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シナリオ詳細

ミッドナイト・スカイクロウラー

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

 その世界の暦にして、星歴2368年。極東の島国、その首都、凍京。
 二七時。ヒトが眠る深夜にこそ、息を潜める悪がある。

 空に月高い。人知れず高空を、月をバックにいくつかの影が飛んだ。
 正気の沙汰ではない。ビルの全高は地上百五十メートル超、そこをまるでパルクールか何かのように次から次へと飛び移り駆けて行く。
 林立するビルの森を、我が物顔で駆け跳んでいく彼らは――皆一様に覆面に闇に紛れる黒装束。装備は筋力を増強する腕甲とすね当てに、手首上には射出可能なフックロープを備えた射出装置。彼らは全員がヘビーに機械化・神経加速を施されたサイボーグだ。背には小ぶりな直刀――鍔を回すことで超振動し、あらゆる対象を斬り裂くという忍者刀を持ち、ベルトに固定された苦無は突き刺さると同時に爆発するエクスプローシブ・クナイダートである。
 ――平たく言うのなら、彼らは、最新鋭の装備を身に纏った忍者のように見えた。
 技術革新を繰り返してきたこの世界の最新技術由来の装備と、血を吐くほどに鍛錬した体術を合わせれば、彼らはまさしく黒色の風となり、この真夜中の空を這う。
 彼らには目的があった。このままビルの上を駆け抜け、暗殺対象がいるビルの隣から跳躍。フックロープを叩き込み対象の居室へ加速、対象のいる防弾窓ガラスを超振動刀で破壊してエントリー。室内の人間を皆殺しにし、離脱する。
 今回の任務では殺せば殺すほど金が貰えるという。惨たらしくすればするほどに報酬が増えるとは、彼ら――暗殺集団『スカイクロウラー』らにとっては願ったり叶ったりだった。
 エントリーポイントに向けて跳躍を繰り返しながら、邪悪なる虐殺への期待を膨らませるスカイクロウラー達。

 ――しかし。
 彼らは一つ忘れている。

 いかに最新の発明品で武装し、己が体術をこの世界で通用するよう、死力を以て鍛えあげたとて。得た力を私欲のために揮い、人を殺さば報いが待つという――当たり前の大原則。それは或いは、人の心さえ凍ってしまったこの冷たい街では通用しないものだったのかも知れないが、
「――いい夜だね。いや、今からキミ達にとっては最悪になるんだが」
 その声の持ち主こそが、その執行者である。
 忍者達は反射的に制動を掛けた。降り立ったビルの上に、招かれざる客がいる。数名の男女――特異運命座標。境界案内人の双星に導かれた、正義の担い手。
「月並みな台詞だけど、ここから先へは行かせない」
 先頭に立った男が鍔鳴り一つ、己が属性を籠めた離別の刃を引き抜いた。――『全てを断つ剣』ヴェルグリーズ(p3p008566)彼の名だ。
「始めようか。キミたちが空を這うなら、――俺達はそれを刻み墜とすだけだ」
 月光に魔剣眩く。忍者達もまた、クナイに手をかけ引き抜いた。
 月下、摩天楼での戦いは、そうして音も鳴く始まったのだ。

 ――空を駆けよ、特異運命座標よ!
 空を這う、機械仕掛けの暗殺者達を断つために!

NMコメント

●ご挨拶
 初めまして。煙と申します。
 シナリオのリクエストを頂戴し、恐縮です。
 最善を尽くしますのでよろしくお願い致します。


●世界説明
 西暦2268年の架空の東京だと思ってください。カジュアルに、或いは性能の向上を求めて、躰の一部を人工物に置き換える事が常態化した、退廃的なサイバーパンク調の日本です。


●シナリオコンセプト
 聳え立つ高層ビルの森を、空中を飛翔しビル壁を蹴り、或いは任意の手段で空中移動を行って、同じく空中戦を得意とする敵対象と、スタイリッシュな三次元戦闘を行っていただくシナリオです。


●達成目標
 スカイクロウラーの全滅


●敵対象
・スカイクロウラー×8
 機械化・強化されたサイバーパンク・ニンジャです。
 常人を遙かに凌駕する反応速度、筋力、骨強度を持つ強化人間で、全員が他に行き場のないシリアルキラーです。
 参加されるイレギュラーズの数によりますが、基本的に敵一人に対し複数で行動するため、四人いても一人当たり二体を倒すことになります。
 説得などは通じません。報いを与えましょう。

・攻撃
超振動刀:近距離では、振動する忍者刀により攻撃してきます。近距離ではほぼこれを使用するでしょう。まともに打ち合うと腕が痺れたりしてしんどいかも知れません。普通の鉄とかだとサクッと斬れますが、イレギュラーズの皆さんの武器ならばきっと大丈夫です。

爆発苦無:エクスプローシブ・クナイダート。中~遠距離ではこれを投擲してきます。命中と同時に爆発する為受け太刀は危険でしょう。凍らせる、爆発を何らかの方法で封じ込めるなどすれば無力化出来ます。

フックワイヤー:巻き上げ機構・フック付きの編鋼線。スカイクロウラー達はこれと尋常ならざる脚力、更にはバックパックブースターとスラスターにより跳躍、加速、姿勢制御と高速移動を行います。また、中距離からはこれを放ち引っ掛けることで、狙った相手に急接近するなどの手管を用いることもあるようです。


●シナリオ開始時の状況
 一つのビルにイレギュラーズの皆さんとスカイクロウラー達八名が一堂に会したところからスタートします。
 スカイクロウラー達は基本的に自分たちに有利な環境で戦いたがるので、初手を入れた後はすぐさま後退、ビルから飛び降りてワイヤーによる三次元機動を開始します。皆様はそれを追撃する必要があります。空中を移動できる、何らかの方法を案じておいた方がいいかもしれません。


 それでは、どうぞ、よろしくお願い致します。

  • ミッドナイト・スカイクロウラー完了
  • NM名
  • 種別リクエスト(LN)
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年07月27日 22時05分
  • 参加人数4/4人
  • 相談8日
  • 参加費150RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

カイト(p3p007128)
雨夜の映し身
かんな(p3p007880)
ホワイトリリィ
眞田(p3p008414)
輝く赤き星
ヴェルグリーズ(p3p008566)
約束の瓊剣
※参加確定済み※

リプレイ

 彼我の距離、一五メートル強。
 ビルの中程に四人の特異運命座標と、ビル縁寄りにサイバネ忍者『スカイクロウラー』が八名。
 敏速に動いたのは忍者達が先であった。ベストから引き抜いた爆発苦無を、そのまま腕を払う動作で投擲!
 身構える特異運命座標達を中心に、凄まじい爆炎と爆風が吹き荒れる! 同時に忍者たちは二手に分かれて駆け出した。散開しつつ、ビルの縁を蹴って宙に身を躍らす。
 爆炎が高空の強風に煽られて晴れる中に、場違いに明るい声が響いた。
「え、忍者が機械を活用しまくってる! なんで!? チートすぎるだろ!」
 煙が晴れてみれば特異運命座標らは傷一つなく無事。彼らを、氷の結界が取り捲いている。
「てかそれって忍者でいいの? あれでいいなら俺もドーピングして空中駆け回ってなんちゃって忍者するよ?」
 砕け落ちる氷壁結界の中で、赤毛にじゃらじゃらとピアスや指環をつけた端正な顔の男が、稚気に満ちた口調で言った。錠剤―― 『ペテロ・ヘイスト』を噛み砕き、両手にナイフを抜いて笑うのは、『Re'drum'er』眞田(p3p008414)である。揶揄するような口調に、横合いから応じる声。
「そりゃァ、忍者ってのは使えるモノは何でも使うからな……まァ、俺にすりゃ一周回って懐かしいというか、『同類』だからな、いじり具合もよく分かるが――」
『雨夜の映し身』カイト(p3p007128)だ。 凍護結界『破軍凍砦』による氷壁を生じさせ、仲間を護ったのが彼である。黒のバイザーにスーツを思わせる金属装甲。肥大したブースター付きの腕部が目を引く。
「身体を弄ると、その優越感に本質を見失うバカはよく居るモンだが……ま、いいか。どうせそこら辺でくたばっても『見向きもされない』んだろォ?」
「そこまでは言わないけれど――彼らの力の使い方には言いたいことがあるわ」
 言を継いで、『カピブタ好き』かんな(p3p007880)が声を上げた。白の髪、肌に、折れてしまいそうに可憐な、細身の小躯。永遠と神殺しの業を、即ち神を無き者とする、『神無』という名を押しつけられた少女。
 三名の戦意は既に上々。
 それを受け、月光に煌めく銀糸をした青年が外套を翻し、口を開いた。『全てを断つ剣』ヴェルグリーズ(p3p008566)である。紺色の髪は、しかし光を受けるなり銀色に煌めく、不可思議な色彩をしていた。それは瞳と同じ、刃の色。
「どの世界でも、街の灯は美しいね。そして、それに紛れる影が八つか。影はそのまま闇に消えるが似合いだ」
 翻ったヴェルグリーズの剣が宙を裂く。その身体を、風精の守護が覆った。
「――始めようか、皆。彼らを夜に沈めよう」
 斯くて四人は、獲物を追う猟犬の如く四方へ跳んだのである。


 かんなは、『虚翼』――ナンバーレスの一部を純白の翼として背に従え、それにより飛翔能力を得ている。ビルの壁を蹴り、次なるビルへアンカーを撃ち込んで巻き上げて移動する敵の背面につけ、偽翼を一つ羽撃き、追う。
 こことは異なる世界で作られた兵器たる少女は、敵を哀れむように謳った。
「技術の果てに生まれた兵器として、一言言わせてもらうけれど――きっと時代遅れよ、そんな使い方は。それを、教えてあげましょう。力は壊すため、殺すためだけにあるものじゃない。きっと」
 ――なんて。力に意味があると、私が思いたいだけかもしれないけれど、ね。
 かんなは心の裡で独り言ちる。誰かを助けられると思うくらいは許されるはずだ。少なくとも、今までかんなはそのようにして誰かを助けてきたのだから。
「世迷い言を!」
 左手をアンカーに占有されている忍者が、背中を取って追い来るかんな目掛け、一挙動で三本の苦無を投げつけた。
 ひゅッ。かんなは、飛び来る苦無よりも鋭く音を立てて息を吸った。
 瞬時に宙に顕現させた顕現武具を蹴り飛ばすッ! 凄まじい音を立てて爆裂する顕現武具は、破片と衝撃波を前方へまき散らし、『空間ごと敵を破砕する』。
「なッ」
 苦無が破片に捲かれ爆裂。刹那の間すらなく、一体の忍者が空間破砕に巻き込まれ、金属と肉塊の混合物になり吹き散った。かんなが放った『儚嵐』の空間爆撃に呑み込まれたのだ!
「ッ!!」
「総員、油断するな!」
 すかさず敵三体が折り返し、アンカーをかんな側のビルに撃ち込むなり、ブースターの推力を使い三方より稲妻の如く接近、忍者刀を抜く! 敵接近、かんなの背面より二、正面より一!
 しかし迎え撃つ彼女の顔に恐れはない。ふ、と笑う。
「こういう時は、背中は任せたわ、って言うのよね?」
「あァ、その通りだ」
 声は、かんなの背から斬り掛かる忍者達二名の、その更に後方より聞こえた。
「フックもアンカーも無しで、壁を蹴っ飛ばしてお前らに追いつける呪術師だっている。――俺もお前らと『同じ』モノだしなァ?」
 皮肉に笑い、カイトが空を『跳』ぶ。その双掌より放たれるのは二種の呪い。『スケフィントンの娘』、そして、『葬別の冬枯れ桜』!
 呪いが届いた。片割れが黒棺に包まれ、もう一体がその全身を凍葬されたが如く氷結される。こうなってはフックの巻き上げはおろか、射出も出来ぬ!
「ぐ、」
「うおっ……!」
 カイトは呪いを受け身動きできずに藻掻く敵二体にそのまま接敵!
「身体を鋼にして最強になったつもりなんだろ? でも、お前達は『人間』であることからは逃れられねェ。『精神』がある以上、『呪い』は届く。そして『兵器』になった以上、ただの『氷』が致命的になる」
 カイトは両腕を振り上げ、嗤った。
「落ちろよ。――どうやら『お前らが此方側に来る余地は最初から無い』みたいだぜェ!」
 両掌を振り下ろし叩きつけるなり、『ショウ・ザ・インパクト』、発動。発した声を置き去りに、二体の忍者が墜落する。ビル壁からアンカーの抜ける音が断末魔めいていた。墜落死は必至であろう。
 一瞬の殺劇。
「っお、おおっ!!」
 斯くして、背を憂うことなく前だけを見たかんなと相対した四体目は、
「さよなら」
 神速一閃、『鬼歌』の一撃により、上下天地に一刀両断。その命を散らしたのであった。


「なかなか面白いゲームになったね。さて、どうする?」
「突っ込もう。右翼は向こうの二人に任せる。――一緒に踊ってくれるかな?」
「勿論。じゃ、派手なギグにしよっか!」

 斯くて、眞田の身体を影が覆い、ヴェルグリーズを取り捲く風精が荒れる。

 二人の男は、息を合わせるでもなく、全く同時に駆け出し、跳躍した。
 忍者達のうち一体が、ハッとしたように目線を上に上げる。空を這うもの。スカイクロウラー。彼らは全てを見下ろす存在のはずだった。――今この瞬間、月を背に負って高々と跳ぶ特異運命座標らが、彼らの上に影を落とすまでは。
「なッ――」
「追いかけっこだ。――捕まえたぁ!」
 顎を地に向けて天空を蹴ったのは眞田が先だ。ペテロ・ヘイストの魔術補助による疑似飛行。空を駆け下りるように加速し、襲いかかるなり叩きつけられるのはナイフの峰。『ダーティハリー』。叩きつけられるナイフの峰は一発ではなく無数。死の音階を伴い、忍者の身体に響き渡る。
 明らかに殺す気の打撃。刃でやるなら初手で終わっていてもおかしくない。なのに峰で叩く。『聴かせる』。痛みとともに鳴り止まないノイズが正気を蝕む。忍者の目がぐりんとあらぬ方向を向くのを見て、眞田は嗤う。
「苦しいかな? まぁ大丈夫、ちゃんと死ぬよ。正義の鉄槌ってやつ」
 この高空で意識を失えば、待つは転落死か、激突死か。それを知って、畜生に似合いの結末だと嗤う。
 意識を失った忍者の首っ玉に腕を回して制動した眞田をよそに、ヴェルグリーズはまさか、その忍者が延ばしていたワイヤーの上に着地。ぴんと張った鋼線の上を凄まじい勢いで疾駆!
『アーリーデイズ』により加速された身体能力が曲芸めいた超加速を可能とする!
「は――?」
 加速したヴェルグリーズは一瞬で先行していた忍者に肉薄。呆けた声を上げる敵に向け振るった左腕が『黒顎魔王』を形取る。
 ば、ぐんッ。
 咬合は一回。半身を咬み削られた屍体が、為す術無く墜落する。
 超常の術で奇襲された忍者らに対抗手段はなかった。もう、残った二体は恐慌状態だ。攻撃する意志もなく逃げようとする。
 だが、逃がせば遺恨しか残らぬ。それを知っているが故に、
「操り紐に囚われて殺す人生もこれで、おしまいだ。俺が綺麗さっぱり、切り捨ててあげよう」
「あはは、機械化しても頭までは変わんなかったみたいだね。それじゃ、俺達はゲームクリア、あなた達はゲームオーバーってやつだ! バイバイ!」
 二匹の猟犬は、躊躇なく空を翔けた。
 ヴェルグリーズが左から、眞田が右から。空を蹴り、加速し、逃げる二体のその側方を取る。
 ビル風を斬り裂き、細いビルの間をスラロームして抜け、
「――これで、おしまいだ」
 ヴェルグリーズが鋭く言った瞬間。魔剣と殺人鬼は、クロスするように同時に翔けた。
 走るは魔剣の一撃。あらゆるものを二つに分かつ、切断の原義、『絶対分割』。そして、殺人鬼の、殺しのビートを刻むような無数の打撃。殺しの音階、『ダーティハリー』。
 いかにも対照的な、絶対の一斬撃と無数の乱打撃。処した二人が飛び去れば、二つに分かたれた肉塊と、ぐしゃぐしゃになった肉塊が、地へとくるくる舞って落ちていく。


 トッ、と音を立て、ヴェルグリーズは細い電波塔の突端に着地した。
「これでこの世界の夜も少しは静かになるかな」
 騒乱に満ちた世界のようだった。これだけで足りるかは怪しいものだったが――それでも、今夜死ぬはずだった誰かが死ななかったこと、報酬はそれで充分のはずだ。
「――良い夜を」
 祈るように呟いた。
 日の昇る方へ、あえかな微笑を向けて。

成否

成功

状態異常

なし

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