプレイ


「あら? 皆どこかしら?」
 冷房の効いた部屋の扉を開けた『ふわふわな嫉妬心』エンヴィ=グレノール(p3p000051)はそこにいるはずの猫達の姿がないことに気づいた。
 傍らに抱いていた本をテーブルの上に置き、見渡してみてもやはり姿は見えない。
(……確か、今日は健康診断があるとも聞いていたのだけど。
 クラリーさんも出ているようだし、私も少し探してこようかしら)
 首をかしげたところで、何やら庭園の方から声がする。
「皆さま、本当にありがとうございます。……メイちゃんもいっしょに」
 教会を訪れていた6人へ『罪のアントニウム』クラリーチェ・カヴァッツァ(p3p000236)はぺこりと頭を下げる。
「は、はい! ありがとうございます!」
 それに続けるように、隣で猫耳と尻尾を緊張からかピンと立てた少女――メイが頭を下げた。
「おねーさま、お医者様のお時間は大丈夫でしょうか?」
「もう少しありますが……そろそろ皆を集めた方がいいでしょう。
 部屋には靴を脱いで寛げる場所も、テーブルと椅子のセットもあります。ごゆるりとお過ごしください」
「メイちゃん初めまして、よろしゅうねぇ。うちも暑いんは苦手なんよ」
 紫がかった黒色の毛並みをした『暁月夜』蜻蛉(p3p002599)は猫の姿でメイを見上げた。
 メイの方は大きなサイズになのか、しっかりと声を発したのにか少しばかり驚いた様子を見せる。
「んふふ、うちは化け猫やから話せるんよぉ」
「すごいです!」
 目を輝かせるメイに笑って、猫の回収に動き出す。
「猫たちも、暑い日はとても、大変そうですね。毛皮がありますから」
 2体の式神を召喚した『白秘夜叉』鬼桜 雪之丞(p3p002312)は、2体へ猫の回収を手伝うよう指示を出す。
 ゆらりとそれぞれ2本の尻尾を揺らすその姿は二足歩行の猫又を思わせる。
「出番です。猫を、部屋に運んでもらえますか?」
 式神達は頷くと散らばるように猫達の方へ。
(ねこちゃん、もふもふ、暑くてももふもふを止めないの偉い……。
 きっと換毛期だって近いはず。私のギフトで整えてあげないと)
 頷いた『もふもふハンター』リカナ=ブラッドヴァイン(p3p001804)の手には飲み水と保冷剤を包んだタオルがある。
「回収した子からもふも……トリートメントを始めましょう」
「オーッホッホッホッ……」
 普段の笑い声を器用に声だけ小声にして『きらめけ!ぼくらの』御天道・タント(p3p006204)が笑っている。
「ある意味でスニーキングミッションですわね……合点ですわ~しからば、このわたくしっ」
 そのまま指を鳴らすような仕草だけすれば――

  きらめけ(ささやき)
  ぼくらの(ささめき)
  タント様(ウィスパーボイス)
──に、おまかせですわーっ
 サイレントエレメントブリリアンなポーズをキメれば、キュートなおでこを夏の日差しがキラリと輝かせた。

「人もにゃんこも暑さには参っちゃうよね」
 麦わら帽子のつばを抑えるようにして被る『夜空見上げて』クロエ・ブランシェット(p3p008486)は頷いて見せる。
 人慣れしている猫達だが、自分は今日が初対面の子たち。
 動物の知識を駆使して不安や警戒を煽らないようにしながら、直ぐ近くの木陰に眠るぴざねこの方へ歩き出す。
 だらんと蕩けるピザ猫を抱き上げ、そのまま部屋の中へ。
「さって! 健康診断もあるらしいし早くお猫様達を連れて行かないと大変っすね!
 比較的涼しい所に陣取っているのは後回しで日向でのびてるのを最優先っす!」
 二又のしっぽをゆらゆら『No.696』暁 無黒(p3p009772)は伸びている猫達の方へ歩いていく。
 その後ろ、じーっと無黒――もとい無黒の尻尾を見るにゃんこが一匹。
「おろ?」
 じーっと見ていたその子はゆらゆら尻尾に視線を誘われ、あちら、こちらと顔だけを動かし釣られて近づいていく。
「ついてきてるっすね?」
「あ、そうそう。皆、揺れるものが大好きなんです。ですので尻尾やお洋風などにお気を付け下さいね」
 注意を呼び掛けるクラリーチェの隣へひょっこりと顔を出したのはエンヴィだった。
「私も、皆の回収を手伝うわ……えっと、いつもの部屋に連れていけば良いのよね?」
 そういうエンヴィの手元には既に一匹、すやすやと寝息を立てている。
 そんな抜群のタイミングを見計らったように、別の子がそっと近づいていた。
「はい、お願いします。あと、ちょうどいい例ですね」
 隣でゆらゆら動くエンヴィの尻尾に、どこからともなくぴょんとにゃんこが飛び掛かる。
 ゆらりと動いた尻尾の動きに合わせて先程まで寝ていたのは何だったのかと敏捷な動きでとびかかり、てしりとパンチを繰り出して。
「エンヴィさんの尻尾、うちの子は完璧に玩具だと思ってるんですよね……」
 クラリーチェは悪戯っぽく笑うと、その子に近づいてそっと抱き上げた。
 抱き上げられた猫はめいいっぱいに手を伸ばしてぶんぶんと振っている。
「ありがとう、くらりーさん……両手が塞がってたから、助かったわ……」
 感謝と安堵の吐息を漏らしつつ、エンヴィは自分の懐ですやすやする子を回収して一度立ち上がる。
「あぁ! なるほど! 尻尾に釣られてるんすね!?」
 その様子を眺めていた無黒はくるんと二又の尻尾を動かして納得する。
「ふふ~んこれは丁度いいっすね~♪」
 ゆらゆら動かしながら、ついてくるその子と一緒に部屋の方へ歩き出した。
 日差しの良好な場所にて眠りこける茶トラ猫を見た雪之丞はそちらへと歩みよっていた。
 心地よさそうに寝言のような物を流すその子をそっと抱え上げれば、シャンパンゴールドの瞳とばっちり眼があった。
「お昼寝なら、もう少しいい場所がありますよ」
 言い聞かせるように言えば、大きく口を開けて欠伸がひとつ。
 そのままもうひと眠りとばかりに目が閉じられる。
「みゃぁ」
 首根っこ加えられて持ち上げられた子猫シェキャルがひと鳴き。
 そのまま背中へ導けば、おっかなびっくりぴょんと背中へと乗っかってくる。
 シェキャルの様子に気づいたらしい他の2匹の子猫の視線を見ながら、蜻蛉はゆっくりと身体を伏せる。
「大丈夫……取って喰うたりしません、ほんの少しだけ皆より長生きなだけや、安心おし」
 優しく声をかけると、その二匹もゆっくりと起き上がる。
「ツキェルちゃんも、シュクルちゃんもかしこぉに乗っとってね」
 背中から子猫たちのみゃあという声がする。
(こっそりこっそり起こさぬよう、抜き足差し足タント足。
 わたくしにかかれば余裕ですわ~!)
 ゆっくり歩いていくタントの足元、目を覚ましたらしい猫がぴょんと飛び掛かる。
 たしっと弾かれたのはスカートであり、立派な縦ロール。
「ぷええ!?髪の毛を引っ張らないでくださいましー!」
 何故ですの!? なんて驚く暇もなく、髪の毛をたしる猫を抱え上げて、そのままヘッドスライディングで室内へと跳んでいった。
(きっとここはこの子達にとって居心地がいい場所なんだろうな)
 遊び半分を思わせる子や任せきりになって連行される子たちを眺めながら、クロエはのんびりと思う。
(あとで神様がこことこの子達を守ってくれるようにお祈りしないとですね)
 微笑を零しながら、抱き上げた子を部屋の中へ。

 リカナは集められた猫達をもふもふしていた。
 程よい室温の部屋の中でもふられる猫達の汚れは徐々に消えていきつつあった。
「ちゃんとお水も飲んで、しっかりするのよ」
 解放されるや否や、ぴょんと水の方へ歩いていった子にそう声をかけてから、次の子を抱き上げる。
 そこで、何やら来客のベルが鳴った。
「来られたみたいですね。猫たちの玩具はこちらに纏めてありますので、よかったら」
 それだけ言って、クラリーチェは1匹を抱えて部屋の外へ消えていった。


「皆偉いっすよ~ヨシヨ~シ♪」
 診察を終えた猫達に無黒は優しくナデナデ。
「偉いお猫様達には特別に猫用お菓子を進呈っす!
 ニヒヒ、急がなくても沢山あるっすからね~♪」
 持ってきたおやつを興味津々とばかりに顔を上げてみる猫達に笑って、無黒はそのまま部屋の中央あたりへ。
 それをそっとテーブルに置けば、おやつとは別にくるくると無黒の足元を回る子が2匹。
 その子たちの視線は無黒の2本の尻尾に。
「お? なんすか? 遊んで欲しいんすか?
 どうやらよっぽど尻尾が気に入ったみたいっすね~」
「みゃ!」
「にゃぁ!」
「よ~し! ほれ! ほれ! 捕まえてみるっすよ!
 あぁぁでも噛みついたり引っ掻いたりはダメっすよ! ほれ! ほ~れ!」
 ゆらゆら動く二又尻尾に飛び掛かるようにじゃれてくる。
 その様子に思わずほおが緩む。
 ソファーに座るクロエの下へ、診察を終えたらしい猫の1匹が姿を見せる。
「健康診断してもらった? 偉いねー」
「にゃぅ!」
 お座りして背をピンと立てて座るにゃんこの表情は心なしかドヤ顔っぽかった。
 クロエはそんな猫に微笑を零すと、視線を向ける。
「私はクロエって言うんです。撫でてもいいでしょうか?」
「みゃあ」
 手を差し出してみると、その子は自分から頭を手に擦り付けてくる。
 断片的に読み取れた光景はついさっきまでの事。
「ひなたぼっこ気持ちよかったんだ?」
「みゃー」
「私には、夢があるの。私もいつか獣医さんになって動物達を助けたいって……」
 それは思わず漏れた言葉。
「みゃーみゃ!」
「……応援してくれるの? そうだったら嬉しいな」
 ぽふ、と前足で太腿を軽く叩く猫に、『がんばれ』と言われたような気がした。
「アイスティと焼き菓子を持ってきました。
 猫用のおやつもありますので、あげてみてください」
 そう言うクラリーチェの後ろ、台車に乗せたアイスティとおやつ類を押してメイとエンヴィが姿を見せる。
 アイスティはエンヴィと蜻蛉、タントが持ち込んできたもの。
 お菓子の方は蜻蛉が持ってきたものと、メイとクラリーチェが事前に作っておいたものだ。
「うちのギルドにも他国家で保護した猫を取り扱っているけど、やっぱりどの子も可愛いわね」
 ほおを緩ませるリカナは日差しからやや遠く、冷房の効いた室内でも比較的涼しい一角の絨毯に座っている。
 その膝にはだらけ切った様子で寝転び、おやつをかじる子の姿。
(冷房はひんやり、猫はぬくぬくもふもふ、ここが天国ね)
 優しく撫でてやれば、ふりふりと嬉しそうな猫の尻尾が揺れている。
「定期的にもふりに来たいわね。幻想もふもふスポットに追加……」
 ぽつりと呟いてみれば、おやつを食べ終えた子がそのまま起き上がり、ググっと伸びをしてどこかへ歩いていった。
「涼し気な音色は、気にいるでしょうか?」
 雪之丞は紐に鈴を通して吊るして垂らす。
 ゆらゆらと動き、ちりんと鳴る音に茶トラ猫が興味津々に視線を泳がせる。
 ゆらり、ゆらりと紐の揺れに誘われるように尻尾を揺らしていたその子――ティタンジェは後ろ脚で器用に直立して前足で掴もうと試みる。
 その視線をなんとなしに式神の方へ向ければ、ポン酢、おもちといった猫達とじゃれ合いもつれ合っていた。
「ふむ……猫じゃらしの姿にすべきでしたか? いえ、冗談です」
 その様子に小さく言ってみれば、式神達がにゃあと声を上げていた。
 その様子を見ながら、遊んでいた雪之丞は、改めてお昼寝しなおす猫達を見てとめた。
「はふ……」
 ころりと寝転び、愛らしい顔で眠っている子たちに、思わずつられて首が漏れるのだった。
「涼しいお部屋はやっぱりええわぁ、生き返ります」
 いつの間にか人の姿を取っていた蜻蛉ははんなりと笑みを浮かべていた。
 膝に抱えていた子をひと撫で。ふわふわの毛並みと温かさが伝わってくる。
「それにしても……ひぃふうみぉよぉ……よおけおったんねぇ、此処で暮らせるいうことは幸せよ」
 そのまま抱えていた子の頭をつんつんと軽くつついてやれば、ふるふると顔を揺らしてそのまま甘噛みされてしまう。
「んふふ、うちは美味しゅうないよ……ほら、こっちにしぃ」
 手に取ったおやつを差し出せば、指から口を離しておやつを食べ始める。
「クラリーちゃんに出会えたお前さんたちは、幸せよ。
 それから…これは内緒」
 しぃと口元に指を添えてやれば。おやつを食べていた子が顔を上げて不思議そうに見てくる。
「うちも幸せやの」
「ほらほらっ、こちらですわよ~!」
 おやつのお皿を以って猫達と戯れるタント様。
 楽しそうに笑って猫達と戯れる程度の速度で回っている。
 ――と。
「ぷええ! わたくしの縦ロールはおやつではございませんわー!!」
 タイミング見計らって跳びこんだ子が縦ロールへてしり。
 たまらず立ち止まったタント様に次々に猫達がしがみつく。
「いたずらお猫たちは捕まえて猫吸いの刑ですわっ!」
 皿を置いて、縦ロールをかじる子を捕まえ、そのままお腹へ顔を突っ込んで。
 エンヴィはその様子を見ながら、一息入れていた。
 紅茶を飲みながら読んでいる途中の本を開く。
 のんびりと読書にいそしみながら、その尻尾はふらふらゆらゆら動いて猫達のじゃれつきの相手を熟している。
 中々に慣れを感じさせる熟練の動きであった。
 クラリーチェは猫と戯れる人々を見ながら笑みを零す。
 自然とほころぶ表情は、優しそうな顔で楽しそうに遊ぶ人々を見ていた。
「おねーさま?」
 それに気づいたらしいメイが不思議そうにクラリーチェを覗き込んでくる。
(ここは小さな教会。そして同時に猫たちの楽園……そして、訪れた方にとっては祈りを捧げる場所でもあり、安らげる場所)
 静かに胸に思いを秘めて。
(ここを守るのが、私の幸せ)
 誰にも敢えて声を出して宣言するようなことではない。
 ただ、ありふれているからこそ大切な日常に、そう思いを馳せた。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

涼しい部屋で猫みたいに垂れて一日を過ごしたい人生でした

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