PandoraPartyProject

シナリオ詳細

そう…。そのまま飲みこんで。僕のレーヴァテイン……。

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 その日、げに恐ろしき事が海洋王国で起こっていた。
 海洋王国と言えば、大号令が成功して落ちた国力を再度建て直す為に努力を重ねている国家である。
 遠海に存在する神威神楽との交易が彼等に齎す膨大な利益が国力を増強すると信じて已まない。
 が、そんな事は今は関係ないのである。
「助けて下さいまし!
 コンテュールのプライベートビーチで、うねうねしたイソギンチャクのようなモンスターが暴れておりますの!
 ああ、お兄様、お兄様がァッ―――! えっ、あ、そんな……ふふ、何かしら……伝説の聖剣レーヴァテインの気持ちが分かるような?
 はっ、いいえ。世界をまるごと焼き尽くすという究極の武器なんかの気持ちは御座いません事よ!
 私の側近が言っていましたの。『胸が高鳴りだしたら沼に落ちるだけ』だって。ああ、いけませんわ! お兄様ァッ!!!!」
 何が起こっていたか、と言えば簡単である。
 コンテュール家のプライベートビーチに触手モンスターが現われたのだという。イソギンチャクのような、そんなフォルムがうねうねと……。
 これは困った。如何したものかと視察に訪れたソルベ・ジェラート・コンテュールが伝説の聖剣レーヴァテインで(以下略)になりそうだったという。
「触手?」
 嫌な予感がする、と。タイム (p3p007854)は考えていた。
 嫌な予感がする――けれど、幸いにして『アレ』は女性ばかりしか狙わなかったはずだ。ソルベは男性、且つ、助けを求めてきたカヌレは無傷なのだ。

「あれが、触手モンスター?」
 そう問うたタイムを見定めたようにイソギンチャクが此方を向いた。
「下がって! ――奴め、乙女を愚弄する気で……なに、?」
 咲々宮 幻介 (p3p001387)は突如、イソギンチャクに掴まれてずるずると引き摺られていく。
「なッ……!? い、一体何が……!?」
 嫌な予感がするがプラック・クラケーン (p3p006804)は引き返せなかった。
 だって、タイムちゃんが言っていたんだ。『折角なのでプラック君と幻介君はOPで酷い目にあって貰い』って――

「タイムさん! お下がりなさい! それ以上近付いてはいけませんわ!」
「ど、どういうこと……!?」
 バカンス気分全開の格好であったカヌレはタイムに向かって叫んだ。
「そのモンスター、様子がおかしいと使用人で実験致しましたの!
 このモンスターは男性にだけ異常に興味を示す特殊な個体だったのです! 男性と仲良く(意味深)したくて堪らないそうですわ!」
 カヌレの言葉にタイムは「はいはい、そういう感じですね」と納得したように頷いた――頷くしか出来なかった。
 それ以上近付いては女性であるだけで、簀巻きにされてその辺に転がされてしまう。
 見ているだけしか出来ない……イソギンチャクが満足した後に女子の出番はやってくるのだ。
「けれど、見て居るだけならタダですわ! 我が家の使用人が申しておりましたの。
 壁になりたいとか、この場合はシチュエーションを寄り際立たせる白波になりたいと申しておりました」
「な、成程……?」
「あと、そうした絵巻では『ぱんぱん!』と効果音が書いているそうですわ。私、それに合わせて拍手しようかと思いますの。
 ええ、私はモブ女という立場だそうですわ。タイムさんもご一緒にモブ女になられませんこと?」
 ――誰だ、純粋無垢なカヌレお嬢様にこんな事を教えた奴は!

 青年達は驚愕していた。身体の自由を奪うようにずるりとその身を這う気配。
 筋肉を撫でて服の内側へと入り込んでいこうとするそれらの奇妙な感覚から逃れたくて身を捩るだけでもイソギンチャク(仮)は歓喜している。
 プラックは苦悩した。あられもない姿をタイムに晒すだけでも我慢ならないが、そこから抜け出す術を彼は今持ち合わせていないのだ。
「くっ――」
 こういうのは女性陣の役目じゃなかったのか。そう叫びたくなった幻介は驚愕に叫んだ。

「服が―――――!」

 溶けている!(お約束)

GMコメント

 夏あかねです。モブ女の役目は任せて下さい。

●成功条件
 モンスターを撃破しよう。

●モンスター
 渾名はイソギンチャク君です。雄です。多分。
 男性にしか興味を見出さない個体です。男性と仲良く(意味深)したがるそうです。
 何故か分かりませんが突然の耽美(笑)な薔薇色の空間を発生させて全てがそうした様子になります。
 PPP倫に沿った描写がなされます。ですが、彼には友達が居ます。
 そう、概念であり現象であり災害であり神意であるとされる陸スライムのえっちっちさんです。
 えっちっちさんに憧れたイソギンチャク君。彼は紳士的です。

 ・女性は簀巻きにしてソッと転がします。
 ・モブ女を自称して盛り上げてくれる相手には敬意を払ってくれます
 ・男性に対しては仲良く(意味深)してくれます。
 ・性別不明に対しては紳士的ですが、勝手に男性だと確定ロールしてきます。
  違う、男が好きなんじゃないんだ……。好きになった相手が偶々男だったんだ! みたいなストーリーを付与されます。
 ・男性は逃れたくてもイソギンチャクくんに引っ付いていると。御耽美な気持ちになってきます。
 「俺、どうしてこんな……ち、違う……だって、俺もお前も男で……」みたいな事を言いながら仲良くしたくなります。
 ・女性の皆さんは「ええ!?こんなことになるの!?」と言って下さい。イソギンチャク君はサービス精神旺盛なので、そうします。
 ・ある程度満足したら皆さんを解放して「さあ倒せ!」と言う姿勢を取ってくれますので女性の皆さんは攻撃を叩き付けて下さい。

●ロケーション
 コンテュールのプライベートビーチです。
 ソルベが巻き込まれてます。カヌレは見ております。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はXです。
 関係ないですが、私は小学校五年生の頃に間違えてアンソロジーというものを手にしました。
 グッドラック!!!!!!!!!!!

●Danger!
 当シナリオにはパンドラ残量に拠らない社会的だったり心の死亡判定が有り得ます。
 男性に素敵な思い出を授けられるように女性陣で頑張りましょうね。
 男性の皆さんは、予めご了承の上、参加するようにお願いいたします。全年齢ゲームだから安心して下さいね! ね!

 これって 部分リクシナ なの。
 ね、プラックくん、幻介さん。がんばろうねえ。

  • そう…。そのまま飲みこんで。僕のレーヴァテイン……。完了
  • GM名夏あかね
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年07月02日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談8日
  • 参加費150RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ウェール=ナイトボート(p3p000561)
永炎勇狼
咲々宮 幻介(p3p001387)
刀身不屈
※参加確定済み※
プラック・クラケーン(p3p006804)
昔日の青年
※参加確定済み※
リック・ウィッド(p3p007033)
ウォーシャーク
冬越 弾正(p3p007105)
終音
タイム(p3p007854)
女の子は強いから
※参加確定済み※
ミヅハ・ソレイユ(p3p008648)
天下無双の狩人
暁 無黒(p3p009772)
No.696

リプレイ


「あ"あ"あ"あ""あ"!!!」
 ――その勢いや、脱兎の如し。
「あ"あ"あ"あ""あ"!!!」
 ――その慟哭や、逃走を禁じられた男のものである

『救海の灯火』プラック・クラケーン(p3p006804)は叫んでいた。
「あ"あ"あ""あ"あ"!!!」
 憤怒しようとも『それ』は逃がしはしない。悪辣なる罠に嵌った訳でもない。敵の手中にあることは確かでも命までもが脅かされるわけではない。
 だが――『傷跡を分かつ』咲々宮 幻介(p3p001387)は如何しても納得はできなかった。
「ちょ、ちょっと待て……今までならこういうのは某シスターとか某占い師とか某吸血鬼とかその辺の方々の役目では御座らぬのか!?
 拙者達にこんな事をしても何も面白くは……ちょ、待てと言っておるだろうがァァァァァ!!?」
 幻介の肌をなぞり、撫でまわして絡みつく『それ』は容赦なく幻介を捕らえ離さない。
「助けて、プラック殿……ってだめだ、プラック殿も捕まってる!!」
「あ"あ"あ"ああ"あ"!!! いやぁぁ、助けてぇ!?」
「……ていうか、何で妙に艶っぽくなってるので御座るか!?
 しっかりするで御座る、気を強く持って耐えるので御座るよ!」
 それは『女性陣』にも襲い来る脅威にも似ていた。『永炎勇狼』ウェール=ナイトボート(p3p000561)は「このイソギンチャク……」と――仲間が絡みつかれているが――寂寞を宿した瞳を向ける。
「えっちっちとかと違ってこれまで目撃情報が無いのならば、深海は独りぼっちで寂しく、人肌の温もりを求めて初めて陸に上がってきたとかなのかね?」
 よくある耽美物のあらすじのようなストーリーがイソギンチャクに追加される。
「……独りは寂しいよな。俺も息子に会えなくてつらいし、最期にいい夢を見せると思って頑張るか。
 犬は尽くすのは好きだしな……無性生殖で増えれるならまた出そうだけど」
 ――あらすじでよく見るやつだ!!

「幻介とプラックは大変だなー」
 他人事のように眺めていた『ウォーシャーク』リック・ウィッド(p3p007033)は開幕0秒簀巻き状態になって転がされている『優光紡ぐ』タイム(p3p007854)とオペラグラスを構えているカヌレ・ジェラート・コンテュールの姿を確認する。
「女性陣も……なんか知識が偏ってる気がするけど……壁とか観葉植物みたいになって大変だなー。
 まあおれっちは様々な要因により危険は少ないだろうからドンと構えててもいいよな!」
 性別不明である己ならば危険など存在しないかのような無垢な表情をして、リックは微笑んでいた。そうは言いながら幻介とプラックを捕らえ、狙いを定めるイソギンチャクがリックをロックオンしている事を忘れてはならない。
「うわ~既にかなりカオスな事になってるっす。とりあえずアレを満足させれば良いんすね?
 うっし! じゃぁ現役VAの腕の見せ所っす! その手の収録なら色んなシチュエーション踏まえて何回も演ってるっすから!」
 演(や)って来てる『No.696』暁 無黒(p3p009772)にとってはお安い御用なのだとイソギンチャクを前にして宣言する無黒がこの地では一番、『勝利』に近い存在であった。
 無黒へと紳士的に近づいてくるイソギンチャク。だが、逃げる者には容赦はしない。
「なんでだ!!」
『日向の狩人』ミヅハ・ソレイユ(p3p008648)は叫んだ。叫ばずにはいられなかった。
「いや悪い、突然叫んじまって。どうしてこんなことになったのかと考えると叫ばずには居られなくて……」
 彼は、現在、ただならぬ状況に置かれていたのだ。無黒がひょこりと顔を出して「説明しよう!」と叫ぶ。
「ミヅハ・ソレイユ、彼はは『ソルベの危機(意味深)』『モンスターの討伐(倒せるとは言ってない)』そしてレーヴァテインという少年ソウルを擽るワードに釣られて依頼を受けてやって来たのである! だが、何故か男だけを襲う巨大なイソギンチャクに四肢を拘束されてたのだ。
 ――『おかしい俺は40m程度距離を取って攻撃準備してたはず。それにプラックが捕まった瞬間に反転して全力移動で戦略的撤退、或いは逃走したはずだぞ! どうして捕まってるんだ!!』」
 無黒のナレーションを背負いながらミヅハは「どうして!! あ、ちょっ、変なところ触るな!!!」と叫んだのだった。


「敵前逃亡するものか。心頭滅却すれば火もまた涼し。触手とてまた然り。
 イーゼラー教徒として、与えられた名に恥じぬ男気を…見せ、っン……こ、こら! いきなり変なところをまさぐるな!」
 何事もなかったかのように謎のイソギンチャクに絡みつかれているのは『Nine of Swords』冬越 弾正(p3p007105)である。
「まったく耐え性のない奴め。そういう我儘なところ、直さないと他の奴に嫌われるぞ?
 我儘な癖に寂しがりで手がかかる。そういう所がお前の……お前の? どうして俺は突然ふって沸いたイソギンチャクに相棒ムーブをかましているんだ?!」
 ――それがこのイソギンチャクの怖いところなのです。

 開幕すぐに簀巻きにされて転がされていたタイムはそう告げてから目を伏せた。タイム……――いや、あれは、タイムなのだろうか。なんだか顔がぼんやりと……そう、作画コストを男性に割いて居るがあまりに背景と同化してしまいそうなほどに顔がぼんやりとしていて、表情もわからない――モブ女のようになった彼女はゆっくりと顔を上げる。
「どうしてかな、カヌレ様のお顔はやけにぼんやりとし……わたしも?
 うそぉ、努力しなくても完全にモブ女――!
 わたし達にはこの凄惨な現場を眺める事しか出来ない、せめて目を逸らさずしっかりと見届け――」
 少女、気づきを得る。
「あ」
 タイムは簀巻きにされたままイソギンチャク君(親しげに呼ばれるがこれが元凶)に囁いた。
「カメラあるんだった。
 幻介さんの知人の女の子にフォローを頼まれてて、具体的にはみんなの勇姿をカメラに収めればいいはず! 多分! だから手くらい自由にしてもいい? するね! 邪魔はしないから!」
 突然撮影係になったタイム。その傍らで転がっていたカヌレは「タイム様、こちらは如何?」と問い掛ける。
「カヌレ様のそれは動画撮影も出来るスグレモノ? わお」

「じゃあ、ミヅハ殿に助けを……って、何で捕まってるので御座るか!?
 お主、遠距離攻撃専門なのに何で近くにいるので御座るか、怒り付与でもされちゃったので御座るか!? ていうか、女顔だから何か凄くこう……って落ち着け拙者、ミヅハ殿は男で御座る、そんな趣味は御座らぬ!」
 新しい扉を開きかける幻介にミヅハはぶんぶんと首を振った。上気した頬、ぬめったイソギンチャク君より滴る雫(意味深)が彼の首筋をなぞり落ちてゆく。体を這いずり回る気配に息をのんだミヅハは違うと叫んだ。
「というかお前あの表情だけは申し訳なさそうなエルフはなんで襲わないんだ。そういう役回りはあっちだって聞いたぞ。
 違うそうじゃない簀巻きにするな! 丁寧に扱うな! カメラをセッティングするな! 刺胞動物が生意気にピント調節なんかしてんじゃねーよ」
「カメラ!? そ、そうだ。ええい、ならばタイム殿……あああああ、簀巻きで転がされてる!?
 ていうか見てないで足掻いてくれぬかなぁ!! しかも、何でカメラなんて用意してるので御座るか、準備良すぎで御座ろう!?
 やめろやめろやめろ、撮るんじゃあない!? 早く助けろ、このバーニング香草女ァァァァァ!!?」
 ミヅハと幻介の叫び声を聞きながらタイムは「あら? 何か言ってるわ」程度の様子でカメラを構えていた。そっと簀巻き状態をわずかに緩めて撮影しやすい様にと調整するイソギンチャク君の紳士的な様子は何とも言えないものがあったのだった。


「イソギンチャク君、略してイソ君と呼ばせてもらおう。
 まずはソルベ卿を放してもらえると嬉しい……近くで妹さんが新しい扉を開いているというのに、声を出す元気が無いようだから休ませた方がいいし……」
 イソギンチャクの第一の被害者であるソルベの事を気遣ったウェールに背後でカヌレが「そういえばお兄様がいましたわ!」とうなづいた。
「……それに、これから私とふれあうのに、他の男を侍らせながらなんて酷いじゃないか。
 ……結婚してないのに子持ち、こんな年にもなって清い身体の嫉妬するおじさんなんかより、若い子の方が君はいいんだろうけど」
 イソ君のテンションが上がった。いじらしい言葉を告げて拗ねたウェールの頬をそっと撫でる。
 その優しい手つきにウェールは目を細めてから微笑んだ。頬を撫でた触手をそっと手にとって口づける。
「こんなおじさんで……本当にいいのかい?」
 イソギンチャク君はその言葉に頷いて頬を撫でた。
「ひゃっ……獣人は、頑丈だから、君の好きなように動いて構わなあ゛っ」
 ずるり、とイソギンチャク君が肌を撫でつける。犬だからいろいろと違うんです、と叫びたくなる彼はハイテレパスを駆使してハートマークを乱れ打っていた。体がびくり、と揺れる。
「大変だなー」
 それでも、リックは他人事のように眺めていた。まるでモブ女であるかの様子で、だ。
「人外顔! 人外体型! 乳首もないし鱗肌! 身長50センチ! 性別不明!
 まあ、これならイソギンチャクの相手にはならないだろうしさ、この難易度の高さによりバラ色空間を寄せ付けずにみんなを救出する方向で挑むぜ!」
 そっとミヅハに絡みついたイソギンチャクを掴んだリックはびくっと体をはねさせる。イソギンチャクが勢いよく絡みついたからだ。
「えっイソギンチャクのダイレクトアタック……? 最近は人外ジャンルも多くなってきてる……? そんな……マーケティング的戦略眼が上回られただと……!?」
 人外ジャンルだって最近は流行している。人外と人間のカップリングも、無機物同士だってなんだってあるのだ。
「そ、そんな――ひっ、……そんな風に触るなよぉ! エ、エリス様……!」
 銀の森でエリス様も「すごい文化があるのですね、と笑ってくれているよ。リック君。


「別にアレを満足させてしまっても構わないんすよね?」
 頼り甲斐のある言葉でにんまりと微笑んだ無黒はこんなこともあろうかとと触手鞭を手に仲間意識を芽生えさせていた。
「初めましてっすイソギンチャク君! 俺は無黒って言うっす!
 なんでも男性と仲良くしたいらしいっすね? いや止めに来たんじゃないっす!
 安心するっすよ……好きなモノは好きだからしょうがないっす! さぁ皆で仲良くするっすよ!」
 好きしょ(略)の精神で突入する無黒はフレンドリーファイアに勤しんでいた。
「ミヅハさんはちょっと恥ずかしいみたいっすね~えい! 『足止め』触手鞭っす♪ さぁ~乳首洗いの時間っすよ~♪」
「ちょ、待って! アアアア!?」
 叫ぶミヅハの様子を幻介とプラックが死んだ目で見ている。完全に油断していたリックは触手でくまなく洗いましょうねとダブルピースの勢いで飛び込んでゆく無黒に目くるめく薔薇世界へ誘われていた。
「こ、この鬼畜眼鏡!」
「メガネはかけてないっすけど、いいあだ名っすね~?」
 全然効果がないのである! 無黒はちらりとプラックを見る。最初からもうオチていた彼は無黒に言わせれば「最高の出来栄え」なのである。
「くそっ、頭ではクソギンチャクの仕業だって分かってる筈なのに! 胸が熱くなる……褒め言葉一つで嬉しくなっちまう!」
 ――かわいいよ。
「俺って、こんなチョロかったのか!? 恋愛経験少ないのが仇になってんのか?
 それとも女装やらで頭がバグったか!? ……くそっ、認めたくない! でも……意識すればするほどドキドキしちまう! イソギンチャクなのに!!」
 ――かわいいよ、プラック……。
「顔をまともに見れもしねぇ……あー、熱い……イソギンチャク……俺は……」
 イソギンチャクの甘い言葉に身も心も溶かされていく。触手が肌を弄るたびに心がざわめいたのは――
「イソくん……?」
 気のせいでは、なかった。心なしかイソギンチャクが格好良く見える。プラックは気づく。
 種族なんて、性別なんて、関係ない。俺は彼が――いや、違う。性別の差は、彼との間を引き裂く可能性があるのだ。
「あっ、いやっ、やめてくれ……俺は男だぞ……? そういうのは良くないって……。
 分かってるだろ、気の迷いって……ばっ、やめろ……一線、超えたら……男に戻れなくなっちまうから……な?」
 プラックの蕩け切った瞳にはイソギンチャク君はイケメンに見えていた。擬人化である。もしかするとイソギンチャクの海種だったのかもしれない。
「でも……そうだよな、此れはイソギンチャク……イソギンチャクの……せい。好きとか言うなよ、ばかっ……」
 そっと、唇をなぞった触手に――

「プラックはまあ仕方ないとしてなんでお前が速攻で捕まってんだよ! 自慢の反応速度と機動力は忘れてきたのか! オイ赤らめた顔でこっち見んな新しい扉はクーリングオフしろ!」
「いや、かわいいなって」
「テメエエエエエ!?」
 幻介の頭ものぼせていた。ミヅハは俺は男だ、と叫ぶが無黒が「好きになったのがたまたま男だっただけっすよ?」と追撃を放ってくるのだ。
「クソッ、離せ! 離しやがれ! つーか拘束するだけしてあとは何もしねーってのはどういう了見だ。襲えよ! 俺は、こんなにもお前のことを想っているのに……どうして冷たくあしらうんだ……もっと深くお前を感じさせェェアアアアアア口が勝手に誘い受けをぉぉ!」
 イソギンチャク君はやっと素直になったな、けど、そんなことを言ってもう耐えきれないくせにとはちきれない思い(意味深)を放つようにミヅハへと近づいたのだった――


「くっ。このままではプラッククン達の二の舞に……いや、彼らは触手映えするイケメン枠だが、俺はどう考えても絵面が罰ゲーム。しかも無黒クンは何をしてるんだ?
 乳首を洗う? だ、駄目だ! アライグマとヤツ( ・◡・*)が来るぞ!……いや、待ってくれ」
 そっと立ち上がった弾正の本領発揮が今、始まった。アライグマは「わあすごいですね」とい顔をするが、ヤツは目なんて閉じないぞ、気を付けろ!!
「……女性陣、目を閉じて貰えるか?
 昔取った杵柄だが、声の演技ならば俺とて元プロだ。満足させられるかもしれない」
 奴は目を閉じないぞ! 何せ、ヤツは喜んでいるのだ。
「素敵だ。イソギンチャクの触手の中は天国みたいに心地いい……。
 今の俺はさながらヴィゾーヴニル。レーヴァテインだけを受け入れるまで全てを退けた雄鶏の気持ちが、よく分かるよ……」
 ヴィゾーヴニルを貫いたレーヴァテイン(意味深)を受け入れ、弾正はそっと手を広げ――
「弾正さんは大人しいっすね、イイ子っすよ。
 そう、そのまま、真っ直ぐ俺の目を見て、全てを俺に任せるっすよ。大丈夫っす、俺、慣れてるっすから」
 シュワシュワした炭酸を手にしている無黒は「優しくしますから」とそっと胸元に手を伸ばす。熟れた二つの(以下略)を狙ったその手つきに「や、やめ――」と二人の役者の演技を捕らえていたのはモブ顔のタイムであった。
「いい事思いついたっす!」
 無黒はいきなりイソギンチャクを掴んだ。モブ乙女の妄想に浸っていたタイムはそれに気づかない!

「プラックさん幻介さんたら真っ先に触手君と念入りに仲良くして……!
 心まで女の子にはなるまいと必死に抵抗する姿に思わず唾をのんじゃう。いや、そんなあ。
 ソルベ様のような強がりナルシストが餌食になるのはくっころ感があって……あ、もう少しお願いします。妹さん喜んでるよ!」
 さながらボディービルのような掛け声でイソギンチャクの薔薇色ワールドを支援するタイム。
「ウェールさんリックさんは特定層が喜びそうなビジュアルがそそりります! good!
 ミヅハさんー! 絶対に屈しないという意志が逆に触手君の気持ちを煽ってますよ!
 弾正さんみたいな素敵な人がどうしてここにいるのかわかんない! 事故でしょ!
 目を閉じる……? やだ……逆に想像力増すっていうか、その……んん……わたしまで変なもごぉっ!?」
 突然、無黒がタイムの口に触手を突っ込んだ。顔の解像度がモブ女からヒロインまで一気にアップする。
 突然咥内を触手によってダメージを与えらるタイムが苦し気に呻く。

 だが――記憶を消したいプラックたちによって満足げなイソギンチャクは倒されたのであった。
「うぅ……酷い目に合ったで御座る、嫌な予感はしていたがどうしてこんな事に……。
 まぁ、原因は分かり切っているので御座るがな……おいこら、そこの女共。そのカメラで撮ったものをどうする気で御座るかな……許さぬで御座るぞ、おォン!!?」
 罰してやると立ち上がった幻介にカヌレは「あら、もう遅くってよ!」と堂々と立ち上がった。
「折角でしたからバカンスの思い出を練達の技術を使用して作成しようと考えておりましたの!
 先ほどタイム様が撮影なさっていた映像は、もう……持って……あら?」
 タイムが「待って、私の顔のところも!?」と叫んだが、海洋王国貴族派筆頭コンテュール家の令嬢はにんまりと微笑んでいるだけなのであった……。

成否

成功

MVP

暁 無黒(p3p009772)
No.696

状態異常

なし

あとがき

人生で一番モブ女って書いた気がします。
ご参加ありがとうございました。MVPは最後タイムチャンまでも巻き込んで大団円なあなたに。

あ、その……ほんのお土産、です。

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