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シナリオ詳細

<Liar Break>狂気の双子道化師

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●街を荒らすサーカスの少女達
 幻想内、アーベントロート領内のとある集落。
 そこは今、とある2人の少女による襲撃を受けていた。
 アクロバティックな動きで集落を襲う2人はほぼ同じ背格好をしており、顔立ちもほとんど似ていることから双子だと思われる。
「キャハハハ、ほらほらほらほらっ!」
「もっと、燃えて燃えて……うふふ」
 水色のセミロングは、姉のリロ。無数のナイフを周囲へと投げ飛ばし、人々の命を奪っていく。
 ピンクのポニーテールは妹のレロ。手にするステッキから暗黒の魔力や炎を発して攻撃を行う。
 その性格、立ち振る舞いはかなり異なっている。
 ただ、性質として同じくしているのは、彼女達がすでに狂気に侵されていること、そして、内からにじみ出る破壊衝動のままに動いていることだ。
 彼女達の連れたゾウがさらに暴れ回ることで、一層集落を破壊する。
「パオオオオオオオォォォン!!」
 そいつは地面を鳴らして周囲を踏みつけ、さらに長い鼻で家や木々をことごとく破壊していく。
 ゾウは半ばモンスター化しており、爛々と赤く瞳を輝かせて鼻から毒霧を吹きつけて集落民を毒に侵して死滅させようとしていく。
「キャハハハ、いいねいいね」
「リロ、メインの目的を忘れちゃダメよ」
 嬉々として暴れる姉を、妹が諭す。
 暴れて集落を混乱に陥れる彼女達の本当の目的。それは、幻想からの脱出にある。
「絶対、ここから脱出するよ、レロ」
「そうね、リロ」
 周囲を見回しながらも、彼女達はさらなる破壊活動へと動くのである……。

●サーカスとの決着を……!
 幻想蜂起を鎮圧した事から連なるノーブル・レバレッジ作戦は大成功した。
「貴族、民衆の皆さんは味方となって、国王も動いている状況なのです」
 ローレットに集まるイレギュラーズ達に、『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)が現状の説明を行う。
 公演取り消しを受けたサーカスは身の危険に気付き、王都から逃走したようだ。
 貴族派や民衆はローレットに協力的で各地で検問を張り、封鎖を行っている。それもあって、サーカスの面々は幻想に釘づけになった状態だ。
 包囲網はかなり狭められてきている。彼らが捕捉され、壊滅させられるのは時間の問題だったのだが……。
「サーカスもそれを察して、一部だけでも国外に逃れようとのるかそるかの大勝負に出たようなのです」
 幻想内で、色々事件が起こっている。
 サーカスは自分達が魔種及びそれに連なるもの、<終焉(ラスト・ラスト)>の勢力であることはもう隠すつもりもないようだ。
「バラバラに大規模な事件を起こすことで、サーカスは混乱に乗じて国外に逃れようとしているようなのですよ」
 ほとんど暴発のような有様だが、暴発であるが故に捨て置けば重大な被害が出る可能性もある。
 彼等の狙いは利己的な貴族達の結束を乱し、『幻想の檻』を崩す事だろうが、そうはいかない。
 そこで、話を聞いていた『蒼剣』レオン・ドナーツ・バルトロメイ (p3n000002)が話を続ける。
「お貴族様方には、『何が何でも封鎖を維持しろ』と伝えてある」
 渋った連中もいたが、フィッツバルディ翁やお嬢様の一喝で簡単に黙ったとレオンは言う。
「つまり、お歴々の信頼を一身に受ける俺達がサーカス連中を直接やればいい」
 サーカスは逃げることを目的としている。
 ならば、遊撃勢力であるイレギュラーズ達が始末をつければ、向こうの狙いもご破算となるはず。
 イレギュラーズは人々の平穏をかき乱したサーカスの悪あがきを食い止め、今度こそ彼等と決着をつけるのだ。
「この最高の機会を、絶対逃してはならないのです!!」
 最後にユリーカがそう叫ぶと、イレギュラーズ達もそれぞれ応じてみせたのだった。

GMコメント

 イレギュラーズの皆様、こんにちは。なちゅいと申します。
 <Liar Break>のシナリオをお送りします。追い詰められたサーカスに対し、団結した幻想の、そして、信頼を受けたローレットの姿を見せてあげてください!!
 以下、概要です。

●敵
○サーカス団員2名
 双子のリロ、レロ。歪んだ笑みを浮かべる少女達です。
 姉のリロが水色のセミロング、ナイフ所持。
 妹のレロがピンクのポニーテール、ステッキを所持。
 いずれも、自身の髪と同じ色の道化師衣装を纏っています。
<共通スキル>
・アクロバティックアタック……物近単
(リロのみ)
・ナイフ投げ……物遠域
・キラージャグリング……物近範・出血
(レロのみ)
・魔力弾放出……神遠域
・ダークファイア……神中列・火炎

○ゾウ×1体
 全長6mほど。見た目は普通の像に見えますが、モンスター化している様子です。
・踏みつけ……物近範・足止
・ノーズアタック……物中域・ブレイク
・毒霧噴射……神近貫・毒

●概要
 幻想内のとある集落を襲うサーカス団員、リロ、レロの撃破を願います。
 彼女達は基本ゾウを暴れさせ、自分達も破壊を楽しみつつ脱出の機を窺う様子です
 なお、『原罪の呼び声』の影響も外部へ与えますが、イレギュラーズの活躍と『絆の手紙作戦』によって幻想の人々には少し狂気耐性がついています。
 これらの活動もあり、今回に関しては狂気の影響はまだ戻ってこられる段階のようです。
 場合によっては、狂った人々等も一時的な敵対をする場合があります。
 ただ、英雄であることをアピールしつつ戦う事で、人々も我に返ってイレギュラーズの皆様を応援してくれることでしょう。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

 それでは、よろしくお願いいたします。

  • <Liar Break>狂気の双子道化師完了
  • GM名なちゅい
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年06月27日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

如月 ユウ(p3p000205)
浄謐たるセルリアン・ブルー
ウィリア・ウィスプール(p3p000384)
彷徨たる鬼火
ゴリョウ・クートン(p3p002081)
黒豚系オーク
セシリア・アーデット(p3p002242)
治癒士
メルト・ノーグマン(p3p002269)
山岳廃都の自由人
悪鬼・鈴鹿(p3p004538)
ぱんつコレクター
レオンハルト(p3p004744)
導く剣
リュゼ(p3p005117)
まねー・いず・じゃすてぃす

リプレイ

●狂気に侵されかけた集落
 幻想内、アーベントロート領内。
 イレギュラーズ達が駆けつけたその集落はすでに、現われたサーカス……シルク・ド・マントゥールの団員達の襲撃によってかなり混乱していた。
「どうして……こんな事件を、起こしたのか。私には……分かりません」
 半身半霊の女性『彷徨たる鬼火』ウィリア・ウィスプール(p3p000384)は無表情のまま小さく頭を振る。
 家々には所々に炎が燃え上がっており、人々は急いでこの場から離れようとしていた。時折、狂気の影響を受けている者の姿も目に入ってくる。
「これは酷い……これ以上はやらせないよ!」
 細身の少女、『治癒士』セシリア・アーデット(p3p002242)は集落の様子に顔をしかめずにいられない。
「……随分好き勝手にしているわね……ここに住んでた人はただ普通に生活してただけしょうに……」
 その連れである『浄謐たるセルリアン・ブルー』如月 ユウ(p3p000205)もまた、被害状況に気分を害していた。
「頑張って……って、ユウ? ……駄目だよ、落ち着いて今から私達が頑張れば被害は抑えられるからね?」
 セシリアはそんなユウを優しく元気付ける。
「……分かってるわよ、セシリア。何事にも冷静にでしょ」
 彼女の存在に我を取り戻すユウはまず、人々の混乱を払拭すべきと口にする。
「ええ……、一緒に頑張ろうね!」
 仲間と共に駆け出す2人。
 セシリアはやはり、人々の狂気が気になったようで。
(……でも落ち切ってないなら、上手く行けばまだ大丈夫……?)
 ならば、周りの空気を味方に。そう考えたセシリアはすっと息を吸って呼びかけ始める。
「皆よく頑張ってくれました! 私達が来たからには安心してください!」
「……ここからは私達の出番よ。原因は私達が何とかするから周りの人を助けて上げなさい」
 ユウもセシリアに合わせ、人々に呼びかけを行う。
「皆さんにも……大切なひと、もの、暮らし……それがあると、思います」
 ウィリアもまた周囲へと避難を促していた。
「狂気になんて、負けないで……自分を、しっかり……保ってください」
 セシリアはウィリアに続いてさらに、やり返したい想いを自分達に預けてほしい、正義はこちらにあると集落民に告げる。
「ここからは私達が……いえ、皆で一緒に彼らの悪事を止めましょう!」
 自分達の呼びかけによって我に返る人々の姿に、セシリアは微笑んでみせたのだった。

●その双子は狂った笑いを浮かべて
 この混乱を引き起こした元凶を、イレギュラーズ達は急いで捜す。
「双子の少女! あったこと無いけど可愛いのかな? 可愛いのかな?」
 金髪パッツンの釣り目少女、『まねー・いず・じゃすてぃす』リュゼ(p3p005117)はお気楽な様子で喋る。
「かわいいは正義だから! 可愛いこと会えるのは嬉しいな♪」
 可愛い子と殺り合えるのはもっと嬉しいと、豪語するリュゼ。
 敵は確かに、リュゼ好みの可愛らしい容姿だったようだ。

「キャハハハ……」
「うふふ……」
 集落の街路にて、水色のセミロングとピンクのポニーテールの少女達が楽しげに笑う。
 彼女達はサーカスの一員、双子の姉妹リロとレロ。
 ――そして。
「パオオオオオオオォォォン!!」
 半ばモンスターと化したゾウが爛々と目を輝かせ、周囲へと長い鼻を叩きつけて建物を破壊し、さらに毒霧を吐き掛けようとする。
「キャハハハ……」
「うふふ……」
 リロは甲高い声で笑いながら、手にするナイフで人々を傷つけていき、レロは涼しい笑いを浮かべて炎を魔力弾を周囲へと放つ。
 そんな敵の行為に、『山岳廃都の自由人』メルト・ノーグマン(p3p002269)は嘆息して。
「悪あがきってやつかね……。迷惑なやっちゃ」
 破壊活動を楽しんではいるが、サーカスの一員である彼女達は追い込まれてもいる。
 それでいて、幻想からの脱出を図る打算的な考えも持ち合わせているのが非常に厄介だ。
「ま、どっちみち私達のお仕事になった以上は覚悟決めて貰わなきゃね」
 メルトは予め、打ち合わせしていた手はずどおりに仲間達と分かれ、手早くサーカス団員の鎮圧へと乗り出す。
 正面から半数余りのメンバーが駆け出し、双子の前へと立ち塞がっていく。
「我々はギルド・ローレットのイレギュラーズだ。シルク・ド・マントゥールの道化たちよ、覚悟しろ」
 右目が緑、左目が金の目を持つ『イツワリの咎人勇者』レオンハルト(p3p004744)が、名乗りを上げる。
「イレギュラーズね、レロ」
「そうね、リロ。……おいで」
 現われた一団を一通り眺め、リロはナイフを両手に幾本も手にし、レロはゾウをそばにへと招き寄せつつその手に魔力を集中する。
「あらあら? 何とも悪い双子のお嬢さん達なの」
 片目を眼帯で隠した色黒な少女、『色欲憤怒の三つ目怨鬼』悪鬼・鈴鹿(p3p004538)はクスクスと笑う。
 対して、ウィリアは髪で隠していない右目でじっと見つめて。
「前に……皆さんの、大きな興行を、見ました。とても……素敵でした」
 ウィリアは以前サーカスの公演を生で目にし、感動し、興奮した。
「それが……人を、悲しませる為の……嘘だったんですか?」
「キャハハ、どうかしら?」
「うふふ、道化の私達が本心をさらすわけないじゃない」
 ウィリアの質問をさらりとかわす双子。
「……これだから人間は……度し難い」
 敵の様子に、鈴鹿は眼帯で隠していない左目を細め、クスクスと笑ってみせる。
「何が狂気か、それは貴様等の醜い本性だろうが、双子の道化共……虫唾が走るわ」
 ――嗚呼、鬼の本能が疼く……この様な醜き者達を滅ぼせとな。
 鈴鹿は我慢が出来ぬのか、己の刀に手をかけて。
「故に……此度はおふざけも情けもなく……殺す、どんな手を使ってもな」
「でもでも、狂った奴を相手にするのはなかなかに面倒だよねー。何しでかすか、わかんないからねぇ!」
 自身もその口だと、主張するリュゼ。
 ゾウを近場に寄せていたのは想定内であり、視界の向こうに見えた姿を確認してリュゼはほくそ笑む。
 前方から現われたのは、オークかと思われる豚人間、『名監督』ゴリョウ・クートン(p3p002081)だった。
「ぶはははッ! イレギュラーズのゴリョウ・クートンだ! デカブツが居ると聞いて邪魔しに来たぜッ!」
 巨盾のレプリカである「SCR」を掲げ、彼は堂々と自らの威容を示す。
 なお、その後ろには、ゴリョウをサポートすべく控えるセシリアの姿もあった。
「キャハッ、挟み撃ちとはね」
「うふふ、それで勝ったつもり?」
 こちらの布陣にもまるで驚く様子はない2人。
「……何でこんな事をとは聞かないわ」
 仲間達のやりとりもあって、元凶がこの双子だと疑わぬユウは静かに怒りを燃え上がらせる。
「……私、今機嫌が悪いのよ……。だから、ここで貴方達は終わりなさい!」
「グランドフィナーレと行こうか、シルク・ド・マントゥール」
 緊張が走る中、レオンハルトもまた相手から距離をとりつつ、処刑人の剣を構えた。
(しかし、狂気から立ち直らせるためとはいえ……)
 元の世界で勇者となれなかった自分が自ら勇者を名乗る。
 それが実に皮肉な運命だと自虐しつつ、レオンハルトは相手の出方を窺う。
 そこで、双子の顔は互いに微笑み合って。
「キャハッ、なんとしても突破するよ、レロ」
「ええ、生きて皆と合流するわ、リロ」
 敵の声を耳にしたゴリョウは不敵な笑みを浮かべ、盾を構え直して。
「さぁ、ショータイムだ! 怪我したくなけりゃあ、近付くんじゃねぇぞぉ!」
「パオオオオオオオォォォン!!」
 ゴリョウとゾウの怒号が戦い開始の合図となり、両者はぶつかり始めるのだった。

●ショーの終焉
 敵、サーカスはゾウを中央に、双子リロレロがその左右に位置取る。
 その前後にイレギュラーズ。手前側に6人。奥側に2人という布陣。街路で挟み撃ちすることで、敵の退路を断つ形だ。
「おーい! ばーかばーか! ざーこ! ざーこ!」
 リュゼがまず、双子をゾウから引き離そうと、子供じみた挑発をしてみせる。
「キャハハッ、バカにしているね」
「うふ、舐めた真似を……」
 それに乗る双子の注意を引くメンバーの逆側では、ゴリョウが一度ゾウをぶん殴る。
「来いやデカブツ! テメェの重量(おもさ)と俺の盾(かたさ)、どっちが上か比べようじゃねぇか!」
 改めて、口上をあげたゴリョウはすぐさま後退していく。
「パオオオオオオオォォォン!!」
 まんまとつられたゾウは嘶きながらゴリョウを追い、鼻を叩きつけようとする。
 ただ、これはイレギュラーズ達の作戦通り。
「他の人が来るまでの間、癒すのが私の仕事」
 引きつけるゾウの破壊力に耐えるゴリョウを、セシリアが治癒魔術や回復薬を使ってそのカバーをする。
 そして、メルトは双子の姉、リロへと仕掛ける。
 双子はゾウが奥の2人が引き付けており、この場に残る双子が連携する恐れがあった為、メルトはじと目で相手を見つめて攻め込む。
 彼女は無銘のロングソードを中心に攻撃を行うが、剣のみを使うというわけではない。
(意識を他にいかせぬように……)
 我流の武術をおりまぜ、メルトは足や頭突きも活かしてリロを攻め立てる。
「かかってきなよヘボ芸人。道化よりゃ笑わせてくれんだろうね?」
「あたしとサシでやるの?」
 いい度胸だと笑うリロはその誘いにのり、ナイフを投げ飛ばしてきた。
 それ以外の5人は、炎と魔力を操るレロを集中して叩く。
 仲間達が攻め込む中、相手の使う炎も考慮してスキルで耐性をつけるウィリアはやや前線寄りに位置取ってレロへと語りかける。
「私は……ただの、旅人です」
 サーカスの事情など知らない。安全にこの世界で旅が出来れば問題ない。
 ただ、サーカスはそんな旅を、世界を脅かす人間だ。
 恨みはないが、ウィリアにとって見逃すことは決してできない。
「どうか……大人しく、して下さい。でないと……命の保証は、できませんよ」
「それはできないわね」
 毅然とウィリアの言葉を拒否したレロは、魔力弾を発する。
 広域にそれは破裂する為、ウィリアを含めたこの場のメンバーはできる限り固まらないよう配慮し、相手同様に炎と魔力を叩き込む。
 一定の距離を保ちつつ、レオンハルトも仲間と連携して休みなく攻撃を浴びせかける。
「どうした? 道化師自慢の一発芸でも見せてみろ」
 彼もまた、紅蓮乱破の戦闘スタイルで火炎に耐性を持つ。
 ならばと火炎を放つレロは、燃え盛る炎にもレオンハルトが平然としているのに気付く。
「安心しろ、姉妹ともどもこれが最後の公演だ」
 やや距離はあるが、レオンハルトは流麗に舞いながら処刑人の剣で相手の体を傷つけていくと、跳び回るレロは全身から血を流し、膝を突いてしまう。
「うっ……」
「クスクス……どうかしら? 貴方達自身がいたぶられる側に回った感想は?」
 楽しそうに笑う鈴鹿はいつの間にか忍び足でレロの背後に迫り、「幻影刀・朧」の刃を煌かせて。
「道化極まりないわね、鈴鹿笑ってしまうわ」
 彼女はレロの四肢を一刀両断してみせると、レロは痛みで僅かに顔を引きつらせていた。
「短期決戦をしないとまずいわよね」
 ユウは奥でゾウと応戦するゴリュウを見やる。
 相手は見上げんばかりの体躯のモンスターだ。いくら、セシリアがヒーラーとしてついていても、長く耐えられるはずもない。
 双子の妹レロを集中して叩くメンバー達。
 レロは多数に囲まれても冷静に、アクロバティックに戦場を舞って。
「リロ……」
 姉を気にかける彼女に気付き、ユウは氷の刃を発生させてその身体を切り裂く。
 刃に裂かれ、レロは傷口から血を噴き出す。これだけ囲まれた状況では、姉であれ気遣う余裕はないようだ。
 ぼやぼやしていれば、次なるイレギュラーズが襲い来る。
「やっぱり、可愛い子と殺り合えるのは嬉しいね!」
 遠距離から相手を狙うリュゼも抑えに当たるメンバー達を一瞥した後、負担をかける彼らがもっている間にできる限り早く相手を潰さねばと考える。
「カッコよく英雄アピールは柄じゃないなぁ」
 リュゼは「サウザンド・ワン」の照準をレロへと合わせて。
 その上で、ギフトを使う彼女はロボの幻影を纏い、弾丸を発射した。
 狙いは違わず、それはレロの胸部を撃ち抜く。
「あうっ……」
 撃ち抜かれて目を丸くするレロへ、鈴鹿が背後から迫る。
「さあ、歪んだ笑顔で逝きなさい。貴方達にはそれがお似合いでしょ、道化師さん」
 その身体を、彼女は躊躇なく切り裂く。
「リ、ロ……」
 飛び散る血飛沫。血で濡れて倒れるポニーテールの少女は力つき、もう動こうとはしない。
「キャハハ、レロ……」
 妹を失い、笑みを浮かべたまま一筋の涙を流すリロ。
 そのナイフを受け続けながらも、メルトはスキルによる自己再生でこの場を耐えていた。
「あなたも、覚悟を決めてね」
 足止めしていたメルトは仲間達が駆けつけてきたのを察し、さらに強く攻め立てるのである。

「パオオオオオォォォン!!」
 暴れ狂うゾウを全力防御で抑えるゴリョウ。
「ぐっ……」
 自重をのせた踏み付けにも、彼は歯を食いしばって耐えてみせる。


 ゴリョウが足を止めそうになれば、セシリアが小さな幸運を彼にもたらし、体力を幾分か回復させていた。
 その間に双子の姉、リロへとイレギュラーズの攻撃が集まる。
「キャハハ……」
 戦場を跳び回り、ナイフを軽やかに操るリロは徐々に、その動きを鈍らせてしまう。
 序盤からそいつを相手していたメルトはここぞと無銘のロングソードに暗闇を纏わせた。
 出し惜しみはしない。彼女は全力でそれを逆袈裟に振るう。
「キャ、ハ、何も、見え……」
 目の前が暗転したのか、リロは態勢を崩して倒れる。
「レ……ロ……」
 妹の亡骸まで気力を振り絞って張っていたリロは彼女の手をつかんだ直後、意識を失ってしまった。
「後は……」
 メルトは倒れる双子から視線をそらす。
 イレギュラーズ達は地響きを起こして暴れるゾウの討伐へと移る。
「ぶはははっ、大逆転こそ喧嘩の華ッ! さぁ、覚悟してもらおうか!」
 ゴリョウもかなり傷ついているはずだが、仲間達が車で何とか耐え切って見せ、巨盾「SCR」を掲げて攻勢に出る。
 イレギュラーズ達の勢いは衰えない。
 魔力を高めたユウが氷の刃をゾウへと見舞えば、レオンハルトが「処刑人の剣」で刃を飛ばし、相手の足を切り裂いて大きく態勢を崩す。
 だが、敵は大きく息を吸い込んで。
「毒霧がくるぞ」
 前兆を察知したレオンハルトは仲間に呼びかけるも、ゾウはすぐさま毒霧を吹いてくる。
 腕を黒くしながらも、それに耐えてみせたレオンハルト。
 ただ、おかげで他メンバーはうまく逃れていたようで。
「リュゼには届かないよー!」
 射撃を繰り返し、リュゼは確実に相手の体力を減らしていく。
 相手の毒霧をうまくやり過ごしたウィリアは、幽焔の腕から直接ゾウへと炎を浴びせかけた。
 疲弊したゴリョウの代わりはメルトが務める。
 彼女はリロの抑えを行っていた時同様、戦闘態勢を整えた上で自己再生を行い、持久戦の構えをみせた。
 ただ、この場は1人で支える必要はない。相手の攻撃に注意して立ち回り続けるセシリアが気力の限り、癒しに当たっていく。
「こっちよ」
 鈴鹿は敵の視界が及ばぬ背後から「幻影刀・朧」の刃で相手の皮膚を切り刻む。
 イレギュラーズ達の攻撃が重なり、全身から血を流すゾウが苦しむ。
 それでも、応戦の構えをみせるゾウが鼻を叩きつけてきたのに対し、ゴリョウは相手の力を活かしつつ、巨盾をぶつけることで強烈なカウンターを見舞う。
「終わりだ、デカブツ」
「パオォォォォ……」
 目から光を失い、ゾウは横倒しになって崩れ去った。
 メルトはゾウを見下ろした後、手を繋ぐ態勢で倒れる双子を見つめ、軽く祈りを捧げた。
「こいつ等が奪っただろう全てのモノよ、安らかに……ってね」
 それで何かが救われるかもしれない。意味なんかないかもしれない。
「でも、それもまた、一つの決着だよね」
 ともあれ、この場のメンバー達は一仕事終え、大きく息をつくのだった。

●救い出した集落にて
 我を取り戻す集落民が事後処理を始める中、イレギュラーズ達も各自散開していく。
 セシリアはそんな中、双子やゾウに襲われたり、避難の際に倒壊した建物に巻き込まれたりして怪我を負った人々の治療へと当たる。
 ユウもそんなセシリアの手伝いにと、水汲みや包帯などの買出しにと動いていたようだ。
「後始末も仕事の内ってな!」
 ゴリョウは仕留めたゾウを集落の男性達と共に外へと運び出し、さらに瓦礫の撤去や資材搬入と忙しなく力仕事に精を出す。
 鈴鹿も男性に交じって瓦礫撤去の手伝いをしていたのだが。
 家を半壊させて落ち込む男性にはふくよかな胸を活かして……。
「ほら、これで少しは元気を出しなさい」
 下着を着けていない鈴鹿は己の性的魅力を全開にして、男性を違った意味で元気づける。
 ただ、男性はすぐ奥さんに思いっきり頬をひっぱたかれてしまう。
 それに、鈴鹿は小悪魔っぽく笑って見せたのだった。

成否

成功

MVP

ゴリョウ・クートン(p3p002081)
黒豚系オーク

状態異常

なし

あとがき

なちゅいです。
皆様の活躍により、サーカス団員、リロ、レロ両名とモンスター化したゾウの討伐、完了いたしました。
今回はお疲れ様でした。どうぞ、ごゆっくりとお休みくださいませ。

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