シナリオ詳細
話の途中で割り込んでくるあのモンスター討伐依頼
完了
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オープニング
●ソシャゲのシナリオがおまけ扱いだった頃の負の産物的なアレ
ワイバーンというドラゴンをご存知だろうか。
ドラゴンの頭にコウモリの翼。悪魔めいたその姿に鋭い一対のワシの脚を持ち、
蛇のような毒々しい尾を持つ。尾の先端には矢尻のようなトゲを伴い、その力強い外見から人はそれを畏怖の対象であり、力の象徴としても扱った。
R.O.O『竜の領域』踏破においてその凶悪さを思い知った特異運命座標もいるだろう。
彼らの生態は地域によって異なるが、この異世界においては特殊な習性があり――おっと話の途中ですまないが、ワイバーンの登場だ!
――。
閑話休題。
特異運命座標の手によって倒されたワイバーンの横で、まだ息はあるだろうかと緊張の色を滲ませつつ『境界案内人』神郷 赤斗(しんごう あかと)は本題に戻った。
いま、この異世界ではワイバーンが大量発生し、人類絶滅の危機に瀕しているという。
しかし奴らは高機動で狡猾だ。この世界の傭兵達が殲滅に向かおうと、警戒してなかなか近づこうとしない。
討伐は難航したが、彼らもその筋のプロだ。ワイバーンを倒していく中で、最も効率的に呼び寄せる方法に気がついたらしい。
その方法こそ――おや? 何処からか羽音が聞こえてくるな。どうやらワイバーンのようだ!
――。
つまり、こういう事だ。
この異世界のワイバーンは、何か会話をしていると、とても重要なタイミングで割り込んで来る習性がある!!
問題はトークの内容によって惹かれるワイバーンが異なる事。この世界の傭兵達もあらゆるお題を収集し、様々な会話でワイバーンを呼び寄せたが、
敵の数が多い事もあり、いよいよ話のネタが切れたらしい。
そこで白羽の矢が特異運命座標に立ったという訳――
「ああぁ、もう! 面倒くせぇな!!!」
新たに会話に入って来ようと飛来するワイバーンを赤斗は忌々しげに見上げた。
彼の仕事は異世界で特異運命座標が迷わないよう、依頼の説明をしっかりと行うことだ。割り込みワイバーンは天敵と言っても過言ではない。
「要は適当な話をして、ワイバーンを引き寄せて狩ってくれって事だ。後は任せたぜ、特異運命座標!!」
- 話の途中で割り込んでくるあのモンスター討伐依頼完了
- NM名芳董
- 種別ラリー(LN)
- 難易度-
- 冒険終了日時2021年08月17日 17時15分
- 章数1章
- 総採用数11人
- 参加費50RC
第1章
第1章 第1節
柔らかな風が平原の草を撫でる。美味しい空気を深呼吸して胸いっぱいに吸い込み、レイリーは笑った。
「こんな、広い場所ってなかなかないよねー!」
「そうだなぁ。こんな処だと周り気にせず暴れられそうだな」
ワイバーン狩りも興がのったが、この土地も魅力的だとエレンシアは頷いた。いくら暴れても咎められる事のない、絶好のトレーニング場所だ。
「キャンプとかバーベキューとかもしたくなるよねー」
「ワイバーンの肉も手に入る事だしな。……レイリー?」
のんびりとした話題もほどほどに、エレンシアは彼女の横顔が何やら神妙になっている事に気づく。
「あのね。実は今日、エレンシアに話したいことがあるんだ」
「なんだ? 急に改まって」
ゆっくりと向き直るレイリー。その表情はどこまでも深刻だ。
「私、少し戦い方を変えようと思ってるの」
掲げた不倒という信条に、未だ届かぬ事がある。
何者にも倒されず、背にいる者を守りたい。夢を守り切るためには、戦いの術を変える事さえ――
ギャアアアァ!!
レイリーの力強い意志の声を割くように『友情に割り込んでくるワイバーン』が咆哮を上げて飛んで来る!
瞬間、二人は息ぴったりで体制を整えた。
「護りは任せろ、攻めは任せた!」
「いいぜ、攻めは任せろ!」
レイリーが守り、エレンシアが攻め手を引き受ける。
戦い方が変われども、背中を預けた友情までは変わらない!
「護ってくれた分はしっかり働きで返すぜ!」
成否
成功
第1章 第2節
「嘘だろあのワイバーン実在してたのか? ゲーム内ですらいい加減鬱陶しがられてんのに?」
境界世界ひろしと言えど、あまりにもニッチすぎる敵の登場に飛呂は動揺を隠せない。
「これくらいで動揺してるようじゃ、この先もたねぇぜ?」
「そりゃそうだろうけど‥‥」
頭が痛くなりそうだが、とにかく倒さなければ終わらない。
飛呂は首の後ろを掻きながら、今しがた助言をくれた赤斗へと向き直った。
「あんたはこう、好きな人とかいるか? アイドルとかでも良いんだけど」
「居たよ。そういう飛呂は?」
「俺こないだ初めて東京の外出たんだけど、人の幅広さすごいよな、いや人じゃないのも多いんだけど。
それでな‥‥偶然見かけた人がすげぇ可愛い、天使みたいな人だったんだよ‥‥」
目が合った瞬間、息が止まりそうになった。ふわふわな青い髪に無邪気な笑顔。
「どんな人だ?」
「それは――」
ギャアアアァ!!
「おっと『お話を途中でないないしてくるワイバーン』のお出ましだ!」
「何だそりゃ」
脚にバールのような物を握って飛来したワイバーンへ、飛呂は大弓を引く。
「呼び寄せる為とは言え、話の腰折られるのって苛つくな!」
彼の怒りに呼応するかの様に矢尻に力が集約され、放たれた一矢――ハイロングピアサーは鋭く深く敵を刳り、塵も残さず消し去った!
「で、話の続きだが‥‥あれ? 赤斗?」
「目的は果たしただろ。帰るぞ」
「おい、折角だから最後まで聞いてけよ!」
成否
成功
第1章 第3節
「はじめまして」
「……」
「早速ワイバーンを呼ぶために、話を…ビアンカ?」
「……」
何か気分を害したかと赤斗は慌てたが、そうではなく。
(…困った。話、苦手)
と彼女なりの悩みがあっての沈黙だった。感情の起伏が表に出にくい事も相まって、沈黙が誤解を膨らませていく。
その後もビアンカはじっと悩んだ後、何とか唇を開いてみる。
「ええと。ええと…天気、良いわね」
「そうかぁ? 晴れより曇りに近い気が」
「……」「……」
先程より長い沈黙が訪れた。
反応が微妙だった事に首を傾げつつも、彼女はめげずに話しかける。
「…ここ、広いわね」
「平原だからな」
三度の沈黙に、赤斗も何か話さなければと思ったのだろう。頬を掻きながら話題を考える。
「視界が広いのは良い事だが、此方の位置も敵に分かりやすいという事だ。狙われる事も想定して――」
――パァン!!
発砲は突然だった。先程まで空をぼーっと見上げているだけの様に見えていたビアンカの手には、しっかりと握られたマギ・リボルバー。
ギャアアアァ!!
精密射撃により撃ち抜かれ、『気まずさに割って入ろうとするワイバーン』が咆哮と共に迫り来るが――その鋭い鉤爪が届くよりも先に、ビアンカの次弾が敵の急所を貫いた!
どうと音を立てて墜落したワイバーンの様子を見た後に、彼女は一言。
「撃ち落としたから…終わり?」
「そ、そうだな。突然の発砲でビックリしたが……お前さんいい腕じゃないか!」
成否
成功
第1章 第4節
「クヒヒ! いつもうちの17さんがお世話になっています、ガーベラさん!」
「貴方は17さんの主人の……!」
あやめの姿を見留めたガーベラが身構える。刹那、彼女の盾と17の剣が火花を散らせてぶつかり合った。
ドラグヴァンディルは再び絡み合い、悪役令嬢と奴隷令嬢は激しく斬り合いはじめる。
「まだ生きていましたのね。全く忌々しい…ガーベラ、貴女の首――今日こそ貰い受けますわよ!」
「オーホッホッホ! そうは問屋が卸しませんわ。17さんこそ、いい加減、白状して貰いますわよ。貴女が何故私と同じ容姿をしているのか!
――もっとも、実は貴女の正体に関しては薄々気づいていましたが」
一歩飛び退り、緊張気味に息を吸い込むガーベラ。
「貴方の正体、それは…」
「ガーベラ~」
「何ですの蒼矢さん。私は今、大事な話を…」
横槍を入れた境界案内人の方へガーベラが振り向くと、蒼矢は今まさに『ピリピリした空気に割って入るのが怖いワイバーン』に頭から丸呑みにされかかっていた。慌てて矛先をそちらに向け、H・ブランディッシュで蒼矢を口から叩き出す。
「しっ、心臓が口から出るかと思いましたわ! 大丈夫ですの蒼矢さん!?」
「いやー死ぬかと思ったよね、実際…」
「ならそのまま死ねばよかったんだよ」
ガーベラと蒼矢の会話に割り込んできた冷徹な声は間違いなく黄沙羅の物だ。警戒して二人がそちらへ振り向くと――
「17さん、そちらの境界案内人さんも頭から豪快に食われてますわよ」
「アハハハ! 黄沙羅さんはそちらのモヤシと違って豪胆ですもの。この程度では動じません事よ」
高笑いと共にワイバーンへ制裁を加える17。彼女が放った一撃はガーベラと同じH・ブランディッシュだ。
「雰囲気が似ているばかりか、扱う獲物から剣技まで一緒だなんて…二人はまるで、生き写しのようですねぇ」
観察していたあやめの感想に、うんうんと頷く蒼矢と黄沙羅。
「という事は、17さんとお揃いの赤い首輪もきっと似合う筈ですよね! そう思いませんかァお二方」
今度はカクンと首を傾げる蒼矢と黄沙羅。
「"お揃い"なんて反吐が出ますわ! ただ、まあ…ガーベラさんもようやく勘付いた様ですし、いいでしょう。答え合わせに付き合ってあげますわ」
鈍色に光る剣の切っ先をカーベラに向け、17は憎悪を込めた残酷な笑みで嗤う。
「そうです! 私こそは…」
ギャアアアァ!!
「大変だ、今度は正統派『大事な話に割って入るワイバーン』の大群だぞ!」
「あぁっ、もう何なんですの! さっきから間が悪すぎますわよ!」
「…私、空気が読めない方、大嫌いですの」
ガーベラと17。二人はいがみ合う者同士であると同時に、闘争においては相手の思考が手に取るように分かる。
お互いの方へ駆け出し突き出された剣は、二人の顔のすぐ横を掠め――背へと迫るワイバーンの頭を鋭く穿った。どうとワイバーンが倒れた後も、増援の気配に背中合わせで身構える。
「17さん、ここは一時停戦。蒼矢様と黄沙羅様を護る為にも共闘といきますわよ!」
「…仕方ありません。とても癪ですが…その提案乗ってあげますわ」
「クヒヒ! じゃあ私もワイバーンに首輪を…」
「「あやめ様は大人しくしてくださいまし!」」
ガーベラの剣が意志抵抗の力を帯び、目の前のワイバーンを強かに打つ。彼女のレジストクラッシュに他のワイバーンが気を取られた隙に、17のスニーク&ヘルが決まり鮮やかに首を刈り取った。
「躾がなってない獣は私好きじゃないんですよねェ…調教し尽くしてあげましょうか」
二人の間合いにワイバーンが迫るよう、あやめは忙しく戦場を狩る。出会い頭に首輪をはめられ怒った敵を巧みに誘導し、効率的に討伐数を稼ぐのだ。
ふと、奮闘するあやめの視界に蒼矢と黄沙羅が会話する様子が目に入る。
(部外者なりに気になるのですが、実際何で黄沙羅さんは蒼矢さん達にそんな敵意を向けるんでしょうねぇ? 同族嫌悪にも見えますがァ)
「ごめんね、黄沙羅。今回も僕の首はあげられそうにないよ」
「本心でもない言葉を貰っても、微塵も嬉しくないね」
「手厳しいなぁ。でも、僕は黄沙羅に殺されない。特異運命座標も君も悲しくなるからね」
ギャアアアァ!!
「ちょっと、ワイバーンの数が増えてますわよ!? 誰ですのシリアスな話をこんな場所でぶっ込んだのは!」
「ごめんね、ガーベラ! 僕も黄沙羅も黙るから、もう少し頑張って!」
成否
成功
第1章 第5節
平原にそよそよと銀糸の髪が揺れる。ミミックは至極真面目な表情で雄斗と相対し、唇を開いた。
「晩飯どうします?」
旅人として異世界へ飛ばされようと、食事情というのは生きる限りついてまわる物である。
どうせワイバーンを狩るのであれば、倒した命を大切にしようというのが二人の主張だ。
「僕はカレーが好きですけどミミックさんはどうですか?」
どう、と言われて悪い気はしない。ワイバーンの肉が食用可能なら、きっと脂ののったステーキにもなるだろう。
いっそ豪快に丸焼きにしても美味しいに違いない――そんな事を空を見上げて考えた後。
「境界案内人さん」
「えっ、僕!?」
突然、白羽の矢を向けられて、境界案内人の蒼矢は目を見開いた。彼は異世界でカフェを営む変わり者だ。調理を特異運命座標に教えた実績もあり、すれなりの実力者らしい。
「ワイバーンって美味しいんですかね? 羽が有って飛べるなら、鶏肉みたいに唐揚げにするとか……」
「他の世界を渡り歩いた時に調理のし方は色々聞いたよ。見よう見真似で良ければ作ってみるけど」
「決まりですね。なるべく素材を活かせる状態で狩ってきます。――じきに来ますから」
未だワイバーンの気配はないが、ミミックには視えていたのだ。広域俯瞰に引っかかった『グルメな話に割って入ろうとするワイバーン』が、でっぷりとしたお腹をさすり、此方の方へ引き寄せられている事を。
「ロールチェンジッ!!」
キュイィィ――ガキン!
空気中に漂っていたナノメタル粒子が雄斗の身に集約し、頑健なるヒーロースーツを構築する。
「何それ、かっこいいぃ!」
「もちろん、正義の味方だよ!」
ビシッと変身バンクの後のキメポーズをきめた彼へ興奮気味に拍手する蒼矢。
手を叩く音に反応し、姿を現したワイバーンがギャアアアァ! と鋭く咆哮した。
「さぁ、来るんだ美味しそうなワイバーン!」
ジェットパックで飛び上がる雄斗に敵の意識は行ったまま。それはつまり――ミミックの作戦通りという事だ。
「登場したばかりで悪いけど、晩御飯の実験の材料になって貰いましょうか」
『過信すれば破滅する』そんな格言のあるライフルだからこそ、彼は慎重に引き金を引く。狙撃されたワイバーンは、羽を負傷し大きくよろけた。
「ちゃんと効いてるね!」
「あー、了解です。このまま狙います」
雄斗のショットガンブロウとミミックの精密射撃。重い一撃がワイバーンを貫いて――
「ワイバーンフィレ肉のお寿司、竜すじ煮込み入りスープ、竜の厚切りタン塩だよ!」
そうして出来上がったのは、小洒落た創作料理の数々。アウトドアらしいワイルドな食事が出てくると思っていた二人は思わず顔を見合わせた。
「竜すじ煮込みって柔らかいですね。舌の上でほぐれます」
「鮮度が高いといろんな料理が出来るんだね! おかわり!」
「お口にあって良かったよ。部位ごとに調理方法は変えてくから、残さずお腹におさめちゃおう」
成否
成功
第1章 第6節
「ここがあのワイバーンの世界ですね」
「そうだよ。まずは何か会話でおびき寄せないと。…って言っても、睦月と史之なら会話が弾まない、なんて事はないよね」
二人を連れてきた蒼矢に言われ、睦月は少し困ったように笑って――
「どうしようか迷ったけど、丁度しーちゃんに聞きたい事があったんだよね」
と史之へ視線を向けた。改まった話の振り方に、史之は怪訝な顔をする。
「なぁに? カンちゃん」
「昔さ、『年下は論外』って僕に言ったことあるよね。あの言葉の意味を教えてほしい」
('A`)ヴァー
「ちょっ、大丈夫!? なんか凄い顔になってるけど」
蒼矢の慌てた声も('A`)な顔の史之の耳には届かない。
(カンちゃんが俺のいちばん触れてほしくないところに斬り込んでくるよ。困ったな……
だがしかしここは例のワイバーンの世界。適当にかわしていればそのうち現れてくれるだろ)
「なんで黙ってるのしーちゃん、よけい不安になるよ。ねえ、答えて。答えてよ」
「別に俺はいつも通りだよ、蒼矢さん」
「そんなあからさまに会話の相手をそらさなくたっていいじゃない」
(うう、カンちゃんからの追求がきつくなってきた……早く来いワイバーン)
「めんどくさい子って思わないで」
(……)
「あのときの言葉、気になるの」
(…………)
「ねえ。ねえってば」
(……来いっつってんだろ!! なんで来ないんだよ!?)
これ以上の言い逃れが信用に関わる事は史之もしっかり気づいている。
睦月に嫌われるのはいやだ。けれど今、その話をするくらいなら――奥の手を使った方が、数倍マシだ。
「睦月」
「――ッ!?」
唐突に塞がれる唇。睦月の目が見開かれ、色白の頬がじんわり桜色に染まっていく。
(え…キスされ……)
「俺のこと信じられない? 俺が本当に睦月のものになるまで、もう半年切ってるんだよ?」
ギャアアアァ!!
「お熱いところ悪いけど『リア充の間に割って入ろうとするワイバーン』からの奇襲だよ!」
「あ、このタイミングで来るんですね、ワイバーン」
「初キスに割り込まれなかっただけマシかもよ。まあ……いらない子には変わりないけど」
飛び上がった史之の『バルバロッサ』が決まり、のけぞるワイバーン。その身体を睦月の魔砲が強かに打ち、墜落に追い込んだ。
「案外たいした事ない敵だったね」
「それは史之と睦月の連携力があるからじゃないかな? ねぇ睦月…むつきー?」
「しーちゃんと…はじめての……」
己の唇を人差し指で触れ、戸惑いと照れの入り混じった表情で俯く睦月。奥の手は効果覿面のようで、恥じらう睦月の姿を見た史之までどんどん頬が赤らんでいく。
「……可愛いなぁチクショー」
「しーちゃん、何か言った?」
「何でも無いよ。ワイバーンも片付けられたし、お茶して帰ろっか」
クリームみたいなあまーい時間の奥底に、秘密をこっそり隠してしまおう。
いつか話す時が来るとしても、今はまだ語る時ではないのだから――
成否
成功
第1章 第7節
「ワイバーンと一口に言っても、いろんな種類がいたんだな」
真面目に報告書へワイバーン達の名前を記録しきった赤斗は、脱力感から肩の力をぬいた。
今回発見できたワイバーンは、以下の6種類である。
友情に割り込んでくるワイバーン
お話を途中でないないしてくるワイバーン
気まずさに割って入ろうとするワイバーン
ピリピリした空気に割って入るのが怖いワイバーン
グルメな話に割って入ろうとするワイバーン
リア充の間に割って入ろうとするワイバーン
「……。……ワイバーンって結局、何なんだろうなぁ」
図書館の天井をぼんやり見上げて呟くが、返事はどこからも返らない。
その哲学的な問いの答えを探すには、もっと彼らと向き合い、狩り続ける必用がありそうだ。
けれど正直、そんな手間をかけるくらいなら、特異運命座標と新たな世界を冒険した方が面白そう――というのが赤斗なりの結論で。
彼は完結したライブノベルを収蔵しようと、事務机から離れるのだった。
NMコメント
今日も貴方の旅路に乾杯! ノベルマスターの芳董(ほうとう)です。
説明の方はワイバーン割り込ませずに、やりきらせていただきます!!
■目標
「ワイバーン」の討伐
■場所
異世界『ソシャゲクエスト』
表紙は古風な雰囲気の本の世界。中身はソーシャルゲームのあるあるが詰め込まれた異世界ファンタジー風の景観です。
今回はこの世界の平地でワイバーンを倒していただきます。視界良好、空は晴天。特にペナルティはありません。
■討伐方法
この世界のワイバーンは何故か会話や特別な空気の中に割り込んでくる傾向があります。
そのため、特異運命座標同士もしくは境界案内人と何かしら会話や空気を演出する事で、ワイバーンをおびき寄せる必用があります。
うまく呼び寄せられたらかっこよく戦って討伐し、依頼完了です。
■エネミー
ワイバーン
ドラゴンといえばこの種、ワイバーン。
この世界においては何故かセンスフラグが磨かれており、会話や特別な空気の中に突然割り込んでくる習性があります。
「百合の間に挟まろうとするワイバーン」とか「重要な会話の途中に割り込んで来るワイバーン」とか色々な種類がいるそうです。
外見はドラゴンの頭にコウモリの翼。
ワシのような鋭い鉤爪の脚や矢尻のようなトゲがついた尻尾で【出血】をともなう攻撃をしてきたり、
炎のブレスによる【火傷】攻撃をしかけてくるようです。
■その他
他の特異運命座標と会話をしてワイバーンを引きつける場合は、お相手のPC様のお名前とIDを記載してください。
戦闘には加わりませんが、境界案内人も話し相手としてご指定いただけます。
『境界案内人』神郷 赤斗(しんごう あかと)
今回の依頼をもってきた境界案内人。真面目で仕事人間なので戦闘についての話やあらゆる職種のお仕事事情の知識があります。
なぜか動画配信やアイドルなどの事情にも詳しいようです。
『境界案内人』神郷 蒼矢(しんごう あおや)
赤斗によく似た顔の境界案内人。怖がりなので怖い話をしてやると面白いかもしれません。
実は魔術やお料理も得意だったりします。平和的な話やゴシップも大好き。
『境界案内人』神郷 黄沙羅(しんごう きさら)
赤斗を女性にしたような姿の境界案内人。クールに見えて天然だったり残酷だったり、話し相手によってやや性質が変わるようです。
果たして本当の彼女は"どれ"なのか……?
『境界案内人』ロベリア・カーネイジ
赤斗の同僚の境界案内人。両足を縛られた妖しげな美女です。特異運命座標を困らせるのも好きなので、
話題がつまらないと感じたら悪戯してくる事も……!?
説明は以上となります。それでは、よい旅路を!
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