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シナリオ詳細

<現想ノ夜妖>褪めるヱリザ

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●喫茶ヱリザ
 カフェーを覗き込めば、西洋人形が何時だって微笑んで居た。彼女の名はヱリザ。このカフェーの名の下になった愛らしい令嬢だ。
 レェスをふんだんに使用したワンピィスに身を包んだ彼女は何時だってご機嫌だ。
 うらぶれた私とはまるで違う。モダンなワンピィスを選んで見たけれど、似合うわけがないと友人達はせせら笑った。
 玉出屋で購入したコスメチックだって、目を引いた桜色を選んだのに。
 お前に何て似合うわけがないと学園の階段の上からてんてんと尻餅をついて涙に暮れた。
 そんな日々ともおさらばできる。
 それが喫茶ヱリザの『噂』だった。

 ヱリザに手を振って、お願いをしながら右足で二回、左足で三回地面を踏み締める。
 可愛くなりたい。誰にも笑われないような。モダンな女の子になるのだ。
 諦星の名を授けた霞帝閣下に愛らしいと微笑まれるような、そんな女の子に。
 閣下は高天の御所で日々を過ごしていらっしゃる。彼の側仕えになって支えたいと学び、過ごした私のお願いを。
 ヱリザ、どうぞ叶えて頂戴。
 そっと左手で扉を開いたら――

 カフェーが存在して居た。伽藍堂。誰も居やしない、お客もマスターも誰も居ない。
 私はゆっくりとカフェーに進んで席に着く。どうしてか『座らなくては為らない』と思ったからだ。

「いらっしゃい」

 微笑む。声がする。私は顔を上げてから、首を傾いだヱリザがふよふよと浮き上がっているのを見た。

「いらっしゃい」
 ヱリザ。どうしてそんなにも楽しそうに、ああ、待って。私の首を掴まないで。そんな、息が。あ、あ、顔の皮膚が引っ張られる。
「可愛くなりましょうね」
 ヱリザ。待って。顔が。顔がとれてしまう。違うわ。そんなことで人間は可愛くは――ヱリザ!

●ほしよみキネマ
「いやぁ、現実世界では良く見る夜妖って感じでしたねェ! そう思いませんか?
 あ、エートスさんはあんまり再現性東京には馴染みが無いんですっけ。私は澄原(せんもんか)なので結構詳しいんですよ」
 にんまり笑顔でそう告げた『Doughnut!』Miss (p3y000214)にエートス・セグントは「これが日常とは如何したことかな」と肩を竦める。
 中性的なかんばせに男とも女ともとれる愛らしさを持ったエートスは『想像』の塔に属する旅人だ。元の世界では機械的生命体であったらしい。
「それにしても、Miss――……Missちゃん。聞いても?」
「はい」
 Missに「Missちゃんと呼んで下さいねえ!」と言われたことを律儀に護るエートスは咳払いの後問い掛けた。
「そもそも、夜妖というのは再現性東京で姿を現すモンスターの総称だろう。
 分かりやすく言えば都市伝説。更に分類するならば精霊の悪戯。それに類した物ならば『その此処は自我を有している』のではないのか、って」
「まぁ、そうですねえ。ですが、ここはR.O.Oですから『プログラム下』で動いている……と考えた方が道理です」
「ふむ。もし、自我があったらバグか……まあ、そうだよね。そうそう、そんなバグには会えない」
 エートスはバグを期待していたのだろう。Missは「まあ、兎も角」とイレギュラーズへと向き直った。
「庚さんと巫女お二人に動かして頂いた『渾天儀【星読幻灯機】』の映像は今、ご覧頂けましたね?
 エートスさんは研究者ですので、付いていきたい……のだそうなのですけれどね、ヱリザの怪異を倒してきて欲しいんですよ」
「顔の皮膚をめりめりと捲っていたよね」
「ええ。それはそれは『希望ヶ浜では良く見られる心霊の光景』ですねえ!」
「……」
 希望ヶ浜ってどんな魔境だよ、とエートスの表情が歪んだがMissは知らない振りをした。
「幸いなことに、此処、ヒイズルの諦星(たいしょう)十五年では素晴らしい夏を迎えることが出来ています!
 そう、『未然に情報を入手する』事が出来るのです。詰るところ、先程ご覧頂いた少女は空想や作り話ではありません。
 本当にこの後起こる話です。ええ、彼女をヱリザに入店させない事でその命を守ることが出来る」
「……けど、彼女が虐められて居るであろうそれからは?」
「勿論。彼女をイメージチェンジしてあげてとぉっても可愛くしてやれば良いかもしれませんね。仕事の範疇では無いですけど」
 そこはイレギュラーズにお任せだとMissは微笑んだ。
「何にせよ、『ゲームのデータNPCであれども、この世界では当たり前の人間のように過ごしている存在』です。
 彼等を救出して善行を積んでおくのだって吝かではないのではありませんか? それに、これはイベント。クリアフラグを集めておけば……ええ、何か『新しいステージ』に進めるかも知れませんし!」
 にんまり微笑んだMissにエートスは「そういうわけだから、ヨロシク」と肩を竦めたのだった。

GMコメント

 夏あかねです。宜しくお願いします。

●成功条件
『ヱリザ』の怪異を討伐

●『喫茶ヱリザ』
 帝都に存在するカフェー。モダンな雰囲気が漂います。噂に寄ればあの霞帝もアイスクリンに魅了されたのだとか?
 一見すると普通のカフェーですが『ある一定の手順』を踏んで入店すると様子が様変わりします。それが噂の本質のようです。

 店内はそれ程広くありません、が、巨大なアバターであろうとも動くのは支障は無いようです。ゲームなので。
 ですが範囲攻撃などの使用方法には気をつけた方が良いかも知れませんね?

●『ヱリザの怪異』
 こんな噂を聞いたことはありませんか。
 喫茶ヱリザには魔が棲んでいる。入店前に店を覗き込んでビスクドォルの『ヱリザ』に手を振りましょう。
 ヱリザに手を振ってから、右足で二回、左足で三回地面を踏み締めて『左手』で扉を掴むのです。
 それが合図。
 ヱリザは姿を変化させて魔の世界へとあなたを連れ込んでしまうでしょう――けれど、ご心配なく。
 ヱリザから次に出たとき、あなたは生まれ変わっているのですから!

 ……という噂です。実際はヱリザと呼ばれる『夜妖』がその願いを歪んで叶えているだけのようですが。
 Missに言わせれば非常に希望ヶ浜らしい依頼だそうです。どうしてそれっぽいんでしょうね。夜妖ですし。

 ヱリザは西洋人形です。小さい故にすばしっこく、勢いよく動き回ります。
 彼女は数ターンに1度バグった様にげらげら笑い出します。とても不快で不調を来します。命中が下がります。
 強制的なBS付与です。解除は可能です。

●海路 こうり
 犠牲者候補の女の子です。背伸びして似合わない化粧とワンピースを着用していじめを受けたそうです。
 彼女をヱリザに入店させなければそれだけで命を守ることが出来ます。Missの言うとおり『それ以上』はしなくてもいいですが……
 少し気にしてみるのも良いかもしれませんね。ここから先は善行の範囲ですが。

●エートス・セグント
 スイッチ(p3x008566)さんのお知り合い。練達の研究者。Missと共にヒイズル新規イベント『帝都星読キネマ譚』の調査をしているようです。
 システムバグを同輩の様に考え、その暴走を止めたいと考えているようです。彼か彼女か、エートスには性別は存在して居ませんが、一応性自認は男性であるため、男性として扱ってやってください。
 同行します。こうりには何らかのアフターケアをもたらしてやりたいと考えているようですが……(一応中身は男性なので、如何するべきか分からないようです)

●ほしよみキネマ
 https://rev1.reversion.jp/page/gensounoyoru
 こちらは帝都星読キネマ譚<現想ノ夜妖>のシナリオです。
 渾天儀【星読幻灯機】こと『ほしよみキネマ』とは、陰陽頭である月ヶ瀬 庚が星天情報を調整し、巫女が覗き込むことで夜妖が起こすであろう未来の悲劇を映像として予知することが出来るカラクリ装置です。

●情報精度なし
 ヒイズル『帝都星読キネマ譚』には、情報精度が存在しません。
 未来が予知されているからです。

※重要な備考『デスカウント』
 R.O.Oシナリオにおいては『死亡』判定が容易に行われます。
『死亡』した場合もキャラクターはロストせず、アバターのステータスシートに『デスカウント』が追加される形となります。
 現時点においてアバターではないキャラクターに影響はありません。

  • <現想ノ夜妖>褪めるヱリザ完了
  • GM名夏あかね
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年08月02日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

グレイシア(p3x000111)
世界の意思の代行者
アレクシア(p3x004630)
桜(p3x005004)
サクラのアバター
九重ツルギ(p3x007105)
殉教者
真読・流雨(p3x007296)
恋屍・愛無のアバター
スイッチ(p3x008566)
可能性の分岐点
指差・ヨシカ(p3x009033)
プリンセスセレナーデ
フィーネ(p3x009867)
ヒーラー

リプレイ


 人工灯が灯される。諦星の夏、蝉の鳴き声を遠く聞きながら『世界の意思の代行者』グレイシア(p3x000111)はふむ、と小さく呟いた。
「今回の夜妖は、また一段と希望ヶ浜の夜妖に近い物を感じるな。
 人々の噂が現実のものとなった怪異…噂とは違い、あくまで噂のガワを利用した存在のようだが。
 被害に遭うのはROOというゲームの存在とはいえ、対価も払わず餌のみをチラつかせて襲うというのは……やはり、良い気はしないものだ」
 希望ヶ浜に似通っていると告げるグレイシアに大きく頷いたのは『恋屍・愛無のアバター』真読・流雨(p3x007296)にもちもちとされていた『Doughnut!』Miss (p3y000214)である。
「人の善意よりも悪意の方が強い感情を伴う。
 閉鎖的な東京という街で悪意から生まれた様な夜妖が好き好んで人を襲うのは、そういう事なのだろうと思っているが。
 ……さて。Miss君が楽しそうなのは良い事ではあるが、状況は相応に切羽詰まっているようではある」
 喫茶ヱリザに海路 こうりが訪れる前に全てのケリを付けねばならないか。
「少し急いだほうが良いかもしれんな。仕事といこう」
 そう告げた流雨に重く頷くフィーネ(p3x009867)の決意は固い。少女の悩みを解決することが依頼なのだと認識するフィーネにとって『夜妖』の討伐は邪魔立てする存在の排除に他ならない。
「他人を可愛く着飾るのはとても楽しいです。どんな風にかわいく輝くのか、今からとても楽しみです」
「そうだね。女の子はいつだって可愛い自分でいたい。
 ……騎士見習いとしての教育を受けてた私にだってそういう思いがあった時期はある。
 他人から見たら馬鹿馬鹿しい事かも知れないけど、女の子には本当に大切な事なんだ! それを馬鹿にするなら許せない!」
 少女ならば誰だって考えるであるその夢を穢す夜妖を許せないと『サクラのアバター』桜(p3x005004)は「エートスさんにお願いがあります」と頭を下げた。
 一行と共に行動を行っていたエートス・セグントは桜に向き直り「詳細を聞こうか」と頷いた。以前としてもちもちされているMissを一瞥してから『彼』は自身の任を確かめんとイレギュラーズのかんばせを眺める。
 既知である『可能性の分岐点』スイッチ(p3x008566)はエートスに穏やかな笑みを浮かべる。
「こんにちはエートス殿。今日も変わらず研究熱心なようだね。ちなみにエートス殿とは練達での彼の研究に協力している間柄だよ。
 俺、スイッチのアバターも彼に作ってもらったんだ、種族名も頂いたね。何時も助けられてます。
 それで、クエストをクリアするのはもちろんだけど俺もこうり殿へのケアはしてあげたいな。
 エートス殿にも協力してもらえると助かるよ。ふふ、いつもとは逆な感じだね」
 エートスにはこうりがやって来たら話し相手になって欲しいと声を掛けた。遠く、俯き加減に近寄ってくる少女の姿が見える。汚れたワンピィスに乱切りになった前髪が傷ましい。
「……イジメか……どうしてそんなことするんだろうね……そっちの問題もなんとかしてあげたいね」
 呟いたアレクシア(p3x004630)に暗い表情を見せた『プリンセスセレナーデ』指差・ヨシカ(p3x009033)は「ホントにやだね」と呟いた。
「虐めを知った大人たちは『~~ちゃん』は謝ったから仲直りしようだの何だのと傷の上辺にパテを塗ってそれでハイ綺麗に直ったって言うんだ。
 でもさ、それじゃ見えない所に残った傷はどうしようって言うんだい。誰も何もしてくれない。私……いや、僕はその傷の痛さを知っている」
 唇を噛み締める。アニメの中のヨシカは敵幹部だった。其れを演じる自分は彼女が仲間を裏切って主人公キャラの輪に入るその様子が現実では『難しい』事を知っている。
「いじめ。いじめですか。
 ああ、俺は醜い。現実の姿はね……目つきが悪くギザ歯で強面。コンプレックスの塊なのですよ。
 故にアバターはスマートな姿にしたという経緯があります。こうりさんの気持ちは痛いほど分かりますとも。ですが――」
『下衆にふさわしきトラウマを』九重ツルギ(p3x007105)は言う。
 だからといって他者に心根の美しき彼女が害されるのを黙ってみられるほどにツルギは『甘い男』ではなかった。


 グレイシアはエートスに『ヱリザの関係者』を名乗って彼女を引き留めていてはくれないかと提案した。アレクシアとスイッチが同行し、『儀式』を見ることの出来ない距離での接触を図る。
 サクラや流雨は儀式の手順を踏むために周辺の確認を行う。フィーネはヱリザに会うための手順を確認し、その後ろからヨシカが覗き込む。
「大丈夫そう?」
「はい、どうやらこうりさんの引き留めには成功しているようですし……今から入ってみましょうか」
 頷き合ったその傍らでゆっくりとツルギが手順を踏んだ。
 ヱリザに手を振って、お願いをしながら右足で二回、左足で三回地面を踏み締める。

 願うは――麗しのヱリザ、君に会いたい。ヱリザ、どうぞ叶えて頂戴。

「こんにちは、喫茶ヱリザで働いているエートスと言う。こうり君……で間違いは無いかな?」
 俯き加減で長い前髪でかんばせを隠していた少女は肩をびくりと動かした。アレクシアは「こんにちは、今からヱリザに向かうところ?」と穏やかに微笑みかける。
「え、あ――」
 どうして、と唇を震わせたこうりにスイッチは「お嬢さん、生まれ変わりの魔法をお望みだろう?」と微笑んだ。少女がスイッチ、アレクシア、エートスを見比べる。スイッチは「今、左足からその石畳を踏んだだろう? 途惑って、二回」と囁く。
「今の動作は魔法の合図。我々を呼び出す為のね」
「ヱリザの……お願いを叶えてくれる?」
「はい。それでね、こうりさんが『可愛くなりたい』というお願いを私達は叶えたいんだ。駄目、かな?」
 願いまでも知っている不思議な魔法使いに頬を紅色に染め上げた少女が「こんな私が、そんな願い」と唇を戦慄かせる。とんでもないと首を振ってスイッチは微笑んだ。
「準備が必要なんだ。申し訳ないけれどエートス殿と一緒に暫しカフェーでお茶でも楽しんでいてもらえるかい?」
「え、ヱリザでですか?」
 普通に入る、と唇を震わせた彼女に「駄目?」とアレクシアは首を傾ぐ。こうりは言った。こんなうらぶれた私があんなお洒落なカフェーに入ればきっと笑われてしまう、と。
「笑われる? 可笑しな事を言う。客を笑う店など言語道断だろう、違うか?」
「エ、エートス殿……」
 真っ直ぐな研究者の言葉にスイッチとアレクシアは顔を見合わせて笑った。その通り、彼女を笑う人なんて何処にも居ない。だから、魔法使いを待っていて――彼女の為のとっておきの魔法の準備をしてくるくるから。


 どなた。
 鈴鳴る声音が響く。流雨は「通りすがりの魔法使いとでも言えば良いだろうか」と囁いて。
「『ヱリザを滅したい』と願った場合、その願いはどう叶えてくれるのだろうか?」
 問うたグレイシアにヱリザは「可笑しな人」と微笑んだ。確かに愛らしき令嬢がそこには座っていた。西洋人形の硝子玉の眸が細められてくすくすと鈴を転がすような声を震わせて。
「可笑しいか。そうだろうな。……そちらも『可笑しな事』をしているだろうに」
 敢て地を爪先で叩いたグレイシアの言葉に呼応するように、言霊が影を描いた。伸び上がりヱリザを求めて手を伸ばしたそれにビスクドールが勢いよく立ち上がる。
「酷い人! 酷い人!」
 くすくすと笑うヱリザの懐に飛び込んでヨシカは「どっちが!」と声を震わせた。資金へ迫る。アンカーシュート。急接近し、蒼く輝く光で正義を誘導するように振り上げる。
 ヨシカは、こうりとは初対面だった。それでも、その力になりたいと願った。それは自己投影をして居るわけじゃない。
 ――彼女と『僕』は違うから。彼女は自身を変えたくて前を見ている。片や『僕』は、息を潜めて自分を消していただけの卑怯者。
「そんなの、この世界に来るまではね。……こんな『僕』でも誰かを守れる事もあるって教えて貰ったんだ」
 低く、誰にも聞こえないように。そう言った。

 ――なら、それから目を背けるのは嘘だろう? 卑怯者であってもいい、ただ嘘つきにだけはなりたくないんだ!

 そうだねと笑ってくれる君が隣に居なくても。ヨシカは無力な自分はここには居ないとヱリザの許へと飛び込んで。
 フィーネの魔術がヨシカの眸に宿る。癒杖『ウルルナルル』を握りしめ「私の願いを叶えさせてはいただけませんの?」と囁く声音に力を灯す。
 奇跡を乞うて、フィーネは愛らしいこうりの未来を飾るために、仲間を支える事を選んで。
「こんな厄介な夜妖は、さっさと倒しておくに限るだろう。特に、悪辣なる存在は世の敵だ」
 抜けば魂散る氷の刃はぎらんぎらんと光を帯びて。流雨が地を蹴って――身を捻る。げらげらと周辺へと響き渡った笑い声。
「解除します!」
 フィーネの宣言と共に軌跡が光を帯びる。ならば、その身を捻ったままに流雨はヱリザの腕へと刃を突き立てる。
「せめて、人々の思い出の中では愛らしい令嬢のままで在れるように……仲間も人の夢も、お守りしましょう!」
 閃光乙女が光を帯びる。ヱリザはその美しささえ褪せさせて化生として襲い来る。アクティブスキルがその切っ先へと乗せられる。
 攻勢を崩すことは無く。ツルギはレディのエスコートの為に物の怪を――自身の美醜を決定し悲しむ娘を害する者を許しはしない。
「乙女の純真な想い、歪めさせるもんですか!」
 桜は叫んだ。ヱリザの許へと叩き込んだは泰然一刀。リアルと同じ剣術は、少しばかりは誰ぞの影響を受けた人の命を狩る軌道を描く。
「一刻も早く倒してしまおう!」
「そうだね! 待っている人が居るんだから!」
 アレクシアが荘重たる雲を纏わせるが如く、ヱリザの体を包み込む。桜はその眼前へと飛び込んだ。
 黒き影が追い縋り、ヱリザの体を包み込む。グレイシアはまじまじと其れを見遣りながらヱリザの唇が動いたことに気付く。
「来るぞ」
「分かりました。……幾らだって奇跡を降ろして見せましょう。それが、ヒーラーという存在です」
 願う様に指を組み合わせて。フィーネはグレイシアの指令へとウン付いた。推進力を活かしてスイッチは前線へと飛び込んだ。
 振り下ろした一太刀は四方より見えぬ斬撃を作り出す。体を苛む痛みさえ今は気にも止めぬようにスイッチのブレンダーソードが可動する。
「ケラケラケラ――――どうして? どうしてたおすの? 皆ヱリザにお願いをするのに!
 ヱリザはお願いを叶えてあげているの! お願いを叶えてあげなくちゃならないの!」
「黙りなさいッ!」
 勢いよく飛び込んだヨシカのアンカーが狙いとずれる。真っ直ぐにその位置へと飛び込んで「残念!」と笑った人形にヨシカはさも愉快だというように笑みを返して。
「私の攻撃が当たらなくとも、それを起点として他の子がやってくれる。――”そう信じる事が出来る”!
 自分を変えるのはネガイゴトを叶えてくれる店から足を踏み出した時じゃない。閉じこもっていた自分の部屋から一歩足を踏み出した時よ」
 だからこそ、ヱリザの笑い声が聞こえても誰も途惑う事は無い。フィーネがその奇跡で苛む災いから解き放ってくれるから。
 グレイシアの影がヱリザを捕まえる。ならばこそ、ツルギは自身の受けた傷を攻撃力に乗せて至近へと飛び込んだ。
「貴女には彼女を可愛くすることも誰かの願いを叶えることも出来ないでしょう」
「どうして!?」
「どうして――他者を愚弄し笑った貴女が一番に醜いからです」
 叩き付けた切っ先を押し込むように流雨が地を蹴った。「Miss君。なんぞ、この夜妖は実に再現性東京らしいじゃないか」と淡々と告げる流雨を硝子玉の眸がぎょろりと睨め付ける。
「どいて、どいて! ヱリザは可愛くお願いを叶えなくっちゃならないの!」
「……我儘はもう終わりだよ、ヱリザ。女の子はいつだって可愛い自分で居たい。
 そんな想いを歪めた『魔法使い』の出番は、もう――ないよ!」
 その刃が突き刺さる。研ぎ澄まされた、乙女の一撃。
 彼女の『魔法使い』に怪異など必要ない。『レディー・ヱリザ』なんて居なくとも、彼女にはとびきりの魔法をかけてあげれるのだから。


「お待たせしました! あなたがこうりさんですか? 私はフィーネと申します、あ、あなたの『魔法使い』です」
 そうな乗るように促されてフィーネは頬を紅色に染めて微笑んだ。八名のイレギュラーズ――それと流雨にもちもちされたビーバーが揃った様子にこうりが肩を竦め居心地が悪そうに俯いた。
「わあ、可愛いお洋服だね。こうりさんは可愛くなりたい……んだよね? よければ、私達とお買い物にいかない?」
「うんうん。こうり君さえ良ければ一緒にお洋服を買いに行こうよ。魔法使いがとっておきの魔法を掛けてあげる」
 桜の背後からひょこりと顔を覗かせたアレクシアは慣れた様子でスティッキを振る仕草を見せる。彼女等の様子を眺めて流雨はふむ、と呟いた。
「政治的な補佐を行うのであれば、あまり容姿というモノは関係ないのではとも思うが。
 だが思春期というものは、そういうものではないのだろうな。僕も気になる者には、良く未来れたいという気持ちは解らぬでもないゆえに」
「そりゃあ、そうです。自分が可愛くないから、なんて思っちゃいますしね」
「君にもそう言う経験が?」
「オカルト女って呼ばれたことくらいですかね」
 からから笑う水夜子に希望ヶ浜はそう言う場所なのだろ流雨とスイッチは頷いた。こうりのケアを行うと言えども桜やアレクシアのように化粧品や衣装には疎い。俯いた儘の彼女に買い物への同意をどう得た者かと悩む二人の隣からするりとヨシカは抜けて出て言い放った。
「そのお化粧も、ワンピィスも、似合わない背伸びね」
「なッ――」
 単刀直入すぎると驚いたフィーネに衝撃を受けたこうりが顔を上げる。伸びきった前髪、ケアされない髪は櫛を通した程度だ。化粧も見様見真似で線を引いたようである。
「でもねそれ、良い事よ。だってそれは貴女が今より遠くを望んで、頑張ろうとしてる証だもの。だから皆で教えてあげましょう、綺麗な背伸びの仕方を。――どう?」
 ヨシカが差し伸べた手を、こうりは恐る恐る握りしめる。フィーネはぱあと笑みを綻ばせ「笑われても負けない女性の振る舞いもお教えしますよ!」とこうりの空いていた手を握りしめた。
「こうりさんの趣味もありますが、客観的に見て似合いそうな服装をメイクもお教えしますし、今から買い物に行きましょう!」
「い、今から」
「そうだよ、こうり殿。とても素敵なレディになってキミをいじめた人たちを見返してやろうね」
 できますか、と小さな声音で問い掛けるこうりにグレイシアは「ふむ」と呟いた。彼女の不安は内面か。
「どのような姿をしようと、悪く言う者は居るものだ。大事な事は、自分がどうありたいか、だろう」
 グレイシアに頷いて流雨は「とりあえず、身近な所から始めてみたらどうだろうか。見えないお洒落とか」と提案した。
 流雨は化粧を必要としていない。化生ではあるがと呟いた言葉にMissがけらけらと笑っている。時間が解決してくれることだろうが、それでも大人になるという事は一足飛びに何かを求めても上手くはいかない。だから手を差し伸べるとアレクシアと桜は待ちへと走り出す。
「ねえ、桜色のコスメがあるなら、活かしたものにしたいね!
 キュートな感じに、お花やレースを活かした甘めのコーディネートみたいな。
 履物も、明るめの色で揃えてみたり、着ている方も、晴れやかな気持ちになれるようにね」
「で、でも、そんなの――」
 私には似合わないと俯いた彼女に桜は可愛らしい桜の簪を彼女の髪にそっと挿してからくすりと笑う。
「綺麗になりたいって思う貴女はとっても綺麗だよ。でも背伸びをしすぎると今の貴女の可愛さを損なう事になるからね!」
「うんうん。髪型も色々変えてみようね。似合うわけがないなんて、絶対にありえないんだから!」
 鏡に映った自分を見て可愛くなれたと自信を持ってくれた。何を言われたって気にしないでと背を押したい。
「霞帝は背伸びした貴女の事も可愛いと思うでしょうけどね」
 ウィンクをする桜にこうりの頬が紅色に染まる。可愛い彼女の背を押せば自身の身形を整えて美しい異性としてツルギは彼女の前へと姿を見せた。
「レディ、魔法使いの魔法は掛りましたか?」
「……へ、は、はい」
 アレクシアと桜は行ってらっしゃいと手を振った。フィーネの乙女力がその背を押して。
 沢山の魔法使い。ヱリザの魔法よりもとっておきで、特別な。
 ツルギはアイスクリンを御馳走しますとそっと手を差し伸べた。まるで生まれ変わったような心地で、少女は息を飲む。
 褪めて往く、過去の『わたし』を振り払って海路 こうりはツルギの手を取った。
「美しくなろうと努力を重ねる、貴方の心は美しい。……俺が保証しますよ」

成否

成功

MVP

指差・ヨシカ(p3x009033)
プリンセスセレナーデ

状態異常

スイッチ(p3x008566)[死亡]
可能性の分岐点
指差・ヨシカ(p3x009033)[死亡]
プリンセスセレナーデ

あとがき

 お疲れ様でした。
 こうりさんは皆さんのとっておきの魔法で屹度自信を持てたでしょうね。
 ゲームの中といえど、一人の女の子に勇気をくれた皆さんで無事クエストクリアです!

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