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シナリオ詳細

【Tissier Town】ゴーレムからのSOS

完了

参加者 : 3 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●洞窟の静謐を破る者

 ひゅうう、と吹き込む冷たい風が、ゴツゴツとした洞窟を甲高い笛の音色に変える。
その風の出入り口に、若者たちが腰掛け、心地よい風に目を細めていた。

「いやーほんと……ここはいい風が来るなあ……」
「奥にも行ってみたいけど、あたし寒いのは苦手だから……もっと暑くなってからかしらねぇ」

 そう、ここはとある冒険者達により探索・解明された『ソーダキャンディの洞窟』。
すでにその入り口からも青く煌めく壁面が窺え、それを削り取り氷菓をおやつとする者も見受けられる。
通常の洞窟であれば素人が勝手にその一部を採取をする事など許されないのであろうが、この街は特別。何故ならこの街はありとあらゆる者がお菓子で作られていて、しかも食べても食べても再生するのだ。
なればこそ、彼らもシュワシュワ、ヒンヤリとした口当たりに目を細めているのだ。

更にこのティシエール街にも、徐々に本格的な夏が近づいてきている。今は入口に屯している人々も、猛暑の日には洞窟の中にまで、涼みにやってくるのだろう。

けれど、その奥では、こんなやり取りが繰り広げられていた事など、彼らは露ほども知らなかった事だろう。

「困ッタ事ニナッタ」
「どうしたんすか、ゴーレムさぁん」
「アレヲ見テ欲シイ」

 この洞窟の見回り、保全をしているアイスゴーレムと、ティシエール街の安全を見守る自警団、そのうちの一人たる青年……彼らが見つめる先には、シュワシュワと炭酸の泡を上げる地底湖があった。
この地底湖の水は大本は、元々はシュガーハーバーからも臨めるフルーツポンチの海であり、今も青く輝く青の洞窟を反射し、美しい水面を描いているが……突如、それを黒く過ぎった影が不穏に乱していく。
それは普段ティシエール街では見かけることのない生き物ではあったが、永き時を生きるゴーレムと、ティシエール街の外出身であるこの若者には、アレの正体がすでにわかっていた。

「……あれ、サメじゃねぇっすか! やっべー!!」
「流レ流レテ、遠キ海ヨリココマデ迷イコンデシマッタノダロウ。彼モココニキタノハ、本意デハナイノダロウガ……」
「……でも、放ってもおけないっすよね……ここにはあいつの食べられそうなものは無いし、遊びに来た人も危険ですし……」

 そう、何せこの街に面しているのはフルーツポンチの海。普通の海であれば彼の餌となる魚達も多く泳いでいようが、ここにはそのようなものはない。
この街にかかっている不思議な魔法故か、この海水がサメにとって毒となることは無いようだが……今も彼は、ぐるぐると地底湖を所在なく泳ぎ回っている。
しかしサメの食べるものがここに無ければ彼が衰弱するのは時間の問題であるし、何よりこれからソーダキャンディの洞窟を訪れる者に、何か危険があっては困るのだ。

「ハテサテ、ドウシタモノカ……」
「……ここは、あの方たちに頼みましょう。俺等がグチグチ言ってもどうにもならねぇっすよ」
「……ウム、貴殿ノ言ウ通リカモシレンナ」

そう、彼等の答えは、既に固まっていた。

●どうか、彼を母なる蒼き海へ

「……という訳でね、ティシエール街にある『ソーダキャンディの洞窟』。そこに迷い込んじゃったサメを、どうにかして欲しいんですって」

ここ、境界図書館に集った者達に、マチネは現在その街が置かれている状況を、懇切丁寧に説明をした。

「極論、誰もソーダキャンディの洞窟に立ち入らなければ、少なくとも住民の皆さんとかが、怪我をすることは無いと思うの。だけど、肝心のサメが自力で地底湖から海に帰れるかわからないし……もしそれができなかったら、きっといずれは弱って死んでしまうわ」

だからお願い、イレギュラーズ。
皆のために、いい結果を出してあげて。

境界案内人の彼女は深々と頭を下げて、貴方達を送り出すのであった……。

NMコメント

どうも、なななななです。
平和なティシエール街がサメパニック……と言うわけでもありませんが、ちょっと困ったことになっているようです。
お手伝いしてあげてください。
以下、詳細になります。


●ティシエール街

 家も公園の遊具も外灯も、お菓子で作られた不思議な街です。
 
 街中のお菓子全てに不思議な魔法が掛かっていて、思いっきり踏んだり叩いたりすれば割れるものの、何をしても汚れる事はなく、食べてお腹を壊すこともありません。
また、食べてもまたすぐに、新しいものがどこかからやってきます。 
『チョコ噴水』『パフェ公園』『シュガーハーバー』『ハニー池』『ベークド通り』等、人気のスポットから寂れた裏通りまで、お菓子に覆い尽くされています。

 『ティーパーティー』を経てから、徐々に隣町や遠方の人々を積極的に招待するようになり、今やすっかり、観光客にも人気の街となったようです。
この街の発祥もまた、『お菓子の魔女の物語』として、街の所々で、密かに語られるようになりました。
『お菓子の魔女』の従者だというアイスキャンディーのゴーレムも、ティシエール街にある『ソーダキャンディの洞窟』に密かに暮らしています。

●目的

『ソーダキャンディの洞窟にある地底湖に迷い込んでしまったサメを海に返すこと』。

 元々は異国のごく普通の海に棲息していたサメですが、潮流の変化や嵐などに巻き込まれた結果、ティシエール街近くの海域に入り込み……そのままシュガーハーバー、そしてこの地底湖にまで入り込んでしまったようです。

ティシエール街の海は生物の一切住んでいないフルーツポンチの海ですが、この街の魔法の力故か、この中にいるサメも至って健康体です。

しかし生物の一切住んでいない海ということは、彼の食べる魚達もいないという事。
住人に危険が及ばずとも、このままでは、彼はいずれ餓死してしまうでしょう。その前になんとかしなくてはいけません。

手段は問いませんが、洞窟が崩落するような手段は避けてあげてください。
(ネットを貼るなど、ちょっとした罠の設置程度なら問題ありません)

最悪、物理的手段で攻撃しても、サメは恐れ慄いてこの地底湖から逃げ出し、無事に海まで引き返してくれるでしょう。


以上になります。
どうか、不思議の海に来てしまったサメがもう一度、母なる海に帰れますように。

  • 【Tissier Town】ゴーレムからのSOS完了
  • NM名ななななな
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年06月23日 22時05分
  • 参加人数3/4人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 3 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(3人)

チャロロ・コレシピ・アシタ(p3p000188)
炎の守護者
トスト・クェント(p3p009132)
星灯る水面へ
イズマ・トーティス(p3p009471)
青き鋼の音色

リプレイ

●遠くから来た君

 ソーダキャンディの洞窟、その最下層。水鏡に青が跳ね返り、見渡す全てが美しく照らされる幻想的な風景。
その中に立っているのは、『炎の守護者』チャロロ・コレシピ・アシタ(p3p000188)、『微睡む水底』トスト・クェント(p3p009132)
、『青き鋼の音色』イズマ・トーティス(p3p009471)の三人。

「ワザワザ呼ビダテテスマナイ」
「お願いしますね、皆さん。洞窟の入口は今封鎖してあるんで、存分にやっちゃってください!」
「いいよ、他でもないこの街のためだから」

そして、そのイズマに声をかけるのは、街の自警団を務める青年の一人、そしてこの洞窟と同じ輝きを持った……守護者たるゴーレム。
更に、今日はこの洞窟には珍しい客も来ているのだ。湖の水を、先程からくるくるとかき回す黒いヒレ。……サメだ。

「どうだいチャロロ君、見える〜?」
「うん、さっきからずうっと、湖の中をグルグル回ってる。今の所は興奮してないみたいだよ」
「そうか、よかったあ」

空中から地底湖の様子を伺うチャロロ。彼から現状を確認したトストは、ほっと胸を撫で下ろした。

「じゃ、おれも水に入るね」
「頼むよ。俺も船からアシストする」
「オイラがサメ、引き付けておくからね!」
「頼ンダゾ」

 さあ、作戦開始だ。
ちゃぷん、トストが湖に下半身を沈めれば、青年の足が黒く、しっとりとした艶のあるものへと変わっていく。
それだけでなく、肉厚な尻尾がゆらり、炭酸を受けてくすぐったそうに揺れ動いた。

「ふふ、しゅわしゅわして不思議な感じがするなあ」

トストが地底湖に入った理由は一つ。この、シュガーハーバーから如何にしてサメが迷い込んでしまったのか、そのルートを探る為だ。
炭酸の泡の動き、そして体感から微かに水の流れを感じ、そちらに泳いでいく。

その間危険の無い様に、チャロロが餌となる切り身を、チャポンチャポンと、湖へ落としていく。イズマもまた、サメの動向を間近で見守るため、そしてトストの援護にあたろうと、静かに小型船を漕ぎ出した。

サメはチャロロの投げ込む餌を何口も何口も噛み砕いていく。
ゆっくり味わっているのだろうか、サメは食事に夢中だ。この分なら、トストにもイズマにも差し迫った危険はないだろう。

「そっちはどうだ、トスト?」
「んっとねぇ……今流れを辿ってみたんだけど。多分、サメ君が来た方向はわかったよ」
「本当か!?」
「うん、だけど……見てもらった方が早いか。イズマ君、近くまでいいかい?」

 トストの誘導を受け、イズマの船は地底湖の岸壁近くまで続く。サメの様子を気にしながらも、チャロもまた、何か見つけたというトストの方を見ていた。

「これは……ゴーレムの残骸?」
「そうそう、これと……隙間にフルーツが挟まっちゃって、サメ君の帰り道を塞いじゃったみたいだねぇ」
「そっかあ……それじゃあサメもここをグルグルするしかない訳だ。トストさん、イズマさん。それ、取れそう?」
「残骸がちょっと重たそうだけど、隙間さえなんとか作れれば……うん、おれの力でもなんとかどかせると思う」
「それじゃあ、まずはフルーツを取ろう。取ったらこの船に積んでくれ。俺も手伝うから、後で一緒に食べよう」
「えへへ、楽しみが一つできちゃったねぇ」

 イズマが船に積んでいた網を借りて、二人がかりで水底に溜まったフルーツを掬い上げる。
絶妙な隙間に詰まってしまったものは、トストが手で少しずつ掻き出していく。
チャロロもまた、二人の作業が完了するまでサメが暴れぬようにと、また一片、切り身を湖へと入れた。
既にサメは水面から僅かばかり顔を出して魚が来るのを待ち構えており、まるでチャロロご飯をくれるのを、楽しみにしているようで。サメというよりはもはやイルカにも近い振る舞いで、ゆったり泳ぎ回り、自分の存在をアピールしていた。

「……サメだけど、結構人懐っこいのかな、こいつ。ほら、こっちだよー!」

チャロロの呼び掛けと餌付けに釘付けのサメは、彼から離れる気配を見せない。ならば、今のうちに。ひんやり氷のように冷たい、アイスキャンディーゴーレムだったものに手を掛ければ、重そうな見た目に反して、容易にごろり、と転がって。

「よっこらせ、っと……よし、開いたよ!」

その言葉通り、水底に沈む小さいフルーツが、水流を受けてころり、ころりと流れて行く。

通り路が元通り開かれたならば、あとは水中、水面、水上の三方からサメを海流の元まで誘導するのだ。
残りの魚を少しずつ撒きながら、チャロロは進路を示すように出入り口の方へ移動していく。
重ねて見本を示すように、トストはサメのすぐ側を泳いで見せる。

「うん、その調子だトスト。サメはちゃんと出口に近づいてるよ。チャロロもゆっくり誘導してやってくれ」

 サメの動きを後方から観察し、イズマは彼らに支持を出した。透き通ったサイダーの海であれば、その動きをしっかりと観察できるのだ。
最後、穴に辿り着く直前、サメが一度だけ、ぐるりとチャロロの周りを泳げば、そのまま帰り道に通じる穴へと向き合った。
やがてサメの体が、ギリギリのところで、地底湖の底に空いた穴を通り抜けた。
サメの黒く、大きな体はだんだん遠ざかり、小さくなっていく。どうやら彼は、無事に元の海への流れを掴んだらしい。
その様を、トストはゆっくり手を振り見送った。

「じゃあねぇ、サメ君。気をつけて帰るんだよぉ」
「ちゃんと帰ったら、お腹いっぱいご飯を食べるんだぞー」
「そうだな、ここは美しい所だが、生憎お菓子は人間の食べ物だからな。ここよりは、元の海の方があのサメにとってもいいだろう」
「ソウダナ、コレガ彼ニトッテモ最モヨキ選択ダロウ。ヨクヤッテクレタ」
「いや〜皆さん、お疲れ様っした!」

血の一滴も流すことなく無事に事態を解決してくれたイレギュラーズの働きに、ゴーレムも青年も称賛の声を上げた。

「ゴーレム君、この穴だけど……またサメ君が迷い込んでこないように、塞いじゃった方がいいかなあ?」
「ム……ソウダナ……。マタ同様ニ生物ガ迷イ混ンデシマエバ、ソノ者ガ困リ果テテシマウカラナ。皆、一度湖カラ上ガッテクレ」

ゴーレムに促され、イレギュラーズ達は陸に戻る。『ゴ苦労』と声をかけて、ブロックのように規則正しく組まれた腕を、湖に向けて翳す。

すると、メキメキという音が水中から聞こえると共に、つい先程サメが通り抜けた穴を塞ぐように、そこに青白く輝く巨大な氷柱が生まれた。

「うっひゃあ〜! ゴーレムさん、こんなこともできるんすね〜!!」
「我モ魔女様ノ眷属故ナ。コレクライハ容易イ。……タダ、力加減ガデキヌ故ニ、アノサメガ居テハ使エナカッタノダ」
「……そういえば、このティシエール街では、ああして人間以外の生き物を見る事が全く無かったな」

ティシエール街と外の境界。この街を包む不思議な魔法と、それが及ばぬ境界はどこにあるのだろう?
イズマの疑問に、ゴーレムが言葉を返す。

「フム、ソノ理由ハ、残念ナガラ我モ知ラヌ。ココデ生マレ、コノ外カラ出ルコトガナイカラナ。ダガ、貴殿ノ疑問モ尤モデアロウ。街ノ者ノタメニ、今ハ穴ハ封ジテオクガ、必要トアラバ開放シヨウ。ソノ時ハ存分ニ調ベルトイイ」
「ありがとう、ゴーレムさん。……そうだね、これからここで泳げるとなったら、街の人達も喜ぶと思う」

既に何度もこの街を訪れているイズマも、街の守護者たるゴーレムにとっても、ティシエールの住人達の笑顔はきっと尊いものだろう。

その時くう、と誰かの腹が鳴った。

「ん、今のって……」
「チャロロ君?」
「あはは……サメが美味しそうに魚を食べてたし、オイラもお腹空いちゃったなあ……って……」
「ふふっ、お疲れ様ぁ。それじゃ、無事にサメ君も帰せた事だし……皆でおやつにしよっかあ」
「賛成!」

そういって、彼らは改めて、地底湖を見渡す。
色とりどりのフルーツを載せたイズマの船は、まるで宝船のようにも思えた。 


●キラキラ、シュワシュワ、ひんやりと

「かんぱーいっ!」

彼らは高らかな掛け声とともに、カランとグラスを合わせる。

自警団の青年が持ってきたカクテルグラスのような器には、パインにチェリーにぶどうにナタデココ、そしてシュワシュワ弾ける炭酸が踊る。

「ん……フルーツにシロップが染みてて甘い……けど、サイダーの後味でサッパリするね」
「そうだな……しかもフルーツの香りがちゃんと活きている」

 シュガーハーバーから流れてきたフルーツポンチは、ソーダキャンディの洞窟に冷やされ、より一層、酸味と甘味だけでなく涼味をもたらしてくれる。
一方、チャロロが手にしたのは、洞窟の壁面を削り取った一片だ。

「んーっ! ひんやり甘くてしゅわしゅわ、疲れにしみわたる味だなあ……」

ふと思い立って、今度は青白い欠片を、サイダーの入ったグラスに沈めてみる。そして一口。

「んっ……シュワシュワと酸っぱさが強くなった!」
「おお、ちょっと刺激が欲しい人には良いのかもね」
「透明のサイダーに、青白い氷が沈んでいるようで……見た目も美しいな」

チャロロを真似て、イズマやトストもソーダキャンディを味わえば、また洞窟の中が、賑やかな笑い声に包まれた。
こうしてイレギュラーズ達は、一足早い夏の幸を、存分に味わったのだった。

成否

成功

状態異常

なし

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