PandoraPartyProject

シナリオ詳細

甘いお肉を求めて……?

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●幻想のとある豪邸にて
「うぐおおおお、これはいかん……いかんかったな……」
 情けない声をあげながら腹を抑える貴族が一人。
 テーブルには謎の色に変色した肉。ステーキ。
「……ゾンビの肉など食べたからだと思いますが」
 あきれ返るようにメイドが冷めた目をするが、貴族は全くそんなことを気にしていない。
「ふ、ふふ。これはダメであったな……ならば次だ、えーっと」
 ぺらぺらと自家製のメモをめくっていく。
 ゾンビの肉、にバツ印を付けて次のページを見る。
「うむ、ハチミツクマの肉だな。あの蜂蜜はすさまじい匂いで食えたものではなかったが、肉は意外といけるやもしれん!」
「またあれですか……あれでしたら、巨大なハチミツクマの出没情報が出ております」
 はぁ、とため息をつきながらメイドは淡々と情報を提供する。
「それだ! すぐに依頼を出せ、次の食事はそれにするぞ!」
 はーっはっはっは! と、元気な笑いをあげ、依頼を出すように命じると貴族は急いで席を立ち、トイレへと走って行った。

●そしてローレットへ
「お肉の蜂蜜漬け。美味しいと思いません?」
 突然『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)が依頼書を片手にローレットで仕事を探す君達に詰め寄った。
「美味しいと思うなら美味しい話があるのです。これなのです」
 差し出された依頼書は、幻想の貴族から出された依頼だった。
 内容は、幻想のとある山間に住まう巨大熊の討伐。
 これだけを見れば何の変哲もない依頼だが、討伐を終えたらその肉を持ち帰ってきてほしいと書かれていた。
「この貴族さん、名うての珍食家なのです。……いい意味でも、悪い意味でもなのですが」
 気になるものはなんでも食べる、という貴族らしい。前はゾンビの肉を試したとかなんとか、そんな話もあるが、今回とは一切関係ない。
「とりあえず、この熊を退治してお肉を持ち帰るのが目的なのです」
 そう言われれば特段難しい依頼でもないような気がするが、そんな単純にも行かないのがここに寄せられる依頼でもある。そんな気がしてならない。
「あ、戦う熊さんなのですけど。こう、凄いらしいのです。甘々らしいのです」
 何が、甘々なのか。ややわかりづらい説明をしっかりと聞き直せば、ユーリカは熊についての資料を持ってきた。
「これなのです。ハチミツクマ、全長3m近くになる巨大なクマで山の主……今回みんなが戦う相手はそう呼ばれてるらしく、5mぐらいあるらしいのです」
 デカい。だがそれだけでもあるまい。
「それと、その名の通り……ハチミツで戦うのです」
 蜂蜜。あの蜂の集める蜜で戦う? 何を言っているのか一瞬理解が及ばなかったものもいるようだが、とりあえず話は進む。
「ハチミツをぶん投げたり……ハチミツを身に纏って突進してきたり……凄いべたべたするらしいのです。あと、めっちゃ臭い」
 最後だけ真顔になった。何を知っているのだ、ユーリカ。
 ともあれ、話を聞いて行けば、ハチミツで戦う巨大熊の討伐という事だろう。
 依頼人はこの蜂蜜漬けの熊肉を食べたいという事。成果次第では分けてくれるというがその話を受けるかどうかは個々での話になるだろう。

GMコメント

 はい、トビネコです。今回の依頼はクマ退治……そして肉を持ち帰るのが目的です。
 お肉の保存については機材が依頼人から提供されるので問題はありません。
 安心してクマ退治に集中して頂ければと思います。
 
 また、依頼終了後、望むならクマ肉を分けてもらえますが、味は未知です。

●依頼先の山
 極々普通のよくある山ですが、他よりも虫が多いです。特に蜂。
 といっても刺激さえしなければ皆様が襲われることはありません、ハチの巣を爆破して遊んだりしなければ問題ありません。
 
 クマの出没する地帯は、熊が蜂蜜を集めて漁ったりマーキング代わりに蜂蜜を塗りたくったりしている為、蜂蜜で非常にべたべたしていて足場が悪いです。うっかり転んだら目も当てられません。
 木々は多いですが、視界を塞ぐような樹はそう多くはありません。

●ハチミツクマについて
 ハチミツを主食としつつも、割と雑食なクマですが、あらゆるものにハチミツを塗りたくって食べるという生態系を持っており、常にハチミツと共に生き、ハチミツに塗れて生きています。
 元々大型のクマですが、今回相手となるのは山の主とも言われる存在で全長5mほどのクマとなります。

 攻撃方法は物理的な攻撃以外に、ハチミツを投げつけて攻撃するという事を行ってきます。
 ハチミツ投擲は中距離程度まで届き、匂いと粘性によって【乱れ】状態と【呪縛】状態を付与してきます。
 この状態はスキルによる解除以外にも主行動を使って拭い取るか誰かに拭いてもらう事で解除でも解除が可能です。

 依頼の説明は以上となります。
 また、山には川や湖の存在が少ないため、一度べたべたになるとしばらく大変なことになりそうです。
 ともあれ皆さまが無事に帰ることをお待ちしております。

  • 甘いお肉を求めて……?完了
  • GM名トビネコ
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年07月03日 21時20分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

デイジー・リトルリトル・クラーク(p3p000370)
共にあれ
マルベート・トゥールーズ(p3p000736)
饗宴の悪魔
クィニー・ザルファー(p3p001779)
QZ
鬼桜 雪之丞(p3p002312)
白秘夜叉
最上・C・狐耶(p3p004837)
狐狸霧中
秋田 瑞穂(p3p005420)
田の神
エリシア(p3p006057)
鳳凰
望(p3p006072)
テレパシスト

リプレイ


「ある日ー♪ 森の中ー♪ くまさんにー♪ 出会ったー♪」
「いや待てこんな場所で歌ったら気づかれるのじゃ……」
 『大いなる者』デイジー・リトルリトル・クラーク(p3p000370)が山道を歩きながら歌い続けるのを『田の神』秋田 瑞穂(p3p005420)が慌てて止めた。
 そろそろ依頼にあったハチミツクマの出現地域、下手に歌うとクマが警戒するか、襲ってくるかわからない。
「ダメかの?」
「ダメだよ……うわ、もうニオイ凄い……」
 匂い対策でマスクを二重で付けて来て、凄まじい息苦しさを味わいながら登山という苦行を味わっているのに、それでも匂いがマスクを貫通してくる事に耐えられなくなりつつも、なんとか進む『QZ』クィニー・ザルファー(p3p001779)の姿は目も当てられない部分もあった。
「あら、大丈夫でございます?」
 そんな彼女を心配するように『朱鬼』鬼桜 雪之丞(p3p002312)が話しかけた。
 彼女も甘く臭い匂いのする蜜の対策のために、普段とは違う古着を着用してきている。
 足元を見ればぬかるみだした地面にハチミツが付着しだしており、注意が必要になってきた。
「あ、蜂の巣」
 ふと『狐狸霧中』最上・C・狐耶(p3p004837)が辺りを見回せば、所々に蜜蜂のものと思われる蜂の巣がいくつも見えてきた。
 せわしなく活動している姿があり、周囲にクマの足跡も増えてきている。
 余計なことをしないように、蜂の巣をつつくようなことをしないようにしながら、歩を進める。
「しかし、こう……厳しいな」
 『飛べぬ鳳凰』エリシア(p3p006057)はぬかるむ地面対策にスパイク付きのブーツを履いてきていたが、ぬかるみ過ぎた地面にこの程度のスパイクでは効果が薄く、滑らないようにやはり意識していかないと厳しそうだった。
「このぐらいであれば割と何とかはなりますけど……」
 登山用の靴まで持ち込んだ望(p3p006072)でも多少滑りはするが、ここまですれば機動力を犠牲にどうにか、という状態だった。
「飛べるのが一番ですよね」
「まぁ、こればかりは」
 視線が一斉に『饗宴の悪魔』マルベート・トゥールーズ(p3p000736)へと集まった。
 どんなに足場がえげつない状態でも、踏まずに移動できれば全くもって問題ないのだ。
 とはいえ飛行しながらの戦闘では多少なりに回避も難しい点もあるので、結局何がいいのかという所は答えは出ないのだが。
「あ、くまくま」
「熊じゃなくって……あ、居た?」
 マイペースに周囲を眺めていた最上の視界には、両手を蜂蜜に塗れさせた熊の姿が映った。
 一斉にイレギュラーズがそちらを見れば、一番嫌な体勢をもってその熊はこちらに向かっていた。
「さ、散開ーっ!」
 あろうことか、両手に抱えた蜜を全身に塗りたくり、まるでボブスレーの選手のように蜂蜜でべたべたになった地面を滑走しながら突撃してくるではないか!
 慌てて全員が散開するも、飛行していたマルベート以外は蜂蜜の地面に足を取られ、回避はしたものの蜜にぬめりこんだり、直撃を受けて蜂蜜パンチを喰らいだしたりしてしまっていた。
「う、うわぁ……」
 文字通り凄惨。べたべたのぬるぬるになった仲間達を見てマルベートは思った。
 全員女性でよかった、と。


「……や、やられた。クマ相手に……って臭ぁっ!?」
 想像以上に、臭い。
 不覚にも体当たりの一撃を受けてしまったQZだったが、マスクの中に蜂蜜は入るわもうなんとも言えない状態になっていた。
「さ、さっさと終わらせようkうっぶわぁ!」
 もうこんなマスク付けていられないとマスクを投げ捨てたその顔面に不幸にもクマが投げた蜂蜜が直撃した。
 その抜群なスタイルに、溢れる吐息と甘い香り、トロトロになったセクシーな体……見る人が見れば魅力的に見えそうだが……いやダメだ臭い。
「ああああ、もう!」
 必死に持ち込んだタオルで拭う。
 ダメだ、タオルも蜂蜜だらけで臭い。
「さっさと終わらせるぞーーー!」
 QZの咆哮と同時にクマが吠えた。
 これが戦いの火ぶたを切ることになったとは誰も思うまい。
「うへぇ、これは酷いのじゃなぁ」
 あまり悲観した様子は見えないデイジーは冷静に周囲を確認する。
 直撃を受けたのはQZ、他は蜂蜜は受けたものの、打撃の直撃は受けていない。
「とりあえずこっちに集まるのじゃ、立て直しじゃ」
 いったん飛びのいてきた仲間達が集まったところで、デイジーが舞を踊り始める。
「ぬお!? や、やめるのじゃ!」
「あ」
 神聖な舞に合わせてデイジーにこびりついた蜂蜜が飛び散る。
 たまらず瑞穂が顔を覆うが、飛び散る蜂蜜の二次災害は避けられない。
「まぁまぁ、もう手遅れだし」
 とりあえず効果は出てるし、と彼女が言えば確かに全員に力が溢れてくる感覚はある。
「尻尾隠しておけばよかった……」
 べたべたになってしまった自分の尻尾を見て、後悔しても遅い事に気が付く。
「ともあれ……一度拭き取ろう」
 冷静に蜂蜜を拭い取るエリシア。
 マルベートも被害にあった仲間達の蜂蜜を拭い取りに周り、最上は小さく祈りをささげた。
「……綺麗なタオルでもないかなぁ」
 ぼそっと彼女が呟く。
「あ、無事なのがたくさんありますよ」
 すれば、望が懐から乾いたタオルをいくつも取り出した。
 ある意味奇跡か、幸いにも全て無事だったタオルを彼女は全員に手渡し、各々が蜂蜜を拭いだす。
 一人最前線に取り残されたQZだけはもうどうしようもないが、これにより全員が大勢を取り戻すことが出来た。
「尊い犠牲じゃの……」
 ぼそっと呟いた瑞穂がクマとの距離感を開けた後に、呪術の印を組み、熊へと呪いを放つ。
 一撃がクマを怯ませた間に、最上が舞を踊りながら距離を詰めれば、仲間達は更なる戦意を高めていく。
「はぁ……ようやく落ちました。では、参りましょうか」
 蜂蜜を拭い終えた雪之丞もゆらりと独特なステップを踏みながら前線へと向かう。
 新たに獲物が飛び込んできたと思ったのか、クマはQZから狙いを雪之丞へ切り替えるとその鋭い爪を蜂蜜とともに振るった。
「これ以上は受けたくはありませんので」
 だが、鋭い一撃をいなした雪之丞がクマの姿勢を崩すように足元を打ち、強かに大地へと叩きつける投げを見舞う。
 強烈な音と共にクマを叩きつけた雪之丞だが、全身蜂蜜だらけのクマ相手にまた腕に蜂蜜が付着して不快感が隠せない。
 幸いにも匂いに慣れてしまってきたのか、不快感が収まりだしているが、やはり早く終わらせたい。
「た、助かったよ」
 ようやく余裕が出来たQZがふわりと飛行を始める。
 貝殻のような守りの壁が周囲に展開され始め、ようやく本領発揮という所だ。
「これは仕返しだ!」
 と、言わんばかりに固めた防御力を攻撃力へと変換し、穂先の一点がクマの胴を穿つ。
「よし……ってうわぁっ!?」
 ずるり、と踏み込んだ足が滑り、QZは大きく転ぶ。
 ここまで運がない事はあっただろうか……もはや今日は厄日ではないかと思う彼女。
 もう泥と蜂蜜に塗れて本当に辛そうだ。
「さ、最悪……」
「大丈夫ですか?」
 倒れたQZに望がそっと乾いたタオルを差し出す。
 奇跡か、奇蹟なのか。酷い状態にあったQZにはこれが天の救いに見えなくもなかった。
 ありがたく彼女が受け取ったのを見て、雪之丞へ蜂蜜を投げつけようとするクマの腕を狙って術式を放つ。
 魔力が炸裂し、蜂蜜がはじけ飛ぶ。狙いづらいが、蜂蜜攻撃の阻害は出来ないわけでもなさそうだ。
「これでよし」
 そんな横で、エリシアがQZの治療を終えていた。
 緑の柔らかな光に包まれる。状況が状況でなければ絵になりそうだがそれはさておき、ここまで持ち直せばクマ如きにやられるイレギュラーズではない。
「ようやくだね。楽しい狩りと行こうじゃないか」
 蜂蜜の匂いを我慢しながらマルベートは狩人の瞳をクマへと向ける。
「うん、これだけ引き締まった体だ、パワフルな赤……いやだが蜜のような甘さもあるかもしれない、甘い白が……おっと」
 依頼が終わった後、どんなワインと併せればいいか、ふと考えが口から漏れ出したところに蜂蜜が飛来する。
 宙を舞いながら難なく回避するマルベールはディナーフォークを模した槍を投擲した。
 寸分狂わず槍はクマの腕へと突き刺さる。
 狂ったように猛るクマは槍を強引に引き抜くが、ダメージは的確に溜まっている。
「ふふ、いいね。頑張る相手は嫌いじゃない」
「うむうむ、後で分けてもらうにしても、少しぐらいは焼いても問題なさそうじゃ」
 ぼぅっ、と炎が炸裂する。
 近距離に踏み込んだデイジーが焔式を展開し、クマを直接炎で焼く。
 蒸発する蜂蜜の匂いが周囲に立ち込めるが我慢、我慢である。
 クマ自体には効果的なダメージが与えられているのは間違いないのは、炎で大きく仰け反る様子から見て取れた。
「よしよし、もう少しなのじゃ。ハチミツデスマッチなのじゃー」
 炎を用いたデイジーに完全に意識が奪われた。
 クマの反撃をひょいひょいを躱しながら、防御重視の構えに切り替え、完全に注意をこちらに引き付ける。
「隙だらけですね……流石、一気に行きましょうか」
 デイジーに攻撃を仕掛けたクマへ、再び踏み込んだ雪之丞が相手の攻撃の勢いを利用して足を払い、宙に浮かせると同時に高速の抜刀術を見舞う。
 いつ抜かれたのかわからぬ速度で鞘から解き放たれた刃が、クマの腕を一撃のもとに切断する。
「はやーい。こっちも」
 同時に踏み込んだ最上が格闘術式による一撃を胴へ叩き込めば、巨大なクマの姿勢が崩れる。
 そのまま息をつかせぬ連撃を叩き込めば、クマの動きは一気に止まる。
「やるのう。では一気に決めるとするかの!」
「炎が苦手みたいだしね。一気に行こうか」
 距離を詰めながら、瑞穂とエリシアが両面から炸裂する火花の花を咲かせ、炎を吹き付ける。
「最後はこれにて……!」
 炎を受け、ぐらりと揺れたクマに望の放った魔力が波となって吹き付けられる。
 魔力の奔流がクマを飲み込み、流していく。
「終わり、かな」
 疑似的な神性の力を手に宿した最上が最後の一撃にその力を振るい、周囲を薙ぎ払う。
 凄まじい衝撃と振動が周囲を包み、蜂蜜でぬかるんだ地面を吹き飛ばした。
「や、やったわ……」
 治療を受けながらぐったりとしたQZは力なく腕をあげて勝利を喜び、再び倒れ込んだ。


「生き返る……」
「死んでた……?」
「いや、そういうわけじゃないんだけど」
 戦いが終わり、山の麓に置かれた馬車。
 その手前ではギフトの力により雨を降らす最上の姿と、全力で雨を浴びるQZ。
 他の仲間達も雨を浴びてしっかり体にまとわりついた蜂蜜を洗い流していた。
 それにしてもほんと女性ばかりである意味よかったというのはこの事だろう。
「さて、それじゃあやろうかな」
 倒れたクマを見下ろして、マルベートは獲物を手にクマの解体作業を始めていた。
 狩猟の技術を持つ彼女は、その知識を活かしてクマを捌いていく。
 体自体にはしっかり染みついた蜂蜜の香りが残っていて臭いが、刃を喰い込ませれば新鮮な血の香りが漂いだす。
「あ、ちょっと勢いが強いですね……ゆっくりやりましょう」
 血抜き作業を見て、動じずに雪之丞も獲物を用いて同じように両面から行っていく。
 巨大なクマだけあってその身体に走る血も多く、解体自体もなかなか手間取りそうだ。
「おーい!」
「ん?」
 ふと、作業を行っていたイレギュラーズの元に声が聞こえた。
 そちらに視線を送れば依頼人の姿があるではないか。馬にまたがり、背中に様々な機材をもってこちらに向かってきている。
 傍にはメイドの姿もあり、呆れかえった様子でついてきている。
「お、無事に狩り終わったぞ。どうしたのじゃ?」
「うむ、待ちきれなくてな!」
 デイジーの問いに、依頼人は笑いながらそう答えた。
「であればこんなものも採ったぞ」
「おお、これはハチミツ……うわくさっ」
 ハチミツクマの集めていた蜂蜜を集めていたデイジーが瓶のふたを開け、それを嗅いだ依頼人は鼻を抑えて地面を転げ回った。
「のうのう、待ち切れなかったという事はここで喰うという事じゃろう? 妾らにも分けてもらえぬか?」
「おお、構わんぞ!」
「え、ここで喰うのか……?」
 クマの皮剥ぎ作業を行っていた瑞穂は驚いた。
 一刻も早く離れたいのに、ここでやるのか。
「……まぁ、依頼人がいいなら……いいんじゃないかな」
 ため息をつきながら、エリシアも様子を見ていた。
 とはいえ、あのクマ肉を頂こうとは思えないので、報酬を貰えるまで離れて様子を見ておこうという考えに至っていた。
「あ、香辛料ならあるけど、使う?」
「助かります。それは是非」
 ふと、保存用に持ち込んでいた香辛料を思い出し、メイドへ渡せば彼女は表情を変えずに礼を返してくれた。
「ふふ、しかし君達に頼んで正解だった。さぁ、さっそく食事と行こうじゃないか!」
 依頼人の貴族が高らかに宣言し、クマ肉を食べようと興味を持った者達は集いだす。
「いえ、私は遠慮しておきます」
 あっけらかんと望は提案を拒否した。
 メジャーでもないし、あれだけの戦いがあればそう思う事はおかしくもない。
 望を始めとして、逆に興味がわかなかった者達は離れて様子を見る事にした。


「……こ、これは」
 何はともあれ肉。特に味を見るのであれば僅かな調味料をまぶして焼いて食べる。
 それがいいだろうと結論付き、その場で日を起こしてクマ肉を焼き、頬張れば………。
「獣臭いし硬いのう……」
「案外筋が多いね……クマ肉ってこんなものだっけ?」
 味は悪くない。だが、獣臭さと肉の硬さがなかなか引き、妙に脂っぽいのも口に残る。
 我先にと食べたデイジーとマルベートは思い思いに感想を述べた。
「カレーとかで煮込んだ方がいいかものう」
「そうですね……普通の熊肉と変わりませんね。調理法次第で美味しく行けるのではないでしょうか」
 実際に食べたことがあるのか、雪之丞はふとそんなことを思い、口にした。
 思えば強い匂いを煮込んで消してしまえば案外美味しく頂けそうだ。
「味わいは深いし、赤と相性はよさそうだね」
 うんうんと肉を食べながらマルベールはもう少し貰って行くかと思いだす。
 通常の熊と比べて質がいい事には全く変わりはない。
「働かないクマは食べられるんですね……労働した私はかえって普通のご飯が食べたいです」
「もうクマも蜂蜜も嫌だ……」
 マイペースに様子を見ている最上と、対照的に大きくダメージを負ったQZの差はあれど、貴族は満足してクマ肉を味わっている。
 割と素っ頓狂な事を述べているが、楽しんでいることに間違いはない。
「まぁ、楽しんでるならよいかの」
 とか言いつつ、気が付けば距離を取り始めている瑞穂の姿があった。
 蜂蜜の匂いが残ってるのがやはり耐え難いのだろう。
「しかしまぁ、甘いものはいいのだけど。甘すぎるのも考え物だな……」
 完全に落ち切っていないこの甘い匂いをどうしようかと考えながらも、無事に依頼を解決したことを遠巻きに見ながらエリシアは思った。
 久しぶりに息の抜ける依頼でもあったし、次はどんな依頼を受けるか。
 報酬も出るだろうし、これを使ってどうするかと思いながら彼らは次の冒険に思いを馳せていくだろう。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

お待たせしました、トビネコです。
いやぁ……凄まじい激闘でしたね。

何はともあれ、クマ肉自体は特に変わらぬ味でしたが、美味しい事には変わりありません。
食べた方もそうでない方もどうだったでしょうか。楽しんでいただければ幸いです。

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