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シナリオ詳細

<フルメタルバトルロア>突き上げた拳は壁ばかり叩くから

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


「……嘘だろ、この人が『シャドーレギオン』になっちまったってのか?」
「間違いないようだな。今の所、元気に襲撃を繰り返していると聞いている」
 ユウキ(p3x006804)の問いかけに、『覆面鉄人』ドムラ・ミンミン(p3y000097)は鎮痛そうな面持ちで頷いた。もっとも、鼻から上の表情筋の動きは仮面のせいで見えないのだが。
「今回のイベント――『フルメタル・バトルロワ』では対象の願い、つまり『WISH』を『DARK†WISH』として歪めて出力することで彼等が暴れる理由を作り出している。この人物も、決して身ぎれいではなかったがWISHは十人並みのそれだったはずだ」
「分かってる。アタシが知ってるこの人はハードボイルドで、鋼鉄(このくに)でもきっとスーパースターだったはずなんだ。それなのに……」
「ああ。『混沌』同様、否、それ以上に彼はスターであるはずだよ」
 ユウキの悔しさのにじむ声に、ドムラは是と応じた。だが、現実はどうなのか。調べはついているが、終ぞ彼はユウキに伝えることができなかった。
 撃破対象の名は――『キャプテン・リーゼント』。A級闘士だ。


 キャプテン・リーゼントはスターであった。
 A級闘士という立場は、それだけで浴びる脚光、受ける評価、周囲からの視線が下級闘士とは全く異なる。彼はその立ち位置を維持し続ける、というだけで十分な猛者であった。
 猛者であった、はずだった。
 嘗ての栄光の為に力を尽くして戦いの場に立ち続け、しかし日々痛感する世代交代の波に抗う。
 多くのイレギュラーズが『鋼鉄』で名を挙げる中、彼はA級に『しがみついている』とすら揶揄された。
 鋼鉄は力こそが物を言う。だが、力ばかりを主張して華やかさに欠ける闘士は、ただ勝つだけの舞台装置として評価が決して高くはない。いわんや泥臭い戦いは、それが『ウリ』ではないリーゼントがしていいものではないはずだ。
「欲しいモンは手に入るはずだ。女だって、酒だって、なんだって。まだ、俺は欲しいモンを諦めてねえ。諦めきれねえ。『スター』が諦めちゃいけねえ。欲しいモンは勝ち取れるって、見せてやらねえと」
 力一つで勝ち取ってきた人生を諦めるという選択肢はリーゼントにはなく。
 諦めのいい性格の、いつ失うかわからぬものに怯える『小心者』としての自分を他人に軽々にさらけ出す気もさらさらなかった。だから、己の名を糧に徒党を組んで夢に逸る男たちを集めた。ただ自分の背を見てついてくれば、いい夢を見られると。
「だから俺は諦めてやらねえ。お前達にもいい夢みさせてやる。だから――この俺についてこい!」
 リーゼントの掲げた拳に合わせ、粗野な男たちが咆哮を上げた。
 その足元には、倒れ伏した人々や捉えられた女性達、奪われた物資がわだかまっている……。

GMコメント

 混沌ではどうなるか分かりませんが、少なくとも『ネクスト』では拳で分かり合う相手となりそうです。

●成功条件
 キャプテン・リーゼントの戦闘不能(致死ダメージに追い込んでも例外的に生き延びます)
 鋼鉄愚連隊全員の撃退(推奨:70%以上の生存。原則生死不問)

●キャプテン・リーゼント
 鋼鉄A級闘士。
 ハードボイルドと兄貴風を売りに練達の映画・CMなどにも多数出演していたスーパースター『だった』。
 酒、女、金、名誉とあらゆるものを欲する欲深な小心者という本性はしかし、スターとして振る舞う限りは表に出していなかった様子。愚連隊にも、小心者な面は見せていません。
 曲がりなりにもA級を維持するだけあり、生半可な実力ではないと言えるでしょう。
 得意技はリーゼントメガレーザーとリーゼントハイパーミサイル。それ以外にもリーゼントと腰に佩いた剣による『二刀流』をベースにしたかなりオールラウンダーな戦闘が可能です。
 二刀流は変則的すぎて、見たものを混乱させるとも言われています。
 戦闘不能になると『シャドーレギオン』化から開放されます。

『WISH』
 自分の実力で欲求を満たしたい
『DARK†WISH』
 全てを自分の思い通りに奪い去りたい

※WISH&DARK†WISHに関して オープニングに記載された『WISH』および『DARK†WISH』へ、プレイングにて心情的アプローチを加えた場合、判定が有利になることがあります

●鋼鉄愚連隊×25
 リーゼントに心酔し、自分たちも力で奪うことを夢見た男たち。
 リーゼントと違い普通に死にます。
 エクスギアによる突貫でそこそこの数を削れます。
 基本的には重火器なんかを持っています。レーザー兵器を持つものも少数。
 憧れってそういうことかよ。

●戦場
 荒野のド真ん中。エクスギアで突っ込んで一気に叩く流れです。
 広いので数的劣勢はそのまま包囲される危険性をはらみます。注意。

・黒鉄十字柩(エクスギア)
 中に一人づつ入ることのできる、五メートルほどの高機動棺型出撃装置。それが黒鉄十字柩(エクスギア)です。
 戦士をただちに戦場へと送り出すべくギアバジリカから発射され、ジェットの推進力で敵地へと突入。十字架形態をとり敵地の地面へ突き刺さります。
 棺の中は聖なる結界で守られており、勢いと揺れはともかく戦場へ安全に到達することができます。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • <フルメタルバトルロア>突き上げた拳は壁ばかり叩くから完了
  • GM名ふみの
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年07月24日 22時20分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

セララ(p3x000273)
妖精勇者
ザミエラ(p3x000787)
おそろいねこちゃん
ユウキ(p3x006804)
勇気、優希、悠木
WYA7371(p3x007371)
人型戦車
セフィーロ(p3x007625)
Fascinator
デイジー・ベル(p3x008384)
Error Lady
カナタ・オーシャンルビー(p3x008804)
正統派アイドル
ルージュ(p3x009532)
絶対妹黙示録

リプレイ


「黒鉄十字柩なんて乗り物があるのですね、ROOでは。凄いですね」
 『機械の唄』デイジー・ベル(p3x008384)は今まさに自分達を乗せて発射せんと準備されたエクスギア8基を前に、感嘆の言葉をあげていた。
 彼女の驚きも尤もである。彼女や『硝子色の煌めき』ザミエラ(p3x000787)、『妖精勇者』セララ(p3x000273)のような比較的小柄な面々はともかくとして、射出できるレベルを越えていそうな『人型戦車』WYA7371(p3x007371)をも容易に収めてしまえるサイズ感は、初見の者には驚きを以て迎え入れられるものだろう。
「……ゲームとはいえ、キャプテン・リーゼントのこんな姿は見たくなかったぜ……ちくしょう! アタシの憧れのキャプテンが!」
「……ま。ああいう馬鹿野郎はブン殴って目ェ覚まさせるに限るわね。良いじゃない。分かりやすくって」
「■■■……じゃなかった、私も、あのハードなヘアスタイルごと一度ぽっきり折らないといけないと思うけどね」
「そりゃあ、そうするしかねえけど……」
 『勇気、優希、悠木』ユウキ(p3x006804)にとって、『彼』は憧れの対象だ。『ネクスト』での出来事とはいえ、それがああも歪んだ形で現れるとは思っていなかった。せめて、もう少し違った出会いがあったはずなのに。『Fascinator』セフィーロ(p3x007625)やザミエラのざっくばらんな口ぶりにはやや面食らったが、然しその意見には同意を返さざるを得ない。彼女の知る『キャプテン』は、歪められてそこにいる。ならば助けるしか、あるまい。
「早々に襲撃に向かい、早急な解決を成し遂げましょう。それがミッションですから」
「うん、被害にあった人達もいるみたいだから安心させてあげなきゃだもんね!」
 WYA7371とセララはエクスギアの状態を確認しつつ、いつでも出撃できるよう準備を整えている。彼女らはどうすべきか、を語る人種ではない。どうしたか、つまり己の成した結果でのみ語る人種だ。
「みんな、リーゼントさんたちは私たちで元に戻してあげよう! 私はR.O.Oでは初めての戦闘依頼だけど!」
「任せろ!! おれが、あのにーちゃんをぶん殴って、スターの矜持ってやつを思い出させてやるぜ!!」
 『正統派アイドル』カナタ・オーシャンルビー(p3x008804)と『絶対妹黙示録』ルージュ(p3x009532)の2人はやる気十分といった様子で、早々にエクスギアに身を預けていた。今や遅しと出撃を待つ様子は、戦功を焦っている、というよりは単純にこの世界での戦いに、そしてキャプテン・リーゼントそのものに興味がある、といった様子。
 如何にして戦うか、そして倒すか。彼の主張をどのように突き崩すか。
 ただ暴力を前面に押し出すわけでなく、受け止めて殴りつける。異質な戦いでありながらも、ユウキの気持ちを思えばこそ、やるべきことはあるはずなのだ。
「ところでこのエクスギアってやつ飛びながら着地位置調整できない?」
「形状からして無理そうですね。キャプテン・リーゼントの位置なら当機である程度特定はできますが」
「そっかぁ、じゃあ適当にモブをふっとばそう!」
 ザミエラは出撃前の最後の確認として、エクスギアに触れながら疑問をぽつりと。返ってきたWYA7371の言葉に、心から残念そうな顔をしてから、即座に気持ちを切り替える。
「……何度もお世話にはなりたくないヤツだわ」
 斯くして、セフィーロの呟きすらも置いていくかのように、エクスギアは射出される。
 落下地点は敵集団直近。轟音を挙げながらエクスギアは滑り込み、地面を薙ぎ払い。
「何だよ畜生、爆撃か?! こんなところに1」
「良い心と悪い心は誰もが持っているものなんだ。
 それを無理矢理変えちゃうなんて、そんな事は許さないよ。
 皆の心はボクが守る! 妖精勇者セララ、参上!」
 エクスギアから飛び出たセララの声高らかな宣言が、動揺する愚連隊の声をかき消した。


「Step on it. さっさと終わらせましょう」
「どいつもこいつも殴り甲斐のありそうな面ばかりね。徹底的に教育してやるわ」
 WYA7371とセフィーロは意図せず背中合わせの態勢になると、互いの眼前の敵目掛け、それぞれの術技を発動させる。前者が放つエネルギーバレットはリーゼントごと周囲の愚連隊を狙い、後者の至近距離からの一撃は身を守る余裕すらも与えない。
「究・極! スーパーセララキック!」
「ほらほら、いたいけな女の子を大勢で取り囲んでなんて、ダサいしモテないんだからね!!」
 セララの矮躯からは考え難いエネルギーの奔流が地面に叩きつけられ、愚連隊達を蹴散らしていく。当然ながら反撃も激しいが、エクスギアの余波から立ち上がれぬ者達はついでのようにザミエラの硝子片を受け、相手の選択すらもままならぬ。
「みんな、付与をするよ! 頑張ってね!」
 カナタは仲間達の守りを固めようと術式を組み上げると、自分を中心にそれを行使する。僅かな違い、だが、それが複数名に行き渡るとなれば、全体としての差異は凄まじいものとなろう。
「いっくよー! アクティブスキル1!」
 そこからの流れでどこと構わずに打ち込まれたスキルは成程、相応の破壊力を誇っているらしい。傍らを過ぎった力の余波に、愚連隊の者達はややたじろいだ。
「それにしてもどうしてここまで愚連隊を集めたのでしょう。集まった所で、リーゼント個人の力は何も変わらないというのに」
「分かってねえなあ女ァ!」
「集めた? 違うね、『集まった』ンだ!」
「俺達ゃ憧憬(ユメ)をおっかけてキャプテンについてきたんだよ! キャプテン本人に利益があるとかじゃねえ、キャプテンと一緒に実力で欲しい物を手に入れてえだけよ!」
 心底理解できないといった風情のデイジーに、愚連隊の面々は口々に否定を入れる。リーゼント本人にとっては、威圧的な意味合いも無論のことあるだろう。が、本質は『愚連隊がついてきた』のだ。
 彼等は数を頼り数に物を言わせることで、それを自分の実力と思いたい連中なのである。
「つまり、皆さん1人ではなにもできない、と。……恥ずかしくはないのですか?」
 デイジーは呆れともつかぬ表情で愚連隊を見据えると、遠く目掛けて聖杖を傾ける。迸る魔力は弱っていた愚連隊らの動きを縛り付け、幾人かの意識を明確に刈り取った。戦闘不能になった者達の体が一時的にグレイアウトしているのは、不可抗力で殺害に至らぬためのシステムアシストだろうか? だとしたら、本当によくできている。

「違うだろ。何ていうか、それは違うだろリーゼントのにーちゃん!!」
 WYA7371が放った一撃で割り込むことすらままならぬ愚連隊をよそに、ルージュは真っ直ぐにリーゼントに向かうと、 魅剣デフォーミティを真っ直ぐに振り下ろす。刃に宿った光は多重にぶれ、避けることを困難にする。どころか、振り下ろした勢いから更に跳ね上がった刃が幻惑の効果をいっそう強くし、さしものリーゼントでも避けることを許さない。
「あァ? どれが違うって?」
 否。
 避けることが許されない、のではない。
 軽々に避けること「は」許されないのだ、まがりなりにも『A級闘士』であるリーゼントには。現に、彼はルージュの剣を受け流し、致命打を避けているではないか。
「スターが手に入れる夢ってのはな、スターである結果についてくるものなんだ。手に入ればどんなやり方だって良い、なんてのはな。それは自分自身をも冒涜するやり方だぜ!!」
「それは高みに足をかけたことのないヤツだから言えるんだぜ、ガキ。足元から這い上がってくる『下(かこ)』と辿り着くのも難しい『上(さき)』を見りゃ、お前だって――」
「キャプテン! キャプテンだろ!」
 ルージュの連撃を受け止め、前蹴りで間合いをとって正面目掛けての『二刀流』。頭の大雑把な動きからは想定できない精緻な拳撃に、思わず彼女はじりと後退する。リーゼントの言葉が続こうとしたそのとき、まさにタイミングよくユウキの声が飛び込んできた。
「会えて、嬉しい…嬉しいけどよ! なんでこうなっちまったんだよ! キャプテンはハードボイルドで女子供に手を出すヤツなんかじゃねぇ筈だ!」
「うるせェぞ!」
 ユウキの必死な訴えかけに、しかしリーゼントの声は固く、ぎらついた目は明らかになにかに取り憑かれたかのような錯乱具合を呈していた。
「キャプテン(おれ)は、スター(おれ)は、A級闘士(おまえたち)はそうじゃない。耳にタコ出来るほど聞いてんだよ! お前等が俺の何を知ってるってんだ!」
「アンタはアタシのスターなんだよ!」
 行手を阻もうと現れた愚連隊を殴り倒し、ユウキは叫び返す。飛来したレーザーの火力を前にごっそり減ったHPバーを視界の端に収めつつ、『彼女』は頭に手を当て、懊悩するかのように続ける。
「自慢のリーゼントだってアンタのポマードを使ってた! そもそもリーゼントにしたのだってアンタに憧れて……! ああ、いや、今はリーゼントしてないけど……! けど、心底、痺れた、子供ん時からのヒーローなんだぜ!?」
「なら、忘れな」
 ユウキの述懐は、ともすればリアルが割れる危険性を大いに孕んだものだった。だが、口にせずにはいられなかったのだろう。だからこそ、返ってきた冷たい返答はその反応を遅らせる。
「――貴方にとってA級闘士とは『そういうもの』なのですか?」
 ユウキ目掛けて飛んできたミサイルを重力フィールドで逸し、うち一発を身を呈して受け止めたデイジーは、感情のこもらぬ声で問いかけた。
「ただの人を痛めつけ、女性を捕らえ、物資を収奪する。それが輝かしきA級闘士の在り方ですか? 本当にそうなのですか?」
「お前等が求める『A級』じゃねえだろうな」
「なら、なんで!」
 ルージュの攻撃を真っ向から受け止め、切り払い、反撃に移ったリーゼントは、低い姿勢から剣を鞘ごと振り上げる。顎に叩き込まれたそれは完全に意識の外から割り込み、一瞬だけ彼女の意識を白化させた。
「綺麗な理屈、理想的な勝利、求められる偶像(スタイル)。そんなモンに応えてたら、俺は屹度――」
 ぶつぶつと吐き出しながら振るわれる連撃に、華々しさも派手さも、まして力強さもない。周囲から放散される暗褐色の敵意をそのまま吐き出すような攻撃は、昏い色のレーザーを、辺り構わず放たれるミサイルを、そして乱雑な剣舞を伴った。
 ……だが。
「キャプテン・リーゼント。キミが本当に欲しいものは何?」
「物資を奪い、女を奪い。満たされましたか。あなたが欲しいものは手に入りましたか」
 セララの、そしてWYA7371の『しぶとい』攻撃と、それに混じった言葉が、乱戦を制しようとしたリーゼントに突き刺さった。


「愚連隊の人たち! あなたたちはこのままでいいの? その武器は無害な人を襲って捕まえるための物じゃなくて、おかしくなったリーダーを止めるために使うのよ!」
 カナタは倒れ伏した、或いは動きの鈍った愚連隊の者達へと説得の言葉を向ける。カリスマ性の籠った声は、しかし彼等の精神にわだかまる歪んだ願いを変えるには至らない。いわんや、戦闘不能で虚脱状態に陥った者ならばなおさらに。彼等(はいぼくしゃ)に必要なモノはそれではない。だが、その声が全くの無意味とも、言い切れぬ。
「自分の力で結果を掴み取るってことは、弱い奴から奪い取るのと果たして同じなのかしらね」
「あなたが真に勝ち取りたかったのは、物や人ではなく、自分自身。己の誇りではなかったのですか」
 セフィーロの苛烈な二段攻撃を前に、リーゼントは思わず腕を上げ自らを守ろうとした。が、それはかなわない。WYA7371が放った掃射を受けたことで、守りに転ずることすら封じられていたのだから。
 そして、2人の言葉は無防備な耳朶によく響く。
「キミが今、欲望のままに行動するって事はファンを裏切り、スターを捨てるってことなんだよ。ファンのことを思い出してあげて。キミの事を信じ、好きだと言ってくれる人々のことを」
 セララの放った聖剣の一撃は、言葉ごとその動きを制限しようとする。雷撃をまとった二度目の斬撃が振り上げられると、その傷跡は彼の胸でクロスし、深々と傷を残す。だが、流石はA級闘士。それだけの猛攻に、足を踏みしめ耐えきってみせた。
「思い出してくれよ! ハードボイルドなアンタを!!」
「ハードボイルドなんて柄じゃねえんだよ! 俺の格好(ナリ)と俺の戦いについた『色』に応えただけじゃあねえか!」
 それは、ユウキの求めてきた、追いかけてきた影への全否定。絞り出すように放たれた言葉に、彼女はまたしても、意識を削られる想いがした。だが、それでも。先の猛攻で奪われた『命』を無駄にはしたくない。
「……弱くたって『折れない熱い魂があれば、誰にだって食らいつける!』」
「!?」
「アクション映画『the・リーゼント』でキャプテンが言った台詞だよ」
 リーゼントですら忘れかけていたであろう『名言』を引き合いに出し、食らいつくように突き出されたセスタスの威力は如何にも、他の仲間と比べれば万全ではなかっただろう。
 だが、死を経てなお前にでる気力と、突き出された拳の重みは誰よりも重いものだ。それは、恐らくシャドーレギオンと化したリーゼントにとっても。
「ふうん、いいコト言ってんじゃない」
「その言葉を信じてくれるユウキは、その言葉を口にした過去は、キミの積み上げてきたものなんだよ!」
「おれは、にーちゃんがスターの矜持を思い出すまで、殴るのを、やめねえ!!」
 そして、『彼の言葉』は時を経て、セフィーロを感心せしめ、ルージュに矜持の共感を与え、そしてセララの言う『積み重ね』の説得力を弥増した。
「そんなおっきいリーゼントのクセに願いはまるで萎びたナスビじゃない、格好悪い」
 ザミエラの言葉が彼の心を抉り取り、WYA7371の攻勢はさらなる勢いでもってリーゼントの動きを封じ続ける。圧倒的な個の実力は、しかし連携の前には劣勢であろうか?
「戦っているボク達だから分かる。キミは強い! 格好良い! だからシャドーレギオンなんかに負けるな!」
「あなたが見るべきは最早夢ではない。あなた自身です」
 小さくとも強くて格好いい技を繰り出し、セララが吼える。
 巨躯から繰り出される繊細な積み重ねを経て、WYA7371は彼の心に語りかける。
 ……それはなにより、言葉ではなく実力による『立証』だった。

「ねぇ、一曲歌って貰えないかな?本物のスターの歌、聞いてみたいんだ」
「冗談じゃねえ、恥ずかし」
「キャプテン、歌ってくれるのか?!」
「いや、今は疲れ」
「やっちまってくだせぇ、アニキ!!!!」
「おれにも聴かせてくれよ、ヒーローの歌ってやつを!」
 そして、戦闘後。
 彼はイレギュラーズと、カナタにノせられた愚連隊の声援で退くに退けなくなったのであった。

成否

成功

MVP

ユウキ(p3x006804)
勇気、優希、悠木

状態異常

ザミエラ(p3x000787)[死亡]
おそろいねこちゃん
ユウキ(p3x006804)[死亡]
勇気、優希、悠木

あとがき

 情熱は死をも超えるのです。

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