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シナリオ詳細

アルバトロス空賊団。或いは、“銀鷲”アルコの飛空艇…。

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●空に憧れて
 ごう、と耳朶を震わせる強い風が吹いていた。
 空は青く、どこまでも遠い。
 鋼鉄。
 都市から遠く離れた渓谷に、彼女は1人で住んでいた。
 否、正しくは1人と1羽と言うべきか。
「やぁ、ようこそ。よく来てくれたね」
 女性にしては低い声で、彼女は歌うようなリズムでそう告げた。
 白い髪をゴーグルで押し上げた、褐色肌の女性だ。
 その背には、猛禽のそれに似た大きな翼が備わっている。
「私はアルコ。そしてあれが、相棒の“ファルコ”だよ」
 あれ、と。
 女性、アルコが指さしたのは遙か上空。
 青い空に、黒い影が横切った。翼を広げた全長(翼開長)は、5メートルを余裕で越える。
「彼女は飛ぶのが大好きなんだ。もちろん、私もね」
 そう言ってアルコは、上空を舞うファルコへ向けて手を振った。
 アルコの合図に気がついたのか、ファルコはゆっくり高度を落とす。
 風圧で砂埃を巻き上げながら、ファルコはアルコの隣に着地。身長170もないアルコと並べば、その体躯がいかに巨大かよくわかる。
 鋭い眼差しを一行へ向け、ファルコは「クルル」と唸ってみせる。
 アルコを守るように1歩前に出た彼女……ファルコは巨大な鷹だった。
 鋭い爪や嘴を用いれば、人の体を引き裂くことも出来るだろう。

 アルコの語る依頼の内容は以下の通りだ。
 アルコとファルコの所有していた空挺が、何者かに盗まれた。
 調査の結果、それを盗んだのは渓谷を根城にする「アルバトロス」という名の空賊たちだと判明。
 空挺奪還のため、アルコとファルコは渓谷を訪れたのだが……。
「なかなかどうして、人数の差がありすぎてね。アルバトロスのアジトは突き止めたというのに、攻めあぐねていたというわけさ」
 そういってアルコは、わざとらしく肩をすくめて苦い笑みを零すのだった。

●銀鷲・アルコ
「私とファルコは事情があって公に人を頼れないんだ……なんというか、私たちはいわゆる“空賊”というやつだからね」
 現在のところ、構成員は1人と1羽。
 活動範囲も狭いし、アルコ自身の戦闘力も決して高いとは言えない。
 唯一の強みをあげるとすれば、小回りが利く、という点だろうか。
 空挺を利用し略奪行為を働く一般的な空賊に対し、ファルコに騎乗し行動するアルコは目立ちにくいのだ。
 今回、アルバトロスに盗まれた空挺は、もっぱらアジトとして利用されていたものらしい。
「まぁ、空賊と言っても私たちは別に悪さもしていないしね。私たちの獲物は他の空賊や、この辺りを根城にするならず者たちだから」
 ファルコの背に乗り、急接近。
 一撃を加え、速攻で離脱するというヒット&アウェイの戦法でもってアルコは空賊狩りを続けていたという。
「私にも翼はあるけど、昔大きな怪我をしてね。今では長く1人で飛ぶことが出来ないんだ。だから、空挺が無くなってしまうと、不便なことも多いんだよね」
 平坦な地面の少ない渓谷を移動するためには、空挺か自前の飛行能力が不可欠だ。
 そういった意味でも、空挺を取り返すことは急務といえる。
「ファルコに乗れば飛べるけど、それだと彼女に負担がかかりすぎてしまう。いざというときにへとへとで飛べないなんて、笑えないだろ?」
 渓谷には、今回ターゲットと定めたアルバトロス以外にも、多くの空賊やならず者が住んでいる。
 ファルコが疲労した状態でそれらに襲われてしまえば、最悪命を落とすことになるだろう。
「見ての通り、一度落下すればほぼフリーフォールで地上まで真っ逆さまだからね。危ないんだよ、ここを歩いて移動するのって」
 はは、と軽い笑みを零したアルコ。
 足を滑らせるだけで命を失いかねない土地で生きるにしては、妙にノリが軽いように思われる。
 ともすると、常日頃から危険な場所での生活に慣れ親しんでいるせいで、危機感が麻痺しているのかもしれない。
「さて、雑談はこのぐらいにして、今回攻め込むのはあそこ。アルバトロスのアジトだよ」
 そう言ってアルコは、対崖の中腹にある洞窟を指で指し示す。
 崖の最上部から洞窟までの距離は、直線にしておよそ150メートルほどか。
 道らしきものは存在しないが、断崖各所に飛び出した岩や、取り付けられた鉄板があった。
 それらを足場に崖の上部から、洞窟へ向けて降下することになるだろう。
「崖の下から昇ることも可能だけれど、まぁ、おすすめはしないね」
 洞窟に住むアルバトロスの構成員たちは、主に翼や空挺を用いて出入りしているのだろう。
 最低限、ルートが確保された崖上方と異なり、下方にはそれらしきものがない。
「ロッククライミングに挑戦したいのなら止めないけれどね。でも、時間に余裕はあまりないかもだから……うぅん、難しいところだね」
 なんて、言って。
 アルコは、相棒の頭を撫でた。
 時間がないとはどういうことか?
 一行の顔に浮かんだ疑問に対し、アルコは「あぁ」と思い出したように答える。
「アルバトロスの船長や幹部連中が、近々狩りに出るらしい。だから、私たちが攻め込むのならそのタイミングになるんだけど……」
 当然のことながら、アジトには見張りが残っている。
 空挺奪還のために乗り込めば、遅かれ早かれ気付かれてしまう。そうなったら、狩りに出ていた船団は慌てて戻ってくるはずだ。。
「見張りから連絡を貰って、慌てて引き返してくるとして……5分もかからないかな?」
 逆に言えば、見張りからの連絡が無ければしばらくの間、船団が帰還することはない。
 盛大に暴れてでも迅速に空挺を奪取するべきか。
 密かに行動し、なるべく目立たず空挺を取り返すべきか。
 或いは、別の作戦を採用すべきか。
「悩ましいよね。見張り連中も馬鹿じゃないだろうし、なにより彼らには翼があるから」
 隠れて接近しようにも、制限の多い崖であるため上手くやらねばすぐに発見されるだろう。
 ましてや空賊のアジト付近ともなれば、問答無用で攻撃をしかけられることも十分あり得る。
「人攫いもやっているらしいから捕まらないよう気を付けてね。アジトに詰めている10人は【猛毒】【失血】の付与された短槍や、【呪縛】【暗闇】の付与されたボーガンを装備しているよ。とくに患部のコルボーという男には要注意だね」
 また、空賊の構成員は全員が飛行能力を有している。
 フィールドの特徴と併せてみれば、空賊たちが有利だろうか。
 何しろ相手の本拠地に乗り込むのだ。
 相手にとって有利な場所に拠点を築くのは当然であろう。
「ま、何とかなるでしょ」
 それじゃあ行こうか。
 そういってアルコは、相棒の背へと跨がった。

GMコメント

●ミッション
アルコの空挺を奪取する

●ターゲット
・アルコ&ファルコ
白い髪、褐色肌の女性。背には翼を持つが、怪我のため飛行能力は失われている。
そのため、相棒のファルコに騎乗し戦闘を行う。
基本的には一撃離脱の戦法を得意としている。
移動手段兼住処であった空挺を奪い返すために、アルバトロスのアジトへ攻め込むこととなった。
サーベルを武器として用いるが戦闘能力は低い。
優れた視力を用いた索敵や、ヒット&アウェイを主とした戦闘を得意とする。


・コルボー×1
アルバトロス空賊団の患部らしき男性。
他構成員と同じく飛行能力を持つ。
アジトの見張りに残った団員たちのリーダー格。
空賊らしく獰猛で、そして同時に冷静だ。

猛禽の槍:物近単に大ダメージ、猛毒、失血
 急降下からの渾身の突き。

猛禽の矢:物遠単に大ダメージ、呪縛、暗闇
 腕に取りつけたボーガンからの矢の射出。

・アルバトロス空賊団員×9
アルバトロス空賊団の構成員。
アジトの見張りに残された者たち。
飛行能力を有する。

猛禽の槍:物近単に中ダメージ、猛毒、失血
 急降下からの渾身の突き。

猛禽の矢:物遠単に中ダメージ、呪縛、暗闇
 腕に取りつけたボーガンからの矢の射出。

●フィールド
サクラメントは目的地対面の崖の上。
断崖絶壁。
その中腹にある洞窟が、今回の目的地となる。
崖の最上部から洞窟へは、突き出した岩や鉄板などを足場にして降りていける。
一方、崖の最下部から洞窟へ向かうルートは確保されていない。
※ロッククライミングの要領で上ること自体は可能。
崖の最下部から、最上部までの距離はおよそ300メートルほど。
アルコの空挺は、洞窟内部に鹵獲されている。それを奪取することが今回の依頼の目的となる。
※対策もないまま転落するとロストとなります。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はCです。
 情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。

※重要な備考

 R.O.Oシナリオにおいては『死亡』判定が容易に行われます。
『死亡』した場合もキャラクターはロストせず、アバターのステータスシートに『デスカウント』が追加される形となります。
 現時点においてアバターではないキャラクターに影響はありません。

  • アルバトロス空賊団。或いは、“銀鷲”アルコの飛空艇…。完了
  • GM名病み月
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年05月31日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ドウ(p3x000172)
物語の娘
セララ(p3x000273)
妖精勇者
アカネ(p3x007217)
エンバーミング・ドール
ホワイティ(p3x008115)
アルコ空団“白き盾持ち”
壱狐(p3x008364)
神刀付喪
指差・ヨシカ(p3x009033)
プリンセスセレナーデ
座敷童(p3x009099)
幸運の象徴
アズハ(p3x009471)
青き調和

リプレイ

●空へ
 切り立った崖の中腹に、洞窟らしきものがある。
「さぁ、皆。準備はいいかな?」
 そう問うたのは褐色の肌に銀の髪という女性であった。その背には、銀の翼が生えている。
 彼女の名はアルコ。
 巨大な鷹、ファルコの背に乗ったまま彼女は問うた。
「いつでもいけるよ!  飛べない人にはボクのスキルで【飛行】を付与しておいたからね!」ぐっ、と親指を突き立てて『妖精勇者』セララ(p3x000273)は告げた。
 身長30センチほどと、ごく小さなセララへ柔らかな笑みを向け、アルコは一つ頷いた。
「それじゃあ、行こうか」
 そう告げて、アルコとファルコは上空へ向け飛翔した。
 目的地は断崖中腹。
 洞窟の中に造られた、アルバトロス空賊団のアジトへ向けて移動を開始するのであった。

「空を翔ける船、と言うのは乗ったコトも無いので何だか不思議な感じですねぇ」
 ふわり、と泳ぐように宙を舞う暗いローブの少女は告げた。
 ごつごつとした岩肌に身体を隠すようにしながら『Doe』ドウ(p3x000172)は頭上へ視線を向けた。
 一瞬、洞窟の辺りで何かがきらりと光った気がする。
「おぉ、早速敵のお出ましですか? ささ! 空挺をさくっと奪い返しに行きましょうか♪」
「アルコさんにとっては、もはや第二の家のようなものでしょうしね」
『傘の天使』アカネ(p3x007217)は手にした傘を広げた。また、それに同調するように『妖刀付喪』壱狐(p3x008364)は腰の刀へと手を伸ばす。
「第二の家というか、私たちの住処って飛空艇なんだよね」
 あはは、と明るく笑ってみせたアルコの下で、ファルコがケケと奇妙な声をあげていた。
 敵に発見されないよう、声を抑えているのだろう。
「アルコさんにファルコちゃん、いいコンビなんだねぇ。必ず、空挺を取り戻そうねぇ!」
『ホワイトカインド』ホワイティ(p3x008115)は、盾を構えてアルコの前へと移動する。
 アルバトロス空賊団に奪われた、アルコの飛空艇を奪い返すこと。
 それが今回の依頼の内容だ。
「え、もう仕掛けるの?  少しでも隠密で近付かないと見つかってすぐ通報されました、じゃ困るわよ?」
「気付かれたら、出かけている本隊が5分ほどで帰ってくるのじゃろ? まだ洞窟まで距離があるが?」
『ヨシ!プリンセス』指差・ヨシカ(p3x009033)と『幸運の象徴』座敷童(p3x009099)は、チラと視線をアルコへ向けた。
 2人の視線を受けたアルコは、ほんの数瞬思案する。
「今のところ気づかれていないみたいだし、一旦待ってみようか?」
 見開いた目を頭上へ向けて、アルコは言った。
 猛禽の眼を持つ彼女の視力は、日中であれば遥かに遠くまでを見通すほどに優れているのだ。戦闘能力に不安の残るアルコとファルコが、これまで空賊として活動できていた理由の1つがそれである。
「おぉ、アルコは索敵もできるんじゃったな」
「とはいえ、やっぱり不利だよね。まぁ、空挺を取り返すために攻めていこうか」
 閉じていた目を薄く開いた『AzureHarmony』アズハ(p3x009471)は、そう呟いて遥か頭上を仰ぎ見る。
 飛行能力を得たとはいえ、この場は敵の本拠地だ。
 当然ながら地の利はアルバトロス空賊団の構成員たちにある。
 見張りたちの監視を潜って洞窟へ辿り着くことは、誰にとっても容易でないとアズハはそう判断していた。
 
●空戦勃発
 アルバトロス空賊団。
 鋼鉄辺境の渓谷を拠点とする空賊団だ。幾つかの空挺と、飛行能力を持つ数十名からなる団員で構成された大規模な組織であり、付近を通りかかる旅人や商人、時には街を襲って金品物資を略奪することで知られている。
 1人と1羽で構成された、アルコ空団とは規模も戦力もまさしく桁が違うのだ。
「だっていうのに、どうして私の空挺を持って行ったのやら……大層なのは名前だけなんだけどね」
 ふわり、と数メートルほど上昇しながらアルコは深い吐息を零す。
 岩肌に身を隠しながらの接近も、そろそろ限界が近いだろう。
「アルバトロス空賊団の見張りは、どうやら洞窟の入り口付近に座しているようだな」
 イズハのアクセスファンタズム【響界感測】は、周囲の状況を音で把握することができるスキルだ。洞窟の内部にいる見張りの姿は見えずとも、たてる物音を聴くことで、およその位置や姿勢を知ることができる。
「だよねぇ。ここから先は、飛んだら流石に見つかるよね」
「ん?  皆、ずっと飛ぶつもりかの? 危ない時だけ飛行を使って、ロッククライミングの方が速いやも知れぬぞ?」
 唸るアルコにそう告げたのは座敷童だ。
 頭頂部から伸びる白い兎の耳を風に揺らして、彼女はこてんと首を傾げてみせたのだった。

 ぼんやりと、青い空を眺めながら彼は紫煙を燻らせていた。
 トサカのように逆立てた髪を撫でながら、ふぁぁ、と大きな欠伸を零す。
「見張りったって、こんな所に誰が来るかってんだよなぁ」
 なんて、近くに仲間がいないことを確認し、思わず不満の声を零した。
 アルバトロス空賊団のアジトは、断崖の中腹に存在している。
 そのため、アジトへ至るためのルートも限られていた。
 彼がアルバトロス空賊団に加入してから数年、アジトが何者かの襲撃を受けたことは1度も無かった。
 飛空艇を持つ同業者の接近ならば、すぐに発見できるだろう。
 ましてや、危険な崖を生身で進む者などいようはずもない。
 つまり、見張り役を務める男はすっかりと油断し、だらけ切っていた。
 いつも通り、仲間たちが帰還するまでぼんやりと空を眺め続ける。
 そんな時間が続くものと、次の瞬間まで彼はそう信じて疑いもしなかった。
「……あ?」
 ひょこり、と。
 視界の隅に、白い兎の耳が覗いた。
 次いで、小さな白い手が地面を掴む。
 男の見つめるその先に、現れたのは艶やかで黒い髪を蓄えた頭頂部。
「やぁ」
 柔らかな笑みを浮かべた美しい顔。
 突然、少女が現れたことに度肝を抜かし、彼は思わず動きを止めた。
 油断していた彼の脳が、不測の事態に対応しきれなかったのだ。
「そなた、コルボ―か? いや、違うな。雑魚じゃろ?  優先目標がなければ雑魚から攻撃じゃな」
 座敷童は、親しい友人に挨拶でもするかのように手を挙げる。
 
 黒い炎を纏った手毬が、見張りの顔面を撃ち抜いた。
 鼻が潰れ、前歯がへし折れ、しかし彼はまだ意識を失っていない。
「くそっ!! 侵入者だ! おい、出て来いお前ら!」
「侵入者だと? 見張りは何やってたんだ!」
「お前らも見張りだろうが!! 俺にだけ当番押し付けやがって!!」
 喧々諤々とした怒鳴り声が洞窟内部に木霊する。
 直後、洞窟の奥から夥しい量の羽音が響いた。
「なんじゃ?」
 腕を交差し顔を庇った座敷童の頭上を、10を超える黒い鳥が通過する。鳥たちの脚には、赤い布が結ばれていた。
 羽音に反応したのだろう。
 鳥を追うようにして、アズハは空へと飛翔する。
「アルコさん達には空挺の方へ。敵の船団が帰ってくる前にケリをつけるぞ」
 アズハは【アクティブスキル4】を使って、鳥を1羽撃ち落とす。
 しかし、鳥の数が多すぎた。
 鳥のうち半数ほどは、あっという間に射程の外へと逃げていき、もはやそれを追走することは叶わない。
 じきに鳥たちは、仕事に出ている空賊本隊へと追いつき、アジトの異変を伝えるだろう。
「予定通り、暴れてでも迅速に取り返す方針で」
「うん。少しだけ堪えてね。すぐに飛空艇を取って来るから」
 アズハと座敷童が洞窟入り口の見張りを討ち倒したのを確認し、アルコとファルコが高度を上げた。
 加速をつけ、一気に洞窟の奥へまで突入するつもりなのだろう。
 しかし、それに合わせて洞窟を飛び出す影が1つ。
 ファルコの飛翔速度に勝る急加速でもって高度をあげたその男は、烏を模した仮面を顔につけていた。
 手にした短槍が陽光を反射し、きらりと光る。
「止まれ、アルコ!」
 高度をあげるアルコを、アズハは急ぎ呼び止める。
 急停止したアルコの頭上で、黒い影……コルボ―は反転。
 槍の切っ先を下へ向け、翼を広げ急降下を開始した。
「手の届かない所から急降下攻撃? ふうん、他の団員と大して変わらないのね」
「必ず守り抜いて見せるよぉ!」
 ヨシカとホワイティはタイミングを合わせ、アルコのカバーへと回る。
 シルキィの掲げた盾が、コルボ―の槍を弾き飛ばした。かなりの速度で槍を打ち込まれたのだろう。ガァン、と甲高い音が響き渡って、ホワイティの身体が揺れた。
「わわっ!!」
 アルコともつれるようにして、ホワイティは姿勢を崩す。
 ホワイティはアルコの腰を抱き寄せると、洞窟へ向け絹糸を伸ばす。糸を切るべく、コルボ―は槍を一閃させたが、ホワイティは体の向きを調整することでそれを防いだ。
 代償としてホワイティは背を深く抉られるが、問題ない。
 まだ戦いを続けることは可能であろう。
 咄嗟に伸ばした絹糸を洞窟の天井付近に巻き付けると、振り子の要領で洞窟内部へと突入。着地地点へと空賊たちが群がるが、それはアカネが引きつける。
「皆さんの相手は私です。そうそう簡単には倒れないですよ♪」
 パンッ、と音が鳴り響き、広げた傘に無数の矢が降り注いだ。
 その隙にアルコとホワイティは地面に着地。一瞬遅れて、ファルコが追い付く。
「今のは、銀鷲か? おい、奥に行かせるんじゃねぇ!」
 ヨシカと空中戦を繰り広げるコルボ―が、仲間たちへ指示を飛ばした。
 空中戦を得意とするコルボ―と、本来であれば飛行能力を持たないヨシカ。コルボ―の猛攻にヨシカは防戦一方だ。
 
 アルコの振るう刀により、空賊の1人が斬り倒された。
 戦闘を不得手とするアルコだが、防御をホワイティに任せることで1対1での戦闘ならば、それなりに接近戦も熟せていた。
「このまま、空賊たちのアジトを荒らしてしまいましょう」
 どこからともなく脳裏に響くその声は、アルコの手にした刀が発したものである。刀……壱狐は自身の姿を刀へと変えて、アルコに装備されていた。
「それはいいけど、結構奥の方にあるねぇ、私の飛空艇……」
「所詮洞窟ですからね。飛空艇は一列にしか停泊させられないのでしょう」
「つまりお仲間が帰ってきたら、飛空艇を発進させられないってことだねぇ。これは、いそがなきゃ」
 ボウガンの矢を盾で弾き、ホワイティが進路を開く。
 敵が次の矢を装填するよりも僅かに速く、アルコの刀がその腕を裂く。
 悲鳴をあげながら、空賊は短槍を振るう。アルコの顔に迫った刃は、人の姿へと戻った壱狐が身体を張って受け止めた。
「後ろは気にしないでいいからね!」
 後方から追いすがる空賊たちは、傘を広げたアカネが牽制。
 前方を塞ぐ空賊たちを無理やりに突破しながらも、アルコとホワイティ、壱狐は飛空艇への距離を縮める。
 アカネと、その背後で剣を構えたドゥを警戒し、空賊たちは前へと出ることは出来ないでいた。
「おい、外の連中を呼び戻せ!」
「無理だ。聞こえてねぇ!」
 空賊たちは、洞窟外へと救援を求めるがその声は届いていないようだ。
 それはドウのアクティブスキルによるものだろう。
「無駄です。内部から外部への音は遮断していますから」
 そして、と。
 アカネに守られながら、ドウは剣を振り上げた。
 にぃ、とその口元に薄い笑みが浮かぶ。
「距離を取れば剣は届かない、と言う考えは間違いなのです」
 大上段より彼女は剣を振り下ろす。
 飛ぶ斬撃が、空賊の胸部を斬り裂いた。予想外の攻撃を受け、姿勢を崩す空賊。その頭部を、高速で飛来した毬が撃ち抜く。
 座敷童とドウに進路を阻まれて、空賊たちは前進も後退も出来ないでいる。

 ヨシカとの空中戦を繰り広げているコルボ―は、視界の端できらりと光る何かを見つけた。それは小さな少女のようだ。
「な……なんだ?」
 一瞬、そちらへ気を取られたコルボ―へヨシカが迫る。
 コルボ―は槍を振るうことでヨシカを迎撃。ヨシカの腕から肩にかけてが斬り裂かれ、赤い鮮血が空へと
飛び散る鮮血に紛れるように、小さな少女……セララがコルボ―の懐へと潜り込む。
「コルボ―! 君の相手はこのボクだよ!」
「鬱陶しい! 」
「ふふん、小さいからって舐めてるね。それなら、ボクを軽く倒して突破してみるんだね」
 チョコとクッキーで出来た剣でコルポーを牽制しながらも、セララはヨシカへ【飛行】を付与する。姿勢を立て直したヨシカと2人、一気呵成に攻め立てた。
 翼を畳んだコルポーは、2人の攻撃を回避しながら高度を下げる。
 追いすがるセララへ向け、撃ち込まれたボーガンをヨシカは盾で弾き飛ばした。
刹那、コルボ―は翼を広げ急上昇。
降下するセララと交差した瞬間、その脇は刃に裂かれるがコルボ―が上昇を止めることはなかった。
「あ、やば。ヨシカちゃん、ガードして!」
「無理かも!」
赤い軌跡を描く誘導棒……否、ユウドーブレードがコルボ―の短槍に弾かれる。
「くっ……」
「まずは1人」
 手首の動きだけで短槍の向きを転換し、コルボ―はそれをヨシカの脇に突き刺した。
 ぐらり、とヨシカの姿勢が崩れる。
 落下していくヨシカを足蹴に、コルポーは高度をさらに上昇。しかし、ヨシカは最後の力を振り絞り、コルポーの足首をその手で掴んだ。

●空挺ダッシュ
 撃ち込まれた矢を、アカネの傘が弾き飛ばした。
 防ぎ損ねた幾つかの矢は、アカネの腕や脚に突き刺さっている。
 急所を撃たれたわけではないので、戦闘の続行に支障はないがそれでもパフォーマンスは十全な場合と比べて幾らかは低下しているはずだ。
「とはいえ、ここは通させませんよ!」
「防御はお任せします。その間に私は、この剣の力、存分に使わせて頂きます!」
 矢を撃ち終えたその隙を突き、傘の影からドウと座敷童が飛び出した。
 ドウは手にした蒼剣を、座敷童は足元へ落とした毬を蹴り上げそれぞれ1人の空賊を討つ。

「後は空挺を奪い返すだけか。終わったら素早く離脱しよう」
 倒れた団員を拘束しながら、アズハは洞窟の奥を見やった。
 入口付近に集まっていた団員は、これで全員倒したはずだ。
 とはいえ時間もそれなりに経過している。アズハの耳は、遠くから響く飛空艇の駆動音を聞きつけていた。

 コルポーとヨシカはもつれるように落ちていく。
 翼を広げ、上昇を計るコルポーだが人間1人分の重さを追加された状態では、それも叶わないらしい。
「女の子一人で頑張っているのを邪魔するなんて、随分とダサいじゃない?」
「ダサかろうが、悪辣だろうが、それが空賊のやり方だ」
 離せ、とばかりにコルポーはヨシカの肩へ槍を突き立てた。
 痛みに顔をしかめながら、しかしヨシカはその手を決して放そうとしない。
 攻撃はしない。
 ただ、コルポーの脚を掴むだけ。
 コルポーを落とす役目を担うのは、ヨシカではなくセララだからだ。
 
 空気が振るえる。
 轟音と共に雷が落ちた。
 それを剣で受け止めたセララは、まるで1つの雷球の如き様である。
「いっくよー!」
 バチバチと空気の爆ぜる音がした。
「全力全壊! ギガセララブレイク!」
 ボールライトニングと化したセララが、コルポーへ迫る。
 加速を乗せた斬撃が、コルボ―の胸部を撃ち抜いた。
「う、ぉぉおおお!!」
 眩い閃光。
 視界が白に染め上がる。
 放電が納まり、辺りには鉄錆にも似た匂いが漂う。
 コルポーの血が蒸発した臭いだ。
「う、ぐ……」
 胸部を抉られたコルポーは、ヨシカと共に崖下へ向けて落下していく。
 もはや翼を動かす力も残ってはいないようだった。
「さぁ、一緒に崖の下までいきましょう?」
 そして、それはヨシカも同様。
 落ちていく2人を見つめ、セララは歯を食いしばる。

 飛空艇の入り口付近では、ホワイティが孤軍奮闘を続けていた。
 飛空艇の守護に残った空賊は1人。
 その攻撃を盾で捌きつつ、ホワイティは艦内のアルコと壱狐を呼んだ。
「動きそうかなぁ?」
 飛空艇の状態を確認しながらも、撃ち込まれた矢を構えた盾で弾き落すホワイティ。元より防御を専門とする彼女では、空賊を討ち倒すのには少々火力が不足していた。
 その分、空賊の1人程度であれば食い止めることは造作もないが。
「えぇ、すぐに。それにしても、全く雑に使ってくれちゃってます……あ、ここの配置これであってますか?」
「OKだよ。燃料タンクの方に破損はないかな?」
「そちらは問題ありません」
 壱狐とアルコのやり取りが続き、やがてぐぉんと飛空艇が駆動を開始。
 次第に音は大きくなり、やがてその巨大な船体がふわりと宙へ浮き上がる。
「発進!!」
 アルコの宣誓と共に、飛空艇は起動した。
「動いたか。ならば乗せろ、さっさと脱出じゃ」
 そう告げたのは、入り口付近に待機していた座敷童だ。
 洞窟の端に身を寄せながら、彼女はホワイティへ手を伸ばす。
 ハッチに糸で体を結んだホワイティが、座敷童の手を取った。
 次々と仲間たちを収容しながら、飛空艇は洞窟を飛び出す。
 ごう、とエンジンが火を噴き加速。
「ははっ!! やっぱり、空は気持ちがいいねぇ!」
 操縦桿を握るアルコはそう告げて、気持ちよさげに笑うのだった。

成否

成功

MVP

セララ(p3x000273)
妖精勇者

状態異常

指差・ヨシカ(p3x009033)[死亡]
プリンセスセレナーデ

あとがき

お疲れ様です。
この度は空賊アルコの飛空艇奪還にご助力いただきありがとうございました。
無事に飛空艇は奪取されたようです。
依頼は成功となります。

また縁があれば別の依頼でお会いしましょう。
今後ともよろしくお願いします。

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