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シナリオ詳細

謎の覆面の人、突如冒険者の前に立ち塞がる

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


「情けない魔獣どもめ。貴様等が勝てぬ勝てぬと冒険者達から逃げている間に、その同胞が数多死んだぞ。その体たらくで、何を思って森の覇者などと恥知らずに名乗るのか」
「Grr....」
 希望ヶ浜の学生たちが駆るアバター達と、今回の討伐目標であった魔獣の群れとの間では、既に報告書1本分に相当する激しい戦いが繰り広げられていた。当初は数十を数えた魔獣達も今や両手で足りる程度まで減り、しかし学生アバターの総合戦力も相当に落ち込んだ状態。死んだら戦線に復帰できない以上は慎重に立ち回っていたわけで、まあかなり大変な戦いだったのだ。
 そんな、佳境に入ったといえる状況で両者の間に謎の覆面の人が現れ、唐突に魔獣に説教を垂れだしたのだ。……『ネクスト』で神秘に明るい者が見れば、覆面の人から魔獣に向けて魔力が流れている事がわかるだろうか?
「だが、そちらの冒険者も冒険者だ。及び腰なのか知らないが追い詰めた側だというのにどこか殺気が鈍い。死に恐れでもあるのか」
 率直に、『死ぬのが怖いのか』と煽られた一同は、「そんなことあるものか」と反論しようとした。だが、どうだろう?
 心中に去来するのは、アバターが死亡するという事実に対する明白な恐怖。足の裏から蟻の群れが這い上がるように徐々に侵食してくる感情は、本当に怖いのかも知れない、と錯覚させるに余りある。
「死なないなどということはあるまい。殺せば死ぬのだ、魔獣共も、貴様等『外の世界の』冒険者も、殺せば死ぬのだ」
「…………は?」
 謎の覆面の人は言った。『外の世界』と。
 彼はそれを認識している、というのか?
「情けない奴等よ。身分のひとつ、吹けば飛ぶ泡沫の如きものだろう。いま考えるべきは怒り狂った獣の処遇だろうというのに」
 冒険者たちは、足を止めた。目を瞠った。だから、見ていないわけではなかった。
 ただ、そちらに焦点を合わせる余裕がないまま――窮鼠の勢いを借る獣達にただただ蹂躙されたのである。


「……と、いう事例が報告されたにゃ。なんで情報が入ってるかって? ギリ生き残った学生アバターがなんとか逃げ延びたけど他の連中はリスキルされてるらしいにゃ。しかも非常にエグい殺され方で」
 『魔獣の餌食にされた』アバター達。その意味を考えれば、『イモ食え』ぱぱにゃんこ (p3y000172)が何をいわんとしているのかは自ずと分かるだろう。
「この一連の話から考えるに、謎の覆面の人は『ネクスト』でバグったNPCにゃ。アバターを見分ける能力があって、魔獣にも冒険者にも無駄口を叩くのが大好きな痴れ者にゃな。……で、こいつの言葉を聞くと『本当にそうかもしれない』という強制力? そういったものが働くみたいだにゃ。これはステータスで数値化された『バッドステータス』ってヤツとは別枠、ガチもんのバグにゃ。ヤツの言葉にはくれぐれも――」
「失礼千万な猫もいたものだ。そうやって冒険者を焚き付けて『この世界』を乱そうとする。異物(バグ)はそちらでは?」
「……誰にとって何がバグか、禅問答みたいなことする時間はおしまいにゃ。ミーがバグかもしれないなら、ユーもバグにゃ。痛み分けにゃ」
 唐突に割り込んできた声に振り返ったぱぱにゃんこは、その場に現れた『異物』を睨めつけた。
 そして一同は、彼女(?)が反論に窮して「どっちもどっち」に帰結したことに驚愕する。
 間違いない、これが――『謎の覆面の人』!

GMコメント

 内容自体はめちゃくちゃシリアス混じってるはずなのに何で気が抜けるんだ。くそうA川って文豪が悪いんだ。

●達成条件
 希望ヶ浜学生アバターの救出
(その他敵性対象の撃破討伐等は成功条件に含まれない)

●謎の覆面の人
 突然現れては居合わせた相手を面罵して周囲を絶句させる謎の人。
 大文豪がいきなり本文中に登場させた、多分「ファーストフード店の女子高生」の元祖みたいな存在である。存在自体が嘘くさいので存在=バグという凄くアレなやつ。
 覆面の人の言葉を向けられた対象は、その言葉に「そうかな……そうかも……」と強烈に同意したくなる衝動に駆られます。具体的にどんなことをいうのかは謎ですが、OPみたいなこととか。コンプレックスに絡んだ物事だと特にその束縛が強く、ステータスをランダム低下させます(永続)。
 また、魔獣達にも話しかけて戦意高揚を図ろうとします。
 攻撃の意思を見せると戦闘態勢に移行します。攻撃力が低い反面、非常に強力なダメージBSを付与してくる技能を使いこなします。術士タイプですが随伴する『バグ・バリアシステム』残存時の守りは劇的に硬いです。

●バグ・バリアシステム×3
 謎の覆面の人の周囲をランダムに移動する魔法陣。基本的に多重的に『かばう』を行っているため一網打尽が困難。R.O.O基準でなお「超強力なダメージ」を1ターン中に与えられれば即破壊。そうでなければ、高い再生能力をブチ抜く攻撃を与え続け根気よく潰す必要があるでしょう。

●魔獣×5
 強さとしては中の上くらい。獅子型、体毛に麻痺毒があります。
 リプレイ開始時の位置から少し移動したところで、アバター達をアレしてます。
 攻撃手段は爪と牙、そして麻痺毒をもつ体毛を駆使した近接戦術。

●希望ヶ浜学生アバター×10
 魔獣のおひるごはん枠。
 最速で救出できてもいい感じにアレ(HP回復で治癒可能)しています。
 なお、覆面の人の言葉によってリスキルされた分だけ精神的な苦痛(ダメージの痛覚共有はない)を負っています。長引けばさらなるリスキルによって精神崩壊、助けても「救出」と見做されなくなる可能性があります。

●ぱぱにゃんこ
 回復枠……なのですが、覆面の人の挑発に乗っています。
 ちょっと小突いて説得でもしないと覆面の人につっかかって難易度が上がります。

※重要な備考『デスカウント』
 R.O.Oシナリオにおいては『死亡』判定が容易に行われます。
『死亡』した場合もキャラクターはロストせず、アバターのステータスシートに『デスカウント』が追加される形となります。
 現時点においてアバターではないキャラクターに影響はありません。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はCです。
 情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。

  • 謎の覆面の人、突如冒険者の前に立ち塞がる完了
  • GM名ふみの
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年07月08日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ザミエラ(p3x000787)
おそろいねこちゃん
ハルツフィーネ(p3x001701)
闘神
Teth=Steiner(p3x002831)
Lightning-Magus
WYA7371(p3x007371)
人型戦車
イルシア(p3x008209)
再現性母
きうりん(p3x008356)
雑草魂
黒子(p3x008597)
書類作業缶詰用
ネコモ(p3x008783)
ニャンラトテップ

リプレイ


「乗るなぱぱにゃんこ! もどれ!」
「ハァ゛!? こいつのナマいう口を縫い合わせんとミーはなんか許せんにゃ! つべこべいわずぶっちめるにゃ!」
 突如現れた覆面の人にまんまとノせられた『イモ食え』ぱぱにゃんこ (p3y000172)に声をかける『にゃーん』ネコモ(p3x008783)であったが、ジリジリと距離を詰めようとする相手にはいまいち声の通りが悪いだろうか。キレるほどのことでもない、というか動揺するだけの言葉だったように思うが……わからないものだ。
「私こういうやつ知ってるよ!ㅤ話が通じないタイプの人だ!ㅤ私と同じだね!!!!」
「ああ、ネットに良くいるよな。最もらしい事を言うのが上等ってヤツ」
 『開墾魂!』きうりん(p3x008356)と『Lightning-Magus』Teth=Steiner(p3x002831)は覆面の人の身勝手極まりない一方的な話し方になにか覚えがあるようだった。なにか、というか誰か、か。きうりんに至ってはシンパシー感じてすらいるが、無理やり進めても引き際をわきまえるだけきうりんのがマシな気もする。
「登場するなりねちねちと、お友達がいなさそうな方ですね……」
「いや、居る。私に君のボッチ属性を自己投影しないでもらおうか」
「いますよ失礼な」
 『魔法人形使い』ハルツフィーネ(p3x001701)はそんな彼をして友達がいないと断じたが、それは覆面の人が即座に否定する。気にしてんじゃねえの? レスポンスクッソ早かったよ?
「ふーん、つまりものすごく説得力あるおじさんってことかな?」
「覆面。一体何を目的としているのか、図りかねます」
「少なくとも、此方の依頼遂行の方針には全く関わりがなさそうなのであまり関わり合いになりたくないですね」
 『硝子色の煌めき』ザミエラ(p3x000787)の認識としては、「なんとなくすごい人」程度であった。人の感情に「説得力」で割り込むんだから確かにすごいのかもしれない。まあ、『人型戦車』WYA7371(p3x007371)と『書類作業缶詰用』黒子(p3x008597)は「何しに出てきたんだコイツ」って感じの冷たい反応だが。
「自慢じゃないけど私、コンプレックスには自信があるわ!」
「持つな持つな。コンプレックスを原動力にするでもなしにアピるんじゃない」
 『再現性母』イルシア(p3x008209)の自信有りげなセリフに止めに入ったTethは、しかしイルシアの目の奥にある自信という名の狂気にちょっとヒいた。
「そう……今まで考えた事もなかったけれど、私はこの世界に自分の居場所なんてないと思っているに違いないのよ」
「自分のことだよ! 落ち着いて深呼吸して思い出して! すーはーすーはー! 私がしても無意味だよね!」
「考えるのはあとにするニャ! あとでいくらでも話を聞いてやるニャ!」
 訥々と「そうだよな」ってノリで自分の存在意義について語りだしたイルシアに、きうりんとネコモはフォローに入る。だが楽しそうに語るイルシアの目にはちょっとした狂気が入り混じっており、これが『覆面の人の能力ではなくもともと持ってる狂気』なことを2人に理解させるだろう。
「……ぱぱにゃんこが先だニャ! 目を覚ませぱぱにゃんこ!ぱんち!」
 たまりかねたネコモ、状況が逼迫するのを肌で感じた一同。最早猶予なし。
 ネコモは素早くぱぱにゃんこに近づくと、魔獣がこちらに気づく前にと彼女(?)にぱんち(無)を見舞った。


「痛った何すんにゃ……あー」
 ちょっとキレ気味に返したぱぱにゃんこは、直後にハッとなって周囲を見回す。これはこの後大喝采だな。間違いない。
「ぱにゃんこ、今やることはマスクメンと戯れることじゃないニャ、腹が減ってる学生たちに芋を食わせて芋のすばらしさを広める事ニャ! わかったらバグ問答とか置いといて芋をふるまってくるニャ!」
「メンじゃ複数形にゃ」
 そういうことじゃねえよ。ぱぱにゃんこのいつもの調子に、ネコモは脱力しつつも安堵した。
「ぱぱにゃんこ様は大丈夫そうですね。でしたらアバターの治療に回りつつあの猛獣をひきつけましょう」
「自然の摂理を堂々と乱そうとするその姿勢、『部外者』として恥ずかしいとは思わないのか?」
「否定に否定を重ねて楽なコミュニケーション取りやがって!ㅤ直ぐにデバッグしてやるよ!!」
「どんなに「それっぽい」こと言われても、クエストクリアが最優先なのは変わらないし、細かいことは考えない!  おじさんの相手はきうりんに任せるね!!」
「状況再確認。魔獣全対象を射程圏内に掌握。行動を制限します」
 覆面の人の呆れたような振る舞いにきうりんが即座に切り返し、その隙にザミエラとWYA7371が魔獣達へと攻撃を仕掛ける。
 エネルギーバレットが着弾し、魔獣達を学生諸共に狙い撃つ。痛みがないのをいいことに学生を引き続き餌食にしようとした魔獣はしかし、自らが動けぬ事態を遅まきながら理解。学生たちも身動きができないことに混乱をきたすが、黒子の手で状態異常ステータスが消失したことで、現れたアバター群が味方であると理解できたようだ。
「急ぐニャぱぱにゃんこ! 学生たちのナリがもう完全にお見せできない感じニャ!」
「ミーだってそんなの見りゃ分かるにゃ。ヤツらをWYA7371が……」
「……呼びづらいからナナちゃんて呼ぼう」
「そうだにゃ。ナナがとめてる間に一気に治療して回収するにゃ。黒子の治療便利にゃなコレ。普通よりめっちゃ回復するにゃ」
 ネコモの声を背に前進したぱぱにゃんこが呼び名に一瞬躊躇すると、ザミエラが即座に提案を向けた。即座に採用して思考をフル回転させるぱぱにゃんこ。それを待たずして有機的に連携する一同。
「小娘達をこちらに残して悠々と獣達を倒しにかかる、か。余程口述の争いに不得手と見え――」
「うんうんそうだね!ㅤ分かる分かる!」
「言葉遊びしてるやつが言うセリフじゃねえよ! ロジハラ……いや、お前のは屁理屈ハラスメントだ!」
「……バグですけど、ちゃんとコミュニケーション取れているのでしょうか」
 覆面の人が救出組に向けて何事かを口にしようとしたところで、きうりんの雑な相槌と共に、Tethとハルツフィーネの一撃が鋭く襲いかかる。魔法陣が正面からそれを受け止めはしたが、軋んだ音を立てた時点でその不利を認めているようなものだ。
「理屈に追いつけぬ者はみな『屁理屈』という言葉を使いたがるな。無根拠理不尽な叱責への反論も、怒号と罵声へワンクッション置こうとするそれも。お前の振る舞いは、まさにそれだよ」
「……言いたいことは伝わったし腹立つ言い方してるけど、お前やっぱり友達いないだろ。人のコンプレックスを突きたがるヤツ程、深刻なものを抱えてたりするもんだ」
 Tethが連続して放った励起電子の束は、複数の光となって一気に魔法陣に叩き込まれる。都合2度の雷轟とクマの爪にズタズタにされた第一層の魔法陣は、しかし限界間際で耐え、自己修復を始めようとする。
(ROOの私が一撃受けたら使い物にならなくなるビルドになっているのも、リアルの私が身の守りを捨ててでも魔力を高めているのも。きっと、そうでもなければ私には誰かに気に懸けて貰う価値もないって不安があるからなのだと思うわ)
 否、「始めようとした」が正しい。呼吸するように娘(エルシア)と呼吸を合わせてイルシアが炎を放ち、ダメ押しとばかりに魔法陣を破壊したのだ。娘に向ける慈悲の表情は、『彼女』が自分に向けてくる無償の愛情に対してその非実在性を笑うようでもあり。
「優しいあなたは私に存在意義の実感を与えてくれる為に、反撃もせずに私の攻撃を受け容れ続けてくれるのかしら?」
「自己肯定を高めるために、他者の評価基準に奇手で割り込むような者は結局、奇手を用いる者以上の評価しか得られぬものだ。相対する価値があるとは思えん。死を恐れる者のほうが幾分かマシだ――それよりも」
 イルシアの、どこか恍惚とした笑みを見た覆面の人は呆れたようにそう返す。言葉を切ってきうりんへと手を向けた。
「死ぬのは怖いに決まってんでしょ!ㅤ生存本能ないやつとかもう生物ですらないし! でも、死ぬのが怖いからって死なない理由にはならないでしょ!ㅤ訳わかんないこと言ってないでかかってきな!!」
 覆面の人の半ばガチ気味な毒の術式を受け、しかしきうりんは知ったことかと高らかに叫ぶ。毒は確かに受けている様子。であるにも関わらず拳を握って挑発を仕掛けるあたり、彼女はガチだ。
 終始余裕ぶっていた男は、しかしその時覆面の下で確かに冷や汗をかいたのだ。


「猫道拳!」
「グオォォォォッ!?」
 ネコモの放った猫道拳が、動きを止めた魔獣の横っ腹に突き刺さる。そのままふっとばされた個体はしかし、WYA7371の追撃で動くこともかなわない。
「行動の封殺による学生たちの安全な確保と戦闘行動の合理化、これが最善策と判断します」
「ナナちゃんさすが! ネコモはそのまま魔獣を引き剥がして、黒子とぱぱにゃんこは治療と避難誘導をお願いね! ■■■……じゃなかった私はナナちゃんの補助で魔獣の動きを止めるから!」
 ザミエラは冷静な判断で動くWYA7371を称賛し賦活しつつ、仲間達に指示を向ける。ネコモは敵を引きつけるより引き剥がしたほうがこの戦場では役に立つ。黒子の治癒にぱぱにゃんこが合わせることで、学生アバターは既に原型を取り戻していた。
「す、すごい……」
「ここまで的確に……」
「さあ、サクラメントまで逃げてください。あの調子なら暫くは魔獣も追ってきませんし……」
 驚く学生たちに対比を促しつつ、黒子は覆面の男と対峙する面々を見た。
「……あの男も、あなた達に理屈を口にする余裕はないはずです」
「ボクも避難を手伝うニャ! ……この魔獣を倒してから!」
 ネコモは猫道拳で学生から引き剥がした魔獣に向けて拳を構える。おおよそ1分以上動きを制限された魔獣達は、しかし窮地を脱し反撃に転じかけ、まさかの同士討ちへと移行する。WYA7371のエネルギーバレットの着弾点をずらしたとて、ザミエラの放ったガラスによる不調までは回避できなかったらしい。……それでも数が数だ。当然としてそれらの不調すらも脱し、ザミエラへ襲いかかる個体はいる。
「うんうん、強いね! でも……その分私も強くなるんだから!」
 ザミエラの肉体は相応に堅固であり、獣達の爪牙が彼女を窮地に追い込むのは容易ではない。
 が、追い込まれたからこそ発揮する強さというものもある。彼女はたまたま、その傾向が「強すぎた」だけで。
「ザミエラ、『万全』でいられるように治療は後回しにしておいてやるにゃ。サクッと全滅させてあの身の程知らずをツブしにいくにゃ」
「ぱぱにゃんこ、やっぱり根に持ってるんだ?」
「持たなかったらそいつ感情のない機械にゃよ」

「安全圏で言いたい事を言うだけなのも格好がつかないでしょう。なので引きずりだして、あげます」
「私をちょっとした毒や火で炙った程度で倒せると思ってるなら大爆笑だよ! オラッ当たれ!」
 ハルツフィーネのクマの爪が3層目の魔法陣に叩き込まれ、そこに重ねるようにきうりんの拳がぶち当たる。じわりと形状を取り戻そうとする自己修復力は、毒や炎すらも相殺するきうりんの再生力といい勝負だ。否、あちらのほうがやや分があるか。
「武器による手づからの攻撃ではなく、間接的な攻撃か。そうやって敵を倒すことで、自ら手を汚さずにいると思っているんじゃないか?」
「…………」
 ハルツフィーネは、覆面の人の言葉に押し黙る。彼女のテディベアではなく、彼女自身のスタンスを非難されたから、この言葉にはまだ耐えられた。
「その可愛らしいクマを壊せば、少しは君の本性も見えるのだろうか、ね」
 きうりんと対峙しつつも、嗜虐的な笑みで挑発を向けてきた彼に、ハルツフィーネは髪を逆立たせんが如くの感情を抱いた。当然、操るテディベアから漏れ出る敵意もそれに準ずる。ともすれば周囲が見えなくなるほどの激情は、しかし彼女がそれに呑まれて失敗する直前に霧散した。
「あなたの言い分には、もっともなところがあるのかもしれない」
 WYA7371はそんなハルツフィーネの前に出る形で覆面と対峙すると、自らの武装をまっすぐに向ける。
「だけど、それでも。“そうかもしれない”と認めたところで、“やることは変わらない”んですよ。私も、彼女も。――今までそうやって生きてきたんだ」
 だから変える必要も、流される必要もない。WYA7371の言葉には、有無を言わせぬ芯があった。
「……ということなので、クマさんが切り裂いてあげます」
「そのバリアがテメェの精神性を物語ってるよ。一方的に傷つけたい、でも自分は傷付きたくないってな。おら、助けてママって叫んでみろや!」
 ハルツフィーネはWYA7371の言葉に応えるように、勢いを増したテディベアの爪を魔法陣に叩きつける。Tethの雷撃、さらにはイルシアの炎に加えて対魔獣組の攻撃まで受けて、魔法陣が耐えきれる道理はない。当然、覆面の人についても、だ。魔法陣を割ってなお余る火力に身を翻した彼を足を貫いたのはテディベアから放たれたビーム、そしてその背を掴んだのはきうりんの腕。
「今だよ!!ㅤ私ごとやれぇい!」
「マっ」
 きうりんごと叩き込まれる魔力と破壊の暴風雨は、覆面の人の肉体をゴミかなにかのように踏み散らす。
 遠巻きに見守っていた学生たちは、驚きや軽易よりも恐怖が先にきても文句はいえまい。

「魔獣も変なおじさんが出なきゃ貴方達で勝てたみたいだし、頑張ったね。今度はもっと平和なクエストでご一緒しましょ♪」
「アッ……ハイ……」
「今日考えるべきは生きること。悩むならば明日からになさい」
「わ、わかり……マシタ……」
「だめにゃこれ、完全にビビりちらしてるにゃ」
「でも、無事でなによりですよ。クエストもクリアできましたし、覆面も倒しました」
 ザミエラとWYA7371の言葉に、首がちぎれんばかりの勢いで縦にふる学生たち。その二人は言うほど激しい戦いぶりじゃなかったんだけどなあ、と呆れるぱぱにゃんこだったが、それはそれとして先程まで追い詰められていたのだから、それを凌駕する破壊を見れば当然だったのじゃなかろうか。
「――外の世界の異物ねぇ。旅人の事か?」
「どうかにゃ。あの口ぶり、ちょっとミー達の知らないことを知って調子に乗ってるっつーかそんなだったにゃ。もしかすると、もしかするにゃ」

成否

成功

MVP

なし

状態異常

きうりん(p3x008356)[死亡]
雑草魂

あとがき

 数値計算をした時に「嘘だろ……?」っていいながらしめやかに失禁するケースはROOだけで済ませたいなと思いました。

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