PandoraPartyProject

シナリオ詳細

Holiday in VDM Land

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 隣に愛しき者がいるという事。
 ――それだけでなんと世界は輝かしく見えるのだろうか。
 ジェック・アーロン (p3p004755)は御天道・タント (p3p006204)と共に。
 マリア・レイシス (p3p006685)はヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ (p3p001837)と共に。
 その者が隣にいるだけで至福の一時に包まれる。
 語り合い、手を触れるだけでなんと安らぎを得る事だろう。
 片や太陽の如き煌めきが心を引き寄せ。
 片やその煌めきを受け止める月の如く。
 ――両者は互いにあって然るべき存在なのだ。
 異なる世から訪れた者もいるというのに魂が結びついた奇跡が此処にあり。
「ねぇタント。今度どこか遊びにいかない?」
「えぇえぇ! それはいいですわねジェック! それではどちらに参りましょうか!」
 その日々に感謝しながらジェックはタントへと言葉を紡いだ。
 デート、などと。
 望めばどこへでも。望まれれば彼方でも、だが。はたして何処へ往こうか。
 楽しめればどこでも――と思うが、悩ましく思い。
 ――その時。
「ふふ。話は聞かせてもらったよ――私に是非任せておくれよ!」
「あらあらマリィ。ひょっとして名案がありまして?」
 勿論だよヴァリューシャ! 偶然、タント達の会話を耳にしたマリアが自信満々に。
 愛しき仲の者。その気持ちがどこまでも分かるから……
 マリアは提案するのだ。共にかの地へ往こうと。
 そうして彼女たちが選んだデート先は――

 なんとVDMランドであった。


「えっ! 親分たちがデートですの!!?」
「えっ! この状態のVDMランドに!!?」
「えっ! しかもあと三十分で来るでござるか!!?」
 VDMランド。マリアが鉄帝に所持する領土で経営しているテーマパーク――
 そこでなんと日曜大工劇場を繰り広げているのはVDMランドのマスコット達であるトラコスフカヤにブラックタイガー君にアルチュウ達だった。なぜそんな事をしているのかと言うと、VDMランドは暫く前ようやく完成してプレオープン……と相成ったのだが、様々なトラブルによりマリ屋以外が壊滅状態に陥った為だ。
 具体的には某ヴァレーリヤが鉄帝格安業者に頼んでしまった事により各種アトラクションが途中で爆散したり湖に沈んだり超挙動を繰り広げたり……したわけだが。まぁトラコフスカヤ達はせめて見える範囲だけでも何とかしようと復旧作業に努めていた訳である――が。
「ど、どうしましょう……外見上は綺麗になったと思いますけど、実際に動かすとなると……」
「とらぁ……」
 そう、とらなちゃんの言う通り――各種アトラクションの中身の復旧にまでは至っていない……! 別にアトラクションに触れなければ特に危険はないだろう。ただ、それだとはたして親分たちが楽しみにしている『デート先』として良いのか――?
 折角にも来てくれる面々を悲しませるはマスコットとしての矜持にも関わる。
 ――ならば!

「よし! 至らぬ所は私達でカバーしましょう! 精一杯おもてなししますわよ――!」

 なんとか今日一日――自分たちの『おもてなし』で乗り切るのだ!!
 先述したようにアトラクションは中身が壊滅してるが、人力手動でなんとか……ならないことも……ないと思う、し! それに大量のお客様を相手にする訳ではない――二組程度ならばなんとかなろう! うん! そうだと信じよう!
 最悪の場合アトラクションなしでも楽しめる様に手配すればよいのだ!
 ふふふ、そうロマンチックと言えば……! と、トラコフスカヤが試案を巡らせ。
 同時にトラコフスカヤちゃんの号令と共にマスコット達が団結する。
 絶対に――楽しんで帰ってもらうのだと!
「はっ! そうこうしてる内に時間がドンドン無くなってる! 準備準備!」
「とらぁ……」
「わかったニャ。うらぐちにも任せるニャ~♪」
 ブラックタイガー君が走り、とらぁ君がお出迎えの準備をせんと入口の方に向かって……おや?
「……あれ? 今見知らぬ猫みたいなのがいたでごらぬか――ぁ、まずいまたいつもの発作が」
「わ、わ、わ。アルチュウさんお水いりますか?」
 瞬間。アルチュウが聞こえてきた妙な声を感じ取って周囲を見渡すように。
 しかし同時に訪れた虹の発作から気が逸れてしまう――背中をさするとらなちゃんが優しい。

 ともあれVDMランド貸し切りデートの時間は、順調に近づいていたとか……

GMコメント

●成功条件
 甘く、蕩ける様な一時を。
 ダブルデートを楽しみましょう――!

●フィールド
 VDMランド。
 それはマリア・レイシスさんが所有する一大テーマパークランドです。
 色々(シナリオ:『VDMランドだよ! ぜんいんしゅーごー!』)あって一度アトラクションは壊滅状態に陥ったのですが、マスコットの面々の復旧作業により少なくとも見た目上はかなり綺麗に戻っ……たと思います。多分。

 ともあれ(機能的な面ではあんまり復旧してないのでそこはマスコット達が人力で頑張りますので)皆さんはデートを存分に楽しんでください。

 ――具体的にはとらぁ君ボートは、実際にとらぁ君が皆さんを背に乗せて泳ぎます。
 観覧車とかワンカップもどこかで人力で頑張ります。
 あくまで人力なのでどっかで失敗して凄い事になる可能性が無きにしも非ずです。
 その他皆さんが「あれをしたい!」という要望(プレイング)があればマスコット達が壮絶にがんばってなんとかしようとします。(あくまで「なんとか」です!)
 例えば急ごしらえお化け屋敷とかを特設してるかもしれませんし。
 例えばマリ屋でケーキとか恋人同士が食べそうなモノを準備してるかもしれません。
 彼らは彼らなりに『おもてなし』しようと頑張っているのです――

 また、アトラクション以外に用意しているモノがあるようです。
 夜になると「甘くて素敵な時間と言えば……そう! ロマンチックにするのですわ!」とトラコフスカヤちゃんが花火を打ち上げる予定があるみたいですが成功するかは分かりません。

 つまり、ええ。このシナリオは『そういう事』です!
 ……是非デートを楽しんでいただければと思います!

●マスコット達。
・トラコフスカヤちゃん
 某お人によく似てるマスコット!
 意気込み:がんばりますわ!

・ブラックタイガー君
 どこからどうみてもエビ! ヨシッ!
 意気込み:がんばるよ!

・とらぁ君
 いつも『( ╹⋏╹)』顔のとらぁ君。
 意気込み:とらぁ。

・とらなちゃん
 カワイイカワイイとらなちゃん。
 意気込み:が、がんばります!

・アルチュウ
 今日は出勤出来てる泥酔マスコット。
 意気込み:(虹)

・うらぐち
 いつの間にか紛れ込んでたヤツ。
 意気込み:うふふ。うらぐちも精一杯がんばるニャ♪

  • Holiday in VDM Land完了
  • GM名茶零四
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年07月31日 22時40分
  • 参加人数4/4人
  • 相談7日
  • 参加費---RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)
願いの星
ジェック・アーロン(p3p004755)
冠位狙撃者
御天道・タント(p3p006204)
きらめけ!ぼくらの
マリア・レイシス(p3p006685)
雷光殲姫

リプレイ

●『Happy Holiday』
 今日と言う日をどうか貴方の一欠片に。
 今日と言う日がどうか貴方にとっての……


「さぁ――今日もいい天気ですこと。
 まずはボートでのんびりお昼ごはんを食べて……
 それから皆で思いっきり遊ぶというのは如何ですこと?」
「うん! 素敵だねヴァリューシャ! ジェック君達もそれでいいかな?」
 VDMランドへと訪れた『祈りの先』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)と『鋼鉄探偵の助手の相棒』マリア・レイシス(p3p006685)にとっては、ここは己らの庭の様な場所だ。
 故にまずは、とらぁ君の形を模したボートである――
 ゆっくりとボートの上で語らいながら食事をすれば、素敵だと……
「うん。それは良いね――タント。お弁当を広げて、一緒に食べようか」
「ええ、えぇ! 勿論ですわジェック様! ボートの上で食事だなんて、滅多にありませんわね!」
 さすれば同意する『太陽の使者』ジェック・アーロン(p3p004755)と『きらめけ!ぼくらの』御天道・タント(p3p006204)の両名。拒否する理由がどこにあろうか――やけにふんわりとしているボートに乗り込みいざ出発。
 持ってきていたお弁当の中にはサンドイッチがあって。
 レタスとベーコンを中に敷き詰めたソレは愛しきものと食べれば至福の味……
 なのだが。
「うん。やっぱり美味しい――んっ? なんか足元がひんやり冷たいような」
「それにしてもこのボート凄いですのね! 漕がずとも進むボートとは……
 んん? ちょっとお待ちを? まさかとは思うのですがこれ……
 いや明らかに沈んでおりますわ――!!」
 なんだかどんどん視線というか、ボートが沈んでる気がして――いや気のせいじゃなかった! どんどん下がってるぞこのボート、どうして!?
「あ。あれぇ? ボートの応急処置はした筈なんだけど!?
 ヴァリューシャぁ!? なんか沈んでるよ!!? どうしよ――!!」
「お、落ち着くのですわマリィ! とにかく岸はすぐそこ! 皆で漕ぐのですわ――!!」
 わああどうしてどうして! と焦る一同。優雅に風を感じながらサンドイッチを楽しんでいた筈が……まずいまずいまずい!! 特にジェックがまずい!
「ア、アタシ泳ぐのそんな得意じゃないんだ!! あああ溺れる――!!」
「ジェック様! 大丈夫ですわよ! いざとなれば私が命を賭してでも助けますから!!」
 ジェックとタントの麗しき愛情――だけど普通に助かるのが一番だよねと全力全開。
 ――辛うじて岸へと辿り着けば即時跳躍。お弁当もなんとか守れてよかった所だが、一体どうしてボートが徐々に沈み始めて……!? 応急処置が間に合ってなかったかなぁ? というかこのボート、なんか随分とらぁ君に似てる様な……
「はぁはぁ……と、とにかく一息着いたら別の所に行ってみましょうか!
 VDMランドはボートだけではないんですのよ!」
 ともあれ思わぬ運動になってしまったが――ひとまずお昼ご飯を再度取ってから、もう一度仕切り直すとしよう。ここはテーマパークランド。お化け屋敷や観覧車と言ったものもあるのだからと――
(――マリィ。ここは折角だから二人を怖がらせる側に回るのも楽しそうですわよね?)
(……! そうだねヴァリューシャ! 二人を怖がらせるというのも悪くない!)
『秘密ですわよ?』というアイコンタクト。
 言わずとも分かる彼女の思考。ウインクで合図代わりの返事とすれば――さぁ行こうか。
「ふふ。ここはね、二人で入る用なのさ!
 まずはジェック君とタント君の二人でどうかな!」
「うっ! お、お化け屋敷ですか……! な、なるほど……」
 園内を案内するマリア。さすれば眼前に現れしは――お化け屋敷の方だ。
 おどろおどろしい外見――が、実はこういった場所がタントは苦手であったりする……! し、しかし恋人がいる前で臆してしまう姿をどうして見せられようか!
「わ、わ、わたくしにしがみついていて下さいまし、ジェック様! よ、よろしいですわね……絶対に離れてはなりませんわよ。わたくしが、わ、わたくしがジェック様をお守りさしあげますから!」
「うんうん――勿論、離さないよ。よろしくねタント」
 滅茶滅茶腕を掴んでくるタント。先程までとは打って変わって体が硬直している様子が、ジェックの目にありありと映ってくるものだ――怖がってるタント、可愛いなぁ……
 精一杯頑張っているのだ。あえて指摘する事もせず、笑みを携えながら二人で入ろう。
 ――さすれば、暗い。
 お化け屋敷なのだから当然とも言えるが、どことなく外と異なり冷風も吹いている様な気もする。柔らかな風が首筋を撫でれば『うひゃああ!?』と隣にいる太陽がいちいち反応を示して――ああ本当にかわいいなぁ。
「ふふ。大丈夫だよタント、こういう所に本当に怖いのは無かったり……」
「ふふ~ん、待っていたニャ、ジェック♪」
「あ”あ”あ”あ”あ”ッ!! 出たな不法在住ストーカー猫(卜口)ォ!!」
 が。いきなりどこからか響いてきた怨敵の声にジェックはいきなり臨戦態勢だ!
 ば、馬鹿なこんな所にまで出てくるというのか!? しかしどこに!?
 じぇっく……じぇっく……
 あちらこちらから声が聞こえてくる様な気がする――そんな。
 地上に二匹、天井に三匹……囲まれた、だと!?
「くっ――タント! アタシから離れないで!! 絶対守るから!!」
「ぷぎゃー! ば、化け猫が来ますわ!! ジェック様! ジェック様……!!
 でも、私だって戦いますわ! ジェック様を害す化け猫は今日こそ仕留め……!」
 前から至る二匹――!
 せめてタントだけは必ず守ると。いやジェック様をこそ守るのだと。
 二人は互いを抱きしめる様に庇い。鋭き視線を向かってくる卜口に向けれ、ば。

「――ぷ、ははは! いやすまなかったね、私達だよ私達!」

 種明かし。そこにいたのは卜口の着ぐるみを着こんだ――マリアとヴァレーリヤか!
 フードを取る様に現れれば見知った顔が確かにそこにあって。
「二人共ごめんよ!
 ヴァリューシャの楽しそうな顔を見たら一緒に怖がらせたくなっちゃって!
 偶々卜口君の着ぐるみもあったから、ついね!」
「ふふ――ごめんなさい。二人の怖がる顔が見たかったものだから……でもそれだけ驚いてくれたなら、大成功とも言えますわね」
「ま、全く二人して周到な……! いやもしかしたね。二人とか、或いはマスコットの子達とかいう考えもあったけど……流石に天井からも仕掛けを用意してるなんて思わないじゃあないか! アレは流石にビックリしちゃったよ!」
「そうですわ! まさか天井に張り付けていた着ぐるみもあっただなんて……
 この短時間にどう用意しましたの!?」
「えっ?」
「えっ?」
 えっ?
 刹那の静寂。えっ、天井って何の話――?
 マリアもヴァレーリヤも知らぬという顔。と、同時。後ろの方で明確に一つ。
 『足音』がして。

「うふふ~……じぇっく。今卜口がそっちに行くにゃ~♪」

 後方から聞こえてくる謎の声に、思わず四人は盛大に出口に向かってダッシュした。


 お化け屋敷の事は忘れよう――そうしよう――
 誰もあの真実に追及せず、とにかくと訪れたのはジェットコースターだ。
 ふふ懐かしいなぁ。前のプレオープンでは爆散したけど今は直って……
「ひゃああああああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛終点通り過ぎたんだけどおおおおおお!!?!?
 ちょっとマリアこれどうなってるのどこで止まるのァアアアアアアアアアアア!!!」
「ぎゃああああああ!!!? え、嘘でしょこれ本当にどうなってアアアアアア!!!」
「ジェック様ああああ!! わたくし、お慕い申し上げておりますわあああああ!!」
「タントォォォ大丈夫レールは外れてないみたいだからいつか止まるはずぅぅぅぅ!!」
「オロロロロロ」
 なんかおかしくないかい? ジェック君、タント君、見える――???
 そんなことを呟いた時にはもう遅かったんです。地上付近でトラコフスカヤちゃん達があわわわと慌ててる様子を見せるが、慣性の法則が超絶働いているのだから仕方ない。その内止まるでしょう――多分レールの途中で!
「うぉぉぉ、御屋形様たちの為であればこの身……粉砕してでも!!」
「ア、アルチュウさーん!!」
 瞬間。やっぱりなった異常事態を察知したアルチュウがその身を賭して――レールの上へ! 正に自らの身を犠牲にして止めるつもりかと、とらなちゃんが止めようとするがもう時すでに遅し。
 衝突。アルチュウは彼方に吹っ飛ばされ、ああとらぁ君ボートがあった辺りに着水した!
 そして止まるジェットコースター……急いで救助される、ぐったりしている四名。
 だ、だめだ……絶叫系というか、速度が出るタイプはきっと危ない……ならば!
「そうだ――観覧車があったよ!」
 ヴァレーリヤを介抱していたマリアがふと、閃いた。
 観覧車。VDMランドの中でも高さという面においてはあれほどの遊具はあるまい。
 頂点にまで達する時の絶景ぶりと言えば――是非ともタントとジェックにも味わってほしい所なのだ。
「ほほう! 観覧車なら速度も出ないですし、よさそうですわね!」
「うん。それはとっても良さそうだよ。ええと――ああ、アレかな?」
 顔を煌めかせるタント。さすればジェックが周囲を見渡せば――すぐに分かるものだ。
 指を差す。その先に在るのは正しく観覧車。
 向かえばその下には――おや? トラコフスカヤちゃんがいて。
「ようこそですわ! さぁさぁお乗りになってください! 『頑張り』ますので!」
「??? ええ。まぁ何のことかよくわかりませんが、任せますわよ」
 イエッサー! とばかりにヴァレーリヤに敬礼するトラコフスカヤ。
 観覧車に乗り込んで落ちないようにロックを掛けて……そしてゆっくりと動き出す。
 おお。ジェットコースターと異なりこれなら怖くないぞ――窓の外を見据えれば、そろそろ夕方に差し掛かろうとしているのだろうか。遥か彼方には赤く染まりし――この一時だけの世界があって。
「ほら見てくださいまし! 景色が綺麗でしょう――?
 ふふ、この辺りを一望できるんですわよ!」
「確かに凄いねこれは……! 絶叫系と違って怖くもないし、素晴らしいよ」
「はふ、観覧車は優雅でロマンティックでよいですわね~……ここは密室空間にもなりますし、これからも恋人たちの逢瀬の場として相応しいのではありませんか?」
 ヴァレーリヤが頂上付近に到達した際に見える景色を自慢し。
 ジェックとタントが柔らかな微笑みを見せれば――自然とマリアも嬉しくなるものだ。VDMランドを褒められるのは自分事でもあるし、そうでなくても友人たる彼女らが楽しんでいてくれるのならばこの地を紹介しただけの甲斐があったというもの……
 なんだかトラブル続きではあったが、終わりよければ全て良しと言えるし――んっ?
「……あれ? なんか随分とゆっくりになってきたね?」
 綺麗な景色だね! と眺めてもいたマリアが気付いた。
 先程から――見える景色が変わっていない。
 観覧車はジェットコースターに比べてゆっくりだ、が。ゆっくりと『進み続ける』ものだ。
 だからずっと景色が一定などありえない――筈なのに、んんっ??
 瞬間。観覧車の中に響くのは館内放送。声の主は――マスコット達!
『あああすみません親分達!! 今ちょっと地上の動力部でトラブルがあって!!
 ええとなんと言いますか、漕いでた自転車が壊れたのと皆体力が限界になって』
「え、自転車!? 自転車ってなに!? もしかしてこれって今トラコフスカヤちゃん達の」
 人力。と、マリアが察した時。
 観覧車が動き出す――ただし先程の様にゆっくりと、ではない。
 遠心の力を伴っての高速だッ――!
「待ってぇぇぇ!? どうし、どうしてこれ、わああああ三人とも扉を開いて脱出を」
「だ、ダメですわこれやけに鍵が固くて開きませんわ!! 止めて! 出して頂戴! いやあああああああ!! どおおおおおしてえええええ!!」
「見て下さいまし皆様、素敵な景色がゆっくりぴっかり急にすごい勢いでほわぁあぁあ!?」
「あ、あ、あ――! この浮遊感嫌!! まずいってこれ絶対ああああ゛あ゛あ゛あ゛落ちてるううううう!!!」
 頑張って鍵を開けんとするヴァレーリヤだが粉砕しようとするのも間に合わず。
 全員に疑似的な無重力が発生した直後――フリーフォールの様な速度で全てがブン回った。
 全てがかき乱される。勢いが止んだ時、ジェックが気付けばそこにはタントの顔があって。
「タ、タント!? そ、そんな……アタシを庇って……
 アタシが、アタシが貧弱なせいでタントが……!」
 ――どうやらタントが咄嗟にジェックを庇うべく抱擁する様な形で包んだ様なのだ。
 その結果としてタントが――ああそんな!
 お願い! PandoraPartyProject! タントを生き返らせ……
「だ、大丈夫ですわ。私の身の堅さをもってすれば……ふぁい・おー! ですわ!」
「あ、起きた、良かった……もう目が覚めないかと思ったよ……」
 ほっ、と一息。気を失っていただけだったかと。
 心の底から――安堵が零れるものだった。


「うう……申し訳、申し訳ありませんでしたの~~」
「ははは、そうか――裏方で頑張ってくれたんだね。うん、よしよし良いよ良いよ」
 やがて日が暮れる。
 事の経緯をマスコット達から聞いたマリアは――怒る事はせず、むしろ皆の努力を褒め称えた。失敗してしょんぼりしているマスコット達を叱る気なんてない。それよりも皆が私たちの為に何かしてくれようと思った事が――嬉しい。
「酷い目に遭ったし、これもパレードと呼ぶには手作り感がすごいけれど、でも……いいえ」
 そしてヴァレーリヤも同様に。最後の催しと言える、パレードを眺めながら。

「だからこそ。私達らしくて楽しかったですわ」

 きっとこれで良かったのだと、心の底から思うものだ。
 ――また、皆で遊びに来ましょうね。
 直後に挙がる打ち上げ花火が言の葉を掻き消すも――しかし誰もが同じ気持ちであった。
「は、はは……うん。なんだか随分疲れちゃったけど、なんだかんだ楽しかったよ。
 マスコット達も頑張ってくれてたみたいだし……いやちょっと待って。
 なんでパレードにガチ目に卜口が紛れ込んでるの? 手も振ってきてるんだけど?」
「え。いやいつの間に紛れ込んだんだろうね……とらぁ君知ってる?」
「とらぁ」
 いつの間にかいた、と。マリアがとらぁ君に尋ねればそう返答が返ってきた。
 ……いやもう見なかったことにしておこうとジェックは遠い目。
 せめて打ち上げ花火の道具になって打ち上げられればいいのに……
「まあ今日は~とっても思い出に残る一日でしたわね~
 ええ、ええ。マスコット様方も頑張って下さったようですし……景色が綺麗だったのも確かですわ。んむっ、楽しかった、ですわよね!」
 そして、そんなジェックの隣で。
 色んな意味で忘れる事は出来ないだろうと、タントは紡ぐ。
 とほほ顔で苦笑しながら手拍子しつつ。パレードの煌めきを眺めながら――

「ねぇ、レルーシュカ」

 パレードの喧噪と花火の轟音に紛れて。
 タントは呼びかける。ヴァレーリヤへと――特別な、呼び方で。
「今、あなたは幸せですかしら?」
 問うておきたいのだ。今日、この日に。今、この瞬間に。
 答えはちゃんと分かっておりますが。
 それでもちゃんと――あなたの口から聞きたくて。
「ええ、とっても幸せですわ。少し前であれば、考えもつかなかったくらいに」
 であればと。
 ヴァレーリヤも決して誤魔化す事なくタントの問いへと答えを零そう。
 遠くて近い日。かつての光景を想起して――しかし。
「貴女は……なんて、聞くまでもありませんわね」
「ええ、ええ。勿論ですわ。
 素敵な笑顔のレルーシュカ。あなたにも、いえ、きっとあなただけの――」
 太陽の祝福がありますように。
「そして貴方達も……どうかこれからもお幸せに。貴女達の道行きに……」
 主の祝福がありますように。
 二人に通じる祝福を此処に。きっと未来永劫に至っても忘れぬ祝福を、此処に。

「色々大変だったけど、楽しかったね……
 VDMランドはこれからもっと素敵になるさ!」

 そして。その渦中にてマリアは紡ぐ。
 パレードの光を浴びながら――絶対に、また皆で来ようと。
「あ! そうだ! 4人でマスコット達と記念撮影はどうだい?
 撮影した写真を4人で持ち帰り記念にするよ!
 ジェック君とタント君にはマスコットのぬいぐるみもお土産にプレゼント!」
「おや! それは良い考えだと思いますわ! いいですわよね、ジェック様」
「いいけど一つだけ条件がある――卜口はいらないよ!」
「ふふ――仲がいい事ですわね」 
 だからその時の為にこの刹那を記録に残そう。
 どれだけ時間が過ぎようと、この大切な一時が確かにあったのだからと。
 ――ジェック。
 ――タント。
 ――ヴァレーリヤ。
 ――マリア。
「よーし! じゃあ皆笑顔で、ね! ほらほらとらぁ君達も入って入って!!」
 瞼を閉じようと思い出せるように。
 笑顔の結晶を――写真に収めるのであった。

 空に咲く、満開の花と共に。

 ――Happy Holiday.

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ――ありがとうございました。

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