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シナリオ詳細

限界ギリギリのとこまでイカ墨色に日焼けしてくれない? おかわり

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 美しい仕上がりだった。
 しっとりと汗でぬれた褐色の肌の下には鍛え上げられた大殿筋がみっしりと詰まっている。
 キュッとしまった尻に様々な色の面相筆が滑っていく様子は、まさに夏の精霊に捧げる価値のある生きた美術品と言えるだろう。
 ひんやりとした染料をたっぷり含ませた筆が太陽に捧げられてほてった肌を滑るたび、青年はかまされた布に歯を立て、小さく息をついた。細く呼吸が継がれ、寄せられた眉根が甘い苦悶を物語っている。
「動いてはいけない。図案がずれる」
 精霊使いの老婆の年齢を正確に知るものは村には誰もいない。青年が子供の時にはもう今と同じように見える老婆だった。
 青年の肌に図案を書きこんでいるのは青年より年若い少年たちだ。青年自身も自分より年かさの者に精霊のための図案を書きこんでいた。
 記憶が確かなら、このあと、日に焼けていないところ――内もも、わき、足の裏、耳の裏も忘れてはいけない――にも図案が書きこまれる。
 書きこんでいない部分は、精霊が自分に捧げられたものだと持ち帰ってしまうからだ。だから、筆と染料を甘受しなくてはならない。
 青年が、気合を入れ直した時、小屋の戸が激しく叩かれた。
「婆様、大変だ! 祭壇に座る奴が貝に中った!」


「日焼けしてくんない? できるだけ広範囲で。ぶっちゃけきわどいとこ以外全部火傷するほど日焼けしてほしい」
 『そこにいる』アラギタ メクレオ(p3n000084)は死んだ魚の目をしながらずるずるとクラッシュゼリーを吸い込んでいる。手元だけ涼し気だ。グラスとストローを支えている手が小刻みに震えている。
 あれ。既視感だな。前にもこんなことがあった気がする。
「とある精霊を封じる儀式に参加予定だった村の若い衆が食中毒。じっと座ってるだけの簡単なお仕事なんだけど、腹下ってそれどころじゃないのね」
 でだ。と、切り出すメクレオも見たことあるぞ。
「――対策として、来年から貝毒検出試験をするのだという啓もう活動をしようと思います。去年たまたまかと思ったんだけど、そうでもねーみたいだから」
 改善案が提示された。――既視感じゃない。これはこれとして今年も発生したのだ。
「幸い、人種・性別は問わないんだけど。あ、太陽の恵みを一身に集めた肌にボディペインティングするのよ。そんで、日焼け具合がプルーお姉さま曰く『バーントシェンナが最低条件かしら。いっそセピアでもいいくらいよ』という――割と過酷」
 赤土色通り越してイカ墨じゃないか。
「あ、赤くなる体質とか心配いらない。俺謹製日焼けオイルで全員小麦色通り越した焦げたトースト色にしてみせる」
 どんと置かれるあやしい液体。ぬっとんぬっとんしている。掛け値なしでオイルだ。じっくりあっためると低音調理にも使えるよ。コンフィになるよ。
「終わったら速攻、日焼けさまし処方するから。もう、安心して。一夜で元の肌色に戻してみせる。オプションでそった毛も生やしてみせる。自信作だから。気に入ったらリピートしてね? ローレットの仕事ってすぐ焼けるもんね? ね?」
 メクレオさんってそういえば薬師さんでしたね。
「悪い仕事じゃないと思うよー。オイルぬって浜辺でごろごろしてー、その後、日陰デコチョコ著ペイントされた後、夜ちょっと座ってるだけの簡単な仕事だよー。プライベートビーチ用意したから人目を気にする必要ないし。さすがにすっぽんぽんはあれだけどね? なるたけ焼いてほしいんで―工夫してほしいなーって。衣装来て白いとこあるとカッコワルイから。想像できるでしょ?――ちなみに去年ショートパンツはいて一部白残りした女子がやり直しになって二度焼きした結果、腰が縞になったから。羞恥心とサヨナラしてね」
 虎になってた。と、情報屋が言った。
「んー、ネックがあるとするなら。先方の指定装束が、布っていうかほぼ紐? な、感じ? 女の子は目のやり場に困るから、もういっそ野郎でいいんじゃねって、俺的には思うんだよね。いや、女の子でもいいんだよ。でもね。なんていうか、俺の倫理観がね」
 つうか野郎だけの方がのぞき対策めんどくさくない。と、すげえ勢いでぶっちゃけやがった。

GMコメント

 田奈です。
 今年も田奈のひっどいシナリオがやってまいりました。
 見せられるギリギリまで、オイルぬるぬるぬって、灼熱の砂の上でじりじり焼かれてください。
 あなたの限界ギリギリはどこですか。全年齢なのでご安心ください。きわどい描写は一切しません。匂わせるだけです。大丈夫。がっさー、恥ずかしがり屋さんだから。
 ですが。この依頼における行動によってあなたのイレギュラーズとしての生活に影響が及んでも一切の責任を持ちません。覚悟完了と書きこんでいただけると、がっさーが神妙な顔をして頷きます。
 拙作「限界ギリギリのところまでイカ墨色に日焼けしてくれない?」を参照していただけるとどんな目に遭うか把握していただけると思います。

場所:部族提供プライベートビーチ(灼熱)
 *青い海、真っ白な砂浜。よく焼けるように銀色シートにデッキチェア。死なないように各種ドリンクが用意してあります。パラソル? そんな軟弱なものはない。でも、男子と女子は別の浜にするから心配しないで! 叫べは声は通るかな!
 *対策したので、のぞきはいない。見ているのは同性のお互いだけです。
 *海に入るとオイルが流れるので入れない。
 *ひたすら、砂浜で体を焼きます。つまり、自ら進んで低温火傷しに行くのです。熱中症で意識がもうろうとしても仕方ないですね。

オイル及びアフターケア
*オイルはメクレオ謹製です。完全に無害です。染料も完全無害です。薄い本にありがちな成分は全く入っていませんが、入っているかもしれないと邪推してプラシーボ効果が発生し、あとから赤面するこれまた薄い本展開もがっさー嫌いじゃありません。
 オイルをぬるタイミングはお任せしますがぬらないと地獄を見ることは確定です。火傷BSが適宜付与されます。今回の日焼けによる肌の色などの影響は他シナリオには影響を及ぼしません。

祭りで着る装束。
 布というにはあまりにも頼りなく、紐というにはあまりにも主張が激しい。
 下半身は褌、上半身はうつっちゃいけないところはギリ隠せるレベルです。体中にボディペイントするので、完全に裸じゃないよ、大丈夫。ボディペイント書いてるところやお祭り部分は描写予定ではありませんのでご安心くださいね。

 半数以上が「完璧な日焼けをした」と書きこめば成功です。

絶対忘れてはいけないポイント
<描写NGライン>
 で、具体的にあなたの描写しないでほしいとこってどこからどこまでよ。
 オープニング第一段落を参考にしてくださいね。
 忘れると、がっさーに白紙委任と解釈します。その場合、淡々とした描写で終わります。色物シナリオで中途半端はよろしくありません。意思表明は明確に。

  • 限界ギリギリのとこまでイカ墨色に日焼けしてくれない? おかわり完了
  • GM名田奈アガサ
  • 種別通常
  • 難易度EASY
  • 冒険終了日時2021年08月19日 22時21分
  • 参加人数8/8人
  • 相談4日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

リディア・ヴァイス・フォーマルハウト(p3p003581)
木漏れ日のフルール
札切 九郎(p3p004384)
純粋なクロ
ウィズィ ニャ ラァム(p3p007371)
私の航海誌
観音打 至東(p3p008495)
グリム・クロウ・ルインズ(p3p008578)
孤独の雨
アーマデル・アル・アマル(p3p008599)
灰想繰切
ルーキス・ファウン(p3p008870)
蒼光双閃
金枝 繁茂(p3p008917)
善悪の彼岸

リプレイ


「来いよ、情報屋。着衣なんか捨ててかかって来いよ」
『霊魂使い』アーマデル・アル・アマル(p3p008599)は、情報屋の服の裾をがっちりつかんでいる。
「このまま例年行事に育ちそうな予感もあるし、それなら情報屋として経験しておくべきだと思うぞ? 大丈夫怖くない、『いっしょにいこうね』というヤツだ」
「ハンモは2M超えてて体が縦にも横にも前にも大きくて影ができやすいからオイル塗りや焼くのが1人だと大変なんだよねぇ、だ・か・ら村の男衆達に手伝ってもらいたいね! ついでにマッサージもお願い☆」
『祝福を授けし者』金枝 繁茂(p3p008917)のお願いはもっともなのだが、何だろう。若干の下心を感じる。まあ、そのくらい造作もない。焼けてもらわないと困るから村の若くない衆の望むところだ。
「メクレオも暇なら焼くの手伝ってよね~?」
 情報屋は首を横に振った。神妙な顔をしてふるふると。
「俺はこれからお前らのアフターローションの調合すんの。働いてんの。この暑い中、大鍋で色々煮るの」
 よく見ればいつもの恰好ではなく、三角巾に筒袖の前掛けにマスク付きだ。希望ヶ浜関係者なら中学校の給食当番とでもいうかもしれない。いや、給食室のおばさん。メクレオはメクレオで試練の時のようだ。
「適材適所。オイルは俺で治験済みだから大丈夫。さあ、もろ肌脱いで来い」
 情報屋は、お情けと言いつつ、なにかから煮出したお茶もくれた。


 砂浜で一番最初にやけるのは足の裏である。
 ガンガンにやけた砂が足の裏を真っ赤に焼き、さあ今すぐ砂の上に寝転がれ、五体投地せよと促す。
 燦燦と降り注ぐ太陽光線によって肌にメラニン色素を沈着させるのが今日のお仕事です。
「ん? 要するにオイル塗って寝転がってればいいんですよね? こんなんでおちんぎん貰っていいんですかね、ホント」
『私の航海誌』ウィズィ ニャ ラァム(p3p007371)は調子よく笑っているが、このヒト重傷を負っている。が、顔に書いてある。「重傷上等」と。そういう性質なのである。
 女性専用ビーチなど銭湯も同然。つまり、躊躇なく。すぽぽぽぽ~ん。
 ありがてえ、ありがてえ。
 ウィズィの魅力は背筋である。異論は認めるが、背筋を推したい。背筋から臀部への鍛え上げられた曲線を推したい。
「鍛え上げられた」と「曲線」に矛盾はない。ごりっごりに修練を重ね、なおかつ描く曲線に僕らは涙をこぼすのだ。
「いちどだけ、私は理想を見た」
『流れメイド刃傷派』観音打 至東(p3p008495)の脳裏に浮かぶのは、去年の思い出だ。
(それは夏祭りの夢幻の中にきらめいて……)
 揺らめく陽炎、もうろうとする意識の中、「まだいけるまだいけるもっとさらけ出せ!」とささやいていた心の声。
 内腿、膝裏、耳の裏、指の間、谷間に山頂。人体の窮極へと至る日焼け。もうガンガンに焼きまくった。至東に悔いはない。
 だが、今。胸中でざわめくものがある。そう。あるとするならば――誰かに、同じ場所に届いてほしかった、という後悔か。
 しかし、今年は行けそうな気がする。
 戦場となる浜辺は違えど、ローレット・イレギュラーズの心は一つだった。
「昨年の失敗談を聞かされた以上、二度焼きなんて目にはあいたくない」
『木漏れ日の魔法少女』リディア・ヴァイス・フォーマルハウト(p3p003581)は、着せかけられたローブをぎゅっと握りしめた。
 勢いの落ちた日光を惜しみながら、すでに焼けてる部分とトーンを合わせるためにそこだけ露出して焼きを入れるなんて、それなんて――そんな特殊性癖検索ワードみたいなこと言えない。
 いたいけなリディアのすらっとした足がまぶしい。そのほっそりとしたラインから想定されたボディラインより、現実はわがままだった。いいと思います! 【脱ぐとすごい】は伊達ではない。ギャップ萌えである。これからこの真っ白いお腹を真っ黒にするんだぜ。いけない太陽の背徳感。紫外線の蹂躙。否、これは禊なので邪な発想をしてはいけない。
「本当は上も、その、先っぽだけでも隠したかったんですけど……」
 でもそこだけ白残りしたらもっと恥ずかしい。闇夜にそこだけ白い三日月上に残ったら、見る方にその気がなくても視線が固定されちゃう。恥ずかしいっ!
 とはいえ。
「うぅ、女子同士とはいえ、あまり見られると恥ずかしい、ので……」
 リディアが体をすぼめた。羞恥心は極上のスパイスです。
 恥ずかしいのを必死にこらえながら頑張るおにゃのこ尊いと思います。全力で応援したいと思う気持ち、このどこまでも容赦なく青い空の下のどこかにわかってくれる誰かがいるって信じてる。
 その様子に、ウィズィは大きく頷いた。
 すらりと引き締まった靭やかな筋肉質の身体。女に見せつけるために、女を抱くために鍛え上げた身体ッ……! お腹の底をきゅんと言わせるボディは実在する。
 じゃ、恥ずかしくないんだ。という話ではない。そこは恥ずかしい。当たり前だろ、言わせんな。耳のふちが赤いのは日焼けじゃない。
 とはいえ隠していては焼けないので、リディアはせっせと胡散臭いことこの上ない薬師の作ったオイルを塗りたくる。手触りと匂いは悪くないのがせめてもの救いだ。
 ぴとぴとと手の届く範囲はむらなく塗りこめた。
「――あの。背中をお願いしたいのですが――」
 その言葉を待ってたぜ。
 至東は、やる気に満ち溢れた同志を前に決意を新たにした。
「もちろんです」
 至東の手のひらにしとどに滑り落ちるオイル。太陽と至東の熱意でたちまちトロリとぬくもりを帯びる。
「きっっっっっっっっっちり日焼けさせて差し上げます。その気合、みごと花咲かせて見せましょう」
 意気込みが予想外。
「よ、よろしくおねがいします……っ?」
 ころりんちょ。デッキチェアの上のリディアは文字通りまな板の上のコイだった。
「失礼しますね」
 至東の目はこれから食材の下ごしらえをする料理人のよう。然り。使っている技能は料理だ。去年のメンバーにはたっぷり脂に漬かり低温調理的に日焼けした人魚がいた。前例があるので違うと言い切れない。限定的には役に立つ。
「あのあの!オイルを塗ってもらうのはいいんですが、くすぐったいですし……ひゃう!へ、変なところ触らないでぇ」
「いえ、そんなつもりはありませんよ」
 本当に。食材のように見ている。
「さあ、水分補給してくださいね」
 促されるまま、飲み物を摂るリディア。
(このドリンクの中にえっちな気分になる薬とか入ってたら、こう、女子同士でぬるぬると身体のあちこちに触れたり、身体を密着して擦り合わせたりしたくなるのだろうか)
 太陽光線は時として青少年をのぼせ上らせ、あらぬ妄想を掻き立てるものなのだ。ぬるぬる。情報屋にそんな仕事を楽にやり過ごさせてくれるような成分を入れてくれるような優しさはないのだ。
100%、リディアのあらぬ妄想である。やだ、ちょっとくらくらしてきた。
 薄目を開ければ、至東の重量感のある胸部が肌の上をかすめたりするが不可抗力である。
(お年頃だから少々えっちなことにだって関心があるのは自然なことだよね?)
 まったくもって自然である。両膝をこすり合わせるようにもじもじさせることになるのも仕方ないことです。
「内ももも焼かなくてはいけないので閉じないように」
「は、はぁい……」


 ところ変わって男性用ビーチである。
 人影は四つ。
「日焼け目的で海に来た事は無いので何だか新鮮ですね。しかも液体を体に塗って寝てるだけで良いとか楽勝では?」
『散華閃刀』ルーキス・ファウン(p3p008870)、知ってるか。それフラグっていうんだ。
「毛皮がないってのには中々慣れませんね……」
『純粋なクロ』札切 九郎(p3p004384)がてれてれとブーメランパンツである。
日焼けするってことで人間の姿になりましたけど…なんか緊張しちゃいますとかあをすぼめる、ドワーフウサギ系男子に太陽の恵みあれ。
 目の下にクマがある、ひょろひょろと縦に細長い『誰かの為の墓守』グリム・クロウ・ルインズ(p3p008578)を、影が真下に落ちる真夏の浜辺に置くのはミスマッチが過ぎると言えるのではなかろうか。それでも来てくれた彼のおおらかさに敬礼。
 いいのかな~。こんないい感じに青白いお肌を小麦色に焼いてしまっていいのかな。明日一日ケアすれば元に戻るとしても。
 いや、そこはとりあえず棚上げされている案件だ。目下の最優先事項は。
 そのなんだ。褌がきわどい。
 どの程度きわどいかというと、うかつに女性陣のいるビーチなど目に入れた瞬間社会的に死ぬ失態が隠しようがない所がきわどい。どこがどうとは言わないがべた凪ぎの心を持って挑まないと、とても恥ずかしい。
 何となれば、仕事の傾向について解説に余念がない情報屋は来年、あるいは再来年、類似の事案が発生した時、そんなことがあった。と、類例を口にするに決まっているからだ。今年のように!
「その上着が無いというだけで、少し恥ずかしいな。一応撮影での衣装などで似たような面積のは着たことはあるが――」
 そんなことを言いながらオイルを塗るグリム。アーマデルは余り不自然にならないように視線をそむけた。
 アーマデル自身は人体にある種の改造を受けている職分として他人に自分の体の隅々を検分されるのに慣れているが、他人の裸を見るのは恥ずかしいのだ。何でかってそんなのはわからないけど恥ずかしいのだ。理屈じゃない。
「でも、これだと紐の部分が白く残るのでは?」
 ルーキスの意見はど正論だった。
「完璧を求めるならやっぱり全部脱いだほうが良いと思うんですけど……」
 そうですねとしか言えない状況である。
「同性しか居ないなら羞恥心も何も無いですし、羞恥心もNGも何も無いですし!」
 ルーキスの笑顔がまぶしい。大事なことを繰り返して強調するのは大事なことです。
「そうだよねぇ」
 豊穣の化身たる繁茂のわがままぼでぃはふわっふわである。ふわっふわ。いい筋肉はふわっふわなのである。
 村の男衆がうんさかよっこいという感じで繁茂にオイルを擦り込んでいる。ふっくらつやつやに焼けますように。
「逆に見られるだけじゃ物足りないぐらいだよ☆」
 依頼を受けている立場を利用して、村の男衆には手を出してはいけない。じっと我慢できる子、偉い。
 アーマデルもパンツは紐だ。とろうがとるまいが大差はない。白抜きが気になるならちょっとづつずらして一か所だけが残らないようにすればいいだけの話だ。だからとらないでいいんだ。全然。いいんだけど。そうするのが当然という顔の人が複数いると。いや、全然とる必要は感じない。が、なんかいたたまれない。
 他の連中は大丈夫なのかと見回してみれば、
「……眩しい、つらい、暑い」
 グリムはもう焼きに入っていて、目を閉じていても眼球を攻撃する太陽光線と戦っている。まぶたの裏にハレーション。
「っ眩しいのは少し苦手だ」
 顔を隠して日光を遮れないのが、とてもつらい。と、飲み物をストローで吸い上げている様子が涙を誘う。
「ドリンクは美味しいのだが、暑さが紛れることはないな」
 おいしいんだ。あのなんだかわからないメクレオのお茶。きっと正気が失えないようなものが入ってるんだ。
「汗も凄く流れているし、すごく変になる」
 だから、この一回で焼きぬく!
「僕は色白なので肌を焼くのには時間がかかりそうです」
 九郎が黒いのは体毛だけなのだ。
「……なんか、こう、何もせずにいると落ち着きませんね……」
 手がワキワキしている。
「普段は暇なときはトランプいじってるんですけど、さすがに海に持ってくるのはキツいです」
 今はオイルで手がベトベトだし、風名乗って海に落ち、波にさらわれてしまったら泣くに泣けない。
「グリムさん、オイル足しますね」
 太陽と戦わなくてはならない同士のいたわり合い。


「うん、自分で見える範囲で見てもテカテカしていて変に見えるがこういうモノなのだろうか?」
「褌が一枚、褌が二枚、褌が三枚……」
「静止していると日当たりの加減で焼けむらができるかもしれない」
「ああそうだ、出来るだけ焼きムラは減らさなければいけません」
「褌が落ちてる」
「暑いので身体の向きを変えながら満遍なく焼いていきます」
「ギリギリまで攻めても大丈夫です」
「耳周りと腋と手はマッサージのついでに焼いて」
「もうこれ日焼けとか言う次元じゃ無いのでは? 楽勝とか言った過去の自分を殴りたい――」
「胸とお腹の下部分は持ち上げてもらって」
「だめだ余計に熱くなってきた……」
「胸の谷間とおへそと尻の間は左右に開いてもらって」
「うつ伏せから仰向けになるタイミングの見極め」
「股の間は男衆の肩に膝の裏を引っ掛け開き足の裏も焼いて」
「網の上で焼かれる魚の気持ちが少し分かったような気がします」
「内腿の方までしっかり日に当てられるポーズに……」
「ついでに仲間の視線も刺さってる気がするんですけど……」
「腹筋? 割れてないけど、なにか!?」
「あっこれやべーやつだ」
「大丈夫です自分はまだ正気なので安心して下さい――喉にまったり絡むオイルっ!」
「うう、ドリンクをのんではいるがあたまがぼうっとしてきたな」
「基本人体に無害な成分のみで出来ております」
「焼きが甘そうならば、行ってオイルを塗って差し上げます」
「えっちなきぶんになったりとか」
「肌を焼くとはこれほどつらいことなのか。うん、勉強になったな」
「そう、観音打至東は今ここに、鍋奉行ならぬ日焼け奉行として君臨する……!」
「なあ! やっぱり経験しておくべきだと思うぞ!?」


 太陽光線はヒトをあけすけにするものだ。
 という訳で、いい頃合いに焼けた。
 イレギュラーズはそれぞれ自分の体を確かめて思った。完璧だ。
「オイルを飲んだ時は正直死んだかと思った……」
 お腹緩くなると、人数に支障が出るので本気で勘弁していただきたい。メクレオがルーキスに問答無用でなんかのませた。ぐったりしている九郎の冷却にも余念がない。仕事を遂行させる強い意志。
「私メチャクチャくすぐったがりなんすよね。ボディペイント大丈夫かな……」
 ウィズィが、うむむと唸っている。
「祭りで筆を振るう少年たちにも事前にハンモの体を知ってもらうためマッサージでもしてもらおうかな☆」
 まだまだもんでもらいたい。繁茂の要求エスカレート。
「少年達の手を氷水で冷やしてもらい冷感マッサージ風味だといいねぇ! 大きなうちわで扇がれながらへっちな本を読み進め、喉が渇いたらスイカを要望。気分は常夏の女王様ってね☆」
 スイカくらいはサービスしてもらえるだろう。食べる余裕があれば。何しろ繁茂は書かなくてはいけない面積が広い。
「んん~夏の海さいこぉーーっ♪」
 明るい声に、イレギュラーズ達の表情が和らいだ。
 そうだ。後は日陰で寝っ転がったり、座ってるだけなのだ。
 実際のところ、へっちなご本を読む余裕のないこちょこちょペインティングからの儀式では無言で座り続けるのが依頼の本編だ。
 なんとここまではただの準備にすぎない。
 昼間からの疲れMAXだけど絶対寝てはいけない数時間が一行を待っているのだが、それはまた別のお話なのである。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

お疲れ様です。お祭りは無事に終わりました。思い出は皆さんとメクレオの心の中に。お肌は元の色に戻っています。安心して次のお仕事頑張ってくださいね。

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