シナリオ詳細
あなたを底に、あなたの傍に
オープニング
●しわくちゃ笑顔
ブ――ゥゥゥ――ウ。ノイズを吐き散らしていたのは妙な輪郭をした機械仕掛けで、それらに繋がっているのは『水槽』だろう。君が覗き込めば中身は脳味噌、ぶくぶくと気泡を吐き続けている。今回は君に『お世話』してほしいと触手が伸びてきた。これの『名前』は脳無し、この理想郷の管理者とも呼ばれている。少し前まで狂ったりと忙しなかったが今は落ち着いているようだ。しかし『お世話』とは如何いう事だろうか――ああ、それは簡単な事さ。この脳味噌は※※※なんだからさ。君が世話するのが正解だろう?
ブゥゥ――ゥゥゥ。やけに近くが五月蠅いと思えば、ああ、ひどく落ち着いてきた。さっきまでの錯乱が嘘のように※※※、夢の中を漂っている。え? ※※に世話してもらえるって? 最初脳無しから説明を受けた時は『自分は正気ではない』と思っていた。されど如何だ。今となっては『まるで自分がこうなるのを決められていた』かのように正気だ。嬉しい。とても、嬉しい。
まあ――つまり脳無し、私が望むのは幸せに次ぐ実験だ。普段は脳味噌だけを招いているが、今回は『脳と中身』を扱おうと考えている。それで、勿論、付き合ってくれるよね? ハハハ。
●頭の中を理解したい
「んん。んんんんん……んぁー」
境界案内人たるこすもは頭を抱えて唸っていた。ああでもないこうでもないとグルングルン回す姿はちょっとした子供の玩具を思わせる。可愛らしさの内にあるのは狂気だろうか、嫌な予感しかしない。
「あー……ごめなさいね。理想郷について考えていたのよ。いやね、理想郷の管理者さん、脳無しさんが『お世話係』『お世話される係』を望んでいるらしいのよ。今回の水槽の脳は『二人一組』っていうのかしら? 一人が脳味噌ぷかぷかして一人が水槽をきれいにする。お互い会話出来ても良いし出来なくても良い。ちょっと頭がおかしくなりそうだけど、帰ってきたらいつも通りだから。じゃ、一肌……一頭蓋脱いじゃって。いってらっしゃい」
ノイズがこびりつく。
- あなたを底に、あなたの傍に完了
- NM名にゃあら
- 種別ライブノベル
- 難易度-
- 冒険終了日時2021年07月19日 22時05分
- 参加人数4/4人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 4 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(4人)
リプレイ
●愛情が唇を有したならば、贋物だからこそ悦ばしい
定まる事を放棄した艶やかさは誰にとっての粘つきだろうか、絡み遭ったシナプスが星辰が如くに揃ってくる。二度と狂わない幸福の真っ只中、そのような彼等『脳髄』を『溶融する普遍的な愛』Melting・Emma・Love(p3p006309)は抱擁するが為に凝視した。Loveがこんな施設でお世話する側なのが不思議なの。残り滓のような溶液と自身の肉体を重ねてみた、嗚呼、このぬくもりは確かに普遍性を導く養分に違いない。名付けるならば『魔性』への繋がりだろうか、鴉めいた輪郭でキラキラを追い求める――そんな『夢』でも愛としては伝わらない。声帯はなくてもノイズが存在するのだ、お話は楽しみにとっておいて――ちゃんとしたお仕事に取り掛かろう。たとえば奥の方の水槽、ひどく埃に塗れている。
内側が穢れないように入念に慎重に、綿取り代わりのスライム状は如何だ。ひんやりと柔らかな透明感にひっついて、不浄な欠片を除いていく。こっちの脳は五感を省いていたがあっちの脳は聴覚と視覚を望んでいた、ねえ、聞こえてくるのよ。このちっちゃな世界に這入っていると『ちゃぷちゃぷ』音が聞こえてくるのよ。とっても興味深い幸せな皴々だ、ずっと言の葉を聞いていたいのはLoveも同じだろう。不思議と奇妙な連結して『ふわふわした生活』を実現しているのか。似たような景色を見た事はあった、しかし、こんなにも素敵な『もの』は新鮮なのだ。優しい泥濘に沈んでいく。
宇宙を色として表現するならば今のLoveだ。愛する為に生じたならば【それを維持すること】に何の躊躇がいる。ぶくぶくと吹いた脳に斜めの頭部を映してみた。※※はどんな夢を見ているの――そう。底の知れない業をLoveと読む者もいた。きもちよくなるお薬が松果体に注がれている――怪物は何を目指している、あの狂気じみた真ん丸い光だ。詰め込んだ僥倖が振盪を冒して。
●プラナリアを殺す事は簡単だ、真実をぶつけてやれば良い
こんなことは普通じゃない。『昼の涙』築柴 叶雨(p3p009756)は二度と出ない胃酸に縋りたくなった。繰り返し見ていた悪夢が現実に墜とし混まれたとでも謂うのか、叫ぼうとしても鳴こうとしても『身体』など存在しない。正気じゃない。ふつふつと抱擁してきた泡が神の嘲笑とも思えてくる。狂ってる。どうして腕がないのだろうか。どうして足がないのだろうか。絞殺と呼ばれるサヨナラも現の中では赦されていない。憎い。憎たらしい。あの『双子の兄』に、脳味噌姿の自分の面倒をみられるだなんて――のむ涎も垂れない、こんなことなら誰かに膝枕された方がマシだ――気が触れてしまいそう。いたって健康なオツムが頭蓋に収まっていないだけでこうも可笑しくなって……いや。違う。緑色の目の怪物に睨まれていたのだ。愛しくていとしくて、たまらなかった兄の美しさ。なんで憎たらしいと考えている? キャハハ……既にどうかしていたんだ、同化にぶつかっても抗う術がない。
ロイコクロリディウムの残滓が太鼓を叩いていた。なんて心地の良い生活環境だろう、兄が手足頭となって俺を『お世話』してくれている。知識経験を活かした『生かし』方だろう。愛らしい愛くるしい、くるくると溶液を掻き溶かす貌はおそろしいほどに優しかった。俺はどんなひどい事をこれまでやってきた。俺はどれほどひどい唇を結んできた。まだ俺の事を弟だと思って……。
死に損ないが――不意に罵倒が届いたのだ、過去の俺からの贈り物だ。はいた汚物が前頭葉に降り掛かった程度だ。お前が視界に入るだけで憂鬱になる。お前の声を聞くだけで全身に寒気が走る。青色の目だ。俺と同じ青色の目だ、今日ここはぐるぐる遊んでいる場合ではない。何度目かのお誘い断りに地獄に落ちろと大笑いしてみせた。言葉を交わすだけでその日の生きる気力が全て削がれる――最早『真逆』だ、ノイズ音が鬱陶しい。俺を大切な、たった一人の弟だと思っていてくれるのか。聴診器が側面を撫でている。
俺と仲良くしたいのなら、俺以外の奴と関わるんじゃねぇよ。友人から貰った『それ』で俺を弄ぶんじゃない。双子の弟の俺と兄、この鎖を引き千切るような腐れは不要なのだ。哺乳瓶の中のミルク、珈琲を混ぜるなんて冒涜的ではないのか。昔のように二人っきり、ごっこ遊びでも構わないと告げてやれ。「ずっと一緒」「死ぬまで一緒」――大事な大事な二人だけの約束、もうとっくの昔に忘れちまったのかよ。
消失していく感覚が脳の髄まで削ってくる、くるくると撒かれたのはきっと幻覚だったとでも。
莫迦な――これが真実でなければ息絶えるしかない。
●真実でも贋物でも構わない、在り来たりな装飾品は五芒星なのだ
涙を宝石だと表現したならばどん底への直撃、これを優しく拭うのは『若木』秋宮・史之(p3p002233)だけの特権だろうか。もぎ取られた四肢の行方を追跡している暇などなく、ただ投げ棄てた基盤を踏み潰してしまえば良い。まあ、だいたい『どこの世界』でもカンちゃんのお世話係は俺だと決まっている。※の穴埋めは遂に終を得、絵具を吐き散らかす狂気は『正気』に成り果てたのだ。決めたのは俺で受け入れたのはおまえ。傍から観察されたら真逆でも紅葉色の爛れは永久の証なのだ。ご主人様はおまえ、でも『最終的』に掴むのは俺と定められている――意志疎通が難しくても知ってるよ――取り繕ったうわべだけの精神、論した星辰はガバガバ開いておりだらけたオツムを加工している時などない。せこせこ働いて全部おまえの仕業にしてやる。最初から歪だった事は否定出来ない、螺旋に囚われた三半規管がこよなく愛に転がされている――ぐるぐるは嫌いじゃないよ。
目を回して楽しいだなんて『しろがねのほむら』冬宮・寒櫻院・睦月(p3p007900)は間違っていなかった。やわらかいぷるぷるが容れ物の央、横たわっている。こんこんと眠り込んでいる貌は何処か化かす狐じみていて、照れ隠しに起き上がる事も奇妙でしかない。流れていく時間がゆっくりなのは仕方のない事。ことことと鳴り止まない脳音が桃源郷のグロテスクさを再確認させてくる。否々、昔の悪夢いまいずこ。何も言えなくてもしーちゃんならわかってくれる。くらくらと光って魅せたのはお互いの指輪。発熱した味噌を如何やって元に戻せと説くのか。
朝から晩まで貴様等は回転だ、この水槽の内と外で『俺・僕』の事を考えて考えて考え尽くしている。何から始めようか。ポカン式もお祭り台詞も何もかもお休み、怠惰な悦楽とやらをカンちゃんに貪ってもらえれば良い。きまじめにやるべきことを列挙していけ。透明な溶液をぶちまけて甘い甘い点滴は如何だろうか。硝子面にシミつけば拭いていくのが正しいだろう。脳味噌崩れないように慎重に慎重に、顔が映るほどピカピカにしたら完璧だ。絡まったコードの向かう先を定めてくれ、たとえば千切れかかった一本、ソケットを違えれば危機管理の問題となりうる。潤んだおまえの表情はひどく冷えているのだ、埃一つない清潔な世界を作り上げようね。夢の中はこんなにも泥塗れだと謂うのに。
ちょっとした一色をお手入れする事も出来ない。肌を磨く事も赦されていない。あれこれと大変そうな蝸牛に労いの言葉を与えよう。そんなにせかせかしなくてもいいよ。清潔な世界も好きだけど暗渠で『男の子』と手を繋いでいた方が好い。隣でのんびりしようよ。電気信号と称される便利で残酷なものが在ったのだ、お喋りしようよ。緑色の文字がモニターに焼き付いている、憑かれたかのように幽世は解放されなかった。1680万色の二進数で会話しようね。ああ、夜鷹。よだかの星、ちかちか光続ければ近寄っていく。走れ走れ銀河こそが僕だ。あの鉄道は首を謳っている。
無機質はつまらないから彩りをどうぞ。ちょっとした一色を除くだなんて愚かな者のやることだ。薔薇の花を一輪さして、その赤を嗅いでぐらついた。たくさんの棘は省いている。ぶっかけた消毒液がしたたり落ちて、無害な自分自身を強調している。恐くないし怖くない、畏れ孕む腸がこぼれてくる程度だ。そもそも蟲一匹もいやしないのだ。造花のいけかたは誰に教えてもらった――目を離した隙にしおれているとは何事か、贋物で十分だと『秋から冬』にかけて――僕に触れてくれる大きな手が好き。ファイアオパールの瞳は光の加減の悪戯だった。
生きるも死ぬもしーちゃん次第。混線した神経が慎重に解かれて、内と外が皮肉を反射してみせた。思考を垂れ流す脳が幸福の頂を覚え、麻薬なんぞを上回る『もの』を刻んだ。今日も明日も明後日も僕専用でいてよね。浮気はダメだよ。置き去りだけは嫌だとぶくぶく、傍にいて傍にいて、どんなに汚れたって構わないから。文句は言わない我儘も言わないだからおねがい一緒に……どんな夢を見てるんだい?
なんにもない世界に二人きり。脳だけになっても愛らしさが変わらないなんて正気だからこそ思っている。不思議なほどに本音があふれ、依存患った悪魔みたいだ。そのしわのすみずみまでゆきわたるくらいどっぷり甘やかしてあげる、糖分過多の末路だ、すべてあなたのなすがまま――俺なしじゃいられなくなるように。一人前の妄想じゃあ、どうしても物足りないだろう。
真っ白なドレスを着せて舞踏会へ連れて行って。
――嫌だね、俺が服を決めてやるよ。
●理想を叶えたものだけが地獄を知っている
スライム状の抱擁が一度か二度、叶い難い願いを世話していた。
どん詰まりのお約束を芯の芯までLoveしてみせた。
季節感のない二人が皺を埋め合い、舞踏会へと妄進していく。
脳無しの大笑いは誰にも響かない、人々にはやはり水槽が要るのだった。
揺さ振りに苛まれた脳味噌どもがびちゃびちゃした。
成否
成功
状態異常
なし
NMコメント
にゃあらです。
何度目かの脳髄
●理想郷
ライブノベル『底知れた脳髄』などで使われている世界です。
https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/2106
この世界の住民は皆『水槽の脳』の状態で幸せな夢を見ています。
唯一、生身なのは管理者『脳無し』、一度イレギュラーズによって発狂を抑えられています。
●目標
お世話係、お世話される係にわかれて『脳無しの実験』につきあおう。
お世話係は『お世話される係』『もしくは誰か』の脳を観察、水槽をきれいに維持してください。
お世話される係は『脳味噌のまま』です。お世話係と意思疎通出来ても良いですし出来なくても良いです。
誰が何方か、絶対というわけではありません。
好きな方を選択してください。
●サンプルプレイング
お世話係
「なんだこの悪趣味な世界は。まあいい、この脳味噌を世話すればいいんだな?」
確か名前は※※、混沌世界で何やってるのかしらないけれどたぶんいいやつ
水槽汚れるのはやいな、違う水槽に入れ替えるか……この作業正直こわい
え? このコードが違うって? それを早く言ってくれ!
ああ――疲れるな。これなら脳味噌の方が楽だったか?
いやいやいや! 他のやつに自分の脳味噌預けられるかっての!!!
お世話される係
「――私は今、※※の腕の中にいる」
大大大好きな※※が、私の柔らかな部分を世話してくれている
こんなにも嬉しい事はないし、このぷるぷるした眩暈は永久の宝物だ
ありがとう、この世界の管理者さんには感謝しないと
視覚も聴覚もなにもない、暗闇に独りだけど独りじゃない
あ、掌だ。ちょっと削れそう、うふふ
――ノイズが晴れたのは久しぶり
Tweet