PandoraPartyProject

シナリオ詳細

誰も彼もが生きたかった

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


「何人死んだんだよ……こんなっ、相手が何なのかも解らない様な戦いでっ!」
「それ以上は止めろ。ロウアー……」
 ロウアーと呼ばれた男は涙を流しながら叫ぶ様に、これまで貯め込んで来た物を吐き出す様に止まらない。
「誰も好き好んで、こんな銃(モノ)を抱えて戦場に出たいだなんて望んでなかった! あ゛、あなただって……娘さんに、あ゛いだ゛いって……!」
 その言葉を聞いた男は脂汗を浮かび上がらせながら、くはっ、と笑って言葉を紡ぐ。
「あぁ、そんな事を言った事もあったな……何処かでライターを落としちまったな……貸してくれるか」
 ずっ、と鼻水を啜る音が聞こえる。目の前に居る部下は、生まれる時代を間違えたのだろう。
 きっとこの男は平時であれば良い女性と結ばれ、良い友人に祝福され、幸福な人生を歩む事が出来たのだろう。
 ──こんな時代に生まれて居なければ。

「ロウアー、最後の命令だ……これは重要な任務だぞ。俺にはもう出来ない、お前にしか出来ん任務だ」
「止めてくださいよ! 聞きたくない!」
 紫煙がゆらゆらと煙草から立ち昇る。もう殆ど痛みは感じない。

 自分は家族の元には帰れない。必ず帰ると約束した筈なのに、この場から立ち上がる事すら難しいだろう。
 瞼を泣き腫らしながら、行くのは止めて下さいと懇願する妻にそれでも行かねばならないんだ、と言い聞かせた。
 次の休みには一緒に遊ぼうと約束した子供には「嘘つき」と言われて見送りすらして貰う事が叶わなかった。
 父親として俺はきっと失格な男だ──それでも、少しでも彼女らを危険から遠ざけたかった。

「ロウアー……お前は、生き残れ。これは命令じゃないぞ。お前にはこう言った方が効くだろう?……俺からの“お願い”だ」
「ズルいですよ……皆して格好つけて、お前はまだ若造だから死ぬなって言うんですか? お前が弱いからって、俺が強いからお前はすっこんでろって言って俺を庇って! 最後にはこんな役目、押し付けないで下さいよ!」
 ああ、そうだな、とその言葉を聞きながら苦笑する。俺の戦友はどいつもこいつも馬鹿野郎だった。いや、愛すべき大馬鹿野郎達だった。
「……時間が無いんだ。はい、YES以外は聞きたくない。頼む……俺の耳が、聞こえるうちに」
「……………………解りまし、ッ!」
 大きな地鳴り、振動音が二人の耳に届き、ぱらぱらとビルの欠片が降り注ぐ。──遠からずこの場所にも“奴ら”がやって来る。

「行け……」
「でも」
「──でももへちまもあるかあッ! お前が未来を繋げッ! お前だけが俺達を未来へと連れて行けるッ! 走れッ!」
 怒号にも近い声が響く。ロウアーに僅かな逡巡は感じたが、それでも駆け出した音に安堵する。
 ……全く、最後まで世話に焼ける奴だった──願わくば俺達の未来が、奴の命が未来に繋がる事を。神様なんざ、一度だって信じた事は無いが最後くらいは祈っても良いだろう。

「God bless you」

 轟音と同時、男が居たその場所は崩れていく。
 男がその場にいた形跡はこの世界から跡形もなく消えていく。
 それでも、この世界に居たという記録は奴がきっと届けてくれる。

 そんな一つの命の願いを叶える為に、この世界に存在しない筈の彼らは呼び出される事になるのだった。


「この世界は人類と……モンスター達とが戦っている世界だそうです」
 既にこの世界の人類の生存領域は5割を切っている。それでも彼らは生き残る為に、未来を繋げる為に戦い続けている。
「皆にして欲しい事は、男の人を助けて欲しいんです。この物語の、この世界の希望の一つになり得る存在です」
 彼は、化け物達がひしめく領域で何とか人類の生存領域まで逃げようとしているらしい。
 しかし、このままでは恐らく化け物達に殺されてしまうだろう。

「この世界が戦いに勝つには、幾つもの希望の光が必要なんです。けれど、このままだときっとバッドエンドで終わってしまいます。でもボクは、めでたし、めでたしで終わる物語が好きなので」
 だから、皆を呼んだのだとレギアは言った。
「力を貸してくれますか、特異運命座標──この世界を救う為に」

NMコメント

 どうも、もふ太郎です。リクエスト有難うございます。
 お気に召しましたら幸いです。

 相談期間は短めとなっておりますのでご注意下さい。

●世界観
 世界は時代背景は現代に近く、地球に似た惑星になります。
 しかし、この世界では化け物が突如として現れ、人類の生存圏の5割以上を浸食しています。

 人類はそれらに抵抗すべく、銃や兵器を使い、モンスターと日々戦い続けています。

●今回の戦場、目標について
・初期スポーン地点は廃都市の入り口からスタートです 
・OPにも登場した男性、ロウアーの救出が目標です。初期位置は不明、もはや廃墟だらけの都市の中から彼を見つけ出しましょう。
・救出後はロウアーの指示に従って、人類生存圏まで移動すればOKです。
・ロウアーの探索、そして確保後に関わらずモンスターに襲われる可能性があります。十分に警戒してください。

●ロウアーについて
 この世界をハッピーエンドに導く為のキーの一人。20代前半の男性。
 戦う事は出来ますが、小型の魔物に囲まれてしまったら殺されてしまう程度の実力です。

●現れる敵について

・小型の蜘蛛のような魔物や、小鬼の様な魔物。一戸建て程度の巨人型の魔物などが現れます。
 蜘蛛の様な魔物は遠距離攻撃を仕掛け、巨人は物を投げて来る可能性がある為に近接攻撃だけを警戒するのは止めた方が良いかも知れません。
・中には指揮を執る様な個体も見つかっている様子ですが、見分けのつけ方が解っていません。

●プレイング
 書き方などはご自由にして下されば構いません。
 キャラクターの呼び方など、その他特別拘りがある部分に関しても記載があれば助かります。
 設定欄なども確認は致しますが、主に見るのはプレイングになると思います。

 特にアドリブNGと記載が無い場合、戦闘部分などで他のPCやNPCとの絡みなどが発生する場合が御座います。

●その他
 スキルの略称など、そういった物に関してはもふ太郎が分かる様にして下さればOKです。

  • 誰も彼もが生きたかった完了
  • NM名もふ太郎
  • 種別リクエスト(LN)
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年07月11日 22時05分
  • 参加人数4/4人
  • 相談6日
  • 参加費---RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

コラバポス 夏子(p3p000808)
八百屋の息子
フラン・ヴィラネル(p3p006816)
ノームの愛娘
ルカ・ガンビーノ(p3p007268)
運命砕き
タイム(p3p007854)
女の子は強いから

リプレイ


「奇遇だなレギア。俺もハッピーエンドの方が好きだぜ」
 この物語をハッピーエンドにしたいんです、と頭を下げる小さな竜に『竜撃』ルカ・ガンビーノ(p3p007268)は手を伸ばしてわしわしと撫でてやる。
 あのニーサンを助けりゃ、ちったぁマシな結末になるっつーんなら、やってやろうじゃねえか、と何処か愛嬌のある笑みを浮かべながら彼は快諾する。
「うん、あたしもバッドエンドはやだ。ロウアーさんを助けて、めでたしめでたしってハッピーエンドにしよ!」
「喪われたものの多いこの世界。でも希望はある。わたし達は未来を繋ぐ助けとなる為に呼ばれたんだから。ふふ、そうよね?」
 『青と翠の謡い手』フラン・ヴィラネル(p3p006816)と『優光紡ぐ』タイム(p3p007854)もまたルカに同意する。

(何処行っても人ってのは戦ってんなぁ……どうしたってナニカ奪い合いになるのは、生きとし生ける者の宿命なんスかねぇ……)
 少し3人から位置を離れて、『八百屋の息子』コラバポス 夏子(p3p000808)は今回赴く世界へと思考を巡らせていた。
「夏子さん?」
 すぐに承諾をするでも無く、少し間のあった夏子にタイムが声を掛ける。
「いや~別に。別世界で劣勢の我々だと思って、ハピエンの一助になっちゃおうね」
 世界が変われば戦う相手も変わる。立場が変われば、敵が同じ人間という事だってあり得るのだ。
 少なくとも今回はそうでなかったというだけで。
 暇な毎日のなんと尊いコトか。どうせ助けに行くのであればこの世界も何時かはそうであれと願わずには居られない。

「良し、行くか」
 何処に、とは誰も返さなかった。
「うん、がんばる!」
 ハッピーエンドを、物語をめでたし、めでたしで締めくくる為に──ヒーロー達は物語へと介入する。


 パーティが選んだ選択肢は、能動的にロウアーを探し出して合流する事だ。
「欲を言えば 女性が対象だともっと気張れたんだけどねぇ~」
 美人でさらに此方にも好意的になってくれるならいう事なし! とまでは言わなかったが夏子は平常運転だ。
「こんな時でも夏子先輩はいつも通りだねぇ」
「安心な様な、そうじゃないような……」
 夏子に聞こえない様にタイムが呟いている。乙女心はちょっぴり複雑なのだ。

「敵が沢山居る様なところは避け……あっ」
 広域俯瞰を使って周囲を探索するフランの足元に段差があったのか、足が何かに引っかかり、前に倒れそうになる。
 衝撃が来る事を覚悟して、目を瞑ったが一向にその気配が来る事は無い。むしろ、何かに支えられた様な……?

 恐る恐る目を開くと、目の前にすぐ近くには見慣れた顔。何時も、不思議と追いかけてしまう赤い瞳と目が合った。
「──……!」
「気をつけろよ。傷でもついちゃあ可愛い顔が勿体ないぜ」
 上手く身動きが出来ないまま、ルカは彼女を立たせてスッと身体を離す。
 自分の奥から出ている音が、彼に聞こえないかどうかが気掛かりだった。
「……あ、ありがと、ルカさん」
「どう致しまして、だ」
 そう笑って言葉を返す彼の顔を、少しの間だけ直視するのは難しそうだった。
 

「君達は……?」
 パーティが蜘蛛や小鬼の魔物を蹴散らした様子を見ていたロウアーが接触して来た。

 夏子とタイムの人助けセンサー、そしてフランの広域俯瞰による探索は順調に進んでいた。
 さらには狭い廃墟の中などに関してはファミリアーによる念入りな探索のおまけつき。
 散発的な戦闘はあったものの、これまでの戦いで大きな消耗は無く、これで目的をひとつ達成する。

「味方 って考えて貰って差し支えないよ」
「通りすがりのヒーローってやつだ。お前さんは無事に送り届けてやる」
 不思議とその言葉に嘘は感じない。彼らの目には嘘が無い。
「あなたを助けに来ました! ここから脱出をします」
 信用、しても良いのだろうか。自分一人ではきっと此処からは抜け出す事は難しい。託されたのだ。色んな人達から。
 未来を。自分達が居たこの世界を守って欲しいと。
 
「なんかね、お願いが聞こえたの。未来を繋いでほしい、って」
 一緒にここを抜け出そう、そう言ってフランから差し伸べられた手に一瞬泣きそうになる。

「助けて、くれますか」
 この人達に騙されたのなら、きっと俺はもう諦めがつく。
「あたし達、すっごく強いんだぁ。だから絶対、守り抜いてみせるよ!」
「今までよく頑張ったわ。もう平気よ。さ、あとひと踏ん張りっ」
 絞り出す様に出した声に、彼女らは励ます様に返事をくれた。 
「はい!」
 必ず生きてこの場を出るんだ。彼らと共に。

● 
 ロウアーと合流して暫く移動して後、蜘蛛と小鬼の様な姿をしたモンスターが彼らの元へと集まって来ていた。
 或いは存在を魔物に知られたのかも知れない。

「頼むぜ、夏子! タイム、いくぜ!」
 巨大な両手剣を肩に抱え、進軍するは滅竜誓刃の砂侠、ルカ・ガンビーノ。
 本来であれば片手では扱えぬ代物を操るその膂力はおおよそ人の肉体に収まり切らない。
 だが、彼は違う。彼が剣を振るえば、容易に敵の肉は裂け、その骨すらも打ち砕く。
 攻撃と共に発せられる咆哮は仲間を鼓舞し、敵陣を畏怖に与え、味方に勇気を抱かせる──それはまるで物語の英雄の様に。

「夏子さん、お願いね」
 慈愛の煌めき、タイムがその手に担うは勝利と栄光の象徴たる指揮杖。
 かつて不死身の軍団を指揮した者が手にしていたと言われるその杖は、踊るかの様に自然と仲間への指揮を行わせてくれる。
 仲間を想い、僅かでも怪我をする事が無い様にと振るわれる指揮は仲間を勝利へと確実に一歩ずつ進ませる。
 ……夏子へとかけた声に僅かに憂いが帯びている事に気づいたのは、恐らくはこの場ではフランくらいな物だろうか。
 敵の攻撃の矢面に立つ夏子に、乙女の祈りが降臨する。攻撃から身を守るだけでなく、彼女自身の祈りも込められた一級品だ。貫くのは決して容易な物ではない。

「オッケー、女性に悪い虫は寄越せないワケ」
 魔物の群れに対するは波濤自在の戦士、コラバポス 夏子。
 敵の注意を引き、さらには繰り出された攻撃を盾を使って上手くいなし、或いは避ける。
 うねる大波をも自在に操る様な防衛技術、その力すらも利用して相手を翻弄。
 普段の仕草や口調も相まって、見る者からすれば彼は軽やかな風の様な男でもあった。
 ──瞬間、振るった攻撃から炸裂音と光が明滅する。それは威力を伴わない只の効果演出。
 しかし、情報としてそれを植え付けられた相手はそれに警戒をせざるを得なくなる。これもまた彼の思考の内だ。

「警戒は任せて、ばっちり支援するね!」
 柔光携える少女、フランはそんな仲間達に邪魔が入らぬ様に警戒をしながら必要な支援方法を選び、手を閃かせる。
 彼女が特異運命座標とはいえ、その領域に至るはどれだけの研鑽が必要だったのか。
 ──望んだ事を叶えられなかった事もあるだろう。ただ、絶望を払って来ただけでは踏み込めない場所に彼女は立っているのだ。

 魔物の群れの中で快進撃を続ける中、小鬼や蜘蛛ではなく巨人の姿を模した敵が現れる。
 されど、突如として現れたそれに気づくは注意を割いたフランのみ。
「ルカさん、危ない!」
 理由はそれを語るは無粋という物だろう。
 彼が危ない、思ったその時にはフランはルカの身体を押して、彼を庇っていた。
 直撃は避けたものの、明らかにその背中には傷を受けている。
「おい! 怪我してねえか!」
「大丈夫!」
 笑って傷を癒しながら、心配をさせまいと振舞う少女の額に、ピシッ、とルカの指の弾いた音が響く。
「あいた!」
「あんま見くびるなよ。こんな程度の奴等にやられるルカ様じゃねえよ」
 勿論、それくらいはフランも解っては居た。その意を汲んでどうやらお咎めはこの程度で済むらしい。
「もう、みんな自分の事より人の為に必死なんだから」
 でもそんな皆を支えたいから。タイムから癒しの力を宿した神域が形成され、傷を癒していく。
「足を止めてる暇はないわ。今よ、夏子さん!」
 タイムが放った神威が魔物の堅牢な防御を引き剥がす。
 それまで小鬼や蜘蛛相手に守勢に回って居た夏子が大きく槍を薙ぎ払った。
 炸裂音、そして白光が明滅する。巨人が追撃で投げ込んで来ていた岩が砕かれている。
 魔物はこの一撃に怯み、僅かにその動きを止めていた。
「ルカルカの大砲とどっちが派手かな~?」
「ちょっと、夏子さん!」
 タイムが夏子に一言付け加えようとした直後。
 二人の影から飛び出したルカが黒犬の名前を冠するレプリカを振り上げた。
「ロウアー! 覚えとけ!」
 巨人とそれに挑む一人の人間。その光景は一枚の絵画の様で。

「──運命なんざ、ぶち壊せ!」
 轟音一閃。振り下ろされた巨大な剣の前に、先程まで苦戦していた様に見えた巨人は真っ二つに切り裂かれた。
 それはまるで夢の様に。辺りの魔物も居なくなり、静寂が訪れる。

「ルカルカ、お疲れぇ~」
 ルカの元へ歩きながら、ねぎらいの言葉を掛けに来た夏子の身体がゆっくりと足元から消えていくのが見える。
 どうやら、この世界ですべき事は終えたらしい。
「あなたの望みはきっと叶うわ。だから、どうか」
 歩む事を止めないでね、とタイムは笑いかける。いつかきっとあなたも私の様に分かち合える仲間が出来るから、と。
「ハッピーエンド、近づいたかなぁ?」
 後はお願いします! とフランもまた光となって混沌の世界へと戻っていく。
「俺らは所詮部外者だ。お前らの世界の結末は、お前ら自身の手で掴みな」
 お前ならやれるさと、ルカもまた姿を消した。

 この日がこの世界の運命の交差路だった事を、この世界ではロウアーだけが知っている。
 希望の火は確かにその日に灯されたのだ。ならばあとは冗長に語るまでも無いだろう。

 この物語の最後は──確かにめでたし、めでたし、と締め括られるのだから。

成否

成功

状態異常

なし

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