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シナリオ詳細

再現性東京2010:紫陽花の涙零れ

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●紫陽花の涙零れ
「……何よ……何よ何よ何よっ……あの、あの……裏切り者っ!!」
 しとしとと雨が降り続く梅雨の時期。
 再現性東京の一区画に建立された、歴史のある古寺。
 いつもは静謐に包まれ、厳粛たる雰囲気が広がるこの地であるが……深夜、丑三つ時に響きわたるは女の恨み節。
「他に好きな人が出来たって……だから、もう終わりにしようって……信じらんないわ! あの……浮気者!!」
 ……その恨み節から判断するに、恐らく……彼氏に浮気された、との事であろう。
 無論、その真実は彼女にしか分からない事ではあるが、ずっとずっと泣き続ける彼女。
 彼女の脚元には、茎からこぼれ落ちた……紫色の紫陽花の花。
 ……涙がその花にこぼれ落ちていくと……茎からこぼれ落ちた紫陽花が、僅かにさざめく。
 そして……彼女はすっかり泣きはらし……力無く、その場を後にした後。
 ……さざめく紫陽花から、もわもわと漆黒の煙の様な物が出現。
 その煙から生み出された、幾つもの狼のような者達。
『……ウオォォォン……!!』
 互いに呼応する様に、紫陽花の咲き誇る寺で咆哮は響きわたるのであった。


「さぁさぁ、今日も活きの良い階段話、用意してきたよー! ほーらほら、聞いてって聞いてってー!」
 と、綾敷・なじみはカフェ・ローレットを訪れる『希望ヶ浜学園』に潜入している君達の注目を集めるように声を掛ける。
 ……そして、気付いてくれた君達にニッコリ笑顔を浮かべると共に、ちょっと人の居る所から離れた所に誘導すると。
「今日もみんな、来てくれてありがとう! 今日はねー……夜妖退治を御願いしたいんだよねー」
 と言いつつ、彼女が皆に見せる数枚の写真。
 ……かなり古そうなお寺の写真と、その境内に咲き誇る、紫陽花の写真。
 雨に濡れた紫陽花がしとしとと、何処か美しい光景を見せてくれる。
「雨が多くて嫌になる季節だけどさー、でも雨露に濡れる紫陽花、って綺麗だと思わない?」
 小首を傾げるなじみに、そう……だね、と頷く君達。
 そして。
「でも、紫陽花の花言葉って知ってる? ……浮気、とか、冷酷っていった意味があるんだってー。何だか怖いよねー」
「そんな紫陽花の咲き誇るここに、悪い男にフラれた女の子が来ちゃってさー……彼女の恨み辛みを紫陽花が吸いとって、それが夜妖となって具現化しちゃいそうなんだー」
「この具現化した夜妖が、そのまま街に出て来ちゃうと、何の罪も無い人達が次々と被害に遭っちゃうと思うんだよねー。それは再現性東京としては不味い事になるからさー……皆にこの夜妖を退治してきて欲しい、って訳なんだー」
 そこまで言うとなじみは。
「恨み辛みを吸われた女の子には罪は無いと思うんだよねー。でも、それがこうして夜妖として出て来てしまうと、大惨事になっちゃうのは間違いないしさ、皆の力でちゃちゃっと片付けてきて欲しいんだよねー。という訳で……宜しく頼むねー!」
 最後は手をヒラヒラとさせて、元気よく皆を送り出すなじみなのであった。

GMコメント

 皆様、こんにちわ。緋月 燕(あけつき・つばめ)と申します。
 じめじめする梅雨の時期が近づく今日この頃……雨露と言えば紫陽花という訳で、こんな依頼となりました。
 
 ●再現性東京2010街『希望ヶ浜』
  練達には、再現性東京(アデプト・トーキョー)と呼ばれる地区がある。
  主に地球、日本地域出身の旅人や、彼らに興味を抱く者たちが作り上げた、練達内に存在する、日本の都市、『東京』を模した特殊地区。
  ここは『希望ヶ浜』。東京西部の小さな都市を模した地域だ。
  希望ヶ浜の人々は世界の在り方を受け入れていない。目を瞑り耳を塞ぎ、かつての世界を再現したつもりで生きている。
  練達はここに国内を脅かすモンスター(悪性怪異と呼ばれています)を討伐するための人材を育成する機関『希望ヶ浜学園』を設立した。
  そこでローレットのイレギュラーズが、モンスター退治の専門家として招かれたのである。
  それも『学園の生徒や職員』という形で……。

 ●成功条件
   紫陽花の咲き誇る寺に現れた、悪性怪異:夜妖<ヨル>を全て倒す事です。

 ●情報精度
  このシナリオの情報精度はBです。
  依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

 ●周りの状況
   今回の敵の夜妖は、お寺の何処かで姿を現します。
   尚元となった、フラれた少女は既にお寺にはいませんので、こちらの救護をする必要はありません。
   とは言え皆様がお寺の外に夜妖を出してしまうと、周りの人達に大きな被害が出る事になりますので、お寺の中で決着を付けていただく様、頑張って下さい。

 ●討伐目標
  敵は悪性怪異:夜妖<ヨル>が15体です。
  姿形は正しく狼のような姿で、四足歩行の獣です。
  脚はかなりの脚力を持っている様で、とても素早く動き回ります。
  なので回避力が高く、皆様の隙を突いて、包囲網をすり抜けていく……という可能性は十分にあり得ますので、逃さない様に注意して下さい。
  尚、戦闘能力は「噛みつき」「鉤爪」と、その爪で切り裂いてくる単体攻撃のみです。
  攻撃力は並程度ではありますが、出血効果が付与されますので、ご注意下さい。
  
 それでは、イレギュラーズの皆様、宜しくお願い致します。

  • 再現性東京2010:紫陽花の涙零れ完了
  • GM名緋月燕
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年06月11日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ヨタカ・アストラルノヴァ(p3p000155)
楔断ちし者
武器商人(p3p001107)
闇之雲
すずな(p3p005307)
信ず刄
白薊 小夜(p3p006668)
永夜
楊枝 茄子子(p3p008356)
虚飾
ニーヴ・ニーヴ(p3p008903)
孤独のニーヴ
糸色 月夜(p3p009451)
フィリーネ=ヴァレンティーヌ(p3p009867)
百合花の騎士

リプレイ

●梅雨の雨
 再現性東京の一区画に建立されし、歴史有る古い寺。
 余り訪れる人もおらず……ここはいつもは静謐に包まれ、厳粛な雰囲気に包まれていた。
 そんなお寺に咲き誇るのが、淡い紫色に色付き、咲き誇る紫陽花。
「そうかそうか……もう紫陽花の季節なんだねぇ……」
 と、遠い目をした『闇之雲』武器商人(p3p001107)がぽつりと呟くと、それに『戦場のヴァイオリニスト』ヨタカ・アストラルノヴァ(p3p000155)も。
「……ああ。雨に濡れるその花は、美しいのにどこか履かなくて……優しさと寂しさ等、色んなものを味合わせてくれるな……」
 何処か思い出すように、そして隣を歩く武器商人に視線を配す。
 ……そんなヨタカの視線に気づいた武器商人は振り返りながら。
「ああ、そういえば知ってるかぃ、小鳥? 紫陽花は昔々、「幽霊花」とか「化け花」とか呼ばれていた事もあってねぇ……恨み辛みとは相性がいいのだろうね……ヒヒヒ!」
 笑う武器商人が言う通り……今回の依頼はここ、紫陽花の咲き誇る古寺に、夜妖が現われたから、それを退治為てきて欲しい……という話が元。
 その夜妖が出現した原因も誰かに振られてしまった女性が、恨み辛みをこの古寺で紡ぎ……その怨恨を夜妖が吸ってしまったから、との話である。
「人のネガティブな感情から生まれる夜妖、か……」
 と『孤独のニーヴ』ニーヴ・ニーヴ(p3p008903)が肩を竦めると、それに『百合花の騎士』フィリーネ=ヴァレンティーヌ(p3p009867)も。
「ええ……全く色恋沙汰というのは……ろくな結果にならないようですわね。まぁ、紫陽花の花言葉も浮気、とか言う様ですし、ここに来たのも、導かれるして来てしまったのかもしれませんね?」
「そうだな……確かに感情の発露は大切だ。それが誰かを傷付ける事もあるだろう。けれど……無関係の人を巻き込むのはよくないよね? 紫陽花の涙はボクらが拭わないと」
 ニーヴとフィリーネ二人の会話の通り……紫陽花の花言葉は『移り気』や『冷酷』、そして……『浮気』というのもある。
 そんな浮気と聞いて『一人前』すずな(p3p005307)が。
「なるほど……花言葉は浮気……浮気……? まぁ、許せませんね、浮気はいけない事だと思います。私には欠片も関係無いですけどね? 関係無いです、よー?」
 はっ、として……視線を隣の『盲御前』白薊 小夜(p3p006668)に向ける。
 盲目の小夜は視線には気づかないが……雰囲気は察知したようで。
「浮気……ね。なんだかすずなの視線を感じるわね?」
 と、軽く笑みを返す。
 それにすずなはあー、えーっと、と言い淀み。
「別に、小夜さんの方なんか見てません、よー?」
 と、取り繕う。
 だが、そんな二人の会話に更にニコニコして割り込んできたのは『羽衣教会会長』楊枝 茄子子(p3p008356)。
「まあまあ、二人共ー! いたたまれないね! なんでだろうね!!」
 そんな茄子子の言葉に、すずなと小夜が。
「あ、茄子子さん! そういえば豊穣でボッコボコにされた時以来ですね! お元気にされてましたか……?」
「うん! 元気元気! いやー、会長雨好きなんだ! なんだか落ち着くから! だから今日ここに来れたの嬉しいんだよねー!」
「そうなのね? ……でも、茄子子さんがいるならこの依頼、大丈夫そうね。前、ご一緒した時に、とても頼りになったのを覚えているわ」
「そう? そう言われると嬉しいなー! でもすずなくんも、小夜さんを頼ってるんじゃ?」
「あ、ええ。小夜さんとはラドバウで沢山組んでますからね。勝手知ったる間柄です。以心伝心の太刀筋をお見せしますよ!」
「そうね……頼りにしているわ」
 何やかんやで、すずなと小夜二人の仲の良さを見せつけられる。
 それにやれやれ、と言った感じで糸色 月夜(p3p009451)が。
「まぁ随分と色々抱えてる敵じゃねェか……殴るにも申し分ねェ。そっちも憂さ晴らしを俺達で出来るワケよ。こりゃWIN-WINじゃねーか」
 そして獰猛な笑みを浮かべると共に。
「ま、事情はさりとて、ここで消えて貰うぜ?」
 と吐き捨てると、ヨタカ、茄子子、フィリーネも。
「うむ……花々が咲き乱れる境内に現れた不穏の種……速く摘み取ってしまわねばな」
「そうだね! 恨み辛みはまぁいいとして、はた迷惑な夜妖やさっさと退治しちゃおうね!」
「ええ。周りに攻撃が行かないように、可能な限り敵を惹きつけますわ」
 そしてイレギュラーズ達は、しとしとと紫陽花に雨が降り続く古寺へと、足を踏み入れるのであった。

●紫陽花の影
 そして紫陽花の咲き誇る境内を進んで行くイレギュラーズ。
 紫陽花は雨露に濡れ、紫色が更に美しく映える……そして足元の石畳に、薄く水膜を張る。
「こりゃ……ちょっと滑っちまうかもな。んじゃ……」
 と月夜は早速、飛行を発動し低空飛行。
「確かに雨で濡れた道は危険ですね……飛べないから、わたくしは注意深く進みますわ!」
 とフィリーネは注意深く脚を進め、滑らないように注意を払う。
 そして……そんな紫色の花びらから滴り落ちる水滴が地面を濡らし……その辺りに漆黒の煙のようなものが生まれ始める。
『……グゥゥ……』
 と、その煙の中より、低い獣の唸り声が響き始める。
 ただ、そんな唸り声は、まだ何処から聞こえてくるかはちょっと分からない状態。
「さて、と……何処から声がしてくるかは分かりませんけれど、協力して捜索しますの。私、捜し物は得意ですの!」
 とフィリーネが同チームのヨタカ、武器商人、月夜、ニーヴと共に、捜索開始。
「取りあえず、我は空から捜索させて貰うよ」
「ん、分かった。んじゃ俺は……エネミースキャンでも発動しとっか。後は茄子子達の班と別れて行動だな」
「ん、そうだね! ニーヴくん、何かあったらaPhoneで宜しく頼むね!」
「分かったよ」
 そして二手に分かれたイレギュラーズ達は、境内を捜索。
 気配、空、耳……五感をフル活用し、アンテナ高く探し続ける。
 勿論、紫陽花の咲き乱れる寺故に、その辺りが怪しいと考えたニーヴと月夜は、紫陽花の咲く所を確実に潰して行く。
 その一方で、小夜、すずなは。
「……さてと、何処に居るかなー……って、何やら鉄臭いーーって、何やってるんですか小夜さん!!」
 振り返ると、小夜が自分の腕を少し切り……血を流していたのだ。
「探し出すよりも、血の臭いと、音を使って誘導する方が楽だと思うのよね? ……それはさておき、二人は紫陽花は好きかしら?」
「確かにそうですけど……紫陽花ですか? 紫陽花は……うーん、どうでしょう。どちらかと言うと、嫌いかもしれませんね。雨の日はどことなく寂しい気がしますから……」
「うーん……そうだねー。会長はどっちでも、って感じかなー?」
 そんな事を言っていると……茄子子の手元のaPhoneが鳴り響く。
 勿論それは、もう一方の班からの連絡……という事は、つまり。
「あー、見つかったみたい? これ、便利だよね」
「ええ……と、取りあえず急ぎましょう」
 茄子子の言葉に頷きつつ、すずな達は仲間達の所へと急行。
 ……やはりその場は、紫陽花の花々が咲き誇り、美しくも……何処か物悲しい景色。
『ウォォォン……!!』
 と、イレギュラーズ達を威嚇するように、咆哮を上げる夜妖の獣たち。
 前線で対峙する月夜が、牙を剥く夜妖達に向けて。
「寺の活気に花見客は必要なもンだろ。俺が言うには可愛すぎる事を言ってンのは理解してるがよォ……だが、花に罪はねーんだよ!」
 と言い放つが、夜妖達はウグルゥゥ、と咆哮をあげるのみ。
 そんな漆黒の夜妖達に向けて、早速ヨタカが。
「……このヴァイオリンから流れるメロディは、強く底から湧き上がる血の音色……そう、それは俺たちを勝利に導く為の戦歌だ」
 と静かに告げると共に、鬼哭を奏で、夜妖達に恍惚や、氷結のバッドステータスを付与。
 それに連携して武器商人が、なるべく多くの敵を巻き込み、破滅の呼び声を奏で、敵への怒り効果を次々と付与する。
 二人の連携に続き、仲間達とは逆の方向から包囲するすずな、小夜、茄子子。
「がんばれー! いけー! そこだー! ごめんそこじゃなかったかもしれない!!」
 小夜へ攻撃を誘導しようとしているのか、わーわーと騒ぐ茄子子……それを聞いてかは分からないけれど。
「小夜さん……行きましょう」
「ええ」
 二人頷き合い、敵の背後から『誘い』と『無窮・『旋風』』の連携を喰らわせる。
 不意に攻撃を喰らった夜妖が呻き声を上げ、数匹が彼女達の方向へと反転し、噛みつきで攻撃してくる。
 その攻撃を喰らった仲間達へは茄子子が。
「大丈夫! 会長がばっちり治すからね!」
 とクェーサーアナライズを使い、二人の回復に集中する。
 そのお陰で体力の減り具合はある程度緩和出来ており、二人は攻撃に集中し続ける事が出来る。
 そして、また逆の方角より月夜が
「はっ、ヒーラーの顔を立ててやるよ」
 と、憎まれ口を叩きつつ、名乗り口上で更に敵に怒りを追加し、そこにフィリーネも加わり。
「その感情の無力さ、わたくしが教えて差し上げますわ!」
 と、別の一帯に名乗り口上で敵を惹きつける。
 怒りがなければ、不意に間を抜けて逃げられてしまうかもしれない……だからこそ、怒りを多重に付与する事で、彼らが逃げないように工夫する。
 無論、敵の攻撃は、怒りを付与した者達に集中してしまうのだが、その間に割り込む武器商人と、フィリーネ。
「攻撃は通させ葉しないよ? ほら……」
 武器商人が発動するは『礼賛せよ、銀の冠』と『仰ぎ見よ、金の冠』。
 物理、神秘どちらの攻撃をも通さない壁となる事で、決して敵を通さない。
 又、喰らったダメージはニーヴが『シェルピア』を放ち、的確に治療。
 そんなイレギュラーズ達の連携の前に、夜妖達は唸り、威嚇の咆哮を上げる。
 地面を蹴り……徒党を組んで、イレギュラーズ達を攻撃。
 そんな夜妖達の動きをしっかりと見据えつつも、少しでも怪しい動きをする夜妖が居れば、そこを重点的に護る様に移動。
 ……それでも特攻して、包囲網をかいくぐろうとする奴らには。
「おい、逃げてンじゃねェぞ、皿の上の餌如きがァ!」
「敵前逃亡とはとんだ根性なしですわ、所詮フラレた程度の恨みですわね!」
「敵前逃亡は士道不覚悟ーー逃げられるとお思いですか?」
 月夜とフィリーネ、すずなが両側面から素早く回り込み、敵の逃亡を阻止する。
 逃げ道を塞がれれば、後は実力行使で突破する他に無く、夜妖は鉤爪を連携して左、右と振るい続けて攻撃。
 辺りはかなり薄暗闇に包まれているので、夜妖の体色と相俟って中々見づらい所はあるが、離れた所に居る仲間達は回復に集中し、至近距離に居る仲間達は、的確に一匹ずつ仕留める。
 その結果、一匹、二匹、三匹……と確実に倒れていく夜妖。
 仲間が倒れていく中においても、夜妖達は何かに突き動かされているかの様で……決して退いたはしない。
 この包囲網をくぐり抜け、彼らを産み出した元凶である、怨恨を叫んだ彼女を傷付けようとでもしている様に見える。
 そんな上手く包囲網を突破出来ず、立ち塞がるイレギュラーズ達に苛立ち、更なる咆哮を上げる夜妖達。
「幾ら叫ぼうとも、貴方達を通すつもりはない……通りたくば、俺達を倒す他に無いぞ」
 とヨタカが冷たく言い放つ。
『グルゥ……ウガァアア!!』
 ふざけるな、ブッコロス、とでも言っているのだろうか、鋭い爪を何度も何度も無差別に振り落していく。
 そんな無差別攻撃は、イレギュラーズ達だけでなく……周りに咲き誇る紫陽花にも流れていってしまう。
「チッ……庇うか」
 勿論命の無い紫陽花の花だが……でも、身を呈してカバーリングする月夜。
 彼へ、次々と別の夜妖達が攻撃してきて……ニーヴが彼女の元へと急ぎ回り込み回復。
 そして、ムキになって攻撃してくる夜妖達に。
「君達も元は紫陽花なのかな? ここ、咲いた場所で散るがいいよ」
 と宣告……そして、美しく咲き誇る紫陽花を守りながら、残る夜妖達を確実に一匹ずつトドメを刺していく。
 そして、戦闘開始から十数分。
 残る夜妖は後一匹となり。
「さぁ……そろそろ終わりの刻だ」
 と、ヨタカがダーティピンポイントを穿ち、貫かれると共に地面に叩きつけられる夜妖。
 そこへフィリーネのシールドバッシュが叩きつけられ……最後の夜妖もまた、崩れ墜ちていった。

●紫陽花の散り際
 そして……。
「ふぅ……終わったかなー?」
 周りを見渡す茄子子に、こくり、と頷くフィリーネ。
「その様ですわね……死んだふりするかもしれないと思いましたけれど、影も形も消えましたから、恐らく復活する事も無いでしょう」
「そうだねー。それじゃー……せっかくだから咲き誇る紫陽花を見ていかない? 多分綺麗だよね!」
 茄子子の提案、それに頷きヨタカと武器商人の二人は。
「そうだねぇ……それじゃ、我は小鳥と一緒に紫陽花鑑賞に行くとしようか。ほら、こっちにおいで、ヨタカ」
 手招きしながら、傘を開く武器商人と……その傘の下に入るヨタカ。
 仲間達と離れ、左右に紫陽花が咲き誇る境内の石畳を歩く。
「ほら、……あそこの紫陽花なんて、特に色濃くて綺麗だよ?」
「わ、ふふ……うん、綺麗だね……紫月みたいだ……」
 武器商人に微笑むヨタカ。
 そんな仲睦まじい二人に対し、ニーヴは戦いの結果、乱れ散った花びらを拾い集め、周域の掃除。
「せっかくここまで綺麗に咲いてるんだからね。これからは穏やかに過ごせると良いんだけど」
 そんなニーヴのぼやきに、フィリーネも頷き手を貸す。
 一方別の所で茄子子がすずなと小夜の前に立ち。
「そうそう、紫陽花ってさー、浮気や冷酷の他ニ和気藹々とか、家族って意味の花言葉もあるらしいよ! まさに二面性を持つ花って感じだね! 私とそっくりだね、へへ……!」
 振り返り様に、にっこりと微笑む。
 それに小夜は。
「そうなのね……でも、私は紫陽花が好きじゃないわ。花期を過ぎても、いつまでも残り続ける様が……ね」
「……」
 小夜の言葉に、何か含みを感じたすずなが、物凄く不安そうに見つめる。
「……何でもないわ。大丈夫よ」
 盲のままに眼を閉じる小夜の感情に。
「本当、大丈夫?」
 心配そうに声を掛けるが、小夜は黙して語らず。
 ……漠然とした不安は更に逸るが、でも……それ以上何か出来る、という訳でもなくて。
「分かったわ。でも、何かあったら、言ってね?」
「……ええ」
 すずなに頷く小夜。
 ……そして、仲間達が各々紫陽花を楽しんで居る中、月夜はaPhoneから掃除屋へと連絡し、後始末を依頼。
 仲間達が一通り楽しみ、それを見送りながら月夜も一人、紫陽花に軽く手を捧げ。
「……紫陽花よ、人の感情を抱きしめる必要はねェ。オマエはただ、美しくあればイイ」
 と、雨露に濡れる紫陽花に、そう語りかけながら、朝にくれつつある寺の紫陽花を愛でた。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

紫陽花寺の夜妖退治、お疲れ様でした!
梅雨の時期……の筈が最近は夏じゃないかという気候が続いてますね。
ジメジメも嫌ですが、暑すぎるのも困った者です……。

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