シナリオ詳細
Princesa azul
オープニング
●
シーグリーンの海に銀の閃きが見える。小魚が集まって優雅に泳いでいた。
船の欄干に捕まった少女はサックス・ブルーの瞳を輝かせて小魚の群れを追う。
「お魚さん、あなた達はどこから来たの?」
少女は欄干から身を乗り出し、水面近くを泳いでいる小魚に話しかけた。
「ふふ、やっぱりお返事は無し? そうよね。魚が喋るわけ無いわよね」
少し寂しげな表情をした少女は欄干から降りようと片足に重心を掛ける。
「うわ!?」
足を滑らせた少女は甲板にコロリと転がった。
「大丈夫?」
イレギュラーズは甲板の上に転がった少女に手を差し伸べる。
びっくりした顔のままだった少女は差し出された手とイレギュラーズの顔を交互に見つめ、にっこりと笑った。
「ありがとう!」
起き上がった少女は服の埃を払い乱れた髪を整え、イレギュラーズに向き直る。
「こんにちは。私の名前は、えっと……サラっていうの。良い名前でしょう?
私の所ではプリンセスって意味なのよ。
どう? すっごく可愛いでしょ? プリンセスみたいでしょ!?」
サックス・ブルーの瞳を輝かせ同意を求めてくる少女――サラにイレギュラーズは頷いた。
「……んっふ、ふーん! そうよね! やっぱり、おま……貴方もそう思うわよね! 嬉しいわぁ!」
サラは胸に手を当て目を瞑り誇らしげなポーズをしてみせる。
幼い少女が一生懸命胸を張る姿は、とても微笑ましい光景であった。
「あなた、どこから来たの? 私はねあっちの方よ。この船がどこに向かうのか分かる? 向こうの沖に見える半島まで行くのよ。あっちにはね、美味しいクエストがあんだ……あるのよ」
照れくさそうに口元を小さな指で触るサラ。
その時、耳をつんざく金の音が甲板に響き渡った。
「な、何!?」
「海賊だ――――!!!! 右前方に海賊が現われたぞ――!!!!」
マストの上に登っていた見張りが金の音と共に大声で叫ぶ。
「あぁ? 海賊だぁ!? ……あ、えっと。その。海賊なんて怖いわよね。えへへ」
一瞬豹変したサラの言葉遣いの方が気になるが。とりあえず端に置いて、イレギュラーズとサラは右前方の欄干に駆け寄った。
深い色のジーベック船がどんどんと近づいて来る。輸送船であるこの船と海賊船の推進力の差は歴然であった。
「チッ、逃げられねぇな……あ、えっと。その……そう、他のお客さんを客室に避難させないと。あなた強いわよね? 私が戻ってくるまであの海賊引きつけていてくれないかしら?」
了解したと頷くとサラは足早に甲板で震えていた人々を誘導していく。
海賊がやってくる頃には殆どの乗客が船内へと避難していた。
残るはあと数人――
●
「いやいや、俺達は無用な争いをしたくない。分かる?」
武器を構えるイレギュラーズに『緑影』ウーゴ・パストラーナと名乗った男は首を振った。
「俺達の目的はこの船で輸送されてる『色宝』。ただそれだけだ。
大人しく渡すってんなら危害は加えねえぜ。ま、戦いたいっていうなら受けて立つがな」
強気な笑みを浮かべたウーゴはカットラスを抜き去り、甲板の上に降りたつ。
そのすぐ傍には恐怖で蹲った少年が一人取り残されて居た。樽の影に隠れてウーゴからは少年が見えないのだろう。されど、見つかるのも時間の問題だ。
サラは覚悟を決めて大きく息を吸い込む。
「なによ! そんな気さらさら無いくせに! どう見ても悪党じゃない! このクソハゲ!!!!
――弱えから、こんなみみっちぃ事しか出来ねぇんだよ! それでも海賊か!? あぁ!?」
サラの甲高い声が甲板に響き渡り、視線が一斉に集まった。サラは今の内にとイレギュラーズに視線を向ける。
「何ぃ!? クソガキが、上等だ! 野郎共! やっちまえ!」
海賊共がサラへと怒りを露わに襲いかかった――
- Princesa azul完了
- GM名もみじ
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2021年06月09日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●
パライバトルマリンの海に潮風の香りが流れてくる。
清々しい程の青い空には陽光が降り注いでいた。
しかし、船の上は物々しい空気に包まれている。
海賊船から乗り込んで来た輩にイレギュラーズは視線を向けた。
「今回のクエストもバッチリ、ライブ配信するのですよ! ということで、いつものタイトルコールを」
息を吸い込んだ『めい☆ちゃんねる』May(p3x007582)は顔の横にピースサインを作る。
\めーい☆ちゃんねるー……オーシャン!!/
キラキラしたエフェクトと効果音が何処からともなく鳴り響きMayの足下に消えて行った。
「ハーイ、船上からメイなのですよ!」
カメラワークはMayのアップを写しだし、次に甲板の様子へと変わる。
「なんと今、メイ達の乗る船が海賊の襲撃にあっているのですよ!?」
海賊船から乗り込んで来た『緑影』ウーゴ・パストラーナを映し出すカメラ。
「どうやら狙いは、この船にあるお宝のようですね。ですが、メイ達がいるので好きにはさせないのですよ! 悪い海賊をこらしめるですよ!」
拳を振り上げたMayは次に仲間のイレギュラーズへと視線(カメラ)を向けた。
「戦いのなかに答えはある!」
キリっとした表情でMayのカメラへと視線を向けたのは『にゃーん』ネコモ(p3x008783)だ。
「よし、強者と戦う前の決め台詞ヨシ! いやー、配信にのっかかるともなればただの海賊退治でも気合いが入っちゃうニャー」
セスタスを嵌めた拳を前に突き出してシャドーボクシングのポーズを決めるネコモ。
「みんにゃー! 無様な様子が配信されないようにビシッといくニャよ!」
最後の拳は天高く掲げられ、マジカルエフェクトがMayの妖精から降り注ぐ。
『モフが好き』ルゥ(p3x009805)はアバターという存在が気に入っていた。
この世界では現実世界での病弱な自分はいない。ルゥという普通の少年になれるのだ。
「でも、この世界にも悪い人いるんだね。ゲームの世界とは言えみんな生きてるんだもん
逃げれなかった人たち助けて、海賊捕まえよう!」
ルゥは仲間に少年や海賊達の対処を任せ、マストの上で船の目になってくれていた船員を守ると視線を上げた。逃げ場のないマストの上だ。狙われたらひとたまりも無いだろう。
「わたしがマストの下で海賊攻撃したら、こっちを狙うよね? 上のほう狙うより、下のほう狙う方が簡単だもん。でも残念! マストには近寄らせてあげないよ!」
ルゥは刀を振り回し、衝撃刃で海賊を吹き飛ばした。
「何だぁ!?」
「へへーん! こっちこっちー!」
「この野郎!」
マストに居る船員を狙われないよう、ルゥはべっと舌を出して海賊共を挑発する。
「船員さんは危ないからマストから降りてこないでねー!」
手を振ったルゥに船員も小さく頷いた。
「サラさん面白いことしてるなあ……」
『nayunayu』那由他(p3x000375)は首を45度傾けた。長いウィスタリアの髪が肩から落ちて行く。
「いえ、こっちの話です。さて、初の対人戦ですか。これは楽しみですねえ。彼等の感情の味はどんなものなのか? くふふふふ」
含み笑いを浮かべた那由他は視線を船内へ続くドアへと向ける。其処には逃げ遅れた人が海賊の襲来に震えていた。
「ここは危険です。直ぐに避難してください」
「は、はい!」
那由他の言葉に動くきっかけを得た乗客は直ぐさまドアを開けて船内へと逃げ込んだ。
「暴力で人から物を奪おうとするなんて悪い人達だ。さあ、お望みの通りに戦おうじゃないですか」
避難する人の邪魔はさせないと言葉を繰る那由他。
「非戦闘員を狙うなんて恥ずかしくないんですか?」
三日月の唇から挑発の台詞が漏れた。
「人の財産と命を奪わんとする厚顔無恥、悪逆非道の海賊どもよ!
いかにこの海が広かろうと、この私の心は海ほど広くは無いぞ!
白銀の騎士ストームナイト! この名と剣の輝きを恐れるならば、今すぐお縄につくがよい!!」
戦場に凜とした声が響き渡る。Mayの連れている妖精からBGMとサウンドエフェクトが良い感じに鳴った。
『闇祓う一陣の風』白銀の騎士ストームナイト(p3x005012)の美しい鎧に陽光が反射する。
華麗に決まった名乗りに一瞬浸っていたストームナイトが首を振り剣を構えた。
彼女が捉えるは逃げ遅れた人と海賊の注目を一手に集める『世界一のプリンセス』サラ(p3y000137)だ。
「あのサラという少女……少女、でいいよな? うん、少女も危険に晒されているのだ。すぐに動かねば」
海賊の注目がサラに集まっている隙に、最も危険な位置に居る少年の保護を優先する。
仲間と連携するためストームナイトは『ご安全に!プリンセス』現場・ネイコ(p3x008689)へと視線を向けた。
――えっと、知り合いがアレだから何となく察してはいたけど……。
サラさんってやっぱりそういう事だよね? でもでもっ!
ゲームでアレコレ中の人を詮索するのはNGだし、今はそんな事を言ってる場合じゃないもんね!
ネイコはサラを一瞬だけ見遣り息を吸込んだ。
「――貴方の心に安全確認っ! 今日も、明日も、安全ヨシッ!
ご安全に! プリティ☆プリンセス! 皆の安全、守っちゃうんだからっ!」
ネイコの周りを煌めくスターライトエフェクトが駆け抜ける。Mayの連れている妖精が良い感じに動画映えするように援護してくれているのだ。
「って、悠長に名乗ってる場合じゃなかった!? 皆を守る為にテキパキ動いていくよっ!」
キランと星のエフェクトがネイコの瞳から零れ落ち、カメラはMayへと切り替わる。
「海賊に挑発を仕掛けたサラさんの援護をするですよ! ……サラさん見た目に反してすごく男らしい人ですね? このギャップ、配信視聴者の皆さんも好きな方がいるのでは!?」
Mayの声にギャラリーのサウンドエフェクトが賑やかに鳴り響いた。
「おっとと、とりあえずナイト君、サラさんのお手伝いをお願いしますですよ!
メイは、賢者センセーを呼んで、キューピッドさんに海賊の迎撃をしてもらうですよ!」
デフォルメされた小さな騎士がMayの掌の上に現れサラの元へ駆けていく。それを追うようにカメラは『氷神』吹雪(p3x004727)へと移り変わる。
「もうっ! せっかくお船に乗ってこっちの世界の海の旅を楽しもうと思ってたのに!」
青い着物の裾を揺らしが吹雪頬を膨らませる。
「こんな風に船を襲う悪い海賊はお仕置きだよっ!」
いつも通りの口調で憤慨したあと、ハタリと我に返り瞬きをする。
「……じゃなかった、海の平和のためにも海賊さんは退治してしまわないといけないわね」
肩に掛かった長い髪を手で払い、甲板の上に視線を流した吹雪。
まずは逃げ遅れてしまった人を助け出すのが最優先だろう。
されど、こちらの吹雪は現実世界のように前に出て力を振るうタイプではない。適材適所を瞬時に判断するのもイレギュラーズとしての場数の多さ故。
「となれば……」
海賊を氷漬にして自身に注意を引きつけるのが最善策。そうすれば救出もしやすくなるに違いない。
何より甲板の上を駆け回るサラの事が気がかりだ。
あんなに小さくて可愛らしい少女に海賊の相手を任せておくわけにはいかないと吹雪は身を乗り出す。
掌に作り出した氷の蕾がふわりと舞い上がり、吹雪の周りに次々と白花を咲かせる。
海賊達が目の前を通り過ぎる白花に気を取られている内に、その足下には銀世界が広がった。
「うわっ!? 何だこれ!」
足下に吹き抜けた冷気は瞬時に海賊共の足を凍り付かせる。
「何やってんだ、てめぇら!」
部下達の不甲斐ない姿に怒りを露わにするウーゴ。
「大丈夫? サラさんと言っていたかしら、あまり無茶をするものではないわよ?」
「強いのねあなた! まるで魔法みたい」
サラが嬉しそうな声を上げた所で、Mayのカメラは『ネコロマンサー』P.P.(p3x004937)へと焦点を合わせた。P.P.はネイコへアイコンタクトを送り甲板の上へ飛び出した。
身軽な身体は一足飛びに、吹雪が凍り付かせた海賊の合間を縫って樽の影に隠れている少年へと至る。
「もう大丈夫よ。よく頑張ったわね」
子供を安心させるように声を掛けたP.P.は自身の手に光る爪に気づいた。
「おっと」
咄嗟に引っ込めた爪に少年は不思議そうな顔で首を傾げる。
「あたし達は悪い奴らを撃退しに来たの。ほら、あそこに騎士様も居るわよ?」
少年を抱え上げたP.P.はストームナイトを指差して微笑んだ。
「騎士様! こっちはおっけーよ!」
声を上げるP.P.と少年を見つけたウーゴが舌打ちをして剣を抜き去る。
この船には『強いヤツ』が居ると判断したのだろう。
「おっと、貴方の相手は私だよ!」
ウーゴの前に走り込んで来たのはネイコだ。リボンのついたライトソードを手にウーゴを牽制する。
「かっ! これはまた。元気な姉ちゃんだなァ! オイ!」
煌めくビビットピンクのフラッシュがネイコの周りを被った。
それはネイコが解き放つ必殺の一撃。ウーゴが怯んだ隙に素早い動きでライトソードの光が弾ける。
「プリンセスストライク――!」
ネイコの高らかな声が甲板の上に響き渡った。
ストームナイトにもその声は届く。
(花丸……いやネイコが共にいるなら安心だな)
「少年の確保はP.P.殿が行なってくれる。ならば私は、彼女らに敵が近づかぬよう、これを打ち払おう」
ストームナイトは自由に動ける海賊がP.P.や少年に向かわぬよう射線に立ちはだかり剣を構えた。
「この剣は荒れ狂う海風の如く。暗雲轟く嵐の如く」
彼女の剣が光を帯びていく。極限まで高められたエネルギーが剣尖に走る。
「――吹き飛ぶがいい! ストームバッシュッ!」
華麗な斬撃が海賊共を吹き飛ばし、その身を海面へと叩きつけた。
●
残った乗客を船内に避難させたイレギュラーズは果敢にもウーゴの懐へ飛び込んだサラに冷や汗をかく。
されど、大丈夫だと言わんばかりにウィンクしてみせたサラはウーゴの顔に飛びついた。
「――ねえ、ちゃんと顔を見なさいよ『ウーゴ』。この私を攻撃できるっていうの?」
サラをつまみ上げたウーゴが少女の顔をまじまじと見つめ目を見開く。
「な!? 嬢ちゃん!? どういう事だ。何故、ここにいる」
思わず手の力を緩めたウーゴの隙をつき、サラは相手の顔面を踏み台に腕の中から飛び出した。
「ふーんだ! 教えてあげないんだから! ウーゴのバーカ! このハゲ!」
飛び降りたサラの横顔は何処か嬉しさを滲ませている。
「さあ、このバカ共をふん縛ってしまいましょ!」
振り向いたサラはにっかりと笑顔を向けた。その瞳には薄らと涙が浮かんでいた。
「雑魚無数にヒーラーとアタッカーボスにゃね、この配置とボクのIQ53万のバトル頭脳(自称)が導き出す戦略は……ヒーラーを釣り出す! いざ、挑発!」
ネコモは船の欄干に飛び乗って、海賊船の甲板で傷の手当てをしている『白光』ビアンカ・サンディオへ言葉を投げる。
「こいよビアンカ! ヒールなんて捨ててかかってこい!」
欄干の上でぴょんぴょんと跳び回るネコモに立ち上がるビアンカ。
「煩いわよ! 小娘!」
ビアンカは静かな怒りをネコモに向ける。
欄干に飛び乗ったビアンカへとネコモの拳が唸りを上げた。
叩きつけられる衝撃にビアンカの身体が甲板の上に転がる。
ネコモがおびき寄せたビアンカをサラの瞳が捉えた。動揺に目が見開かれサラの口から言葉が漏れた。
「……アン?」
小さく呟かれた言葉は届かなかっただろう。
けれど、ビアンカは戦場の中からサラを見つけ出す。
己の『娘』の姿を見つけ出す。
「アルセリア? 何で? 何で貴女が此処にいるの――!?」
可愛くて愛しい我が子は家で待っているはずなのだ。
アルセリアは世界一のプリンセス。とっても可愛い女の子。
ビアンカ譲りのサックス・ブルーの瞳は宝石みたいで、陽光に照らされた髪は金色の絹糸のよう。
はしゃいで笑って怒って。情が深くて優しくて。ちょっぴり強気で。元気でお転婆なお姫様。
バルバロッサとビアンカの『世界一のプリンセス』。
「姐さん落ち着け! そいつは嬢ちゃんじゃねぇ! アルセリアそっくりの偽物だ。サラなんて名前着けやがって。クソ! 嬢ちゃんをそう呼んでいいのは姐さんと兄貴だけだってのに」
ウーゴの言葉にビアンカは引きずり出された怒りを思い出す。
ネコモと挟み撃ちするように那由他の刀が唸りを上げた。
「さあ、皆さんの苦痛を私に味合わせてください。勿論、私に苦痛を与えても良いんですよ?
今どんな感情を抱いているのか。私に教えてくださいな」
那由他の二刀がビアンカの身体を切り裂く。那由他の白いブラウスとビアンカの服が赤く染まった。
「ねぇ痛いですか? さあ、痛みを分かち合いましょう?
斬って、撃って、傷つけあって。一緒に楽しい時間を共に過ごしましょうよ。ねえ?」
「……この体、最初はどうかと思ったけど、すばしっこく動けるってのは気持ちいいわね
リアルのあたしじゃできない戦い方だもの、こっちでは存分に暴れさせてもらうわ!」
P.P.は跳躍し海賊達の元へ走り込む。
「吹雪! 今回もあんたの凍結で船に被害が出ない様に守ってくれるんでしょ!
今回も好き勝手やらせてもらうからね!」
「任せなさいっ!」
P.P.を援護するように吹雪の白き花が戦場を覆い尽くす。
冷気が足下を攫い、尻餅をつく海賊達。
「吹き飛ばした先にお姉さんたちがいると良いよね! お姉さんたちのほうに飛んじゃえー!」
ルゥが放つ衝撃刃が海賊をP.P.が攻撃しやすい場所へ吹き飛ばした。
Mayのスカイフォース・アタックカタパルトから射出されるユニットたち。今回はセーラー服仕様だ。
「我が剣の前に、悪は決して栄えない!」
それを継ぐようにストームナイトが光輝の剣を走らせる。
海賊達の上に次々と降り注ぐ閃光。
其処へ振り落とされるP.P.のねこねこパンチ――!
可愛い見た目に反して鬼の様な攻撃性能を誇る連撃が繰り出された。
――――
――
「色宝って現実だと小さな願いを叶える程度だったけどこっちではそうじゃないのかな?」
ネイコは捕まえた海賊達を見遣り考え込む。
「サラちゃんもお疲れ様。怪我はない? 可愛いお姫様なんだから、怪我したらみんなが心配するよ」
ルゥはサラの元へ駆け寄り、怪我は無いかとじっくり観察する。
「船員さんたち守ってくれたのは船員さんたちも凄く感謝してると思うけど、次からはすぐに駆け付けるから、わたしたちをもっと頼ってね?」
「ありがとう」
ルゥの笑顔にサラもにっこりと微笑む。
P.P.はルゥの隣に居るサラの頭を撫でた。
こんなにも小さい子供なのに、度胸があって海賊相手にも怯まない。寧ろサラの方が威勢がある。
「それにしても……サラ、貴女も勇気あるわね。勇気があるのはいいのだけど、小さな女の子なのだから無理はし過ぎない様に」
「う……、そうね。そうよね。私は小さくて可愛い世界一のプリンセスだものね!」
「ふふ。もし、また何か困った事があってもらいつでも駆けつけてあげるから、覚えておいてね
いい? 無理しすぎたら次は怒るからね?」
「……はぁい」
P.P.がぐりぐりと頭を撫でるのを照れくさそうに手で押さえるサラ。
「サラさん、私あなたみたいな面白……素敵な方のことが大好きなんですよ」
小さなサラに合わせて身を屈ませた那由他が少女の頬をむにむにと掴む。
「これからも仲良くしてくださいね? ふふ、ふふふふ」
三日月の唇を歪ませて不敵に笑う那由他が発する悪寒にぷるぷると震えるサラ。
「船員さんたちもみんな大丈夫? 宝物は大丈夫? ちゃんとある?」
「ああ、色宝は無事だ。あんたたち強いんだな。助かったぜ」
ルゥの問いかけに力こぶを作ってみせる船員。彼はルゥが守ったマストに居た船員だ。
「船は……ごめんなさい。船を傷つけずに戦うのは無理だったから、ちゃんと直して貰ってね?」
ルゥと船員達のやり取りをMayのカメラが映し出す。
「今回のめい☆ちゃんねるは船からのお届けだったのですよ! この海の先には果たしてなにが待ち受けているのでしょうか? ではでは、また次回のめい☆ちゃんねるでお会いしましょう!」
チャオとカメラに手を振ったMayはジングルを流し配信を終える。
「勝ったなら相手からお宝奪うムーヴするニャー、奪おうとしたからには奪われる覚悟もあるよニャ?」
ウーゴ達の船を探索していたネコモが如何にも財宝が入っていそうな大きな宝箱に手を掛ける。
「金目の物を片っ端からゲットニャ!」
蓋を勢い良く開けたネコモの目に飛び込んできたのは財宝の上に座る少女。
かくれんぼで見つかった子供みたいな悪戯な笑みを浮かべたあと、見知らぬネコモにキョトンとした表情を見せる。
「あなた、だぁれ?」
其処には『サラと同じ顔をした少女』が、ネコモを不思議そうな顔で見つめていた。
――ママが悲しそうな顔ばかりしているから。私ね驚かせようとしたの。
かくれんぼして船の上で登場したら喜んでくれるかなって思ったのよ。
だからね。泣かないでママ。
パパが居なくてもアルセリアがずっと傍に居るわ。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
お疲れ様でした。如何だったでしょうか。
R.O.Oの世界に降り立った謎の少女サラのお話でした。
また近いうちにお目見えするかと思います。
それでは、また。
GMコメント
もみじです。これは、一体誰のアバターなんだ!
https://rev1.reversion.jp/character/detail/p3y000137
●目的
海賊の撃退
●ロケーション
パライバトルマリンの海が広がる船の上です。
海賊船がイレギュラーズの乗った船に横付けし、海賊達が乗り込んで来ています。
殆どの乗客は船内にいますが、まだ避難が出来ていない人が数人いるようです。
樽の傍に一人、船内に続くドアの近くに一人、マストの上の乗務員が一人です。
謎の少女サラと共に海賊を撃退しましょう。
●敵
○『緑影』ウーゴ・パストラーナ
ディープグリーンのコートを羽織ったむくつけき大男です。
海賊船の船長です。かなりの強敵です。
この船で輸送されている『お宝』を奪いにきました。
お宝を素直に差し出せば、危害を加えないと言っています。
ですが、『強いヤツと戦う』事は好きです。つまり、戦いは必須です。
カットラスや銃で武装しています。
剣の近接攻撃、銃の遠距離攻撃です。
○『白光』ビアンカ・サンディオ
海賊船の医師(ヒーラー)です。気の強い女性です。
金色の髪を靡かせ、サックス・ブルーの瞳は強い意思を持ちます。
海賊船に残り、負傷した海賊を手当してます。
○海賊×10
カットラスや銃で武装しています。
剣の近接攻撃、銃の遠距離攻撃です。
●『色宝』
海賊が手に入れたい色鮮やかなお宝です。
何でも一つだけ望みが叶うと言われていますが確かめる術はありません。
●NPC
○謎の少女サラ
船の上で出会った少女。
愛らしい瞳はサックス・ブルー。流れる金髪は柔らかいです。
お転婆なお姫様といった感じですが、時折漏れる言葉使いが妙に荒っぽいです。
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
●ROOとは
練達三塔主の『Project:IDEA』の産物で練達ネットワーク上に構築された疑似世界をR.O.O(Rapid Origin Online)と呼びます。
練達の悲願を達成する為、混沌世界の『法則』を研究すべく作られた仮想環境ではありますが、原因不明のエラーにより暴走。情報の自己増殖が発生し、まるでゲームのような世界を構築しています。
R.O.O内の作りは混沌の現実に似ていますが、旅人たちの世界の風景や人物、既に亡き人物が存在する等、世界のルールを部分的に外れた事象も観測されるようです。
練達三塔主より依頼を受けたローレット・イレギュラーズはこの疑似世界で活動するためログイン装置を介してこの世界に介入。
自分専用の『アバター』を作って活動し、閉じ込められた人々の救出や『ゲームクリア』を目指します。
特設ページ:https://rev1.reversion.jp/page/RapidOriginOnline
※重要な備考
R.O.Oシナリオにおいては『死亡』判定が容易に行われます。
『死亡』した場合もキャラクターはロストせず、アバターのステータスシートに『デスカウント』が追加される形となります。
現時点においてアバターではないキャラクターに影響はありません。
Tweet