PandoraPartyProject

シナリオ詳細

ある日、空からアライグマたちが降ってきて屋根に突き刺さった。

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●タイトルで状況説明終わり
 『翡翠(エメラルド)』――。
 R.O.O内に存在する『深緑』的立ち位置の国家であるが、現実のそれとは違い、翡翠のハーモニア達は非常に非常に排他的な政策を行っている。
 翡翠の代表者が男にフラれたのが原因、などと言われているが、実際のところはどうやら。とはいえ、翡翠内部にある希少な遺跡を盗掘する者は実際に存在するため、そう言った『悪徳なもの達』の存在も、翡翠のハーモニア達の態度の効果に一役買っているのかもしれない。
 それはさておき。この日、翡翠のとある村には、未曽有の大災害が発生していた。
 始まりは、何か『よくわからないものが降ってきた』と言うものであったのである。
「――なんだ? ひゅう、って音が」
 ハーモニアの男性が声をあげた。確かに、上空からひゅう、と言うような音が聞こえてくる。ひゅーう、ひゅるひゅるひゅる。何かが空飛んで、そして落ちてきているような音だ。
 途端、ズドン、と言う音が聞こえた。音の方には、建物があって、音はその屋根から聞こえる。何かが、落下したのだ、と言う事は、男にもすぐに分かった。
「うおおおお! 俺の家の屋根が!」
 男が、慌てて家に駆け寄った。下からでは、何が起きたのかよくわからない。男は納屋から梯子を持ってくると、屋根の上に登り始めて――そこで、天高く足を突き出し、屋根に身体の半分以上を埋め込んでいる、
「アライグマ……?」
 を見つけたのである。そう、それはアライグマだった。時折ピコピコと動く足が、まだこいつが生きていることを理解させられるが、しかし其れは其れとして、なんでアライグマが空から降ってきて、屋根に突き刺さっているのか。
 男が困惑していると、すぐにまた、ひゅーう、という音が聞こえてくる。ひゅるひゅるひゅる。男が空を見上げれば、空には無数のアライグマが飛んでいて、街のあちこちに向って次々と落着していくではないか!
 ズドン、と言う音が次々と響いて、街の建物、その屋根に突き刺さっていく。住民たちが何事かと慌てて外に出てきて、男と同様に、空を、屋根を見上げて、そこに突き刺さっているアライグマを見た。
「な。何が! 何が起きたんだ!?」
 男は困惑する。その間にも、アライグマたちは次々と降ってきて、次々と屋根に突き刺さっていく! これは何か、天変地異の前触れか!? 男たちが困惑する中、一人の男が、西方の森を指さした。
「あ、あっちだ! あっちから飛んでくるぞ!」
 そう、アライグマが飛んでくるのは、決まって街の西側で、そちらの方を見てみれば、何やら西に広がる森の方から飛び上がり、こちらへ向かってくるのが分かる。分かる。が。
「分かったから何なんだ……!? 西からアライグマが飛んでくる、そして屋根に突き刺さる……だから何なんだ……!?」
 男は頭を抱えた。
 こんなに訳の分からないことは、生まれて初めてであった――。

●ある日、アライグマが飛んできて
「ええと、貴殿らが特異運命座標……で間違いないかな?」
 翡翠に訪れた特異運命座標たち。それを迎えたのは、ルドラ・ヘスと名乗る、翡翠のファルカウ警備隊長であった。
 厄介ごとへの対応を任されているルドラが、特異運命座標たちに声をかけたという事は、厄介ごと(クエスト)の発生に間違いない。特異運命座標たちのインターフェースにも、クエストの発生を意味する通知が現れている。
「実は……アライグマが、飛んできてだな」
 はぁ、と、特異運命座標たちは頷いた。
「それで、近隣に村に降って来るのだ……そして、屋根に突き刺さる」
 はぁ、と、特異運命座標たちは頷いた。
「訳が分からないだろう? 私にも訳が分からない……だが、その、対応はしなければならないのだが、訳が分からな過ぎて、部下の者もこう、困惑していて……」
 それで? と、特異運命座標たちは尋ねる。
「それで、貴殿たち特異運命座標なら、こう言った訳の分からないものへの解決もできるだろうと……」
 ――つまり、訳の分からない事件の解決を、ほぼ丸投げしよう、と言う事なのか。
 と言う言葉を、特異運命座標たちは飲み込んだ。が、少し表情に出ていたのかもしれない。ルドラは苦笑した。
「ああ、その、申し訳ないが……とはいえ、実際に被害は出ているんだ。どうか、調査をお願いしたい」
 ルドラの言葉に――些か困惑したとはいえ、特異運命座標たちは頷いた。これは、れっきとしたシステム上のクエストだ。ならば、断る理由もないのである。
「受けてくれるか」
 ルドラは嬉しそうに笑うと、
「アライグマたちは、どうやらある森から射出されているらしい。その森に行って、アライグマの射出元を押さえ、原因を排除してほしい。頼んだぞ、特異運命座標殿」
 そう言うルドラに頷くと、特異運命座標たちは現場へと向かった。

GMコメント

 お世話になっております。洗井落雲です。
 僕は刺さっていません。

●成功条件
 『アライグマが飛んでくる原因』を取り除く

●情報精度
 このシナリオの情報精度はCです。
 情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。

※重要な備考
 R.O.Oシナリオにおいては『死亡』判定が容易に行われます。
『死亡』した場合もキャラクターはロストせず、アバターのステータスシートに『デスカウント』が追加される形となります。
 現時点においてアバターではないキャラクターに影響はありません。

●状況
 R.O.O、翡翠の国――そのとある村に、『空からアライグマが降ってきて屋根に突き刺さる』と言う珍事が発生しました。
 笑い話で終わりそうではありますが、しかし連日空からアライグマが降ってきて屋根に突き刺さり、実際村には被害が――今のところ人的被害はありませんが、それもいつ発生するかはわかりません――発生し、住民たちも不安がっています。
 アライグマはどうやら、村の西にある森から発射されているらしいのですが、森林迷宮警備達も忙しく、中々ての出せない案件となっています。
 そこに現れたのが皆さん、特異運命座標たちです。みなさんには、この異変を解決するため、西の村に向かい、アライグマ発射の原因を突き止めて、止めて欲しいのです。
 クエスト発生時刻は昼。フィールドは森になりますので、やや薄暗く、見通しも悪くなっています。

●ROOとは
 練達三塔主の『Project:IDEA』の産物で練達ネットワーク上に構築された疑似世界をR.O.O(Rapid Origin Online)と呼びます。
 練達の悲願を達成する為、混沌世界の『法則』を研究すべく作られた仮想環境ではありますが、原因不明のエラーにより暴走。情報の自己増殖が発生し、まるでゲームのような世界を構築しています。
 R.O.O内の作りは混沌の現実に似ていますが、旅人たちの世界の風景や人物、既に亡き人物が存在する等、世界のルールを部分的に外れた事象も観測されるようです。
 練達三塔主より依頼を受けたローレット・イレギュラーズはこの疑似世界で活動するためログイン装置を介してこの世界に介入。
 自分専用の『アバター』を作って活動し、閉じ込められた人々の救出や『ゲームクリア』を目指します。
特設ページ:https://rev1.reversion.jp/page/RapidOriginOnline

●エネミーデータ

 空から降ってくるアライグマ ×???
  空からアライグマが降ってきます。断続的に振ってくるわけではありませんが、突然降ってきて攻撃を仕掛けてきます。
  主に物理属性の至近~近距離攻撃を行ってきます。『出血』系統のBSにご注意を。
  強力と言うわけではありませんが、数が多く、すばしっこいです。

 アライグマを発射しているもの ×1
  正体は不明ですが、アライグマを発射している何かです。
  何故アライグマを射出しているのかも不明です。
  多分……物理属性の、強力な中~遠距離攻撃を行ってくる……と思います。アライグマを撃ちだしてくる気がします。


 以上となります。
 それでは、皆様のご参加とプレイングをお待ちしております。

  • ある日、空からアライグマたちが降ってきて屋根に突き刺さった。完了
  • GM名洗井落雲
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年06月10日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

グレイシア(p3x000111)
世界の意思の代行者
パルフェタムール(p3x000736)
聖餐の天使
アレキサンドライト(p3x004247)
リア充ボマー
ミドリ(p3x005658)
どこまでも側に
九重ツルギ(p3x007105)
殉教者
ゴルド(p3x007874)
しょしんしゃ
ひめにゃこ(p3x008456)
勧善懲悪超絶美少女姫天使
ウーティス(p3x009093)
無名騎士

リプレイ

●アライグマのとぶもり
 どおん、と低い音が森に響く。
 ひゅう、と、何かが上空を飛んでいく。
 飛んでいくものは、一目見ればわかるだろう。しましまのしっぽは、アライグマの特徴的なものだ。
 クエスト攻略のために、森の入り口にやってきた特異運命座標たち。移動中にも、上空を連続して飛んでいくアライグマの姿を何度か見ている。
「うーん、どういう状況なのこれ!? なんでアライグマが飛んでくるの!? なんでアライグマを撃ちだしてくるの!? システムは何を考えてこんなクエストを設定したの!?」
 『しょしんしゃ』ゴルド(p3x007874)が困惑した様子で声をあげる。
「いくらなんでもアライグマがかわいそうじゃない!? アライグマだってけなげに生きてるんだよ!!」
 その言葉に反応したみたいに、またアライグマが飛んでいく。
「うわぁ、また飛んで行ってる……」
 『どこまでも側に』ミドリ(p3x005658)が、困惑した様子で言った。
「この間も、アライグマと戦うクエストがあったんだよ……妙に圧の強いオレンジ色のオブジェクトに見守られて。あれとは関係ないのかな? 見た感じ、変なシャボン玉は吐き出してこない、ふつうのアライグマみたいなんだけど」
「普通……か? いや、普通のアライグマって何かで撃ちだされて空飛んで屋根に刺さりませんよね……?」
 『爆弾魔』アレキサンドライト(p3x004247)が眉をひそめながら言った。それはそうである。普通のアライグマはなんか打ち出されて空を飛ばない。屋根には刺さるらしいが、それは特殊な事例だろう。
「なんにしても、アライグマはやっぱり西――つまり森の奥から発射されているみたいです。この森に、アライグマを射出している何かが、居る、もしくは、在る、のは間違いないでしょうね」
「そうですねぇ。というか、何で撃ちだすものにアライグマをチョイスしちゃったんでしょうねぇ。怨みでもあるのかな?」
 『勧善懲悪超絶美少女姫天使』ひめにゃこ(p3x008456)が頷いた。何故アライグマを撃ちだすのか。それは本当に全くわからない。
「もっといいものありますよね、撃ちだすものは……現実みたいに、下着とかサメとか……うん? 現実の方が危なくないですか?」
 ひめにゃこが首をかしげた。それは世界の真実なので気づいてはいけない。
「ううむ、あまりにも奇妙だ……バグが発生しているとはいえ、この様な局所的な、意味不明なバグがあるのだろうか? 何と言うか、『その場のノリ』と言う奴で生まれたとしか思えない……」
 『世界の意思の代行者』グレイシア(p3x000111)も、流石に困惑気味である。
「アライグマも……いくら何でも、連日発射されて数が減らないわけがない。と言う事は、アライグマもバグで発生した、無限に発生し続けるクエスト用のオブジェクトのようなものだととらえるべきか……いや、分からない。考えても仕方のない事なのかもしれないが……」
 グレイシアも思わず頭を抱えたい気持ちだったが、いや、しかし考えても仕方ない、とは自分でもいった通りのことである。場当たり的な対処になってしまうが、さておき、元凶をどうにかするしかないのである。
「クエスト用のオブジェクト、となると、持ち帰ってペットに……とはいかないのでしょうか」
 『生存カウンター4』九重ツルギ(p3x007105)が、白いソファに優雅に腰掛けながら、言った。
「可愛らしいアライグマ……ええ、大人になると非常に凶暴になると言いますが、それも臆病さゆえに自らを守るため。その心の壁をそっと取り払い、種族を越えた友情を築くのも、また一興かと思っておりました……」
 ふぅ、と静かに肩をすくめるツルギ。R.O.Oにペットシステムがあるかどうかは定かではないが、このシナリオに登場するアライグマを連れて帰るのは難しそうである。射出されるし、襲ってくるし。
「さて、そろそろ先に進もうか」
 『聖餐の天使』パルフェタムール(p3x000736)がうっすらと笑った。
「状況はとても愉しいけれど、さておき放置しておくわけにはいかない。私達がクリアすべきクエストだからね。ひとまずクリアしてから、諸々のことは考えよう。ツルギ、もしかしたら野生のアライグマ位いるかもしれないよ。終わったら餌付けしてみようか。私の身体でね?」
 くすりと笑い、その肢体を見せつけるようにするパルフェタムール。煽情的だが、身体で餌付けする、とは文字通りに自分の身体を食わせるという事である。
「それもいいが……さっさとクリアしてしまおう。仮想世界とは言え、無辜の人々が困っている案件だ。早く解決してやりたい」
 『名もなき騎士』ウーティス(p3x009093)の言葉に、パルフェタムールは楽し気に肩をすくめた。
「真面目だね?」
「我は力なき者の刃。そう在る者だ」
 ウーティスがそう言い、ゆっくりと森へと視線をやる。
 鬱蒼と生い茂る森、その入り口はぽっかりと口を開けて、特異運命座標たちを招き入れようとしている。
「行こう」
 ウーティスの言葉に、皆が頷いた。そしてゆっくりと、森へと侵入するのであった。

●空飛ぶアライグマ
 ゴルドのトーチが森を照らす。日照は充分だったが、それでも木陰などを照らすのに明かりがあるにこしたことはない。これでだいぶ歩きやすくなるだろう。
 一同はひとまず西へ向かって進む。あれからアライグマの射出はない。止まったのか? と思った刹那、どおん、どおんと言う音が再び響く。
「音が……西から? いや、さっきよりズレている……?」
 パルフェタムールが呟く。ひゅう、と言う音。アライグマが飛ぶ音――それが、近づいている――?
「降って来る! 構えるんだ!」
 パルフェタムールが言うのへ、
「ええ、かしこまりました」
 ツルギが素早く楯を構える。仲間達を守る位置へ移動。間髪入れず、空から三匹のアライグマが降ってくる!


「動かないでください。俺を信じて」
「ひゃいっ!」
 うずくまりつつ、ひめにゃこがそう言った瞬間、ツルギの楯に散発の衝撃が走った。がんっ、と言う音が響いて、そのままくるくると三つの影が楯を蹴り上げて跳躍、地に降り立つ。
「――やっぱり! アライグマだ!」
 ゴルドが叫んだ。しっぽをぶわり、と膨らませ、威嚇するように唸る三匹のアライグマ。ただのアライグマであれば特異運命座標たちの敵ではないが、インターフェース上でもエネミーとして認識されている子の三匹のアライグマは、魔物と言っても差し支えのないほどの敵に調整されているらしい。
「構えろ、くるぞ」
 ウーティスが声をあげて、武器を構える。応じるように、仲間達が武器を構えた瞬間、アライグマたちは唸り声をあげて飛び掛かってきた。
「速い……!」
 ウーティスが呻くのへ、
「でも、ぼくの方が速い!」
 アライグマたちよりも先に反応したのはミドリだ。手を掲げると、放たれた第三のスキルが衝撃波となって解き放たれる。衝撃波に貫かれたアライグマの身体が、凍結のエフェクトによって足を止められた。
「くるるっ!」
 衝撃に悲鳴を上げたアライグマが吹き飛ばされる。気に打ち付けられてそのまま目を×にして倒れ込んだ。倒されたという判定をうけたのか、アライグマの身体が消滅していく。
「るるるるっ!」
 アライグマが唸って、その鋭い爪を振り下ろした。パルフェタムールは背中の翼で身体を守って、その爪撃を受け止める。柔らかく見えるその翼は、鋼鉄の如き硬さで、アライグマの爪をはじき返した。
「おや、私を狙うなんて、外から見ても、この身体の味がわかるかい? 美食家だね?」
 パルフェタムールが笑う。
「けど――キミがディナーに参加するつもりとは、おこがましいね」
 パルフェタムールの翼が刃のように振るわれ、アライグマを迎撃する。斬撃のエフェクトがアライグマを切り裂き、飛ばされた先で受け身を撮ろうとするも、
「おっと、再攻撃には転じさせんよ」
 グレイシアの放ったスキル、影がアライグマを飲み込み、そのまま地に叩き落した。くるる、とうめき声をあげたアライグマが消滅。
 残る一匹であったが、劣勢に立たされても怯むわけも逃げるわけもなく、威嚇の叫びをあげて再び突撃。
「野生の獣ではこうはなるまい。やはりシステムに調整された敵NPCか」
 グレイシアの呟きに、
「だったら、気分的にやりやすい……かな?」
 ゴルドが応えて、第一のスキルを発動する。火炎弾が放たれ、アライグマの防御をかいくぐって腹部へ直撃。燃え上がる炎がアライグマを焼き上げる。
「るるるっ!」
 悲鳴を上げたアライグマが、焦げ焦げになりながら目を×に倒れ込み、そのまま消失した。
「ふむ。戦闘能力はさほど高くはないようだが……」
 ウーティスが言う。先ほどの一戦での特異運命座標たちの損害は少ない。とはいえ、敵は恐らく無尽蔵にアライグマを射出してくるはずである。
「――この手の妨害はこれからも多く行われるだろう。常に警戒しなければならんな」
「でも、撃ちだせば撃ちだすほど、相手は自分の位置を教えているようなものです!」
 ひめにゃこが言った。
「そうだな。だが……パルフェタムール、先ほど少し悩んでいたようだが」
「うん。射出音を聞いていたんだけれど、最初の頃に比べて、射出位置が北に移動しているように思えてね」
「ひめもそう思います! ……と言う事は、元凶は、移動しているという事ですか?」
「と言う事であるな」
 グレイシアが頷く。
「吾輩のスキルでも、そのように感知している……どうやら元凶は、中々にフットワークが軽いようだ。そして、同時に分かる事が有る。移動しながらも、これまでと同じようにアライグマを射出しているという事は、二つの可能性がある。すなわち、
 1.この森にはうじゃうじゃと弾となるアライグマがいる。
 2.アライグマは、射出される都度生成されているNPCである。
 この二つだ。これは、大量のアライグマの砲弾を抱えては、そう簡単に場所を移動できない、と言う事実に基づく予測である。
 1の可能性は、村人からそのような説明がなかったこと、それからこれまで吾輩たちが歩いてきた道筋でアライグマを見かけなかったことからも、ないであろう」
「ふぅむ……良かった。弾にされて射出される野生の無辜のアライグマは存在しいと言う事ですね……」
 ソファに腰かけ、アンニュイにため息をつくツルギ。
「だが、同時に相手は無尽蔵に攻撃を仕掛けてくるという事でもある。ツルギ、楯となるキミへの負担は大きいが……」
 ウーティスの言葉に、
「任せてください! 傷は俺が爆弾で殴って治しますから!」
 と、アレキサンドライトが言うのへ、ツルギは微笑んだ。
「ありがとう……ありがとう?」
「ええ、俺の爆弾は特別製ですからね! すぐに楽になりますよ!」
「なんか言葉だけ聞くと恐ろしいなぁ……」
 ミドリが嘆息する。さて、一行は再び、射出音の方へと向けて出発した。時折降ってくるアライグマたちは、ツルギが受けとめ、仲間達によって迎撃されていった。傷はアレキサンドライトが爆弾で殴って治療していったが、仲間達にも傷や疲労は相応に蓄積されていく。
 そして、森の北西に到達したときに、それは姿を現したのだ。

●オレンジ色のまあるい圧の強いオブジェクト
「あーっ!」
 それを見た時に、ミドリは思わず指をさして大声をあげてしまった。そこに居たのは、言葉で説明するなら、オレンジ色の、まあるい、圧の強い謎のオブジェクトだった。
「ま、前のクエストで見たことあるよ! ……でも、前は手足なんてはえてなかったような……」
 そう、オレンジ色のまあるい圧の強い……まぁ、以降『オレンジ』と表示するが、とにかくオレンジにはデフォルメされたような手足が生えていて、その両手で巨大な筒のようなものを構えている。その表情は、顔文字で表すなら( ・◡・*)と言った感じであったが、その顔文字に比べて些か眉間にしわが寄っていた。
「それに、何か悪そうな顔をしてる! 前の個体とは違うのかな?」
 オレンジは無言で筒を構えると、特異運命座標たちへと向えてその口を向けた。途端、すさまじい音と共に、アライグマが射出される!
「いけない!」
 ツルギが慌てて楯を構えて飛び出す。すさまじい衝撃がツルギの身体を駆け巡った。これまでの戦闘から疲労していたツルギのHPが危険域まで落ち込む。
「なんという衝撃でしょう……皆さん、気を付けてください!」
 楯に突き刺さったアライグマが足をバタバタさせる。アライグマの突き刺さった楯を掲げつつ、ツルギはオレンジの前に立ちはだかった。
「ふむ……直接打ち込むことによって、攻撃力は高くなった、とみるべきであるな。だが、あの長物、近寄ればある程度は無力化できるだろう」
 グレイシアが冷静に看過する。
「えっと、アライグマをいじめるなー! どうしてそんなことするの!!」
 ゴルドが声をあげるのへ、オレンジはゆっくりと声をあげた。
『――幼児化……低身長童顔成人男子……幼児化……低身長童顔成人男子』
「ぴえっ」
 ゴルドが悲鳴をあげる。
「近寄ってはいけない気がするよ!」
「同感ですね……!」
 アレキサンドライトが頷く。
 オレンジが再び筒を構えた。
「来るぞ、散開!」
 ウーティスが叫ぶ、同時に仲間達は跳躍して散った。筒から発射されたアライグマが木に突き刺さって足をバタバタさせるのをしり目に、
「なんだかおもしろい相手だね? キミは踊れるかな?」
 パルフェタムールが飛び込む――振るわれる翼。しかしオレンジは筒を振りかざしてその翼を受け止める。
「へぇ、中々踊れる――」
「パルフェタムールさん、ひめが隙を作ります!」
 ひめにゃこが第一スキルを発動する。柔らかな光のエフェクトがオレンジへと迫り、オレンジを包み込み、幻惑する。
『低身長童顔成人男子……!』
 オレンジが恍惚とそう呟くのへ、ウーティスが光を纏い、駆ける!
「貴殿の真意は解らんが……罪なき者へとあだなすのであれば!」
 光の斬撃が、オレンジを切り裂く! 『幻……!』と悲鳴を上げたオレンジが跳躍し、くるりと筒を振り回してアライグマを発射する。
「させません……!」
 ツルギが立ちはだかり、それを受け止めた瞬間、とうとう楯が損壊した。そのままアライグマの直撃を受けたツルギが、アライグマと共にもんどりうって倒れる!
「くっ、すみませんが、ここまでのようです……!」
 ツルギの身体が光に包まれて消滅、ログアウトする。サクラメント(リスポーン地点)は遠い街の中だ、すぐには戻ってこれないだろう。
 機を得たとばかりに、オレンジのアライグマ砲撃連打が続く。地面に着弾して大地から足をのぞかせるアライグマ。笑える光景ではあるが、先ほどのツルギのダメージを見れば、悠長に笑っている場合ではない。
「うわっ!」
 アライグマの砲弾がゴルドに直撃する。消し飛ぶHP、ゴルドは悔しそうに呻いた。
「ごめん! 先に戻ってる!」
「大丈夫、吉報を待っててください!」
 ログアウトするゴルドを悔し気に見やりながら、アレキサンドライトが応えて、残るメンバーたちを爆弾で殴って傷を癒していく。殴った時に生じる爆風が傷をいやすという奇妙な光景だが、しかしここで残る仲間達は踏みとどまった。
『幼児化……!』
 オレンジが驚愕したように呟く。最大攻撃のラッシュにも拘らず、特異運命座標たちを全滅できなかったことへの驚きか。
「好き放題やってくれたようだが、ここからは吾輩たちの反撃の時間だ」
 グレイシアがその手を掲げて、ぐ、と握りつぶすように閉じた。とたん、足元から這い上がる影が、オレンジの身体を包み、握りつぶすかのように拘束する!
「これまでのダメージ分、お返しだよ!」
 ミドリが放つ、第一のスキル。復讐の力を乗せた黒き魔力の奔流が、オレンジを捉えた。影、そして黒の魔力。二つの黒に捉えられ、オレンジが身をよじらせた。そのまま影の拘束から何とか抜け出して、再び筒を構える。が、そこに迫るのが、ひめにゃこの第一スキルだ。
「えーい、食らっちゃってください!」
 再び放たれた柔らかな光のエフェクトが、オレンジを幻惑して隙を生ませる。
「今度は避けられないだろう?」
 パルフェタムールの翼の攻撃が、オレンジを切り裂いた! 血などが出たわけではないが、ダメージは大きそうに見える。ぐらり、と大きく揺れるオレンジ。そこへ迫る、ウーティスの一撃! 閃光がオレンジを貫く!
「これで、終わりだ」
『……!』
 悲鳴を上げながら、オレンジが光の中へと消えていく。くるりと回転して落下する、アライグマ発射の筒。それが地面に突き刺さった瞬間、ファンファーレと共に、インターフェース上に『クエストクリア』の文字が躍った。
「お、終わりましたか……?」
 ひめにゃこが呟き、へたり込んだ。さらさらと、無駄に格好よく消滅していく発射筒。同時に、アライグマの気配も消えた。特異運命座標たちの予想通り、クエスト用のNPCだったのだろう。
 いずれにしても、特異運命座標たちはクエストを完遂したのだ! 結局、あのオレンジ色の圧の強いオブジェクトが何だったのかは謎のままだが、それでも。
 一同は現実と変わらぬ疲労感を体に感じながらも、街への帰路へとつくのであった。

成否

成功

MVP

九重ツルギ(p3x007105)
殉教者

状態異常

九重ツルギ(p3x007105)[死亡]
殉教者
ゴルド(p3x007874)[死亡]
しょしんしゃ

あとがき

 ご参加ありがとうございました。
 謎のオレンジ色のまあるい圧の強いオブジェクト……いったい何者なんだ……。

PAGETOPPAGEBOTTOM