シナリオ詳細
<Liar Break>砂蠍の策動
オープニング
●執念深い連中
「おい、聞いたか? ゼナの村でも連中が暴れ出したようだぜ」
「そいつは本当か? へへっこりゃ良い稼ぎ時だな!」
フードを被る男達が、街の片隅で密談する。
男達はラサで壊滅した大盗賊団『砂蠍』の残党だ。
幻想楽団『シルク・ド・マントゥール』の公演後、民衆の不安を煽り幻想を混乱に陥れようと暗躍していた『砂蠍』の残党達は、ついに好機が訪れたのだと、俄に活気付く。
そう、彼等の目的は混乱に乗じた火事場泥棒に他ならないのだ。
『ノーブル・レバレッジ』と呼ばれたローレットの一大作戦の成功を機に、サーカスはその立場を悪くした。
王直々の公演取り消しの報が流れれば、ローレットに協力的な貴族と民衆達が検問と封鎖でサーカスを国内に釘付けにし、結果、サーカスは幻想国内からの脱出を図れないでいた。
狭まる包囲網に、追い詰められたサーカスはその本性を見せた。一部の者だけでも国外へ逃がすための、乾坤一擲の反撃にでたのだ。
『砂蠍』はその状況を待っていた。
一段と混乱がもたらされ、貴族達の目と手がサーカスに集中しているその時を狙い、資金や資材、人材を含めた収穫を狙っていたのだ。
フードを被る男達が笑う。
いまこの時ほど、盗賊団としての腕が光る時はないのだと。
なにやら指示を確認した男達が一斉に散る。狙うべきは混乱の直中にある宝の山だ――!
●
「まったく、呆れた意地汚さを見せる連中ね」
「本当に。盗賊団というのはこういうモノなのでしょうか」
依頼書を確認しながらイレギュラーズと傍に居た『星翡翠』ラーシア・フェリル(p3n000012)に同意を求めるように呟いた『黒耀の夢』リリィ=クロハネ(p3n000023)。ラーシアが頬に手をあてながら頷いた。
手渡された依頼書には『砂蠍』残党の討伐が目的とされていた。
「散々手の込んだ仕込みをしていたかと思えば、まさ火事場泥棒とはね。とはいえ、そのやり口はさすがラサの大盗賊団といったところかしら」
「とにかく砂蠍の連中をどうにかすればいいのか?」
イレギュラーズの言葉にリリィは頷いて、
「ええ、サーカスの方も気になるけれど、薄汚い盗賊達の非道は見過ごせないわ。ローレットここにあり、を見せつけてあげないとね」
そう言って華奢な手で力強く握り拳を作って見せた。
「こっちで分かってる情報だと、盗賊達は王都東のゼナの村を狙うようね。貴方達にはそちらへ向かって貰いたいわ」
頷くイレギュラーズに、「そうそう」とリリィは付け加える。
「ゼナの村には玉乗りジョージとかいうサーカス団員が通り魔的活動を行っているようなの。
場合によっては三つどもえになる可能性もあるわ。注意してね」
サーカス団員は『原罪の呼び声のキャリアーである可能性が高い。そうなれば村人達が狂気の影響を受けてしまうことも考えられるだろう。
ただし、これまでのイレギュラーズの活躍と『絆の手紙作戦』によって幻想の人々には少しの狂気耐性がついている。
「狂気の影響が心配ですね――」
ラーシアの言葉にリリィは頷いて言葉を重ねる。
「そうね。でも村人達が狂気の影響を受けていたとしても、きっとまだ戻ってこられる段階だと思うわ」
盗賊達と共にサーカス団員の凶行を止められれば、大きな戦果となるだろう。
「魔種の相手というわけではないけれど、盗賊連中も強敵には変わりないわ。しっかりと準備して、無事な勝利を手にしてね。よろしく頼むわ」
そう言ってリリィはイレギュラーズの肩を叩くと、忙しそうに立ち去った。
「私もお手伝いさせてもらおうと思います。どうかよろしくお願いしますね」
残されたラーシアはぺこりと頭を下げると和やかに微笑むのだった。
- <Liar Break>砂蠍の策動完了
- GM名澤見夜行
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2018年06月29日 22時45分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
●静まりかえる村
王都東にあるゼナの村。
サーカスへの対応に追われるなか、砂蠍の残党が策動するというその村へと向かったイレギュラーズは村へとたどり着くと違和感に襲われた。
「静かだな……いや、静かすぎる」
『戦獄獣』雷霆(p3p001638)が声を潜め口を開く。
「サーカスの奴が既に、いろいろしているところに盗賊も来ている――にしては、確かに静かすぎる」
『鉄壁防御騎士』有馬 次郎(p3p005171)が雷霆の言葉にうなずいて、周囲へと注意を向けた。
ゼナの村はそう大きくない村だが、それなりに人口のいる村で交通の要所でもある。日々、村を行き交う人々が暢気に挨拶を交わす。そんな村のはずだった。
しかし、いま村の路地には人がいない。まるでゴーストタウンの様相だ。
「とにかく、火事場泥棒なんて真似をする盗賊たちを探しましょう」
『ほのあかり』クラリーチェ・カヴァッツァ(p3p000236)の提案に、イレギュラーズは頷き、行動を開始した。
気配を殺しながら、村の中を索敵するイレギュラーズ。
やはり村の中は静まりかえり、不気味にイレギュラーズを迎えていた。
『魔剣殺しの』ヨルムンガンド(p3p002370)は周辺にいた鳥に餌をあたえ、動物疎通を試みる。目標の一つである『玉乗りジョージ』の居場所こそわからなかったが近づけば合図をもらえそうだった。
広場を抜け、軒並みを忍び足で駆け抜ける。
途中、一つの家のドアをノックしてみるが、人の気配はあるものの出てくる気配がなかった。
「やはり、通り魔事件と言うのに警戒して家に籠もっているのですかな?」
『屑鉄卿』刀根・白盾・灰(p3p001260)の読みは、おおよそ間違ってはいなかっただろう。
サーカスより現れた『玉乗りジョージ』。この村を恐怖と狂気に陥れた張本人だ。
「魔法少女ではないジョージとかいう通り魔。どこに隠れているんだろうな」
魔法少女を探す、自称魔法少女の『魔法少女(物理)』イリス・フォン・エーテルライト(p3p005207)が物陰に隠れながら、まだ見ぬ相手を思う。
「玉に乗ってるって話だし、すぐに見つかると思うんだけどなぁ……」
ヨルムンガンドも玉乗りジョージの姿を想像し、首をかしげる。
「半年振りにローレット業を再開したけど、世間は大変な事になっていたんですね……!
サーカスっていうのは曲芸集団ではなく、何か特別な力を持った組織だったのかな!」
久々に依頼を受けたという『円環の導手』巡理 リイン(p3p000831)がサーカスについて思うことを述べた。
イレギュラーズの索敵は続く。
村の隅々を巡り、異常がないかを確かめながら、静まりかえる村を進んでいく。
そうして、村の半分ほどを調べたところで、先頭を行く『砂狼の傭兵』ラノール・メルカノワ(p3p000045)が怪しい人影と遭遇する。
「――!? ……おっと、旅人さんかい。いまこの村は通り魔がでるって話しさ。悪いことは言わねぇ、早く出ていきな」
早口で捲し立てる怪しい男は、そういうと重そうな荷物を抱え小走りに走り去っていった。
「追うぞ――」
ラノールは仲間たちに告げると、すぐさま男の後を追う。気づかれないように、しかし鋭き眼光は獲物を逃さぬように。
周囲に注意を払うようにして進む、怪しい男は、徐々にスピードをあげながら裏路地の方へと進んでいった。
そうして、村の出口にも近しい場所へとたどり着くと、男は重そうな荷物を下ろし立ち止まった。
物陰に潜むイレギュラーズ。しかしそのイレギュラーズのことを見抜いているかのように、男が振り返る。
「いけないねぇ、旅人さん。こんなところまでついてきちゃ……さぁ出てこい!」
イレギュラーズは顔を見合わせ思案するが、意を決して姿を見せた。
「一、二、三……八人か。個性的な面々だ、あれかい、幻想にあるという何でも屋の面々かい」
「理解が早くて助かるな、砂蠍の残党。それが理解できているなら、状況はわかっているな?」
雷霆の言葉に、忍び笑いを漏らす男。
「楽な仕事かと思ったら、めんどくせぇトラブルが舞い込むもんだ。――ただし、状況がわかっていないのはアンタらの方だがな!」
男が声をあげると同時、イレギュラーズを取り囲むようにフードをかぶった男たちが姿を現す。一体どこに隠れていたのか、その数十五名。
フードの上からでもわかる屈強な肉体。下卑た笑いを顔に浮かべながら、それぞれが得物を手にしている。
「追い詰めたと思っていたようだが、あんたらが村に入ったところから観察していたのさ。残念だが、仕事の邪魔はさせねぇよ。ここで死んでもらうぜ」
フードを脱ぎ捨てた男たちが奇声をあげる。
「なんとも自分勝手な連中だな」
「盗賊とはこのような方達ばかりなのでしょうか」
「魔法少女では、ないか。だが向かってくるならば――」
「困った方達ですね……望むところです!」
思い思いの言葉を零しながら、イレギュラーズもまた武器を構える。
「ハッハハァ!! 男は殺せ! 女は頭への手土産だ! いくぜ、おまえらぁ!」
威勢よく声を上げた盗賊達が、イレギュラーズに襲いかかる――!
●乱戦
盗賊達に取り囲まれ、不利な状況にあったイレギュラーズだが、誰よりも素早く飛び出し、その状況を覆したのは雷霆だった。
「決戦の裏で火事場泥棒とは中々良い計画だ。
だが、この戦場をも含めて決戦なのだと思い知れ」
手近にいた盗賊の一人の元に飛び込むと、並外れた膂力から繰り出される迅速の拳が唸る。
戦獄獣の戦意の焔やどる灼熱の剛爪が盗賊の腕を抉る。
さらに動きを止めずに、身体を捻ると、追撃の剛爪が死を呼ぶ風となって吹き荒れた。
「チッ――、見かけによらず素早いな! そのでかいのには集中してあたれ!」
「頭は回るようだな。だが、みすみすその策に乗るバカもいないだろう」
包囲網を崩したところで、雷霆は敵の動き、連携を意識して警戒する。敵陣に踏み込みすぎないように立ち回る様は戦い慣れた歴戦の戦士の動きだ。
「私達の支援をお願いできますか。そのお力、頼りにしています」
「はい、お任せくださいね」
イレギュラーズに同行していた『星翡翠』ラーシア・フェリル(p3n000012)にそう伝えると、クラリーチェが中衛に位置取り魔力を増幅する。
「無益な殺生は好みませんが……」
素早く魔力を高めると、固まっている盗賊達へ向け、有毒ガスの霧を生み出す。猛毒を付与する、その霧に三人の盗賊達が苦しみ声をあげた。
「まったく、盗賊ってこんな血気盛んな奴らばかりなのか? どっちにしろ……抵抗したり被害を出すなら許すつもりはないけどなぁ!」
雷霆とクラリーチェが生み出した、敵陣の穴を、ヨルムンガンドが突く。切り込むように突撃すると、長くしなやかなな足を鞭のように撓らせて盗賊を蹴り飛ばす。
「食事の時間だな――!」
世界を喰らった竜の万物を噛み砕く牙が盗賊の肉を刺し貫く。そのまま振り回す殺意を持った噛みつきは力なき者にとっては必殺の一撃となっただろう。
「チィッ! 手強い連中だぜ。お前ら、ビビるんじゃねぇぞ!」
イレギュラーズの攻撃力を目の当たりにする盗賊達は、浮き足だたないものの、どう攻めるべきか思案顔だ。勝ち筋が見えてこない戦いは、漁夫の利で勝利を盗んでいく盗賊達には戦いづらいものだろう。
「だが、荷物を置いて逃げ出すわけにはいかねぇな!」
盗賊達が一斉に動き出す、手にした得物を油断なく構えれば、一足飛びにイレギュラーズを間合いに納める。
肉薄戦となるその一撃は、確かな手応えを持ってイレギュラーズにダメージを与える。
「ハッハァ! こいつを喰らいなぁ!!」
アクロバティックな軌道から弾丸を飛ばす後方の盗賊。一介の盗賊とは思えぬほど連携の取れた戦い方は、噂に名高い『砂蠍』に名を連ねるものであることを実感させる。
「これでも倒れねぇのか――化け物どもめ」
「化け物ではない。私が、魔法少女だ」
敢えて自身を追い込むイリスが、夢と希望を喰らう刃を振るう。防御的動作を捨てたイリスの身体は傷だらけだが、それを厭う事はない。
攻撃特化のスタイルは苛烈に輝き、盗賊を切り伏せていく。
戦いは盗賊達の包囲網が崩れ、乱戦の様相を呈していた。
飛び交う剣閃と弾丸。盗賊と甘く見るわけではないが、『砂蠍』の残党達の力は想像以上のものだった。
力だけ見ればイレギュラーズの方が上だが、倍近い数の差がその力量差を埋めていた。
互角ともいえる戦いの中、それでもイレギュラーズが一人、また一人と盗賊を倒していく。
そうして、十五名いた盗賊が半分になった頃、ヨルムンガンドがその合図を受けた。
「合図だ、そっちの路地だ!」
ヨルムンガンドの合図を受けて、路地から離れるように集まるイレギュラーズ達。
同時に、響き渡る銃声。倒れる盗賊が一人。
「ひゃっほーーーーーう! 命中命中!! うーんボクちん狙撃の腕もグッドなのね! ピッコリーナさんもボクちんに惚れ直すかなあああうふふ!」
場の空気をかき乱す、甲高い声が響き渡る。そして路地裏からやけに背の高い人影が――否、巨大な玉にのった小柄な男が現れたのだった。
「チィ! こんなときにジョージの奴が来やがった!」
盗賊達も慌てふためく。想定していなかったわけではないが、状況が悪すぎるのだ。
「んんん? なんか変な奴らが殺しあってるのね。ボクちんも混ぜてもーらお! うふふ、こいつら殺してこの村焼き払ったらピッコリーナさん褒めてくれるかなぁぁ?」
遠い目をしながらグフグフと笑い、めちゃくちゃに銃を乱射する玉乗りジョージ。
「めちゃくちゃな奴ですな」
「ちょっと怖いよ……」
灰とリインが素直に感想を零す。
「見てください、玉乗りさんの後ろ!」
ラーシアが声を上げると、その後ろから、武器を手にした村人が姿を現す。
その表情は、報告にあった狂気に感染した者たちとほぼ同じ。だが、どこか苦しそうにしているのが印象的だった。
「狂気に染まりきってるわけじゃないな。今なら助けられる」
ラノールの言葉にイレギュラーズ達は一つ頷いて。
「助けましょう!」
クラリーチェが強く言葉を発した。
「うふふ、相談終わり? 終わり? まぁそんなのボクちんには関係ないんだけどね! ばきゅーん! ばきゅーん!」
「くそが、おい、お前ら、覚悟決めろ! 全員片付けてさっさとずらかるぞ!」
盗賊達に玉乗りジョージ。そして、狂気に染まる村人達。
戦場はますます混迷していく――。
●大乱戦
玉乗りジョージは、見た目も言動も、そして行動も実に狂気な人物だった。
巨大な玉の上でアクロバティックに飛んだり跳ねたりしながら、手にもつ銃を乱射する。見境なしにお構いなし。自分の味方など誰もいないのだと初めから理解しているかのように、戦場を混乱に陥れる。
しかし、そうでありながら、その反応と射撃の腕は確かなもので、それがますますの混乱へとつながる。
ジョージが口癖のように愛を零すサーカス団員、投げナイフ使いのピッコリーナの演目『百発百中』とまではいかないが、精度の高い射撃はイレギュラーズのみならず盗賊達も苦しめた。
「大変な状況ですが、私は私のやることを優先します!」
リインが弾丸飛び交う戦場を駆ける。狙うは狂気に染まった村人だ。
「これで大人しくしてください!」
得物は使わず拳闘で。力を込めた一撃が戦闘慣れしない村人を黙らせる。
まるでゾンビのように周りの村人が襲ってくるが、不慣れな武器の扱いは回避することも容易だ。リインは身を捻り攻撃を躱すと、次々と拳を振るって村人達を沈黙させていった。
持ち前の『統制』で仲間達と入念な打ち合わせを行い連携の要となっていたのは灰だ。
リーダーになるわけでなく、しかし中心人物といえるようなムードメーカーになっていた灰は勇ましい戦いぶりを見せ仲間の士気を上げていた。
ジョージの登場で浮き足だつ盗賊達を狙ってカウンターを入れながら、一人、また一人と盗賊を打ち倒していく。
盗賊達もただやられているわけではなかった。
漁夫の利をつくことに駆けては盗賊達のほうが一枚上手だ。ジョージ登場により、ジョージとイレギュラーズに挟まれる位置取りだった盗賊達だが、すぐにその窮地を脱し、戦場を大乱戦へと変化させていく。
三つどもえの大乱戦の最中、イレギュラーズと盗賊、ともにジョージを押しつけ合う形となるが、その状況下において盗賊達は虚をつく攻撃を繰り返し、イレギュラーズの面々を追い込んでいった。
結果として、盗賊に注視していたラノールと雷霆、次郎の三名を除くと、防御を捨てていたイリスを筆頭に皆一度は膝をつきパンドラへと縋る形となった。
「んん? さっきまで死に損ないだったのにまだ立ち上がるのね? しつこい奴らなのね。ボクちんしつこいのはキライなのね!」
巨大な玉の上から見下すように言い放つジョージ。盗賊達の虚をつく攻撃もジョージの反射神経の前には意味をなさず、この戦場で元気にいるのはジョージただ一人だ。
「全く、数も数だ――だが、それももう終わりだ」
イレギュラーズはただやられているわけではない。当然ながら反撃を与え、特に盗賊達を優先的に片付けていた。
十五名いた盗賊はジョージ登場時に八名。そしてそこから大乱戦を経てすでに二人を残すのみだ。
その残す二人のうち一人を、次郎がちょうど討ち取った。
「くそっ! こんなはずでは……! 頭すまねぇ!!」
「言い残す言葉はそれで終わりか?」
ラノールが疾駆する。幻惑のステップを前に狙いが絞れない盗賊が大きく空振りした。
その隙をラノールは逃さない。
大きく組み付いて締め上げると、そのまま盗賊の意識を断った。
「あらら、威勢のいい奴らやられちゃったのね。まぁいいのね。残りは女子供が多いし楽勝なのね。一人怖そうなのいるけど……ブハハ!」
なぜか雷霆を見て噴き出したジョージ。怖そうな見た目がツボに入ったようだ。
盗賊達を倒し終えると同時、狂気に感染した村人五名も、気絶させ、避難させることができた。
残すはふざけた格好の玉乗りジョージを残すのみ。
「無事か? 痛手を負ったなら一度下がってると良い」
ラノールは、ジョージに相対していたリインの肩を叩くと声をかける。
「ありがとうございます、でも大丈夫です!」
「むむむ! イケメンが調子に乗ってるのね! ボクちんのセンサーにひっかかったのね! お前から殺すのね!」
ラノールの仕草が気にくわなかったのか、ジョージがラノールに狙いを定め銃を乱射する。
「本当にめちゃくちゃな奴だ」
「ああ、手早く片付けてしまおう」
呆れるラノールと肩を並べる雷霆が拳に力を込める。
全力で走りジョージの乗っている玉を殴り飛ばす。ジョージはそれすらも見切っていたのか、玉が転がる方へと飛んでいて、見事に玉の上に着地した。
狙い澄ました弾丸がラノールの肩口に吸い込まれる。血しぶきが上がるも奥歯をかみしめ堪える。
「この騒ぎの元凶。許すわけにはいきません。
貴方達の演目は、もう全て終わりました。無駄な抵抗はやめてください」 」
クラリーチェの魔力放出に合わせてヨルムンガンドもジョージに肉薄すると、
「見過ごす理由もないからなぁ……!」
自身を省みない程の力を込めた本気の一撃をジョージにたたき込む。
たたみかけるようにイリスが格闘戦を仕掛ける。渾身の力を込めた一撃はあらゆる防御を無視する一打となってジョージにたたき込まれた。機動力を活かし、すぐさま距離をとるイリス。
入れ替わるようにリインが肉薄すると一刀のもとにジョージを切り裂いた。
「死ね! 死ぬのね!」
目にもとまらぬ早さで装填された弾丸をジョージが乱射する。次々と飛び交う弾丸がイレギュラーズの肌を赤く染め上げる。
「ここいらが正念場ですな。ローレットのために意地を見せましょうか」
灰もまた手にした曲刀を古いジョージの身体を切り裂く。血しぶきが足下の玉を深紅に染め上げるが、ジョージは未だ玉から落ちない。
「ややこしい相手だな、こいつは」
レプリカとは思えない大いなる盾で強打を打ち込む次郎。たたき込まれた衝撃にジョージの身体が傾いた。
「死ぬ、のねぇぇ!!」
バランスの崩れた体勢から放たれる弾丸は、たしかな精度を持ってラノールへと向かう。
その悉くを受けながら、しかしラノールはジョージに肉薄し、
「玉乗りの時間は終わりだ」
愛用の巨大なマトックを振るい、ジョージを叩き落とした。
「あぁ……ボクちんやられたのね……ピッコリーナさん、ごめんなさい」
そうつぶやくと、ジョージは身体を動かすのをやめた。
「終わったな」
雷霆が静かにつぶやく。その言葉通り、ゼナの村に、来たとき同様の静けさが戻った。
「生きてて良かった…!
しかし、サーカスや盗賊の大元やリーダーはどうしているのやら……早めに手を打たねば再び以前のような混乱が引き起こされましょう」
灰の言葉に腰を下ろしたイレギュラーズが頷く。
たしかに小さな村での盗賊達の策動、そしてサーカスの思惑は潰えた。
しかし大本の戦いはどうなっているのか。
イレギュラーズ達は、その結果に希望を見ながら、今はただ傷ついた身体を休めるのだった。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
澤見夜行です。
依頼成功です。詳細はリプレイをご確認ください。
ラーシアは初参加でしたが、ちょい役になりました。
三つどもえ(+一般市民)の戦況になった際の対応にもう一工夫あれば
大成功になっていたかもしれません。
ですが、プレイングはどれもよく、大きな怪我がでることなく戦いを終えることができました。
本筋とは離れた依頼でしたが、これもサーカスの企みを防ぐ一手となったと思います。
お疲れ様でした。次の砂蠍の動向も気になりますね。
GMコメント
こんにちは。澤見夜行(さわみ・やこう)です。
サーカス裏で暗躍していた砂蠍が策動しています。
非道な略奪を阻止して、ローレットの力を見せ付けてやりましょう!
●依頼達成条件
盗賊団『砂蠍』残党の撃破(生死は問わない)。
●情報確度
情報確度はBです。
想定外の事態が起こる可能性があります。
●砂蠍残党について
数は十五名。屈強な肉体を持ち戦闘経験豊富な連中です。
連携力も高く油断すればイレギュラーズといえど追い詰められてしまうでしょう。
残党達の所持スキルは以下の通り
・奇襲攻撃
・肉薄戦
・射撃
・曲芸射撃
・フリーオフェンス
●玉乗りジョージについて
ゼナの村で通り魔事件を起こし村人達を恐怖と狂気に陥れています。
ファンシーな格好に常に玉に乗り続けるバランス感覚にすぐれた男です。
得物は手にした短銃。戦闘中も玉に乗りながら弾丸を乱射します。
騒ぎが起こればそこに現れさらなる混乱をもたらそうとするでしょう。
所持スキルは
・曲芸射撃
・超反射神経(不意打ちを受けません)
・調子乗り(調子に乗る事、怒涛の如しです)
●周囲の一般人
『原罪の呼び声』のキャリアーである玉乗りジョージより狂気感染した村人が五名います。
狂気に染められ手にした武器を振り回します。
場合によっては敵対することも考えられるでしょう。
ただし、元に戻せる可能性が高いです。殺傷は控えるべきでしょう。
●想定戦闘地域
王都東にあるゼナの村での戦闘になります。
ある程度の広さがあり戦闘は問題なく行えます。その他目に付く障害物はなく戦闘に支障はでないでしょう。
そのほか、有用そうなスキルには色々なボーナスがつきます。
●同行NPCについて
『星翡翠』ラーシア・フェリル(p3n000012)が同行します。
特に指示がない場合は邪魔にならないように立ち回ります。
指示がある場合はプレイングに記載してください。
ライトヒール、勇壮のマーチによる支援が得意です。
皆様の素晴らしいプレイングをお待ちしています。
宜しくお願いいたします。
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