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シナリオ詳細

<ナグルファルの兆し>病毒の魔は地下水路を泳ぐ

完了

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●バランツ領調査
 クローディス・ド・バランツ。
 ミーミルンドの派閥に属するその貴族は、目下、幻想にて催された大奴隷市、そしてブレイブメダリオン偽造事件の主犯であると目されていた。
 数々の証拠から、幻想中央教会よりマークされていたクローディス。イレーヌはイレギュラーズ達へと接触を依頼。イレギュラーズ達はバランツ領へと向かうが、突如彼を援護するかのように現れた巨人と、彼に雇われた傭兵部隊オンネリネンとの戦闘が勃発。その戦いの最中に、クローディスは姿を消してしまう。
 領主が姿を消したバランツ領、カランの街。為政者を失い、不安に思う領民たちの支援のため、そしてバランツ邸の再調査のため、幻想中央教会のエージェントたちが、カランの街での調査を継続していた。
「領主の失踪ですか。領民たちはいい迷惑でしょうね……」
 エージェントの、眼鏡をかけた少女のシスターがそう言う。
「典型的なクソ貴族……こほん、失礼。無能と言う奴のようですね、クローディスは」
 エージェントの壮年の牧師が言う。何せ、為政者としての義務をほっぽりだし、領民を捨てて逃げたのだ。そう評されても仕方あるまい。
「バランツ邸にはあらかた悪事の証拠は残っていたようですね。となれば、後は本人を探すだけですが。しかし、ミーミルンドは彼をかくまっているのでしょう。今度は、バランツ邸に強制的に介入したようには行きますまい」
 牧師の言葉に、シスターは頷いた。
「問題だらけですね……嫌になっちゃいます。巨人の襲撃に、この間現れて、ローレットと戦って言うフレイスネフィラとか言う相手も……」
 はぁ、とため息をつく。結局、幻想中央教会としても、またローレットに頼むことになるのだろう……。
 と、二人の聖職者が些か落ち込んでいた時に、ふと遠くより、女性の悲鳴が上がった。
「いけません。様子を見に行きますよ、ユーナ」
「は、はい、レーヴェン神父」
 神父の声に、シスターは頷く。果たして二人がたどり着いた先に広がっていたのは、恐ろしい光景であった。
「これは……」
 多くの者が、せき込み、倒れていた。漂う異臭は、街を流れる川から漂っているように見える。
「た、大変です、助けないと……」
 シスターが慌てて駆け寄ろうとするのを、神父が止めた。
「いけません。恐らく、毒の類です」
「ふえっ!?」
 シスターが慌てて口元を押さえる。そんなものでは意味が無いのだが、抑えずにはいられない。
「この異臭、何らかの毒が川に投げ込まれたか……まずいですね、私達の装備では、近寄った所で二の舞を演じるだけです」
「じゃ、じゃあどうするんです!?」
「この街にも、教会はあるはずです。まずはそこに戻り、応援を頼みましょう。簡易な耐毒の装備も用意してあるはずですから」
「わ、分かりました!」
 シスターが慌てて、教会へと向けて駆けだした。神父は口元を袖口で抑えつつ、眉をひそめた。
「しかしなぜ……このタイミングに……?」
 その疑問を、しかし今は誰も答えることはなかった。

●病毒の地下水道で
「度々の招集、誠に申し訳ございません。また皆様のお力を借りる時が来てしまったようです」
 『幻想大司教』イレーヌ・アルエ(p3n000081)は、招集に応じてくれたイレギュラーズ達を前に一礼する。
「いや、これでも勇者の一人……と言う事だ。気楽に使ってくれて構わない」
 ウェール=ナイトボート(p3p000561)がそう言うのへ、イレーヌは再び頭を下げた。
「ありがとうございます……実は、クローディスの領地、カランの街に、毒がばらまかれました」
「毒、ですか?」
 ヨハン=レーム(p3p001117)が目を丸くした。
「それはまた穏やかではないですね。何処かのテロリストの仕業です?」
「ええ。恐らく、クローディスか、或いはミーミルンドに連なるものの手によるものでしょう」
「そんな馬鹿な……あ、いや、イレーヌさんの考え方を否定したわけではないですよ」
 ヨハンが言う。まさか自分の領地に毒を巻くような奴がいるのか、と言う意味での、ばかな、だ。イレーヌが笑った。
「分かっております。私も同じ立場でしたら、同じ言葉を発していたでしょう。ついでに、大きくため息も。私達がこれをミーミルンド、或いはクローディスに連なる者たちの仕業と断定したのも、この様な証言があったからです……ユーナ」
「は、ひゃい!」
 と、眼鏡をかけたシスターが前に出た。
「ユーナと申します! え、栄光のローレット・イレギュラーズの皆さんに会えるとは感激です! あ、えーと、いまはしょうじゃなきゅて、えっと!」
 こほん、と咳原一つ。
「じ、実は、街の水源の一つでもある川、そこにつながっている地下水道があるのですが、先日、街の者がそこに、『大きな人影』が入っていくのを目撃した、と言うのです! それも、本当に大きな人影です。こーんなに!」
 ばー、っと手を広げるシスター。その隣にいた神父が、こほん、と咳払い一つ。
「大きな人影、と言えばアバウトですが、こう言えば伝わるでしょう。巨人のようなものだった、と」
「なるほど、でも、この時期に巨人のようなもの、と言えば……というか、もうイコール巨人だよね」
 ジェック・アーロン(p3p004755)の言葉に、イレーヌは頷いた。
「十中八九。そして、先日の報告によれば、クローディスは巨人の襲来を、『ベルナールの助け』だと言っていたとの事。ベルナール、つまりベルナール・ミーミルンドでしょう。となれば、巨人は彼らとのつながりがある可能性が濃厚。そして、巨人の目撃と共に、街に毒がまかれたとなれば」
「なるほど。つまりそれは、ミーミルンド派閥。最低でもクローディスが関わっているのは明白、と言う事か」
 ウェールの言葉に、イレーヌは頷いた。
「そこで、皆様に、この地下水路の調査と、そこにはびこるであろう『巨人』の討伐をお願いしたいのです。恐らく、この巨人が街に毒を振りまいたか、あるいは、毒素の下を設置したものと思われますから」
「なるほど、分かりましたよ」
 ヨハンが言った。
「ダンジョンアタックに、大ボス退治……毒の蔓延したダンジョンの中で。ええ、これはローレットの出番、ってくらい面倒な案件ですね」
「心苦しいですが、お願いいたします」
 イレーヌが言った。
「そうそう、言い忘れましたが、街の者はすでに非難が完了しております。皆さんは、一切の憂いなく、地下水道の攻略に注力してください」
「OK。幻想を守るため……ってのは大げさだけど、被害が広がる前に、解決するよ」
 ジェックの言葉に、イレーヌは微笑んだ。
「それでは、何卒宜しくお願い致します。ローレットの皆さん」
 そして一行は、カランの街へと向かうのであった。

GMコメント

 お世話になっております。洗井落雲です。
 地下水路を攻略し、巨人を撃退しましょう!

●成功条件
 毒の発生源(巨人?)の排除

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●状況
 バランツ領、カランの街。領主の逃げ去ったこの街に、突如として川から毒素がまかれるという事件が発生しました。
 おそらく主犯は、バランツ領の領主、クローディス。自領の民を民とも思わぬ卑劣な犯行に、イレーヌは事件解決のためにローレットのイレギュラーズ、すなわち皆さんを招集しました。
 皆さんは、この毒素の大元が存在すると思われる、広大な地下水路に侵入し、この毒素の大元(おそらくは巨人であると思われます)を見つけ出し、排除してほしいのです。
 作戦決行時刻は昼。フィールドは、広く、広大なダンジョンのような地下水路となっています。内部は暗く、毒の霧で蔓延しており、何らかの対策(例えばマスクのようなもので口元を覆うとか)が無い場合、通常探索中では数行動ごと、戦闘中では1ターンごとに、HPが減少するペナルティが発生します。これは『毒無効のスキルがあれば回避できる』ものとします。ただし、『BS無効では回避できません』。

●エネミーデータ
 零れ落ちた毒素の魔物 ×???
  地下水路内を徘徊していると思われる、毒素を纏った怪物たちです。
  形や性能は様々で、各地を徘徊しています。
  遭遇する個体によって攻撃方法は異なりますが、おおむね共通して、『毒』や『窒息』系列のBSを得手としているようです。

 病毒の巨人 ×1
  地下水路内を徘徊している毒素の巨人です。恐らくこれが、毒の根源だと思われますが……。
  高いHPと、物理攻撃力を誇ります。また、BSとして、強力な『毒』系列のBSや、『麻痺』系列のBS、そして『災厄』を持つ攻撃を得手としているようです。

 以上となります。
 それでは、皆様のご参加と、プレイングをお待ちしております。

  • <ナグルファルの兆し>病毒の魔は地下水路を泳ぐ完了
  • GM名洗井落雲
  • 種別EX
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年06月05日 22時21分
  • 参加人数10/10人
  • 相談7日
  • 参加費150RC

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(10人)

ウェール=ナイトボート(p3p000561)
永炎勇狼
ヨハン=レーム(p3p001117)
おチビの理解者
Tricky・Stars(p3p004734)
二人一役
ジェック・アーロン(p3p004755)
冠位狙撃者
ミルヴィ=カーソン(p3p005047)
剣閃飛鳥
御天道・タント(p3p006204)
きらめけ!ぼくらの
マリア・レイシス(p3p006685)
雷光殲姫
アッシュ・ウィンター・チャイルド(p3p007834)
Le Chasseur.
メーコ・メープル(p3p008206)
ふわふわめぇめぇ
ヲルト・アドバライト(p3p008506)
パーフェクト・オーダー

リプレイ

●陰謀の地下水路
 カランの街に流れる清涼な水は、この地下水路を通って山脈の方から流れてくる。
 透き通った水はとてもおいしく、この水もカランの街の住民の憩いの一つであったのだが、今は薄汚れた色と悪臭にまみれ、その元の姿を見せない。
「地下水路、だから下水道とは違うと思ってたけど」
 『神翼の勇者』ジェック・アーロン(p3p004755)が、口元を押さえながら言った。それからガスマスクを取り出すと、顔に被る。
「これじゃあ下水道と大して変わらないね。こういう所に来ると、このマスクが外せなかった頃が恋しく思えるよ」
 ジェックの言葉に、頷いたのは『きらめけ!ぼくらの』御天道・タント(p3p006204)だ。
「なんだか、その頃も懐かしいですわね! ですがこの薄暗き地下水路、すぐに清浄なる輝きで照らして見せましょう!
 そう、毒素渦巻く昏き地下水路には、癒しを齎す光が必要!
 しからば! このわたくし!」
 タントがぱちん、と指を鳴らす。するとどこからともなく、

   \きらめけ!/
   \ぼくらの!/
 \\\タント様!///

 と、聞こえるや、タント様はそれに合わせてかっこいポーズを決める! 今日のポーズは清浄清廉なるヒーリングローリングスパークリングポーズだ!
「――‬が! 皆様をお助けいたしますわ――!」
 オーッホッホホ! と高笑いを一つ。今日は大切なパートナーたるジェックご指名の仕事と言う事もあり、その手伝いとしてやる気は充分のようであった。
「オーッホッホホ……確かにちょっとよろしくない臭いがしますわね! ですがわたくしに毒は効きません。ジェック様も、ぜひぜひ、わたくしに頼ってくださいまし!」
「うん。頼りにしてるよ、タント」
 ガスマスクの下で微笑むジェック。とにもかくにも、この二人はいつも通りのようだ。
「しかし、毒か。卑劣な事をたくらむ者がいたものだ」
 『幻想の勇者』ヲルト・アドバライト(p3p008506)がうんざりとした様子で言った。敵の目的は不明だが、水路に毒を撒く、と言った所で、多くの住民に危害をもたらそうとしたのは間違いないだろう。
「それも、自分の領地に、か? 度し難いほどのバカだな。その地に住む者達が不憫だ」
「多分、お貴族様は、領民の事を自分の事を満足させるための道具くらいにしか思ってないんだろうね」
 『子供達のお姉ちゃん』ミルヴィ=カーソン(p3p005047)が苛立ちを隠さずに、そう言う。幻想の貴族は腐敗している。領民を人とも思わぬ輩は多いだろう。とはいえ、自分の領地に毒を流す愚か者はそうそうは居ないだろうが。
「まったく、ここでいら立ってもしょうがないってのはわかるけど、腹が立ってしょうがないよ! ヲルトのいう通り、領民たちがかわいそう!」
「――効率的な策とは言えましょう。理解も納得も出来ませんが」
 『plastic』アッシュ・ウィンター・チャイルド(p3p007834)が静かに言った。確かに、手段を問わずすれば、多くの犠牲者を出すという点では効率的だろう。人道、良心、倫理、その他の無視してはいけないものを無視すれば、であるが。
「……相手も追い込まれれば、ここまでのことをするのでしょうか。人と人の争いが極まれば、此処まで踏み込む……」
「こんなことをするのは、馬鹿な奴だけですよ」
 と、『閃電の勇者』ヨハン=レーム(p3p001117)が言った。ポケットに収めていた、簡易的なマスクを取り出し、
「マスクを用意しました。教会で祝福済みの奴ですよ。ヲルトさん、それにメーコちゃんも。使ってください。多少は、毒も軽減できるはずです」
「ああ、悪い。助かるよ」
 ヲルトが頷いて、ヨハンからマスクを受け取り、
「ありがとうですめぇ」
 『ふわふわめぇめぇ』メーコ・メープル(p3p008206)もまた、にこにこと笑ってマスクを受け取った。それで口元を覆うと、多少は毒素を軽減できる。
「これで毒にも負けませんめぇ。悪い巨人をやっつけて、速く街の人達を安心させてあげますめぇ」
 メーコがぐっ、と両手に力を込めて、可愛らしく意気を現して見せる。
「そうだね。手早く汚染源の巨人を排除して、街の皆を安心させてあげよう」
 『雷はただ前へ』マリア・レイシス(p3p006685)が頷いた。汚染源……おそらくは、何らかの能力を持った巨人であると予測されている。地下水路の天井は高いが、ここに入り込んでいるという事はさほど巨大なものではないだろう。とはいえ、充分に脅威に値するであろうことは予測できる。
「巨人、か……バリエーションが随分と豊富みたいだね」
「全くだ。敵も随分とネタをため込んでいると見える」
 『二人一役』Tricky・Stars(p3p004734)の稔が言った。
「全く幻想はネタが尽きないな! 作家(オレ)としては至極愉快だが。踊らされる役者にとっては堪ったものではないだろうよ」
『いやいや全然愉快じゃねーよ。巨人がウロついてんのマジヤバすぎっしょ。どーなっちゃうのよこの国』
 稔の言葉に、同じくTricky・Starsの虚が相槌を打つ。
「それを救うのが、俺達の役目と言う事だろう」
 『永炎勇狼』ウェール=ナイトボート(p3p000561)が言った。ウェールは勇者として選ばれた誇りもある。それに、事実ローレットのイレギュラーズが動かなければ、事件が解決することはないだろう。
「そろそろ行こうか。内部には、巨人以外の敵も徘徊しているだろう。くれぐれも、気を付けて進もう」
 ウェールの言葉に、仲間達は頷いた。
 かくして一行は、広大な地下水路の中へと足を踏み入れたのであった。

●地下を行く
「よいしょっと」
 尻尾の先に明かりをともして、ヨハンがあたりを照らす。地下は水場も近いため、ひんやりとした空気を保っていたが、しかしそれもどこか澱んだ者のように感じる。上水道でありながら薄汚れた水は、毒素の巨人によってばらまかれた穢れだろうか。いずれにせよ、今は好ましい環境とは言えない。
「パレードの次は水路掃除ですか。勇者というのも楽ではなく。
 ロケーションのギャップが凄いですね。なんだか勇者と言う称号を盾に、イレーヌさんにいいように使われているような気もしますが」
 肩をすくめる。
「とは言え、人命がかかっていることは事実。しっかりとやりましょう……所で、僕はあまり探索面ではお手伝いできないとは思いますが」
『いやいや、適材適所って奴だろ? だから10人もいるんだ。俺もまぁ、本領発揮は戦いに入ってからだしな』
 虚が言うのへ、ヨハンは頷いた。
「お互い、戦闘になったらしっかりと働きましょう。と言う事で、皆さんお願いします」
「任せてよ! マッピングも敵の探知も、私がしっかりやるからね!」
 マリアが手元の紙にルートを書き込んでいく。敵の探知を行いながら地形を把握し、マップを作り上げることも、マリアだからこそできることだ。
「水の流れは穏やかですね……近くに巨人のような生物はいないのでしょうか」
 アッシュがそう呟くと同時、ばさり、と水が盛り上がって、中からウェールが顔をだした。
「水中にもいない様だな」
「わぁ。水の中に入ったんですか?」
 アッシュが目を丸くするのへ、ウェールはきょとんとした様子で頷く。
「中も見ておきたくてな……ああ、心配してくれるなら大丈夫だ。俺の炎は、水の中だろうと燃え盛り続けるだろう」
 少しずれた回答に、アッシュはひとまず頷く。
「……大丈夫なら、いいです。でも、気を付けてください」
「ああ、有難う。またしばらく水中を探索してみる」
 ウェールがそう言って、再び水中へと潜る。
「水中に敵が潜んでる可能性もあるからね。助かるよ」
 ミルヴィが言う。天井には、こぶし大の大きなクモが這っていて、それがミルヴィのファミリアーだった。クモは八つの真ん丸な瞳で通路の奥を見張っている。それと合わせて、ミルヴィは壁を叩いて、それの反響音を使って先を偵察していた。
「皆様、明かりの具合はどうですかしら! 精一杯輝いているつもりですけれど!」
 と、タントが輝きながら言う。地下水路の闇を吹き飛ばさんばかりのタント様の輝きである。
「ん。大丈夫、助かっテルよ」
 ジェックが言うのへ、タントはオーッホッホホ! と笑った。
「ならば、わたくしの輝きで、この地の闇を払ってみせますわ!」
 ぴかー、と輝く。その光が地下水路の隅を照らし、その先に居た何か、の姿を見せた。
 ずぶ、ずぶ、と蠢くそれは、最初ヘドロか何かのように見えた。だが、それが意思を持って動いているのだと認識した瞬間、イレギュラーズ達は一気に戦闘の構えをとった。
「――警戒して。あやシイ……」
 ジェックがそう言った瞬間、ヘドロはぶくぶくと膨れ上がり、人間ほどのサイズに膨張した。悪臭を放つそれがばちん、とはじけたかと思うと、5体に分裂してぶるぶると震える。
 身体からこぼれる液が、石畳の地面に落下してじゅう、と音を立てた。高濃度の毒の類か。
「ちっ、敵か!」
 ヲルトが舌打ちしつつ、前へと出る。仲間達を庇うように位置取りし、
「巨人じゃぁないな。じゃあ、巨人の手下か?」
「そうに違いありませんめぇ。ヲルトさんは、巨人に備えて温存しておいてほしいめぇ。
 皆さん、この敵はメーコが引き付けますめぇ。攻撃をお願いしますめぇ!」
 と、飛び出したメーコが、手にした金をカララン、とならす。その音にひきつけられた敵――毒素の落とし子、とでも呼ぼうか? とにかく落とし子がその図体からは考えられないほどの素早い跳躍で、メーコへと飛び掛かる。
 じゅう、と毒素がメーコの身体を焼いた。服の一部が酸に触れたみたいにチリチリと焼け融ける。
「め、めぇ……!」
「メーコ君! 今引きはがすよ!」
 マリアが飛び込み、落とし子を殴りつける。紅雷を纏った拳の一撃が、落とし子をメーコから引きはがし、壁にたたきつける。
 べちゃ、と音を立てて、落とし子が爆散した。
「メーコさん、僕を信じて、動かないでくださいよ!」
 ヨハンが叫び、その手を掲げる。途端、紫色の帳が落とし子達を包み、帳より放たれた不吉の手は、メーコを器用に避けて落とし子だけを撃ち貫く。
「EEEEEEEEEEEK!」
 落とし子たちが奇怪な悲鳴を上げながら、メーコから飛びずさった。
「ジェック様!」
 タントが叫び、その輝きで周囲を照らす。同時、その後押しを受けたジェックの銃弾が、空間を割いて落とし子を貫き、爆散させる。
「あと、3!」
 がちゃん、と次弾が装填される狙撃銃を手に、ジェックが叫ぶ。続いたのはミルヴィとアッシュだ。
「気乗りはしないけど……アンタと踊ってあげる!」
「雷よ!」
 アッシュの放つ雷を背に、ミルヴィの剣舞が落とし子を細切れにした。そのままアッシュの雷によって焼かれた落とし子達が、焼却されて消える。残り1――同時に、水中より飛び出したのは、
「おおおおっ!」
 ウェールである。妖刀陽炎が地下水路を照らし、振るわれる刃が落とし子を真っ二つに断罪する。落とし子がばちゃり、とはじけて溶けた。
「メーコさんは無事か!」
 ウェールが叫ぶのへ、稔が頷いた。
「倒れてはいない。治療を引き受ける」
「だいじょぶですめぇ、メーコは倒れたりしませんめぇ」
 にっこりと笑うメーコだが、その傷は決して浅くはない。だが、それでも倒れることが無いのは、メーコの実力ゆえだろう。
「だとしても、傷は癒しておいた方がいいだろう。役者は万全の態勢で舞台にあがるものだ」
 稔の術式がメーコを癒す。
「ありがとうですめぇ」
 メーコは笑った。
「アレが敵の……部下、配下って所かな?」
 マリアが言う。
「おそらくそうダネー。強烈な毒もちッテのは、メーコの傷を見ればわかるよ」
 焼とかされたような服や、赤くはれた皮膚など、物理的な攻撃ではなく、何かかぶれる様な、毒素による攻撃だという事は見て取れた。
「メーコ様、大丈夫ですの?」
 タントが尋ねるのへ、
「はいですめぇ。これがメーコのお仕事ですめぇ」
 と、健気にメーコが言う。
「だとしても……お辛くなったら言ってくださいましね?」
「ああ、いくらアンタが頑丈だからって、限界はあるだろう。オレだって、敵を引き付けられるんだ。倒れる前に、オレに言え」
 ヲルトの言葉に、メーコは笑った。
「えへへ、もしメーコが辛くなったら、おねがいしますめぇ」
 メーコが言うのへ、ヲルトが頷く。
「どうやら、雑魚敵も充分厄介な奴らみたいですね。大ボスの巨人とやらは、どうなるのやら」
 ヨハンが言うのへ、ミルヴィが言った。
「なんにしても、注意して進まないとね。メーコの治療が終わったら、行くよ、皆。より一層、気を付けて、ね」
 ミルヴィの言葉に、仲間達は頷いた。そして少しの休憩の後に、一行の探索行は再開された。

●地下水路の奥へ
 複雑に入り組んだ水路を、一行は進んでいった。
「結構奥まで来ましたけど」
 ヨハンが言う。
「マリアさんのマッピングとか、ミルヴィさんやアッシュさんが分岐点に目印を置いてくれるおかげもあって、迷わずにここまで来れましたね」
「ふふーん、任せてくれたまえよ!」
 マリアが胸を張る。事実、探索担当チームの努力と準備の結果は、しっかりと現れている。
『ヲルト、メーコ、ジェック。三人は毒の方は大丈夫か?』
 虚が尋ねるのへ、ヲルトが答える。
「ああ。マスクもあるから、影響は最小限だ。定期的に休ませてももらってるしな」
「そうダネー。しかしほんと、ガスマスクにまた助けラレルとはね。正直早く脱ぎたくはアルんだけど」
 ジェックが苦笑する。事実、多少の毒素の影響はあったが、それでも準備の成果、影響は最小限だった。対症療法的になるが、時折休憩と回復も挟んでいるため、致命的な事には至っていない。
「メーコはだいじょぶですめぇ。でも、本当に……できれば早く毒を消し去りたいものですめぇ……」
 メーコはそう言うと、ふと足を止めた。マリアがしっ、と口元に指をやる。ミルヴィが頷いて、ファミリアーのクモを先行させた。
「1,2……6体。人型の奴だね」
「落とし子、とでもいうべき奴か」
 ウェールが頷いた。落とし子の形状は、最初に遭遇したスライム状のものから、徐々に固形、人型のようになっていた。
「まるで成長しているかのようだな……厄介だ。やはり根源の巨人を早急に潰す必要があるな」
「落とし子も放っては置けませんわよ!」
 タントが言う。
「あまり想像したくはありませんけれど……成長して、毒をばらまく可能性もありますわ!」
「そうですね」
 アッシュが頷いた。
「可能な限り数を減らして進みましょう……皆さん、準備は良いですか?」
「Okよ。一気に潰しましょ」
 ミルヴィが頷いて、仲間達は一気に走り出した。
 眼前には、六体の人型の落とし子がいる。その緩慢な動きはゾンビを思い起こさせる。
「アッシュ、雷で焼いて!」
 ミルヴィの言葉に、
「分かりました。雷よ、跳ねよ!」
 アッシュが雷の鎖を解き放つ。ばぢり、と音をてて踊る雷の鎖が、落とし子たちを激しく打ち据えた。
「yiiiiiiiipe!!!」
 奇怪な悲鳴を落とし子達があげる。
「雷なら私も負けてないよ!」
 マリアが叫び、自らに紅雷を纏わせて飛び出す。加速された飛び蹴りが落とし子をフッ飛ばした。落とし子はそのまま紅雷に飲み込まれて、焼けて消える。
「鮮やかね! 今度はアタシと踊るのは如何?」
 ミルヴィが舞うように流れ振るう刃。落とし子の身体を切り刻んで、腐汁のような液体をほとばしらせる。
「やだ、お風呂入ってる?」
 からかうように言うミルヴィが、落とし子を蹴っ飛ばして距離をとる。同時、暴れまわる銃弾が周囲を飛び回り、落とし子の身体を次々と貫いていく。
「なるほど、ソレはなるべく近寄りたくはないネー」
「まぁ! ドレスコードとは言いませんが、清潔にはしてほしいですわね!」
 ジェックとタントが相槌を打つ。バタバタと倒れていく落とし子たち。ウェールの刃が炎を纏い、その死体ごと焼却せんと斬りかかる。
「どちらにせよ、場違いだ。このまま消えてもらう」
 ウェールが招かれざる客(落とし子)を切り裂いて、焼消した。後に残るのはわずかな炎が物を焼いた匂いだ。
「終わったか……しかし、数が多いな」
 ヲルトがぼやく。遭遇した敵の数は、決して少なくはない。相応の疲労が、イレギュラーズ達の肩にのしかかる。
「随分と徘徊しているみたいだな。出来れば、さっさと元凶を叩きたい所だが……」
 と、ヲルトが言った瞬間。ず、ず、と地下水路の水が波打った。途端、ざざ、ざざ、と波は激しさを増し、奥から何か巨大なものが、水路を歩いてやってくるのを察知させた。
「ミルヴィさん、エコロケ!」
 ヨハンが叫ぶのへ、ミルヴィが壁を叩く響く音、その反響から、周囲の状況を察すれば、
「……ビンゴ! でっかいのがいる!」
「向こうから来てくれたのなら、好都合だな」
 稔の言葉に、一行が武器を構えた。このままここで待ち構えていれば、迎撃できる――果たして次の瞬間、地下水路の暗闇から、巨大な人型が姿を笑わした。
 人型ではあるが、一般的な人間の形はしていないかった。巨大な頭部、ぶよぶよと膨らんだ身体。その巨大な体をどうやって支えているのからわからないが、足は細く。腕は逆に気味が悪いほどに太い。子供が描いたラクガキのような体形。そして、ぶよぶよと膨らんだ身体から、緑色の腐汁のようなものを噴出して、それが水に墜ちてはじゅうじゅうと音を立てた。
「うわ、気持チ悪」
 ジェックが呻く。それはおよそ醜悪な生き物であった。
「オレが抑える。他のメンバーはその後に攻撃」
 ヲルトが言った。
「信じてるぞ」
「お任せくださいまし!」
 タントがばぁっと、両手を広げた。ひときわ輝く光が、仲間達を後押しする。
 ヲルトが駆けだす。その存在に気づいた巨人……『病毒の巨人』が、その不気味な腕を振るう。ヲルトは跳躍。回避。水柱を立てて、腕が着弾。ヲルトは自分の指先を傷つけると、その傷口から血をたらし、それを媒介に術式を起動する。
「お前の存在が目障りなんでな。さっさとこの場から消えるか、もしくはここで死ぬか選べ」
 イドの反乱。無意識に働きかける術式が、この時、病毒の巨人の注意をヲルトへと向けた。
「毒ってのは生き物が身を護るために使うもんサ、けれどこんな命を蝕むような忌まわしい毒はアタシの剣が断つ!」
 その隙をついたミルヴィが、剣舞と嵐の幻影による攻撃を解き放つ。幻影とは言え、その衝撃は実際の肉体にダメージを与えるものだ。幻影、されど鋭き一撃が、病毒の巨人の身体を強かに切りつける!
「aiiieeeeeeee!」
 奇怪な雄たけびをあげる巨人。傷口から噴き上がる、緑色の毒煙。巨人は雄たけびを上げながら、息を吸い込んだ。刹那、顔が倍以上にぶわっ、と膨らんで、すぐさま一気に噴煙を吐き出す!
 イレギュラーズ達はたまらず顔を覆った。吹き飛ばされそうになるほどの勢いで吐き出される病毒のブレス、それに必死で耐える。皮膚がピリピリと痛んで、身体の痺れるような感覚が、イレギュラーズ達を襲った。
「これは……身体がマヒしていく……!?」
 ヨハンが顔を歪めた。警戒していたことだが、およそあらゆる病毒をこいつは媒介しているらしい。まったく厄介な事だ。
「これは余裕をもってはいられませんね!
 なら見せてやるぜ! 鉄帝国の勇者ってやつを!
 魔刻開放!!」
 ヨハンの身体から噴き上がる魔性が、病毒の霧を吹き飛ばさんほどに身体から迸る!
「戦線は僕たちで支えますよ!
 稔さんと虚さん、そしてタントさん! 準備は良いですか! 一気に立て直します!」
『オッケーだ、ヨハン君!』
「お任せくださいませ!」
 虚、そしてタントが一斉に術式を編み上げる。放たれた治癒術式は、ヨハンの魔性、そしてタントの輝きに乗ってイレギュラーズ達を包み込み、その背中を強く押した!
「このくらいでっ! 私は! 私達は止められないよ!」
 マリア――いや、紅の雷が闇を裂いて走る! 紅雷は壁をけり、勢いを増して巨人へと突撃する! それは闇夜に閃光の輝くがごとく!
「討つべきは、招かれざるもの……。
 此処にあってはならないものなのです。貴方達は」
 アッシュの編み上げた雷の鎖が、マリアを追うように解き放たれた。紅の雷、そして鎖の雷。二つの雷が重なり合うように混ざり合い、マリアが、そしてアッシュの一撃が、巨人の顔面へと直撃!
「ありがとう、アッシュ君!」
 巨人の顔面を蹴りつけるマリア。同時に、アッシュは声をあげた。
「どうぞお眠りを、古より来たりし者。
 最早居場所のない其の命、彼岸へと送って差し上げます。
 ジェックさん、このまま転ばせます」
「了解だ。タント、背中ヲ支えて」
「傍におりますわよ、ジェック様!」
 アッシュの言葉にジェックは頷き、狙撃銃『Greed』を構えた。その背に立つタントの輝きを背に感じながら、ジェックが放つはあざ笑う死神の銃弾!
 音速とも勘違いする速度の鋭い銃弾は、サイレンサーによって静かに放たれた。弾丸が空気を裂く音だけが響き、巨人の、細い脚の右膝を貫き、勢いのまま粉砕する!
「aiiieeeeeeee!」
 雄たけびをあげる巨人。あおむけにぶっ倒れた巨人が水路に着水。水路の水が激しい飛沫をあげた。巨人はしばしじたばたとしていたが、すぐにぐるりと身体を回転させると、這いずる様にこちらに向かってくる。その巨大な手を振り上げて、
「こいよ! なにがこようと、オレが全て躱しきってやる!」
 挑発を続けるヲルトにふるい落とす。ヲルトは空中でその腕を蹴っ飛ばして跳躍、回避。落下した拳が石畳を粉砕して、礫を飛ばせた。
「aiiiieeeeee! aiiiiieee!!!!!」
 巨人は雄たけびを上げながら、再び息を吸い込む。
「させません、めぇ!」
 メーコがその眼前に立ちはだかった。両腕をクロスさせて防御の態勢をとり、眼前から吹き出された毒霧をその身体で受け止めて見せる。
「メーコ!」
 ヲルトが叫ぶ。ぶすぶすとその身体を毒に焼かれ、しかしメーコは倒れることなく立ち続けていた。
「いま、です、めぇ!」
 最大攻撃を放った巨人、そのさらけ出した隙をつけ、とメーコが言う。ウェールは吠えた。
「うおおおおっ!」
 掲げるウェールの腕より放たれた炎、それは狼と、黒い虎の姿と変わった。ウェールの命を燃やして放たれた、二匹の獣。それはその爪牙を持って、巨人の頭へと食らいついた! 傷口から、巨人の身体に炎が回り込んで、内と外から激しく炎上させる。
「aiiiiieeeeeee!!!!」
 巨人が悲鳴を上げた。その身体が炎にまかれ、灼熱のうちに消滅していく。その身体がすっかり焼け落ちて、炎は体の中の病毒すら炎で消えうせるほどに燃え盛って、すべてを浄化するように地下の闇を照らしていた。

●浄化の旅の終わり
「メーコさん! 治療を!」
 ヨハンが叫び、メーコに駆け寄る。メーコは少しふらつきながら、
「だいじょぶですめぇ。メーコは、倒れませんめぇ」
 と微笑んで見せた。
「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ! ああもう、タントさん、稔さんに虚さん! 多分もうボスは居ません。ありったけで治しましょう!」
「いいだろう、よく演じてくれた役者だ。その恩には報いねば」
「しばらく横になってくださいまし、いくら倒れないからって、痛いのには変わりないのですからね!」
 ヒーラーたちが総動員でメーコの治療にあたる中、ミルヴィのエコーロケーションが、地形の終端を教えてくれていた。
「この先は行き止まりみたい……」
「と言う事は、さっきの巨人はこの先の行き止まりで何かしていたって事かい?」
 マリアが言う。それからゆっくりと、先を除き見てみるのへ、うう、と唸った。
「ひどい、この先は毒素が強いみたいだね……」
「ふむ……そうだな、ジェックさん、ヲルトさん。ここで治療班の護衛を頼む。俺達で先を偵察しよう」
 ウェールの提案に、
「わかったヨ。こっちハ任せて」
「そっちも気を付けてくれ」
 二人の言葉を背に、一行は奥を除く。次第に濃くなっていく毒霧に辟易としながら、彼らがたどり着いた先で見たものは、巨大な毒の結晶ともいえる、緑色の固形物だった。
「これ……あの巨人が作ったの?」
 ミルヴィが言うのへ、
「多分、そうだろうね。あの巨人は、自分の毒を固めて、毒素を生み出してたんだ……」
 マリアが頷く。
「どうする。破壊するか」
 ウェールの言葉に、ミルヴィが頷く。
「当たり前……だけど、これちょっと骨が折れるねぇ」
「うん。皆の力を借りた方がいいね。いったん戻ろう」
 三人が戻ると、ちょうどメーコの治療を終えたところだった。
「ご迷惑をおかけしますめぇ」
「いいえ、いいえ! 仲間ですもの! 当然ですわ!」
 タントが笑うのへ、メーコも微笑んだ。
「それで、そっちには何がありました?」
 ヨハンの言葉に、
「毒の塊だよ! あんなのが残ってたら、水路も綺麗にならないね」
 マリアが言う。
「このまま、俺達で破壊してしまいたい。マリアさんやアッシュさんの雷、俺の炎なんかで焼消せるだろう」
「なら、アタシタチは、塊を攻撃して、少しでも小さくスル感じかナー」
 ジェックの言葉に、仲間達は頷く。
 それからしばしの時間をかけて、一同は毒素の塊を破壊し、焼きつぶしていった。幸いにして、ある程度小さく砕けば無毒になって消えてしまうようなものだったから、一同は念入りに破壊して、さらにウェール、マリア、アッシュらの攻撃で焼消した。此処迄すれば、今回の毒のせいで、新たに毒素が流れることはもうないだろう。
「やれやれ、ここ迄すれば、中の空気も少しずつ澄んできたな」
 ヲルトがマスクを外した。呼吸をしても、ぴりぴりと喉を焼く感覚はない。毒素は無害なレベルにまで薄まったのだろう。
「ですが……水に混じった毒は、すぐには流れ去らないでしょう。無毒になるまで、しばらく時間がかかりそうです」
 アッシュが言う。その言葉通り、すぐさまこの水路が使い物になるか、と言われれば、そうとは言えない。
「だから……毒のようなものは恐ろしいのです。この毒はそうではないかもしれませんが、長らく土地に害を及ぼすようなものもあるでしょう。本当に、人のすべきことではないのです」
 アッシュの言葉に、ミルヴィは頷いた。
「クローディスだっけ? まったく、何考えてるんだよ!」
「まるで、たくさん、てばやく、人を殺めたいかのようですめぇ」
 メーコが悲痛な表情でいう。
「それで、何の得があるって言うんだ? 俺達へのけん制か?」
 ウェールが言うのへ、
「ううん、だったら、調査中とはいえ、自分の領地じゃなくて、もっと直接的に、私たちに巨人を差し向けたりすると思う」
 マリアが言った。
「メーコの言ったことは正しいかもしれないぞ。この脚本家は、人死にを欲しているのかもしれない」
 稔が言う。
「考察は後にするとして、ひとまずここを出ませんか?」
 タントが言った。
「こうも疲れていては、きっといい考えも浮かびませんわ! ひとまず、お日様の下へ戻りましょう!」
「賛成ダヨ。アタシもぼちぼち、このガスマスクをハズしたいし」
 ジェックの言葉に、仲間達は頷いた。
「では、戻りましょうか」
 ヨハンが言う。
「マリア、帰り道の案内頼む」
 ヲルトの言葉に、マリアは地図を広げてい頷いた。

 かくして、イレギュラーズ達の働きにより、敵の作戦の一つは挫かれた。
 だが、敵の求める事はいったい何だったのだろうか?
 多くの人を殺したかった、となれば、確かに納得は行く。
 では、その多くを殺した末に、敵は何を得るのだろうか?
 様々な疑念を思い浮かべながら、しかし今は、一行は暗闇のトンネルを抜け、光を求めて歩を進めるのであった。

成否

成功

MVP

メーコ・メープル(p3p008206)
ふわふわめぇめぇ

状態異常

なし

あとがき

 ご参加ありがとうございました。
 皆様の活躍により、病毒の大元は排除されました。
 水路の復旧にはしばし時間がかかりますが、カランの街の未来は、皆様の手によって守られたのです。

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