料理系ほにゃちゅーばー『いれぎゅらーず☆』　夕飯編

オープニング

●毎日考えるのは大変。
　とある世界、現代日本社会の九重市に住む男性、文月優夜《ふみつきゆうや》は頭を抱えていた。
　毎日誰もが抱えるであろう問題に、彼はぶち当たっている最中である。

「……今日の夕飯……どうしよう……っ！！」

　そう、夕飯。１日の締めのご飯。

　献立を考え、足りない材料を購入し、決まった時間に食事を作る。
　１日に３回は起こるこの流れを、なんと彼は毎日行っている。とても凄い。

　だがそんな彼でも、毎日の献立を考えるというのはなかなかに酷なもの。
　特に夕飯なんかは毎日同じものを食べるのは飽きてしまうので、日毎に変えたほうが良い。　

　そして栄養バランスを気にする人であれば、日毎の栄養も考えなければならない。
　更に家族の分も込み込みで考えると、１人分を作るよりもめんどくさい部分が多いわけで……。

　優夜は悩みに悩んだ結果、九重市で今大人気の調理動画投稿者「いれぎゅらーず☆」を頼りにすることにした。
　調理動画って、確かに便利。夕飯だけじゃなくておつまみやお菓子などもあるし。

「文明の兵器、ほにゃつべ！！　僕に力を貸してくれーー！！」

　優夜がポチッとクリックした先にあった動画は――。


●突撃！　イレギュラーズの晩ごはん！
　場所は変わってイレギュラーズの面々が集う境界図書館。ニコニコとした様子の案内人・ポルックスがカメラを構えていた。
　何？　どういうこと？　なんで？？　といった感情が渦巻くかもしれないが、ポルックスは笑顔のままで言った。

「料理のレパートリーを増やしたい人向けに、調理動画を撮りたいなぁと思ったの。……べ、別に、わたしが食べたいとかそういうのじゃないけど……で、でも、作った後は食べる人も必要じゃない？！」

　必死で食べたいわけじゃないと訴えながらも、目はキラキラとイレギュラーズに向けられる。
　本当は動画を取ることがメインだから！　と口では言うものの、美味しいものを食べられるのではないかという期待が降りかかる。

　まあつまり、何が言いたいのかと言うと。
　料理の動画を撮るために、イレギュラーズに料理を作って欲しいのだそうだ。
　今回の料理のお題は『夕飯向け』。大家族用でも、一人暮らし用でも、夕飯向けなら何でも良いと言う。
　材料と作り方を添えると、より動画映えしやすいのでメモも用意してほしいとのこと。

　さて、どんな料理を作ってみるか……。

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第1章

第1章 第1節

　本日投稿の動画は『豚汁』。
　料理人はゴリョウ・クートン。

「たっぷりの肉と野菜で栄養満点の豚汁！　これと白米だけでも、大満足間違いなしだ！」

　大根１００ｇ、人参５０ｇ、さつま芋１００ｇ、椎茸５０ｇ、豚薄切り肉１００ｇ……と紹介しつつ、豚汁の素晴らしさも一緒に語る。

　ゴリョウはまず、大根、人参、さつま芋を流水でしっかりと洗い流した。
　今回選んだ材料は全てが皮を剥く必要がないもの。表面の土を食べないようにしなければならない。
　それでも少々出来の悪い部分があるので、なるべく美味しい部分を残すように落とす。

「下拵えが面倒という者もいるだろうが、皮付きも悪くないものでな」

　洗い流した後は材料を適した形に切り、豚肉も一口大より少し大きめに切る。

　大きめの鍋を準備して熱し、ごま油を小さじ１ほど入れて豚肉を投入。
　豚肉の色が白色になったところで他の材料も入れて火を通す。
　火が通ったところで水を６００ｃｃ入れて、煮立つのを待つ。
　アク取りを忘れるな！　と動画的な注釈を入れつつ。

　沸騰後は味噌大さじ３、酒大さじ１、白だし大さじ１を加え、もうひと煮立ちさせ……完成。
　こうして出来上がった豚汁は、画面越しでもわかるほどの絶品となった。

　出来上がった豚汁はまず、ゴリョウが一口。
　ずず……と汁を飲んだところで、動画裏で準備した白米を口へ放り込み……。

「うむ、美味い！」

　その一言を最後に、動画は終了した。

成否

成功

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第1章 第2節

　本日投稿の動画は『サラリーマン飯』。
　料理人は雑賀 才蔵。

「簡単なのでいいなら、サラリーマン飯があるぞ？」

　材料は豚バラ薄切り肉８枚、プロセスチーズ８個、薄力粉、塩と胡椒、料理酒大さじ１、ポン酢大さじ２。
　簡単だが、カロリーが凄いので食べ過ぎ注意と伝えながら準備を開始した。

「まずは肉の片面に薄力粉をまぶして、と」

　バラ肉に小麦粉をまぶし、塩と胡椒をパラパラとふりかけてチーズを置いてくるくると巻く。
　巻き終えた後はフライパンで焼くのだが、その際はまず巻き終わりの面から必ず焼くようにと告げる。
　過去に失敗した経験があるのか、才蔵は動画に映らないように渋い顔をして経験を語った。

「じゃないと……肉が縮んで、剥がれてしまうからな……！」

　焼き目がついたところで料理酒をざっと振りかけ、蓋をして１分。
　蒸すことで中のチーズにまで火を通すことが目的。溶けるとまた美味しいもので。

　１分後、火を止めてポン酢を絡めて完成。
　動画に映る肉巻きチーズは、自分から輝きを放っているようにも見えた。

「それじゃ、いただきます」

　しょっぱい中にポン酢のツンとした酸味がなかなかなおつまみとなって、これはこれで美味しい。
　しかし中には苦手な人がいるだろうと思い、才蔵はカメラに向かって最後の一言。

「チーズじゃなくて、キノコや野菜、豆腐を一緒に巻いても美味しいと思う。ぜひ試してみてくれ」

　その一言を最後に、動画は終了した。

成否

成功

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第1章 第3節

　本日の投稿動画は『魯肉飯（ルーローファン）』。
　料理人は黎 冰星。

「冰星飯の時間です！　今日のレシピは僕の得意料理なんですよ！」

　ニコニコ笑顔で豚バラブロックをどーん！　と動画に向けて見せつける。
　４００ｇもあるので、食べやすく２ｃｍ角に切っておく。

　フライパンにみじん切りにした玉ねぎを多めの油で揚げ焼きし、そこに切った豚バラ肉を落としてしっかりと色が変わるまで炒める。
　肉の焼ける香ばしい匂いが漂ってきたところですり下ろしたにんにく、しょうがを入れ、中華料理で使われる星型スパイスの八角を入れてささっと混ぜる。

「そしてここに、ソースの素を入れたら２０分は弱火で煮込みます！」

　水５００ｍｌ、醤油大さじ３、砂糖大さじ３、酒大さじ２、酢小さじ１を混ぜ合わせたソースの素。カップをカメラに向けた後、鍋にどばあぁと投入。
　火を弱火に落とし、ゆるゆる沸騰で２０分。時々肉から出てくるアクをすくって、味が濁らないようにしつつひたすら待つ。

　……とは言え動画なので、待ったところはカット。

「はい、２０分経ちました！　というわけで最後の仕上げです！」

　そう言って冰星はオイスターソースと五香粉を加え、５分追加で煮込んで……完成させる。
　その完成した品をカメラの前まで持ってくると、冰星は一言。

「冷ました後にもう一度煮込むと味が染み込んで美味しいですよ。ぜひ、お試しあれ！」

　その一言を最後に、動画は終了した。

成否

成功

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第1章 第4節

　本日投稿の動画は『肉野菜炒め』。
　料理人はシルキィ。

「わたしからはずぼらな晩御飯をご紹介！　お仕事で忙しい時でも自分で作って食べたい……そんな要望を叶える肉野菜炒めだよぉ～」

　カメラ目線を切らずに、豚バラ肉１００ｇと調味料である焼肉のたれ、塩胡椒を紹介。
　調味料に関しては自分のお好みでいいという注釈を入れつつ、彼女はカット野菜の袋を開けておいた。

　フライパンに油を引いて熱した後、豚肉を適当に入れてしっかりと炒める。
　じゅうじゅうと音が立つ中で、シルキィは一言。

「本当は炒めた後に別皿に移すんだけど……今回はずぼらだから、やらない！！」

　どやぁ～！　とカメラ目線になったシルキィ。
　追加で使ったお皿を洗うぐらいなら、そもそも使用・準備しなければいいだけの話。
　使って洗う手間も省いてこそ、真のずぼら飯と言えよう。

　肉に完全に火が通ったところで、開けておいたカット野菜の袋を逆さまにしてフライパンへダイブ。
　冷たい水分と熱い油がバチバチと弾けるうちに、手早くフライパンと箸で炒める。

「カット野菜って便利だよねぇ～。切る手間がいらないって便利～」

　野菜にも火が通ったところでざっと塩胡椒と焼き肉のたれを適当にかけ回し、再び軽く炒めることで肉野菜炒めが完成。
　立ち上る湯気を背に、シルキィはにっこり笑顔。

「疲れてる時は、感覚で料理するのも悪くないよぉ～」

　その一言を最後に、動画は終了した。

成否

成功

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第1章 第5節

　本日投稿の動画は『ニンニクたっぷりチャーハン』。
　料理人は紅迅 斬華。

「料理の首も、スパッと刈ってあげます♪　ということで、材料はこちら！」

　適量のごはん、卵、ネギを画面に写し、調味料として醤油、塩胡椒、中華スープの素、サラダ油を紹介。
　紹介後はニンニクを取り出し、皮を剥き始めた。

「いいですか、ニンニクは１片じゃあないですよ。１つです、１つ！」

　ニンニクがまるごと入ってないと、このチャーハンは成り立たない！　と主張するように、カメラに向けてニンニクを見せつける。
　つやつやに輝くニンニクを取り出したら２片まるごとを香りを出すために炒め、香りが際立ってきたところに残りのニンニクも入れ、ふっくらとするまで火を通す。

　別皿に炒めたニンニクを取り出し、あとは普通のチャーハンと同じく卵を入れてご飯を入れ、塩胡椒と中華スープの素を入れて炒める。
　ここで忘れないでほしいのは、最初から全部強火である。こうでもしなければ香ばしい匂いが立たないためだ。

「そしてしっかりと炒めたところで、さっきのニンニクとネギを投入！」

　バチバチと爆ぜるチャーハンにニンニクとネギを入れて更に炒め、醤油をさっとかけて香りを出したら完成。
　画面越しでも、その香りが漂ってくるような。そんな気がする。

　斬華は出来上がったチャーハンをレンゲですくい取り、ぱくりと一口。

「んん～、美味しい……！」

　その一言を最後に、動画は終了した。

成否

成功