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シナリオ詳細

追放された特異運命座標が実は最強だった話

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●転生したら境界案内人だった男の日常
「勇者よ、貴様はクビじゃ! 何処へなりとも行くがよい!」
「えっ……こ、国王陛下! いったいどういう事ですか?!」
「最近こういう出だしのライブノベル、増えたなぁ」

 境界図書館、閲覧室。次に特異運命座標を導く異世界を探すべく、『境界案内人』神郷 赤斗(しんごう あかと)は山と積まれた候補の書物から良さそうな本を探していた。

 図書館の収蔵候補は今この瞬間にも無限に増え続けているが、一定の時期に何らかの流行りがあり、似たような設定の異世界が激増する事があるのだ。

 たとえば、やたら妹が出てきて目立つ世界。
 たとえば、トラックに轢かれて気づけば転生している世界。
 たとえば、悪役令嬢に生まれ変わる世界ーー

 だから赤斗はその一冊の本に目を通した時、一瞬目を疑った。

「何だこの世界は。全くの"真逆"じゃないか!」

●追放された特異運命座標が実は最強だった話
「よく集まってくれた。早速だが仕事の話をしよう」

 集まった特異運命座標を見回してから、赤斗は紙の表紙の小さな本を取り出した。彼曰く、ライトライブノベルという種類の異世界らしい。

「物語は、この世界のトレーランス国という国の中から始まる。俺が君達を転送出来るのも、この国の敷地内だけだ」

 高い城壁に覆われた要塞国家は中身自体は治安良好。無辜なる混沌の幻想のような街並み広がる平和の国だがーー外からバハムート率いる魔物の軍勢が迫って来ているのだという。

 国を守るためには当然、出兵して魔物に立ち向かう必要がある。しかしこの国の国王ときたら……。

「嫌じゃ嫌じゃ! 誰も外に出しとうない。この国のものは鼠一匹すら出る事を許さん。ぜーんぶワシのものじゃ!」
「しかし王様、このままでは魔物に国が襲われてしまいます。せめて騎士団だけでも出兵のご許可を!」
「ならん! じゃって怪我したら可哀想じゃろ?!」
「おっ、王様〜!!」

「……とまぁ、こんな感じで国王がドケチというか、過保護というか……。とにかく人を国外に出そうとしない。
 ありんこ一匹出ないように城壁のセキュリティは無駄にガチガチだし、何とか国外追放されて、魔物を倒して来てくれないか?」

NMコメント

 今日も貴方の旅路に乾杯! NMの芳董(ほうとう)です。
 流行りに乗っかってみました! ……え?ちょっと毛色が違う?

●目標
 国外追放になって魔物の軍勢を倒す

●場所
 ライトライブノベルというポケットサイズの本の形をした異世界。中には剣と魔法の西洋ファンタジーが広がっています。大体幻想と似た雰囲気です。
 この世界のトレーランス国という国の中から物語は始まります。

 魔物を迎え撃つトレーランス国の外は平原。視界良好で特に目立つペナルティもありません。

●エネミー(?)
 トレーランス・ルイ四世
  オープニングで駄々をこねまくっていた王様です。とにかく何でも大切に扱う性分で部下も辟易するほどのドケチ。鼠一匹すら「いや、何かのために必要になるかもしれないしのぅ…」と城から出さない始末。この悪癖さえなければ、お花と紅茶が好きなだけの穏やかな賢王で済むのですが……。

 バハムート&魔物の軍勢
  天と地を埋め尽くすほどの魔物の軍勢ですが、特異運命座標の敵ではありません。かっこよくバシッと倒しちゃいましょう!

●その他
『境界案内人』神郷 赤斗が騎士として現場に紛れ、様子を見ています。彼も特異運命座標には過保護なので、必要な道具の手配の他、何か頼まれたら出てくるかもしれません。

今回の依頼は追放パートと戦闘パートがありますが、追放パートの方が描写多めになる予定です。また、与太なので判定甘めで、一見無茶だろと思う理由でも追放されます。皆さんなりの国外追放をお楽しみください!

 説明は以上です。それでは、よい旅路を!

  • 追放された特異運命座標が実は最強だった話完了
  • NM名芳董
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年07月26日 22時05分
  • 参加人数4/4人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

メリー・フローラ・アベル(p3p007440)
虚無堕ち魔法少女
アーマデル・アル・アマル(p3p008599)
灰想繰切
首塚 あやめ(p3p009048)
首輪フェチ
チュチュ・あなたのねこ(p3p009231)
優しくて不確かなすべて

リプレイ


 王の謁見室の扉が開け放たれ、潜入していた衛兵の赤斗は背を伸ばした。異端審問官が絨毯の上を足早に歩き、堂々と現れる。
「罪人よ、前へ!」
 彼の号令を受け、現れるのは裁かれるべき不貞の者と決まっているが、その日ばかりは連れて来られた者達の様子が妙だった。
 縄で手を拘束された男女と、傷ひとつ付けるのも可哀想とばかりに過保護に連行されて来た少女――チュチュ・あなたのねこ(p3p009231)である。

「国王陛下、チュチュちゃんを追放してください!」
「ン……あたしが追放? ひどいじゃない。どんな理由があってのことなの?」
「理由ならこやつらに話して貰おう。おい、トリコ家不貞三銃士!」
 唐突な三銃士呼びに吹き出す赤斗をよそに、縄で繋がれた三人が颯爽と名乗り出る。

「未成年誘拐の嫌疑を掛けられた、妻子持ちのトリコ家当主・ムッツリン!」
「旦那が捕まり超ショック! 弱みに漬け込まれて手玉に取られたムッツリンの妻・テダマラレダ!」
「オヤジ達の事情いま知ったし! 純愛だった二人の息子・カモナール!」
「「「我ら、チュチュちゃんの可愛さにほだされただけで無罪です!!」」」

「夜の街をお散歩しただけ、可哀想だから慰めただけ、年頃らしく近い歳の子と遊んだだけよ」
「聞いた感じだと大した事はしてない気がするのぅ」
「しかしですね国宝陛下、審問官的にはチュチュちゃんは魔性すぎるって……」
「審問官殿、先程から貴方もチュチュに『ちゃん』付けなのはもしや」
 赤斗の鋭い指摘で異端審問官が露骨に顔を逸らす。その場の誰もが「あっ」て顔した。

「とにかく我ら全員、彼女に謀られたのですッ!」
 そうだそうだと声を揃える三銃士withムッツリ異端審問官に国王も困惑気味だ。
「魔女裁判のようじゃのう」
「ン……本当よ。あたし、なーんにもしてないのよ。指一本触れてないのに……」
 親指を噛みながら、じっと国王を見つめるチュチュ。その瞳は潤み、見る者全てを魅了する。
「それでも、ダーメ? もう少し、お傍にいさせてほしいの……」
「くぅっ、追放など出来る訳がないのじゃ! こんなに可愛い子を外になんてッ!」
「……へぇ?」
 修羅か羅刹か。女王が絶対零度の笑顔を隣に座す国王へと向ける。次の瞬間、泣きそうにな顔で国王はくるっくる掌を返し。
「前言撤回! チュチュちゃんは追放じゃ!」
「あら、あら、ダメなのね」
 完全に敷かれている図式を嘲笑うかの様に、くすくすと小悪魔の笑みを浮かべるチュチュ。
「はぁい。えらいわ、王様。もう少し遊んであげたかったけど……それじゃあ、またね?」

 嗚呼、花のように笑う彼女に弄ばれる事の快感よ!
 気づけばもう誰もが虜。誰に手荒な事をされる事もなく、堂々とチュチュは国の外まで自分の足で歩いていった。
 衛兵に会釈をされ、国の出入口である大きな門の敷居をまたぐ。
「はぁ。追放されたはいいけど、皆が来るまで暇よね」
 彼女が艶めいた溜息を吐いたとほぼ同時、再び門が小さく開いた。やがて悪戯ねこを扱うように、ぺいっと首根っこを掴まれた『霊魂使い』アーマデル・アル・アマル(p3p008599)が国外へと捨てられる。
「脱出おめでとう、アーマデル」
「その声はチュチュ殿か……いや、当初の目的ではあったし逃げられたのは御の字なんだが、解ぜぬ」


 遡る事数時間前。謁見の間に引き立てられたアーマデルは戸惑いに顔を曇らせていた。
 追放されるための策を講じる前から、謁見の間に呼び出されるとは……。
「巫女アーマデル、そなたは国外追放じゃ! 何処へなりと行くがよい!」
「待ってくれ国王陛下、どうして俺が追放なんだ!」
(その前に、男なのに巫女扱いなのはいいのか?)
 赤斗の心の声をよそに、話はどんどん進んでいく。要は巫女のお勤めをするにあたり、正装となる巫女装束を拒んでしまったのが追放の理由らしい。
「我が国の伝統たる巫女装束を拒むとは何事か! 巫女長はそなたに跡を継いで欲しがっているのじゃぞ!」
「アーマデル殿ォオオ!」

 ドズゥン!

 門が開け放たれるや否や、アーマデルは反射的に横へ飛びずさった。今しがたまで彼が居たはずの場所はむくつけき男の尻が占拠し、床にヒビが入っている。砂埃の中から立ち上がった男は、純白スケスケのあぶない巫女服を内股になりながら見せつけた。
「いっけなーい、派手に転んじゃった☆
 巫女長ゴルアデ、只今推参ッ!」

 フワフワっ、ワーオ☆
 彼がポーズをとった瞬間、風神の加護がスリット付きの腰布をふんわり広げる。溢れた太腿のチラリズムに赤斗が吐くのを視界に収めつつ、アーマデルはジリジリ後ずさった。
「着てたまるか、そんな歩く犯罪者みたいな服!
 今まで色んな巫女や聖女と縁があったが、服装が群を抜いて最悪だ」
「何を言う、通気性ばっちりで夏も快適だぞ。裾が少々邪魔っけだが」
「たくし上げようとするなーー!!」


「……という感じで」
「ふふっ。それでアーマデルは着てあげたの?」
「今のやり取りの何処に着たくなる要素があったと思うんだ?!」
 なぁ、とチュチュにすかさず返すアーマデル。それと同時に門が開き、人影が見えたものだから、二人は顔を見合わせた。


「クヒヒ! 今話題の追放系統の物語ですか」
 私、あれあまり好きじゃないんですよね……と零す『首輪フェチ』首塚 あやめ(p3p009048)に、赤斗は最初、共感を得られたと思って安堵しきっていた。
「物語として面白いものであるのは理解できるのですが、敵役が何故態々優秀な人材の価値を認めず追放して自らの首を絞める真似をするのかがわからないですねェ……」
「だよなァ。あやめもそう思うだろ?」
「はい。なのでまずは赤斗さん、この首輪を付けてください」
「嗚呼、そうだな……とはならんだろ!?」
 ツッコミ虚しく、彼の首には赤い首輪。繋いだ鎖を手に取ると、あやめはそのまま城下町で引きずり回し、民衆へ高らかに告げる。

「首輪は束縛と隷属、そして誰かの所有物を示せるマストアイテム!
 奴隷とは主に隷属しつつも主の為に身を尽くす敬意すべき家族!
 故に奴隷商人として私は――この地に首輪と奴隷文化を推奨します!」

「あやめ、そなたは国外追放じゃ!」
「おやおや、何故ですか王様ァ?」
 謁見の間に連れて来られたあやめは、国王を見上げて目を細める。奴隷文化を嫌うのか、はたまた首輪を拒むのか――地位に怯む事なく、全てを見透かすような瞳で。
「決まっておろう。そんなの……羨ましいからじゃ! ワシも首輪を付けられて引きずり回されたいわい!」
「クヒヒ! 素晴らしい賢王ではありませんか。首輪同盟として首輪を愛する同志は歓迎ですよォ!」
「この国にマトモな奴はいねぇのかーー!?」
 赤斗の叫びも虚しく、ハイタッチからどの首輪が好きか盛り上がりはじめるあやめと国王。最早誰もこの二人の暴走を止められやしないと、諦めかけていたその時。

「ちわー!クーデターっすー! 王座一丁いただきにあがりましたー!」

 謁見の間の前の廊下を兵士達の屍累々にして――実は不殺だが――片手で一人の兵士を引きずりながら、『汚い魔法少女』メリー・フローラ・アベル(p3p007440)が現れた。
「一番マトモじゃない奴がきたーー!?」
「五月蝿いわよ赤斗。それよりほら、王位ちょーだい。一つだけ命令したらすぐ返すから」
「えー」
「リアクション軽すぎない? 借りっぱなしのゲームソフト返すの嫌な子供みたいな顔しないの」
 喋りながら流れる様な手際で、連れてきた兵士に向かって振り落とされるスローイングナイフ。
「ひぃええぇぇ!?」
 絶叫して泡を吹く兵士の顔の真横にスコン! とナイフが突き刺さり、場の空気は一瞬にしてメリーの方へと引き込まれていった。
「嫌ならあなたの大事な国民を一人ずつ殺していくわよ」
「こっわ!? ゆ、譲りマース!」
「はいじゃあ女王として、わたし自身に国外追放を命じまーす! めでたしめでたし」
「いやぁ流石メリーさんですねェ! その手際の良さ、シビレますよぉ」
 興奮気味に話しながらしれっと首輪を付けようとするあやめを片手で制しつつ、メリーは国の外へと歩みを進める。待っていたのは頼れる仲間と、空と地を覆う程の魔物の軍勢。

ーーかくして、決戦の時は訪れた。

「いっぱい、いっぱい、集まってるわねえ。寂しん坊なのかしら、みんな」
……meow、と甘やかに鳴いて呪いのメロディを紡ぐチュチュ。魅了が付与され動きの鈍った軍勢に、すかさずあやめが名乗り口上を叩き込む!
「バハムートだか魔物だか知りませんが……ええ! 私が似合う首輪を見繕いましょう!
 さあさあさあ! 誰から首輪を付けられたいですかァ?」
 盾となってくれるのはいいとして、驚くべきは彼女の趣向だ。怒りで引き寄せられた魔物達へすかさず首輪をはめてゆく。
 すぐ隣でアーマデルのため息が溢れた。「これさえなければいいヤツなのに」というのは「これがあるからダメなヤツ」だ。なのでこの首輪の趣味は百歩譲って受け入れるとして。
「素晴らしいパーティで昂りますなぁアーマデル殿ォ!」
「巫女長なぜここに……。俺達で何とかするから下がっていてくれ」
 願わくば視界に入らないでくれ。動かなければ最高だ。あのチラチラする丸太のような太ももは譲れないし受け入れられない!
 女難の相(?)を感じつつ放たれるアーマデルの英霊残響:怨嗟は八つ当たりも絡み、不協和音を増していく。
 やがて魔物の群れの中から現れた大翼の影。ワイバーンを前にして――
「あたしをどうか、だきしめて」
「近寄らないで。邪魔だわ」
 チュチュとメリーが真逆の言葉を囁いて、イービルクローの斬撃とダークムーンの暗き光りがその巨大を貫いた!

 やがて先導者を失った魔物の群れは滅び、国には平和が訪れた。
 一部の人間に拭いきれないトラウマと、黒歴史を刻みつけてーー

 めでたし、めでたし?

成否

成功

状態異常

なし

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