赤い裏切り者と四者大戦

オープニング

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　この世界では三つの勢力が覇権を争っていた。一つは『太陽の英雄』を筆頭とする英雄軍、それに対するは『夕闇の船長』が率いる海賊団。そして、その二つを賞金首にして秘かに世界を自らのものにしようとする反抗団体。この三つの勢力は長きにわたって戦いを続けており、それこそ戦いが終わらないことが当たり前に思えるような規模であった。そんな戦いが終わらない世界だからか、かの者たちはこの世界に狙いを定め、とある人間に『ヒトならざる力』を与えることにしたのだった。

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　そんな世界を超えて起こった異常事態には気づかないまま、太陽の英雄と夕闇の船長は何度目かもわからない全面決戦を行おうとしていた。
「今度こそ倒して見せますよ、夕闇の船長！　おじいちゃんのおじいちゃんの……とにかく昔っからの因縁をここで決めましょう！」
「ふっ、昔っからの因縁ね……それも、あなたのご先祖様が私たちに『あのお宝』を渡せば済んだ話だったのに。まあ、ここまで来たら例えお宝を返されてもやめる気はないわ！」
　英雄軍と海賊団のリーダーともいえる二人は互いに前に出て力強く言葉を交わす。そして二人は同時に空を飛び、それを合図に二つの軍勢は一斉に前線に飛び出す。それぞれ多種多様な武器を使って互いに数を減らしていく中、英雄軍でも海賊団でもない攻撃が両者の兵の首を狩っていく。
「来たか！　反抗団体！」
「ちぃ、今回はかぎつけるのが早いな……おい、英雄軍！　悪いがここは共闘といこうか」
「悪いが、俺はそうはいかねえぜ！」
　この全面戦争に部外者である反抗団体も加わったことで戦線は混乱状態となるが、それでも彼らはそんなことはつゆ知らずに戦いを続ける。この流れは、いつからか続いたおなじみともいえる状況ともいえるものであった。
「うー、今回こそは英雄軍が勝ってほしいよね。けど、海賊団のほうもなんだかんだでかっこいいし……どっちも頑張れー！」
　英雄軍の応援隊長の『千代の踊子』は、そんなどっちつかずな応援をする。そんな彼女に、補給部隊の司令官である『新月の紡手』はあきれたように言葉を返す。
「結局どっちの味方ですか？　それに、そんな中途半端な応援だからこんな戦いは終わらないんですよ」
　そう言われて千代の踊子を含む英雄軍の後方部隊は新月の紡手を睨んでしまう。しかし、彼女はそんな視線を無視して戦況を見つめていた。その後彼女の側近と思われるフードをかぶった人物が彼女に耳打ちする。新月の紡手は言葉を聞いてすぐ、側近らしき人物と共に姿を消した。
「どうしちゃったの……それに、さっきの人は一体……」
　千代の踊子は急に消えた二人を呆然と見送ることしかできなかった。

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「それで、準備は大丈夫なんですよね」
「そうや、ご要望通り強いやつらをたくさん呼んどいたで」
「ありがたいです。ではいきましょうか、トコットさん」
「ふん、今度こそ成功させたるで。邪魔もんの相手はうちに任せとき」
「では、お言葉に甘えさせていただくとしましょう。この戦いを終わらせるべく、協力しましょう」

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　やはりこの世界にも目をつけていたみたいだね。戦いに明け暮れているこの世界なら戦いを強引になくせば支配は容易と考えたのだろうか……
　とりあえず、君たちにはトコットの妨害を抑えながらヒトならざる者たちの撃破をお願いする。ヒトならざる者の場所だが、地上にはトコットを含めて一つの軍団クラスの数が、空中には新月の紡手単体がいるみたいだ。空中の敵については他の人から武器を奪ったりすれば攻撃自体はできるから、そうして戦っても大丈夫だ。今回は今日強力な敵が二人もいるが、あきらめずに頑張ってくれ。

参加者 : 4 人

冒険が終了しました！　リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧（4人）

リプレイ

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　イレギュラーズたちは境界図書館から決戦が行われている場所のすぐ近くの丘へ転移した。
「ヒトが三人いれば派閥ができるとは聞くが……これはまた随分とこんがらがっているな」
　『霊魂使い』アーマデル・アル・アマル（p3p008599）はいと白き太陽の翼を羽織って空へ飛ぶ準備をしている。
「うっひゃー、あっちこっちにいっぱいいるなー！」
　『正義の味方（自称）』皿倉　咲良（p3p009816）は丘から戦場を見下ろしながら戦況に驚いていた。彼女はアーマデルから借りたGハイペリオン様に乗って空へ飛ぶようだ。他の面々も空へ飛び立つ準備を終え、いざ新月の紡手のもとへ向かい始めると獣耳の少女が彼らの前に立ち塞がった。
「悪いんやけど、ここから先は通さへんよ。まずはそこの鳥から撃ち落させてもらうで」
　獣耳の少女、トコットは以前の戦いでは出さなかった力の一端を発揮した。その時に出たオーラを浴びたことでGハイペリオン様が気絶して騎乗している咲良ごと墜落し、アーマデルもいと白き太陽の翼の力が消えてしまって落ちていった。
「アーマデルさんと咲良さんが墜ちてしまいましたか……しょうがないです、ここは二人であいつを倒しましょう」
　『砕けぬ蒼翼』ハンス・キングスレー（p3p008418）は『呪刀持ちの唄歌い』紅楼夢・紫月（p3p007611）に二人でトコットを倒そうと持ち掛ける。しかし、紫月はその頼みを断った。
「悪いなぁ、私としてはアイツとは二人きりで戦いたいんよぉ。やからここは私に任せて、君は先へ行きなぁ」
「……わかりました。頼みますよ」
　紫月にそう言われてハンスは青い翼を広げて新月の紡手のもとへ向かう。それを止めようとするトコットだが、弾丸として射出された斬撃に斬りつけられる。振り向くと斬撃を射出した黄昏を持った紫月の姿が。
「アンタの相手はこの私やぁ。楽しませてもらうでぇ」
　紫月はトコットに向かって挑発的に笑う。
「面白い、ならうちも楽しませてもらうよ。さて、あんたはどのくらい持つんや？」
　こうして紫月はトコットと、アーマデルと咲良はヒトならざる者の軍勢と、ハンスは新月の紡手と別れて戦いを始めたのであった。

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　トコットによって墜とされた後地上にてヒトならざる者の軍勢と三つの軍勢を相手に戦いを繰り広げるアーマデルと咲良。
「とりあえず武器は持っているからそれで……あれ、あそこで誰か怪我してる！しかも襲われているから助けに行かないと！」
　咲良は怪我人の近くに割って入って、襲い掛かるヒトならざる者の攻撃を手に持った刀で受け止めた。
「怪我人に襲い掛かるってちょっと卑怯なんじゃないかな？　正義の味方として、絶対に許しはしないんだから！」
　咲良は力強く宣言し、ヒトならざる者と対峙する。しかし、戦闘経験の少なさからか即座に撃破することは難しかった。それでも彼女は諦めず戦い、倒した後もすぐに別の襲われている怪我人のもとへ向かった。
「ここはアタシが引き受けるから、とりあえず下がってて！　大丈夫！　何とかするから！」
　咲良の行動は英雄軍、海賊団、反抗団体の誰であっても行われた。
「みんなー！　あの人たちに続いて、私たちも行きますよー！」
「そうだ！　あの嬢ちゃんらばかりには負けてられないぜ！」
「今度こそ休戦といこうか！　それと、反抗団体のやつらも俺たちに協力しねえか？！」
「こちらとしてもあ奴らは邪魔だと思ってたな……協力しよう、ただし今回だけだ」
　千代の踊子の応援も加わり、さらに三つの勢力にも協力する姿勢が見られてきた。
「ばらばらだった勢力が一つになっていく……これは俺も咲良殿に負けていられないな」
　アーマデルのほうも英霊残響を駆使してヒトならざる者の軍勢の動きを妨げていく。そうして動きが鈍くなった軍勢は、足並みが乱れてだんだんと統率が乱れていく。また隙を見て弱った敵にアルファルドでとどめを刺したり、強力な敵にはナイトメアミラージュで疲労を蓄積させていた。
　咲良の行動がきっかけとなって起こった三つの勢力の共闘、そしてアーマデルによる軍勢の足止めや強力な敵の対処などの援護もあって地上のヒトならざる者の軍勢は壊滅寸前となっていった。

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　地上で二人が活躍していた一方、丘近くの空中では紫月とトコットの二人が技の打ち合いをしていた。
「アンタはこの斬撃を避けきれるかなぁ」
　紫月は飛刃六短で遠距離から攻撃を仕掛ける。逃がさじの殺人剣がトコットを襲う。
「その程度、避けるまでもあらへん。三首双撃！」
　しかしトコットはそれを迎え撃つ。六発の拳が紫月の剣を受け流した。トコットはは受け止めた後すぐに攻勢に入った。空中を蹴って接近し、爪による連撃を開始する。
「さて、次はこっちのターンや」
「くっ、けどここからやぁ」
　トコットの連撃はかなりの時間続いたが、それをなんとか受けきった紫月は落首山茶花で反撃した。
「小癪な動きやな」
「それは結構やぁ……それにしても、アンタはあのメイドやサンタとは違って手ごたえがありそうやねぇ」
「メイドとサンタ……ああ、あの二人か。あのお方のお気に入りの二人が早速やられたと聞いたときはうちも驚いたけど、あんたが関わっていたんやな。なら、相手に不足はあらへん」
　こうしてすぐに動き始めたのはトコット。獣のように顔を前に出して紫月の首目掛けて飛び掛かった。そして、その動きをを見抜いていた紫月はカウンターで外三光を決める。落首山茶花の効果もあってか、この一撃はトコットにはかなり効いたみたいだ。トコットはしばらく動けなくなる。
「さぁ、とどめと行くよぉ」
　紫月はとどめにと紅蓮山茶花を放つ。紅蓮時雨から放たれる飛ぶ斬撃はトコットの身体を引き裂いて血しぶきを纏う。だが、彼女にできたことはそれが最後だった。最後に死んでいるかの最終確認をしようとトコットの近くまで移動した紫月だったが、先ほどまでそこにいた獣耳の少女はもういなかった。ふと、先に行ったハンスのほうを振り返ると、敵はもう墜ちていることを感じとれた。

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　少年はかつて天使だった。空は彼らの庭であった。こうして羽ばたくその時は、何物にも縛られない自由そのものと言える。だからこそ、この空中という戦場において弱気をさらすわけは、彼にはない。それが戦いに明け暮れ、それしか知らない世界であろうと、同じ舞台で踊るなら……
「絶対は、僕だ」
　ハンスは花摘みのプロムネイドで新月の紡手に近づき、挨拶代わりの一撃を加える。
「初めまして、早速だけど僕の相手をして貰っても良いですか？」
「くっ、トコットさんを突破したのか、それとも逃げ切れたのか……そこはどうあれ、あなたの相手をしている暇はないです！」
　しかし、新月の紡手はそれを無視して太陽の英雄と夕闇の船長のもとへ向かう。
「釣れないですね……【蝕め】」
　ハンスがそう、ぽつりと呟く。すると新月の紡手は突如として苦しみ始める。彼女はそうした相手を強く睨んだが、当のハンスは笑いながら言葉を紡ぐ。
「嗚呼、ただの愛撫にそう反応しちゃ嫌ですよ……【刻め】」
　今度は闇と呪いを帯びた斬撃が新月の紡手を襲った。ハンスはその後も新月の紡手に息つく間もなく攻撃を仕掛けていく。一方で三つの勢力の主力たちは、戦いの気配を感じて手を止めたが呆然と見守るだけであった。なにせ、言霊による攻撃というのは時間をかけながら詠唱を行って、それを終えることで大きな事象を起こすものであるのだ。しかし、目の前の少年は、たった一言の言葉で事象を起こしている。それはまさしく、戦闘におけるカルチャーショックともいえるような事態であった。
「ふふっ、楽しい時間をありがとう！　でも、どうやらすぐ終わりみたいだね。終わりは華々しく、人々の心を奪うように！　さあ、【堕ちろ】」
　ハンスは最後にとどめの言葉を紡いだ。新月の紡手の身体は一瞬浮いた後に空中へと叩き落される。彼女が最期に言葉を紡ぐ。されど、その言葉にハンスを傷つける効果は無い。その言葉は新月の紡手の本心ともいえるものであった。
「止めれませんでした。ごめんなさい。皆さま」
　しかし、その声を聞いたものはこの戦場に誰一人いなかった。

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　そして、この決戦も途中でヒトならざる者達が割り込んだことで勝敗のつかぬまま終わりとなり、終わりのない戦いは続いていく……かもしれない。新月の紡手は、世界の外の力を使ってでもこの戦いを終わらせたかった。だが、この世界の住人はその命の輝きを絶やさないために戦い続ける。果たして、戦い続けることでしか輝くことを知らない者たちにこれ以上の犠牲を出さずに戦いを終わらせることはできるのだろうか。しかし、その結末はまた別の話となる。

成否

成功

状態異常

なし