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シナリオ詳細

鰻塚破壊工作電撃作戦

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●『塚』って墓場じゃないらしい
 海洋、貴族街。その片隅に『蒼ノ鶫』ドロッセル=グリュンバウム (p3n000119)の実家はある。ちょっといいとこのお嬢ちゃんであるところの彼女は、色々あって帰れずにいた実家に久々に顔を出そう、と戻ってきたのである。あるが、貴族街に向かう途上でなんかビラを撒いて歩いていたノリア・ソーリア(p3p000062)に遭遇した。遭遇してしまった。
「鰻は穴子の宿命のライバル……でも、土用丑の日からは助けますの!」
「えーっと……はい?」
 なんて?
「助けますの!」
「はい……」
 いやはいじゃないが。
 折しも明日は土用丑の日(※7/27の出来事です)。ノリアの話を一先ず落ち着いて聞いてから、問題なさそうなら丁重にお帰り頂こうとドロッセルは実家に招いた。
 それがいけなかった。

●×『素敵! 良いお家!』 〇『ここがお前の墓場となるのだ!』
「わたしは昨年、鰻の海種の方々が土用丑の日を口実に乱獲されたのを見たんですの。彼等は海種ですけれど変化して人の姿をとることに忌避感を覚えるタチで、常に鰻の姿でいましたから、習性にも特段敏感でしたの。でも、それがいけませんでしたの……」
 お茶をしばきながらノリアはしゃべる。どうやら、遠からず関わりのあった相手が土用丑の日に巻き込まれる格好で普通の鰻同様に狩られたらしい。それも、たいそう原始的で尚且つ相手の本能をつく陰惨なやり方だったらしい。
「鰻を狩った人達は、『鰻塚』を大量に作りましたの。これは海沿いなどに石積みを築いて鰻が寝床にするのを狙い、まとめて捕まえるやり方ですの。これを、鰻達が『新しい家が沢山出来ている!』と大喜びで……」
「すいませんノリアさん、ちょっといいですか」
「どうしましたの?」
 ノリアの説明を途中で遮り、ドロッセルは両手で台形のような形を作り、それに顎を乗せた。メガネがあったら目元が見えなくなるようなアノ仕草だ。
「なんぼなんでも鰻塚くらい変化すれば30分で作れるのでは?」
「思想信条の問題なのですの!」
「えっ、はい……」
 なんか怒られてしまった。正論だと思うんだけど。
「それで、わたし達は今日いまのうちに鰻塚を探し出し、全部ぶっ壊してしまいますの! そうすればそれが変化前の海種でもマジモンの鰻でも助け出せますの!」
「……丑の日、どうするんですか?」
「しらすみたいにほっそい『う』どんでも食べてればいいですの!」
 ああ、うん。丑の日って『う』がつけばいいもんね……。

GMコメント

 わたしは鰻食べましたけど、大枚はたいて買ってから「量販店でうめぼしとうどん買えばよかったんじゃない?」って正気に戻ったのでイベントの魔力ほど怖いもんはありません。

●成功条件
 海洋近海の鰻塚を出来る限り壊して回る

●注意事項
 この依頼は『悪属性依頼』です。
 成功した場合、『海洋』における名声がマイナスされます。
 又、失敗した場合の名声値の減少は0となります。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

●鰻塚×大量
 ざっくりいうと鰻が過ごしやすいような狭い空間などを石積みをすることで作り出し、そこに集団で住み着いた鰻を一斉に捕まえる仕掛けのことです。
 これを海洋近海をブイブイ襲撃するカーとかいって壊して回ることになります。人為的だとおもうよその住処。
 そんな感じなので鰻(海種含む)からも住処を奪う行為、鰻を楽しみにしてる人達は漁獲量激減で悲しい、と全方面に喧嘩を売る行為です。しかたねーだろ人命(?)かかってんだから。
 破壊すること自体は容易です。事前になんらかの手段で立ち退きさせるとかの必要はあります。応じなかった場合どうしたものかって感じです。
 数が多いです。一日でなんとかできる数には限界があり、結局の所は自己満足ですが、やらないよりは大分マシです。

●鰻(海種)
 人にならないポリシーを持つ鰻達。捨ててしまえそんな主義主張は。
 鰻塚を壊す際に立ち退きを要求する相手ですが、割と言うことをききません。
 この辺り強引に壊すか説得を続けるか、も色々重要になってきます。
 まあ、強引に壊しすぎると生き埋めになっちゃうんですけど……。

●海洋漁協のみなさん(エネミー)×散発的、総数多
 所謂『海の男』達です。荒事慣れしているので、近づかれすぎると戦闘になります。
 基本的にはカットラスやマスケット銃、基礎魔術などと装備面ではさして強くはありませんが、油断はできません。
 数、多いもんね。

●作戦区域:海洋沿岸部
 基本的に船(持ち込みがなければ小型船の分乗)での移動+作業となります。
 漁協のみなさんは大砲なんぞ持ってないので船が沈む可能性は低いでしょう。

  • 鰻塚破壊工作電撃作戦完了
  • GM名ふみの
  • 種別通常(悪)
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年08月17日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談8日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ノリア・ソーリア(p3p000062)
半透明の人魚
志屍 瑠璃(p3p000416)
遺言代行業
イリス・アトラクトス(p3p000883)
光鱗の姫
マニエラ・マギサ・メーヴィン(p3p002906)
記憶に刻め
クーア・M・サキュバス(p3p003529)
雨宿りのこげねこメイド
綾志 以蔵(p3p008975)
煙草のくゆるは
イズマ・トーティス(p3p009471)
青き鋼の音色
シャオ・ハナ・ハカセ(p3p009730)
花吐かせ

リプレイ


「ウナギ……親近感こそ、あるものの、同一視だけは、されたくのない、わたしの……いえ、全アナゴの、宿命のライバル……!」
「いきなり物凄く主語が広いですが大丈夫ですか?」
 『半透明の人魚』ノリア・ソーリア(p3p000062)が拳を握って切々と情に訴えるが如き表情に、『蒼ノ鶫』ドロッセル=グリュンバウム (p3n000119)は流石にヤバいのではないかと止めに入った。だが多分止まらないと思われる。それだけ重い決意とかその辺りがノリアにあるので。
「鰻を守るのは解った。でも何故穴子……あぁ、そういう」
 『青き鋼の音色』イズマ・トーティス(p3p009471)は何故ノリアが穴子を代表しているのか理解が追いつかなかったが、その外見と挙動ですぐさま理解した。そして当日というか、数日前の自分の所業も。墓まで、いや無理は言わないのでせめて依頼では口にすまいと頑なに誓う。
「ポリシーならば仕方ないので……いや限度があるのでは……?」
「私の立場から言っても、文化的なものなら尊重すればいいとは思うけど……人の形になれる相手が漁獲高になるのは、その……」
 ノリアの主張は脇に置いとくとしても、『めいど・あ・ふぁいあ』クーア・ミューゼル(p3p003529)と『光鱗の姫』イリス・アトラクトス(p3p000883)の表情の複雑さからわかるように、万が一があれば彼女らも今後うなぎ料理を見るたび苦い思いをしかねない。食卓に並んだウナギが低確率で海種でした、とか正直嫌だ。それは共通認識である。ノリアほどの強い感情はないが、さりとてほっといた時の心理的リスクが大きすぎるのだった。
「生存競争でいえばスタート地点へ逆走、進んでまな板の上で寝転がるような生き様の方々は、本来非常に救いがたいのですが……」
「生き方というものはそう簡単には変えられませんからね。本来ならそれで死ぬのも自己責任です。しかし……」
「だからこそ、助けますの。ここで恩を売ってアナゴの方が優秀だと、思い知らせてやりますの」
 『遺言代行業』志屍 瑠璃(p3p000416)と『花吐かせ』シャオ・ハナ・ハカセ(p3p009730)からすれば、そもそも魚として生きることを決めた海種達が納得づくであれば放っておけばいいんじゃないかとすら思えてしまう。が、知った以上は後味が悪くなるだろうし、なにかが殺されることを忌避する心の向きは、シャオならずとも理解できるというもの。……ノリアの勢いに押されたとも言うが。
「あー、なんつうか……誰が悪いとかってねえんだろうな、こういうのは。たぶん」
 自らが用意したボトルシップを駆りつつ、『煙草のくゆるは』綾志 以蔵(p3p008975)はどこか悟ったような表情で紫煙を吐き出した。海洋にある者全てに喧嘩を売る今回の依頼に於いて、明確な悪役は存在しない。居るとすれば、自分達がそうだ。『自分の生活のために』行動する海種と漁師を向こうに回し、誰が悪い、とは流石に言えまい。
「…この際だからはっきり言おう。私は海で泳ぐの苦手なんだ! 泳げるけど、臭いし目に染みるし……」
「海が苦手なんだな。3隻に分かれて移動してる以上、そこまで海で泳がなきゃいけない可能性は高く無いと思うんだけど」
 『無限陣』マニエラ・マギサ・メーヴィン(p3p002906)のあからさまな宣言に、しかし一同の反応は同情的というか、「そういう事もあるよね」というノリ。海洋大号令を通して海に慣れた者もそれなりの数いるのだろうが、さりとて潮の香りも、塩害も、うまく付き合うには色々手間なのであった。
 ひとまず、瑠璃の小型船にはノリアとドロッセル、イズマの小型船にはシャオとイリス、そして以蔵の展開したボトルシップにはマニエラとクーア。ノリアの魔術を鑑み、密集陣形での航行となる。彼女がいることで、海種ならぬ者達も溺れることは……多分、ない。
「穏便に、穏便にだ。話し合いで終わるならそうしたいな」
「私とていちおう海洋近海の領地を預かる領主なのです。とりあえず立ち退きを命じてみましょう。……話は3倍増しくらいにして」
 以蔵が両掌を押し下げるジェスチャーで落ち着いて、と示すと、クーアは握り拳を構え応じる。領主としての威厳をうまく活かせば活路はあるだろう、と。
「そういえば、鰻達ってこっちに狙いを向けることはできるかな……」
「わたしが、そこは、うまいことやりますの。鰻の勘の虫の起こし方は、心得ておりますの」
 イリスの心配そうな言葉に、船の向こうからノリアが大きめの声で応え、それはそれは爽やかなドヤ顔を見せた。イリスならずとも心配になってしまう表情だったのは、言うまでもない。


「やーい、円口類もどきー」
「……それって挑発になって」
 ノリアが鰻塚に向かって挑発めいた言葉を投げかける。素人には全くわからない機微であったが、どうやら効果は抜群らしい。ドロッセルが疑問を差し挟む間もなく、中からビチビチビチィッ! と音を立てて鰻達が這い出してくるではないか。どことなく知性ありげな目つきをした個体が「もう一編言ってみろオラァ!」と悪態をついているではないか。
 そうやってはいでた彼等の視界の先には、すでに着水して隙を見せまくったノリアの姿。絶好の狙い目と見た海種達は彼女目掛け突っ込んでいき、天然の鰻達は海種に誘われるようにして外に引っ張り出されていく。
「不法滞在の疑いがかかってるんですけど、外に出てもらうわけにはいかないですかー? そこ、これから壊すんですよー」
「こんなに住心地のいい塚が誰かの持ち物? 馬鹿な……」
「今更返せと言われても、大所帯になってるし……」
 イリスは立場上、できるだけ荒事を避けたい気持ちが強いので穏健な説得を選択する。するが、いきなり壊すと言われて戸惑う海種達も多かった。当然、弱気な個体はすぐさま外に出て「どうぞどうぞ」みたいにビチビチと跳ねているが、全部が全部ではなさそう。知性なき鰻達は、話の流れでちょっとだけ崩れた塚に驚いて表に出てきている。
「警告する。ここを出るんだ。生き埋めになって食われて死ぬのが嫌ならな。まず一箇所吹っ飛ばす。全部壊れる前に出てくるんだ」
 が、イズマはチマチマやっていたら間に合わぬとばかりに音による衝撃で塚の一部を叩き、崩す。内側に力が向かえば当然、生き埋めになろう。だが、彼は器用に外側に向かう衝撃を作り、鰻達を適当に脅したのだ。
「入口もどんどん埋めていきますよ。生き埋めになりたくないなら早く立ち退いてくださいね。あ、そちらの塚も順番に入り口を埋めていきますからね」
 シャオはこれ幸いに、とばかりにスコップを握ってあちらこちらに脅しをかける。浅瀬なのでぶっちゃけ飛び込んでいって埋めてもいいくらいなのだ。
「ぐぬぬぬ……! 仕方ない、ここは捨てよう」
「おとうちゃん、でも行く宛がないよ?」
 海種とて、人の姿をとらずにあれやこれやと言葉をかわすのには限度がある。だが主義として、鰻として生きていく道を選んだ以上は自活の道も必要で。
「あー……どうしても塚がないとダメってんなら、後で人が来ない海域を探して作ろうか? 今の時分、そんなところ少ないだろうが……」
 以蔵はたまりかねて提案をひとつ。彼の言葉通り、確約できる話ではないのだが望む者もいるだろう、程度の感覚だ。無論、彼は達成に最大限の努力はするのだろうけれど。
「こほん。そもそもあなた方、自身の生命が脅かされているのは御存じでしょうか。
 人間たちの狩猟の季節、今この鰻塚自体が彼らの卑劣にして甘美な罠なのです」
 鰻塚に執着する海種達に、クーアはいよいよもって重い事実を突きつけに行った。鰻塚がこつ然と現れたのはいつだったか。最近、同胞が被害に逢うケースが増えてやいないか。海種達は少し考え、最悪の想定にぞっとするものを覚えた。
「……ってワケだから、俺達もできれば立ち退いてくれると助かるんだが」
「私達は食べないから、一旦こっちに捕まってくれてれば安全な場所まで連れていくよー?」
 以蔵の言葉と、さらにイリスの説得が加わり、いよいよもって危機感と、そして喫緊の事態であることを伝えていく。彼等が仮に鰻塚から逃げ出しても、すぐに捕まっては意味がないのである。
「そうですね、私も海種の皆さんが食卓に並んだという話を聞かないでもありませんので、出来ればここは退いて貰ったほうがいいとは思います。この辺りに罠を張るということは、いくばくもしないうちに漁師たちがあなた達を狙いに来ますからね。なので――」
 瑠璃は仲間たちの言葉に便乗する形でその危機感を煽りに煽り、徐々に中の鰻が減ってきたであろう鰻塚に虹の雲を放つ。ゆらりと流れていったそれは、触れるやいなや鰻塚を突き崩し、更地に変えてしまった。多少は生き埋めがいるだろうか? と思ったのもつかの間、中から這い出す影がある。……しぶといモンである。
「逃げないなら、かば焼きが、お似合いですのー」
 そしてやっぱり、ノリアは体内から発射した水鉄砲で鰻塚に損害を与えつつ挑発を続けていた。普通の鰻ですらも彼女目掛けて突っ込んでいくあたり、その挑発は言葉というより種族間の溝めいたものに働きかけているのだろうか……?
「大分遠くではあるけど、漁船の影が見えるな……ああ、逃げるなら鰻達も、今のうちかもよ?」
 幾つかの鰻塚から鰻を引っ張り出し、そして塚を壊しまくった仲間達に、マニエラは警告を発した。できるだけ鰻達を見ないようにしつつ(食べたくなるので)待機していた彼女だからこそ、気付くのが早かった……の、かもしれない。
「早くここからずらかるのです。まだ鰻塚は残っていますので、漁師の皆さんに見つかる前になんとか壊し切るのです……!」
 クーアは、出来れば漁師に遭うことなくことを済ませたかった。繰り返しになるが、彼女も一端の領主である。深刻な悪影響はなかろうが、心情的に迷惑をかけたくないという気持ちはどうしても存在するのだ。
「こっからなら……一旦逃げ切れるな。ここで船の乗員を入れ替えるか」
 以蔵は最悪の場合は交渉役を買って出ることを告げると、イズマの船に己のそれを近づける。遭遇を避けたいクーアと、口が立ちそうなシャオとの交代、という形だ。
「話が通じないなら最終的に吹っ飛ばすし、手加減入らないと思うが……」
「マニエラさんは私達と引き続き鰻塚の破壊に向かいましょう空っぽのやつを壊してもらうと思うので被害はあまり考えなくていいです荒ごとは出来れば避けたいのでさあお早く」
 マニエラの剣呑な雰囲気を嗅ぎ取ったドロッセルは、彼女を瑠璃の船に引っ張り込み、漁協に見つからぬように誘導する。最悪の場合は以蔵達が交渉している間に破壊工作と撤退を終わらせる格好となるが……果たしてどれだけ保つだろうか?


「そっちの方から助けを求めてる声が聞こえるね。逃げ遅れかな?」
「よし、その辺りだな。吹っ飛ばすぞ」
 鰻塚を破壊し、巻き込まれた者を最悪見捨てる……そういう選択は間違っては居ない。いないのだが、万が一わかる形で何某かが巻き込まれているとなると話は別だ。
 イリスの感覚に割り込むように感じる、助けを求める声。それを頼りにイズマが鰻塚の残骸を吹き飛ばし、生き残りを解放する。
 情けはなんとやら、その動きを見た鰻達(海種含む)はイレギュラーズが信頼に足る存在だと(今更)理解すると、次々と鰻塚から脱出するように誘導するのである。
「挑発よりも、信頼の方が、うまくいく、なんて……まるで昔話、ですの」
「無茶苦茶感はすごいですけど、ノリアさんのやり方も間違ってないので……」
 海から顔を出したノリアに、ドロッセルはフォローともつかないフォローを入れた。彼女のやり方も、一応ちゃんと成果をあげているのである。
「あっちで塊になってる跡は私が吹っ飛ばすのです。あとは勝手に逃げてくれるでしょう」
 イズマの向いた側とは別の残骸は、クーアが片付けていく。助けを求めることすらしない稚魚が、岩の隙間を泳いだ気がした。
「時間稼ぎは任せちまったけど、大丈夫だよな……?」
 マニエラは、以蔵達の船がとどまった先に向かってくる漁船をちらと見る。漁をするため動き回る船だ、獲るべきターゲットが見つからなければ動きは早くなるのが必然だった。だからこそ、誘導役を任せたのだが……。

「これ、お前たちがやったのか?」
「まさか。自分達で壊しておいて、こんなところでふらふらはしていないですよ。ただ……」
「ただ、なんだ?」
「この辺の鰻、本当に獲ってもいいのかなあ、って」
 漁師の1人に詰め寄られ、シャオはのらりくらりと躱していく。本当に獲ってもいいのか、との問を受けた漁師達は、口々に「当たり前だ」「どれだけ仕込みをしたと思ってる」と口々に怒号にも似た言葉を飛ばしてくる。そりゃあまあそうだ。一番のかき入れ時なんだから。
「俺達はこの辺りに問題ありって話を聞いて来たんだよ。なんでも海種が混じってるとか。出荷したやつに海種が紛れてたなんて聞いたら、食べる側もいい気分はしないだろ?」
「知り合いがいるかもしれないんですよ。ここで適当に獲られて、出荷されてからそうでした、なんて言われたらたまらないでしょう。私も、貴方も」
「むむ……」
 漁師達は、決してその言葉だけで信じたワケではない。ないのだが、2人の雰囲気とか、秘めた実力を鑑みて『あ、これヤバそうだな』と肌で感じ取ったのである……それと、船の周りを泳ぎ回る、明らかに鰻とかボリボリ頭からいってそうな大型魚が回遊しているのを見て、漁獲が絶望的なことを悟ったのであった。

「……依頼が終わったら鰻食べに行くか」
 そんな声が聞かれた気がしたが、陸にあがってからの鰻の供給の惨状を思えば、その後の顛末も窺えよう。

成否

成功

MVP

イリス・アトラクトス(p3p000883)
光鱗の姫

状態異常

なし

あとがき

 皆さんのおかげで、なんとか海種達の多くを救うことが出来たようです。
 ……鰻、品薄なんですよ。

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