シナリオ詳細
<Genius Game Next>フェアリーロンドは終わらない
オープニング
●きっと永遠に抜けられない遊び
私はまだ、妖精の輪舞のなかにいるのだ。
美しく磨かれた窓から見事な庭園をすかし見るたび、フィッツバルディ家の紋章がはいった蝋印から封を切るたび、廊下の端によってメイド達が頭を垂れ、ひそひそと小さな声で話すたび。おもうのだ。
私はまだ、妖精の輪舞のなかにいるのだと。
●ルル家・フィッツバルディ
砂嵐(サンドストーム)は盗賊の巣窟である。国家規模にまで膨らんだ巨大な盗賊団は砂漠地帯を占領し、鋼鉄翡翠間を寸断している。
その砂嵐盗賊団の最高幹部たちが一斉に、それもバルツァーレク派とフィッツバルディ派の領地及び一部王党派勢力をターゲットにした襲撃を起こしたのだ。
政界の『裏にも表にも』詳しいレイガルテがこの裏に暗躍するものの影を察知しないはずがなく、そして疑いをかけているアーベントロート中心一派もまた巧みにその証拠を消しアリバイ作り程度に自己派閥の領地も襲わせているという。
「いかにも、あの処刑令嬢の考えそうなことですこと」
屋敷の中だというのにラフな格好をしたルル家・フィッツバルディは、ため息と共に書簡をテーブルに放り投げた。
フィッツバルディ本家の末子ヴァーテン・ビヨッシー伯爵に輿入れした後病死したヴァーデン伯爵の財産を継ぐかたちで地位を手に入れたルル家は、その治政能力を買われ本家へと呼び戻された。理由は本家で続けて男子が病死し末子の孫でありルル家の息子であるロロ家の存在が政治的に重要となったためとされているが、屋敷内外問わず理由は別にあると噂された。
曰くリーゼロッテ・アーベントロートと親しいがため、有用なカードとしてレイガルテ公の手札に差し込まれたのだと。
そしてそのカードは今、場に出されたのだ。
書簡には代筆屋による長ったらしい挨拶や詩の後にこう、完結に要点が書かれていた。
――旧ビヨッシー領燃ゆる。死滅旅団『クルーエルリッパー』を確保せよ。
確保という文字に、息をつく。
殺してはならぬということ。手に入れなければならぬということ。
彼らを狙うものあらば、それが味方であっても『排除せねばならない』ということだ。
●大規模クエスト発令
ここからが本題である、と言わねばなるまい。
練達で進行中の一大プロジェクト、もうひとつの混沌ともいうべき仮想世界ROOを作りだし混沌法則を解明するというその計画はしかし、不明かつ大規模なバグによって停滞してしまった。バグによって生み出された仮想世界『ネクスト』には大量の研究員たちが魂ごと閉じ込められ、これらの救出と回収に人手を必要とした練達三塔主はローレットへと依頼を発注。アバターを介しログインした彼らは着々とその依頼をこなしていったのだが、在るときROOより大規模クエストが発令された。
その名も『Genius Game Next』。
ネクスト内の砂嵐大盗賊団(ラサ相当)が伝承王国(幻想相当)へ大規模な襲撃を行うというものである。
このクエストを達成したならば大量の研究員の救出がかなうほかネクスト内の情勢に大きな変化をもたらすことが出来るという。
ローレット・イレギュラーズは大量のアバターをログインさせ、この未曾有のイベントへ挑むのだった。
「今回僕らに割り振られたクエストはこれだね。変性死滅旅団の撃退と、『クルーエルリッパーEX』の撃滅、つまり死亡だ。
伝承のヴァーデン伯爵領城下町を舞台に、この町で略奪を行っている死滅旅団を撃退しそのリーダーである『クルーエルリッパー』デッドエンド・バーンを殺すんだ」
そう語ったのは練達セフィロトの中央研究塔、ログインルームと同じ階層にある休憩室である。どこか90年代のアメリカを思わせるミュージックの流れる、白い壁タイルのカフェに似ていた。
皿に載ったパンケーキにナイフを押しつけながら、情報屋の『黒猫の』ショウ(p3n000005)が、は語る。
「死滅旅団というのは……そうだねえ、かつてのジーニアスゲイムで砂蠍の中央部隊に加わってローレットと死闘を繰り広げた集団と言ったら解りやすいかな」
そう聞いて、テーブルの向かいでパンケーキに苺ジャムを塗っていた夢見 ルル家(p3p000016)『ああ、あの』と薄ぼんやりした表情で答えた。
確か当時、ルル家も直接交戦したことがあったはずだ。
「といっても、バグによって分裂、増殖した個体のひとつでリーダーの『クルーエルリッパー』もやや個性の異なる個体が複数いるって話だ。今回はそのひとりってことになるね。
それで今回は、街のあちこちに分散して住民の殺害と略奪を行おうとしている彼らを倒して周り、リーダーである『クルーエルリッパー』も見つけ出して倒す……必要があるんだけど」
うーん、とショウは難しい顔をして唸った。
「今回、どうも領主のルル家・フィッツバルディが手持ちのアサシン『警察忍者隊』を放ってるみたいでね。『クルーエルリッパー』を生きたまま拉致する計画があるみたいなんだ。
今回の事件の裏を探る活動の一端なんだろうけど、こっちは領民でもなければ普通にネクストの民でもないしね。イレギュラーズとして認知されているとしても、後ろ盾は得られない。
つまり……十中八九ルル家の警察忍者隊と三つ巴になるってことさ。生きたまま拉致られたらこっちの依頼は失敗。殺されたらあっちの任務は失敗だしね。
だからちょっとややこしいんだけど……そこもふまえてコトにあたってもらうことになる。
厳しいけど、頼んだよ。きっとできると信じてる」
ショウはそう締めくくると、パンケーキをフォークにさして口に運んだ。
- <Genius Game Next>フェアリーロンドは終わらない完了
- GM名黒筆墨汁
- 種別通常
- 難易度HARD
- 冒険終了日時2021年06月21日 23時35分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●
煙の上がる夕暮れの、どこか寂れた街の喧噪。
ルル家・フィッツバルディ領――正確にはヴァーデン伯爵領の一角、イルケニエル。
人々の悲鳴と、火のついた家屋の煙だと……駆けつけた『Lightning-Magus』Teth=Steiner(p3x002831)はすぐに直感した。
アバターにセットされた能力『Assault_Sense』を起動し、視界にライムグリーンの矢印が伸びていくのを見る。
どうやら自分は仲間を置いて先回りするほうが効率的……なようだが、単独で走り回るのは不安があったのだろうか。Tethは足並みを揃えるために別働隊にあたる『夜告鳥の幻影』イズル(p3x008599)へと振り返る。
「しかし、領民が襲われてるってのに、族の逮捕に集中するってか。中々どうして、割り切りがいいな?」
「ま、言ってみれば共犯者の疑いがかかってるし……ある程度は共犯みたいなものだしね」
イズルは既に犠牲となったであろう住民の霊魂が助けを求める声を聞きながら、ゆっくりと首を振った。
「フィッツバルディ派だって馬鹿じゃない。今回の事件にアーベントロート派が噛んでることは察してそうだし、黒幕だと予想してる元老院議員もいるんじゃない?」
「その場面で『保身』を選択しなければ領地ごと立場を失うと?」
「それよりもっと酷いことが起こるかも。領地じゅうでスパイを探して魔女狩りとかね」
肩をすくめるイズルに、Teth=Steinerは眉を下げるだけで応じた。
幻想貴族の『よくないところ』が、どうやらこのネクストでは前面に出ているように見える。
「それで選択したのが、精鋭部隊を使った実行犯のリーダー確保ってわけか。ま、身内に身の潔白を証明するにはいまとれる最善手だよナ……」
『殲滅給仕』桃花(p3x000016)は両手をだらんと下げて、そして大きく口を開いて空を見上げた。
『この世界』のルル家は、とても打算的な女であるらしい。いや……自分だって巡り合わせが違えばそうなっていたかもしれない。
抜け目のなさ。動きの速さ。時折見せる冷淡さ。どれも自分の持ち物だ。
「自分を相手にするとこうもめんどくセーもんか……。
まーイイゼ、自分が無能でも複雑だしナ!」
姿勢を戻し、背負っていた携帯式超小型火炎放射炉から噴射口を外して手に取る。
『カラミティ・クリエイター』ロロン・ホウエン(p3x007992)はその様子を横目にしつつも、ぐーっと組んだ両手で背伸びをしていた。
「これは賊というより私の領分。テロリズムね。
といっても虐殺が主目的のようだから次の手を踏み込んで予想する必要はなさそうだけれど。
建物が半壊や燃えてるなら多少強引に突っ込んでも平気そうねぇ」
「大規模クエストっつったっけ。火事場泥棒にヘンテコ忍者と来たか、面白れーじゃねェか」
その一方、腰に三本の刀をおさめた『雷火、烈霜を呼ぶ』キサラギ(p3x009715)がその打ちの一本をスッと半分まで引き抜いた。
そして、勢いよく鞘にガチンと納め直す。
「要するに全員ぶった切ればいいんだろ? その宇宙?警察?忍者? が狙ってるからリーダーはなるはやで」
ピッと親指で首をきる動作をするキサラギ。
「ところでそのリーダーの……クルーエルリッパー? ってヤツはどんくらいで倒せそうなんだ? 7秒? 8秒?」
「全員で囲めばあるいはその程度やも、な」
『秘すれば花なり』フー・タオ(p3x008299)はちょっとぶかぶかに見える袖の内側に手を入れると、中に仕込んだお札の束を親指でぱらぱらとやって確かめる。
「とはいえ、油断はするな。口笛交じりでエモノを振り回せば全員無傷で事が成せる……とするにはあまりに状況が過酷だ」
武装を確かめてから、フーは目を細める。
(事件のウラもとりたいところだが……この件に関しては解決を後回しにすべきだろうな。もっとも、住民を見殺しにでもすれば最高効率で盗賊団の撃滅ができそうなものだが)
ふと見ると、アレクシア(p3x004630)が空に鴉型のデジタルファミリアーを飛ばしていた。
「罪のない人達が殺されるのを黙ってみてるわけにはいかないね!
きっちり助け出して、目的も果たしてみせるよ!」
おさらいしよう。
今回イレギュラーズに課せられたクエストは『死滅旅団の全滅』である。
あちこちに散らばって住民の虐殺と略奪を行っているであろう死滅旅団のメンバーを片っ端から見つけ出し、殺す。
これだけなら騒ぎのするほうや人の集まる場所を適当に行ったり来たりすればこなせそうだ。だがここに『住民の救助』を追加した場合途端に時間との勝負になる。
エリア中を走り回り、盗賊団を倒しては次へ倒しては次へをとにかく素早くこなして行かなければならない。
今回そのためのチームを2つ作成した。Teth&フー、アレクシア&ウーティスのチームである。残る四人はクルーエルリッパー目指して一直線に進み、これの抹殺を試みる。四人としたのは、警察忍者隊との衝突を警戒してのことだろうか。
「とにかく! 街のみんなは助けるし、盗賊団もやっつけるし、その警察忍者にリーダーが拉致られちゃうのも阻止するよ!」
アレクシアがむんっとした顔でガッツポーズをとると、軽装にローブを纏っていた『名もなき騎士』ウーティス(p3x009093)がゆっくりと頷いた。
「力なき者を守護することこそ騎士の務め。どのような複雑な意図があろうとも、殺戮者は死によって対価を払わねばならぬが世の理」
ウーティスは鞘から抜いた白銀の剣を垂直に立てると、カチリと刃を眼前へとひねり向ける。するとどうだろうか。漆黒の鎧がどこからともなく現れ、彼の前身へと素早く装着されていく。
「民無くして何の領地か、何の領主か。生憎、小の犠牲で大を救うという類の戯言は私の思想に無い。この地の主は政治の中で心を失ったか。
何にせよ、クルーエルリッパーの命は我々がもらい受ける。これ以上被害を出さぬために」
デジタル鴉が飛んでいく、それを追うように走り出すアレクシアが『あとでね!』と手を振ると、Teth=Steinerはピッと二本指を立てる挨拶を返して『E.F.Maneuver』を起動。素早く建物の壁を滑走して駆け上がると、フーも袖からお札を取り出して放り投げた。お札はぱたぱたと自らを折って紙人形を象ると、煙を出して子供の容姿へと変化した。
「アレクシアとはaPhoneーalterで連絡をとりあっておく。桃花はこの式神を連れて行け。妾と五感をリンクさせてある」
そこまで言うと、Teth=Steinerを追って走っていった。
こくこくと頷き、桃花もまた走り出す。
「さぁてどこにいるか……って、解るんだヨナあ、臭うんだヨ。同類臭が!」
●
「桃花チャンとロロンたちはクルーエルリッパー狙いでいくぞ!
最速で行くと死滅旅団が手薄になるし、悠長にしすぎると確保されちまうから、な!」
扉を蹴破り火炎放射炉を構えると、ナイフを手にクローゼットをあけていた盗賊と目が合った。
「あ? なんだてめ――」
「うるせー死ねェ!」
即火炎放射。
と同時にロロンが疑似精霊を生成し、腕に纏わせると冷気の塊となり、殴りつける動作によって盗賊をはねとばす。
壁に叩きつけられた盗賊はばしゃりと広がった粘液状のものが凍結することで動きを封じられ、更にキサラギの斬撃によって首を切り落とされた。
わずか3秒の出来事である。
「フツーの盗賊程度なら2~3人で瞬殺できるな」
イズルがふと振り返ると、クローゼットに子供を抱えて隠れていた音がいた。震えがいまだ収まらぬようで、こちらを見つめ小さく首を振っている。味方かどうかも判断がつかないのだろう。
背中をさするなどしてやりたいが、そんな余裕はなさそうだ。
「ここは任せて、早く逃げて!」
慌てて逃げる様子をひとまず確認してから、別の入り口より入り込んできた盗賊達に身構えた。
同じく身構えつつ、ちらりと桃花へ目をやるロロン。
「どうする? 放っておいてクルーエルリッパーへ行く?」
「まー、出会っちまったもんは仕方ネーだろ」
「だね」
ロロンは肩をすくめたと同時に高速で移動。こちらに銃をむけたばかりの盗賊にショルダータックルを浴びせるとその後続までまとめて吹き飛ばした。
ククリナイフを抜いてロロンの後ろをとろうとした盗賊があったが――。
「よそ見をするとは、余裕だ?」
その時には既にキサラギの剣が盗賊の片腕を切り落としていた。
「この連中は3秒ってわけにはいかねぇぞ」
霊的なものを湧き上がらせ、イズルは両手を広げる。
「大丈夫。回復は任せて。目標にたどり着くまえに脱落者が出るのが、一番マズイからね」
家屋と家屋の間を滑走し、素早く走り抜けていくTeth=Steiner。
「まずは大きな広場へ行け! そこから無事なトコへ逃げ込むんだ!
バラけてっと護り難い! 急げ!」
まだ盗賊に入り込まれていない家々に拡散するように伝えつつ叫ぶと、めをつけた民家めがけて跳躍。窓ガラスを粉砕しながら転がり込む。
腹を撃たれて男性と、部屋の角に集まって身を縮こめる子供たち。そして拳銃を手にしたターバンの男。盗賊だ。
男への銃撃を一旦やめ、Teth=Steinerへの銃撃をはじめる――が、Teth=Steinerはその場で急速にカーブを描くことで銃弾を回避。その間玄関から入り込んだフーは子供達を庇うように陣取り、蒼い炎を燃え上がらせた。
袖の中から滑り出したお札を放り投げ、『Negative Blaze』を起動。蒼い炎の弾は意志でももっているかのように盗賊へと飛び、その顔面を焼いた。
更にはまき散らしたお札が影の触手となって盗賊を拘束。
と同時に急接近していたTeth=Steinerが腹に押し当てたハンドガン型スキル発動器をトリガー。至近距離で収束励起電子を発射。肉体を吹き飛ばす。
「其方らも広場へ」
フーの呼びかけに頷いた子供達は、怪我した父らしき男に肩を貸し広場へと飛び出していく。
フーはaPhoneーalterを取り出し、アレクシアへと通話を試みた。
別の場所。アレクシアはaPhoneーalterを耳に当てながら走っていた。
「うん、デジタルファミリアーごしに見えてるよ。広場に向かって人が集まってる。盗賊たちも一部はそれに気付いてるみたい。どうする? よびかけ手伝う? それとも広場に先回りして守ろうか?」
などと話ながらもビッと民家の窓めがけて二本指をつきつけると、『雲居』の魔術を発動。雷が民間人に斬りかかろうとしていた盗賊を打ち抜き、更に打ち込んだ『天穹』の魔術が光の矢となって盗賊の頭に突き刺さる。
崩れおちる盗賊。
aPhoneーalterを耳に当てたまま振り返り、アレクシアは『ん』と頷いた。
「わかった。じゃあ……まだ逃げ切れてない人達がいるから、そっち行くね」
『ていうことだから』、とアイコンタクトを送ると、ウーティスがゆっくりと、風もないのにながい白髪を大きくなびかせながら頷いた。
二人は頷きあうと、盗賊が飛び込んでいった建物へと直行。
いちはやく高速化した光輝烈風は光を身に纏って木造の壁を破壊。そのまま屋内に飛び込むと盗賊三人組をまとめて切り裂き、剣を振り抜いた姿勢で停止した。
「希望を捨てるなかれ、私は貴殿らの剣にして盾。ここは我々に任せて、安地へ逃げよ!」
●
アレクシアがデジタルファミリアーを空にあげていたことで、人々の動きをよく見ることが出来た。
多少時間はかかったものの、最終的に村の人々はTeth=Steinerの呼びかけによってひとつの広場に集まった人々と、盗賊に道を塞がれるなどして動けない人々に大別されるようになっていた。
そういうとき、アレクシアの俯瞰視点が役に立つのである。
「その人達から離れて!」
アレクシアの放つ『雲居』の魔術が激しい電撃となって盗賊をとらえたその途端、高速回転を交えたウーティスの斬撃が盗賊の腕を切り裂き、さらなる斬撃が別の盗賊のナイフを打ち払う。
またその一方、Teth=Steinerは広場に集まった人々を狙う盗賊たち相手に多量のペンシルロケットを発射。死角をおぎなうように回り込んだフーも『Thunder Fall』の術を起動し、空に舞い上げた大量のお札から雷をまき散らしていた。
「クルーエルリッパーの方はどうなってる。終われば合流する予定だろ」
「そのつもりだが……」
同伴させていたフーの式神との接続が途絶えた。破壊されたのだろうか。直前まで見えていた風景から察するに、苦戦しているようだったが……。
ロロンたちはクルーエルリッパーのもとへ(道中出会う盗賊は対処しつつ)直行し、速効での殺害をもくろんだ……が、同時期に警察忍者隊と遭遇。クルーエルリッパーのもとへいかせまいとする警察忍者隊の突破が急務となった。
「焦るな、クルーエルリッパーだって雑魚じゃない。そうすぐに持ち去られ派しないはず」
「そういうこった。ま、妨害したってオレの奥義の前じゃ無意味だがなァ! 奥義、絶剱──『湖月』」
ロロンの放つ冷気の打撃と合わせるようにして、キサラギの斬撃が警察忍者隊とぶつかり合う。
宇宙クナイと剣が激突し火花を散らす一方、二丁サブマシンガンによる乱射を三刀流の剣術でもって次々に払っていく。
「チッ、ダメージがでかすぎる! ――イズル!」
「わかってる」
集中砲火を浴びるキサラギを助けるべく治癒ポーションを生成。これを、と掲げたイズルをキサラギは二度見した。なぜなら七色に光っていたからである。
「え、いや……どうつかうんだそれ」
「こうだ」
そぉら! といって投げつけたポーション(薬液の入った瓶)がキサラギの側頭部に激突し粉砕。ちった薬液がどういう理屈かキサラギにしみこみ傷を七色の光で修復していく。
「桃花、足止めをくらっていても仕方ない。先にクルーエルリッパーへ」
「……」
顔をしかめる桃花。状況の苦しさに対してだが、同時に警察忍者隊のいやらしい動き方にも苦い感情を抱いていた。
計画の邪魔が出たとわかるやいなや足止めを差し向ける動きの速さと強引さ。もし『こういうパターンの自分』だったなら、拉致するための別働隊をクルーエルリッパーへ向けて動かしている筈だ。
状況把握ができていないフィールドで部隊を一塊にして突っ込ませる愚をおかすとも思えないからだ。
「わりいナ!」
組み付くイヅルたちに警察忍者隊を任せ、強引に突破する桃花。
そして――。
「ハッハー! 桃花チャンの前に立ったのが運のツキだゼ!」
建物の中で虐殺遊びに興じていたクルーエルリッパー。屋内へ強引に飛び込んだ桃花は火炎放射炉を起動。火炎放射どころか爆発がおこり、クルーエルリッパーは壁を破壊して屋外へと転がり出た。
「クソッ、もう兵が動いてんのか! 足止めは聞いてたはずだろ」
「誰のこと言ってんのかしらねーが……名前の通りだナ、デッドエンド」
実力はおそらく互角……か、それ以下。こちらがやや上回っている。タイマン張っても勝てる相手だ。
抜いた拳銃の乱射を火炎放射炉の銃身でもって防御すると、桃花は至近距離までつめよってその銃身でぶん殴った。
直撃をうけ、頭から血を流すクルーエルリッパー――デッドエンド・バーン。
タダでは死なんとばかりに桃花の腹に押し当てた銃で滅茶苦茶にトリガーをひくが、桃花はとまらない。
トドメの一撃がたたき込まれ――ようとした、その時。
ヒュン――と、風がふいた。
否。そう思えた。
視界が強制的に90度傾いて大きく動き、ドッと側頭部に痛みが走る。
次の瞬間うつったのは、褐色肌を忍び装束で包んだグラマラスな女性の姿。と、その手に握られた妖刀ビームMURAMASAであった。
「美味しいところだけ持っていくってか……クソほど優秀じゃネーか……『自分』」
その女性は両足を切断され転倒した桃花の顔をちらりと見ると、刀を再びかざした。
「どなたです? けれど、なんだか……他人とは思えませんね。ひとまず、『コレ』は貰っていきます。死ぬより酷い目に遭わせた上で殺しておくのでご安心を」
そう言いながら、倒れたクルーエルリッパーを軽々と持ち上げる。
「ごきげんよう。また会うこともあるでしょう」
成否
失敗
MVP
状態異常
あとがき
――死滅旅団の9割を抹殺しました
――リーダーのクルーエルリッパーをあと一歩の所まで追い詰めましたが、警察忍者隊によって横から奪われてしましました。
――住民被害は想定に比べ極めておおきく軽減されました。生き残った住民達はあなたに感謝しています。
――死滅旅団全滅のクエストに失敗しました……。
――研究者の意識は想定の8割ほど救出できましたが、残る2割前後が囚われたままになっています……。
GMコメント
●クエストとその背景
今回はとてもややっこしいので簡潔におさらいします。
・成功条件は『クルーエルリッパー』及び死滅旅団を殺すこと。
・舞台は伝承(幻想相当)の伯爵領城下町。
・死滅旅団による虐殺と略奪が行われているので、これをすべて倒していく。
・『クルーエルリッパー』を狙って警察忍者隊が活動しているので、これとの戦いも予想される。
以上をふまえて、解説をどうぞ!
●死滅旅団を全滅させよう
伯爵領城下町のあちこちで死滅旅団のアサシンたちが略奪をして回っています。
今回の目的が領地の能力を落とすことにあるので、物資の強奪よりも虐殺を優先している模様です。
あちこちで悲鳴があがったり家が燃えたりするので、特別な非戦スキル等がなくてもどこでそういう事件がおきているのかわかって駆けつけられるものとします。
(ですので、探索プレよりも屋内戦闘プレイングにリソースを割きましょう!)
戦闘難易度はちょっと高めです。
ですので安全を期すなら3~4人で固まって移動して個別に潰していくとよいでしょう。
しかし領民をできるだけ沢山助けたいなら、1~2人で分散して同時にあちこち潰していく必要があるでしょう。
その中でもリーダー『クルーエルリッパー』に関しては難易度がもう一個上がります。
なぜなら、ルル家・フィッツバルディの放った猟犬であるところの警察忍者隊が彼を確保しに迫っているからです。
クルーエルリッパーVS警察忍者VSローレットの三つ巴になってしまいます。
まあ警察忍者隊も今まさにクルーエルリッパーを殺したいローレットの目の前でヨイショつって持ち運んでいくような愚かさは見せないので(隙だらけだし)まずはローレットの排除に動くでしょう。
『クルーエルリッパー』もまたその狙いが読めているので一旦はローレットを排除し、排除しきったところでスパッと逃げちゃうつもりのようです。その方がお得なので。
※今回、アバターの『桃花』はなんとなーく『クルーエルリッパー』の居場所がわかるものとします。なぜながらその方がアツいからです。
●エネミーデータ
全体的に敵戦力は高めです。
こちらの死亡者も半数かそれいくらいは出るかもしれません。
(死亡してもデスカウントが増えるだけですが、少なくとも戦闘への復帰はできないのでリソースの運用にはご注意ください)
・死滅旅団
優秀なアサシン集団です。エスニックな雰囲気の精鋭アサシンたちが揃っています。
個々人がそれなりに強いので、心して挑みましょう。
厳密にはバグによって増殖した死滅旅団なので、混沌の死滅旅団とはあちこち差異があります。
・クルーエルリッパー
死滅旅団のリーダー、デッドエンド・バーンです。といってもバグによって増殖した個体のひとつで、性格や武装にあちこち差異があります。
戦闘能力は高く、EXAの高いスピードタイプのようです。武器は主にナイフ。
・警察忍者隊
ルル家・フィッツバルディの飼っているへんてこな見た目の集団。
与太った見た目で油断されがちですが、むしろその隙をついて確実かつ迅速に『仕事』をこなします。
実力もかなりガチで、宇宙力を使った忍術でかなり隙の無い戦い方をします。
混沌ルル家との決定的な違いは、『あまりファンブルしない代わりに爆発力に欠ける』ことです。この辺りがネクストルル家らしさでもあります。
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
●ROOとは
練達三塔主の『Project:IDEA』の産物で練達ネットワーク上に構築された疑似世界をR.O.O(Rapid Origin Online)と呼びます。
練達の悲願を達成する為、混沌世界の『法則』を研究すべく作られた仮想環境ではありますが、原因不明のエラーにより暴走。情報の自己増殖が発生し、まるでゲームのような世界を構築しています。
R.O.O内の作りは混沌の現実に似ていますが、旅人たちの世界の風景や人物、既に亡き人物が存在する等、世界のルールを部分的に外れた事象も観測されるようです。
練達三塔主より依頼を受けたローレット・イレギュラーズはこの疑似世界で活動するためログイン装置を介してこの世界に介入。
自分専用の『アバター』を作って活動し、閉じ込められた人々の救出や『ゲームクリア』を目指します。
特設ページ:https://rev1.reversion.jp/page/RapidOriginOnline
※重要な備考『デスカウント』
R.O.Oシナリオにおいては『死亡』判定が容易に行われます。
『死亡』した場合もキャラクターはロストせず、アバターのステータスシートに『デスカウント』が追加される形となります。
現時点においてアバターではないキャラクターに影響はありません。
※重要な備考『情勢変化』
<Genius Game Next>の結果に応じて『ネクスト』の情勢が激変する可能性があります。
又、詳細は知れませんが結果次第によりR.O.Oより特別報奨が与えられると告知されています。
Tweet