シナリオ詳細
古代兵器O・T・マートン襲来!
オープニング
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「に、逃げろ――! 女子供を連れて逃げろ――!!」
「ひいいいこの世の終わりじゃ!! 地獄の始まりじゃ――!!」
鉄帝が東部。田舎とも呼べるサントラン地帯に存在する一つの村は阿鼻叫喚の渦にあった。
何故かといえば村が『ある存在』に襲来されているからだ。
ソレは空を飛んでいる。まるでゆっくりと、浮かぶように舞うアレは魔物か――?
いや違う、アレは。
「古代兵器じゃ……伝説のO・T・マートンが帰ってきたのじゃああ!!」
――かつて鉄帝国地域に存在したとされる古代兵器であった。
古代兵器とは特に大陸北部地域でよく発掘される謎の兵器の総称だ。かつて遥か昔に文明でもあったのではないかと――所謂『古代文明』の存在も示唆されているが、詳しい事はよくわかっていない。
ともあれ正に大陸北部を領土とする鉄帝国では時に古代兵器が発見される事もある。
そしてサントラン地域でもこの度発見された――それがO・T・マートン。
まるで音符の様な外見を持つO・T・マートンだ……ある意味では蛇に見えない事もない、か? ともあれO・T・マートンはある日地中から発掘され、そして再び日の光を浴びる事により再起動した。
そしてサントラン地方を襲い始めたのだ。その口から、不思議な音色を響かせながら。
「むぅ、アレは音波攻撃!!」
「知ってるのかじっちゃん!!」
「うむ。かつてO・T・マートンは外敵の侵略に備えて作られた兵器であったという……その口からは不思議な音色を発し、敵を攻撃したり仲間を治癒したりする効果があったそうな……ワシも見るのは初めてじゃが!」
その光景を見た村の長老は口を震わせながら呟いた――
同時。激しい音波の攻撃により木々がなぎ倒される。
家の壁もまた壊され、反撃にと弓を放つが――しかし生半可な攻撃では倒すに至らぬ。
『ア~~ッ♪』
「だ、だめだじっちゃん! 奴らが近づいてくる!!」
「退け! 退くのじゃ!! くっ! 古代兵器O・T・マートン……これほどの強さを持つとは! かつて役目を終えると同時に山に放棄された恨みを果たしにきたのか……? ともあれこれは強者に援軍を頼まねばなるまい……!!」
『ア~~ッ♪ アアア~~ッ♪♪』
次々に至る衝撃波。最早O・T・マートンは暴走状態なのだろう。
このままではやがて人の多い都市部へと至るのも時間の問題。
その前に奴らを撃退できる強者を求めんと――馬を走らせていた。
●
そうして近くの街へと情報が伝わってきたのが先刻の事だ。
O・T・マートン。移動速度は速くないらしいが、未だ健在であり危険が迫っていると――
「やれやれ。バカンスにでも行こうかと思っていたのだが……
そうもいってられないようだな」
言うは『鉄帝国保安部員』ゲルツ・ゲブラー(p3n000131)である――サントラン地方のこの街にいたのは仕事ではなく休暇中の為であったのだが……困っている事態があると聞いては治安を守る者として放っても置けない。
しかし困った。いつもの愛用の銃は置いてきてしまっている。
別に素手で戦えないこともないだろうが……しかしO・T・マートンも一体ではないという話。目撃情報では十体程、だったか? それなりの強度も併せ持っているらしく、空中に基本的に浮いているとなれば骨が折れそうだ。
「――そういえばここに確かイレギュラーズ達が来ていたな」
ふと。思い出すはイレギュラーズ達の顔。
彼らも休暇か、それともなんらかの依頼で赴いていたか分からないが……
しかし可能であれば彼らの手は是非とも借りたい次第だと指を鳴らす。
「まずは話だけでも通してみるとしようか」
O・T・マートンが遅いのであればまだ時間的猶予はある筈だと。
ゲルツはイレギュラーズの下へと――足を進めるのであった。
- 古代兵器O・T・マートン襲来!完了
- GM名茶零四
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2021年07月31日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
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「ままー! O・T・マートン!! ボクあれ一匹欲しい!!
お世話するから飼っていいでしょー!? だめ??」
だめよ、首輪掛けられるような動物じゃないでしょ! しょぼーんとする『魔種の回し者』リコリス・ウォルハント・ローア(p3p009236)の視界の端に見えているのは件の古代兵器O・T・マートンだ!
ゆっくりと進撃しているとはいえ、奴らめを止めねばやがて街に被害があろう。故にリコリスらイレギュラーズ達が布陣したのは森林部だ。その中でもリコリスは小高い場所に位置し、狙撃銃を構えている。
そう、この地にて奴らと雌雄を決するのだッ――! やっぱ飼っちゃダメ? ダメです。
「たしか、音波攻撃――でしたか。
役目を終えたからと山に放棄された恨みの歌と思えば同情の余地もありますが。
……一つ持ち帰って見たりしたら流石に怒られますかね?」
「安全な兵器とは言い難いからな――止めておいた方が良いと思うぞ」
生かしておけばいつまた人類に牙を剥くとも限らないと、同行していたゲルツは『永久の新婚されど母』マグタレーナ・マトカ・マハロヴァ(p3p009452)へと語る。一体古代においてどんな目的でこのような兵器を作った事か――些か興味が無い事もないが。
しかしやはり破壊せねばならぬのだろう。見た目に反し、凶悪な兵器みたいだから。
「しかしこういった憎むべき相手がいない、ただ強敵と戦うだけの依頼は気持ちが良いですね。勿論、失敗すれば後方の街の方々が危険になりますので、油断する訳にはいきませんが」
同時。行きましょうかと皆に声を掛けるのは『鋼鉄の冒険者』オリーブ・ローレル(p3p004352)だ。敵は無骨な古代兵器。命も情も感じられない――だからこそ戦いやすい。
「誰かを恨んだり憎んだりしなくて良いのは気が楽です――ええ本当に」
森の中。それぞれが攻撃しやすい所に陣取れば、後はタイミングを計るだけだ。
幸いにして敵の速度はそう早くなく、故に気付かれてさえいなければ先手を取れる。
……一拍、二拍。
微かな静寂と古代兵器が浮遊しながら動く音だけが世界を満たし――刹那。
「わたくしが全て落としてあげますわ! 付いてきなさいポンコツ!」
名乗り上げる様に往くのは『百合花の騎士』フィリーネ=ヴァレンティーヌ(p3p009867)だ。O・T・マートンらを引き寄せ、そのまま疾走せんとする――声の届くよりも更に上空に浮かんでいる個体には盾にワイヤーに括り付け、遠心の力にて振り回そう。
勢いが突けば狙い撃つ様に。その横っ面を――穿つのだ。
「一機残らず叩き落してあげますわ! さぁこちらに来なさい!!」
さすれば生じる音波攻撃。フィリーネのいる地点を木ごと薙ぐ様に。
激しい音の『揺れ』が轟いて、逃すまいとするO・T・マートン――だが。
「まったく。ちょっとした依頼を終えて、ゆっくりしようとした矢先に新しいお仕事ですか……えぇ、やってやろうじゃありませんか! 休暇を邪魔した代償は存分に受けてもらいましょう!!」
「……でも不思議と見た目は可愛いよね。なんでかなぁ」
直後に引き寄せられた兵器を撃つのは『花盾』橋場・ステラ(p3p008617)と『炎の御子』炎堂 焔(p3p004727)だ――ステラは軍馬を駆りながら天へ向けて二種の大型ビーム砲の銃口を向ける。
放つ一閃は轟音と共に。音波の壁を貫きO・T・マートンの身へと着弾す。
同時に焔は炎の力を伴った一撃をこれまた天へ。
O・T・マートンの――なんだか見ていると妙に可愛らしくも見えてくる口元近くへと投げ込んでやろう。なんだろう。手持ちサイズになってなんか綺麗な音を流したら割と悪くない形の様な……いやでも今は只の狂暴な兵器か!
「ううん、騙されちゃダメだよね……よし、皆行こう! ゲルツくんも空からよろしくね!」
「ああ心得た。流石にいつもと同じ調子とはいかんが……やってみせよう」
「ふ、ふふ……O・T・マートン、ですって……? こ、古代兵器っていう肩書きの割には全然怖くなさそうな見た目ね……うう……でも騙されないわよ……お、お化けとかじゃないんだから……落ち着いて相手できそうだし……」
それらの一撃を皮切りに皆も一斉に動き出すものだ――その中の一人には『ふひ、ふひひ……』と、不敵なうすら笑みを浮かべる『パープルハート』黒水・奈々美(p3p009198)も存在していた。
焔の声を受け空へと飛翔するゲルツ。それに続いて放つ呪言は空間を超えて敵をねじ切らんとする――O・T・マートンの案外可愛らしい見た目には彼女もご満悦の様だ。主にいつも相手にしている怖い幽霊でないという意味で。
直後には迷彩柄の外套に身を包み潜んでいたゲリラ・リコリス・スタイルのドローン狙撃も加わり、オリーブによる撃ち落としの為の撃。マグダレーナの魔力による砲撃なども空に向けて放たれるものだ。
――その、渦中。
戦場を飛ぶ二匹の小鳥がいた。
水色と桃色。目立つ色ながらも敵からは離れた位置で戦場を俯瞰するように飛ぶその小鳥らは――
「小鳥さん、皆さんの、様子を、お願いしますね」
『ふゆのこころ』エル・エ・ルーエ(p3p008216)の使役せしものであった。
水色の小鳥には単騎で戦うゲルツの傷を確認してもらい。
桃色の小鳥には敵の位置を常に見てもらう。
単独で脱出や抜け駆けをする様なものがいないか――感覚を常に共有しながら戦いの状況を皆に伝えていくのだ。そしてゲルツの様子を見るのも忘れない――どうにもいつもの武器がなくて本調子という訳ではなさそうなのだから。
「とっても、かわいい……ええと、O・T・マートンさん?
でも、エルは、皆さんを、見逃すわけには、いかないんです」
そして彼女は古代兵器たちが浮遊せし空を見据えて。
低空飛行を行い移動しながら――物語を紡ぐ。
それは己が深奥にまで至る集中状態に至りながら、語る冬の物語。
音の力で攻撃してくる彼らへと――声をもって対抗しよう。
●
戦闘が始まればやがて木々をなぎ倒す程の衝撃が幾度も繰り広げられた。
O・T・マートンは元々こういう面の制圧を得意としていたのだろうか――? 森林部に隠れながら攻撃を繰り広げてくるイレギュラーズ達を焙り出さんとする勢いで音波による衝撃波を幾度も。
どこに隠れていようと必ず見つけて潰してくれるとばかりに。
「飛行能力は生きているようですけれど……変な音が出ますわね!
これは明らかに壊れてますわ! 不良品の古代兵器を街に近づける訳には――いきません!」
その中でフィリーネは引き続き奴らを引き寄せる一手を担っていた。
奴らの音波攻撃がはたして街で放たれればどうなるか。今なぎ倒されているのは木だが、これが建物なら。多くの者達が住まう住宅街などであったなら――? 背筋が寒くなる様な想像である。
故に愛馬たるユウキュウと共に駆け抜ける。
奴らの注意を此処に向け続けるのだ。音波が届き身が削れれば治癒の術を施して――
「高度を下げてきたね――うん! 今なら直接叩けるよッ!」
そして。フィリーネに引き寄せられ些か高度が下がった個体があらば焔が往く。
木を蹴り跳躍し一気に天へ――叩き落すための一撃を。
さすれば、堅い。
なんの金属で出来ているのか知れぬが中々の防御力があるようだ――しかし。
「一撃で倒せるなんて最初から思ってないよ……何度でもしてあげる!」
その程度織り込み済みの焔は二撃、三撃と続けるものだ。
炎の力を纏わせて、彼女は空を飛び跳ねる様に――舞い続ける。
「さてさて頑丈、なれど動きは鈍いとなればそう悪くない相手です。
――思いっきりやらせてもらいましょうか」
しかし堅く、動きが鈍いという事を戦う相手の愛称として好ましく思うのがオリーブだ。
使いなれぬ武器なのがやや不安ではあるが……しかし問題と言う程ではない、と。それに焔同様に落ちてきた個体を相手取るならいつもと同じ――全身全霊の一撃をもって、その身に叩き込んでやるのみだ。
鉄帝国の暴力とも言える武技にて。
空に浮かぶ木偶の坊を――叩き落さん。
「ええい、こんな危険な代物をどうして山中に放棄だなんて……
はた迷惑すぎでは??? まぁボヤいても仕方がないのでしょうけれど!」
「うう……思ったより、うるさいしね……! さっきから……耳がキンキンするわ……!」
更に続けて攻撃を合わせる様に。
攻撃を重ねて展開するのはステラと奈々美だ――纏めて削り倒してやろう。
ステラの放つ鋼の驟雨が敵を決して逃さず、紡ぐ奈々美の魔力は未だ健在。
――勿論敵も反撃はしてくるものだ。フィリーネに引き寄せられている者ばかりでもない。奈々美らのいる地点を見定めた個体が口を開いて目を不穏に輝かせ――放つ衝撃波が纏めて全てを。
身が痺れる様に。耳の奥に痛みが走る様に。
これが奴らの力か。傷ついた個体あらば、後方に控えていた個体が治癒の力を齎して……
「わ。わわ。あれが、周りのマートンさんを、治癒する個体、なんですね」
「やっと尻尾を出しましたか。
こういう手合いには、まずはそちらから打ち倒していくのが定石でしょう」
だがその様子を素早く把握したのが、周囲に治癒を齎しながらもファミリアーの視界越しに観察をしていたエルだ。堅牢なる相手の体力を回復させる個体など厄介――だからこそマグタレーナは素早く魔力を紡いで。
穿つ。対象を悪夢に叩き落す呪われし一撃にて。
機械が夢を見るのかは知らぬが。
「先程から文字通りに耳が痛いのです――お覚悟を」
見るのであれば堕ちればよろしい、と。
紡ぐ。治癒を扱えると分かった個体に。破壊音波と治癒音波に違いがないかと――その耳に捉えんとしながら。
「うう、あっちのは白い個体……こっちのは黒い個体……
はぁはぁ。カワイイ。カワイイよ~いいね~キミ、ウチの子にならない?」
そして別の意味で尻尾を出し始めているリコリスは興奮抑えきれなかった。
空で敵を相手にしているベルツ、じゃないやバルオ……ゲルツさんとの狙撃接触事故を起こさぬ様に注意しながら! 湧き出るO・T・マートンへの多大なる感情が彼女の息を荒立たせて。
ああ一匹でいいからダメかな? カワイイからお話したいよねウフフ。
そんな感情を抱いていれば――古代兵器の一体がリコリスの方を振り向いて――
『アァ~♪ アアア~♪ ア~アア~ッ♪』
「なに? なんて? いいって!? いいって言った今!?
言ったよね今わーい!! やっぱりお話出来るじゃん、人類皆話せば分かぐあ――!!」
直後。O・T・マートンと意志の疎通を試みようとしたリコリスが――放たれた音波攻撃により吹っ飛ばされた。
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「流石に、随分と堅いな。酒場で酔っぱらって暴れてる人間ならともかく……」
古代兵器を相手ではそう簡単には立ち回れぬ、と。
呟くのは空で格闘戦を繰り広げているゲルツだ。本領を発揮できぬ状況にある彼一人では、古代兵器たちを止めようと思っても中々以上に難しかったに違いない。彼もラド・バウの闘士としてそれなりに強い力は持っているが、これは一対一の戦いではないのだから。
――故にイレギュラーズ達の力が大きく影響を齎していた。
「治癒音波術を用いる個体を最優先にしましょう。奴ら、追い詰めても変わらず足は遅いですからね――通常の個体を後回しにしても、戦場を独走し離脱されるという事はなさそうです」
「もうちょっと下に落ちてきてくれると色々楽なんですけどね……!
ああもう無駄に硬いったらありゃしないですよホントに!」
彼ら八人の力があってこそO・T・マートン全体の力が削がれているのだ。
先程判明した治癒の個体を優先して狙うはオリーブとステラも同様に。奴を活かしておけば戦闘の長期化に繋がろう……特にO・T・マートンたちは堅いのだ。この上に体力を回復されるなど面倒極まると、オリーブは遠方にも届く撃を用いて敵を穿つ。
反撃にと放たれる音波もあるものだが、なぎ倒される木々の倒壊を躱してステラは跳躍。
最優先で撃滅してくれよう――射撃をもって削りつつ、見据えるは高度の下がり。
一瞬を見逃さぬ。
敵の攻撃は見えぬ音波であり広範囲……完璧な回避は難しく、だからこそ攻め時を見失ってはならぬのだと。
「上手く挟撃の様な形も取れれば良いのですが――ね!」
直後、往く。
迂闊に高度を下げた個体へと、享楽の悪夢を捻じ込まん。空を舞う玩具よ地に落ちよ――
さすれば段々とO・T・マートンの中には撃破させる個体も出始める。
『ア……アァ~……ァ~……♪』
内部より爆発。制御を失った個体が浮遊能力を失い、地に落下してくるのだ。
これだけの攻勢を仕掛ければ如何に堅かろうと、如何に治癒の者がいようとも追いつけぬ領域に到達しうるもの。幸か不幸か彼らは機械であり、撃破される者がいても心に動揺はない様だが。
「少しずつ耳障りな音が減って参りましたね。ええと、おたま……? いえO・T・マートンでしたか。すみません聞き間違いを。しかしとにかく古代兵器……つまり無機物といえども、やはり音を発するものならば減ろうとも狙うのに支障はありません」
むしろ先程よりも分かりやすくなったものだと、紡ぐのはマグタレーナだ。
『耳』が頼りな彼女にとって音を用いた攻撃など耳障りそのもの。
――そうであればこそ負けれぬ面もあるものだが。
『耳』の世界に生きる者にとって、音によって害す者になど屈せぬ。
「さぁ。終わりへと向かっていきましょうか」
故に彼女は紡ぐ。破損が重大になった個体が口より光線を放ってくるのならば。
こちらも極限の光線によって――迎え撃とう。
放たれる魔力の収束が一筋の光となりて天へと瞬く。
着弾すれば炸裂し、巨大なる力は爆発すら導く――
『アアア♪ アアァ~♪』
「一機、二機落として終わりではありませんよ。全てと――申し上げたはずですわ!」
「うわー! 吹っ飛ばすなんて酷いや! おこだよおこ!!」
そして戦いは互いの体力的余裕がなくなるほどに苛烈へと至る。
心なしかO・T・マートンの音波攻撃やビーム攻撃の度合いが激しくなった気もするものだ。それでもフィリーネは未だ戦場にその身をあり続けさせ、治癒の術をもってして立ち続ける。崩れぬ事こそ他の者への被害を減らす事にも――繋がるのだから。
故に彼女へと攻撃が紡がれる刹那。意識の横からリコリスの牙が穿つ。
それは大狼を意味する一撃。
奴らの余力を強奪――ではない、永遠に借り受ける補給の為に。
そして得た力をもって再びの撃を紡ぐのだ。残っているO・T・マートンは後――数体!
「もうちょっと、です! マートンさんも、激しい、ですけど……
がんばり、ましょう! はっ、そうです。
声を、出してるなら、声で、対抗できるかも、しれません……!」
直後。ウサギ型の召喚獣――『つらら』と呼んでいる個体を天へと放るエルが気付いた。
音波は音波で。声は声で対抗できるのでは――と。だから。
『アアア~♪ アーアー♪ アアアア~♪』
「わわわ、わーわー、ぽわわわー、わ、わ、わ」
己が肺の底より出す事の出来る声をもってして対抗せん――かわいい。
明確に攻撃の力が宿った音波と、己が声の延長では些か対抗し辛い面はあったが、しかし。
「んっ……? 気、気でも取られた、のかしら……ね?」
一瞬、隙の様な感覚が生じた気がしたのは奈々美だ。
声を出すものに反応したのだろうか――? 分からぬがしかし、位置的にも残存の奴の後ろ側を取っていた奈々美は魔力を紡ぐ。補助を出来る奴から倒すのはキホンのキであり……最後の治癒個体を倒すことが出来れば趨勢も決まろうと。
「こ、古代文明……あたしオカルト好きだから……ちょっと惹かれるものがあるわね……でも、なんだろう……あんまり神秘性は感じないのよね……機械だから、かしら……?」
同時。思うは奴らの『かつて』だ。一体どのあたりが伝説なのだろうか――
まぁ言い伝えなんて頼りにならない事も多いものだ。
或いは、全盛期はもっと凄かったのかもしれない。それこそ空を埋め尽くす程いたりとか……
「でも今はただ、人に迷惑をかけるだけだからね――
行くよゲルツくん! ここが攻め時って奴だよ!!」
だがもはや見えぬ過去を想起してもやむなしと、焔はO・T・マートンを打ち倒すべく最後の跳躍を行った。
木々の頂点から彼らの真下へ。ゲルツにも声を掛けての一斉攻撃だ。
奈々美の魔力。その直後に、焔の武器に炎が灯って――
斬撃一閃。
『アア……ァァ……ァ……』
溶断されしO・T・マートンが機能を停止し落ちていく――
煙を挙げて、爆炎と共に。最後の個体も討ち果たされればこれで終わりか……
「うう。ホントにかわいかったから一体くらい持って帰っても……
あっ、やっぱりダメ? いつ起動するかわかんないもんね……」
「お眠り……O・T・マートン……オタマ……げふんげふん」
こっそりと。持って帰れないかと焔は思うものだが危険だからと止められて。
同時、涙のリコリス。彼らの破損物の底に、クッキー(失敗作)を供えるものだ。
これでせめてもの慰めになればと――
可愛らしい特徴の彼らの顔を、天に想起するのであった。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
依頼、お疲れさまでしたイレギュラーズ!
O・T・マートン……可愛らしい外見だけど、仕方がないのです……!
それではありがとうございました!
GMコメント
ご縁があればよろしくお願いします!!
●依頼達成条件
古代兵器O・T・マートンの撃破!!
●フィールド
鉄帝東部サントラン地方と呼ばれる場所です。時刻は昼。
O・T・マートンは空を飛びながらゆっくりと進撃をしています。
森林部→小高い丘→平原→街 の順に進んできます。
街に辿り着く前にいずれかの地で撃破してください!
なお、何か準備などしておきたい場合、街に近いフィールド程時間的な余裕が生まれます。
●O・T・マートン×10体
まるで音符の様な形をしている古代兵器です。
かつては外敵に対する防衛装置として作られ、しかし役目を終えると同時に山に放棄されたという伝説があったりします……が、事実かは分かりません。いずれにせよ今は只の暴走状態に陥っている存在です。
常に空中(約20~40m範囲)を浮遊していますが、体力がなくなり始めると段々地上付近に高度を下げ始める様です。そのため、遠距離攻撃の方法などがなくても攻撃しうるタイミングはあるでしょう。
他に能力的な特徴としては、全体的にあまり素早く動かない代わりに、中々頑強かつBSに対する抵抗もそれなりに高いようです。
奴らは攻撃方法として『音波攻撃』を有しています。
範囲攻撃で地上の敵をまとめて薙ぐようです。『痺れ系列』や『乱れ系列』のBSを付与する事があります。また、仲間をまとめて癒す治癒音波術を使う個体もいるのだとか。
――なお。追い詰められると強力なビーム攻撃を撃ってくることがあるらしいです。
これは音波攻撃と異なり単体攻撃であり、なおかつBSはありませんが一撃が強力です。
●味方NPC:ゲルツ・ゲブラー(p3n000131)
鉄帝国に所属する飛行種です。ラド・バウの闘士でもあります。
実力はB級闘士としてかなり強いです、が。今回は休暇の為に来ていたとのことで、いつもの愛用の銃を持ってきていないようです……そのため『久しぶり』に拳で戦うつもりなのだとか。
基本的には空中を飛行しながら敵を攻撃しようとするでしょう。
ですが他に何かさせたい動きなどがあれば、指示があるとその通りに行動しますので検討してみてください。
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。
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