シナリオ詳細
美しき者達の戦い
オープニング
●美しさの祭典
「ネオ・フロンティアに集いし美を競い合う!
ネオ・フロンティア・ビューティフル・グランプリ! 今年も開催の日がやってまいりました!」
司会の言葉に、観客席から歓声が上がる。
海洋王国のビーチに設置された特設会場。そこでは、古来より飛行種と海種の美しさを競い合うというコンテストが開かれていた。
美しさを競い合う、と言っても、いわゆる顔の整いを競い合うものではない。飛行種と海種の持つ、翼やヒレと言った種族の特色に乗っ取った個所の美しさを競い合う、伝統ある催しである。
近年は、同様の特徴を持つ旅人や、肉体に自信のある人間種、幻想種や鉄騎種など、とにかく参加の意思と自信があればだれでも受け入れるような運営体制をとっており、これはひと夏のお祭りに近い催しとなっている。
さて、観客と参加者たちでごった返す中、イレギュラーズ達もまた、参加者として/観客として、会場にその姿を見せていた。
だが、浮かれるほかの人々とは違い、その顔にはいささかの緊張の色が見えている。
その理由は、以下のようなものだった――。
「妨害予告?」
と、ジョージ・キングマン (p3p007332)は言う。海洋の、ローレットの出張所である。ジョージ以下八名のイレギュラーズ達は、ネオ・フロンティア・ビューティフル・グランプリ主催の男の話を受けて、今こうして顔を突き合わせていた。
「はい。伝統あるお祭りのような大会なのですが、何と言いますか、頑固なファンも多く。
近年、他種族や旅人たちも参加を受けれているのを、面白く思わないものもいるようで……」
「なるほど。それで、妨害を予告してきたと」
ジョージが眉を顰めるのへ、ノリア・ソーリア (p3p000062)はぷんぷんとした様子で声をあげる。
「そういうわがままは、いけませんの! 自分たちの思い通りにならないからといって、人の楽しみを邪魔するなんて!」
「それで、そいつらはワダツミの構成員を雇ったって? ほんとなのか?」
カイト・シャルラハ (p3p000684)が言う。ワダツミとは、海洋王国の、巨大なギャング団だ。あまり派手な活動を起こさないため、悪目立ちするようなことはないが、その勢力は決して小さくはないという。
「いや、確実に、騙りだろうなぁ」
十夜 縁 (p3p000099)が面白くなさそうに言った。ワダツミと浅からぬ関係がある縁には、ワダツミがこのような真似をしないことは解っていた。
「ワダツミは緩いグループだが、わざわざ自分からカタギに喧嘩吹っ掛けるような奴を構成員として認めるわけがないさ」
「って事は、よくいるチンピラか」
カイトの言葉に、プラック・クラケーン (p3p006804)が頷いた。
「ならば、鎮圧自体は楽って事だ。
問題は、大会進行中に仕掛けてくる、って事だろう?」
「そうだね。それに、どれほどの数で妨害を仕掛けてくるかもわからないよね」
イリス・アトラクトス (p3p000883)が言った。二人の言う通りで、正面から襲ってくるチンピラを、イレギュラーズ達が鎮圧することは容易いだろう。だが、今回は、敵がどのタイミングで襲ってくるかはわからない上に、会場ではまさにコンテストが進行中と言う事で、参加者や観客たちが残っている、と言う所に問題がある。
「素早く避難させるか、或いは守りながら戦うってわけか」
プラックの言葉に、
「会場警備がメインになるかなぁ」
イリスが頷く。
「まて、コンテストの参加者に紛れ込んでいるという可能性もあるじゃろ?」
クレマァダ=コン=モスカ (p3p008547)がそう言う。
「破壊工作をするなら内部から、と考えるやもしれん。となると、我らも参加者として潜入した方がよいのでは?」
「クレマァダさん、意外とコンテストとか出たいタイプです?」
ウィズィ ニャ ラァム (p3p007371)がそう言うのへ、クレマァダはごほん、と咳払い一つ。
「べ、別に我が出たいわけではないわ! ま、まぁ、我らコン=モスカ、種族としての美しさでも負けぬつもりじゃが……」
「でも、コンテストの参加者として潜入するのも、ありだと思います」
ウィズィが言う。
「……というか。私は出ます。普通に」
と、ウィズィが言うので、仲間達はむむ、と唸った。
「ええと、参加者としても警護についてくれるならありがたいです。
詳しい警護プランは、皆さんにお任せします!」
と、主催の男が言うのへ、イレギュラーズ達は頷いた。
――と言う理由である。
そんなわけで、イレギュラーズ達は外から内から、大会の護衛を行う事になったのだ。
「それでは、エントリーナンバー1、張り切ってどうぞ!」
参加者の一人が、舞台上へと歩いていく。観客たちは歓声を上げ、イレギュラーズ達には緊張が走った。
大会が、始まる。
それは、この大会を守るための戦いの、幕開けでもあった。
- 美しき者達の戦い完了
- GM名洗井落雲
- 種別リクエスト
- 難易度-
- 冒険終了日時2021年08月21日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談8日
- 参加費---RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
●開かれる祭典
「ネオ・フロンティアに集いし美を競い合う!
ネオ・フロンティア・ビューティフル・グランプリ! 今年も開催の日がやってまいりました!」
おお! と観客達の歓声が上がる。はやし立てるような口笛と、拍手の嵐。
「……すげぇな、大盛り上がりだ」
『男でもいいですか?』プラック・クラケーン(p3p006804)、会場の熱狂にさすがに驚いた。
「ひとまず、観客席の方も監視するとして……もし妨害するとなると、やっぱり機材トラブルとかか?
舞台裏の方重点的に探してみるか」
「私も手伝うよ。出番まではまだ時間があるからね」
と、『光鱗の姫』イリス・アトラクトス(p3p000883)が言う。今回は、グランプリの参加者として潜入する仲間達もいる。当然、仕事で潜入しているため、公私混同はしっかりとしている、はずである。
「ふふ、けれど、『イリス・アトラクトスの出場禁止』なんて言われなくてよかったよ。
でもいいのかな? 私が参加したら、ほとんどの人が『勝ち目はありません!』ってなっちゃうと思うけどね♪」
……公私混同はしっかりとしているのである。さて、そんな風に楽しげに言うイリスに、
「お、おう。そりゃすげぇな」
プラックは苦笑するのであった。
一方、空を二羽の鳥が旋回する。いや、それはオオトウゾクカモメの姿となった『絶海武闘』ジョージ・キングマン(p3p007332)と『鳥種勇者』カイト・シャルラハ(p3p000684)だ。
「ひゅー! こんなに人が集まるなんてなぁ!」
「それだけ人気のある催し物だという事なのだろう。だがその分警備は難しくなりそうだ」
カイトの言葉に、ジョージが答える。しかしカイトは楽しそうに、
「まぁ、確かになぁ。でも、人が多くて、祭としては楽しそうだぜ!
鳥代表としては、気合が入るってもんだ! 出番が待ち遠しいなぁ」
カイトも出場者として潜入することになっている。いまは、待機時間中に空からの偵察と言うわけだ。
「おっと、鳥代表とは大きくでたな。私も、この姿で出るわけではないが、コウテイペンギンも鳥であることを忘れるなよ?」
ジョージもまた、グランプリに出場する予定だ。だがカイトは不敵に笑い、
「ふふん。アンタのその、おお、オオトウ……? すまん、忘れちまった。
まぁ、とにかくその姿ならともかく、ペンギンの姿じゃ大きな翼のアピールもできないだろ?
鳥と言えば、やっぱり大きな翼だぜ! それをアピールするのは俺って事!」
「ふっ……流線型を帯びたペンギンの美しさが分からんらしいな。だが、それを今日ここで教えてやろう」
などと言い合いつつ、偵察を続けていく二つの影。それを審査委員席から見やるのは、『幻蒼海龍』十夜 縁(p3p000099)だ。海洋でも名高い縁である。警備の一環として、審査員席側に入りたいのだが、と提案した所、あれよあれよと特別審査員としてこの席に座ることになっている。
(……上でもなんか、バチバチにやり合ってるねぇ)
苦笑する縁だったが、舞台の方でも、まさにアピールは白熱している。現在は、ポメラニアンの獣種の男性が、そのふわふわの毛並みをアピールしていて、ボールのように舞台を跳ねるたびに、客席から歓声が上がっている。
「どうですか? 特別審査員の十夜さん。この毛並みは!」
司会からマイクを向けられるのへ、
「あ、ああ。そうだな。中々しっかり手入れされている。その努力を俺は評価したいね」
「なるほどぉ、確かに! この毛並みを維持するためには、眠れぬ夜もあった事でしょう!」
何やら大げさに盛り上げる司会に、観客たちは笑い声をあげる。縁は苦笑しつつ、しかし眼は観客席をしっかりと見張っていた。
(今のところ動きはないか……やはり、祭が盛り上がってきたところで、ってのがセオリーかな。
しかし、本当に馬鹿な奴らだ。ワダツミのネームバリューだけでそれを騙るとはな。
ここにいるのが俺じゃなかったら、まとめて海に沈められかねない)
ワダツミの構成員を騙る、チンピラたちに多少の同情と愚かしさを覚えつつ、特別審査員は嘆息した。舞台の上に目をやれば、そこにはレプトケファルスの人魚……『半透明の人魚』ノリア・ソーリア(p3p000062)の姿がある。
「よろしくお願いいたしますの」
ぺこり、とおじぎ。それからゆっくりと、代名詞でもあるその足、半透明のつるんとした尻尾を、ゆっくりと揺らした。
ゆらり、ゆらり、尻尾が揺れる。それは、半透明の空。或いは海。きらきらの光を透かし、美しく輝くそれは、海中にある星、宝。
海中では見えづらく、まるで宝探しをするかのようにしなければ見つけられないそれ。今は、太陽の光の下、もっとも美しく見える位の厚さと大きさに、サイズを変化させている。その効果は絶大で、尻尾が揺れるたびに、客席からうっとりするような吐息が漏れる。
「すっっばらしいですねぇ! ノリアさん、このまま何か、意気ごみやアピールの言葉をお願いします!」
司会の声にノリアはゆっくりと頷き、
「うわさでは、他種族に参加されたら、勝てなくなるから、大会ごと妨害しようというかたが、いらっしゃるようですけれど……大丈夫ですの、そのかたがたのぶんまで、わたしが、がんばりますから」
儚げににっこりと笑うが、これは確かな、妨害者への挑発である。お前たちは醜いのだろう、心も体も――そのように。
だが、それに気づいたのは、仲間達と、当の妨害者くらいだろう。審査員席の縁などは苦笑している。
「もし、そのようなひとたちが、あらわれても……わたしは、負けませんの。もちろん、他の参加者の皆さんにも、ですの」
「儚くも芯の通った笑顔だ! これはまさに海と空の狭間の宝! ノリアさん、ありがとうございます!」
にっこりと笑って舞台袖に戻ってみれば、『私の航海誌』ウィズィ ニャ ラァム(p3p007371)と『海淵の祭司』クレマァダ=コン=モスカ(p3p008547)が居た。クレマァダは、可能な限り存在を消し、ケープを被って自身を陰のようにしている。これは、登場時のインパクトを狙った戦法であったが、少し恥ずかしいという気持もあった。
「ふむ、良い演説じゃったな……じゃが! 海の王者はシャチであること、忘れるではないぞ?」
少しだけ得意げにクレマァダが言うのへ、ウィズィは苦笑した。
「……さっきまで、『美しさなど主観じゃろ~、無意味な事を~』なんて言ってたくせに。このでたがりさんめ」
「誰が出たがりじゃ!」
その様子に、くすくすとノリアが笑う。
「ふふ。でも、わたしが負けないのは、ほんきですの。クレマァダさんにも、わたしのしっぽは、負けません」
「言うたな? じゃが、我の姿を見れば息をのむに違いあるまい!」
胸を反らすクレマァダに、ウィズィは再び苦笑する。
「ほんと、出たがりさん」
●妨害者との死闘
「あの人魚……俺達を醜いとか言ってたな? くそ、だがこんな堕落した祭りに参加する奴の方が醜いって事を……!」
舞台裏でごそごそと音がする。練達製の舞台機械が設置されたエリアだ。男は手にナイフを持ちながら、機械につながっていたコードに近づく。断線させる気だろう。
「止めときな。そこは電気ってのが通ってる。そんな装備じゃ感電しちまうぜ」
男の背後から声がした。慌てて振り返ると、そこにはプラックの姿があった。
「なっ……!」
男が声をあげた刹那、プラックが殴り掛かる。顔面にキツイ一発。男が倒れ込み、くらくらと視界を揺らすのへ、イリスが飛び掛かって関節を固める。
「はい、一人見つけ」
イリスが笑う。
「ダメだよ、美しさで私に勝てないからって、こう言うことしちゃ」
「いや、別にアンタに負けそうだから妨害したわけじゃないと思うが……。
それに、クレマァダさん辺りなら音響トラブルなんざ、アカペラで回避出来るだろうけどな」
プラックは苦笑しつつ、煽る様に男の頭を叩いた。
「じゃ、色々話してもらうか。お仲間のこととかな」
「引き続きの登場は、こちらも海洋では名の知れたイレギュラーズ! ウィズィ ニャ ラァムさんだ!」
司会が声を張り上げるのへ、舞台袖からゆっくりと歩いて現れるウィズィ。その姿は、海賊をイメージした水着だ。魅せつける、ひき締まった体。小道具の宝箱の上に片足を乗せて、挑発するような目線を観客席に送れば、男女様々な黄色い声が上がる。
「私の船に乗りたい娘は、いつでもおいで」
王子様のような、海賊のような。イケメン風の口調を演じながら、きらり、と歯を見せて笑うウィズィ。これには何人もの女性たちが陥落。
「海洋でも名高いウィズィさん! これには入船希望者が殺到しそうですねぇ!」
「ウィズィ船長! 目線ください!」
「ウィズィ船長、ばーんってして!」
さながらアイドルのライブ会場めいてきたが、ウィズィは丁寧にファンサービス。指で鉄砲を作って、討つ真似をして見せると、さらなる黄色い声が上がる。
「やはりこの引き締まった身体は人間種ならではだな。他種族とは違う魅力を感じるだろう」
マイクを向けられた縁がそう告げるのへ、ウィズィはウインク一つ。
(流石審査委員長、そうやってどんどん敵を煽ってください!)
胸中で呟きつつ、名残惜しむ声を背に、舞台袖へ。
「続いては、なんとあのコン=モスカの姫が登場だ! クレマァダさん! 存分にアピールを!」
ウィズィとすれ違ったクレマァダは、ふふ、と得意げに鼻を鳴らす。負けんぞ、と言わんばかりに。クレマァダは部隊の真中まで歩いて、ゆっくりと身を包んでいたケープを取り去る。現れたのは、シャチの海種としての均整の取れた体だ。
「――では一体、鯨類の生物としての美とはなにか?
この肌であると我は心得る」
歌うような、謳うような声が響く。クレマァダはゆっくりと己が身を抱くようにした。オルカの肌は、ぶあつく、硬く、しなやかで張りがある。筋肉を見せつけるポーズではない、身体の流線型を見せるポーズ。
ウィズィに対しては、美しさゆえの黄色い声が上がったが、クレマァダは美しさゆえに息をのむ観客達。二人とも美しい、だがその魅せ方は対極的と言えただろう。
「すばらしい! しなやかな青はまさに海の祭祀たる一族の誇りを見せてくてくれる! これは――」
司会が声を張り上げる――刹那、ガシャン、と音が上がった。音の方を見てみれば、明らかにガラの悪い男たちが、手に武器を持ち、こちらを威嚇するように声を張り上げる。
「くだらん! 今や当初の誇りある祭りからは逸脱した、こんなグランプリは――」
そう声をあげた瞬間、空から降ってきた二つの影。カイトとジョージは男の前に立ちはだかると、
「悪いな、今はお前のアピール時間じゃない」
「割り込みは禁止だぜ? 出禁決定だな!」
「ちっ!」
男は舌打ち一つ、片手をあげた。観客席のあちこちに潜んでいた男女たちが、武器を手に立ち上がる。
「やっちまえ!」
男が個を張り上げた瞬間、観客席にいた妨害者の女が、ぐるり、と宙を舞った。それは、プラックの昇竜がごとき飛び蹴りによって、打ち上げられたものだ。
「全員、いったん避難だ! 妨害企んでんのはここにいる奴らで全部だ! 一気に仕留めちまおう!」
プラックが声をあげた瞬間、観客たちが悲鳴を上げて逃げ惑う。
「皆様、だいじょうぶですの! わたしが、まもりますの!」
ノリアが声をあげる。
「あいつ、あの挑発してきた奴か! あいつを優先的に狙え!」
男が声をあげるのへ、妨害者たちの目がノリアへと向かう。一人の男が、棍棒を片手にノリアへと向かう――だが、その前に立ちはだかったのはイリスだ。イリスはカットラスの背で男を殴りつける。男は一撃で昏倒し、地面に倒れ伏した。そのまま片手のカットラスを高々と掲げながら、
「私こそが優勝候補にして光鱗のアトラクトスのリーサルウェポン! 存在自体がレギュレーション違反とか言いたい事があるのならかかってきなさい!」
などと宣言するので、妨害者たちも挑発に乗ったようにイリスへと襲い掛かる。
「ジョージ、やるぞ! 今は出番じゃないけど、鳥の強さを見せつけてやろうぜ!」
「了解だ。アピールの前哨戦と行こう」
カイトとジョージもまた、男にむかって飛び掛かる。守る様に護衛の男が飛び込んでくるのを、カイトは三叉の槍で、ジョージは拳で、薙ぎ倒し、打ち払う!
瞬く間に始まる大乱闘。安全圏に避難した観客たちが遠巻きに心配げに見つめる。クレマァダは、むむ、と唸り、
「なぁんで、我のアピールの時に来るのじゃ! プランが台無しではないかぁ!」
と言うので、跳び抱いてきたウィズィが笑った。
「残念でしたね、出たがりさん!」
「誰が出たがりじゃ! だが、この狼藉ものどもは許せん! ウィズィ、やるぞ!」
「オーケイ! さあ、Step on it!! やらせるかよッ!」
海賊姫と青の姫、二人が舞台から飛び降りる。ウィズィは手近にいた妨害者の女を、『ハーロヴィット・トゥユー』の背を叩きつけて、打ちのめした。合わせるようにクレマァダは、隣にいた男に拳を打ち付ける。ぐえ、と悲鳴をあげた男が昏倒。
「我らを――」
「舐めんなよ、ド素人が!」
元より数頼み、奇襲頼みのチンピラたち。イレギュラーズ達に及ぶべくもない瞬く間に鎮圧されていく。観客たちの声も、やがて歓声へと変わっていく。それはさながら、ヒーローショーのようだ。
「チンピラ共。祭りの盛り上げ役を買って出たのはえらいが、残念だな。戦う雄姿は採点に入らないそうだ」
ジョージの一撃が、妨害者の男を気絶させる。
「全く、せっかくの祭、潰されちゃたまんねぇからな!」
プラックの拳が、妨害者の男の腹部を捉え、昏倒させた。
「く、クソ……!」
リーダーの男が降りを悟り、踵を返す。逃げる気だ! だが、刹那、世界がぐるりと回転した。投げられたのだ、と気づいた瞬間、身体に激痛がはしる。
「おっと、責任者が逃げちゃいけないねぇ」
縁がにぃ、と笑って男を見下ろしていた。
「ち、畜生……よくも……」
呻く男に、縁は肩をすくめる。
「おいおい、こっちは感謝してほしい所だ。ワダツミを名乗って暴れようなんて、肝が冷えるぞ?
ここにいたのが俺で良かったな。あいつだったら……ほんとうに、どうなっていたかわからんぞ?」
その言葉を聞きながら、男は意識を手放した――。
●そして祭の続き
「さて、中断してしまいましたが引き続き審査を続けていきましょう!
続いては、カイトさん! 大きな翼をアピールしての入場だ!」
カイトは舞台の真中に立って、大きな翼を存分に魅せつける。
「どうだい? この翼の美しさ! これが飛行種の美しさだ! 『飛行種や海種以外も』、纏めてかかってこいや! 俺の翼が一番だぜ!」
その言葉に、会場からはやし立てるような声が上がる。
「確かに、見事な翼ですね……これぞまさに、飛行種の美しさ!」
司会の言葉に、
「だろ!? 海種や獣種、勿論他の連中にだって負けない! 飛行種の翼が一番美しいんだ! そうだろ!?」
カイトもまた、観客たちを沸かせるように声をあげる。観客たちは、拍手喝さいをあげた!
「ありがとうございます! そして、先ほどの戦いでも活躍していたジョージさん! 此方もカイトさんとは違った形での、鳥としての魅力を見せてくれる!」
と、現れたジョージは、コウテイペンギンの姿をしていた。ぽてぽてとゆっくり歩く姿。流線型のボディは、愛らしさを感じさせる。
「翼は、確かに飛行種の一つのポイントだ。ペンギンはフリッパー……翼だが、これで飛ぶことはできない。だが、この様に広げれば、ペンギンの魅力を存分に引き出してくれるだろう」
ジョージが翼を広げる。つるりとしたペンギンのボディ、その形がよくあらわになる。観客席からも、その美しさに歓声が上がった。
「いいぞ、ペンギンさん!」
「もっと良く見せてくれ!」
観客たちの言葉に応えるように、ジョージがくるくるとその場で回転する。そのボディを様々な角度で魅せつけてくれるアピールに、観客たちがわいた。
「そして、今日の大トリは、光鱗のアトラクトスだ! 大トリでも鳥じゃないぞ! 海種だ! その美しさを存分に魅せつけてくれ、イリスさん!」
司会が声を張り上げるのへ、舞台上の大きな水槽の中に、イリスが飛び込んだ。途端、本来の姿であるアトラクトステウス属の完全魚類の姿を魅せる。
「光鱗の名は伊達じゃないよ。この美しいガノイン鱗。輝く美と、ちょっとやそっとじゃ傷つかない堅牢さを兼ね備える、完璧な魚類の鱗なんだ!」
輝くイリスの鱗。水槽の中できらきらと輝くそれに、観客たちは歓声を上げた。
「まさに海中の星か! 見事なものです!」
「ふふ。私達アトラクトスの出場を認めたことを後悔すると良いよ。私が、光鱗が、最も美しい――そうでしょ、皆?」
アピールするイリスに、観客たちから合意の声が上がる。
「いいぞ、アトラクトス!」
「堅牢・美麗・無敵!!」
「……っと、ここで全参加者のアピールが終了です!
果たして、最高の美の称号は誰の手に!
審査委員と、観客の皆さんの一票で決まります!
さぁ、決を取りましょう! 最も美しき者は――!」
そして、栄冠は、その者の頭上に輝く――。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
ご参加ありがとうございました。
来年もまた、このグランプリは開かれるのでしょう。
選ばれた人も、そうでない人も。
また来年、ここで美を競い合いましょう!
GMコメント
お世話にっております、洗井落雲です。
此方のシナリオは、イレギュラーズ達への依頼(リクエスト)により発生したお仕事になります、
●成功条件
『ネオ・フロンティア・ビューティフル・グランプリ』を妨害しようとする勢力を撃退する。
オプション――グランプリに参加して、美しさを競う!
●情報精度
このシナリオの情報精度はC-です。
信用していい情報とそうでない情報を切り分けて下さい。
不測の事態を警戒して下さい。
●状況
皆さんにもたらされた依頼。それは、ネオ・フロンティア・ビューティフル・グランプリを妨害しようとする勢力から、大会を守ってほしいというものでした。
皆さんはこの会場に潜入し、妨害者から大会を見事守ってください。
依頼の達成条件は、大会の妨害者から守る事ですが、勿論、参加者として大会に参加することも可能です。
大会に参加しているから、観客席で警護ができない……と言う事もなく、参加者として大会に参加しつつ、アピールタイム以外に観客席で護衛することも可能です。その辺は割と自由です。
大会開始時刻は午後一番から。
周囲は観客たちがひしめき合っています。妨害者による襲撃が発生した場合、速やかに避難誘導を行えるようにしておくと、スムーズに戦えるでしょう。
●エネミーデータ
妨害者 ×???
大会を妨害しに来たチンピラです。
一体一体はイレギュラーズの皆さんよりはるかに格下ですが、数は多く、観客と参加者でごった返している大会会場に現れるため、対処がやや困難になるでしょう。
どのタイミングで、どの方向から攻撃を仕掛けてくるかは不明です。
●大会について
飛行種の翼や、海種のヒレや鱗など、種族としての特徴の美しさを競うコンテストです。
もちろん、人間種や旅人、他種族として、自身の肉体の特徴を魅せ付けても良いです。
無事に大会を守ることが出来れば、そのまま参加するのもよいでしょう。
あくまで、お祭り騒ぎのような緩いものですので、大会参加や審査基準に関しての判定も、割とゆるゆるです。
以上となります。
それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
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