PandoraPartyProject

シナリオ詳細

狂暴食材を使って優勝していくわよ

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●登場、集合、誰だお前は
 ROOネクスト世界内、ローレット集会場。
 ……と、仮に呼んでいる石造りのホールに義弘 (p3x000398)は現れた。
 リアルな亘理義弘をそのまま若くしたような、義弘ゼロともいうべきアバターである。そのせいで誰が見ても彼が彼だと分かった。
「やあ、いい筋肉だね! まずはストレッチだ!」
 先にホールにやってきていたダテ・チヒロ (p3x007569)が体操しながら『さあ俺に続いて!』とかいいながらリングを掲げて身体を左右にひねっていた。
 彼も彼でなんかリアルな伊達のポリゴンを粗くしたような見た目なのですぐにわかった。本人はよく別人設定を持ち出すが、誰が見ても伊達なのである。
「新田に呼ばれて来たんだが……見ていないか」
 問いかける義弘に、ダテが『それじゃない?』といって椅子の上に置かれた黒縁眼鏡をゆびだした。
「なるほど」
 普通に納得してしまう義弘。
 放置された黒縁眼鏡……を、謎の美女がつまみあげ、装着した。
「おや? 皆さん、まだ揃っていなかったんですね」
 意外かも知れないがファン・ドルド (p3x005073)である。ROOじゃなかったら許されないくらいの思い切った女体化であった。
「この三人だけですか?」
「わたくしもいるわよぉ」
 声に振り返ると、タント (p3x006204)がグラスを掲げて振り返った。
 隣のバーカウンターがある部屋で一杯ひっかけていたらしい。
 グラスの残りを飲み干してテーブルに置くと、髪をはらってホールへと歩いてくる。
 ドーム状の天井からはランプがさがり、どこか民族的な織物でつくられた大きな円形の絨毯がしかれた場所に、木製の椅子が置かれている。中央の円卓を囲むようにして。
「クエストのお誘いだったわよねぇ。受注主は……」
「お待たせー。送れちゃったゴメーン」
 ぱたぱたと手を振って洗われる健康的な褐色ギャルことエイル・サカヅキ (p3x004400)。水着の季節だからってどすけべを通り越したありえないシスター服を身に纏っていた。いやまってこれ水着じゃない。普段着だ!
「おいおい美味いもん食えるって聞いたから来てみれば、気の早い水着コンテスト会場かぁ? ここは」
 腹筋のバキバキに割れた邪妖精の女クシィ (p3x000244)がビキニを見せつけながら洗われた。
「少なくとも、そうではないはずよね」
「食材獲得系のクエストだと聞いたけど?」
 セフィーロ (p3x007625)とストレンジ・ジャーニー (p3x000858)が現れ、すべての椅子が埋まった。
 煙草を取り出し口にくわえ、火を付けてから椅子に座るストレンジ。
 セフィーロも表情を変えずに腰を下ろすと、中央のテーブルに変化が起きた。テーブ上。もとい部屋の中央にあたるこの場所に立体映像が現れたのだった。

 ――聞こえますか……
 ――私は天使です……
 ――今からいう食材を集めるのです……
 ――もう一度言います……
 ――今から言う食材を集めるのです……
 ――そして優勝していくのです……

「なるほどこれは完璧なクエストの導入」
「すべてのゲームキーパーが見習うべきロールプレイ」
 もう酔っ払ってんのかファンたちがまばらに拍手するなか、フィンという謎の効果音とともに食材のリストが現れた。

 ――クリムゾンデスクラーケン脚
 ――ヘルデザートドラゴンの肉
 ――ラストタイラントエノキダケ
 ――終焉虐殺地獄畑の野菜

「「…………」」
 八人は一度スッと天井へ顔をあげてあと、両手を振り上げ、同時に机をドンッてした。
「「食材の名前!!!!」」

GMコメント

 ご用命有り難うございます。このクエストは食材を集め、その食材を使った料理で優勝していくものであります。
(※優勝していくとは、優勝していくことである。というわけで優勝していくわね……)

●食材調達パート
 みんなでROO世界の各地に点在する高級狂暴食材たちをハントしてきましょう。
 全員で行脚する時間はないので、4つのチームにわけてトライしてください。
 『俺は一人チームだぜ。ドラゴンとタイマンだぜ』とか言い出すひとが現れても今回はよしとします。ちょっと死ぬけど。

・クリムゾンデスクラーケン
 セイラー航海国の南東、静寂の青にて発見された狂暴な狂王種。イカとタコとサメが悪魔的に合体した姿であり奇跡論的Dクラス現実改変能力をもつ実在性異常実態です。
 後半わざと難しい言い方しましたけど、要するに熱や氷の魔法を使う巨大イカタコシャークです。物理で倒せます。
 船で現地までいって戦うのですが、戦いが長引くと船が徐々にダメージを受けて沈んでしまうので、ソッコーで切り上げるようにダメージ量を稼いでいくスタイルがオススメです。
 そういう事情もあって、泳げたり飛べたりすると多少有利かもしれません。

・ヘルデザートドラゴン
 サンドストーム古代遺跡群のひとつを住処とする巨大なトカゲ型モンスターです。
 赤く固い灼熱の鱗と低次のディスペル能力をもち、砂嵐を呼び出し操る程度の能力をもちます。
 要するに防御が固くて砂嵐を使う巨大トカゲです。
 防御を打ち抜いたり風をボッて打ち抜けるような人がいると相性がよさそうです。
 あと好物はイワシです。

・ラストタイラントエノキダケ
 ジャスティス正義国の遺跡に住み着いている菌類モンスターです。
 物理最強を自称するエノキダケです。全長2mで屈強な手足をもつエノキダケです。
 十枚の瓦をチョップで割り少林寺マン十人を相手に圧勝するエノキダケで、少年漫画を愛読しちょっとえっちなページに折り目をつけてとっておくエノキダケです。
 ぼったくりバーで威圧されたけど用心棒を逆にボコした伝説をもつけど女の子と話せないのでおねーさんのおみせに行けないエノキダケです。
 バレンタインデーのときにはあらゆる場所を十回以上チェックしたけどなにも見つからなかったことに愕然とするということをもう30周は繰り返してるエノキダケです。
 物理最強だけど女の子(肉感のある色気)に弱すぎるエノキダケなのです。
 あと食感がもきゅもきゅしてるので酒と相性がいいです。

・終焉虐殺地獄畑
 翡翠の森の奥深くにあるという禁断の畑です。
 キャベツやニンジンやトマトや茄子や胡瓜といった様々な野菜が一斉に襲いかかってくる地獄畑です。
 野菜の攻撃方法は宙に浮かんで高速で突っ込むというきわめてシンプルなものですが、当たると大体痛いので上手にかわしたり器用にたたき落としたりする必要があります。
 物理で倒すとなぜか清潔かつ無傷な状態でドロップするので、一通り必要そうな野菜を確保したらリュックサックに詰め込んでダッシュで逃げましょう。
 実は回収するときよりこの『逃げる』時が大変で、野菜をパクったと知れると翡翠の民がいきなり激怒して弓射りながらおっかけてきます。彼らを傷つけるのはとてもよろしくないので、頑張って防いで急いで逃げましょう。
 機動力、ないしは騎乗アイテムが欲しいところです。誰かが持っていれば二人乗りも可。

●優勝していくパート
 集めた食材ともちよったあれこれで優勝していきます。本当に分からないひとのために解説すると優勝するとは主に調理や飲酒などによって高揚した気分になることをさすスラングです。意味は広く飲酒は必須ではありませんが、んまあ折角仮想世界なんだから飲んで騒いでもバチはあたらないと思います。

 めっちゃ喰うでも、食材をアバウトに使って料理に挑戦するでも、いっそ料理とは別の部分で盛り上げてみるでも、ひたすらカンパーイするでもOKです。楽しもうね!

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●ROOとは
 練達三塔主の『Project:IDEA』の産物で練達ネットワーク上に構築された疑似世界をR.O.O(Rapid Origin Online)と呼びます。
 練達の悲願を達成する為、混沌世界の『法則』を研究すべく作られた仮想環境ではありますが、原因不明のエラーにより暴走。情報の自己増殖が発生し、まるでゲームのような世界を構築しています。
 R.O.O内の作りは混沌の現実に似ていますが、旅人たちの世界の風景や人物、既に亡き人物が存在する等、世界のルールを部分的に外れた事象も観測されるようです。
 練達三塔主より依頼を受けたローレット・イレギュラーズはこの疑似世界で活動するためログイン装置を介してこの世界に介入。
 自分専用の『アバター』を作って活動し、閉じ込められた人々の救出や『ゲームクリア』を目指します。
特設ページ:https://rev1.reversion.jp/page/RapidOriginOnline

※重要な備考『デスカウント』
 R.O.Oシナリオにおいては『死亡』判定が容易に行われます。
『死亡』した場合もキャラクターはロストせず、アバターのステータスシートに『デスカウント』が追加される形となります。
 現時点においてアバターではないキャラクターに影響はありません。

  • 狂暴食材を使って優勝していくわよ完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年08月06日 21時45分
  • 参加人数8/8人
  • 相談8日
  • 参加費---RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

クシィ(p3x000244)
大鴉を追うもの
義弘(p3x000398)
亘理義弘・ゼロ
ストレンジ・ジャーニー(p3x000858)
エイル・サカヅキ(p3x004400)
???のアバター
ファン・ドルド(p3x005073)
仮想ファンドマネージャ
タント(p3x006204)
きらめくおねえさん
ダテ・チヒロ(p3x007569)
パンドラフィッター
セフィーロ(p3x007625)
Fascinator

リプレイ


「美味い酒! 美味い食いもん! いい女……は俺!!」
 自分の顎をビッと親指でさした『大鴉を追うもの』クシィ(p3x000244)。
 つい最近(?)伝承王国への侵攻を終えて若干のんびりしている砂嵐盗賊団のもつ大量の拠点のうちのひとつ。『竜狩り砦』よりお送りしております。
 石を煉瓦積みにして作り上げた壁に覆われ、弓兵による迎撃ができるようにと兵と同じ高さの木造足場が組まれた砦である。最低限の寝床と生活と武装調整が可能な設備があるだけの場所だが、ここでは主にヘルデザートドラゴンを狩るために用いられている。
「いかにも捕獲レベルの高そうな名前じゃないか。
 もっとも、それでこそトレーニングの相手に相応しいってもんさ!」
 フンフンいいながらスクワットしていた『パンドラフィッター』ダテ・チヒロ(p3x007569)が粗いポリゴン顔で振り返る。
「クシィ、今回はよろしく! イイ腹筋してるね!」
「分かってんじゃねえか、そう……単に体型スライダーをガッ て右に動かしただけの筋肉じゃあねェんだよ……」
 ポージングするクシィに、続けるチヒロ。
「ところでどこかで会ったことある?」
「ネェけどぉ!? 初対面だからよぉ俺ら! な!」
「そっか!」

 はい、所変わってセイラー航海国南東、静寂の青。
 大漁旗を掲げた船の上でサルベットジーンズの肩紐を片方だけおろし腕組みする『亘理義弘・ゼロ』義弘(p3x000398)がいた。
「この世界では強い食材はうまいらしいな。現実で食えるわけじゃねえが、うまいというならば試してみてぇよな」
 振り向くと、クリムゾンデスクラーケン漁に携わったことがあるという巨漢の水夫が歯を見せて笑い、帆のはりをかえるためのロープをひく。

 さらに所変わって翡翠の森。
 のっしのっしと歩くキリンの背に、『Fascinator』セフィーロ(p3x007625)が跨がっていた。
 その横を歩きながら煙草をくわえ、取り出したオイルライターでカチンを火を付けるストレンジ・ジャーニー(p3x000858)。
 煙草の箱をセフィーロにかざすが、セフィーロは首を横に振った。
「一人道じゃあねえってのは頼もしさも段違いだし、それが美人なら更に良い。気分をアゲていこうぜ」
(何だか軽薄そうな男ねえ。向こうじゃ一体誰なのかしら。……ま、仕事が出来るヤツなら誰だっていいわよ)
 セフィーロは肩をすくめきりんの首を叩いた。
 この先にあるのは終焉虐殺地獄畑。狂暴な野菜型モンスターが栽培されている畑である。
「ところで、前に見たときはバイクにのってなかたっけ? なsんさかサイバーなやつに」
「まあ、それで来る予定だったんだけどね。いい感じのキリンと知り合ったのよ」
 この子本気で走ると速いのよ、とキリンの首をノックした。

 そして最後はジャスティス正義国、遺跡前の仮設テント。
 テントで一晩明かした美女三人組は、それぞれのポーズをとってビシッと構えていた。
「この案件、私におまかせいただきますイェーイ!」
 急に美女になった『仮想ファンドマネージャ』ファン・ドルド(p3x005073)。
 『???のアバター』エイル・サカヅキ(p3x004400)もまた衣装を色気溢れるものにチェンジし、一気飲みしたビールの缶をくしゃりと潰す。
「っしゃ、アルリンピック優勝していこ! ファンファン、タンタン、準備おっけ?」
「おっけーよぉ……とは言ったけど」
 エイルと同じような服装に着替えた『きらめくおねえさん』タント(p3x006204)が上げた片膝をそのままに振り返る。
「わたくしこんなアバターだけれど、えっちなおねーさんってよく分からないのよ……。
 はっ、今こそビューティーに教わったセクシー奥義を披露するときね!」
 天恵をうけたように頭上に豆電球をひからせたが、秒で消えた。
「そういえば何も教わってなかったわぁー!」
 終わりだわぁー! と頭をかかえるタント。
 ファンは『なぜ彼女をアテにしたのか』という顔をしていたが、そんな彼女にエイルがVサインを送る。
「昨日教えたテクを使えばカンペキっしょ」
「カンペキねぇ!」
「イチコロっしょ!」
「イチコロねぇ!」
 いえーいといってハイタッチするタントとエイル。
 ファンは眼鏡をくいっとやってから『大丈夫でしょうか……』と小声でつぶやいた。

●狂暴食材よ
 広い砂地のまんなかにぽつんとたつ石の遺跡。
 並び立つ柱を倒壊させながら飛び出したのは巨大なトカゲ型モンスターであった。体表は灼熱の鱗に覆われ、振動する背びれめいた突起からはディスペルの音波が放たれている。
「なるほどな。この空間じゃあ邪妖精もダルそうだ」
「マジックキャスターには戦いづらいだろうね……けど!」
 クシィはフィットネスリングをダテはククリナイフをしゃきーんと構えた。
「筋肉ならば、問題なし!」
 ていってから武器がお互い逆だったことに気付いてスッと差し出し合うふたり。
 そこへ、ヘルデザートドラゴンによる熱砂のブレスが放たれた。
 吼える声を特殊な魔術詠唱とすることで発動する熱砂の魔術。
「チヒロくん! あの風ボッてやれボッて!」
「「風をボッと打ち抜く? それは俺に任せてもらおう!伊達に木箱や大岩をこの空気砲で砕いちゃいないぜ! ダテだけにな!」
 一度嵐に構えてから、もっかい振り返った。
「ダテ、だけに、な!」
「わかったから早くやれ!」
「唸れ上腕!全力の空気砲だ!」
 オラァっていいながらリングを拘束で閉じたり開いたりするダテ。次の日には腕パンッパンになるやつである。
「君のその鍛え上げられた肉体は一朝一夕で出来たものではないだろう!
 きっとドラゴンだって倒せる!ドラゴンスレイヤーとなれ!」
「ドラゴンスレイヤー……か。いいねェ。
 ここで実績を積めばコルボへのアピールに使えるかなあ!? チヒロくんどう思う!?」
 一度突撃の姿勢をとってから、クシィはもっかい振り返った。
「あのねコルボって言うのは――」
「早く行って!」
 その後、開いた風の穴をとおって懐へ飛び込んだクシィによる斬撃がヘルデザートドラゴンの急所を切り裂き、断末魔の叫びをあげたヘルデザートドラゴンは砂の上へと横たわったのだった。

「俺一人だが、無茶は承知の上。殴り倒せばいいだけの事。
 現実ではなくとも全力を出すのは当たり前だよなぁ」
 義弘は船の上で服を脱ぎ捨てると、ビキニパンツ一丁で船の手すりからぴょんと海へ飛び込んだ。
 美しく手を揃えた飛び込み姿勢によって海中へと潜り込んだ彼を待ち受けているのはそうクリムゾンデスクラーケン。
 彼をつかまえようと伸ばした触手が直撃――したかに見えたが、義弘は力強いドルフィンキックで触手を逃れた。
 続く第二第三の触手を華麗な機動でかわし、触手の根元へと滑り込む。
 義弘の武器。それはこの世界のすべてである。
 例えば拳であり、例えば――。
「海の土産だ、とっときな」
 泳ぐさなかで捕まえたサンマをナイフのように突き立て、続くマグロをハンマーのように叩きつける
 くらりときたクリムゾンデスクラーケンに、ビキニパンツにさしこんで保持していたナイフをかざした。
「殺しはしねえ。……優勝するためだ。脚、一本もらうぜ」

 身を低く、そして暗色のマントを頭の位置まであげてできるだけ身を隠しながら、森の中を進む。
 ストレンジがハンドサインを出すと、その後ろを同じように身を低くして進んでいたセフィーロが足を止めた。
「畑だ」
 終焉虐殺地獄畑。キャベツやニンジンやトマトや茄子や胡瓜tぽった野菜が集まる畑だが、一般のソレと異なるのはすべての野菜が宙に浮かび、こちらを叩きつぶさんばかりに飛んでくるという点である。
「まずは俺からだ!」
 野菜たちの注意を引くべく、派手な飛び込み前転をかけるストレンジ。
 土から飛び出したり茎から外れたりした野菜たちが自らに保護の魔術を発動させ、石のような堅さをもって発射していく。よくみれば、植物自体が野菜を放り投げるような動作をおこなっていた。
 ストレンジは木の板を組み合わせて作った盾をかざしながら畑を横切るように走り、防御――しつつ、胡瓜をキャッチした。
「セフィーロ」
「もうやってるわ」
 キザったらしく二本指を立てるジェスチャーをするストレンジに、セフィーロは小さく肩をすくめながらもバッグにトマトを詰め込んでいく。トマトが好きなのかやたらにトマトだらけだった。
「さ。こっからは二手に別れようぜ。俺が先に行くから、少し隠れててくれよ。それじゃ、また会おうや」
 ハンサムに笑ってセフィーロとは逆方向に走っていくストレンジ。
 その先で悲鳴なのか怒号なのか、とにかくひどい騒ぎになったであろう声が聞こえた。
「好意には甘えさせて貰いましょう!」
 指笛をふいてキリンを呼び寄せると、その背にのって走り出す。

 ラストタイラントエノキダケ。
 物理最強を自称するエノキダケで、全長2mの巨体をどすどすと鳴らしながら遺跡の奥でその存在を誇示している。
 誰が来ても負けはしない。挑む者はその腕力で叩き潰し、抗う者もその腕力で押しつぶし、何千本の剣を突き立てられようとその屈強な肉体ではねのける。そういう自負と自信に満ちあふれていた。
 そんなラストタイラントエノキダケの前に。
「あらぁ、ハンサムなエノキダケ様ねぇ」
 おせくしーなコスチュームのタントが現れた。色々大事そうなところをめちゃ白い光の線が不自然なくらい横切り、このリプレイを全年齢対象にしてくれている。
「あ、あ、あ……」
 急に言語野がやられた人みたいになったエノキダケに、そっと寄りかかるタント。
「素敵な筋肉! 触ってみていいかしらぁ?」
 しなだれかかり、押し倒……すにはエノキダケが頑丈すぎたが、押しつけるタントの大人なボディにエノキダケは『あ、あ、あ』しか言えない動物になっていた。今にも手から砂金湧き出してきそうな様子だった。
「おせくしーにも、種類があるもの……」
 ファンが腕組みをしながら、遺跡の壁にもたれかかっていた。
「カスタマのニーズ――愛読している少年漫画レベルというのが重要ですね。やりすぎは逆効果。トラブルでラッキーなシチュエーションに留めるのです」
 そう言うと、眼鏡をくいっとしながらキャットウォークしてきたファンがスッと名刺を差し出し、軽く頭をさげた。
「よろしくおねがいしますね」
 ボタンをひらいたワイシャツから除く光景(光が横切っております)にエノキダケが『ああああっ』ていいながら手をかざし、猛烈に後じさりする。
 なんかよくわからないけど何かが効いている。
 ファンとタントはさっと振り返り、缶ビールあおっていたエイルへとサインを送る。
 ゆっくりを歩み寄り、髪をさっとかきあげるエイル。
「あー理解したわ君あれっしょ? 小さい頃から空手一筋、同じ空手道場の幼馴染が空手やめて髪伸ばし始めたら途端に綺麗になってクラスメイトの松茸ボーイに取られて泣きながら河原で型をやってその時拾った泥だらけの本で――」
 いつの間にか距離を詰めていた黒いギャルが、エノキダケの手をとる。
「イイよ、素直になんなって。
 アタシと組手(意味深)、しよ?」
「あああああああああああああああああああああああああ!」
 エノキダケは光になった。そしで伝説(意味深)へ。

●優勝していくわよ
「揚げ物だが、仮想空間だからゼロカロリー理論で優勝! 乾杯!!」
 ストレンジが掲げたグラスに、仲間達のグラスが打ち当てられる。
 野菜でつくったフライっていうか天ぷらが並ぶ皿に、わさび醤油が添えられている。
 隣にはカプレーゼやペペロナータといったトマトめっちゃ使った料理が並び、クラッカーとチーズがおともになっていた。
 揚げ物とトマトとチーズとか、今にも優勝しそうな組み合わせである。
 セフィーロはそのうちひとつをつまみあげ、豪快にトマトと一緒に頬張った。
「まあ仮想世界だからカロリーとか何とか気にするこたないんですけど!
 寧ろガン攻めでカロリー攻勢してもいいんですけど!」
「アルコールが入った状態で作る料理って妙に美味しく感じるのよね」
 それはそれとして、って様子でクシィが肉いりサラダやドラゴンステーキをフォークでさし、がぶがぶとくらいついていく。
「あの日…ベロベロに酔っ払いながら作った肉入りサラダ……最高に美味かったけど、シラフで作って食べても美味しい保証がどこにもないのよね」
 食いついてから、ビールを一気にあおった。
 胡椒のきいたステーキとビールの相性といったらない。
「今日はスムージーとドラゴンステーキで優勝していくわね!」
 とかいっていたら、ダテがバーのママさんの声まねしながらスムージーを作り始めていた。肉スムージーとか聞いた人が引きそうなメニューだが、ものよっては案外ウマかったりするので侮れない。
「はい! スワイショウ!
 からの! バンザイコシフリ!
 からの! ラッシュバンザイコシフリ!
 勝利のポーズ!ビーーーーークーーーーートーーーーーリーーーーー!!!!!」

 テンションの上がった会場。今更ながら伝承王国の酒場では、義弘が日本酒をぐいっとやってからグラスをテーブルに叩きつけた。
 テーブルにはブロック状のイカ焼きやイカ刺しみが並び、豪快な料理に仕上がっている。
「うまい酒をのみ、うまい飯を食らうのがそうだというならよ、祭りとしゃれこむとしようじゃねぇか。
 うまければよし。ここは上等な酒を用意してパッと飲み明かすとしようじゃないか」
「カンパーイ! イヤッホーウ!
 飲むわよ! 食べるわよ! 歌うわよ! 踊るわよ! アゲていくわよ―!」
 指を鳴らしてミュージックとミラーボールをはじめさせたファンが、黒い羽根つき扇子をふりまわしながらテーブルで踊り始める。
「「いえーっ!」」
 同じくテーブルに飛び乗って踊り狂うエイルとタント。
 スキレットにイカだのキノコだの野菜だのを突っ込んでバターとオリーブオイルでジューってやったとにかくうめーやつをくらい、酒をのみのみテンションのあがった女達の優勝した姿である。
「はぅー! このアバターだと苦いお酒も何故か美味しいわねぇ。
 うふふふ~~今ならおねえさん何でもしちゃうわよぉ!
 魂がアガってきたわぁ! オーッホッホッホッ!」
 彼らは優勝を理解した。頭ではなく心で理解したのだ。
 高まる魂。人生の絶頂。やろうと思えば毎夜幸せでいられる人生の秘訣。
 本当は、血のにじむ努力も禁欲も必要ないのかもしれない。楽しもうという気持ちと、仲間と、そしてこの身があれば。
 ぼくらはいつだって――優勝できるのだ。
「今夜はオールだァ!」
「「イエーーーーーーーッ!」」

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ――クエストも優勝したわよ

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