PandoraPartyProject

シナリオ詳細

縊りの黒い森

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 虫も寝静まる頃、ふらふらと足取りが覚束ない男がひとり。酔っているのか、顔全体が赤くずいぶんと楽しそうである。
 陽気に口ずさむロック調の歌謡曲は十年ほど前に流行ったものだ。
 ふと、前方の分かれ道にやたらと黒い森が広がる。数少ない街灯が照らすばかりで全体像が見えてこない森だった。
 黒く広そう、ということ以外は何だか甘い匂いがする森だった。
 果たして、こんな所に森があったかなと男は疑問を抱いたがまあ良いかと思ってしまったのだ。
 何せここは田舎の道、道路と歩道の境なんてないような道に森があってもそこまで不思議じゃない。
 ──だから男は、進んでいった。進んで、いってしまった。
「え? ……えっ?」
 足が、勝手に進む。現に男の腰は酒と共に引けていて引き返したい気持ちが全身に出ているのに。足が、勝手に、進む。
 最初の一歩、二歩は確かに男の意思であったが三歩目から勝手に足が動いた。動かされたのである。
 黒い森は男が近付くと激しく不気味にざわめきを響かせ、ついぞ男は還って来なかった。
 明朝、近くを通りかかったトラック運転手が語るところによると、人の頭の形をしたモノがたくさんぶら下がっていたとか……。
 ──やがてその場所は闇の縊り森と呼ばれ、忌み嫌われた……──。


 あなたたちを出迎えたラプンツェルは少し複雑な顔をしていた。
「今回はちょっと、怖い依頼なんだ」
 夜遅くに現れた黒き闇森の怪異を取り除いて欲しいのだが、加害者が怪異なのはもちろん、被害者も怪異なのだ。
 そもそも黒き闇の森という怪異は地獄で裁かれた罪人を吊り下げていた木、ただそれだけの存在だったのだ。
「その枝を勝手に持って来て植えることで人から姿を隠してるんだね。だから隠れて人を誘い込んで食べてる怪異の方をやっつけて欲しいんだ」
 黒い森の範囲に居座り、人を誘う妖気を出す方を倒せば黒い森は救われるのだと言う。
 一部だけが人間界に来ている状態、しかも本来は木の枝なので戦闘能力皆無なのだと言う。
 その上で身体中に動きを封じる札を付けられて身動きが出来ないのだという。
「あ、ライトは必要だよ。ずっと真夜中みたいに真っ黒い森だから。それじゃあ、みんな。よろしくね?」

NMコメント

ごきげんよう、桜蝶です。
残暑のホラーお届けに参りました

●世界観
 黒くて広くて、甘い匂いが満ちた森です。
森の外は寂しい道路

●目標
 人喰い怪異の撃退
 黒い森の怪異の救出

●敵
人喰い怪異『豺狼』
 並外れた咬合力/中距離 物攻500
 強力な長爪/遠距離 物攻500
 甘い妖気/神秘 【魅力】

見た目
ハイエナっぽい獣に鋭い爪をつけて下さい、そんな感じです。

●救出対象
冥府の怪異『縊り森の闇』
 顔と胴体は人
 肩から腕と腰から下が黒い木
 お札をいっぱい付けられちゃって動けません
 外してあげましょう。

  • 縊りの黒い森完了
  • NM名桜蝶 京嵐
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年09月08日 22時05分
  • 参加人数4/4人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

ルーキス・グリムゲルデ(p3p002535)
月夜の蒼
ルナール・グリムゲルデ(p3p002562)
片翼の守護者
アーマデル・アル・アマル(p3p008599)
灰想繰切
暁 無黒(p3p009772)
No.696

リプレイ


 降り立った森の前。厳かな黒の存在感は格別だった。だが、それよりも。
「これはすごいな……鼻が狂いそうだ」
 秀眉を歪ませ、呟いたのは『紅獣』ルナール・グリムゲルデ(p3p002562)だった。甘ったるく方向感覚を見失わせる匂いが鼻をつく。
 傍らの『No.696』暁 無黒(p3p009772)は胃液を吐きそうになる口元を必死に抑えている。猫の因子が混じっているせいで誰よりも鼻にダメージが行くのだろう。
 『月夜の蒼』ルーキス・グリムゲルデ(p3p002535)が持っていたタオルを暁に渡して周囲を見渡す。
「匂いの強い花を大量に混ぜたみたいだね。悪い方はさっさとご退場願って、平和を取り戻してあげよう」
 『霊魂使い』アーマデル・アル・アマル(p3p008599)も星晦ましの目隠し布の下から頷く。
「人喰い怪異は退治、『縊り森の闇』は救出…だな。間違えると大変だ」
 役割的に親近感があるんだ、と添えて。
 そうして四人は光すら通さない漆黒の森へと足を踏み入れた。


 人喰いは四人が踏み入れた時に気付いていたのだろう、どこからか不躾な視線を感じる。
 四人それぞれが四方にカンラテや暗視で敵の居場所を探る。と、アーマーデルがスライディングしながら叫ぶ。
「そこか!」
 捩れ翼の蛇から赤き吐息が吐かれ、周囲を焼き尽くす。ぎゃいん、と聞き慣れない鳴き声。
 現れたのは赤褐色の大きな獣ーー豺狼。ぎゃるる、と威嚇めいた鳴き声を発すると鋭く伸びた爪がルーキスへ伸びる。
 すかさずルナールがかばい行き、マズル目掛けて掌底で防御力から変換された力を放つ。
「何時も通り、奥さんの守りは俺の仕事なんでね!」
 外れてもそれは守られた側、ルーキスの出番ということ。黒銃を静かに構え、しっかりと豺狼へ照準を合わせ続ける。
「早く終わらせて助けに行かないとだし、悪い子にはお仕置きだー!」
 蛇のように連なった電撃が豺狼の腹と後ろ足を穿つ。
 その隙間を縫って黒い影が走り、弱る獣の首筋を叩かんとする。
 豺狼の落ち窪んだ眼と暁のギラギラと光る金眼が一瞬、重なる。
「さっさと片付けてあの世で反省してもらうっすよ!」
黒き猫又の魂魄が魔性の茨と形を変えて豺狼の動きを奪う。


 ぎゃおん、ぎゃああ! 豺狼の咆哮が森の中に響き、その苛立ちを伝えてくる。食糧に反抗されてはそうなろう。
 手負いなれど悪獣は悪獣。ルナールのアイアースを甘んじて受けた上で自慢の牙で噛み付いて骨を砕けば後ろ足の長爪でルーキスと接近。
 ルーキスが後ろへ仰け反ることでダメージを小さくするとアーマーデルが割り込む。
 豺狼は勢いそのままアーマーデルをも長爪で襲うがアーマーデルは怯まない。むしろ歓迎してみせる。
「待っていたぞ!」
 その旨み深そうな腕にかつての呪王を宿らせ、死せる魔性を食らわせる。
 ぎゃふ、と豺狼は哀れな鳴き声を漏らす。そのすぐ目の前、暁の姿。
「あんたの牙なんか、俺には届かねぇっすよ!」
 ぬばたまの猫又の牙が、血汚れた豺狼の牙を越えて噛み砕いたのだった。


 倒れた豺狼はまるで硫酸でも被ったかのようにじゅう、という嫌な音と臭いを立てて消えていった。
 それを確認し、四人は怪我の応急処置をしてからもうひとつの仕事へ向かう。
 戦闘の邪魔にならないよう、隅に避けていたカンテラを持ち被害者を探す。
「良かった、さっきぶつかったから燃え移らないかと心配だったんだ」
 アーマーデルは拾った枝で中の蝋燭を直すと周囲の木の幹を照らす。
暁も反対側を照らして歩きながら、少しばかり弾んだ声を出す。
「カンテラ持って森を進むって正に夏の風物詩! 肝試しってやつっすね! ドキドキが止まらないっすよ!」
 それにルーキスがなるほど、と同意しながら二人の灯りを頼りに周囲を見る。
「確かに肝試しの条件を満たしてるね、今回の救出は」
「お、それじゃあクリアしたら景品ある?」
 温泉スパのチケットとかが良いなあ、とルナールがふざけて言って、周囲を警戒する。
 灯りが二つだけなので離れすぎない距離を保ち、互いを認識しつつ札の貼られた木を探していく。
 なにせ木々も下に生える草も黒いから方向感覚も進行度も分かりにくくなる。
 そんな中で。白く汚れた和紙に赤黒い筆字の札は大変不気味な存在感だった。
 根元の具合すら分からないほど札で埋められた木は予想を外して幹は細かった。
「おお……結構高いな。やっぱり見たり目はともかく、木だからか」
 しかしそれは四人の中で最も長身を誇るルナールよりも背が高い木であった。
 ーー誰かいんのぉ?
 不意に見知らぬ男の声が頭上から降ってきた。四人で一斉に見上げる。
『アッハ、ビックリしてらぁ。でもチャンボクもビックリだぜぇ、あの獣クセェ奴はどうしたんだい?』
「……もしかして、あんたが『縊り森の闇』殿か?」
 生唾を飲んだアーマーデルが聞けばそうだと黒い木が答えた。
 呆然と暁がハッと立ち返り、慌てて手が届く範囲の札を剥がす。
「もう1つの依頼もちゃんとこなさないとっすね。痛くねえっすか?」
「ねえ、君。このお札ってご利益あるのかな? それとも森から出たら消えちゃう?」
 ルーキスも陽気に声を掛けつつ、札を剥がしていく。アーマーデルとルナールも加わり、黒々とした幹が見えてくる。
 縊り森の闇の方も四人が救出に来てくれたのだと認識したのだろう、雑談に応じてくれる。
『どーだろねぇ? とにかく親からふわーって落ちたと思ったらここに縛られたからさぁ。その札がどっからとかはチャンボク、わかんねえな』
 まあでも獣野郎のことだから、どっかの道士でも脅したのだろうとカラカラ笑っては四人が札を剥がす様子を見ているようだ。
 背の高い所を一通り剥がし終えたルナールはそんな縊り森の闇を見上げて声を掛ける。
「俺の手でも届かない範囲があってな、なあ縊り森の闇。幹を縮めるとか、根っこを抜くとか出来る?」
『えー、できっかなぁ。自信ねえけど、良いよぉ。やってみるー』
 出来るようならその方が武器を使わないで済むから、と添えて四人は一旦、縊り森の闇から距離を取る。
 しばらくして縊り森の闇の幹……彼としては胴体かもしれない部分がゆらゆらと動き始めた。
 が、しかし動くだけでどうやら縮んだりは出来ないらしい。
 続いて根元が盛り上がろうとしているが、どうにも動きが悪い。
『んー……ダメっぽい。この札で力も封じられてるんだぁね、チャンボク』
 縊り森の闇は残念そうに言うと再び大人しくなった。
「そうか、ありがとう。それじゃあ、仕方ないか……」
「ああ、なるべく傷付けないよう気を付けるが……動くなよ」
 アーマーデルとルナールはそれぞれ、剣と槍を持参の水で濡らすとそっと高い所の札を剥がしに掛かる。
 細長い武器を持ってない暁とルーキスは引き続き、幹の方を取りかかる。
 そうして何時間経ったのか、ルナールに背負われたルーキスが最後に残っていた頭回りを剥がす。
『ああ、良かったあ~! やっと自由に身体が動かせるぜぇ』
 頭上で歓声があがり、森の雰囲気が変わり始める。縊り森の闇が何かしているのだろうか。
 徐々に木が減り、森が消えていく。それと同時に夜の名残りじみた街灯の灯りが射し込んでくる。
 ぱん、と乾いた手を合わせる音がした。気付いた時には黒い森は消え、四人の目の前には上半身だけが人間の黒い青年と幾つかの人骨が転がっていた。
 頭の上で手を合わせていた青年がゆっくりとその腕を腰に触れされると、下へ撫でれば人間の脚へと変わっていく。
「改めてお礼を言うねぇ、君たちぃ。これでチャンボクは自由だ」
「「えっ……えええええええええええ?!!」」
 縊り森の闇だったらしい青年が姿勢を起き上がらせて言えば、驚きの叫びをあげたのは暁とルナールだった。
 しかし他の二人も驚いたのか、それとも面白いと思ったのか、ちょっとワクワクした様子だ。
「混沌のビックリショー具合と良い勝負だね。君、人間になれたの?」
「あ、さすがに体温はないのか……」
 ルーキスやアーマーデルは興味津々に青年へ近寄るとその身体を触らして貰い、ルナールはその回りをグルグル回って観察している。
「チャンボク、あんたらみたいに動いてみたくってさぁ。やってみたら出来ちったあ!」
 はしゃぐ青年に抱き着かれた暁もその人間を模した割に異様な細長さとなった身体へちょっと興味をそそられているようだ。
「これで全く害が無いってのもなんだかっすね。お日様の下とか大丈夫っす?」
「というか人間になったのは良いが、行くあては?」
 そういえばな問いに青年は無いから混沌とやらに連れていけ、と言う。四人は顔を見合わせて考えた。が、まあ良いかとという結論となった。
「私たちをここまで飛ばしたラプンツェルもそういえば本の世界出身だし、大丈夫じゃない?」
「ものは試しだ。行こう、闇殿」
 こうして四人はビックリショーな混沌世界へ帰還し、縊り森の闇は名を縊罹森・闇野として新たな境界案内人となったのだった。
 めでたし、めでたし。

成否

成功

状態異常

なし

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