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シナリオ詳細

行き過ぎた正義が生み出す呪い

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 ネクストにある国の一つ、正義……ジャスティス。
 宗教国家として知られるこの国は強国であり、国民も安心して神に祈りを捧げ、毎日を過ごす。
 そんな国で育った少女、アンナ・シャルロット・ミルフィール。
 名門ミルフィール家の長女として生まれた彼女は、かなり甘やかされて育ったようで、家族や近隣に知れ渡るおてんば娘である。
「さて、今日はどんな悪をくじくとしましょうか」
 担ぐ大きなハンマーでどんな悪人をも、叩き潰すのがアンナのスタイル。
「あらあらうふふ」
「今日も元気ねえ」
 そんな彼女の姿を、親兄弟は微笑ましげに見つめる。
 大好きな家族の視線を背に受けながらも、アンナは今日も行く。


 『Rapid Origin Online』……略称『R.O.O』。
 混沌と似て非なるその仮想空間では、練達の研究者やテストプレイヤー達が現実へと戻れなくなど、深刻なバグが発生している。
 依然として、暴走を続ける『R.O.O』にイレギュラーズはダイブを行い、調査、救出などを行う依頼が続いている。
「今回は調査をお願いいたします」
 『R.O.O』へとダイブしたイレギュラーズは皆アバターの姿をとっているが、『穏やかな心』アクアベル・カルローネ(p3n000045)は現実である混沌とほぼ同じ姿をとって説明を行う。
 一行は現状、混沌で言うところの天義である正義、ジャスティスと呼ばれる地、聖都にいる。
 現実ではまだ復興の最中だが、このネクストでは強国だ。
 あちらこちらで巡回を行う騎士団、礼拝堂へと行き交う司祭や人々。
 そんな姿からも、正義が宗教国家として強固な支配体制であることを窺わせる。
「聖都も気になりますが、今回は気になることがありまして」
 アクアベルが気に掛けていたこと。それは、現実世界と同じ人物の姿をとるネクストの住民のこと。いわば、NPC……ノンプレイヤーキャラクターである。
 ネクストには、混沌に実在する、もしくは実在した人物は往々にして存在する。魔種と化した人物すら、ここではごく普通に生活していることだってある。
「おそらく、私や皆様と同じ姿をしたNPCだって、探せば存在するはずです」
 例えば、アンナ・シャルロット・ミルフィール(p3p001701)の姿をした人物をアクアベルは確認している。
 この人物は現在、聖都を出て街道をしばらく行ったところにあるミア村と呼ばれる地へと馬車で向かっているらしい。
 なんでも、この村の廃屋にモンスターが現れたとのことで、アンナはその討伐へと向かったらしい。
「ただ、敵の力を推し量るに、相当な強敵であると思われます」
 廃屋内には、人型程度にまで巨大化した人形が住み着いているのだという。
 数は3体。金髪の少女を象った姿をしたそれらには強力な呪いが込められているようだ。
 浮遊することも可能であり、呪いの力を振りまいて攻撃を仕掛けてくるらしい。
「R.O.Oに現れる敵の強さはかなりのものだと聞いています」
 その強さは、デスペナルティが往々にして起きるとされる程。油断すれば、いや、油断せずとも倒されてしまう可能性は小さくない。
 できる限り万全を期して、討伐に当たりたい。また、できるなら現地で合流するアンナも生き残るよう立ち回らせてあげたい。
「それでは、モンスターの討伐と、アンナさんとの接触。併せてよろしくお願いしますね」
 説明を終えたアクアベルは丁寧に頭を下げ、一行の為に予め手配した馬車を呼び寄せるのだった。


 聖都から馬車で30分ほどにあるミア村は中央に小さくとも立派な教会が建てられ、それを中心として住居や田園地帯が広がる。
 農業に精を出す住民達は、時にさほど遠くない聖都へと買い物に出ることもある。少女が可愛らしい人形などを好んで抱く姿を見るのは珍しくない。
 村の中央に近い場所にある廃屋は平屋だったが、そこに不気味な人形が住み着いたのはここ数日のこと。
 まだ、聖騎士がこの近辺にやってきていないのは、現状は被害が出ておらず、幽霊屋敷のようなものだと判断されているからだろう。
 ただ、内部から漏れ出す異様な空気は、ミア村の住民達の不安を日増しに強めていく。
 そんな話を聞きつけたのがミルフィール家令嬢、アンナ・シャルロット・ミルフィールである。
「呪いの人形……わたくしの正義のハンマーで呪いごと断罪して差し上げましょう」
 意気揚々とハンマーを手にして、件の廃屋の前に立つアンナ。
 そこへ、イレギュラーズのアバターを乗せた馬車がやってきて、彼女へと声をかけるのである。

GMコメント

 イレギュラーズの皆様こんにちは。GMのなちゅいです。
 『Rapid Origin Online』のシナリオをお届けします。
 仮想世界に自分の姿をしたNPCがいたなら……?
 出会った場合どうするか考えたいところではありますが、討伐対象も強敵ですのでくれぐれもお気をつけくださいませ。

●目的
 アンナとの接触、共闘。
 並びに、廃屋に現れたモンスター討伐。

●敵
○呪いの人形×3体
 この家に住んでいた者か、廃屋となった後にやってきた者か不明ですが、誰かを呪う為にと作られた人形がモンスター化してしまったようです。
 人間大にまで大きくなった人形はしっかりと床を歩き、時に浮遊して周囲へと呪いの力を振りまき、念力を使った攻撃を行うことが分かっています。

●NPC
○アンナ・シャルロット・ミルフィール
 ネクストにおける、アンナ・シャルロット・ミルフィール(p3p001701)さんとおぼしき姿です。
 黒いドレスに腰まで伸びた長い髪を飾る黒いリボンが特徴的。
 正義に存在する貴族の名門の長女であり、正義の為にハンマーを振るうおてんば娘です。戦いにおいても、そのハンマーで果敢に敵へと立ち向かいます。

●状況
 正義内某所の村にある廃屋にモンスターが住み着き、いつ外に出て村に被害を及ぼすか分からず、村の住民が怯えております。
 廃屋は3部屋が横に並んだような構造で、壁は取り払われており、横に長い部屋のようにもなっています。
 また、現地にて、アンナさんと合流して討伐に当たります。
 NPCも皆様と同様の判定で死に至ることがありますので、予めご了承くださいませ。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●ROOとは
 練達三塔主の『Project:IDEA』の産物で練達ネットワーク上に構築された疑似世界をR.O.O(Rapid Origin Online)と呼びます。
 練達の悲願を達成する為、混沌世界の『法則』を研究すべく作られた仮想環境ではありますが、原因不明のエラーにより暴走。情報の自己増殖が発生し、まるでゲームのような世界を構築しています。
 R.O.O内の作りは混沌の現実に似ていますが、旅人たちの世界の風景や人物、既に亡き人物が存在する等、世界のルールを部分的に外れた事象も観測されるようです。
 練達三塔主より依頼を受けたローレット・イレギュラーズはこの疑似世界で活動するためログイン装置を介してこの世界に介入。
 自分専用の『アバター』を作って活動し、閉じ込められた人々の救出や『ゲームクリア』を目指します。
特設ページ:https://rev1.reversion.jp/page/RapidOriginOnline

※重要な備考
 R.O.Oシナリオにおいては『死亡』判定が容易に行われます。
『死亡』した場合もキャラクターはロストせず、アバターのステータスシートに『デスカウント』が追加される形となります。
 現時点においてアバターではないキャラクターに影響はありません。

 それでは、よろしくお願いいたします。

  • 行き過ぎた正義が生み出す呪い完了
  • GM名なちゅい
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年05月31日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ハルツフィーネ(p3x001701)
闘神
プリーモ(p3x002714)
カンタータ
じょーじ(p3x005181)
めっちゃだんでぃ
月蓮(p3x005208)
夜空の華
お龍(p3x007422)
だぁくひーろー
イデア(p3x008017)
人形遣い
ベネディクト・ファブニル(p3x008160)
災禍の竜血
ルイズ・キャロライン(p3x008702)
必ず、絶対にその首を

リプレイ


 ここは混沌に似て非なるネクスト。
 仮想世界へと降り立った銀髪ポニーテールの『夜空の華』月蓮(p3x005208)がやってきた正義国内のミア村を見回して。
「初めての世界です……こほん、世界ね」
 まだロールプレイに慣れていないのか、少し背後の地が出そうになっていた。
「ゲーム感覚といえど、やることはきっちりしませんと」
 黒髪の聖職者『カンタータ』プリーモ(p3x002714)はプレイスタイルにまだ思うところがありながらも、指摘していたのは自分……背後と同じ姿をしたNPCのこと。
「何を基準に算出された未来像か知りませんが、まぁ、一つ違えば赤の他人だと思っていますがね、私は」
「……モデル本人が居れば、どの程度の差異があるかでR.O.Oの異変を探るとっかかりになるかもしれないが」
 一方で、がっしりとした巨漢でおひげのダンディ、『めっちゃだんでぃ』じょーじ(p3x005181)も少し唸り、モデルとなった本人がいれば、その差異を確認したことで『R.O.O』の異変を探るとっかかりになるかもと考えて。
「まあ、居ない者は仕方ない!」
 じょーじは同行者のリアルを探りはしないと、強く意思表示してみせた。
 さて、一行が立つのは正義という国。見るからに天義と見紛う世界だが。
「わたくしの正義のハンマーで呪いごと断罪して差し上げましょう」
 意気揚々とハンマーを手にするアンナ・シャルロット・ミルフィール。
 その姿に、大きなテディベアを抱えた小柄な少女、『魔法人形使い』ハルツフィーネ(p3x001701)は頭を抱えてしまって。
(両親が存命なのは予想していましたが、性格が……)
 アンナはハルツフィーネの背後だが、目の前の姿は当人をやや幼くして行動力がついたような印象である。
「アンナさんとっても素敵だけど、危なかっしいわ。敵も強いみたいだし、協力して皆で戦いましょう!」
「単身で乗り込むあたり、正義感は強そうだ」
 向こう見ずな少女の身を案じる月蓮。協力体制をとりたいところだが、子供扱いは気を害するかもしれないと、じょーじが仲間達へと注意を促す。

「アンナさん、とっても素敵なお洋服にハンマーね♪」
 いざ、問題の廃屋に突入しようとするアンナに、月蓮が声をかける。
「はい、ありがとうございます」
「私達は、特異運命座標です」
 足を止めた彼女にハルツフィーネが自分達の身元について話すと、アンナは目を輝かせる。
「すごい! 直にお目にかかれるなんて」
(……私の姿で、そういう言動をしてほしくないのです、が)
 そんなアンナの様子に、ハルツフィーネが一層表情をこわばらせてしまう。
「勇猛果敢なのは結構なことですが……身の程を弁えない勇気は……」
 小柄で金髪色白な聖職者、『かんがえちゅう』ルイズ・キャロライン(p3x008702)は思わずアンナへと説教を仕掛け、言葉を止める。
 今、言おうとしたことはまさしく、自分達のことかもしれないとルイズは考えたのだ。
「まだ被害は出ていない様子だが、放置しておくには忍びない。共に戦ってくれないか?」
 そこで、興味深そうにメンバー達を見回すアンナへ、一見すれば人間だが、体に竜の血と魂を体に宿した『白竜』ベネディクト・ファブニル(p3x008160)が問いかける。
 話を聞く限り、今回の相手は強敵だ。アンナにも不満はあるだろうが、1人よりは複数の方がいいとベネディクトは共闘を提案する。
「どうか、お願い出来ないだろうか?」
「一緒に戦えばもっと華麗なセッション出来そうな気がするの。良ければ、ご一緒如何かしら?」
 ロールプレイを手探りで行い、思いっきり行っても大丈夫と考えた月蓮もまた一緒になってアンナへと問いかけた。
 あれこれと説得の言葉を考えていたじょーじだったが、仲間達の交渉能力に舌を巻いてしまうのだった。


 さて、ミア村の中央近くに、横に長い廃屋が放棄されたままとなっていた。
「呪いとは穏やかじゃねえな」
「……これでもこの世界では人形遣いとして動いておりますので、人形の悪事は見過ごせませんね」
 男らしく勇ましい黒い長髪の怪姫『だぁくひーろー』お龍(p3x007422)や凛とした態度のメイド『人形遣い』イデア(p3x008017)が言う様に、放棄されたその建物内には、呪いの人形が蠢いている。
「呪いの人形か……まだ被害は出ていない様だが、一体何が目的で……」
 人形が出現した原因について推察するベネディクト。現場を捜索すればわかりかもしれないが、ともあれその人形をどうにかする必要がある。
 ベネディクトは達士スキルによって捜索の力を強化し、内部の状況……人形の位置を割り出す。どうやら、3体の敵は入り口のある中央部に固まっているようだ。
「この場所は彼らのテリトリーだ、油断なく動くとしよう」
「早速、殴り倒しましょう」
 それをベネディクトが仲間達へと伝えると、居ても立ってもいられぬアンナがメンバーへと突入を促す。
「村の皆様の為にも対峙すると致しましょう」
 イデアもまた意気込みを語ったところで、一行は廃屋へと突入していく。

 内部は壁が破壊されており、家屋内全体が見渡せるようになっていた。
 その家の中央、元々は今だったと思われる場所に、3体の人形が立っていて。
『かノ者に呪イを……』
『『呪イヲ、呪いヲ……』』
 手入れもされず、傷みも感じさせるそれらの呪いの人形達は不気味な声でそう繰り返し、全身からどす黒い気を発していた。
「敵は3体。こちらも手分けをして当たらねば」
「呪いの人形2体を抑えてるうちに1体ずつ総攻撃……ていうか、でけえなこの人形」
 イデアの提案に言葉を返すお龍が驚くのも無理はない。それらの人形は一般成人人間種と同等程度の身長があったからだ。
 加えて、アンナは守ってあげたいところ。
(我々のようにリポップしない可能性も考えねばな) 
 『R.O.O』の住民であるアンナが仮に死亡した場合、アバターとして参加するメンバー達のように復活しない可能性もあるとじょーじは考える。
 それだけに、人形討伐中に彼女が倒れぬ様にじょーじは気を付けたいとのこと。
「死んだらしまいとなると、替えがきく俺たちが守った方がいいな」
 それに同意していざとなったら庇うスタンスのお龍も、とにかく最善と尽くすと返す。
「プレイスタンス、と言われてもピンときませんが」
 プリーモはヒーラーの需要はどこにでもあるだろうと、可能な限りアンナを含めて癒やしに当たるようだ。
「とにかく、私達が集中攻撃をしている敵を一緒に叩いて下さい。そのハンマーが飾りでないことを祈ります」
 そして、ハルツフィーネは自らの分身とも言えるアンナへと忠告していて。
「危なくなったら、屋敷の外に出てください」
「はい、わかりました」
 笑顔を見せてハンマーを振り上げるアンナに続き、ハルツフィーネは抱いていたテディベアを敵へと向かわせていくのである。


『『のロい、呪イ、ノろい――』』
 口々に呟く人形どもは、まるで壊れたテープレコーダーのように呪いと繰り返し、攻撃を仕掛けてくる。
 やはりと言うべきか振りまくのは呪いの力。それをどす黒い塊のようにしてこちらへと飛ばしてきた。
「さあ、君の相手は俺だ──勝負といこう」
 とにかく、他の仲間には手を出させぬよう、ベネディクトはそのうちの1体を、他2体から引き離すべくブロックに当たる。
 別の1体はイデアの担当だ。
 糸を操る彼女は結界を張り巡らせてその人形だけを絡めとろうとする。
「倒す必要はありませんので、時間を稼がせていただきます」
 糸を廃屋の中へと張り巡らせてイデアは相手の動きを邪魔しつつ、生き残ることを前提として人形が別の場所へと向かわぬ様動きを制していた。

 その2人がそれぞれの手段で人形を抑える間、残る1体を他メンバーが集中して撃破を目指す。
 最初に動いたルイズは攻撃役の一員として、入り口傍に残っていた人形を狙う。
「小手調べだの牽制だの、面倒な事は申しません」
 それまでは無害な人物といった印象であったのだが、水面下の悪意を忍ばせ、カタナを握ったルイズは敵とみなした不運な1体の首を狙う。
 その一閃はルイズも確かな手応えを感じたはず。
 ただ、呪いの人形も一撃で全ての体力を奪われてしまう程軟な相手ではなく、ざっくりと首に斬撃痕を残しつつ念力で地面に落ちている瓦礫をぶつけてくる。
 仕損じたと察したルイズはさらなる追撃のチャンスで仕留めるべく、瞳を輝かせていた。
 その間も、他メンバーがその人形に攻撃を行っていて。
 敵の範囲攻撃を警戒するハルツフィーネは射程ギリギリのところに立ち、仲間と固まらぬよう意識しながらも、操るテディベアの手から伸ばした魔王の爪で人形に傷をつけていく。
「やあああっ!」
 次いで、アンナも勢いでハンマーを叩き付ける。協力体制をとってくれる彼女の一撃も侮れず、人形は僅かに身を竦めていた。
(私はまだまだレベルが足りないから、正面から行くのは厳しいと思うの)
 抑えてくれる仲間達の存在に感謝しながらも、月蓮はロック・スタァを振り回す。
「いっくわよぉ! この瞬間が最高なのよっ!!」
 ライブの如く激しく華麗に燃える様なビートと共に炎を纏った一撃を叩き込んでいく。
 その一撃もまた強烈で、人形は一時身動きが取れなくなっていた。
「速やかに撃破したいところだな」
 じょーじはタイマンで耐えている仲間の為、皆で攻撃する1体を全力で叩こうとする。
 数はこちらの方が有利。しかしながら、この世界を自分達の常識ではかることはできないと、じょーじは仲間を含めたメンバーの立ち位置にも気を配る。
「油断することなく、気を引き締めて人形討伐と行こうか!」
 彼は銃を使った狙撃で敵の体力を素早く奪う。同時に、回復も気がけ、主に抑えとなる2人を最優先に、指を鳴らすことで癒しをもたらしていた。
 プリーモもメインヒーラーとして抑えの回復をと、光を輝かせて癒しに当たる。同時に、アンナの状態にも注意を払って。
(倒れられても寝覚めが悪いですし。後手に回って回復が追い付かなくなるのも嫌ですし、早めに動くことは悪いことではないでしょう)
 プリーモとて、ゲームといえども死にたくはない。ヒーラーが倒れては元も子もないと、プリーモは敵から狙われぬ様にできる限り身を引いていた。
「容赦なくいきたいところだがな……」
 お龍は仲間達が交戦する間、自分の能力「怪奇の姫」で意思疎通が図れないかと試していた。
「おい、お前等よ、一体何を呪っている? 俺の声は聞こえるか?」
『正義という名を盾にする連中に呪いを……』
 聞こえてきたそんな言葉。呪いの人形は何者かに対する恨みつらみによって作られた存在なのは間違いなさそうだ。
『呪いを、正義を笠に着た愚か者に呪いを……』
 続ければ、依頼解決の糸口となるかもしれないが、欲しい情報を得ようとすれば、意思疎通を行っていると抑えとなる仲間達やアンナの身が危うい。
「おら!! とっとと召された方がいいぞ!!」
 やむなく、お龍は攻撃に切り替え、仲間の狙う対象となる人形へと至近から攻撃を撃ち込んでいくのである。


 廃屋の中で起こる激しい戦い。
 イレギュラーズのアバターは皆、襲い来る呪いの人形の撃破を目指す。
 呪いと念力を行使する敵は戦場となる廃屋内のどこにいても危険であり、隙を見せれば意識を奪われかねず、メンバー達に緊張感が走る。
 そんな中で、ルイズは敵の討伐に異様な執着を見せて。
「二の太刀まで見せたからには必ず殺します……必ず、必ずです、絶対に殺します」
 本来なら、初手で首を切り裂くルイズの一太刀。
 ただ、それで仕留められず、乙女の恥じらいを見せるルイズは顔赤くしながらも敵に襲い掛かる。
「怖ければ目を瞑りなさい……そうすれば、痛みすらなく終わりますよ」
 次の瞬間、ルイズの一太刀は見事に相手の首を切り裂く。人形の首も胴体も地面を転がり、完全に動かなくなってしまった。
 次なる敵をと、糸を張り巡らすイデアが抑える人形へと皆狙いを変えるのだが、怪しげに光る人形の全身から呪いが噴き出して。
「て、アンナさん!? そこはあぶなぁぁぁ!??」 
 アンナのみの危険を感じた月蓮は人形の横っ面を蹴り飛ばす。
 同じタイミング、ハルツフィーネも身構えてアンナを庇いに当たっていた。
(……本人は正直どうでも良いですが)
 ただ、例え作り物の世界であったとしても、この世界では自分とは逆で、アンナが家族を置いていくことになるのがハルツフィーネには許せなかったのだ。
『ノろい、のろイ……!』
 同じ時、呪いの人形は空中で反転しており、月蓮に強力な念を込めた一撃で反撃を繰り出す。
「これは……、やってしまったわね……」
 明るく振舞っていた月蓮だったが、思いがけぬ致命打を浴びて地面へと伏し、そのまま姿を消してしまった。
 お龍もまたアンナを庇おうと身構えていたが、一歩出遅れた形となる。
 しかしながら、改めてお龍はデスカウントが普通にありうると実感して。
「防御!? そんなことしてられん、いや余裕がねえ!」
 手早く倒さねば、事故が起こる可能性は高まると考える。
 デスカウントを……死を恐れず、お龍は飛び込む。
「死も戦略のうちだ。喜んで使うぜ」
 苛烈にハンマーを振るうアンナを気に掛けるお龍は悪を討つべく、若干の恥じらいを見せながらも決死の一打を叩き込む。 
 隙ができれば、ハルツフィーネが魔法式を展開して。
「呪いの人形だけあって、愛想はないですね。このキュートなクマさんを、見習うと良いのです」
 すかさず、ハルツフィーネはクマさんからビームを発すると、撃ち抜かれた人形は体に風穴を穿たれ、崩れ落ちていった。
 ただ、そちらに皆が注目している瞬間を残る呪い人形は見逃さず、呪いを念力で弾き飛ばす。
「まさか、そんな……」
 安全な遠距離にと位置取っていたはずのプリーモだったが、虚を突かれた一撃に目を見開きながらも姿を消してしまう。
 ルイズはそいつ目掛け、自らの体力を犠牲にしながらも苛烈な斬撃を見舞っていく。
「ええ、ええ、お次はあなたです。先に去って行った仲間が恋しいでしょう? すぐに追いつきますよ」
 ルイズもまた防御を捨てて、前のめりに敵へと切りかかる。
 この場はまだ、ベネディクトが抑えを続けている状況。
 ジョージはベネディクトの体力の減少を見てダンディな仕草で指を鳴らすと、廃屋内に響いたその音が癒しをもたらしていた。
 結局、ベネディクトは最後まで抑えを続ける形だが、敵は不意を突いてこちらの抑えをすり抜け、強力な呪いと念力を見舞ってくる。
 早期に敵を撃破すべきと、ベネディクトは合間を見て激しい連撃を叩き込んでいく。
「ここまで我慢した鬱憤をはらさせていただきましょう」
 倒した1体を抑えていたイデアも攻撃に転じており、前方へと黒騎士の人形を呼び出して応戦する。
 ――目には目を、人形には人形を。
 主のいない人形などに負ける道理はないと、イデアは語気を荒くして。
「この舞台の幕を下ろしましょう」
 ここぞ、人形遣いの本領発揮。イデアは糸を巧みに黒騎士を操る。
 この場だけなら、人形同士の戦いはイデアに分があり、黒騎士は見事に眼前に人形を討ち取って見せたのだった。


 全て倒れた人形からは、もう呪いは感じられなくなっていた。
「それにしても、誰かを呪うために人形を作る、そんな人もいるのですね」
 どうせ人形を作るのであれば、誰かを笑顔にする人形であってほしいとイデアは願う。
 もちろん、人形であるイデア自身もそうありたいと考えていた。
 残ったイレギュラーズのアバター達は傷を手当てしつつ、家屋内の探索を行う。
「この家、随分放置されていたようだけれど……」
 ベネディクトは自身での捜索に加え、情報収集特化型の電子妖精Fevnirにも周囲を探索させる。
 壁が崩れ、家財道具もほとんど残っていない家の中には人が住んでいた痕跡すら見つけるのが難しい状況ではあったが、外壁の内側に何かかきむしった跡が確認できた。
「呪い……か」
 以前は、思想的弾圧や抑圧等様々な問題を有していた正義という国。打ち捨てられたこの家で過去、一体何があったのか……。
「にしても、人も敵も、どうにも……慣れん」
 お龍の背後は祖国から出て、練達などの文化に触れる中で『R.O.O』というこの新天地へとやってきたのだが。
「しすてむ? ……ってのもよくわからんな。なんで、俺たちは平気でえぬぴーしーは死んだら終わりなんだ?」
 ゲームというものはそういうものなのかと独り言を呟くお龍だが、まだまだ理解の難しい事柄が多いことを実感する。
 そして、ハルツフィーネはというと、理解できるからこそ扱いに困る存在に手を焼いていて。
「無事、断罪完了です」
 ドヤ顔のアンナに、ハルツフィーネは溜息をついて。
「貴女一人では勝てなかったでしょう。もう少し落ち着いては如何ですか?」
 そんな忠告にも、次なる討伐対象をと意気込むアンナの姿に、やはり素直に聞き入れてくれなかったかと、ハルツフィーネはまたも頭を抱えてしまうのだった。

成否

成功

MVP

ルイズ・キャロライン(p3x008702)
必ず、絶対にその首を

状態異常

なし

あとがき

 リプレイ、公開です。
 MVPはとにかく相手を一撃で倒すという強い気概を持った貴方へとお送りしたいと思います。
 今回はご参加、ありがとうございました。

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