PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<コバルトレクト>人身競売への潜入

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●Your Price?
 男は競売士(オークショニア)である。
 つつがなく競売(オークション)が進行するよう司会を務め、落札されれば象牙のハンマーをコンと叩く。
 男は悪人である。
 自分の職場が資金洗浄の場であると知った時も動じず、当時のマネージャーの信頼を勝ち取った。
 落札されるモノが盗品であろうが人間であろうが競売を進行し、泣いて助けを求める落札品を容赦なく反社会勢力へと引き渡した。
 何故ならそれが彼の仕事だから。
 男は仕事を裏組織から認められ、四つの競売所を任された。

「警視。その日に開催される人身競売には四会場いずれにも目玉商品がありません。マフィアのボス、臓器売買業者、武器の密輸団体、変態性が噂される上院議員など大物も誰も来ないでしょう。日付を変えて下さい。出品数も少ないですしオークションもすぐ終わってしまいます。捜査員の包囲が間に合わない可能性も……え、現場のことなど知らない? それ以外、突入日がない? 夏休みになるから早く終わらせたい? そんなに言うならお前が何とかしろ、ですか。分かりました、何とかします」

 ――男は悪い競売士である。少なくとも、表向きの顔は。
 真実の姿は潜入捜査官である。今しがた強く転職を決意したが、今のところまだ捜査官である。
 四劇場の鑑定士全員を仲間に引き入れ「さあ悪人を捕まえる準備ができたぞ!」と報告したら、新しいボスが今までの苦労をぶち壊す日程を提案してきた。真の敵は味方にいる。
 男は「土下座でも焼肉奢りでも何でもするから協力者が欲しーい!!」と流れていくお星さまに願った。
 願ったついでに「競売にかけられる凄い人も欲しーい!!」と叫んだ。
 お星さまは大雑把である。彼の願いは一緒くたにまとめられ、別世界へ丸投げされた。

●Break!
 少女は境界案内人である。
 そして困っていた。
 今回の依頼は緊急性の低い、世界の崩壊には関係が無いものだ。
 解決すれば悪人が捕まり治安がよくなるが、しかしその為に、尊敬するイレギュラーズたちに「すいません、競売に出品されてください」と言えるだろうか? いや、言えない。
「ぴえーーーー」
 悩む彼女は気づかない。
 良いよ、と言ってくれる親切な人は意外と多いのだ。

NMコメント

こんにちは、駒米と申します。
人を売ってみたかった。

●依頼内容
『自分を餌に裏社会の大物を競売場におびき寄せる』事が目標です。
自己PRでも、鑑定士と協力して適当な来歴を作り上げるのでもどちらでも構いません。
魅力的なほど悪い人が釣れます。
他にも・オークションに出品されている間、値を吊り上げて包囲網が完了する時間を稼ぐ。
・突入班と連携して悪人を取り押さえる。
といった小目標が存在しています。色々試してみてください。

●舞台
禁酒法時代のアメリカによく似た文化を持つ世界です。
人間種が大半をしめ、黒スーツが葉巻を吸い、密輸奴隷や密造酒がトラックで運ばれ、緑の札束が紙吹雪のごとく舞う暗黒街が多く存在します。
競売は歴史ある劇場を改装した建物で行われます。
蒐集家と呼ばれる異質なモノもいますが、人間社会では都市伝説です。

味方NPC
情報や協力を得ることができます。

【競売士】
競売の進行をする人です。
本当は悪者を一度に捕まえるために潜入していた捜査員です。戦闘員です。

【鑑定士】
品物の真偽を鑑定士、由来などの鑑定書を作成する人です。
各劇場に一人ずついます。非戦闘員です。

敵NPC
悪人は必ず護衛を数人連れてきます。
出品される商品が魅力的であればあるほど敵は増えるでしょう。
一般人には強敵ですが、イレギュラーズから見ればレベル1でも余裕で勝てる相手です。

  • <コバルトレクト>人身競売への潜入完了
  • NM名駒米
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年07月10日 22時05分
  • 参加人数4/4人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

ポシェティケト・フルートゥフル(p3p001802)
白いわたがし
アーマデル・アル・アマル(p3p008599)
灰想繰切
チュチュ・あなたのねこ(p3p009231)
優しくて不確かなすべて
ルブラット・メルクライン(p3p009557)
61分目の針

リプレイ


「……何処にでもいるものだな、それがヒトの性なのだろうか」
 人間の醜さを『霊魂使い』アーマデル・アル・アマル(p3p008599)は憂いた。
(でも、それを良しとしなかったヒトもいる。アナタみたいにね)
 天井に浮かんだ死人が言った。
(それで? 私は何をすれば良いのかしら)
「周囲の見張りをお願いしたい。なに、それほど広い範囲じゃない。せいぜい部屋の外で何か変わった様子が無いか見てて貰うくらいだ」
(いいわ。その代わり、悪い人を捕まえてね)
「ああ」

『――少しキズがありますが、中性的な美は損なわれておりません。感情は特殊な施術で制御してございますから拷問耐性もある優秀な駒となるでしょう。観賞に良し、護衛に良し。幅広い用途でお使いできます』
 椅子に座らされたアーマデルはまるで人形のようだった。
 虚ろな眼差しは焦点を結ばず、ただガラス玉のように遠くばかりを見ている。
『今は少しばかり『効きすぎて』いる状態でございまして従順な愛玩人形をお求めの方にもピッタリかと』
「ほほう、直接触っても?」
『ッ。ええ、勿論』
「可愛いねぇ。お肌すべすべだねぇ」
 分厚い指で頬や顎をなぞられ、持ち上げられる。
 かくんと力なく項垂れながらアーマデルは安堵した。
 至近距離で舐めるように見つめられた時はバレないだろうかと肝を冷やしたが、上手く誤魔化しきれたようだ。
 意外と簡単に演じられた。いや、本当は演じてなど――。
(警官隊が突入するわ)
「全員その場を動くな!」
 競売参加者が出入り口を見た隙を見計らってアーマデルは競売士と合流する。
「突入隊と連携して悪人どもをのしいかに……は、やりすぎだな、制圧する」
「ありがとうございます。あれでも貴重な、口の軽い情報源(バカ)なので」
「あっ、褐色ちゃん!」
 呼びかけられた瞬間、アーマデルは予備動作無しで相手に飛び蹴りを食らわせた。そうしなければならない理由があったからだ。
「……さっきはよくも好き放題してくれたな」
「無表情の褐色美少年に見下ろされながら鼠蹊部や太腿のラインを下からのアングルで見られるとかご褒美、私の肉が靴裏と布越しに触れ合うってそれってもはやキス」
「今すぐ失え記憶を」
「あっふん!」
「そして思考回路を」
「ほっげぇ!?」
 感情が揺らぎにくいとはいえ、生理的に嫌なもんは嫌である。
 淡々とぶちのめしながら、それでも「命を」と言わない辺りがアーマデルなりの優しさであった。


「成程、そういう事情か」
 珍しく大荷物を抱えて境界図書館に現れた『夜に這う』ルブラット・メルクライン(p3p009557)が悩んだのは一瞬の事。
「まあ、構わんさ。土産を渡しに行くついでだ、任せてくれ。ああ鞄の取り扱いには注意し給え。落としたら命の保証はできない」
 すぐに謎生物の剥製や大量殺戮鞄を境界案内人へと手渡した。
 
『本日お目にかけますは医師にして占星術師。そして白き貴族血統(ノーブルリネージュ)の純潔にして最後の純血!!』
「あの御方の血筋がこんな新興国に!?」
 会場全体がどよめいている。
 人間性を加味して、自分の商品価値を銅貨一枚分かなと言い切ったルブラットに、顔を真っ青にした競売士と鑑定人が詰め寄ってきた一件は記憶に新しい。
『何故彼が、いえ彼女は仮面をつけているのか。これは全ての男を狂わせた或る悲劇の美姫の物語――』
 詳細は本職に任せたが、それにしたって話を盛り過ぎではないだろうか?
 しかし周囲の反応を見るにどうやら正解のようだ。ルブラットは二人に任せた自分の判断に満足した。
「やあ、紳士淑女の諸君。私の名はルブラット・フォン・メルクライン。この哀れな私を慰める者は何処にもおらず、同様に、諸君らのような虐げる力を持つ者を慰める者も何処にもいない」
 嘲笑が細波のように広がる。
 昔、誰かが自分に対して「口から先に生まれた人間」と評していたなと何とはなしに思い出す。
「いいや、諸君らには私がいる! 私だけは諸君を優しく慰め、そして忠告してあげよう。これは予言だ。諸君は直に、高らかに掲げている、既に錆びついた金銀に躓き、……そうだな。頭を強く打つだろう。分かったらその手にある金貨を手放すことだ」
 言葉は貴族に許された武器である。柔らかな溜息と共にルブラットは競売士の方を向いた。
「時間稼ぎとは言え人前に出て疲れたな。私も観客席に座っていいか?」
「いえダメです」
「確保ォー!!」
 轟雷のような号令と共に劇場内に警察の群れが雪崩れ込む。
「こうなったら純血だけでもっ」
「私に価値を見出した慧眼は認めるが」
 白銀に輝く杖が踊り、的確に不作法者達の後頭部を捉えていく。
「――ほら、私の言った通りになっただろう? 金貨を手放さないからそういう事になる」
 積み重なった敗北者達を見下ろし、微笑むようにルブラットは告げた。


「本当に、よろしかったのですか。いつもより愉快な方々がお集まりですが」
 餓えた獣の前に無垢な子猫を差し出す。そんな罪悪感を抱きながら競売士は項垂れた。
「どうかお気をつけて」
「ええ、任せてちょうだいな」
 舞台の幕が上がる。
 チュチュ・あなたのねこ(p3p009231)の姿に「今夜はそういう趣向か」と下卑た笑いが会場に広がった。
 大きな帽子からのぞく猫の耳。黒いドレスからは猫の尻尾。まるで本物のように似合っている。
 しずしずと、飄々と、従順に歩く姿は美しくも艶めかしい。しかし舞台の中央に近づくと、少女は徐ろに、その場にぺたりと座り込んだ。
“meow……”
 とろんと瞼の落ちた寝ぼけ眼で欠伸をひとつ。
 ああ、何て無防備であどけない子猫だろう。
 ああ、何て可愛いおくちだろう。
 惜しげもなくさらけ出されたチュチュの甘い内側。まるで見て欲しいと言わんばかりの小さな舌に熱い視線が集まる。
「ああ、そんなに覗き込まれたら、もっと奥まで見えちゃいそうよ……」
 朱く柔らかな肉が蕩けるように、うねる。
 あれは人じゃない。人を魅了し、愛玩されるためだけに生まれた動物だ。
 あの黒髪を優しく梳いて、禁欲的な服に隠された柔肌を優しく暴いて、餌とミルクと薬を与えて、大切に大切に、私が/俺が/儂が/僕が/アタシが、飼ってあげなくちゃあ。
 上がる値段。会場には危険な熱が渦巻いている。
「なんて、ね」
「突入ー!!」
 子猫は気まぐれな小悪魔だ。すり寄ってきたかと思えば、すぐに爪を立てて遠ざかる。
「残念だけれど。見せるのはここまで。こういうの、嫌いじゃないのだけれど、ね?」
「貴様、警察の狗か!!」
 頷かない。だってチュチュは猫だから。
「あら、あら。大勢で押し寄せて、力づくで攫おうとするなんて……そんなのはダメ。つまらないわ」
 妖精のように冷たくみゃぉうと謡えば、目から光を失った暴徒が互いに殴り合いを始める。
「くそっ、お前だけでも」
「また今度、ね?」
 それでも手を伸ばしてくれる貴方への贈り物は愛情をこめた子猫の引っかき。
 闇の爪痕が赤い天幕を切り裂いていく。

「ねえ、そういえば聞いたのだけれど……」
 死屍累々な会場。腰を抜かしていた捜査官を仕事終わりのチュチュが覗き込んだ。
「はっ、はい!?」
「焼肉、奢って下さるって、本当?」
 三日月を宿した眼が囁いて、悪戯好きの黒猫はちいさな舌をちろりと見せた。


Ring,ring...
「もしもしごきげんよう、リトル。ワタシよ。今度ねえ、潜入捜査で売られることになってね……ええ。ええ。大丈夫よ、ほんとうに売られるわけではないから安心をなさって。それでね、もし良ければ剥製事件の潜入捜査で着せていただいたあの素敵なお洋服、また貸していただけないかしら」

『紳士淑女の皆様方! これよりお目にかけますは世紀の魔女にして傾国の貴人。かつて国の全てを綿に変え、国を崩した斜陽の暗君! その美貌にはくれぐれもご注意を! 『謡うナーサリーライム』ポシェティケト・フルートゥフル(p3p001802)!!」
 喝采と共に眩い照明が巨大な鳥籠を照らす。
 夜の女王だ。会場が神秘的な美しさに目を奪われる中、誰かが呟いた。
 耳と首元を彩る豪奢な宝石が霞むほどの気品。薔薇模様のベールやモスリンの帽子に隠された眼差し。
 あれは危険な美しさだと誰かが見抜き、あの危険な魔女が欲しいと誰かが唾を飲みこんだ。
『全身を包む途方もない魔力は軍隊に匹敵し、砂と綿雲と神秘の国《ワターア・メフワフ・ワ》の莫大な財を全て体中に隠し持つとの噂です。それでは参りましょう、五百万からのスタート!』
「千!」」「二千!」「いや、二千五百万だ!!」
 先ほどの静寂など忘れたように会場が熱気に包まれる。
 みるみる内に釣りあがる値段に、薔薇色の紅をのせた神秘的な唇がゆるりと動いた。
『やあ、この僕を随分と安く見たものだ』 
 その圧倒的な力を持つ声が誰の声であるのか、最初は誰も分からなかった。
『正しく審美眼をもつ御仁なら分かるはずだわ、国は失ったが魔法はこの身に染み付いている』
 玲瓏なる月のようでいて、純粋な花のような。威厳に満ちた言の葉を紡ぎながら隠れた視線が会場を見渡す。
 座席に座った黒服がハンドサインを出すのを鳥籠の王は見逃さなかった。
『そんなことも分からぬ目玉はくり抜いてしまいなさいな』
 ――ニューー……。
 妖艶な笑みに重なるように神秘的な獣の声が会場を包みこむ。
 不思議な現象に誰もが我を忘れた、その一瞬が合図。
「捕縛ー!!」
「何ィ―!? あっ、前が見えないっ」
 演出用のスモークではなく、いつの間にか会場を包み込んでいた本物の霧に犯罪者たちは出口を見失った。
 
Ring,ring...
「もしもしごきげんよう、リトル。お洋服をありがとう。あら、テックも一緒なのねえ。ちょうど良かった。いまからお土産をたくさん持って監獄島に遊びに行くと、リトルのパパさんにお伝えくださるかしら。そう、大漁よ」

成否

成功

状態異常

なし

PAGETOPPAGEBOTTOM