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シナリオ詳細

紳士の靴下は虚しくはためく

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●遡る事十日前――
「くそっ!またハメられた!?」
 とある幻想の街外れ、一人の貴族の男性が悲痛な叫びを上げ、とあるものを地面に叩きつける。
『産地直送!究極の幸運袋!』と記載されたその紙袋から出たそれは、茶色く汚れた足袋のような布きれ。

 ――おっさんの靴下。そう、あのおっさんの靴下である。
「せめて、せめて泥でも土でも出てくれたほうがましだったのに……!そうすれば次でワンチャン宝石も、乙女のぱんつも、黄金のセミのぬけがらも――」
 そう叫ぶと男性は頭を抑え、膝から崩れ落ちる。彼の空っぽの財布から400ゴールドほどの硬貨が転げ落ちたが、すぐに拾う気力が起きないほどの衝撃だったのであろう。

「そもそもなんで泥よりも価値のない靴下があるんだよ……!」
 ――そう、おっさんの靴下は泥よりも価値がないのである。
『買い取ってくれないほどおぞましい』わけではないが、売るとすれば『泥すら霞む程の低価格』でしか買い取られない。
 それがおっさんの靴下である。

「……くそっ!覚えていろ、これを作ったやつを……ギャフンと言わせてやる……!」
 苛立ちを抑えきれない叫び。男は硬貨と靴下を拾い上げると、涙を拭い幻想の街並みへと消えていく。
 ――古代金貨の1枚や2枚でも、空から落ちてこないかなどと淡い考えを抱きながら。

●とんだとばっちり

「やぁ、皆。ラサの商人達が帰ってからしばらくたつけど、あれから調子はどうだい?」
 あれから数週間後、『黒猫の』ショウ(p3n000005)がウイスキーの入ったグラスを持ちながら語り掛ける。
「とある貴族からの依頼が入ったのさ。先月ラサから来た商人達が開いた闇市があっただろう?あれに彼はまるで魂を奪われてしまったかのように憑りつかれてしまってね。」
 ああ……あれか、まだ回したりない、恐ろしい魔力を持っていた。そんな感想で賑わうイレギュラーズを眺めながら、一口酒を口に含んだショウが続ける。
「ひどい八つ当たりだよね。彼はその事で『とある人間にギャフンと言わせるように』と依頼したのさ」
その言葉に場が静まり返る。ローレットは依頼金さえ出れば大抵の勢力――それこそ、混沌に破滅をもたらす『魔種』やその手先などを除いて――に手を貸す。こういった依頼も少なくなかった。

「誰にどうすればいいんだ?ラサの商人を暗殺するのか?」
 イレギュラーズの誰かが訪ねると、ショウは首を横に振る
「いいや、俺もそう聞いたが違うみたいだ。むしろ商人に関してはこの世界に娯楽をもたらした天使とまで言っていたね。聞いたところによるとターゲットはとある靴下職人、そしてそれを束ねる工場長……そいつらを『生かしつつ二度と靴下を作れないくらい懲らしめてやれ』って依頼さ」

 その言葉に、ローレットにいる何人かが予想よりは酷い依頼で無いことに胸を撫で下ろしつつも、何人かのイレギュラーズがピクリと反応する。
 靴下職人。闇市。これが意味するものは――その答えにたどり着いた彼らが浮かべたのは苦笑いか、理不尽な恨みか。
「その職人達は蒸気機関を用いた大量生産によって下手な衣服よりもずっと安く庶民向けの下着を生産している。とりわけ人気なのは、たったの100ゴールドで買える『おっさん印の靴下』さ。どうも売れ残った一部の商品がラサの商人達の手に渡り、闇市の『商品』として転売されていたようだね。それをつかんだ貴族が恨んで…ってわけ」

とんだとばっちりだよね。それに類似品もそれこそ沢山あるから、一人二人職人を殺したところで意味はないのにね。そうショウはにやにやと笑いながら、集まった8人のイレギュラーズ達に情報をまとめた紙を渡す。

「話がそれてしまったね。それじゃあ詳細に移ろうか」

GMコメント

はじめまして。塩魔法使いGMと申します。
よろしくおねがいします。
普段は舌打ちをする「お邪魔アイテム」に心を寄せてみたりしましょう。

【依頼内容】
「靴下職人にギャフンと言わせる」事。具体的には
・『靴下職人』とそれを束ねる『工場長』の退治(憂さ晴らし)
・『おっさん印の靴下工場』の破壊(物的証拠)
以上の2点を成功条件とします。

「これも依頼だ、悪いな」と真面目に臨むのも「お前の靴下のせいで!」と八つ当たり気味にぶん殴るのも「建物焼けるならなんでもいいや」な人もご自由にどうぞ
ただ、依頼内容が「ギャフンと言わせる」為に命を奪うことはできません。職人達は頑丈なため不殺スキルである必要はありませんが、そうであるほうが好ましいです。
なお、この依頼の結果が次の闇市でのおっさんの靴下率に直接関わることは無いです。

【工場】
メフ・メフィートの外れにある中規模の工場。
大量生産をしているというだけあり、蒸気機関を使った『靴下生産機械』が24時間動いています。
ちょっと蒸気が曇って視界が悪いです。あとうるさいです。近所迷惑。
どう壊すかはお任せします。普通に工場に火を放ち燃やしてもいいですし、機械にちょいと仕込めば派手に爆発四散するでしょう。

【依頼人】
とある悪徳貴族。イレギュラーズ達と直接接触することはない。
何かと中毒になりやすく、先日開かれていた闇市の『相当なお得意様』になっていた模様。
出て欲しくない時に出てしまったおっさん靴下を必要以上に憎しんでいる。

【エネミー】
『靴下職人』×30程
幻想庶民の懐を守るという熱い意思に満ちた職人たちです。めっちゃいます。鉄拳で通常攻撃してきます。
彼らが1人でも無事なら仕事の邪魔をすることはできないでしょう。

『工場長』×1
『おっさん印の靴下』の工場長です。
なぜか体力と、遠距離からの神秘に長けている不思議な男です。イレギュラーズと同等の力を持っている可能性があります。
庶民に安価で丈夫な品をという強い志を持っています。現在、やたらと値が高騰しているぱんつ業界に目をつけ『おっさん印のぱんつ』を試作中。

【情報精度】
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

【注意!】
 この依頼は『悪属性依頼』です。
 成功した場合、『幻想』における名声がマイナスされます。
 又、失敗した場合の名声値の減少は0となります。

【アドリブの可否について】
依頼中、皆様の活躍を描写する為に台詞や行動などにアドリブを用いる事があります。
差し支えなければ「アドリブ歓迎orアドリブ拒否」の文言をプレイングやステータスシートに記載していただければ幸いです。
なければそこそこアドリブします

それでは、皆様の素敵なプレイングをお待ちしております。

  • 紳士の靴下は虚しくはためく完了
  • GM名塩魔法使い
  • 種別通常(悪)
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年06月19日 20時45分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ドラマ・ゲツク(p3p000172)
蒼剣の弟子
リノ・ガルシア(p3p000675)
宵歩
エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)
愛娘
サングィス・スペルヴィア(p3p001291)
宿主
エリザベス=桔梗院=ラブクラフト(p3p001774)
特異運命座標
極楽院 ことほぎ(p3p002087)
悪しき魔女
エイヴ・ベル・エレミア(p3p003451)
ShadowRecon
折紙 ココロ(p3p005507)
運命迷子

リプレイ

●建前
 イレギュラーズ。破滅の未来を回避する為に集められた戦士達。
 彼らは様々な依頼を通して可能性を蒐集し、己がパンドラを輝かせる。
 そう、この依頼もその一貫。だからやらねばならぬのです。それに依頼主がいる以上誰かが結局やる事になる。仕方のない事なのです。
 ――ええ、だからこれは私怨ではないのです、絶対なのです。

●許すまじ、おっさんの靴下
 幻想の王都、メフ・メフィートのとある昼下がり。今日もやかましく蒸気を吹き上げる建物が一つあった。
『おっさん印の靴下工場』。臭そうな名前とは裏腹に大量生産による安価で良質な靴下を提供する新興企業だ。
 その工場に、今、異変が起きようとしている――

「待てごらぁ!」「あっちに行ったぞ!」「逃すか! 下着泥棒!」
 靴下とぱんつを咥えて逃げるネズミが2匹と、おっさん達。夜の業務が終わり、引き継ぎをしている数分の間にまんまと盗まれ、大慌てで追いかける。
 最も、それは普通のネズミではないのだけど。と、喧騒の隙に忍び込んだ『ShadowRecon』エイヴ・ベル・エレミア(p3p003451)は眠そうにシフト表を眺めていた。
「やはり、2交代制か」
 ネズミの主、『瓦礫の魔女』極楽院 ことほぎ(p3p002087)がファミリアーによって事前に仕入れた情報に間違いが無いことを確認すると、シフト表を怪しまれないように壁にかけなおし、敵に勘付かれぬよう、蒸気機関を暴走させ、強度の衝撃が加わると誘爆するよう、手早く全ての機械に細工をしかけた後、窓から抜け出す。
「気持ちはわからない事も無いが、この様な依頼までしてくるとは」……そんな事を呟きながら。

「この工場で間違いないみたいだね」
 数分後、同じくまんまと逃げ出したネズミ達が咥えていた靴下を眺めながら、『運命迷子』折紙 ココロ(p3p005507)が微笑む。
 その靴下は『おっさん印の靴下』。安価さと、丈夫さと、そしてダサいロゴマークが特徴な幻想の人気商品。
「まさかほんとにぱんつまで売り出してくるとはね……」
 同じく盗み出した『おっさん印のぱんつ』――やはり同じダサいロゴマークが付いている――を見つめ、『撃墜王(エース)』リノ・ガルシア(p3p000675)が腹立たしそうな声をあげる。
 彼女が怒るのも無理はない、情報屋から仕入れた情報によれば『おっさん印のぱんつ』はまだ試作品の段階だったはずなのだ。それが盗品でも流れたのか『海洋』からの流通を通して闇市に出回っていたというのだから、それを活用するイレギュラーズ達にとっては憎さ倍増というものである。私怨ではない。
「やはりここの商品じゃぁないですか! ここの商品管理はどうなっているのですか!?」
 そう『叡智の捕食者』ドラマ・ゲツク(p3p000172)が憤慨を表しても何らおかしい事ではないのだ。外見が幼い色白な少女でも齢100歳。若干商業的に踏み込んだ視点での文句を言っているにすぎないのだ、多分。
「目当てのアーティファクトじゃなくても、『乙女のぱんつ』や『宝石』だったら収支プラスだから。いや、贅沢は言わない。せめてハイクオリティ複数のプラマイゼロでワンチャン……!」
 直接は言わずとも、「せめて貴様がいなければ」と言いたげなオーラが覆面の下から浮き出ている『特異運命座標』エリザベス=桔梗院=ラブクラフト(p3p001774)は逆に私怨の空気が漂っているが、ある意味当然の怒りであろう。
 そのエリザベスに続き「そう! これは天誅ってヤツだ!」と拳を突き上げることほぎに一人の少女が相槌をうつ。
「ええ、よい依頼ね、死なない程度に痛めつけてあげるわ」
 その少女に対し、『私怨が多く含まれているな』と呆れながらも呟いたのは、彼女の本体たる『宿主』サングィス・スペルヴィア(p3p001291)の中にいる液体金属であろう。

 下着を前に、皆が本音と建前で揺れ動く中、工場から響く異音が大きくなり、またおっさん達の声がまた響く。
「そろそろ時間だ、皆の怒りを靴下工場にぶつけるとしよう」 
『神話殺しの御伽噺』エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)が下着を髪に取り、淡々と魔術で焼き払う。それを合図に皆が頷き、工場内部へと乗り込んだ。

●靴下工場を爆破せよ
「なんだ!? なんだ!? 機械が全部ぶっ壊れたぞ!?」「あのネズミ野郎! 寝ぼけて機関部でも齧ったか!?」
 エイヴによって施された細工が効果を表し、動力源である蒸気が甲高い音とともに機械の所々から溢れ出る。当然生産施設は機能停止、仕事どころではないとおよそ20人ほどのおっさん達が修理道具を片手に奮戦していた。
 苦戦する事数分、ようやく修理の糸口が掴めようとした頃。サングィスが行動に出る。
 激しい打撃音、工場の端から金属が凹む音に修理に取り掛かっていたおっさん達も驚き、「なんだ、さっきのネズミか!?」とわらわらと集まっていく。
 機械の凹みと異音、それらを調べ、職人達もそろそろ訝しむ。その隙に、ひっそりとイレギュラーズ達は背後へと周り――
「『夜勤組』に声をかけるべきか……?」「いいや、やめておこう。下手に起こしたらおやっさんのアレが飛んでくるからな――」

「ああ、そうだな、起こさない方がいい……その方が手間が省ける。」
「ッ!?」
 次の瞬間、激しく放たれる衝撃。ふきとばされるおっさん達をかばいながら、一人のおっさんが驚愕の目で、侵入者――炎の様に髪を揺らめかせていた一人の少女を見つめる。
「な、なんだ、盗賊か?!」
 その少女、エクスマリアは首を振り……。
「盗賊? 違うな、仕事に来た、恨みはないが……ああ、恨みはないぞ?」
 丸腰で向かって来たおっさんを、無表情のままリズミカルに魔弾の弾幕で蹴散らしながら、次第に金色の髪を波打たせていく。
「ないのだが、うむ。これは思った以上に爽快だな」
 マリアの攻撃になぎ倒され、伸びるおっさん。
「お前ら! なんか知らないがヤバい奴らが来たぞ! 夜勤組とおやっさんを呼べ!」「絶対に工場を守るんだ!」
 わらわらと機械をかばう様に散開するおっさん達に、更に1発、巨大なエネルギーを込めたカードがぶちかまされる。
 おっさん達は情けない声を上げながらよろめき、ダメ押しに弩級の暴風が突き刺さる。その嵐は、生産施設を粉々にし、おっさんを巻き込みながら消し飛ばしていく。
ゲツクが、生産施設から抜き取った作りかけのぱんつを叩きつけながら、怒りの叫びをあげる。
「その杜撰さ、許してはおけませんね。正させて頂きます!」
「わたくし共のささやかな希望を打ち砕く『おっさんの靴下』! これを悪と言わずして何とするか! ここに正義の鉄槌を下しましょう!!!」
 悪の道に落ちた同胞――もとい生産施設に引導を渡し、恨みと目薬の涙を零すエリザベスが背中を合わせるようにして決めポーズをとる。

「あらあら、派手にやるわねぇ……と、ごめんなさいね、オジサマ、これもお仕事なの」
 リノが先制攻撃を放った3人の後ろから飛び込み、華麗な2つのナイフでヒット&アウェイの強烈な一撃をお見舞い。崩れ落ちるおっさんに甘く囁き、離脱の一撃を更にお見舞いする。

「いやー、殴る相手が多くてストレス発散にいいなあ!」
「ええ、殺害許可が無いのが実に残念だけど」『痛めつけるだけだからな』
 ココロが長剣でおっさんの足を一刀両断し無力化すると、何やら呟いている自らの身体に流れる液体金属の呆れた声を笑って受け流しながらサンヴィスがその拳でもってトドメを刺し、気絶させる。

「闇市で有り金溶かしちまった憂さ晴らし……じゃねェや。あれだ、依頼主のような犠牲者をこれ以上生まないためにも!」
 グーパンチで殴りかかるおっさんの攻撃を華麗にかわし、放たれるは火炎の花、燃え盛るおっさんを冷たい目でことほぎが眺める
「そう、おっさんどもは1回ボコっといた方が世の為常の為!」
「それに、依頼された以上これも仕事だ……徹底的にやらせてもらおう」
 別のおっさんが火に苦しむ仲間を助けようとするも、隣にある生産施設にエイヴが静かに対物ライフルを構え引き金を引き爆発を巻き起こしそれを妨げる。

 次第に増えていく気絶したおっさん達、炸裂する生産施設。

「いやぁ、皆さん……今日はお暑い中わざわざ工場見学にきていただきありがとうございます」

 野太い声に、思わず振り返るイレギュラーズ達。わらわらと眠そうな顔をしながらやってくるおっさん達に紛れて、筋骨隆々、文字通り巨漢と言うしかない、2メートル半はあろう鉄騎種の巨漢がそこにいた。
 イケメンとは違う、黙っていてもわかる男前感、そして、まだ見ぬおっさんシリーズの下着の試作品に身を包んだ男――並みのおっさんとは違う、間違いない。

 おっさんの中のおっさん、工場長だ。
「まさか……『工場長』か!」
 ことほぎの問いかけに対し、そうだと言わんばかりに工場長の手から強烈な魔力の衝撃が放たれる、避けた跡に出来たのは、ぽっかりと空いた大穴。
「はっはっはっ!なんてねぇ!最近野盗にうちの試作品を盗まれてね!近くにある臨時の寮で寝泊まりするようにしていたのさ!」
 そう言うと、工場長は余裕そうに魔導書らしき物を手に取り、気合を貯める。爆風が置き、あたりに殺気が走る。
「誰に頼まれたのか知らないが、覚悟して貰おうか……諸君!」
 見た目によらぬ高度な神秘攻撃の使い手、そして桁違いの火力を見せつけ、高笑いする工場長。わずかな生産施設と、工場長を守る様にフォーメーションを決めるおっさん達。それを打ち破り、恨みを晴らさんと武器を構えるイレギュラーズ達。
 
 張りつめていく緊張の糸、爆風の煙と蒸気の中見つめ合う両軍――最初に破ったのは、工場長とココロであった。
「庶民の味方のつもりらしいけど、迷惑してる人もいるみたいだから難しいよね!」
 同時に放たれる魔砲を味方の前に立ち、堅牢な盾を全力で構え、激しい火花と共に押し返す――その後ろからゲツクが飛び出し
「庶民に安価で丈夫な品を、その志、大変結構なコトです。しかし依頼として受けた以上、依頼に貴賤はありません」
 両手にかざした魔導書を同時にかざし、周囲の魔素の流れが気流を生み、ぱらぱらとページがめくれて行く。
「破壊させて頂きますね!」
 次の瞬間放たれる遠距離術式、その渦は的確に工場長を庇うおっさん達を撃ち抜いていく。
 機械を守るおっさん達も、エリザベスの「赦せ…!」という声を最後に、魔砲と誘爆の餌食になってしまう。もっとも、彼女的には機械だけを狙うつもりであっただろうが。
 爆風と倒れる仲間達、その隙を逃さない。リノが工場長の懐に飛び込み、優雅に、華麗に、踊るように斬りつける。その刃に弄ばれた工場長の運命は、もはや決まっていた。
 魔砲を再び放とうとするも手が滑り、地面に向けて放ってしまう。もはやそれは不運ではなく、必然であった。
「うむ、もう終わりか。意外とあっけなかったな」
 エクスマリアが炎と雷のオーラを纏った髪を絡めながら、淡々と終わりを告げ――

「おやっさん!? ……うぐえ!」
 あっけなく吹き飛ばされる工場長を、呆然とした目で眺めるおっさん達。気を取られた瞬間に、死角より飛ばされたエイヴの鉄拳を腹部に食らい、カエルの鳴き声の様な声を出して倒れる。

「ああ、別にころしゃしねェよ、お楽しみが待ってるからな!」
 ことほぎの手によって放たれる魔力の塊、倒され、追い込まれるおっさん達。

 一人、一人と倒れていき。気が付けば、最後の一人。

「あ、ああ……靴下工場は、これで終わりだ――」

 その言葉を最後に、その男も、倒された。

●お楽しみの時間
 ――工場の外、炎天下。
「うぐ、ぐぐぐぐ……!」「おやっさん、くやしいです……」
 そこにはロープぐるぐる巻きに縛られ、悶えるおっさん達の姿があった。彼らが悔しがるのも無理はない、なんせ目の前で、自らが生計を立てていた工場が焼かれているのだから。

 メラメラと燃える工場から出てきたゲツクの手によってどさ、どさ、どさ……と積み上げられていく、ダンボールの山、山、山。その中には、大量の靴下、靴下……そして、ぱんつがぎっしりと梱包されている。
「それと、こんなのもありました。これで全部です」
 最後にぺちん、と上から追加されたのは、1冊の真っ黒な装丁のノートであった
 表紙には何やら複雑な魔法陣のようなものが描かれているが、ゲツクはそれが本物ではなく、子供がただカッコいいからと書きなぐったような者であることに気付いていた。

 ――黒歴史ノート。
「このノートは……まあいい、既に終わったことだ。」
 そう、もう戦いは終わったのだ。後は皆が楽しむ時間――エクスマリアが髪を動かし、合図を送った。
 それにエイヴが頷き、カチリと仕掛けを作動すると、わずかな生産施設達もひとつ残らずイレギュラーズ達の背後で大爆発、工場ごと大きな音をたてて崩れ落ちていく。
「あ、ああ……」
「燃えろー、派手に燃えてしまえー、わははー」
 唖然とするおっさん達の目の前でゆらゆらと揺れるココロ、その様子を眺め、リノが息を呑む。それは絶望を引き出すための演技か、それとも本心か。
「とってもキレイね、そう思わない?」特に立派な志によって作られた工場は……そうだ、繊維質も良く燃えるんじゃない?その提案に乗り、ことほぎは吸っていたタバコをダンボールの上に落とし、火炎の炎を放つ
 火は燃え広がり、ダンボールが、ノートが、そしてぱんつや靴下の全てが瞬く間に火だるまに変わる。「これを俺達に見せつける為だけに持ち出したのか!」 そう泣き叫ぶおっさんにことほぎは笑いながら言い放つ。
「ああ、是非依頼主にゃあ、靴下を燃やした時のおっさんどもの反応を語って聞かせたいなぁ!」
 おっさんは情けなく、子供の様に泣きじゃくる。仕方もない、突然現れた理不尽な恨みに、全てを奪われたのだ。だがそれがイレギュラーズ達には、そして今頃報告を待っているであろう依頼主には至高のひと時だった。
 更にダメ押しと、サングィスが燃え盛る箱を一つ蹴り飛ばす、工場長の前にぼとりとおち、めらめらと燃え続ける箱を眺めながら、挑発をするかのように言い放つ。
「恨まれる事になった己の所業を噛みしめるといいわ」『……事実ではあるがな』
「ふ……これが、人を想った結果か……」
 弱弱しい目で工場長が呟く。他のおっさん達と比べ余裕はあるように振舞えど、相当精神的に参ったのだろう、ぐったりと目を閉じると、意識を手放してしまう。
「次は下着の生産工場を潰してあげるから覚悟しておくことね」『まぁ…依頼がくればだがな?』
 気絶した工場長に、吐き捨てる。おっさん達は自らの師が屈辱を受けるのを見て、もはや泣く事しかできない赤子の様になってしまった。

「何はともあれ悪は去りましたわ!正義の勝利です!」
 そんなおっさん達を見て、エリザベスが決めポーズを取る。
 そう、正義の大勝利。闇市を愛する正義の使者の勝利だ。彼らの栄光を阻むものはしばらく現れないだろう。
 しかし、彼らの後釜を狙う第二第三の「おっさんの靴下」は現れる。「おっさんのぱんつ」も現れる。もしかしたら「おっさんのぶらじゃー」とかも出てくるかもしれない。
 例えそうだろうと、イレギュラーズ達は負けない。依頼で稼いだ報酬を手に、まだ見ぬ魔法道具や珍品を求めて、闇市道をこれからも突き進んでいくのだろう。
 そう、これからも――

「わたくし共の戦いは始まったばかりですわ!」
 おっさんの号泣が響き渡る中、その言葉に答える皆の表情は、明るい表情に包まれていた。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 どうも、塩です。皆様のご期待に応えることができたでしょうか?
 どうやら試作品であるはずの『おっさん印のぱんつ』が市場に流れてしまっていたようですね。私自身驚きです。
 なにはともあれ悪(?)は滅びました。
 流石の工場長も工場を焼かれ、此処までボコボコにされれば次の闇市ぐらいまでは大人しくなるでしょう。闇市から在庫や盗品が消え去るとまではいかないでしょうが。
 皆様の非常に素晴らしいプレイングに感動いたしました。
 この度はありがとうございました!またの機会がありましたらよろしくお願いしますね。

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