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シナリオ詳細

踊り食いイレギュラーズ

完了

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オープニング

●深みへと墜ちて往く貌は美しいに違いない
 ゆっくりと回転するかのように、人々はぶくぶく底へと沈んでいった。それを苦しみと表現する事は赦されず、ただぼんやりとした脳味噌を上下左右遊ばせる心地だろうか。潮の味わいと微生物の噛み応えはやけに悦ばしく、現を自棄と称するには些かと勿体ない。おお、神よ。神様よ、如何して我々を食べてくれないのか、教えてくれないか。癇癪を起こした赤子のように、胎に、戸口に籠りきりだなんて可笑しな話ではないのでしょうか。ああ、確かに私達では『腐れて』いるのでしょう。ですが、食してくださらなければもっと『ふかい』眠りになってしまいます――もっと美味しいものがなければダメですか。
 皆、神様の為に供物を用意するのだ。若い者でも老いた者でも、どんな者でも構わない。神様がおいしいと嗤ってくだされば『それで』好いのだ。さすれば世界は『神様』によって庇護される――鰓呼吸ではいけないとでも? 嗚呼、そんな無理難題を……!
 貴様等は腐りに腐って苦いなんてものじゃない。
 新鮮な――とても新鮮な肉が要なのだ。汁気たっぷりであまり塩気の無い、無垢なものが最も喜ばしい。しっかりとした動物性が不可欠なのだよ。

●横たわった死が、はらぺこを訴えていた
「祈り方なんてのは人それぞれだと思うわよ。ええ、だって神様なんてのは『生き物』に変わりないんですから。みんなもそう考えた事ない? そう、信心深いのね」
 境界案内人たるこすもは君達に『生魚』をふるまった。それも新鮮ではない腐りかけの類、呑み込む事は不可能だろうし寄生虫などが心配だ。
「今回の物語は『海に沈んだ世界』での一幕ね。なんでも『その世界の神様』が『供物を受け取らなくなった』そうよ……無理ないわね。だって『その世界の供物』って全部腐った魚っぽい人類なんだから。そんで神様は『お腹が空いて力が出ない』ってわけ」
 生魚をつついてもぐもぐした、吐きそうな顔で無理矢理ごくり。
「こんなの食べられるわけないじゃない。と、言う事で『みんな食べられてきて』ね。大丈夫、ちゃんと帰ってはこれるから」
 ひどい臭いに包まれながら。

NMコメント

 にゃあらです。
 水着らしいので海に行きましょう。
 第一章での完結予定。

●海に沈んだ世界
 全てが『海』の世界です。住民はすべて腐った半魚人。
 神様が庇護しているようです。
 その為『呼吸は不要』となります。

●目標
 神様が供物を受け取らなくなったそうです。住民が腐っているので仕方がないですね。
 代わりの供物が『あなた』です。おいしく食べられましょう。
 因みに神様の外見は不定です。蛸とか烏賊とか竜とか何でしょうか?

●サンプルプレイング
 Ⅰ
「神様に食べられる準備をしないとね」
 塩胡椒はお好みだろうか
 焼いたり茹でたりは難しそうだし、やっぱりお刺身?
 いやいや、ここは踊り食いが素敵でしょう
 痛みにもだえる私は絶対に美味しいに決まっている
 さあ、召し上がれ
 ぶちぶちした海葡萄みたいでしょう?

 Ⅱ
「また妙な事に巻き込まれたな。俺は食べられたくなんて……」
 いや、食べられる事の何が悪いのだ
 食べられる事で得られる幸せを見つけなければならない
 大丈夫だ、あの『大きさの』神様ならば丸呑みしてくれる
 ぼんやりと海底、真っ暗闇に座って
 ――何か、大切なものと共に喉へ胃へ……明かりが視えた。

  • 踊り食いイレギュラーズ完了
  • NM名にゃあら
  • 種別ラリー(LN)
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年08月01日 21時15分
  • 章数1章
  • 総採用数4人
  • 参加費50RC

第1章

第1章 第1節

アーリア・スピリッツ(p3p004400)
キールで乾杯

 鼻腔と咽喉の真ん中で生臭さが未だ嗤っている。生魚でニホンシュ、白ワインも最高だけど――誰かさんの趣味嗜好は理解出来なかった。皿の上で腐り融けたどうしようもないもの、若干残っている貌がおぞましくて仕方がない。いっそ脳味噌を洗ってやり直したい気分だが、生憎と世界が違っている。あ、思い出しただけで胃が! じくじくと痛め付けてくる奇怪極まった鮮明さが襞を襲ってくる。大口を閉めたって潮が這入り込むと謂うのに。
 それにしても神様も生き物で、お腹も空くなんて『はじめて』聞く物語だ。おそらく偶像ですらなく、きっと現人神じみた存在なのだろう。私の国の神様とは随分と違うのねぇ――でも。善悪の勝手が解せない程度に正答はない。これはこれで、そういうものなんでしょうね。魚っぽい住民から貰った青色のにごり、成程、ひどく強烈なアルコールが香ってきた。
 アーリア・スピリッツ、正気でいられる筈が無い。自分が食べられる瞬間に自分を維持するだなんて、どんな拷問だろうかと想像する。甘ったるい蛸瓶を一気だ。たぁくさんお酒を飲みましょぅ。前後不覚で身投げすれば最高だ。こんなにも肉が柔らかいのだ、海水と一緒にごくんすれば食欲増していく運命。ねぇ、神様――赤と青も判断出来ない、深淵。目玉を突出したならばヌメヌメとした肉にブチ当たる……。
 私の肉も、骨も――も。
 呼吸した儘に神の胃へと墜ちていく。美味しかったら、残さず食べてね。

成否

成功


第1章 第2節

築柴 叶雨(p3p009756)
昼の涙

 生臭い脳味噌を潮水へ浸けるかのように叶雨は深み、身を投げた。美味いのか不味いのかを暗黒に問い掛けると、独りでに『美味いんだろうな』と呟いてみせた。たらふく飲んだ渦巻きが胃袋の底で膨れ上がっているが気にしている暇はない。何故って。そんなん分かりきってんだろ。顔も頭も香りも良い、あの完全無欠の完璧人間のコピーだ。多少の劣化も巨大な生き物には関係のない事柄だろう……聞こえもしない文句が心を抱いてくる。黙って食え。刺身も踊り食いも口を閉じねばこぼれるだけだ。ああ、しかし不思議な物語も在ったものだ。どうやって戻るんだか、幾何学模様は教えてくれない。
 記憶を受け継いだクローンが混沌を闊歩するのか。人形に魂だけが写されて泥に塗れると謂うのか。それとも生まれ変われるのか。神様が慈悲深いと描写されるなら『後者』にしてくれ。生まれ変わったらこんなひん曲がって腐りきった性格は直ってくれるだろうか。
 この大海を沸々させる炎を持ってこい、そうしたら『その頭』も洗い流せる筈だ。クスクス笑いを無碍にして、ただ正気の糸に繰られた演技。お前に食われたら、俺はお前の特別になれるだろうか――ひどい彼岸だと思わないか、腐れた魚が酸と混ざっている。
 くだらん冗談だ。とけた赤身とほどけた白身の違いも判りゃしない。お前はどうせ俺を餌としか思ってねぇんだろうな。牙とも襞とも似つかない非物質に沈み、ぼろぼろと苦味に屈して往った。

成否

成功


第1章 第3節

ロジャーズ=L=ナイア(p3p000569)
同一奇譚

 オラボナ=ヒールド=テゴス曰く、深淵は故郷の微睡みに近しい。懐かしさを孕んだ幾何学が『非』を模倣し、その鋭角性は曖昧な膿を落とすのだろう。肉の塊は悦楽と甘美を海底に流し、濁々と食べ盛りを魅了するのか。大皿に盛るよりは活き活きと蠢動した方が好い。軟体動物には骨など見当たらないが蠕動と説くには些か『猛り』易く、ぎゅるぎゅると啼き叫んだ胃袋は不滅と言えよう。ホイップ・クリームが堕落の象徴だと嗤うならばバター醤油を償いと見做し塩気からまる触手をクネらせろ。徐々に涌いてきたコクが明快な欲を擽っていく――いかれた大小の腸を引っこ抜け、それこそがオマエの望んだ真のスパゲッティ・ソースだ。彼方の怪物は啜るに値している――化け物の寝言を殺すには擂り潰し大蒜だ!
 蛸足で踏まずともレア・ステーキは門に飛び込んだ。Nyahahahaha――半分程度で満足しては勿体ないぞ。飽きてしまった神様には毒々しいカスタード・クリーム、無理にでもネジ混んだら愉快な舌が無貌に映ったのか。私の食み方、焼くのも煮るのも推奨していない。似た者同士の心臓が正体を失って衝突した――異物混入だと? 莫迦な、新鮮さが足りないと犇めくのか!
 奇譚の一部分が恍惚的だとザワついた。もしや貴様こそが空き頁だと謂うのか。真っ白な欄に境界が刻まれている、仮案でも十分に『神話』らしいと解せた――たらふく這入った情念ゼリー、蓋したくても塞がらない。

成否

成功


第1章 第4節

トスト・クェント(p3p009132)
星灯る水面へ

 漿液を殖やして脳を育む事は簡単だ、そう吼えた犬を想いつつ真っ蒼なトストは浸っていく。深淵へと、のそりのそり這って墜ちる感覚は何処か『兎の穴』を匂わせていた。食べられる、か、うーん――伸ばし棒を噛み砕くかのように案内人の言葉を繰り返す。まぁ戻ってこられるのなら。咀嚼されないのなら『大丈夫』だろうか。逆立った髪をしっとりさせて彼方――小粒でもピリリ辛いなんて『そういう名前』だとも聞くけど。実際どうなんだろうね? 擂り潰れた山椒じみて咽喉が震えている。おれもそうだったりするんだろうか。海種の同胞はもちろん本物の大山椒魚も捌いたことないから知らないな。聳え立つ神様にぜひとも感想を聞いてみたい。しかし、果たして胃底の声は届くのか。食べられたあとじゃ聞けやしない。
 ぐるぐる思考を巡らせてみたが沸騰するが如く、この感情を抑制する事は出来ない。やっぱり怖い、恐ろしくないわけないだろ! 踊り食いされる前に意識が絶叫した。さっきの匂い、ウサギの穴の中でだって、死の感覚には引き裂かれるような心地だったのに。肉々しいなんて言わないでくれ、艶やかな皮はノドゴシ良さそうだ――弱くて流されるばかりなら、何の取り柄もないのなら、柔らかさを役立ててみせようとか。
 潔さも持てない『おれ』が嫌になった――掌の上の意地を手放さない。せめて、助けてなんて漏らしはしない。
 不純物混じりおっきな水槽、泳いで泳いで融けていく。

成否

成功


第1章 第5節

 神様の腹が膨れたのか否かは、神様以外知る術を持たない。
 口へと失せた君達は混沌世界に如何やって戻ったのか。
 それは神様自身にも理解出来ないのだろう。
 ――栄養価だけは少なくとも、膿じみた存在の内だ。

 踊り食いは腸に優しくない、それでも魅力的な味わいだった。

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