PandoraPartyProject

シナリオ詳細

短冊を吊るそう!

完了

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●笹の葉さらさら
 N県九重市のスーパーマーケット『ここのん』。
 毎年七夕の季節になると、笹の葉が飾られて短冊が吊るされる。
 ご自由にどうぞというポップと共に、色とりどりの短冊が置かれていた。

 ……本当に自由らしく、飾られている短冊には異世界からの住人の書き込みもある様子。
 中には文字になってもいない短冊もあったり、絵だけしか描かれていないものもあったり。
 チラホラと人ではない者が書いたと思われるものがあったりしていた。

「や~、今年もいろんな人が書いてくれとるねぇ」

 店員である久遠響《くどおひびき》は書かれた短冊の位置を調整するために、脚立に登って笹の葉を揺らしては短冊を付け替えていた。
 異世界の住人が書き込みに来るというのは本来であればありえないことだろうが、この都市に住んでいればあり得ないことはあり得ないため、まあいつものことだで済まされる。

「……しかし、今年はえっっらい少ないなぁ……?」

 どうやら今年は異世界人の短冊の数が少なくなっているようで、なんだか寂しいという。
 今までは異世界人の書いてくれた短冊も、ある種ここのんでの名物のようなものにもなっているそうだ。

「誰でもええから、書きに来てくれへんかなぁ……」

 はぁ、と小さくため息を付いて脚立を降りた響は、そのままレジ係へと移行する……。

●短冊に願いを
「君は短冊に願いを書いたこと、あるかい?」

 境界案内人のカストルがあなたに声をかける。
 ある本を片手に、七夕の由来や習慣についてを語り、そして本題へと入る。

 本の中の世界にあるスーパーマーケットでは、毎年短冊を吊るすための笹の葉が用意される。
 その笹の葉に願いを書いた短冊を吊るしてきてほしいという。

「どうやらその世界は異世界の人々の来訪も歓迎されてて、七夕に短冊を書いてもらったりもしているみたいでさ」

 しかし今、その来訪もめっきり数を減らしてしまっていて、大きなイベントである七夕もあまり活気を見せていないそうだ。
 今回カストルがあなたに声をかけたのは、少しでも短冊に願いを書いて活気があることを見せてあげたいという。

 短冊に願いを書いたら、吊るすだけ。どんな願いを書くか、どんな事を書くかも自由だそうだ。
 願いがないなら絵でも描いてきていいよと、カストルは言う。

「とにかく、短冊に何かを書いて吊るすこと。今回はそれをお願いしてもいいかな?」

 柔らかに微笑むカストルは、本をぱらりとめくる。
 さて、何を書いてこようか……。

NMコメント

 はじめましての方ははじめまして、御影イズミです。
 そろそろ七夕の季節だなぁと思ったのでラリーが出来ました。
 もしかしたらタイミング的にどなたかと被っているかもしれませんが、こちらの目的が良いなと思った方はぜひ。


◆最終目標
『短冊に何かを書いて吊るすこと』
 何かは何でもいいです。
 願いがある方は願いを書いてもいいですし、無い方はポエムでもいいかもしれません。
 もっと言うなら短冊内で1人しりとりするのもありです。
 とにかく短冊に何かを書いて吊るすことでミッションコンプリートです。

◆サンプルプレイング1

 短冊に願いを書きます。
 「少しでも背が大きくなりますように」
 その後、届きそうなところに短冊を吊るします。
 あるいは店員さんに脚立を借りて高いところにつけるとか……。

◆サンプルプレイング2

 願いが思い浮かばなかったのでとりあえず可愛く猫の絵でも描いておきます。
 縦長な短冊だけど胴長の猫だと思えばなんとかなりそう。
 ……ちょっと顔が不細工になったけど、まあいっか!
 吊るす場所はお好みで。自分の届きそうなところに付けておくかな?

  • 短冊を吊るそう!完了
  • NM名御影イズミ
  • 種別ラリー(LN)
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年07月11日 01時00分
  • 章数1章
  • 総採用数11人
  • 参加費50RC

第1章

第1章 第1節

冬越 弾正(p3p007105)
終音

「願いをかけば叶うのか? いや、これは叶えようという、決意表明のようなものか」

 冬越 弾正は短冊の下がった笹の葉を眺めていた。

 短冊に願いを書くことで叶うという七夕の話は本当に不思議なもの。
 元々は機織りや裁縫の上達を願う行事なのだが、気づけばその行事も様変わりしていた。
 故にその願いが叶うかは、本人の努力次第というところ。

「ふむ……ならば、俺も書いてみるとしようか」

 弾正が手にとったのは赤い短冊。そして、近くに備え付けられていた筆ペン。
 ここは自身が信じるイーゼラーの教えのために欠かせない。

 彼が書いた願い事は、『大切な人が本当の笑顔を取り戻せますように』。
 大切な人が失った笑顔を、どうにかして取り戻したい。
 そのためならば自分は何をしようと、命が尽き果てようとも戦い続けると誓いを立てるように筆ペンを走らせる。

「……もっとも、こんな事を当の本人が聞いたら無茶をするな、と言われそうだが」

 軽く笑いつつも、さて、と短冊を吊るす場所を探す。
 笹の葉は大柄な弾正が見上げるほどに高く、脚立に登らなければ高い位置には付けられないだろう。

 だが、弾正には戦場での相棒がいる。その名も絶叫戦鬼『平蜘蛛』。
 平蜘蛛に短冊を持たせて高い所へ投げると、適当なところを見つけて短冊を結んでくれた。

「あとは……俺が努力すれば、叶うということだな」

 そう呟いた弾正は、自身が書いた短冊をしばらく見つめていた。

成否

成功


第1章 第2節

ヨハナ・ゲールマン・ハラタ(p3p000638)
自称未来人

「こういう未来に思いや願いをはせる系のイベント、大好きなんですよねっ!」

 ニコニコ笑顔のヨハナ・ゲールマン・ハラタは短冊に吊り下がる願いの数々を見て、声を上げる。
 自称ではあるが未来人であると喧伝している彼女は記憶喪失ではあるもののなんとな~く、うっすら、ぼやけた未来が見えているような……そんな気がしてならない。

 そんな彼女が未来を願う皆のことを願わずして、未来人と名乗るとは何事かと筆を取る。
 この思いを表す言葉は『未来平穏』なのだが……。

「……うーん。イマイチピンと来ないような……」

 たった4文字で、その願いは叶うのだろうか?
 他の皆は未来に向けて、己の願いをぶちまけているのに?
 しかも自分じゃなくて友人のために願う人だっているのに?

 様々な考えがヨハナの頭の中を横切った。
 吊るされた短冊の群れがエアコンの風でヒラヒラと揺れているのが目に映り、余計に彼女の考えを妨げてゆく……。

「あ……良いこと閃いちゃいましたっ!」

 ヒラヒラと揺れる短冊の群れで、逆に閃きを得たヨハナ。
 そうと決まればと筆ペンの蓋を開けて、短冊に書き連ねる。

 その内容は……。

『寿限無寿限無五劫のすりきれ海砂利水魚の水行末雲来末風来末食う寝るところに住むところやぶらこうじの ぶらこうじパイポパイポパイポのシューリンガンシューリンガンの』

 ……短冊の長さが足りず、彼女の願い(?)はここで止まっていた……。

成否

成功


第1章 第3節

祝音・猫乃見・来探(p3p009413)
優しい白子猫

 大きな笹の葉を前に、儚げに見上げる祝音・猫乃見・来探。
 様々な短冊が吊るされる中、書ける場所があることを知ると1枚手にとって書いてみる。

 前に別の場所でも短冊を書いたが……そこで書いた文と全く同じ内容になってしまったので、何か違う事を追加で書こうと思案する。

「何を書こう……うーん」

 あれこれと思案して目線を動かしていると、窓の外に目が行った。
 ゆるゆるとここのんの駐車場を歩く猫の姿を見つけ、ごろりと転がる姿を見てひらめいた。

「……そうだ。猫さんの事、書こう」

 そうと決まればと、サラサラと書き連ねる祝音。
 丸く可愛らしい文字が、次々と生み出される。

 少しスペースが空いたところには猫の絵を描いて、猫の幸せを願いつつ。

『僕も皆も、幸せになれますように。
  癒し癒されますように。
   後、猫さん撫でたい。
       祝音・猫乃見・来探』

 書かれた短冊は祝音自身が届く範囲にぶら下げた。
 ゆらゆらと揺れる短冊は、エアコンの風がゆっくりと当たってくるくると回る。

「猫さん、皆に喜んでもらええると良いな……みゃー」

 可愛く鳴き真似をした祝音は、ここがどこだか思い出す。
 ここはスーパーマーケット『ここのん』。見渡すだけでも広く、品揃えがとても豊富だ。
 それならおやつを1つ買ってもいいよねと、おやつコーナーに向かって歩き出す。

 購入後はちょっと暑い外の下、猫達を眺めながらゆっくり食べたのだった。

成否

成功


第1章 第4節

ノア・マクレシア(p3p000713)
墓場の黒兎

「お願い事……なんでもいい、のかな……?」

 ここのんに飾られた短冊を見上げるノア・マクレシアは、自身の願いを頭に浮かべる。

 ……彼女の1番のお願い事――もとい夢。それは『友人を生き返らせること』。
 この願いは彼女も叶わないことはよくわかっている。無理だということは、わかっている。
 でも心のどこかではずっと願い続ける願い事だ。

 一字一句間違えずに書くことは可能だろう。
 しかしそれは叶わないとわかりきっていることだから、書かない。

 では何を書こうか?
 軽く思案していると、ふと依頼のことが思い浮かぶ。

 今まで五郎さんというくまのぬいぐるみと一緒に、いろいろな所へ出向いていろいろな依頼をこなしてきた。
 簡単な依頼から難しい依頼、果ては死にそうになるほどの危険な依頼……などなど。
 依頼が忙しくなった時に皆が無事に戻ってくることを願うのはどうだろうかと、ノアは短冊と筆ペンを手に取って書き始める。

「えっと……『みんなが、健やかにあと200年くらいは生きられますように。』」

 サラサラと書き連ね、糸を通して笹の葉に吊るす。
 200年という数字はこの世界においてはかなり長いが……異世界からの来訪が多いので、特に気にされない模様。

「……僕自身も、長生きできるように頑張らなきゃ、ね」

 小さく呟き笑みを浮かべたノアは、ゆるゆると五郎さんを撫でながらいろいろな短冊の下がる笹の葉を眺め続けていた。

成否

成功


第1章 第5節

アルプス・ローダー(p3p000034)
特異運命座標

 スーパーマーケット「ここのん」に、1つのバイクが乗り込んでくる。
 その正体はアルプス・ローダー。非戦闘時のみにバイクとして走行出来る力を持つため、ここのんにもバイク姿で乗り込んでいた。

 本来であれば驚かれるだろうが、この街は異世界の者が現れることで定評がある。
 故に、アルプスのバイク姿を見ても誰も気にも留めなかった。

「ふーむ、これが話に聞いていた……」

 笹の葉を見上げるアルプス。ちらほらと短冊は増えているようだが、まだ足りない様子。
 どうしてやろうかなと考えたが、普通に短冊を吊るすだけでは面白みがないのではないかと閃いたアルプス。
 そうと決まればと、色が同じ短冊を9枚手に取り――。

「ここは景気づけに、クソデカ短冊を吊るすことでアピールしちゃいましょう!」

 備え付けのセロハンテープで9枚の短冊をつなぎ合わせ、巨大な短冊を作って願い事を書く。
 内容は『反応が上がりますように』。……現地人からしたら、何のことだかわからないだろう。
 しかしアルプスにとっては、とても必要なのだ……反応速度、そしてそれに依存するスキルの火力が。

「よいしょ。これでいいですかねぇ」

 クソデカ短冊を吊るしたアルプス。
 セロハンテープが反射して一際目立つその短冊は、人々の目にもしっかりと止まったことだろう。

 ……なお、デカすぎて笹の葉から落ちそうになったため、翌日つけ直しが行われていた。

成否

成功


第1章 第6節

日向 葵(p3p000366)
紅眼のエースストライカー

「短冊に願い事なぁ……」

 スーパーマーケット「ここのん」の笹に吊るされた短冊を見て、葵はぽつりと呟く。
 そういえば幼い頃から自分は、と色々と過去を思い出す。

 葵は幼い頃、短冊に書いたところで願いが叶うわけがないと悟っていた。
 本当に叶うのなら人々の願いは既に叶っているわけなのだから、願いを書くことには少々否定的な部分がある。
 しかし風物詩となっている七夕をぶち壊すのも気が引けるというのがあって、無難なことばかり書いてきていた。

 今回は特に「何かを書いて吊るしてきてほしい」という話なのだから、願い事でなくとも構わない。
 なので葵は悩んだ。願いを書くか、適当な何かを書くか。

「……あー、待てよ。願いなら、これッスかね」

 少し悩んだ後、彼は筆ペンを手に取ってサラサラと書き連ねる。
 ――『親父を越える』という願い事を。

「……あぁ、クソ。思い出しただけで腹立つ……」

 父親の事を考えると、心の中が騒ぎ立てられる。
 サッカーのエースストライカーである自分よりもサッカーが上手くて、クソガキ呼ばわりしてくる父。
 自信満々に自分を見下してくる顔がチラチラと脳裏をよぎる。

 だが、それでも……葵は父を憎みきれなかった。
 逆にその自信満々の顔を歪ませてやる、絶対に負かせてやるとやる気に満ち溢れていた。

「だからよ、オレが勝つまで早死にしてくれんなよ、クソ親父」

 ニヤリと笑った葵は強い決意を胸に、短冊を吊るした。

成否

成功


第1章 第7節

すみれ(p3p009752)
薄紫の花香

「短冊に願いを書くというのは聞いたことはありますが、絵を描くのは斬新で面白いですね」

 エアコンの風でゆらゆら揺れる笹の葉と短冊を眺め、すみれは微笑む。
 ほとんどの短冊は自身の願い事が書かれていたが、中には可愛らしい絵を描いているものもあった。
 今回は「何でも書いてもいい」らしいので、このような短冊があるのだとか。

 すみれがここのんにやってきた理由は、知り合いから預かった願い事を書きに来ただけ。
 ……なのだが、絵も描かれた短冊を見て、文字で書くより絵で表現してみようと思い、筆ペンを手にとった。

「画力はそこまで無いのですが……よいしょ」

 短冊を手に取り、その願いを描く。
 チョコバナナ。千歳飴。みょうが。たけのこ。はじかみといった、細長い食べ物をサラサラと描く。
 思いつく限りの細長い食べ物を全て短冊に描くのだが、ふとここで思い出す。

「あれ……この食べ物達、どうしたいのでしたっけ……?」

 食べ物の絵を描くうちに、描いた食べ物達をどうしたいのかという本来のお願いを忘れてしまった。
 描くのが楽しくてついつい思い浮かんだ食べ物達を描いたのだが、願いを書くためのスペースが埋まったところで本来の願いを忘れていることに気づいたのだ。

「まあ……全部美味しいものですし、沢山食べられますように、でいいですね」

 枠もないですし、と文字を追加で書き連ねるすみれ。
 最後にはするめを描き、笹の葉に吊るしたのだった。

成否

成功


第1章 第8節

鳶島 津々流(p3p000141)
かそけき花霞

「おや、この世界でも七夕祭りが」

 鳶島 津々流はここのんの壁際に飾られた笹の葉を見つけてはポツリと呟いた。
 ご自由にと書かれたポップに、紐のついた短冊と筆ペンが用意されているのを見て、少し関心を寄せた。

 キョロキョロとあたりを見渡した津々流は、この場所がどのような場所なのかを把握する。
 スーパーマーケット……馴染みのない人にとっては『万屋』と言ったほうが良いかもしれない。

 人々がいろいろなものを購入しているところからなんとなく察しはついているのだが、その人々の数と吊るされている短冊の数が釣り合わないなと、津々流はふと思う。
 ……少ないのだ、短冊の吊るされている数が。

「よし、じゃあここはちょっと欲張って2枚書いちゃおうっと」

 少ないのなら、自分が多く書けば良い。その理論に応じて津々流は短冊を2枚手に取り、筆ペンを手に取る。

 彼が書いた2つの願いは、至極単純だが深いもの。
 『皆の願い事が叶いますように』と『ここのんの七夕さまがもっと盛り上がりますように』。
 自分の願いを書くよりもこちらを書くほうが皆が嬉しいだろうと言うことでこのような願いになったそうだ。

「あとはこれを吊るして、と」

 自分の手の届く場所に2枚の短冊を吊るす。
 ゆらゆらと揺れる短冊に、うん、と軽く笑みを残した津々流。
 ここのんの様子を眺めつつ、一言残す。

「素敵なすーぱーまーけっとが盛り上がってくれたら、僕も嬉しいからねえ」

成否

成功


第1章 第9節

すみれ(p3p009752)
薄紫の花香

 笹の葉につけた短冊をゆらゆらと眺めるすみれ。
 先程自分の願いではなく知り合いの願い事を書いて吊るした後なのだが、自分の願いも託そうともう1枚短冊を手に取り、筆ペンの蓋を外す。

「私の願いは……」

 つらつらと、自分の願いの筆ペンに乗せて書き連ねる。

 ――本当なら今頃は、幸せな新婚生活を送っていたはずだった。
 結婚式という晴れの舞台、その日に突然まばゆい光に包まれて……気づけば見知らぬ空の世界に飛ばされてしまい、己の運命の相手と離れ離れになってしまった。

 人生最高の日であるはずの結婚式が、いつの間にか人生最大の日に成り代わったあの日。
 イレギュラーズとしての第二の人生を歩むことになってからは、左手の薬指にはめられた指輪だけがすみれの心の支えとなっている。

「慣れてきたとはいえ……やっぱり、まだ……」

 左手の薬指にはめられた指輪は電球の光に照らされ、淡く輝く。
 まるで『誰か』がすみれを励ますかのように、きらりと。

 その願いを書き終えたあと、笹の葉に短冊を吊るして"彼"のことを思い浮かべる。
 ごはんはちゃんと食べているだろうか、毎日きちんと寝ているだろうか。
 今頃何をしているか、心配性になっていないだろうかといろいろと考えると、自然と微笑みが浮かんでいた。

「さて、それじゃあ……帰りましょうか」

 そのまま、すみれはここのんを後にする。
 ――『元の世界に戻れますように』の願いを笹の葉に託して。

成否

成功


第1章 第10節

シオン・リッチモンド(p3p008301)
嘲笑うリッチ

「短冊に願い事ねぇ……」

 笹の葉を眺めるシオン・リッチモンド。
 邪悪なリッチである自分が願いを書いたところで叶えてもらえると思えず、子供だましの願掛けだろうと眉間に皺を寄せている。
 それはまさに自己満足の行い。そんなもので願いは叶わない、期待するだけ無駄だと頬をふくらませる。

 ……とは言え、今回の依頼は『短冊に願い事をする』こと。
 せっかく来て笹の葉を眺めているだけでは依頼を達成したとはいいづらいため、シオンは短冊と筆ペンを取って書き連ねる。

「べっ、別に、ちょっとは効果を期待してるわけじゃないんだからねっ!」

 誰に言っているのか、ちょっとツンデレな呟きをしながらも書き終えた短冊をもう一度見る。
 もう一度読み直したシオンは、我ながら一体なんでこんな願い事を書いてるんだ! と顔を赤くする。

 短冊を一度隠してキョロキョロと辺りを見渡し、知り合いや両親が来ていないかを確認。
 自分を知っている者がいないことを知ったシオンは、すぐさま自分の手の届きそうなところに短冊を吊るした。

「あの馬鹿親共に見られたら絶対からかってくる内容書いちゃうなんて……バレないうちに、さっさと撤退よ!」

 もう一度辺りを見渡して、本当に知り合いがいないかどうかを確認。
 その後、急いで彼女はここのんを後にする。

 ――揺れる赤い短冊には『お父さんとお母さんとずっと一緒に居られます様に』と、可愛らしい文字で書かれていた。

成否

成功


第1章 第11節

一条 夢心地(p3p008344)
殿

「うむ、うむ。今年も七夕の季節がやってきたのう。どれ、民たちの素朴な願い事を麿に見せるが良いぞ」

 ここのんの笹の葉を見上げる一条 夢心地。
 吊るされたいくつかの短冊がゆらゆらと揺れる中、手に届きそうな短冊を1つ手に取りその願いの内容を見る。
 手にとった短冊は拙い字で『おおきくなりたい』や『つよくなりたい!』といった幼子が書いた願いもあれば、『○○さんと結ばれますように』『いい人に出会えますように』と言った、恋愛成就の願いも多くあった。

「ほっほ……どれも素晴らしき願いじゃな。せっかくじゃし、麿もひとつ吊るそうと思うのじゃが……」

 夢心地はこのままでは笹の葉に吊るされた願いが少ないと嘆く。
 そこで彼は何処からか折り紙を取り出すと、折り紙夢ちゃんの異名の名のもとに折り紙飾りを作り始めた。

 手始めに数匹の鶴を作って、ハサミを併用して投網を作ってその中に魚も飾り付け。
 他にも星飾りや貝飾り、更に星の吹き流しを作って飾り付け。
 最後に折り紙の織姫と彦星を作り、笹の葉を綺羅びやかに飾り付けた。

「うむ、うむ。では最後に麿も短冊を吊るそうかの」

 そのまま短冊と筆ペンを手に取り、自身の願いを書き連ねる。
 ――『皆が笑顔で過ごせる1年となるように』という、たった1つの願いを。

 そのまま手の届くところに吊るした夢心地は、ゆらゆらと揺れる笹の葉を眺めていた。

成否

成功

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