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シナリオ詳細

<Genius Game Next>闘争の果てに

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 ああ。ああ。
 己の血に塗れた手を見て、男は嘆く。嘆きながら、笑っている。
「はは、はははは……」
 掠れた声で笑いながら、男は殺意を瞳に宿らせる。
 なんのために殺しているのかさえ分からなくなってしまった男は、衝動のまま、殺し続けて、殺し続けて――
 また、標的が見える。浴びた鮮血をぺろりと舐めてぎらつく瞳を獲物のいる村へと向けた。


 突如として暴走したR.O.O世界に、また嵐が巻き起こる。
 ネクストに囚われた人々が『トロフィー』となり、ログアウト出来なくなった救出対象をゲームのクリアの報奨として彼等を解放する場合という程度の『バグ』が多かった。
 だが、R.O.Oの冒険はあくまでゲームの中の出来事。R.O.Oにおいて生じる事件の表層自体は事件の本質に関係ないと思われるが、『トロフィー』をはじめとする筋道がネクストに用意されている以上、バグの根源や解決に到る為にはゲームに乗る必要があると練達の首脳陣は考えていたのだが――
 R.O.Oから全プレイヤーに『イベント開催告知』が出されたことにより、その推論を補強する重要な情報が発信された。
 R.O.Oは大規模イベント<Genius Game Next>を実施する、と。
 来る6/2、砂漠の悪漢『砂嵐』が伝承西部バルツァーレク領、南部フィッツバルディ領を襲撃する事が明らかになっている。つまり、悪逆非道の砂嵐を迎撃し、伝承領の被害を軽減することがこのイベントの目的だ。
 そして、今回の依頼もそれに紐づいた依頼となる。
「今回の依頼は……ブラッディ・レッドな気分になる内容よ」
 R.O.O世界のローレットに集まったプレイヤー、イレギュラーズ達は今回の情報屋である『色彩の魔女』プルー・ビビットカラー(p3n000004)から話を聞きに集まったところであった。プルーの面持ちは暗く、吐く息は重い。
「今回は砂嵐にほど近い辺境にある村々を襲って回るバッド・ブラックな盗賊集団……その討伐よ」
 プルー曰く、幻想貴族からの依頼で、自分の領土にある村々がどんどん襲われていき、自前の戦力で討伐しようにも相手の行動が早く追いつかないそうだ。その為、イレギュラーズ達へ依頼をしてきた、とのことだが――
「どうやら、何か企みがありそうなの。本当に、アッシュ・グレーな気分だわ……」
 少し心配そうな面持ちで、プルーは語る。どうやら、この依頼には何かしらの意図があると考えているらしい。
 イベントのクリア報酬は何も伝えられていないが、恐らく『トロフィー』や、情報などのアップデートだと考えられるだろう。このイベント自体が、様々な推論の構築に重要な意味を持つのだと、ギルドマスターが言っていたと、プルーはイレギュラーズ達へ伝える。
「改めて、説明するわね。場所は砂嵐に近い、辺境の村のひとつ。前回襲われた村の位置から推測して、次はそこが襲われるのではないかと予測されているわ。……恐らく、襲ったのは砂嵐中核傭兵団『凶』に属する傭兵……とは言い難い、血に飢えた盗賊団よ」
 襲われた村を調査した者からの情報で、獣種特有の毛が落ちている、足跡が獣種の者ばかり、時折獣に噛み千切られたような遺体があったこと。
 粗野なタイプの多い『凶』の中でもかなりの凶暴さを持っていると思っていいだろう。
「相手はパワータイプ……クリムゾン・レッドのような気持ちで挑むといいわ。恐らく、近接系の武器や、自身の爪などを使って襲い掛かって来るでしょうから、近づく際は気を付けるのよ」
 敵は5人ほどの少数精鋭だが、個々の戦闘力が高いようで、特にリーダーらしき獣種が、かなりの体格を持つらしくひとりで3人分の戦闘力を持っていると思って掛かってほしいと、プルーは真摯にイレギュラーズ達を見つめる。
「あまり与えられる情報が多くなくてごめんなさい……けれど、相手は相当な強さよ。死を覚悟して戦ってちょうだい。貴方たちに、ラピスラズリ・ブルーの幸運が在らんことを」
 それだけ伝えて、プルーはイレギュラーズ達の背中を見送った。


 足りない。
「な、なにを……ヒィッ!?」
 足りない。
「お、おい! なんで仲間を喰って……え、ぁ……?」
 何もかも、血も肉も、全てのものが足りないんだ。渇いて仕方がない。満たせるものがない。空っぽだ。
「なァ……次のエモノは、ドコだ?」
「こッ、今夜だ! 今夜……あそこの村を襲うぞ!」
 ――男は嗤う。己の飢えを満たせるその時を待つ。

GMコメント

まずはオープニングを見ていただきありがとうございます。
きみどりあんずと申します。
今回はR.O.O世界のご案内になります。
こちらは戦闘メインのシナリオとなっております。
戦闘メインは初ですので至らない部分もあるかと思いますが、かっこよく描写出来るよう、精一杯描かせていただきます。

●成功条件
 村の被害を最小限に抑えて敵を全て倒す。

●場所
 砂嵐に近い伝承の辺境にある村。

●スタート地点
 深夜、砂嵐に近い辺境の村から始まります。
 村人たちは何も知らないので、すっかり眠っています。
 先手を打つか、不意を突くか、捨て身で行くか。様々な方法で被害を最小限に抑えましょう。

●敵 『凶』の配下×4
 ハウザー・ヤークが団長を務める砂嵐中核傭兵団『凶』に属する傭兵。
 ですが、盗賊に近い行為を繰り返しています。
 内、ひとりがリーダー核の者ですが少し暴走気味で、仲間を食い殺してしまうほど凶暴です。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●ROOとは
 練達三塔主の『Project:IDEA』の産物で練達ネットワーク上に構築された疑似世界をR.O.O(Rapid Origin Online)と呼びます。
 練達の悲願を達成する為、混沌世界の『法則』を研究すべく作られた仮想環境ではありますが、原因不明のエラーにより暴走。情報の自己増殖が発生し、まるでゲームのような世界を構築しています。
 R.O.O内の作りは混沌の現実に似ていますが、旅人たちの世界の風景や人物、既に亡き人物が存在する等、世界のルールを部分的に外れた事象も観測されるようです。
 練達三塔主より依頼を受けたローレット・イレギュラーズはこの疑似世界で活動するためログイン装置を介してこの世界に介入。
 自分専用の『アバター』を作って活動し、閉じ込められた人々の救出や『ゲームクリア』を目指します。
特設ページ:https://rev1.reversion.jp/page/RapidOriginOnline

※重要な備考
 R.O.Oシナリオにおいては『死亡』判定が容易に行われます。
『死亡』した場合もキャラクターはロストせず、アバターのステータスシートに『デスカウント』が追加される形となります。
 現時点においてアバターではないキャラクターに影響はありません。

※重要な備考『情勢変化』
<Genius Game Next>の結果に応じて『ネクスト』の情勢が激変する可能性があります。
又、詳細は知れませんが結果次第によりR.O.Oより特別報奨が与えられると告知されています。

  • <Genius Game Next>闘争の果てに完了
  • GM名きみどりあんず
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年06月20日 22時06分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

シャドウウォーカー(p3x000366)
不可視の狩人
ナハトスター・ウィッシュ・ねこ(p3x000916)
NyarAdept-ねこ
シラス(p3x004421)
竜空
夢見・マリ家(p3x006685)
航空海賊虎
真読・流雨(p3x007296)
恋屍・愛無のアバター
フローリカ(p3x007962)
フローリカのアバター
三月うさぎてゃん(p3x008551)
ネクストアイドル
黒子(p3x008597)
書類作業缶詰用

リプレイ


 人々が寝静まり、月明りだけを頼りにざくざくと地面を踏みしめる音が響き渡る。
 予想されていた村周辺に辿り着いたイレギュラーズ達は、ランプの明かりを消して、先手を取るために身を潜める『星の魔法少年☆ナハトスター』ナハトスター・ウィッシュ・ねこ(p3x000916)、アクセスファンタズムで気配を消し、偵察をする『不可視の狩人』シャドウウォーカー(p3x000366)。
「相手の人数が少ないからって油断はできないね」
「話聞く限り賊っぽいし、あんなのに村襲わせたくないなー……。まぁ他の奴でも襲撃はお断りだけどね☆」
 各々、言葉を交わしながらも警戒の手は緩めない。
 その時――『恋屍・愛無のアバター』真読・流雨(p3x007296)の耳に、こちらへと向かう足音。複数ではない、たったひとつ。いや、一匹と言った方が正しいのだろうか。
 最早統率を失った『凶』の末端。そのリーダー格を担っていた暴走した獣種――もはや獣になりさがった男が村目掛けて走っている。
 配下の者たちは見当たらない。ここは手分けする、とアイコンタクトを取りあい、まず『シラスのアバター』シラス(p3x004421)が鱗を逆立て、相手の前に立ちはだかる。そして、獣をその竜の瞳に捉え他メンバーへ伝える。
「いたぜ、あのデカいのだろう?」
 村の入り口から遠く離れた場所でシラスは獣に向けて炎を吐き出す。
「ジャ、マ……ジャマだ!」
 獣がシラスの炎を腕一振りで薙ぎ払うとその喉元に噛みつく――寸前で、獣の身体に縛り付けられた光の縄で、その動きは止められる。
「かかったね☆ さぁ、おうちのほうへと尻尾を巻いておかえりなさーい☆」
「隙が出来た、助かる」
 ナハトスターの放った光の縄は、獣が暴れながら引きちぎられていくが――シャドウウォーカーにとってはその少しの隙で十分だった。
 背後から雷を纏ったダガーを獣の首元目掛けて突き刺す。
 ――だが、それをものともせず、シャドウウォーカーごと光の縄を引きちぎった獣は目の前のシラスの身体を爪で切り裂く。己の身体が傷つくのも厭わず、何度も切り裂く。
「チィ……!」
「ったく乱暴だなぁ! シラスさん、こっちにきて! 誰かあいつの相手、お願いね☆」
 傷ついた味方を回復するべく、魔術を展開したナハトスターは獣の相手を頼むと、視線を送る。
「拙者の力! 見せて差し上げましょう!」
 『航空海賊虎』夢見・マリ家(p3x006685)が、自らの強化を終えた頃合い。
 バトンタッチするかのようにシラスと入れ替わりでマリ家は飛び出していく。スーツに搭載されたバルカン砲を放ち、獣を攪乱させ味方の回復の邪魔をさせない立ち回りをし、一斉に畳みかけるための準備を着々と進めていく。
「助かったぜ、今ならいける!」
「ありがと☆ じゃあ、一斉に行こうか!」
 完治とはいかないが、全力を出せるまでに回復したシラスとシャドウウォーカーは頷く。
「おらぁッ! くらいな!」
 突風のようなシラスが獣に飛び込み、ナハトスターが煌めく星を落とす。マリ家が獣を攪乱させつつ、シャドウウォーカーが全員で作った隙を突いて、まるで瞬間移動したかのように獣の背後を突き、必殺の一撃を放つ。
 ――ずうん、と倒れ込む獣に誰もが倒したかと息を吐いたその時だった。
「ク、わなイと。ハラが、減っテ。食ってやル。殺シてヤル……」
 もう虫の息だと思っていた獣は、瞳をギラつかせて再び立ち上がる。異常ともいえる執念を立ちはだかるイレギュラーズ達へ向けて。

 ――一方その頃。
 『フローリカのアバター』フローリカ(p3x007962)は、流雨が索敵した敵を『ネクストアイドル』三月うさぎてゃん(p3x008551)と共に各個撃破に勤めていた。
 村への侵入はギリギリのところで止められた。
 しかし、物音を聞きつけた村人たちが起き出したため、状況を飲み込めた者に避難するよう伝え、戦闘の影響がない場所まで避難を促してもらった。
 これで、戦闘に集中できる。そう思ったイレギュラーズ達は改めて敵を見据える。
 聞いていた話ではリーダー格を含めた5人――だが、今ここにいる配下らしき者は3人。情報が食い違ってはいるものの、戦力が下がったと思えばこちらにとっては有利だ。
「……にもないワイン……♪」
 フローリカがうさぎてゃんの歌声に気づき、斧を構える。
 ふらりと引き寄せられるように現れたのは、獣種の男――依頼にあった『凶』のひとり。暴走しているような様子が見られないので、配下の一人だろうとふたりは顔を見合わせ頷いた。
「随分と彼女の歌に聞き惚れているようだ……なッ!」
 赤い斧を振り回し、柄の方で敵の鳩尾を力いっぱい突き、体制を崩す。ヒトの急所ともいえる場所を突かれた敵は悲痛な呻き声を零して倒れ込む。
 視線で合図して、うさぎてゃんが息を吸い込む。彼女の攻撃は歌だ。どんな暗闇でも輝く――偶像。
「誰だって秘密を抱えて生きてる♪ この世界で解放しちゃえ! あの子もその子も秘密のデータ♪ バラさなければわかんない♪」
 うさぎてゃんの歌声に配下は倒れた身体をそのままに聞き入るような顔で、彼女から目が離せない。彼女以外が見えなくなってしまったように。
 そんな敵を、夢心地のまま逝けるようにと、フローリカは全力で斧を振り下ろした。
「さようなら。次はもっとまともな者に生まれてくるといい」
 ――急所は外したものの、配下のひとりを捕らえたふたりは、逃げられないよう頑丈に縛り上げまだ村の中で戦いの音を鳴らす者たちの元へと向かっていった。

 流雨と『書類作業缶詰用』黒子(p3x008597)は、索敵によって判明していた配下ふたりを相手取り、戦闘を繰り広げていた。
 流雨が行った奇襲によって混乱に陥った配下同士で争い始め、最早敵味方の区別なく攻撃を仕掛けており、反暴走状態にあり、なかなか標的を定めることが難しかったが――
「流雨さん、離れてください!」
「! ああ」
 配下のみになった村の広場に向けて、黒子はなるべく建物を傷つけないよう狙いを定め――構えた銃の引き金を引く。
 霊弾は真っ直ぐに敵の中心地の上空へと放たれ、そして弾ける。降り注ぐ雨のように降るそれは、無差別のように見えてしっかりと相手を定めて墜ちる、水の弾丸。
 冷たい雫に頭が冷えたのか、正気を取り戻した配下たちは、慌てて辺りを見渡すが――それも、もう遅い。
「さて、本格的な仕事といこう」
 流雨が放った竹槍が、敵の瞳に映った瞬間。飛び掛かろうとした姿で、配下たちはまとめて槍に貫かれていた。
 がくりと膝を折って倒れ込む配下に、黒子と流雨は顔を合わせて頷き、駆け寄ってくるふたつの足音の方へ視線を向ける。
 戦火を聞きつけてやってきたフローリカたちだ。
 お互いの状況を簡単に報告し合い、未だ決着がついていないであろう強敵がいる場所へ、向かう。最後の戦いを、終えるために。

 ――村周辺で待機していたイレギュラーズ達が情報交換を行っている頃。
 致命傷を与え、虫の息だと思っていた獣の瞳が、憎悪と飢えで紅く輝き立ち上がる姿に皆一様に驚愕していた。
 ぎらりと瞳が向けられた先は、ナハトスター。
「ちょ、ちょっと!? ボ、ボクとやる気なの?」
 ナハトスターは狙いを定められたことに臆し、一歩後ずさる。ナハトスターは近接戦では不利だと、獣は判断したのだろう。
 初めよりも何倍も上がったスピードでナハトスターの眼前に獣の牙が迫る。
「――――ッ!!」
 ザシュ、という音と共にナハトスターの腕から流れ出る鮮血に、獣は瞳をさらにギラつかせて再びナハトスターへ襲い掛かろうとする――しかし。
「隙がありすぎ。ひとりしか見えていないの?」
 シャドウウォーカーが獣の背後に回りナイフを突き立てて注意を逸らし、マリ家がナハトスターを守るように獣の牙へ武器を噛ませ、攻撃を防いでいた。
 その間に、シラスはナハトスターを救出し、一度空へと飛び立ち、獣の手の届かぬ所へ連れ去る。
「こども。肉ガ美味イ……邪魔。ジャまダ。鬱陶シい。腹立タしイ! 喰わセろ。食わせロォ!!」
 獣の咆哮は、一瞬マリ家とシャドウウォーカーを怯ませるが、一度距離を離し体制を整えるため、ふたりはアイコンタクトで意思疎通を取ると、シャドウウォーカーが獣の足の腱を切り裂き、膝を折ったところでマリ家が咆哮を上げ、バルカン砲で獣を殴り飛ばす。
「ガッ、ギ……ィ」
 村から真反対の方向へ飛ばされた獣は、そのまま動かなくなり――上空で回復陣を敷いていたナハトスターとシラスも降りてきた所で、別働隊として動いていた他の4人とも合流できた。
 村の被害状況を聞き、一安心だと――そう思い込んでいた矢先。
「――!! 皆、危ないッ!」
 いち早く獣の動きに気づいた流雨が、氷の刃を抜き、反撃を――しようとして、反応しきれなかったのだろう。
 あまりにも早い動きに、流雨の瞳には、獣の喉が見えて――しまった、と。口に出す前にぐしゃりと音がして、流雨は獣に飲まれ、喰われていた。
「そん――な」
 絶望に染まるうさぎてゃんの瞳。
 次の餌に相応しいのはお前だと言わんばかりに向けられた視線に、声を張り上げてうさぎてゃんは歌い始める。
「こ……っ、ここへ来たなら逃がさない♪ 迷子の迷子のアリスたち♪ 魅せてあげるから……ッ目を離さないで!」
 震えながらも、歌声は獣に届き、ほんの少し怯むが――その程度意にも介さないとでも言うように、獣は喰われるために存在しているような兎を、童話に出てくる狼のように、大きな口を開けて――飲み込もうとする。
「これ以上はさせないっ!」
 いち早く気づいたナハトスターが、素早く光の縄できつく縛り上げ、ぎりぎりのところでうさぎてゃんの身体に牙は届かなかった。
「ったく、ドラゴンの肉には興味がねえってか? ほら、こっちに美味い肉があるぜ!」
「全く……どういう意図を持っているのか分からないが、ここで止める!」
 これ以上、仲間を失うものかと、決意に燃えるシラス。そこへフローリカも斧を握って立ち向かう。シラスは再び鱗を逆立て、初めと同じように突進していく。
 注意がシラスへ行っている間に、必殺の一撃を行うために、斧を構えなおすフローリカ。じりじりと焼けるような緊張が肌に伝わる。
「なぁ、アンタなんでそんなに飢えてんだよ。そんなに腹減ってるなら、飯食えよ、飯を!」
「――」
 一瞬だけ。ほんの一瞬だけ、理性を取り戻したかのような、悲痛な表情を見せた獣に、シラスは驚いて――固まってしまった。
「あッ、ぐぅ!!」
 強く、喉元を噛みつかれる感触。
 痛みに呻くシラスの声を聞きながらも、フローリカは今がチャンスだと、反動を受けてでも相手の姿勢を崩そうと斧を振り上げたところで――気づいた。
 ここまでシラスと敵が接近していては、シラスも攻撃に巻き込むであろうことを。
 まずい。と、手を緩めてしまったフローリカの背中を押すように、閃光のような弾丸が獣の脇腹を貫く。
 弾道の元を見れば、黒子の放ったスキル。やりましょう、という眼差しを受けると同時に、シラスの首がごきりと折れる音がした。
 その音は、イレギュラーズ全員に聞こえていた。思わず、攻撃の手を緩めてしまうほどに、生々しく、残酷なもの。
「がッ、ふ……ッ!」
 あとは頼むと言わんばかりに最後の足掻きに、シラスは炎の息吹をフローリカに当たらぬよう、吐き出した。
 ――もう瀕死同然だというのに、なぜこの獣はまだ動けるのか。首を半分まで切り裂かれ、足の腱も切られ、走れるはずがないというのに。光の縄を引きちぎり、ギョロリと目玉を動かして、次の獲物を探す。
「喰う。喰らウ。ソウ、しなイと。オれは」
 掠れた声で、執念を語る。
 仲間を喰らい、イレギュラーズも喰らっても尚、いつまでも満たされぬ腹を満たすために。
「なんて、なんてことを……! こんな非道!! 拙者が許しません!」
 仲間を喰われた怒りに震えるマリ家は、決意を瞳に宿し、バルカン砲を構えなおす。弾幕を貼るように獣へ向け弾丸を打ち込み、土煙を上げる。
「わ……私だってッ!」
 ただの兎ではないのだと主張するように、うさぎてゃんも声を張り上げて音撃を繰り出す。
「背後に徹してばかりでは、いられませんね」
「さっきの、痛かったからね。……お仕置きだっ☆」
 マリ家の声に続くように、一斉攻撃を仕掛ける。泣いても笑っても、これが最後だと、決着をつけるために――!!
 ナハトスターの流れ星が降り注ぎ、歌声が響く中。
 銃声と、鉄と爪がぶつかり合う音。戦場に似つかわしくないものと、戦場だと実感できるものが混在するこの場で、互いの咆哮が重なり合う。
「――これで、最後」
「決着、です!」
 数多の仲間が開いた道を、シャドウウォーカーの一撃とマリ家の砲撃が、獣の身体に、風穴を開けた。
「――ァ……あ、あぁ……」
 見る見るうちに、獣の瞳は生気を失っていく。
 ただ、その表情は穏やかで――
「ああ――そんなところにいたのか……俺の、可愛いこどもたち」
 どさり。倒れた男の亡骸は、まるで砂のようにさらさらと風に舞って消えていった。

●それから
 村の被害はほぼ最小限に抑えられ、簡単な修繕や、大きな怪我人などもでず、イレギュラーズ達は素晴らしい功績を挙げたと言えるだろう。
 ひとり、生かして捕まえたままの『凶』の話によれば、あの獣――男は、とある呪具を使い、作り出した囮、件戦闘員だったようなのだが、村を襲う度に凶暴化し、手に負えなくなってしまった、ということだった。
「――こどもたち、って言ってたね」
 ナハトスターがぽつりとつぶやいた。その言葉に、一同はこくりと頷く。
 呪具というからには、恐らく何か――怨念や悔恨を持った魂を使った操り人形のようなものだったのだろう。
 それが――失われた子を探す父親の、満たされない魂だったとしたのなら。子を自らで喰らってしまった、そんな魂だったとしたら。
 ただの操り人形だ。
 やったことも、あまりにも非道で、イレギュラーズ達も、被害を受けてふたりも仲間を倒された。
「でも……」
 やったことは、許されないかもしれない。と、垂れたウサギ耳を撫でながら、うさぎてゃんは想いを口にする。
「あの人も、苦しんでいたってことだけは、覚えておこうよ」
 アイドルとして、自信満々な彼女ではあるが、このような戦場はあまりに恐ろしくて、覚悟を持って挑んでいた。
「――そうですね。非道な輩ではありましたが、傀儡であったのは事実。全てを許すことはできずとも、ええ。彼も『凶』に踊らされていた者だと、認めましょう」
 マリ家の言葉に、うさぎてゃんはほっとしたような表情を見せる。ナハトスターも、どこからか猫を召喚し、猫を見れば癒されるよ☆ と、励ましながらギルドへと欠けた者以外、揃ってギルドへ向かった。

「お疲れ様。とても素晴らしい、クリア・アクアのようなお手並みだったわ。少し犠牲が出てしまったのは、悲しみのダークブルー・オーシャンだけれど……」
 『色彩の魔女』プルー・ビビットカラー(p3n000004)が報告を受け、イレギュラーズ達を褒めたたえる。
「――そう。呪具を使った操り人形……それならその強さも、不死身さも納得ね。核である魂が入った器を壊さなければ、倒せないでしょうから」
 プルーは、憂いを帯びた表情で目を伏せた。R.O.Oというゲームのような世界でも、このような呪具が出回れば、簡単に強敵を作れてしまう。
 憎悪や強烈な未練などの魂も再現しているとするのなら――この世界は、一体どこまで自己増殖していくのか――
「とにかく、今回はお疲れ様。疲れたでしょうから、ゆっくり休んで頂戴。あなた
達に、スウィーティ・ピンクな甘い夢が訪れることを願っているわ」
 軽く手を振りながら、プルーはイレギュラーズ達を見送る。今回の旅は、かなり苛烈で、疲労したものも多いだろう。
 ログアウトして現実世界で癒しを得る者。まだまだ依頼を受けると意気込んでいる者、この増殖したバグやら、この世界の謎や問題を解決したい者。
 様々な者が集まって、戦いを共にしたが――皆、進む道はばらばらだ。
 いずれまた出会う日まで、イレギュラーズ達は世界を走り続ける。


 その男は、妻を早くに亡くし、双子の子を形見に大切な存在として、守ってきた。
 妻の遺した、大切な命。守らなければならない、大切な存在。
 それを、目の前で、無残に――手酷く、いたぶられながら男は双子の片割れを口に入れられた。
 男はある日賊に出会い、襲われた。
 その賊が、ただの盗賊であれば良かったのだがそうではなかった。
 嗜虐趣味を持った賊で、男はきつく縛られ、こどもたちがいたぶられるのをただ眺めていることしか出来なかった。
 食料も与えられず、飢え死に寸前の男に与えられた肉は、とても甘美で男は我を忘れて食らいつき、気吹いた時には、後の祭り。
 男は自分のしたことを後悔し、泣き叫びながら自分でも驚くほどの力で縄を引きちぎり、賊を壊滅させた。
 それが、この男の物語。呪具に使われた、悲しき男の魂は、例え仮初のものだとしても――イレギュラーズ達によって、救われたのだった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

シラス(p3x004421)[死亡]
竜空
真読・流雨(p3x007296)[死亡]
恋屍・愛無のアバター

あとがき

大変素敵なプレイングをありがとうございました!
どの方も魅力的で、盛り上げ方や演出に悩みに悩みぬいて描かせていただきました。
かっこよく、皆さまの活躍を描けていれば幸いです。

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