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シナリオ詳細

I still pledge allegiance to you -王城の亡霊騎士-

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●私はまだ
「今度は水場に?」
「いやだわ私の今週の持ち場なのに……」
「坊ちゃまが廊下で出会って悲鳴を上げているとこも見たわ」
 ヒソヒソと噂話を交わすメイド達。内容はゴシップなどではなく……不快そうな顔色が暗くなるような内容だった。メイド長が手をならし、メイド達がハッと我に返る。
「いつまでお喋りしているんですか。仕事に戻りなさい」
 初老のメイド長が睨みつけるとメイド達は蜘蛛の子を散らすように仕事へ向かう。メイド長はため息を一つ。メイド達が不安がっているのはわかっているのだ。メイドだけではない。王族はとっくに知っている。さらに騎士勢にまで飛び火しそうだ。

「あの……。何のお話ですか?」
 メイド長の陰から現れた若い女性。数日前に王城勤めとなったメイドだ。
「ああ? あなたはまだ知らなかったかしら」
 ためらいがちに「はい」と返す若いメイド。
「……この城には亡霊が出るの。騎士の亡霊が」

 サルビア2世の統治時代。千軍万馬の英傑がいた。緋色のマントを羽織っていたことから『緋衣(ひごろも)の騎士』と呼ばれていた。全身鎧で覆い、大剣を振るうがものともしない。並の剣士相手ならば鍔迫り合いは負けず、騎馬相手ならば馬ごと斬り殺したと言う。さらに王への忠誠心も絶大で、サルビア2世の手腕も相まって王都は繁栄の一途をたどった。
「サルビア2世って今の王のひいおじいさんですよね……?」
「そうよ」
 緋衣の騎士は死してなお王城を守り、俳諧している。一時期はサルビア王に敵対する曲者を退治するのにこれは良い。などと言うものもいたが……緋衣の騎士は消えることがなかった。むしろサルビア王が代を重ねるごとに亡霊の存在が強くなって行く。
 現王の騎士が立ち向かうこともあったが……あっけなく返り討ちだ。
「もうすぐ現王の娘の婚約パーティーがあるでしょう? 市民も王城に入れる祝賀会が。その前になんとかしたいとは思っているけれど」
「ええっ、都合が悪くなったからって緋衣の騎士を除け者にするんですか?」
「それは違うわ」
 メイド長が即答する。若いメイドは自分が失言してしまったと謝る。
「私たちは……感謝してるの。そしてもう眠って欲しいと思っているわ。彼は十分働いたのよ」

 石造りの城を中央に構え、城下町は賑わっている。この平穏と繁栄はサルビア王家がもたらしたものだと。
 

●王城の
「あなたがイレギュラーズさん? まあ……まあまあ!
 初めまして。私はリララ・ラリラ。リララって呼んでね!」
 境界案内人のリララが目を輝かせて挨拶する。はしゃぎすぎたと咳ばらいをし、リララは自分の務めに戻る。
「そうね。あなたたちのいる混沌の……幻想に似た世界ね。剣や魔法や怪物や騎士がいる世界」
 私はそちらにも興味があるのだけど。とリララ。また話を脱線させてしまいそうになり慌てて話を戻す。
「王城を俳諧する亡霊騎士を倒して欲しいって言うのが今回の依頼ね。みんな彼に感謝しているの。だから亡霊になってまで忠誠を勤める必要はない……。だから成仏させたい。そんな感じね」
 リララが説明する。言葉を紡ぐたび緑の髪がゆらゆらと揺れた。
「イレギュラーズの活躍は聞いているわ! だから私とっても楽しみ。がんばってね!」
 リララが笑顔をイレギュラーズへ向けた。

NMコメント

 こんにちは7号です。私が騎士の物語を書くと忠誠心が強すぎる人ばかりになります。いいですよね。

●世界説明
 中世ファンタジーな世界。混沌の幻想に似ています。舞台は王城での戦闘になります。緋衣の騎士の亡霊は夜に俳諧しているようです。皆さんには夜に騎士と対峙していただきます。

●目標
『緋衣の騎士の討伐』

●敵
『緋衣の騎士』
 赤いマントを付けた甲冑の騎士です。武器は大剣。
 パワータイプの騎士ではありますが、イレギュラーズの皆さんなら押し負けることはないかもしれません。

 主な攻撃方法
・【甲冑殺し】
 頭を目掛けて振り下ろす大剣の一撃です。兜割をした後に胴体を真っ二つにします。
・【騎馬殺し】
 下段から上へ剣劇を繰り出します。騎馬の馬と騎手ごと斬り捨てる技です。
・【部隊殺し】
 扇のように横薙ぎに剣を振るいます。戦場で敵が固まっている時に使っていたようです

●騎士の出現場所
 基本的に王城であればどこでも現れます。皆さんが「ここにいるのではないか?」と目星を付ければそこにいるでしょう。
 ですがよく目撃される場所もあります。

・『来賓の間』
 パーティーなどが行われる大きなホールです。ホールに掲げられたサルビア2世の肖像画をよく眺めています。

・『城の庭園』
 よく手入れの行き届いた庭園です。噴水や花が咲いており落ち着く場所です。今の時期ならサルビアの花が咲いています。

●特筆事項
 ライブノベルは成功が確約されています。お好きにプレイングを記述してみてください。

●サンプルプレイング
 俺は力自慢だからな。あえて真っ向勝負を挑むぜ! 鍔迫り合いで俺が勝てば、成仏に近づけるかもしれないぜ!

  • I still pledge allegiance to you -王城の亡霊騎士-完了
  • NM名7号
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年07月06日 21時50分
  • 参加人数4/4人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

クロバ・フユツキ(p3p000145)
深緑の守護者
ココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)
Lumière Stellaire
カイト・シャルラハ(p3p000684)
風読禽
雑賀 才蔵(p3p009175)
アサルトサラリーマン

リプレイ

●王と騎士のもたらした繁栄
 よく手入れされた花壇。掃除された石畳。そこまで手の行き届く余裕と財産。何より、豊かさと優しさを感じた。『善性のタンドレス』ココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)は散歩するかのように城の外を歩いていた。
「とても静か……。ではあるけれど」
 城壁にきらりと反射するものがある。スコープが月光を受けていた。
「暗視ゴーグルでもあればよかったか? ゴーストに暗視は通用するのか、はてさて……」
 『アサルトサラリーマン』雑賀 才蔵(p3p009175)がそこにいた。肉眼や時折スコープを除き亡霊を探す。
「死して尚国に報いる……素晴らしき忠誠心ではあるがな、いつまでもそこに留まり続けるのは良くないのさ」
 その上空を大きな鳥……否。飛行種が城の外壁を飛んでいる。空を滑空する『風読禽』カイト・シャルラハ(p3p000684)は巨大な石造りの城、手入れの行き届いた庭、そして城下町を眼前に捉えていた。しかしその羽音はなく夜を駆るフクロウを思わせた。街や城の明かりは消え皆寝静まり静かな夜だった。月明りだけが煌々と輝いていた。このまま遊覧飛行と決め込みたいが、そういう訳にもいかない。
「忠誠心は立派だけどなー、どうしてまだ彷徨ってるんだろうな?」
 もっともな疑問を持ちながら旋回する。その先に目当てのものがあった。
「いたぜ」
 カイトは地上の仲間へ合図を送った。

「ミスタ・カイトから合図だ。ナイトを見つけたんだろう」
 才蔵がココロに手際よく話しかける。妙に慣れた才蔵。彼は元の世界ではそういう職業だったのだろうと連想させた。
「クロバさんは?」
「今は庭園のほうに」
「逃したくありません。……何より彼の気持ちが聞きたい」
二人は頷き先行するカイトに続く。

「こんな夜更けにどーしたんだ、緋色の騎士様?」
 緋色の外套をまとった騎士がゆっくりと振り返る。カイトが緋色の翼を広げ、友人に話しかけるような調子で軽く話しかける。
「いい景色……ですね」
 ココロ達の姿は城の鐘楼──塔の最上階にあった。火衣の騎士は眼下に広がる街を眺めていた。
「『あいつの治めてた街』だからか? 何を迷ってるんだ? もうお前さんの仕えた主はいないんだろ? それとも国に仕えているってか?」
 カイトが話しかける。そこへココロが
「ねえ。あなたは、なぜそこまでこの城の守護に拘るの?」
 ココロは気になっていた質問をぶつける。彼女は死してなおの王と騎士の繋がりが不思議であった。
「教えてください。あなたの心を」
「……街を見ろ」
 カイトとココロが騎士を視界にとらえたまま視線を向ける。
「王の作り上げた財だ」
 民や街並みを騎士は宝だと言った。
「俺はそれを失うのが怖い」
「なら──」
 そうココロが言いかけたが騎士が剣を彼女へ振るおうとする。が、当たらない。
「危なねぇな!」
 すんでのところでカイトがココロを引き寄せる。
「大ぶりだな、鳥相手は組み手練習したことないか?」
 入れ違いざまに数多の蒼槍を繰り出す。いくつか刺突を食らうが騎士はひるまない。
「まあこのくらいじゃ倒れねえよな。何てったって長年仕えたタフネスな騎士様だ!」
 騎士は横薙ぎの斬撃を放つ。カイトはひらりと飛んで避け、小柄なココロはしゃがむことで剣を外す。
 ココロへ追撃が飛ぼうとした瞬間、騎士の鎧で覆われた全身へ被弾する。才蔵が援護するようにライフルを放つ。
「よそ見は禁物だ」
 遠方の才蔵。回避に長けたカイト。なら騎士の狙うのは……。
「予想通り!」
 下段からの剣の振りを見て思い切り地面を蹴り、距離を詰めるココロ。
(──勢いが付く前ならスピードがない、避けれるはず!)
 さらに才蔵が騎士の背中を撃つ。カイトも予想していたようで槍によるラッシュを突く。騎士も負けじと剣を薙ぎ、カイトの腕から胸にかけて切り傷を作る。猛攻に騎士が階段を飛び降りた。このまま逃げる算段だろう。
 だが才蔵が許さなかった。
「このまま庭園へ誘き寄せる!」
 退路を断つように魔弾の雨が行く手を塞ぐ。いくつか弾丸を剣技ではじいたのは驚いたが、自然と騎士の行き先は狭められていた。間を空けてからの援護射撃。そう見せかけての誘導。それらは才蔵なら可能だ。その間にココロはカイトをさざ波の福音で回復させていた。
「そろそろ決着と行こうか!」
 カイト、ココロも騎士を追いかけた。

●貴方を思う
 赤い、赤いサルビアの花。庭園を埋め尽くす花。噴水の水の音の心地よさも感じながら『死の痛みを知る者』クロバ・フユツキ(p3p000145)はそこにいた。
 サルビアの花言葉。
──尊敬、知恵、そして……家族愛。
 クロバは赤いマフラーを強く握りしめる。笑っているような悲しんでいるような。自嘲しているようなそんな表情だった。目を瞑り。そして息を吐き。
「貴族文化とかそういうのって正直好きではないんだが、なんていうかな」
 クロバは綺麗なものを素直に綺麗だと言えた。

 庭園の端が騒がしい。緋衣の騎士の姿を捉える。そこへココロが声をかけた。
「クロバさん!」
「ココロか! エスコートする」
 クロバを先頭に後にココロが続く。騎士とカイトが先に交戦を始めていた。
「待ってたぜぇ。クロバ」
 カイトがバックステップで騎士から距離を取る。
「緋衣の騎士」
 ひりつく空気を纏ったクロバが剣の柄に手をかけたまま問う。紫水晶と禍々しい緋色の目が騎士を射抜く。
「お前を葬りに来た。在るべき場所へ還す為の戦いをしに来た」
「……お前は? 剣士……いや、騎士なのか?」
 緋衣の騎士がクロバへ問う。
「俺は。──死神だ。クロバ・フユツキ」
 二刀を交差するように引き抜くクロバ。
「栄光と繁栄と共にあった忠義の騎士よ、お前はもう眠っていいんだ!」
 真っ向勝負を仕掛けるクロバ。鍔迫り合い。手が痺れそうになるくらい力強い。だが正面から競り勝てば自分たちが強いと証明出来る。騎士の誇りを尊重したいとクロバは考えていた。
「くっ……! 流石、強いか!」
 初撃は打ち負ける。致命傷は避けているもののクロバの打撃痕や傷が増え、血を流す。
「回復が間に合わない……。クロバさん!」
 海の命を分け与えるココロだったが、騎士の血気がクロバを押す。それでこそ皆の愛する騎士だとクロバは笑みさえこぼれそうになった。騎士が再びココロを狙うが、カイトの横槍で剣を受け流した。そこへ才蔵が銃を放ち、隙を生む。
「おっと、その手は通じない。前もそうだっただろ?」
 才蔵がそう言い、クロバとの戦いに集中しろと促す。このまま騎士が勝つように思われたが……。クロバの斬撃の切れが増していた。
「……どういうことだ?」
 騎士が目を丸くする。
「俺は諦めが悪い男でね」
 刃を炎が包む。おどろおどろしい炎が爆ぜる。クロバの剣劇は騎士が打ち付けるほど威力を増した。

「先ほどのあなたの言葉へのわたしの回答ですが──」
 ココロがしっかりと前を見据えて言葉を放つ。
「見くびり過ぎです。
 あなたの信じた王や民なのだから。あなたが守らなくても強い」
 だってわたしならお師匠様がいなくても一人で立ち回れるから。自身の師匠を思い浮かべココロは反論する。才蔵が言葉を重ねる。
「時代と言うのは常にその時代を生きる者が作っていく……いつまでも古い人間が世話をしていたのでは後進も心苦しいものさ」
──どんな世界でもな。
 才蔵は元いた世界や混沌を重ねて語る。
「あなたのお役目は終わりました。退くのも忠義と心得えなさい!」
 ココロが手向けの炎を撒き散らし叫ぶ。供花のような火の花束が騎士を包む。燃え盛り騎士をさいなむ。
「貴方の国に対する忠誠心は命を失って尚あり続ける姿は誰が見ても立派で尊敬に値すると思う」
 ココロの気持ちが騎士に響いた気がした。才蔵も言葉をかける。彼は援護ならお手の物だった。
「だが、いつまでも留まり続ける事で多くのものが心を痛めている……自分達が貴方を縛り付けているのではと」
 騎士一人で背負うものではない。才蔵はそう説く。
「今を、未来に生きる者達に後を任せ今は静かに眠るといい」
 騎士が地面をえぐるほどの勢いで踏みしめる。
──来るか。
 クロバは構える。まともに食らえば死ぬかもしれない。だが
「ほら、もう大丈夫だろ。お前がいなくても大丈夫なんだ」
 二刀を全霊で受け止める。クロバの刃の炎は腕にも絡み、二人の圧でサルビアの花が飛ぶ。クロバは葉を食いしばり腕の血管が切れる。だが今ここで引く訳には行かない。火花を散らし騎士が剣を滑らせ、猛攻が止む。

 すると、騎士に変化が訪れた。

●弔砲
 花が散るように騎士の体のはしが赤い欠片となって消えて行く。
「強いのだな。お前たちは」
 指先も宙に溶け、手のひらを裏返して不思議そうに騎士は見つめていた。
「ああ、安心した」
「おやすみ──また来世で、国を、いや守るべきをものを護る剣として生まれ変わるといい」
 クロバが別れを告げる。
「ま、成仏してくれや。この国は、今もちゃんとお前さんの主の意思を継いで栄えてるみたいだしな」
 駄目になった時はまた現れればいい。カイトはそう付け加える。
「きっと民もお前たちのようにたくましく生きるんだろう──」
 騎士の形がすっかりなくなった頃。才蔵が空へ発砲する。弔いのための銃を。

──忠義の騎士よ安らかに。
 才蔵、もとより誰もが彼に敬意を払っていた。

成否

成功

状態異常

なし

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