シナリオ詳細
<フルメタルバトルロア>歪んだ停戦の願い
オープニング
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ネクスト、鋼鉄。
夏場となって寒さこそ和らいではいるが、それでも生きる為には厳しい土地であり、この僅かな期間を生かして農作に励む者達もいる。
この地に残る人々はムギや大豆、ジャガイモといった比較的寒さに強い作物を育てようと頑張る者達もいる。
そうした村には少なからず活気が出る。そこで育った鉄騎種には、力自慢を謳う者も出ていた。彼らは村をより発展させるべくラド・バウに向かったり、他の土地へと出稼ぎに向かったりとそれぞれ動いている。
それでも、この夏の時期は故郷に戻り、農作の手伝いをする者もちらほらと見受けられる。
汗水垂らして働く屈強な男女。その生き方は鋼鉄にあって珍しいともいえるだろう。
だが、そんな場所を狙って攻め入ってきたのは、迷彩服を纏った屈強な鉄騎種達。
彼らは最近、鋼鉄各地で破壊活動を行う者達。
隣国である正義がこれを危険視し、邪しき軍団『シャドーレギオン』と名付けている。
この地へと現れたのは、迷彩服を纏った鉄騎種の集団であった。
「カルパー村……強戦士の里……」
その先頭に立つのは、左頬に傷のある男、ステイラー・ルダッシュが前方を睨みつけて。
「戦いを起こす強戦士の故郷……戦いを止める為、国に平和をもたらす為、滅ぼさねばならぬ……!」
「「全ては戦いを止める為……!」」
「「国に平和をもたらす為……!!」」」
彼らは薄暗い表情で武器を手に取り、村へと散開して発砲を始める。
「うああああ!」
「きゃああああああ!!」
突然のことに、村人たちは大慌てでその場から退避しようとする。
「おい、何をする!」
「止めろ、俺達が何をした!?」
農作に精を出していた村人達がシャドーレギオンを止めるべく飛び出してくる。
ただ、相手は戦い慣れした者達だ。いくら村人らが出稼ぎで戦闘経験があれど、かなり分が悪い。しかも、戦える者の数はこちらが圧倒的に少ないのだ。
「……めんどくせーな」
そこに現れたのは、狼の毛皮を纏ったワイルドな男、ジェイク・太刀川。
彼は両手に拳銃を手にして発砲し、シャドーレギオンらを威嚇する。
「寄ってたかって襲ってくるとは、鋼鉄の民らしくないな」
何かこの国の異変を察知してやってきた彼だが、一方的に襲撃されている人々を見過ごせず、村を守るべく敵へと銃口を向ける。
「強者は排さねばならぬ。この村の者達も、お前もな」
全身に力を溜め、ステイラーは隊員の援護射撃を受けつつ、機械の拳を振り上げてきたのだった。
●
鋼鉄の地にあるサクラメントへとログインしてきたR.O.Oのアバター達。
彼らはその全員が現実世界ではローレットに所属するイレギュラーズである。
「R.O.Oでは、新たなイベント始まっているようですね」
『穏やかな心』アクアベル・カルローネ(p3n000045)が話すのは、鋼鉄の現状だ。
ネクストにおける鋼鉄は、現実世界である無辜なる混沌での鉄帝に当たる。
この国は皇帝の暗殺以降、多くの軍閥が苛烈な闘争を繰り広げている。
一部はまるで人が変わったように、残忍性や暴力性を高めているのだとか。
「シャドーレギオンと呼ばれる彼らは、自身が元々抱く願い……『WISH』が悪意あるバグによって『DARK†WISH』とされているとのことです」
このバグの真相を探りたいところだが、その前に彼らの凶行を止める必要がある。
アクアベルはすでに、自らの予知によってシャドーレギオンの一隊が鋼鉄内の村を襲撃することを情報としてつかんでいる。
場所はカルパーという農村だ。この地を出身とした強者もちらほらとラド・バウや国の要職にいることもあって、敵は狙ってきたという。
「強者を生み出す村はない方がいいというのが、彼らの主張だそうです」
もちろん、そんなことは許されない。
彼らの目を覚まさせ、バグについての情報を得たいところだ。
「ともあれ、このシャドーレギオンの一団を止めていただきますよう願います」
そこにやってくるのは、起動要塞ギアバジリカ初号館。
一行はそれに乗り込み、アクアベルのくれた敵情報を確認しつつ戦地へと赴くのである。
- <フルメタルバトルロア>歪んだ停戦の願い完了
- GM名なちゅい
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2021年07月30日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談5日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
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鋼鉄へと移動する機動要塞ギアバジリカ内。
「全ての強者、ね」
瞳を閉じた青髪の精悼な青年、『アルコ空団“路を聴く者”』アズハ(p3x009471)の呟き皆が反応して。
「鋼鉄で強者がいなくなれば良いとはまたナンセンスな」
儚げな少女、『魔法人形使い』ハルツフィーネ(p3x001701)は、シャドーレギオンなる存在はもちろんのこと、願いを歪められた『DARK†WISH』という名称自体にまでセンスが……と身も蓋もないコメントだ。
「クマさんも『DARK†KUMA』とかにしてみます? ……冗談です」
抱いていたテディベアに、ハルツフィーネが悪戯っぽく笑みを浮かべていたのはさておき。
「『DARK†WISH』化をすぐに止めないと、被害が増えてしまいます……」
とはいえ、小柄な茶髪の少女フィーネ(p3x009867)が言う様に、平和な村へと攻め込むシャドーレギオンらを見過ごすことはできぬだろう。
戦いを止めたいという願いは、『DARK†WISH』となり、全ての強者及びその住処を滅すという暴挙に変わってしまった。
「そうしたところで、新たな強者と新たな弱者を作るだけだよ」
長い金髪より大きな角を生やす『あなたの希望』フォルティア(p3x009512)は、それが自分の首を絞めるような願いだという。
「……もしかしたら、その歪んだ願いの元は自らを許せない、滅ぼしたいというところから来ているのかもしれないね」
「強者を生み出さないように丸ごと滅ぼす。本末転倒だよね」
「これは平和の為の戦い以前でしょうっ。強者が消えた所で、弱者同士で争う様になるだけです」
フィールドセルと呼ばれる種族の少女、『開墾魂!』きうりん(p3x008356)の言葉に続き、『仮想世界の冒険者』カノン(p3x008357)も声を荒げて。
「戦うべき時、戦うべき相手を見誤っては平和なんて夢のまた夢です。それを分からせてあげなければなりませんね!」
各自の意見を確かめ合う一行は黒鉄十字柩へと乗り換え、目的のカルパー村を目指す。
「……強さとは相対的な概念だ。比較対象がいる限り存在し得る。それでは戦いは終わらないし、当然平和にもならない」
皆がそれぞれの座席に落ち着いたところで、アズハが今回対すべき相手の話を持ち出す。
「俺はまず歪んだ願いを理解する。そのうえで、根底にある本当の願いまで辿るよ」
「……ステイラーさんは、背後さんがやさぐれていた時代とどことなく似ている」
アズハが探りたい相手の本心について口にすると、狼の獣種少年『オオカミ少年』じぇい君(p3x001103)が背後である自身と相手を重ねて。
「彼は仲間達と楽しく平和に過ごしたいだけだったのに、これも全てバグのせいなのかな」
純粋な思いすら歪ませる『DARK†WISH』……それはどういう意図が絡んでいるのか。
「とはいえ、村を滅ぼそうとする行為を黙って見ている訳にもいかない」
止めるよと力強くフォルティアが告げると皆頷く。
村を助けることは前提の上、首謀者を止めねばならない。
「もちろん願いを歪められた本人も被害者であることは間違いありませんが……遠慮なく倒させてもらいます!」
「なんとか正気に戻させてあげないと!ㅤよおし頑張ろう!」
強い口調で、フィーネときうりんは気合を入れていた。
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「「全ては戦いを止める為、国に平和をもたらす為……!!」」」
シャドーレギオンの襲撃を受け、カルパー村の住民は悲鳴を上げて逃げ惑う。
一部、抵抗の構えを見せる一部住民の前へと、颯爽と現れたのは狼の毛皮を纏う男。
「寄ってたかって襲ってくるとは、鋼鉄の民らしくないな」
(……気になる男がもう1人)
――背後である自身と同様、彼も青い蝶と出会えば何かが変わるかも知れない。
両手の拳銃を突き付ける彼……NPCジェイク・太刀川に、じぇい君が視線をしばし釘付けにしていた。
「僕達が来たからもう安心だよ。僕はじぇい君、そこのおじちゃんと同じように貴方達を助けに来たよ」
「おじ……」
じぇい君はさらに後方へと位置していた村の人々へと呼び掛ける。
ジェイクは、自身を指差して主張してきたその少年にどこか既視感を覚えていた。
「だから大丈夫。さあ、みんな笑って!」
アクセスファンタズムによって、村の人々を元気づけるじぇい君。
その間に、メンバーは戦いの準備を進める。
「助けに来た冒険者一行です。今加勢しますよっ!」
横合いから声をかけるカノンは村人達へと全力で味方アピールし、態勢を整える。
仲間の後方へと位置取りしたカノンは敵陣へと全力で阻害、妨害の為の魔法を放つ。
「「…………っ!」」
「「何だ、これは!?」」
敵部隊の乱れを、納屋の屋根へと登っていたフォルティアが見渡す。
同じく、蔓の翼を生やして空へと舞い上がっていたきうりんもその様子を見ていたが、すぐに空から村人へと銃撃を行っていた空兵に目をつけた。
「争いを起こす強者……お前達も排さねばならぬ」
集団の長、鉄騎種ステイラー・ルダッシュは薄暗い瞳でジェイクを、そしてイレギュラーズを、ショットガンのスコープから見つめる。
「中々に笑える主張だな?」
若き女技術将校『Lightning-Magus』Teth=Steiner(p3x002831)は鼻を鳴らして。
「いいぜ。お説教タイムだ!」
到着してすぐ、ドローンを使って村の地形などを確認していたTethはきうりんと並走して空兵を狙い始める。
「や、やらせるものか……!」
また、戦う村人は力自慢の者達だが、戦闘には慣れていない。
「加勢するよ」
アクセスファンタズム「響界感測」でアズハも周囲を状況把握しており、共闘を申し出る。
すでに、彼は敵味方の配置や村の建物の立地といった連携の為の情報はインプット済みだ。
「私達でなるべく歩兵を引き付けるので、ガンガン攻撃して下さい。ただし無理は禁物です」
ハルツフィーネが村の鉄騎種らに告げ、戦線に加わる。
「危なくなればクマさんを盾にして下がると吉です」
「しっかりと守ります。頑張りましょう」
大きなテディベアを前線へと立たせるハルツフィーネに続き、フィーネもまた村人達へと檄を飛ばす。
「おじさん達には歩兵のお相手をお願いします。その銃で村人を守ってあげてください」
「ジェイクだ」
じぇい君はそんなNPCの返答に口元を吊り上げ、敵陣の前に立ち塞がる。
「……強者は排する。全てな」
「ここで貴方の歪んだ願い! 止めます!」
己の主張を貫かんとするステイラーにフィーネが言い放ったのを皮切りとして、両者はぶつかり始めるのである。
●
シャドーレギオンは半数が剣術、関節技といった近接戦を得意とする歩兵、一部は重火器で後方から砲撃を仕掛けてくる砲兵、空から射撃を行う空兵で構成させる。
部隊を率いるのは、鉄騎種ステイラーだ。
「…………!」
弾丸を発射してくる彼を含め、じぇい君やハルツフィーネが敵の抑えつけに当たり始める。とりわけ、低空でも自在に飛ぶ空兵を脅威と見て。
「わわわ!ㅤなんか飛びにくいなぁ……!」
敢えてふらふらと飛ぶきうりん。それはスキル、ウィークネスによるものだ。
「よおし、狙撃銃なんて捨ててかかってこーい!ㅤ男ならステゴロで私と勝負だよ! ……いや、私女の子だけど!」
細かいことは気にせず、彼女は広域の敵を引き付けに当たっていた。
少しずつ集まる敵をTethは一気に倒すべく一時的に二基一対のマイクロロケットランチャーを召喚し、ペンシルロケットを一斉に発射して空兵を撃ち落とそうとする。
(今の私にできることは少ない)
後方で納屋の屋根に登っていたフォルティアは敵の注意を分散させ、負荷をかけようと目論んでいた。
2つのスキルを用意するフォルティアは木の杖を握り、唯一の攻撃スキルを前方へと発射する。
「私の強み……」
地形と並行に放つと仲間を巻き込みかねない危険もあるが、距離を問わず威力を発揮できる強みもあると、フォルティアは牽制も併せて敵のみを撃ち抜く。
他メンバーは地上から攻撃を行う。
「歩兵の対応をお願いするよ」
「「了解した」」
アズハの伝えた戦闘方針に村人らは快く同意して近接戦に臨む。
「地上の敵でいいんだな?」
NPCジェイクもすでに両手の拳銃で敵陣へと発砲していたが、アズハの要望に応えて歩兵へと銃口を向ける。
「さあ、襲撃はここまでだ。止めるよ」
それらを確認し、アズハもまた戦線へと加わっていく。
ジェイクが歩兵を狙い撃つのを視認したじぇい君は、地上の敵に専念して自身の存在感を示して敵の怒りを買う。
「僕を倒せるものなら、倒してみなよ!」
彼は歩兵だけでなく、遠方に位置取っていた砲兵まで気を引く。
砲兵は火力を考えれば放置せず、手前へと引きずり出したいところ。
そのじぇい君から注意が逸れた敵を、ドールマスターであるハルツフィーネが相手する。
「いきますよ……がおー!」
前線に立たせたテディベアは神々しく輝き、両腕を上げてシャドーレギオンを威嚇する。
いくら戦い慣れした者達でも、野生のクマの如き威圧感を放つクマに怯んでしまう。
村人はもちろん、NPCジェイクへと攻撃がいかないことを優先させていたハルツフィーネとしては思惑通りといったところ。
「全ての強者を滅ぼす、ですか。で、そういうあなた達はそこまでの強者なのですか?」
さらに、煌びやかな宝玉がはめ込まれた盾「ブレイブウォール」を使ってハルツフィーネが挑発すれば、敵もそれに乗って飛び掛かってくる。
「所詮、クマさんを倒せないということを、思い知らせてあげましょう」
不敵に微笑む彼女は、一気に敵の制圧を進めていく。
「私の回復で……絶対に守り切ります!」
フィーネは攻撃が集まる者へと奇跡の力を行使する。
識別能力がないのはフィーネも織り込みだが、この場は生存が最優先。構うことなく敵も纏めて癒しをもたらす。そんなフィーネの気遣いもあって、皆安全に戦えていた。
そして、後方で戦況を俯瞰していたカノンは、空の敵を優先して撃ち落としていて。
仲間が攻撃を始めたことで、カノンは巻き込む可能性のあるスキルを避け、ワンドからピンポイントで魔弾を飛ばす。
敵の攻撃には気を付けながらも、攻撃を続けるカノン。自己強化を施すアズハも一定範囲に弾丸を撃ち込んで相手の動きを制していく。
その強さに歯噛みし、ステイラーは嘆息していたのだった。
●
イレギュラーズとカルパー村、ジェイクの混成隊はそれぞれの目標を優先し、シャドーレギオン部隊と対する。
現状、制空権を取る空兵は最優先討伐対象。
自身につられて狙撃してくる連中を引き付け、きうりんが高度を下げると、それらをTethが狙って。
「多少被弾しようが構わねぇ。まずは鬱陶しいのを潰すぜ」
所々に設置される納屋や木々を駆け上がりつつ飛び上がるTethは村での戦いも難なくこなし、励起電子を束ねて発射する。
続き、フォルティアも支援射撃を行い、そいつを墜としてしまう。
カノンも仲間と合わせて、遠距離から砲兵を無力化せんと魔弾で撃ち抜いていく。
気づけばほとんどの空兵が地に落ちており、残るは1体。
そいつに迫るアズハがライフルで急所を外し、痛打を撃ち込む。
相手は丁度、木々の合間の草むらに落ちていく。気を失っていたが、命に別状はないようだ。
メンバーは空兵の排除を確認し、今度は砲兵の対処に移る。
シャドーレギオンも前進して猛攻を仕掛けてきていたが、村の力自慢も黙ってはいない。
「おらっ!」
「てりゃああっ!!」
村人は多人数でなんとかシャドーレギオンと交戦していた状況だ。
それでも押されかけていた感もあるが、ジェイクの狙撃で敵が怯むことで村人達は戦線を押し上げる。
時折、タンク役から注意を逸らす敵もいたが、フィーネが一時的に砲撃の盾となりつつ仲間の回復支援を行う。
(体力、活力……命中力……)
仲間が十全に戦える状況の維持を念頭に置き、フィーネは支援を手が途切れぬようスキルを使う。
タンク役となるじぇい君はできる限り多くの気を引き続け、掴みかかってくる歩兵の関節技から逃れ、剣戟を受け流す。
「強者は……排すべし……!」
銃撃戦も得意とするステイラーだが、じぇい君目掛けて重い鉄拳や鋼の脚を叩き込んでくる。
彼の疲弊状況を見て、フィーネも癒しをもたらすが、空兵を倒したきうりんもまたヒーラーとして入って。
「えいっ!ㅤそれ食べて元気だして!!」
きうりんが仲間達へと投げつけたのは、きゅうりだ。
食べなくとも触れるだけで回復効果はあるそうだが、きうりんは折角だから食べてほしいと皆に願う。
要望に応え、きゅうりをかじるハルツフィーネはテディベアに威嚇の態勢を取らせたままで、ビームを放って砲兵の意識を奪う。
ここまでにフィーネの支援を受けていたアズハと共に、カノンもまた意識を集中させて魔弾で砲兵を狙い撃ち、卒倒させる。
だが、敵陣奥で陽光を受けて煌めく砲口。そいつを頭上からフォルティアがレーザーの如き一撃で撃ち倒してしまう。
「Tethさん、今だよ」
大きく頷くTethは空中へと飛び上がり、武器を召喚して。
「いい感じに食らってるんでね。今のこいつはクソ痛ぇぞ!」
Tethは受けた傷を深さを力へと転化して容赦なくペンシルロケットを乱射する。
加えて、敵を取り囲むように形成された円形結界。その内部で超高音と高重力場を発生させて一部歩兵を巻き込んで残りの砲兵を薙ぎ倒す。
全砲兵が倒れ、村人らが一気に歩兵を押し返す。ジェイクの狙撃によるところも大きい。
後は彼らに歩兵を任せ、イレギュラーズはステイラーの相手に注力する。
「チッ……」
舌打ちするステイラーは劣勢になりながらも、冷静に戦況を見定め、散弾銃を連射してくる。
「国を平和にしたいんだな。だが、強者を滅ぼすなら、全てが滅ぶまで永遠に戦いを続けることになる」
――それは果たして平和か?
アズハは敵を狙撃してから問う。どんな平和を求めてるのか、そしてやり方は本当にそれでいいのか、と。
「……!」
「よく考えて……思い出そう。願いの本質を」
仲間達が攻め、呼びかける間、フォルティアは死力を尽くして戦う村人へと近寄り、もう一つのスキルで広域の人々を癒やす。
「皆様、あと少し頑張ってください!」
フィーネも大声で呼びかけ、村人を鼓舞し、体力活力を回復させる。
その傍らで、イレギュラーズ一行はステイラーとの勝負に決着をつけようとして。
「暴力で平和を勝ち取るのも結構ですが、せめてあなたの国の皇帝程度は強くなってから言ってくれませんか? 絵空事なので」
ハルツフィーネの呼び掛けと同時に、テディベアが両腕の爪を振り下ろす。
舞い上がるアズハがとどめをと狙撃するが、ステイラーはそれを鉄拳で受けてショットガンで反撃してくる。
さらりとアズハが避けた直後、カノンが問いかけた。
「平和の為に強者を狙うなら、皇帝や候補を狙えばいいじゃないですかっ」
そして、彼女は魔弾を叩き込む。それをしないで一方的に村落を狙う時点で、平和なんてちゃんちゃらおかしい、と告げて。
「貴方はただ平和を願っただけなのに、なぜ自ら逆方向に進むのです?」
「うるさい。全てお前らが消えれば済むこと……!」
もはや聞く耳を持たぬステイラーは銃を暴発させる。それによって、カノンも倒れ、姿を消してしまった。
「周りをご覧なさい。貴方が守りたかった仲間がどうなったのかを。こんな無意味な事はもうやめて!」
銃弾を受けながら、じぇい君はここでもアクセスファンタズムを交えて説き伏せんとする。
「思い出して!ㅤ君たちが守りたいのは国じゃなくて、その国に住まう国民でしょ!」
きうりんもまた、ステイラーの正面で相手の気を引く。
「争いは止めて!ㅤこれ以上犠牲者を増やさないで!ㅤいい加減目を覚ましてよ!!」
そして、彼女は思いっきり拳を振りかぶり、雑草の一撃を叩き込む。
「色々とツッコミどころが多いんだがな。そん中で一番の問題を言うぜ?」
直後、Tethもまた倍以上の年の男へと説教する。
強さなど、所詮相対的な代物。
強者がいなくなれば、残った者で強弱が生じ、新たな強者が諍う。さすれば、また強者を潰さねばならなくなる。
「テメェの言ってる事はな。"最後の一人になるまで滅べ"って言ってんのと同義なんだよ! バカ野郎が!!」
――いい加減、目ぇ覚ましやがれ!
励起電子がステイラーを穿ち、轟音と共に強烈な爆発が巻き起こる。
ボロボロになって地面に伏せるステイラーだが、両手を上げて抵抗を止めたようだった。
●
ようやく平穏の戻ったカルパー村。
妄執は感じられぬようになったステイラー隊の面々が少しずつ目覚める中、主戦場となっていた畑の手直しにと村人らが動く。
「私こういうの得意だからね!」
きうりんなどは生き生きとしてその手伝いに当たっていた。
そして、村を救い、この場を去ろうとしたジェイクに、じぇい君が声をかける。
「青い蝶を探しなよ」
きっと、この世界にもいるはずだとじぇい君は言う。彼女は貴方の足りないものを補ってくれる、と。
「覚えておく」
去り際にそう言い残し、彼は手を振っていずこかへと去っていったのだった。
成否
成功
MVP
状態異常
あとがき
リプレイ、公開です。
MVPは空兵、砲兵と確実に敵を倒し、隊を率いる男性を目覚めさせた貴方へ。
願いが歪んでしまったシャドーレギオン。今回は無事その狂気を止められましたが、次はどうでしょうか……。
ともあれ、今回はご参加、ありがとうございました!
GMコメント
イレギュラーズの皆様こんにちは。GMのなちゅいです。
R.O.O、<フルメタルバトルロア>のシナリオをお届けします。
●目的
『シャドーレギオン』のステイラー隊の撃退
●敵……シャドーレギオン×35体
いずれも迷彩服姿の鉄騎種。20~30代で筋肉質な体つきの男女。シャドーレギオンとなったことで、歪んだ願いを抱いて周囲を襲撃しています。
○ステイラー・ルダッシュ
45歳、鉄騎種。左頬の切り傷が特徴的。同志を募って自分達の理想とする国をつくるべく各地を襲撃しているようです。
ショットガンや散弾銃を使って交戦する他、機械となった四肢での肉弾戦もこなす手練れの戦士です。
・口調:俺、お前、~だ、~かよ、~だろう
・性格:堅物。普段は自分から喋らないような男
・プロフィール:
強敵同士の戦いに巻き込まれて妻子を失った鉄騎の戦士。
シャドーレギオン化したことで、力持つ者を中心に全てのものを倒すことで平和を守ろうとしている。
・元々のWISH(願い):戦いを止める事。平和な国を取り戻すこと。
・DARK†WISH(歪んだ願い):全ての強者及びその住処を滅せば、国は平和になる。
○歩兵……20体
剣や肉弾戦を仕掛ける者達です。護身用のハンドガンや手榴弾を所持しますが、基本的には剣術や関節技を得意としております。
〇空兵……6体
ジェットパックを使って低空飛行しながら狙撃銃でねらい撃ちしてくる者達。自在に空中を動いて的確な射撃を行います。
〇砲兵……8体
大砲、機関銃など重火器を使って攻撃を行う者達。
基本動かずに攻撃を行いますが、危機を察したり、相手の動きによっては位置を変えてくることもあります。
●NPC
〇ジェイク・太刀川
獣種、35歳男性。狼の毛皮を纏ったワイルドな見た目が特徴。
ワルモノを倒すべくネクスト中を飛び回る賞金稼ぎ。
今回は人の良さもあり、鋼鉄の内戦に身を投じたようです。
実在の方と同様に、二丁拳銃を武器としているようです。
〇カルパー村の鉄騎種×8名
力自慢の男女。15~30歳くらい。実戦経験は浅いようです。
格闘戦を主体に、鉄の棒や斧などを使って共闘してくれます。
●状況
手練れの鉄騎種が多く住居としているカルパー村を、シャドーレギオンの一隊が襲撃します。
農村部とあって、基本的には畑や畦道などの上で交戦する形となります。
NPCや村の人々が交戦を始めておりますので、彼らと協力してシャドーレギオンの一隊を撃退していただきますよう願います。
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。
●ROOとは
練達三塔主の『Project:IDEA』の産物で練達ネットワーク上に構築された疑似世界をR.O.O(Rapid Origin Online)と呼びます。
練達の悲願を達成する為、混沌世界の『法則』を研究すべく作られた仮想環境ではありますが、原因不明のエラーにより暴走。情報の自己増殖が発生し、まるでゲームのような世界を構築しています。
R.O.O内の作りは混沌の現実に似ていますが、旅人たちの世界の風景や人物、既に亡き人物が存在する等、世界のルールを部分的に外れた事象も観測されるようです。
練達三塔主より依頼を受けたローレット・イレギュラーズはこの疑似世界で活動するためログイン装置を介してこの世界に介入。
自分専用の『アバター』を作って活動し、閉じ込められた人々の救出や『ゲームクリア』を目指します。
特設ページ:https://rev1.reversion.jp/page/RapidOriginOnline
※重要な備考
R.O.Oシナリオにおいては『死亡』判定が容易に行われます。
『死亡』した場合もキャラクターはロストせず、アバターのステータスシートに『デスカウント』が追加される形となります。
現時点においてアバターではないキャラクターに影響はありません。
それでは、よろしくお願いします。
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