シナリオ詳細
魔術書『ボンボンの書』
オープニング
●幻想王立図書館カウンター
「特別魔法資料室……ですか?」
「うむ。色々と珍しい魔術書が見れるときいてな」
訝しむ司書の言葉に、肥え太った若い貴族――ボンボン・ブルボンが尊大に応える。
「案ずることはない。許可はちゃんととってあるぞ」
ど派手さを前面に押し出した高級な装い――つまり下品な出で立ちの男は、懐から一枚の書面を取り出すや無造作に放った。
「サーカスやら何やら最近騒がしいだろう? 僕も何か貢献したくてな。だけど生憎と僕は非力だ。荒事には向いてない。
だけどここなら、何かいいアイディアが見つかるかもしれないと思ってな。もしかしたら、魔種とやらを一網打尽にできる禁断の魔術なんかもあるかもしれない。これでも魔法には自信あるんだ」
仮にそんな都合よい魔術が存在し簡単に見つかるのものなら、とっくに魔種は滅んでるだろうに――そんな自明の理を微塵も思いえがくことなく、貴族の男はとびっきり軽薄な笑みを浮かべる。いっそ清々しいほど根拠のない自信に満ち溢れていた。
「はぁ……」
曖昧に頷きながら司書は書面をまじまじと確認する。残念なことに、どうやら本物の許可証に間違いなかった。
あまり知られてはいないが――さらに利用する者となると皆無であるが、ここ幻想王立図書館には特別魔法資料室なる地下フロアが存在する。堅く閉ざされた扉の向こう、地下へと続く階段の先には図書館が所蔵する数多の魔術書の中でも危険性の高いと思われるもの、焚書禁書の類、よく判らないが怪しげな何か等が多数収められており、閲覧許可は容易く下りないのが常である(もっとも真に危険極まりないと認定されたモノに関しては、図書館外のそれなりの場所に移管され厳重に保管されるのだが)。……常ではあるのだが、無理が通れば道理が簡単に引っこむのも幻想、貴族が権力やコネを使えば許可がすんなり下りるくらいには腐敗もしている。
「危険なモノもありますからね? くれぐれも気をつけてくださいよ?」
許可証が本物である以上、一職員である司書にそれを拒む法はない。鍵を取り出すと、資料室へと続く扉へ向かう。
「うむ。任せるがよいであるぞ」
フハハハハと貴族は高らかに笑いながら扉の向こうに消える。
「やれやれ。何事も起こらなければいいが」
彼の階段を降りる足音を聞きながら、司書は呟かずにはいられなかった。
「おや? 『ボンボンの書』だと? なんとも僕に相応しいタイトルの一冊じゃないか! どれどれ」
灯りはともるものの何とも薄暗い特別魔法資料室。とある書架でたまたま見つけた魔術書を手に取ると、ボンボンは閲覧席へと向かうのだった。
●ギルド『ローレット』
「皆さん、事件です。依頼なのですよ」
ローレットの『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)が依頼書を読み上げた。
「人質です。反乱です。立てこもりなのです」
さてはサーカス絡みか? 身構えたイレギュラーズたちに緊張が走る。
「魔術書『ボンボンの書』がボンボンさんに憑依しちゃったのです!」
(……)
(なんだ、またよく判らない依頼か……)
一気に弛緩するイレギューラーズたち。
いやいや、貴族が人質になっているのだ。もっとこう……うん、なんだ、仕事をするうえで緊張感は大事だと思うな。
依頼書よると、依頼主はブルボン子爵。その嫡男であるボンボンが魔術書『ボンボンの書』に意識を乗っ取られ人質にされている、とのことだ。
「その貴族さん、こっそり図書館に持ち込んだピザやらポテチやらフライドチキンを食べながら魔術書を読んだらしいのです。脂だらけの手でベタベタにされ食べ屑で汚された魔術書さん、それで怒ったのです。ボクもそんな手で触られたら嫌なのです」
ユーリカが頬を膨らませプンプンしながら続ける。
「ああ、うん。気持ちは判るけどな……」
ボンボン、どんだけ持ち込んだんだ!? 何とも締まらない依頼だが、依頼は依頼だ。子爵も貴族の体面上、事を大きくするつもりはないようで、ローレットにて秘密裏に処理する腹なのだろう。
「依頼内容は、人質のボンボンさんを無事に救出することなのです!」
- 魔術書『ボンボンの書』完了
- GM名茜空秋人
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2018年06月30日 21時20分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●交渉か戦闘か。集うイレギュラーズ
「人の皮張りの怖い本やけど、矜持を傷つけられたんなら怒るのもしゃあない」
気だるげに『兎身創痍』ブーケ ガルニ(p3p002361)がお面に手をあてる。自身をモデルに作ってもらった兎のお面は、ブーケのお気に入りのアイテムだ。
「暴力は嫌いやさかい、できるだけ戦闘にならんように話し合わなね」
まず特徴的なのはお面であるが、次に包帯やガーゼが目立つブーケ。生傷やアザが絶えないのだ。それが理由という訳でもないだろうが、生来暴力が嫌いなブーケは説得交渉路線で望むつもりでいた。
「まあ、本の気持ちになってみれば、粗雑に扱われれば怒るよねえ」
魔法少女の『特異運命座標』アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)も同調する。基本的に争いは好まない性格にくわえ、魔法少女で読書好きなアレクシアにしてみれば貴重な魔術書を雑に扱うこと自体が好ましくない、というか有りえない行為だ。魔術書『ボンボンの書』に斟酌的にもなる。
「要求の中身が人の死などに関することで無ければ、ある程度は飲んであげてもいいと思いマスぅ」
『不運な幸運』村昌 美弥妃(p3p005148)が二本の長いアホ毛をピョコピョコさせる。見た目は10歳くらいの子供にしか見えない145cmの小柄な身体には、ゴスロリ姿が可愛らしく似合っている。
「ナーちゃんも、こうしょうでいいとおもうのー」
人外じみた見た目の『アイのミカエラ』ナーガ(p3p000225)が頬のエラまで裂けた口から、およそ似つかわしくない幼い少女然とした言葉を発する。
ナーガは身長2m、筋骨隆々で古傷まみれの体躯――荒々しい長髪と蛇のような眼をもち、大きなショベルを装備している。これがギャップ萌えってやつか!? 彼女は見た目と裏腹に、とても純粋無垢な少女であった。
「聞いた感じ、待遇向上が一番の目的みたいだし、ボクもそっち方面で何か考えてみっかー」
褐色の肌に砂漠風の衣装、傭兵出身の『名探偵』クロジンデ・エーベルヴァイン(p3p001736)も、交渉策を思案中だ。
(意思を持った魔導書かー。うちの父なら欲しがりそうな本だけど案外すでに読破済みだったりしてねー。どうであれ家出中のボクがラサまで持っていくわけにもいかないしねー)
魔術書を実際館外に持ち出せるかどうかはともかく、司書や関係者との打ち合わせも重要だなー、とクロジンデは思うのだった。
(魔術書ボンボン……。なんという興味を引かれないタイトルの魔術書でしょう、逆に気になりますね。どんなクダラな……っとあぶない……あぶない……。お約束が待ち構えてる気がします。慎重に……慎重に……)
どこか浮世離れした印象をもつ陰陽 の 朱鷺(p3p001808)。
「要求は待遇、環境、報酬ですか。報酬だと、私の報酬が減るかもしれないので……待遇と環境で試してみますか」
朱鷺の心情を慮った式神が、『シリアス路線でがんばるよ!』と文字の形をとって朱鷺右斜め上に具現化していた。
「本さんもちょっとかわいそうかも。でも人を憑依しちゃうのはやりすぎ。だから今回は悪い本なら改心させるのがボクの役目だね」
愛と正義の魔法少女、『魔法騎士』セララ(p3p000273)が持ち前の正義感を発揮する。魔法少女は小学5年生! 現在アニメ2期絶賛放映中!(元世界でだがな)
もっとも、まずは『ボンボンの書』が良い本なのか悪い本なのか判断する必要がある。どのみち交渉は不可欠といえた。
「ボンが多すぎて何やらまぎわらしい依頼なのですが、ポテチを食べた手で触られたら怒ると云う件については同意できるのです。しかし、普通は無生物が怒る可能性なんて考慮しない、と云うのも分るのです」
『自称・旅人』ヘイゼル・ゴルトブーツ(p3p000149)がイレギュラーズの意見をまとめにはいる。そもそも図書館に食べ物を持ち込むな、といった当前のことは歯牙にもかけないあたり優等生然としたヘイゼルの本質が垣間見える。彼女は、その本質において、自由な人間なのである。
「今回は荒事にせずに収められる可能性は十分に有りますので、なるべく交渉でどうにかしたいところなのです。皆さんも異論はなさそうなので、まずは交渉からということでよろしいですか?」
他人の心が分らないなどと揶揄されたこともあるヘイゼルは、自分が感情的な方との交渉は苦手だと自覚している。それ故に、ヘイゼルは主に議事進行係として動くつもりだ。
●イレギュラーズは頼み込み、司書さんにも同席してもらうことにした。
コツン、コツン――。
司書の案内の下、扉をくぐり足音を立てながら薄暗い階段を降りた先――特別魔法資料室、そこに『魔術書ボンボン』を持った魔術書ボンボンに憑依されたボンボン(ええい、ややこしい! 以下ボンボン)が待ち構えていた。憑依されているからか青白い顔色には生気が乏しく、恰幅のよい肥えた体躯とは不釣り合だ。
「……何奴じゃ?」
「初めまして。私はイレギュラーズのヘイゼルと申します。私たちは交渉に来ました。まずは、あなたとお話がしたい」
閲覧席での交渉を提案するヘイゼル。ボンボンはそれを受け、一行は交渉のテーブルに着く。
「まずはボンボンさん、貴方の要求を聞かせていただけますか?」
まずすべきことは相手との交渉に応じる意を示すことなのですと、切り込むヘイゼル。相手は人皮の魔術書。要求が非人道的なものの可能性もあると、決して油断はしない――油断はしていなかったのだが、それはあくまでボンボンに向けられた警戒であり、味方に向けられてはいなかった。
「ホンがしゃべるなんですっごーい! ナーちゃん、かんどーしちゃった! はじめてみたよ!」
居並ぶ皆の意表をついて、ナーガがはしゃぎはじめた。
「せんせーってよんでいい? いいよね! せんせー、せんせーをよめばナーちゃんもマホウがつかえるようになるのかな?」
本は読まれてこそ、知識を授けてこそその本領を発揮するものだと考えたナーガの発言は、純粋に知識を得てみたいというだけで決して悪気はないのだが、人外じみた容貌からは想像できない台詞のギャップに、一同の空気が緩む。
「……?」
ボンボンも例外ではなく、いきなり毒気をぬかれている。
それを見逃すイレギュラーズたちではなかった。ボンボンを持ち上げるつもりだったイレギュラーズたちが、ここぞとばかりに尻馬にのる。
「うわぁー、ボンボンの書かぁー。なんて素晴らしい名前の魔術書なんだぁー。きっと価値ある魔術書に違いないぞぉ。欲しいなぁ」
とりあえず誉めとけ、と心にも思ってもいない台詞を臆面もなく口にする朱鷺。
「う、うむ。我は真理の探究者にして叡智を極めんとする魔道書なり。求る者に、神秘の一端を授ける書である」
「そないすごいおひとがこがな辛気臭いとこに死蔵されてはったん……センセイって呼んでもええ?」
畳み掛けるようにブーケがヨイショする。
「わーい、せんせー!」
「蒙昧な俺たちじゃ、センセイの価値も正しく理解出来へんのや、堪忍なぁ」
「う……うむ。判ってもらえるならやぶさかではない」
ナーガ、朱鷺にシナをつくったコケティッシュな笑顔でブーケが続く。
「な……」
誉められることに慣れてないのか、思わずボンボンはタジタジだ。
「なるほど、センセイにとってこの配架は正しく役不足やったんやね。でなー、センセイ。俺、考えたんやけどねー、今までみたいに来るかわからへん限られた知識人だけがこの部屋に来るのを待ち続けるのと、センセイが憑りついてるようなボンクラが来るかも知れへんけど知識を求める者にはもっと門戸を開くの、センセイやったらどっちがええ?」
ここぞとばかりに『椿姫』の本領を発揮するブーケ。性的魅力と誘惑の効果をフルに使い、ボンボンに好意を抱いてるように振る舞う。交渉のコツはこちらから選択肢を出して選ばせることで他の選択肢を検討させないことだと、このまま王立図書館に大人しく残るようにさりげなく誘導するあたり、実に抜け目ない兎さんである。
「ち、ちかいちかいちかい!」
例えば没頭型の研究者には色事に縁がなく、人とのコミュニケーションも不得手といったステレオタイプが存在するが、魔術書もその類なのか。顔を近づけ、好意を演出するブーケの前にボンボンはしどろもどろだ。
意外にチョロいボンボン。まずは交渉のイニシアティブは、イレギュラーズたちが取ったといえる。
●「我は偉大なる知識の書として、もっと人に読まれたいのである!」
「キミが良い本なら高待遇とかも検討するよー。キミにはどんな内容が書いてあるのかな?」
好待遇を要求するなら、それにあった能力が必要なのは当然のことだとセララは考えた。何が出来るのか、まずはそれを把握しないとね。
「……コホン。我は叡智を極めんと、神秘の真理を探究する研究書である。我には善悪、人の世の良し悪しなど無意味な概念である」
「それって、読む人次第ってことだよね。それだとやっぱり、誰にでも解放ってわけにはいかないかなー」
「でも、要はちゃんと使って欲しいってことだよねー。そのためにはまずこの薄暗い特別魔法資料室をもっと人が寄り付くようにしなくちゃねー。今は意図的に人を遠ざけてるレベルだよー」
予め司書に特別魔法資料室改革案を相談していたクロジンデの主張。ゆくゆくは魔術師の組織などに組織単位で長期の閲覧許可を出せば、利用機会も増えるのではというプランを出す。
「とは言っても、安全対策も重要だし最初は仕分けかなー。ヤバい奴と問題ないのに魔法資料室自体を別けたいところー。そうすればヤバくない方は一気に許可を出しやすく出来るー」
危険度に応じてランクを付けるということで、確約はできないが上と相談してみますと司書も応諾済みだ。
「私も人が来なくて利用者がいないことが不満なら、人が来るような場所に移管するか、特別魔法資料室を改装するのがいいと思うな。そもそも人目に付く場所なら、今回みたいな扱いも絶対ないと思うんだよね」
読書好きのアレクシアも、ボンボンに好意的だ。
「ボンボンの書さんがそもそもどういう本なのかっていうことも知りたいな。それに、この部屋は『危険性が在ると思われる』本があるってことだから、こうしてお話をして、普通に扱ってれば危険じゃない本ってわかれば何かと便宜も図りやすくなると思うんだ」
そもそもその知識……内容を求めてあげるのがボンボンの書さんと友好的に接する上で大事なんじゃないかなって思うアクレシアだった。
「あと個人的に魔法の事をもっとよく知りたいから、お仕事じゃなくても魔術書の類ならだいぶ興味があるな。今度個人的に読みに来てもいいかな?」
「うむ。大歓迎である! 我は偉大なる知識の書として、もっと人に読まれたいのである!」
性的魅力と誘惑の効果も発揮したアレクシアを前にして、ボンボンの本音が爆発した。
「それなら、ワタシが今、ボンボンさんを読んでみてもいいでしょうかぁ?」
こちらも純粋な興味から美弥妃が名乗り出ると、御丁寧に白手袋をつけ否応もなくボンボンの書を手にとり読み始める。
「人皮とか気にならないのですか?」
「動物の皮で出来ている本もありマスからあまり気になりませんねぇ」
ヘイゼルの問いにあっけらかんと答え読み進めていく。
「少し難しいデスぅ、どういうことでしょうかぁ?」
それ相応の専門知識が要求されるのが魔術書というものである。難解な部分を質問するヘイゼルに対し「こんなことも判らぬのか……」と言いつつ、まんざらでもなさそうなボンボン。生徒に教える教師といった感じで、少し活き活きとしてきた。
「ありがとうございますぅ! ボンボンさんはすごいんデスねぇ」
美弥妃の見え見えのヨイショであるが、ボンボンの生気の乏しかった顔は見違えるように満足そうになる。
●チョロい、チョロすぎだよボンボン
ボンボンとまずは友好的な関係を築けたといえるイレギュラーズが、ここでだめ押しとばかりに攻勢をかける。
「人に読まれたいなら人を害する要素を捨てること! 人皮とか可愛くないよ! 今なら間に合うよ。人に愛される本を目指そう! ボクに任せて貰えば動物さんブックカバーとか、ポプリとかで可愛い人気の本に出来るし! なんだったら挿絵を描いてあげてもいいよ」
「う、うむ。だが、挿絵は御免こうむる」
セララの提案は本の改造はちょっと、という司書に却下されたが、セララ特製のお花の栞がブルボンに装備された! チャラララッチャラー♪ ブルボンは少し可愛くなった!
「歴史的に価値ある一冊になぁーんて油を塗りたくったのでしょう。懇切丁寧に拭き取ってあげますねー。だから機嫌なおしてくださぁーい」
朱鷺が魔術書を物理的にケアする。人皮の表紙を磨き、ポテチの油を拭きとり、ついでに治癒府! 治癒府! 治癒府! と色んな意味でボンボンの回復を図る。
「見違えったようです。なぁーんて素晴らしい魔術書でしょう。この記念に似顔絵? を書かせて貰います。私に絵心はありませんが、きっと、アートでビューティフルな絵を書ききってあげます」
さらに朱鷺は綺麗になったブルボンの写生? 似顔絵? を書き始めた。
「喋る魔術書ってそういえばレアで貴重ですね。図書館の本じゃなかったら、私が所有したいくらいですね」
最後までヨイショを忘れない朱鷺だった。
「やっぱり宣伝が大事だねー。もっと広く知ってもらわないとねー。ローレットに宣伝を依頼するって手もあるよねー」
「薄暗い雰囲気も悪いと思うのよねえ。もうちょっと明るくして、掃除とかもしないとだよね」
クロジンデとアレクシアは司書と今後の対応について打ち合わせる。
「はーい。ちからしごとならナーちゃんとくいなの!」
ナーガは他の蔵書に手を触れたりせぬよう注意を払いながら(『コロコロの書』なる不思議な魅力を放つ書物が目に入ったりもしたが、誘惑に負けることなく)、その怪力で積極的に掃除を行うのだった。
「どうでしょう、色々とご不満もあるかと思いますが、ボンボン氏を解放していただけないですか?」
最後に議事進行役としてヘイゼルが交渉のまとめに入る。
「うむ……。我は久しぶりに楽しい一時を過ごさせてもらった。礼を言おう。だが、二度目はないぞ?」
「ありがとうございます!」
「わーい、せんせー、ありがとう!」
「センセイ、ほんまにおうきに!」
ボンボンの書は、ボンボンの憑依をとき解放する。
「キミはもうちょっと、ルールってものを知らないとね。これからお説教だよ」
未だ意識が醒めきらずまどろみの中にいるボンボンの重たい身体を、愛と正義の魔法少女セララが特別魔法資料室から連れ去って行く。これから司書とともに厳重注意とお説教タイムだ。
「もう行ってしまうのか……?」
ボンボンの書が、ボツリと呟く。本当は、人寂しいのだ。
「約束だよ。今度、読みにくるよ!」
「司書さんと話し合った結果、これから徐々に改善されるはずです。ここも少しは賑やかになると思います」
「そうか……ありがとう」
ボンボンの書はイレギュラーズたちに感謝の言葉を述べる。
特別魔法資料室の環境も司書たちの手により、良くなっていくだろう。
最後に。特別魔法資料室にいつの間にか『魔術書ボンボンの書』なる漫画がこっそり並べられていたことを付しておく。著者にはセララと記されていた。
『ふっふっふー。これでボクの名作が特別魔法資料室に保管されたのだ!』
Congratulations!
こうしてイレギュラーズの奮闘により依頼は達成されたのである。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
依頼お疲れ様でした。
全員が説得交渉を試みることにより、今回はこうなりました。
また、ご縁がありますように。
GMコメント
図書館ではお静かに!
ポテチ食べながらPCとか触っちゃ駄目!
自戒をこめつつ茜空秋人です。
以下、シナリオ補足情報です。ご活用ください。
●情報精度
Cです。情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。
具体的には、危険物が他にもあるかもです。依頼遂行に必要ない場合、迂闊に他の魔術書などに触らないほうがよいかもしれません。さらなる面倒事が巻き起こる可能性があります。
●依頼成功条件
人質、ボンボンの救出です。
考えられる解決策は主に交渉、戦闘、それ以外などありますが、手段は問いません。
ボンボンが死亡すると、依頼は失敗になります。
●魔術書『ボンボンの書』
人の皮で装丁された、それなりに霊格の高い魔術書。
今はボンボンに憑依し、彼を人質に要求を出している。
曰く「我は真理の探究者にして叡智を極めんとする魔道書なり。然るにこの扱いは? 永いこと――我は永いこと暗い書架の片隅で共に真理を極めんとする者を待っておった、待たされてきた。その挙句が、この脂だらけの醜く肥え太った愚者であるか!!!? 我慢ならぬ! 我は要求する。より快適な待遇を! 環境を! 報酬を!」だそうです。
●ボンボン・ブルボン
完全に憑依され、解放されるまでは本人の意識が表に出てくることはありません。
戦闘の際は、ボンボンと『ボンボンの書』は同一として処理されます。
●特別魔法資料室
幻想王立図書館から扉を開けた先の階段を降りた地下にあり、一辺が10Mほどの正方形の部屋です。所狭しと書架が立ち並び、片隅に申し訳程度に少人数が座れる閲覧席があります。
魔法による灯りはありますが、雰囲気的になんか薄暗いです。
資料室扉の外に一人、その他に二人の図書館常駐の警備兵がいますが、基本的に依頼中に彼らが地下に降りてくることはありません。図書館職員もそれに倣います。
●交渉の場合
交渉を成功させるには、イレギュラーズは『ボンボンの書』を満足させる必要があります。
是非、スキルやギフト等も活用し、魔術書が納得する状況を想定し作りだしてください。
●戦闘の場合
交渉に失敗すると自動的に戦闘での解決になります。最初から戦闘を選んでも構いません。
メタ情報になりますが、戦闘に突入すると『ボンボンの書』は魔法を使って一時的に自身とイレギュラーズ達を亜空間に移します。これは他の魔術書に被害を及ぼさぬための行動です。亜空間は充分に広く、レンジ4スキルも問題なく使えます。遮蔽物などは一切なく地形的な補正がかかることもありません。
前述のとおり、ボンボンと『ボンボンの書』は同一として扱われ、魔術書を抱えたボンボンという形になります。
HPが残り少なくなると(目安としてHP残り5~10%)『ボンボンの書』は降伏し、憑依を止めます。
念のために【不殺】スキルの使用をお勧めします。
・ボンボン/『ボンボンの書』
魔術書として攻撃力、APともに高く特殊抵抗も高い厭らしい敵ですが、反面、憑依先がボンボンなだけにHP、反応、回避などは低いです。
魔術書のカドで殴る(物至単)
魔術書の怒り(神中域)大威力
魔術書の嘆き(神至単)【混乱】【飛】
・亜空間の守護者×7
『ボンボンの書』が作り出した亜空間を守護するモノたち。『ボンボンの書』に準じて攻撃力は高いがHPは低いです。
最低一体が常に『ボンボンの書』を庇う動きをします。
特にBSはなく、神中単、神遠単の攻撃を行います。
●アドリブ
アドリブ描写が用いられる場合があります。
プレイングやステータスシートにアドリブ度合、『アドリブNG』等記入くだされば対応いたします。
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