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シナリオ詳細

ラ・シャール領にいらっしゃい

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

「みんな、いらっしゃい♪」
「こんにちわ~♪」
 ミルヴィ=カーソン(p3p005047)に出迎えられて、子供達は元気に返した。
 子供達は高揚したように笑顔を浮かべている。
 それもその筈。生まれて初めて人に招かれて旅行に来ているのだ。興奮もひとしおというもの。
 いま子供達が訪れているのは、ミルヴィの領地であるラ・シャール領。
 芸術と労働者の街として栄えており、それだけに中心地であるラ・シャールタウンは、多くの芸事に就く人達が技を披露しているのを気軽に見ることができ、華やいだ雰囲気があった。
「とりあえず、今日泊まる宿屋にまで行きましょう。ご馳走してあげるからね」
「やったー!」
 にっこにこな笑顔で子供達はとことこと、ミルヴィに連いて行く。
 その笑顔は屈託がなく、奴隷にされそうになったり、犯罪者の使いパシリをさせられていたとは思えないほど。
(好かった。みんな笑えてる)
 何度か子供達と関わっているミルヴィとしては、会うごとに険がなくなっていく子供達に安堵するような嬉しさが湧く。
 それも、ミルヴィも含めたイレギュラーズが子供達の面倒を見てあげたからだ。
 その度に少しずつ警戒するような気配は解けていき、今ではミルヴィを、お姉ちゃんと呼ぶほど。
 もっとも、中にはもっと気安く声を掛けてくる子もいた。
「ディーノ、送れるから早く来いって」
 年少組の手を引いているのは、年長組の女の子イリヤだ。
 言動や名前が男の子っぽいが、れっきとした女の子。
 一度銭湯で髪を洗ってあげたからよく分かっている。
 彼女の隣には、同じ年頃の大人しそうな女の子、チトセが一緒に年少組の子達を引率する様にして世話をしていた。
「イリヤ、セト達が、ふらふらしてる」
「はぁ? って、珍しいもんがあるからってちょろちょろ動くな! 迷子になんだろ!」
 お姉ちゃんのように頑張るイリヤに、くすりとミルヴィは笑みを浮かべる。
 よく見れば、子供達の列の後ろは年長組の男の子達が付いていて、みんながはぐれてしまわないようにしていた。
「大きい子達、小さい子達の面倒を見てるんだ」
「ええ。貴女達が手本を見せてくれたお蔭ね」
 ミルヴィの呟きに返したのは、子供達をここまで引率してきた大人2人の内、メイド服を着ているリリス。
 何度か依頼を受け、彼女達が世界平和のために動いていると聞き、ミルヴィは心配しつつも彼女達に協力している。
 そんなミルヴィの心情をリリスは感じ取っているが、今日は世間話をするように話を続けた。
「子供は大人のすることを見てるから。こっちが何も言わなくったって、真似するものよ。だから今のあの子達がいるのは、貴女達のお蔭。ありがとう」
「気にしないで。こっちも、あの子達のために何かしてあげたかっただけだから」
 それは本心だ。
 だからこそ、子供達を自分の領地に招待し、楽しい思い出の一日になれば良いと思っている。
 そんなミルヴィを、リリスは愛でるように見詰めていたが、ふと思い出したかのように言った。
「そういえば、ここにはキャラバンがあるのよね? あとで、場所を教えてくれる?」
「良いけど、どうしたの?」
 疑問に思って訊くと、リリスの隣で歩いていたヴァンが説明する。
「ラサでの話を聞こうと思いまして」
「どういうこと?」
 ミルヴィが聞き返すと、詳しく話す。
「ラサで傭兵を探そうと思ってるんです」
「傭兵って、何かあったの?」
「いえ。何かが起こる前に、守りを固めるための人手を集めようと思うんです」
 そこまで言うと、少し声を潜めて続けた。
「エリザベスさんの件は、覚えていますね?」
「ええ……忘れたくても忘れられない……あのロリコン貴族」
 心底嫌そうに言うミルヴィ。
 少し前、義賊が関わる依頼を受けた時があったのだが、その時に助け出したのがエリザベスという貴族の少女だ。
「あれから、まだ報復などはありませんが、用心に越したことは無いですからね。それにアレにも何らかの形で関わっているビブリオという犯罪組織、かなり性質が悪いようですし、そちらへの警戒も兼ねているんです」
「ボディガードの傭兵を探してるってこと?」
「どちらかというと、街の警護をして貰える人達ですね。練達の伝手を使って、警備も出来るロボットが出来始めているんですが、それ以外にも戦力はあった方が良いと思いましてね。それと同時に、うちで作った義肢の類の売込みも兼ねてるんです」
「義肢って、鉄帝の遺跡のカナ?」
 以前、鉄帝の遺跡で義手などを作る参考となる遺物を取りに行ったことがあるのだが、それが形になったらしい。
「あのあと練達でも協力して貰って、ひとまずある程度の商品ベースにはこぎつけられたんです。ラサは傭兵国家ですから、そうした物を必要とする人達の需要はあると思いますからね。義肢ほどでは無くても、怪我などで体を動かし辛くなっている人が居るかもしれませんし、そういう人には『着込む』タイプの補助機械を作りましたから。そうした物の売込みなども兼ねて、ですね」
「そうなんだ……」
 話を聞いて、少しばかりミルヴィが考えていると、少し先で人だかりが出来ているのに気付く。
「何だろ……ごめん、ちょっと見に行って来るね」
 自分の領地であるので、気になったミルヴィが話を聞くと――
「遺跡で宝石ゴーレムが出たの?」
 ラ・シャール領には坑道遺跡があるのだが、ときおり宝石ゴーレムが出て来ることがある。
 話を聞くと、どうやら人の被害は無いようだが、行動の入り口付近でうろうろしているらしい。
 放っておく訳にもいかないのだが、ミルヴィ独りで戦うには数が多い。
 どうするかと考えていると――
「それなら私達がローレットに依頼を出すわ」
「いいの?」
 ミルヴィが聞き返すと、リリスが応える。
「構わないわ。その代り、宝石ゴーレムを倒した後の戦利品は、友達価格で取引させてね。あとは、子供達の面倒をみる貰えれば好いわ。それで良い?
 これにミルヴィは、くすりと笑い。
「ええ、もちろん」
 笑顔のまま頷いた。

 そしてすぐさまローレットに依頼が出され、宝石ゴーレムの討伐にイレギュラーズ達は向かった。

GMコメント

おはようございます。もしくはこんばんは。春夏秋冬と申します。
20本目のシナリオは、アフターアクションでいただいた内容を元に作った物になります。

以下が詳細になります。

●成功条件

宝石ゴーレムを倒し、子供達の面倒をみる。

●状況

子供達が招待され、ラ・シャール領に訪れた所で、宝石ゴーレム発生。
下手に近付かない限り危険は無い状態だが、放置する訳にはいかないので倒す必要があり。
その間、子供達はお留守番。

という状況で始まります。

●戦闘

宝石ゴーレム×8体と戦うことになります。
近接攻撃しか出来ませんが、頑丈な相手です。
坑道遺跡の入口まで出て来ており、戦う際に支障はありません。

今回は、

A 戦闘パート
B 子供達との1日パート

に分かれます。
ですので、より描写量を多くしたい方をプレイングで指定していただければ、そちらの方の描写量を増やします。
指定されて無い方は、さらっとした描写になる場合があります。
どちらも半々に、ぐらいでしたら、そういう感じになります。

●子供達

宝石ゴーレムを皆さんが倒しに行っている間に、宿屋で皆さんのためにご飯を作って帰りを待ってます。
今までイレギュラーズに教えて貰ったので、トルティーヤやスコーンなどを作ったり、紅茶を淹れてくれていたりします。
バームクーヘンも作ろうとしましたが、機材が無いので残念がってますが断念してます。
子供の作る物なので、プロのように見栄えが良くは無いですが、ちゃんと美味しいです。

宝石ゴーレムを皆さんが倒したあと、ご飯を食べたりなんだりは自由です。
子供達とどう過ごすかをプレイングにてお書きください。

5才ぐらいの子供が13人。11才から8才までの子供達が8人の、計23人。
イレギュラーズに助けて貰ったり、関わったりしたことのある子供達です。
そのため、イレギュラーズ達に対する好感度は高いです。

●ラ・シャール領

以下のような領地です。

芸を重視する政策で非常に住みやすい場所。
芸術と労働者の街として栄える。

・ラ・シャールタウン
元スラム街とは思えない美しい町並み。
酒場や飲食店が並び、多くの芸人や冒険者が拠点にしている。

・イースフロンティア
西方の岩山を開拓する鉱山街。
農場も多く、多くの労働者を抱えている。

・ラウドキャラバン
巨大キャラバン
ラ・シャール領の重要な資金源

上記の場所の好きな場所に訪れることが可能です。

●依頼人

リリス&ヴァン

子供達の保護者として、ラ・シャール領に連れて来てます。
子供達は宿屋の従業員でもあるのですが、ラ・シャール領に訪れるため、宿屋はメイドロボと店主以外に、2人の商会の人員を手配して回しています。
話し掛けたりなんだり自由に関われますし、関わらなくても良いです。

●情報精度

このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。

説明は以上になります。

それでは、少しでも楽しんでいただけるよう、判定にリプレイに頑張ります。

  • ラ・シャール領にいらっしゃい完了
  • GM名春夏秋冬
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年06月02日 22時34分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ミルヴィ=カーソン(p3p005047)
剣閃飛鳥
ルチア・アフラニア・水月(p3p006865)
鏡花の癒し
アリア・テリア(p3p007129)
いにしえと今の紡ぎ手
モカ・ビアンキーニ(p3p007999)
Pantera Nera
橋場・ステラ(p3p008617)
夜を裂く星
ウルフィン ウルフ ロック(p3p009191)
復讐の炎
ブライアン・ブレイズ(p3p009563)
鬼火憑き
エーレン・キリエ(p3p009844)
特異運命座標

リプレイ

「やっほーミルヴィちゃん、遊びに来たよ!」
 ライバルでもある『子供達のお姉ちゃん』ミルヴィ=カーソン(p3p005047)に、『希望の紡ぎ手』アリア・テリア(p3p007129)が明るく声を掛ける。
 いつもなら明るい声が返って来る所だが、その時は違った。
「ごめんね、少し手伝って貰えるカナ?」
 申し訳なさそうに頼むミルヴィに、アリアは残念そうに言った。
「え、お仕事なの? え~」
 ミルヴィも残念そうに返しながら状況を説明し、アリアは聞き返す。
「えっと、宝石ゴーレムを倒せばいいんだよね?」
 頷くミルヴィ。
 2人のやり取りを聞いていた『敏腕整備士』橋場・ステラ(p3p008617)が考えを纏めるように言った。
「宝石ゴーレム……なるほど、宝物塊みたいな物でしょうか? 鉱脈を探して採掘しなくても、わざわざ持って出てきてくれるなんて便利というか……」
「確かに便利ね」
 ステラに同意する様に、『「Concordia」船長』ルチア・アフラニア(p3p006865)も言った。
「勝手に来てくれるのは手間が省けて良いわね……纏めて採るなら、もっと数が多い方が良いんでしょうけど。採掘できたりしないものかしら」
「一杯あると良いよね」
 ルチアの言葉を聞いて、アリアが言った。
「量があれば少しぐらい、お土産に持って帰れそうだし」
「いいよ。終わったら宝石のアクセサリーなんかどーかな?」
 ミルヴィの応えに、ウルフィン ウルフ ロック(p3p009191)が尋ねる。
「それなら宝石ゴーレムを倒した後に破片を貰っても構わないか? 我の知り合いの鍛冶娘が色々な素材を集めているものでな」
 これにミルヴィは快諾。
 そして宝石ゴーレムを倒しに行くことに。
 出発前、子供達がお見送り。
「いってらっしゃい」
「ああ、行ってくる」
 子供達に返したのは、『Meteora Barista』モカ・ビアンキーニ(p3p007999)。
 以前、他のイレギュラーズと同様、子供達と一緒に過ごしたことがあり、懐かれている。
 それを見ていたミルヴィは、皆にお願いする。
「宝石ゴーレムを倒したら、子供達の相手をして貰ってもいいカナ?」
「ああ、もちろんだ」
 快諾したのは、『特異運命座標』エーレン・キリエ(p3p009844)。
「子供は宝。どこの世界でもこれは変わらないだろう。彼らが未来に希望が持てるように頑張らねばな」
 他の仲間達も賛同するが、戸惑うように返す者も。
「むぅ。我はその手は不得手なのでな、他の者に任せるぞ」
 ロックの言葉に続けるように、『鬼火憑き』ブライアン・ブレイズ(p3p009563)も言った。
「ガキどものお守役なんて趣味じゃないが……ま、依頼は依頼だ。報酬分はやらせてもらう。ドライに行こうぜ?」
 肩を竦めるようにして続ける。
「今から宝石ゴーレムをブッ潰し、帰ったらガキどもを退屈させない。それだけ。ハッハー! 楽勝じゃねえか!」
 見送りに手を振っている子供達を見て笑みを浮かべながら、皆と共に現場に向かうことにした。
 現場である坑道入口に向かう道中、芸人達がその技を披露する場面に出くわす。
 見れば、街の住人が笑顔を浮かべ楽しんでいた。
(芸能を保護する街とは、なかなか住み良い領地よね。娯楽は生きるには大切だもの)
 住人達の笑顔を見てルチアは思うと、余計に宝石ゴーレムを早く倒さねばと、やる気が出て来る。
 そして現地到着。
 周囲をウロウロしている宝石ゴーレム達を倒すべく、イレギュラーズ達は向かって行った。

●宝石ゴーレム破壊採取
(今回は、ダメージコントロールに徹するとしましょう)
 ルチアは仲間の動きを俯瞰して見れるよう、最前線から一歩引いた場所に位置取る。
(可能なら、少しは引き付けもしておきたい所だけれど)
 仲間に宝石ゴーレムが複数向かわないよう、引き付け役としても動けるように、クローズドサンクチュアリを発動。
 自身を聖域化し、護りを高める。
 そうしている間に戦闘開始。
 積極的に戦う皆に、援護のクェーサーアナライズ。
「体力も魔力も、すぐに回復するから。消耗は気にせず戦って」
 言霊と化した呼び掛けは、仲間に力を与える。
 ルチアの援護の後押しを受けながら、皆は積極的に戦っていった。

(近付かなければ、攻撃は届きそうにないですね)
 敵の特性を見極め戦っているのはステラ。
 死角から襲い掛かられないよう動きつつ、間合いを取って戦っていく。
(出来れば、傷付けずに倒したい所ですが)
 あとで採取することも考え、宝石の少なそうな箇所を優先的に狙い撃つ。
 向かって来る1体に向け、プラチナムインベルタ。
 鋼の驟雨で体勢を崩した所で、間髪入れず魔砲の一撃。
 高威力の一撃は、ゴーレムの肩を吹っ飛ばした。
(余計な傷は――付いてないみたいですね)
 宝石部分を傷つけてしまったかと心配したが、幸い大丈夫なようで一安心。
 そこに敵は間合いを詰めて来るが、ソーンバインドで迎撃。
 指先から伸びる魔性の茨で縛り動きを止めると、その隙に間合いを取る。
 危なげなく、敵を確実に倒していった。

 ステラと同じように、宝石部分を傷付けないよう気をつけて戦う者は他にも。

「いつもより数が多い……こいつら弱くはないケドそこそこの冒険者パーティなら十分倒せるからウチの産業になってるってのに!」
 ミルヴィは殺人鬼ミリーで自己強化しつつ、敵を引き付け自分の有利な状況で倒していく。
 黄昏のアーセファで距離を詰め、メナス・ルーヤで引き付けつつ強力な一撃。
 原石が傷つかないよう意識して戦っていった。

 敵の力を削ぎながら戦う者も。

(見るからに硬そう。なら――)
 アリアはダンス・ミュージック! で敵の1体を魅了。
 デタラメな動きで同士討ちをしている所に、追撃の蛇骨の調。
 呪詛の歌で引き付けると、動きが鈍りまくっている敵に、会心のフルルーンブラスター。
 零距離で放つ極撃を叩き込んだ。

(防御を削ってから叩く)
 モカは間合いを詰めると、胡蜂乱舞脚。
 残影が見えるほどの高速移動で翻弄しつつ関節部分を蹴突で連続攻撃。
 衝撃で敵がぐらつき動きが鈍った所に残影百手。
 多重残影で敵に動きを捕えさせず攻め立てると、気功による流星破撃。
 敵の護りと気力を破壊するような一撃を叩き込んだ。

 戦いの中で異世界ギャップに驚く者も。

「……本当に、ゴーレムが女性の形をしていないのだな」
 ウォーカーであるエーレンは故郷の世界のゴーレムとは違う相手に、自分が異世界に居るのだと改めて実感。
 戸惑いつつも、戦闘に集中していく。
 慣れない異世界での戦闘で傷を負いつつも、すぐさまルチアがミリアドハーモニクスで回復。
 仲間の助けも借り積極的に前に出ると各個撃破。
 深く間合いに跳び込むと、一刀の元に両断した。

 真正面から殴り合う者達も居る。

(こいつら硬いが近距離攻撃手段しか能の無い連中ってハナシだったよな)
 獰猛な笑みを浮かべブライアンは間合いを詰める。
(こういう手合は罠に嵌めて動けなくしてから遠距離攻撃で削り倒すのがセオリーだが――)
 あえて挑む近接戦。
「格の違いを教えてやるよ!」
 セオリーなんざ無視するとばかりにバチバチに殴り合う。
 強烈な打撃に大きく罅が入り砕けていくゴーレム。
「ハッハー! イージーゲームだぜ!」
 一見無茶な行動だが、それは酔狂でやってる訳じゃない。
 砕いた宝石ゴーレムの一部を手に入れるため。
(ガキどもへの土産にしては少しばかり高価すぎる気もするけどな、運の良いヤツらだぜ)

 近接戦で派手に動くのはロックも同じだ。

「我の爪牙を恐れぬなら来るがいい!」
 ロックは後衛の仲間へ敵が向かわないよう、名乗り口上で引き付ける。
 敵が近付いて来ると積極的に距離を詰めた。
 まさしく獣の如き俊敏さで間合いを侵略。
 同時に、マッドネスアンガーて自己強化。
 沸き立つ怒りが全身に駆け巡り筋肉を膨張させる。
 膨れ上がった力を、槍に乗せ一突きに放つ。
 突進の勢いも乗せた一撃は、吹き飛ばすほどの勢いでゴーレムの足の一部を抉った。
「どうした! この程度か!」
 大声で一喝。
 それに引き寄せられたのか、さらに1体が襲い掛かってくる。
「いいぞ! 来い!」
 不利な状況が、返ってロックの闘志に火を点ける。
 闘志全開。
 気力を充実させ槍を、あるいは爪を振るい破壊していく。
 それでもゴーレムは挟み込むようにして圧殺して来ようとするが、そこで豪鬼喝。
 大喝一声。
 全身全霊で放たれた咆哮は衝撃波となってゴーレムを撃ち据え大きく罅を入れた。

 闘いは、終始イレギュラーズ優勢。
 その勢いのまま全てのゴーレムを倒し、破片の幾つかを拾い集めると子供達の元に帰っていった。

●お帰りなさい
「おかえりー!」
 帰ると子供達のお出迎え。
 戦利品のゴーレムの破片を見せると子供達は喜び歓声を上げ、そのあと皆の手を引っ張って宿屋に。
 そこでは子供達がご飯を作っていたので、折角なので食べることに。
「はい! あげるー!」
 にこにこ笑顔の子供達からトルティーヤを貰い、ルチアも笑顔で応える。
「ありがとう」
 笑顔を返され嬉しくなったのか、子供達は他のイレギュラーズにも持って行く。
「おいしそ~!」
 アリアは、ぺろりとひとつ平らげる。
「おねーちゃん、お腹空いてるの?」
「そりゃ戦いのあとだしお腹すくよ! 折角のご厚意を無下にしたくないしね。目一杯食べるよ!」
「わかった! いっぱい持って来るね!」
 喜んだ子供達は、皿に山盛りで持って来てくれる。
 美味しいのでたくさん食べて――
「けぷ」
(……食べすぎちゃった)
 一息つく頃には、子供達はお茶を持って来てくれた。
 それをエーレンは微笑ましげに見ている。
(頑張っているな。何か楽しませてやりたい所だが――)
 考えていると、ご飯を持って来てくれたので、ありがたく頂くことにした。
 皆が和気藹々とする中、潜むように端に居るのはロック。
(子供たちの相手は我は出来んしこの身なりではな)
 そう思っていると、子供達はご飯を持って来てくれる。
 礼を言って受け取ると、気のせいか子供達が、じーっと見詰めていた。
 耳とか尻尾とか。
 年少組の子が、そーっと触ろうとしていたが――
「こら、ダメだろ」
 年長組が止めて連れて行った。
 年長組も触りたそうにしていたが。
 子供達が持って来てくれるのは、トルティーヤ以外にスコーンや紅茶もあった。
「スコーンと紅茶を用意して待ってるなんてな! 良いセンスだ!」
 好みの料理だったので、ブライアンは気分が良くなる。
 なので、採って来たゴーレムの欠片をプレゼントしてやろうかと思うが、タイミングを考える。
 すると、ステラが軽く磨いて小袋に入れて、お守りのようにしようとアイデアを纏めていたので、それに乗っかるために破片を渡しておく。
 受け取ったステラは、どう加工するか考えていると、子供達がご飯を持って来てくれる。
「ありがとう」
 礼を言って受け取り、一先ず食べることに。
 食事が進み、頑張った子供達に、ミルヴィが笑顔で声を掛ける。
「上手になったね、とっても美味しいよ♪」
「ホントに? やったー!」
 素直に喜ぶ年少組の子供達。
 そこに年長組が嬉しそうに言った。
「チビ達も頑張ってくれたからな」
 イリヤが小さい子達の頭を撫でて、嬉しそうな声が上がる。
 それを見て、ミルヴィは年長組の子供達の頭を撫でた。
「うん、みんな頑張ったね♪」
「別に、オレ達おっきいから、あったり前だし」
 何でもないかのように言うイリヤ達。
 嬉しそうな顔が隠しきれてないのは、ご愛嬌。
 それを見てミルヴィは笑みを浮かべ、頭を撫でながら言った。
「うん、えらい。そうだ、ご飯終わったらみんなまたお姉ちゃんとお風呂入ろっか?」
「ん~、いいけど、髪とか自分で洗えるからいいから」
「はいはい」
「頭撫でるなよ~」
 顔を赤くしながらされるがままのイリヤだった。
 そうして皆で和気藹々と美味しく食べる。
「これは美味い!」
 褒めてあげているのは、モカだ。
「パプリカは食べ易いように細切りにして、しゃきしゃき感が残る程度に炒めてるのも良いね。火を通すことで甘味も出てる」
 飲食店を経営していることもあり、良い所を見つけ褒めてやる。
 それは子供達に自信をつけさせるため。
 自然で率直な意見を口にする。
「こんなに美味い料理が作れるなんて、みんな頑張ったね!」
 褒められて嬉しそうにする子供達。
 そして喜ぶだけでなく、お願いもして来る。
「お姉ちゃん、お茶淹れるの上手なの?」
 年長組のチトセ達が聞いてくる。
 モカは以前、年少組の子供達と関わったことがあるのだが、その時にお茶やコーヒーを淹れていた。
 その事を聞いていたようで、向上心のある子が頼んでくる。
「教えて貰っても、いい?」
「ああ、いいよ」
 早速、教えていく。
 教えていく中で年少組の子供達が、バームクーヘンを作った話が出て来る。
 ここには器具が無いので作れず子供達が残念そうにしていると――
「今バウムクーヘンの話しました?」
 話を聞いたステラが提案する。
「最近拙の領地でも作ろうと、機材を輸入したりしていた所でしたので……ふむ、機材が無いと。なるほど、では作りましょう」
 工業技術を持っているステラは、現地の機材で作ることに。
「鉄帝のスチームオーブンとまではいかずとも、やってやろうじゃありませんか」
 そちらが出来あがるまでに、モカが子供達と一緒に材料の用意。
「チョコパウダーもあるみたいだから、今日はチョコ味も作ろう」
「わーい♪」
 喜ぶ子供達。
 そこにアリアも混ざる。
「ん? バウムクーヘンが作りたかったの? そっか、じゃあお姉ちゃんが裏技を教えてあげる!」
 そう言うとフライパンを用意する。
「綺麗にした棒を、四角いフライパンの大きさに合わせて切って……生地を作って薄く焼いて、それを棒に巻き取ってから、また生地を薄く焼く。これを繰返して最後に切ると、お手軽バウムクーヘンの出来上がり!」
 子供達と一緒に作る。
「ごちそうの御礼だよ、おやつにもお夜食にも食べてね」
「ありがとー♪」
 喜ぶ子供達。
 その間にステラの用意も出来る。
「こちらも用意出来ました」
「ありがとー!」
 子供達は喜んで、にこにこ笑顔で作り、皆で美味しく食べた。

 ご飯タイムが終わり、今度は演芸タイム。

「折角子供達が来てくれたんだから、ここは芸の街らしくステージ貸切ってアタシ達のステージやっちゃおう!」
 発起人はミルヴィ。
 勝手知ったる自分の領地というわけで、領地の人達の手も借りてサクサク準備万端。
「付き合ってくれるみんなは、得意分野でヨロシクっ!」
 応じるイレギュラーズは舞台に立つことに。
「ハッハー! 扇動は俺の得意分野! 忘れられないショーになるようブチ上げてやるぜ!」
 司会をブライアンが。
 多くの観客が来る中、場の空気を暖める。
 その間に演者も準備万端。
「アリア! 歌と演奏は任せたよ!」
「はーい、じゃあリクエストはあるかな?」
 ミルヴィにアリアは応え選曲。
「最近はこういうのが流行りなんでしょ? 私知ってるんだよ!」
「このパートを受け持とう」
 モカも参加し簡単なパートを受け持つ。
 そして演奏が始まり。
 同時に演武も。
「今できる精一杯で子供たちに楽しんでもらわなければな」
 エーレンは準備万端で、ミルヴィに合せた衣装を着て舞台に上がる。
「さあさあ、子供も大人も楽しんでくれよ!」
 始まるエーレンとミルヴィの剣舞。
「さっ、どんどんいくよ!」
 ミルヴィは流麗にして鮮やかな剣舞を見せながら、エーレンと武術の約束組手のように剣を交差させ、アクロバティックな動きに息を合わせていく。
 それに応えるように、エーレンは見応えのある剣舞を魅せる。
 ミルヴィの剣を紙一重で避け、あるいは日本刀で逸らし、打ち合う。
 動きは派手だ。
 セットを足場にしたハイジャンプと宙返り、開脚で身を沈めて回避からのウインドミルじみた立ち上がり。
 片手倒立からのバク転に、三角飛びによる頭上飛び越え。
 見せ場では抜刀術も披露して、ミルヴィ共々観客を魅了した。
 そして沸き起こる大歓声。
 ロックやルチア達と一緒に見ていた子供達も拍手喝采。
 自分達もやってみたいという子供達にエーレンは――
「土台をしっかり作っておかないと、簡単に崩れる。皆が遊ぶ積木と同じで目立たないところが一番大事なんだ」
 しっかりと理念を教えながら、基礎的な柔軟やトレーニングなどを伝えた。
 演芸が終れば、それぞれ個別に子供達と街を巡る者も。
 モカが一緒に食べ歩き、ミルヴィがお風呂に入れてやり綺麗にしてあげる。そして――
「はい。どうぞ」
 秘密の作業をしていたステラが、宝石ゴーレムの破片を磨いた物を入れた小袋を子供達に渡す。
「お守りです」
 文字通り宝物のように受け取る子供達だった。

 子供達はずっと笑顔で、楽しい1日を過ごすことの出来た依頼だった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

お疲れ様でした!
皆様のお蔭で、子供達は思い出となる1日を過ごすことが出来ました。
宝石ゴーレムも皆様の活躍で大事にならずに収められ、その後の催し物もあり、領民の皆さんも喜ばれたことでしょう。
好き1日だったと思います。
それでは、最後に重ねまして。
皆さま、お疲れ様でした。ご参加、ありがとうございました!

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